●夏のお買い物 『サマー・シュプールの夏バーゲン開催中!』 差し出されたチラシは、カラフルでポップな文字でそう彩られていた。 紙面には華々しい水着を身に纏い、爽やかな笑顔を浮かべる女性モデルの数々。夏の新作だと記された水着は色鮮やかで、これからやってくる夏の色を表しているようだった。 「ということで、サマーバーゲンにいきましょ」 『ブライアローズ』ロザリンド・キャロル (nBNE000261)は仲間に広告を見せ、にこやかに笑んだ。 反して誘われた男性陣、『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)と『サウンドスケープ』斑鳩・タスク(nBNE000232)は、とても微妙な顔をしている。 「えー……」 「ロザリンドが俺達を買い物に誘う理由って、ひとつだけだよね。……荷物持ち、だろ」 「やだ、バレちゃった?」 耕太郎が唇を尖らせ、タスクはやれやれと肩を落とす。 そんな二人に悪戯っぽい表情を返し、ロザリンドは笑って誤魔化した。さておき、と咳払いをした少女はとにかく話だけでも聞いて欲しい、と仲間達に件のショップについて話し出す。 向かう場所は、郊外に佇む大型ファッション店舗の一角。 『Summer Spur』――直訳すると、夏の足跡という名が付けられた特設コーナーだ。 「今年の新作水着は勿論、いろんなタイプの水着があるのよ。メンズ用も豊富みたいだし、プールや海に必須の浮き輪なんかも置いてあるみたい」 ビキニにワンピース水着、パレオ付き水着。 少し横に外れれば競泳用水着や袖付きのタイプも用意されている。浮き輪はカラフルで可愛いものから、シックでシンプルなもの、他にもビーチボールやゴーグルなども並べられている。 それから、とロザリンドはチラシの横を指差す。 「夏といえば水着だけど、それだけじゃないのよ。浴衣やサマードレスのコーナーもあるらしいわっ」 少女は品揃えに興味津々。 瞳を輝かせたロザリンドはいますぐにでも買い物に行きたいといった様子だ。 「浴衣か。俺は水着は要らないけど、それはいいね」 タスクが興味を示し、広告を覗き込む。 渋々だった耕太郎も浮き輪が並ぶ紙面に目を通し、明るい笑みを浮かべた。 「お、浮き輪もあるのか。海に行くときにボート型の欲しいと思ってたんだよなっ!」 「ふふ、じゃあ決まりね。お買い物に出発よ!」 「おー!」 ロザリンドが意気込めば、耕太郎もつられて片腕を上げる。そんな二人を後方から見遣り、タスクは軽い溜息を吐いた。 「上手く乗せられた気がするけど、良いか。ほら、君達も良ければおいでよ」 少年はリベリスタ達を誘い、薄く笑む。 きっと、買い物だってみんなで賑やかな方が楽しい。 これから本格的に訪れる夏。新たな季節の幕開けにに向けて――さあ、準備を始めよう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:犬塚ひなこ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月21日(日)22:34 |
||
|
||||
|
||||
| ||||
|
■メイン参加者 28人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 透き通る青空、漣の音が聞こえる砂浜。 夜店の並ぶ祭通りに花火大会。いよいよ夏は本番。さあ、君も新たな季節の準備をしよう! ――という放送が流れる店内には、明るい雰囲気が満ちていた。色とりどりの水着やプール用品、浴衣が並べられている一角は実に華々しい。 だが、自分はきっと山ほど荷物を持たされることになるのだろう。 面倒だが逃げられない。溜息を吐きそうになりながらも、火車は買い物を楽しむ黎子の後に付いていった。歩く度に荷物が増え、火車の腕に掛かる重みも増していく。 「たくさん持たせちゃってすみませんねえ。今年は忙しくて服を新調するのもままならなかったのです」 「……いや、まぁ良いけどよ」 何と答えて良いか分からず、火車は片目を眇める。 すると黎子は胸を張り、ここからが本番だと水着と浴衣のコーナーを見比べた。 「水着か浴衣、どっちにするか迷ってるんですよねえ。宮部乃宮さんはどっちが良いと思います?」 問われた火車は暫し考える。 夏は海や川遊びが主流であって水着は欠かせない。だが、祭りも楽しい。思えばコイツは浴衣もあまり着た事がないのでは――そう思った火車は自信満々に答えた。 「両方。両方なら迷わない」 「ふむ。宮部乃宮さんはどちらの私も見てみたいと。欲張りですね! でも、よいでしょう!」 「そりゃ違ぇし! 両方楽しめば良いじゃねぇかっつぅ」 傍から見れば和気藹々。 荷物がどんどん増えていく中、火車と黎子は良い買い物日和を楽しんでゆく。 涼しい空気が満ちる店内。二人で歩む最中、シュスタイナはふと通りかかった雑貨店で足を止めた。 「これ、かわいい」 彼女が見つけたのはコサージュや巾着袋など、浴衣に似合いそうな小物のコーナー。本当ですね、と覗き込む壱和にシュスタイナは白い牡丹のコサージュを当ててみる。 「似合うと思ったけど……悔しいくらい可愛い」 「そうですか?」 照れた様子を見せる壱和は嬉しげだ。少女もまた小物を眺めて尻尾をパタパタと振った。そんな彼女が可愛過ぎて、シュスタイナの口許も緩む。 「そうだ。花火大会とかあったら、また浴衣を着てご一緒しましょ。折角の夏ですもの」 誘いの言葉に壱和は顔を上げ、明るい笑顔を見せた。 「はい。ボクも、一緒に花火に行きたいですし、いっぱい遊びましょう! シュスカさんの浴衣もまた見たいですね。可愛いですから」 「可愛いとか言われると、ちょっと照れるじゃない」 「これでお相子ですね」 悪戯っぽく笑む壱和につられ、シュスタイナも微笑む。夏を思えば自然と心が浮き立ち、楽しみになってくる。わくわくした気持ちを抑えきれず、少女達は今という時間を満喫しようと心に決めた。 ゆっくりと楽しむ買い物のひととき。 フツとあひるは手を繋ぎ、色鮮やかに並ぶ夏商品の棚を眺めていく。 「あひるはもう水着買ったんだな」 「水着は新調したのです……! えっとねえ……」 どんな水着かを説明しようとするあひるだったが、フツは首を振って告げる。懸命に教えてくれようとする彼女を止めるのも心苦しかったが、それ以上に楽しみにしたいことがあった。 「気になるところだが、実際に見る時までガマンだ!」 「……ふふ。じゃあ遊びに行く時まで、内緒内緒!」 笑みを零し、あひるは口許に人差し指をあてる。 そうして、水遊びコーナーに移った二人はカエル柄のTシャツを見つけて視線を交わしあう。あの雨の日に見たアマガエルによく似ている。そうフツが零すと、あひるの瞳がきらきらと輝いた。 それを買うもの候補に入れつつ、二人は大きな浮き輪を見つける。 「へえ、二人で入れる浮き輪なんてあるのか」 「これに入って、一緒に泳ごう……! ちょっと狭くても、くっつけるし、良いかな……えへへ」 くるりと浮き輪を回してはしゃぐあひるは実に嬉しそうだ。 そんな彼女を見守り、フツも今年の夏に思いを馳せる。二人で出掛けるバカンスが今から楽しみで、溢れる笑みは太陽にも負けないくらい眩かった。 夏の暑さに負けないよう、互いに労い合った少年達はフロアに向かう。 健康は何より大事ですから、と語る亘が妙に年寄りめいていて、タスクは思わず笑いを堪えた。どうしたんですか、と問う友人に首を振り、少年は水着売り場を指差す。 「ほら、亘。さっさと選んじゃいなよ」 「あんまり肌を露出する服とか着ないのですよね。タスク、ぐっときそうな意見を頂きたく!」 「ん……空の色みたいな青、とか」 どうかな、と勧めるタスク。真剣に考え込む亘。割と静かな買い物風景ではあったが、二人はそれなりに楽しんでいる。今年の夏も一緒に遊びに行こうだとか、暑いからヤだよ、だとか。 そんな馬鹿話を交わしながらも、新たな約束が巡ってゆく。 ● お互いの水着を選ぶべく、糾華とリンシードはひとときの別行動を取る。 フロアを見回る糾華は、あの子に似合いそうな水着はどんなものだろうと思案顔。自分としては大人しめが良いし、本人もそちらが好きそうだ。 「うーん、水色か、白かしら」 そうして考え抜いた末、糾華は一着の水着を手に取った。 一方、フロアの別の場所ではリンシードも水着選びに気合いを入れていた。 「せっかくですから、お姉様の美しさを余す事無く発揮できる水着がいいですよね……!」 自分の事は優柔不断だが、彼女の為とあらば迷うよりも行動あるのみ。ぐるりと見回った後、リンシードは直感で良いと思った水着を抱えて、待ち合わせ場所へと向かった。 そして、合流した二人は――。 「どうでしょう、お姉様……。絶対、似合いますよ!」 リンシードが自信満々で渡したのは白フリルの付いた濃紫のビキニ。思わずきょとんとしてしまう糾華だったが、驚いたのはリンシードも同じだった。 「ビ、ビキニ……わ、私が?」 「白、ですか。余り、得意ではありませんが……」 ――けれど、これは“貴女”が”私”に選んでくれたもの。 大丈夫、きっと似合うはず。顔を上げた二人は同じことを思ったらしく、自然と微笑みを交わしあった。 水着をとっかえひっかえ、自分の身体の前に合わせる椿は、何処か真剣だ。 「なぁなぁ、この水着とかどう思う? 変やないかなぁ?」 「んー、俺はさっきの方がいいと思うな」 真面目に自分の意見を述べる耕太郎だったが、俺は詳しくは無いから参考にならないのだとも零す。 だが、少年が水着に詳しいかどうかは関係ない。大事なのは、自分以外の誰かから客観的に自分がどう見えているかということ。 「自分の姿言うんは自分ではわからんもんやから、素直な意見が参考になるんよ」 「なるほど。そういうものなのかっ!」 納得した様子を見せる少年は分かっているのかいないのか、とにかく感心している。 そんな建前もありつつ、実は椿は『可愛い』と耕太郎に言って貰いたいだけ。じゃあこれは、と新たな水着を手にとって示した瞬間、耕太郎の表情がぱっと輝く。 「あ、可愛い。それが良いな、それ!」 「これが耕太郎さんの好みなん? そうなんや……」 思いがけず言葉が聞けたことに椿は小さく微笑み、少しの幸せを感じていた。 自分に合った水着選びをするべく、エリスは水着を見て回る。 白やピンクを中心に、ワンピースやセパレーツ、ビキニの色々な物を物色しつつ、エリスは悩む。 「……決めました」 小一時間ほど悩んだ末、彼女は気に入ったふたつを選んで会計を済ませた。自分がどのくらい着る機会があるか分からないけれど、それでもいつか来る機会を楽しみにして――。 帰路に付くエリスは心なしか、嬉しげにも見えた。 リリィ曰く、ラルカーナでは水着という概念が無かったらしい。 だが、ボトムでそんな真似をさせるわけにはいかない。言い出した責任として、風斗は彼女に合う水着を買わせなくてはならぬという使命感に燃えていた。 「しかし、女性用水着だと……どうすれば……」 だが、いきなり思わぬところで戸惑う風斗。その間にリリィは男性用水着の方へ移動して「これが良いのかな?」と選びはじめていた。 「風斗はどんなのを着るの?」 「ローズ、そっちは男性用だから! 参考にもならんから!」 とりあえず女性用コーナーへ彼女を引っ張って行った風斗は、花柄やストライプなどの水着を示す。 あまり派手過ぎず、露出も過激ではないものを渡されたリリィは可愛いものに興味津々。ひとつお気に入りの物を選んだ彼女に満足し、風斗はついでに浮き輪やビーチボールを手に取る。 「プレゼントするよ。異世界で色々心細いこともあるだろう。せめて楽しんでほしいからな」 「風斗たちがいるから、ボクは寂しくないよ。ありがとう」 彼からの優しさを感じたリリィは、嬉しくなって微笑んだ。そして、ちょっと来て、と風斗を手招いた彼女は不意打ちの口付けを頬に落とした。 「……! ――ッ!?」 「嬉しい時はこうするんだって聞いたの。夏はいっぱい遊ぼうね」 風斗は反応すら返せないまま驚き、真っ赤になる。そんな彼を不思議そうな眼で見つめながらも、リリィはにっこりと笑って見せた。 ● 本日の用事はデート兼水着のお買い物。 女性用水着が並べられた一角を遠慮がちに見遣る三千は、心なしか恥ずかしそうだ。 「い、いっぱいありますね……」 「うーん……これも可愛いけど、黒は去年も着たのよね」 いくつも水着を見比べて腕を組み、考え込むミュゼーヌ。何処に視線を向けて良いか分からない三千は彼女の姿を瞳に映し、じっと見つめた。そのとき、彼女はふと問いかける。 「ね、三千さん。これとこれ、三千さんならどっちの私が見たい?」 黒と白。示された水着を交互に見遣り、三千は少しだけ考えた。ミュゼーヌさんがこの水着を着たらどんな姿になるのだろう。頑張って想像を巡らせてみた彼は、思いきって好きな方を指し示してみる。 「えっと、白かな。白い方を着たミュゼーヌさんが見たいですっ」 「……そう。それならこっちにするわ」 白水着を手に取ったミュゼーヌはにっこりと微笑む。自分の為に選んでくれたのだと思えば三千も何だか嬉しくなり、先程までの恥ずかしさも何処かへ行ってしまった。 「海やプールに行くのが、今からとっても楽しみですねっ」 「ええ。今年の夏は、これで貴方を誘惑してあげる……なんて、ね」 くすりと笑んだ彼女の表情が不思議と眩しくて、三千の頬がほんの少し淡く染まった。 周囲のスタイルの良い人と自分をつい見比べ、麻衣は大いに凹む。 「でも、いつものことでした」 すぐに気を取り直した彼女は早速、水着選びを始める。今年はセパレーツにしようかな、と色々と見比べて散々悩んだ結果、これぞと思った品を決める。自分にこれが似合うと良い、と麻衣は夏の楽しみを胸に抱き、気分良く帰路についた。 「ロザリーン! おれだー! 水着選びも浴衣選びも荷物持ちも支払いも任せろー!」 「お断りするわ」 開口一番、竜一の突撃めいた言葉はぴしゃりと打ち据えられた。しかし、彼はめげない。ジト目でこちらを見遣る少女の視線も気にせず、竜一は歩き出すロザリンドの後を追いかける。 「ロザリンが着るべき水着は情熱の赤!」 「まぁそれも悪くな……って何で付いてきてるのよ」 「うむ、チャーミング」 「まったく、貴方と居ると疲れるわ。でも、少し楽し……」 「次は浴衣、そしてサマードレスだね!」 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 二人だと云うのに喧々とした様子の竜一達は騒がしくも、それなりに楽しく店を巡る。 そんなとき、ロザリンドは快を見つけて手を振った。 「快、一緒に見て回らない?」 「やあ、ロザリンドさんはどんな水着を選んだの?」 自分の水着を選び終えていた快は手を振り返し、誘いを承諾する。赤い水着にしたの、と答えるロザリンドはこれから浴衣なども見に行く途中だった。 そこに耕太郎から荷物持ち代打として遣わされたディートリッヒが加わり、一行は更に賑やかになる。 ちょうど良い暇つぶしとしては良いと思って、と語る彼にロザリンドがくすくすと笑い、後でお礼はするから、と話が纏まった。 そうして、他愛ない会話を交わしながら快達は店内を見て回る。 「そういえばロザリンドさんは夏の福利厚生、今年が初めてだよね」 「ええ、春にここに来たばかりだから」 「南の島に皆で遊びに行くんだ。すっごく楽しいよ!」 笑顔で語る快の表情は明るく、巡り来る夏への思いを映し出している。 今年はどんな夏になるだろう。考えれば考えるほど、楽しみになってくるかのようだった。 新作の水着を買うため、真琴は冬から頑張ってきた。 そして今こそ、頑張りのご褒美ともなる水着を選ぶとき。ちょっとセクシーに黒のモノキニも良いし、白でシックにワンピースも悪くない。白のパレオとつば広帽子も加えればお嬢様っぽくなり、定番のビキニにフリルとリボンを合わせ、ライトグリーンで明るめに纏めてみるのも良い。 「色々と目移りしますが、どれも欲しくなっちゃいますね。ふふふ」 そうして、気に入った物を買い込んだ真琴は、これから始まってゆく夏に思いを馳せた。 ● ルヴィアの腕に抱きつき、櫻子は上機嫌に店内を見て回る。 並べられた商品はどれも魅惑的で、心躍るものばかり。ルヴィアはふと見つけたサマードレスを手に取り、櫻子へと手渡す。 「オレのセンスだから似合うかどうか解んないけど」 「さ、櫻子よりもルヴィちゃんのサマードレスを選んだほうが……」 「ほれほれ着てみろ」 本当は自分が彼女に服を勧めたかったのだが、気付けば櫻子の方が逆に着せ替え人形状態になっていた。とりあえず、勧められるがままに試着する櫻子だったが、流石に何着も勧められた時点で少しだけ頬を膨らませる。 「むー。ルヴィちゃんも一回位着てくださいですぅ~」 「オレに着ろって?」 意外だと云うように首を傾げたルヴィアだったが、櫻子のお勧めを聞いて袖を通してみる。着慣れないものに落ち付かず、ルヴィアは鏡の前でくるりと回ってみた。 「んんー、まあこんなもんかね」 「め、目のやり場にっ……で、でもルヴィちゃん綺麗ですの~」 櫻子は何故か真っ赤になって照れていたが、次に浮かんだ表情は紛れもなく楽しげな笑顔だった。 ローライズに超マイクロビキニ、果てはお色気爆発なスリングショット。 何処からこんなものを見つけて来たのだと突っ込まれるほど、際どい水着ばかりが目の前に並ぶ。 「あ、あの……茉莉。これは流石に恥ずかしいわっ」 頬を赤らめて首を振るロザリンドに、茉莉は何処か満足気だ。早々にモノキニ買うと決めていた茉莉は、実は少女で遊んでいるだけだったりする。 「だって、肌色分多めで恥らう姿が見られると思うと……」 「うう、絶対にからかわれてるんだわ」 ぽつりと零された少女の悲痛な呟きも虚しく、茉莉は水着を選ぶ手を止めない。 暫し後、すべてを陳列棚に戻していく恥ずかしげな少女の姿が見られたとか、見られなかったとか。 そういえば、もうすぐ水着コンテストだ。 一人でゆっくり買い物を楽しもうとしていたフランシスカはふと思い出し、コンテスト用の水着を買って行こうかと思案する。去年は浴衣だったから、今年は水着で決まり。 「うーん、どれがいいかなー」 あまり地味でもいけないし、目立つのも避けたい。でも、たまには冒険してみるのもいいかもしれない。 黒のフリル飾りが付いたビキニを手に取り、フランシスカは心を決めた。 「うん、そうね。これにしよう」 あと他にも何かを色々見て回ろう。周囲を見渡し、フランシスカは買い物を自由に楽しんでいった。 浮かない表情の雷音は、虎鐵の後を静かに付いて歩く。 楽しげな音楽が流れる中でも少女は楽しむ事など出来ない。大切な家族の一人がいなくなったことで、幸せだった世界が壊れて崩れ落ちた。 あれから笑顔を見せない雷音を心配し、虎鐵は気晴らしにと買い物に連れて来たのだが――。 「大丈夫なのだ」 顔を上げ、雷音は今にも泣き出しそうな感情を堪える。必死に撮り作ろうとしている彼女の心の裡を自然と理解してしまった虎鐵は、胸中で独り言ちた。 (……逆効果だったみたいでござるな) とても儚くて、少女まで壊れててしまいそうで。雷音、と名を呼んだ彼はそっと告げる。 「無理をする必要はないのでござる。家族でござろう? 拙者は素の雷音がみたいのでござる」 「大丈夫、なのだ」 今はただ、それだけを答える事しか出来なかった。 こんなに夏の到来がうたわれているのに、“彼女”に夏は来ない。悲しくて悲しくて、癒してやろうと思っても簡単に解決するような心境ではない。無理矢理に笑おうとする雷音を見つめ、虎鐵は心に決める。 自分はこの子を確りと見守ってやろう、と。 夏といえば海。海といえば水着。 ということで店に訪れてみたものの、素敵な水着がたくさんで目移りしてしまうほど。可愛いタイプ、セクシーなタイプ。どっちが良いだろうと悩む真独楽の傍、ユーヌも売り場を眺める。 「見て、これなんかスレンダーなユーヌに似合いそうっ♪」 そう言って渡されたのは背中が大きく開いた綺麗ながらも可愛さを兼ね備えた水着だ。 「大胆なのは少々恥ずかしいが、悪くはないか」 受け取ったユーヌがまんざらでもないのを良いことに、真独楽は店内からあれこれと品物を持ってくる。 「ユーヌは色白だし、濃い色とか絶対似合うよね。でもこっちの色も――大胆にビキニとか、このサンダルを合わせてもイイんじゃない?」 はしゃぐ真独楽に対し、ユーヌも相手に似合う物をひとつずつ手に取ってみた。 「ああ、真独楽にはロングパレオ合わせるのも良い。鮮やかな色合いも似合いそうだ」 ユーヌがひとつ選ぶ間に、真独楽に十を選ぶ勢いだ。そうして時間は過ぎてゆき、気付けば欲しいものや気になる物ばかりが集まってしまう。 「やぁん、迷っちゃう!」 「やれやれ、候補が増えて絞りきれないな」 抱く感想は二人とも同じ。 結局、選びきれなかった彼女達は次もまたこの店に来ようと約束する。 お茶をしながら作戦会議だと話す二人は楽しげで、その笑みはとても明るい。何も焦ることはない。 夏はまだまだ序盤。楽しい時間は、これから始まってゆくのだから――。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|