●ビーチバレーやろうよ 『ビーチバレーやろうよ!』 貴方のAFに届いた一通の依頼メール。 添付画像は、バレーボールを抱きかかえて海辺の書割を背にシャイニースマイルを浮かべる水着の『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)のブロマイドであった。 「お届けものでーす!」 宅配業者から受け取った小包みを開封する。 ――が、ルールブックだけで水着は流石に入ってなかった。 『今回の依頼は、超次元ビーチバレエボールですよ』 メール本文を読んだ貴方は、絶句した。 使いまわしじゃね? と。 ●審判の気まぐれ 青い海、白い雲、美しき砂浜、眩き太陽。 まさしく夏のビーチに他ならない。あるいは戦場だ。 リベリスタとフィクサード。対峙する二つの陣営は殺気立ってお互いを牽制する。 「先手必勝!」 「泥棒ネコなーう」 「……先に見つけたの、こっち」 青猫アオン、藍猫アイン、紫猫シエン。猫ビスハ三姉妹はフィクサード集団『烏賊墨会』の端っこで野次を飛ばしている。なぜ端っこかといえば、下っ端の雇われ助っ人だからだ。 両陣営の対立の元凶は、破界器だ。 今まさに出現した破界器『渚の宝箱』は文字通り、宝箱の破界器だ。亜空間にアレコレ格納できる代物であり、お宝――いわゆる金銀財宝がその中に眠っている。 単なる金銭では夢がない、と言えどもフィクサード組織に多大な活動資金を与えてしまうことは巡り巡って災いに転じる。一時の享楽に浪費してくれるのならば経済活性化に貢献できようが、武器調達や新たなフィクサードの雇用、育成にまわして更なる稼ぎを目論むのが条理だ。 現在、優勢なのは八名と多勢なフィクサード側だ。 一方、アークの派遣した戦力は「簡単な調査・回収任務」という前提で四名のみ、事前情報なし。 しかも『渚の宝箱』発見も後手にまわってしまい、戦力どころか正当性でも勝ち目がない。 「くっ、このままみすみす財宝をくれてやるわけには……!」 「だったらどうする? 勝負するか?」 「の、望むところだ!」 無謀な啖呵を切り、戦いを挑もうとしたその時だ。 「合意とみてよろしいですね?」 ぎらりと輝く、真夏の太陽。 いや、何かが超絶スピードで地表に落下してくる。多大な衝撃が、砂浜に大穴をつくりあげた。 「ひとーつ、贔屓は絶対にせず」 砂の雨が降り注ぐ中、 「ふたーつ、不正は見逃さず」 人影は仁王立ちする。 「三つ、見事にジャッジする! さすらいの審判アザーバイド! レフェ・リー参上!」 白黒レフェリー着の女は、トンボの薄羽根に胡散臭いドミノマスクを着けて名乗りをあげる。 茫然一同。 その隙に、シュビビンッと宝箱を奪取する。 「この破界器『渚の宝箱』は審判を務めるわたくし、レフェ・リーが預かります!」 「はぁ!?」 「……従う理由、ない」 紫猫シエンが迫る。ゴシックロリータ調の装いに鎖鉄球、破壊力と堅牢さ、それなりの素早さを兼ね揃えるシエンは華奢なダウナー少女という外見と裏腹になかなか手強い。 そして何より、決断が早い。 姉二人と他のフィクサードがすぐさま追随して退路を塞ぎ、レフェ・リーの逃げ場を無くす。 重厚な鉄球が、紫の光輝を伴って激烈に目標を粉砕せんとする。 しかしだ。 レフェ・リーは微動だにせず、ただ、宝箱を盾として掲げているだけで健在であった。 不可思議な力場が、鎖鉄球ごと紫猫シエンを空中で静止させていた。 「動け……な、い」 「これが破界器の意志でございますです。元々、この宝箱は相応しい者にしか開けられず、傷つけることもできないのです。力づくではどうにもなりませんです」 さすらいの審判を名乗るだけのことはある。 束縛が解け、地に伏した紫猫シエンはようやくレフェ・リー自体がそもそもかなり厄介な相手だということを悟る。もし抹殺したければ、然るべき作戦や対策を練る必要がありそうだ。 実力で場を仕切りはじめたレフェ・リーは高らかに宣言する。 「私は今ここに渚の宝箱を賭けた“超次元ビーチバレー大会”開催を宣言いたします!」 沈黙一拍。 「な、なんだってーーーーー-!?」 ●超次元ビーチバレエ 作戦指令本部、第三会議室。 貴方たちは和泉の依頼に召集されてこの場に居る。今回は例の悪狐の姿はなし。 「リベリスタさんビーチバレーですよ、バレー」 「あの駄フォックスは?」 「犬にシャワー浴びせると貧相になりますよね」 「……あー」 説明が説明になっていないけれど、何となく理解できなくもないイメージ図であった。 南国の書き割りを背景に、和泉は楽しげに解説する。 「今回は、前回の超次元バレエとは異なって2人1組で計4チームまでコンビを組んでいただき、ビーチバレー大会でのトーナメント優勝を目指していただきます。 出場者は皆さんの他、フィクサード側より4チームが参加するそうです」 「ん、トーナメント制ってことは」 「はい。形式上、こちら側もあちら側も仲間同士の戦いになる場面が発生するようです」 「その時は真剣勝負をやらざるをえない、と」 「そうなりますね」 と、ここで注意事項をひとつ。 「審判アザーバイドの要請により、当依頼では、ビーチバレーに相応しい服装が義務づけられています。それっぽい服装を各自ご用意していただいた上でご参加ください。 またサポート要員を別途、派遣します」 「それはまさか、試合後に敵が『渚の宝箱』を奪いにきた際の伏兵に?」 きらりと輝く眼鏡。 和泉の不敵な表情に、息を呑む。 「――海の家を、経営するためです」 自由だ。しかし、確かにそれが無くちゃーはじまらない。 夏、到来。 ●鷲のマークは関係ない 三墨会は存亡の瀬戸際にあった。 極道系フィクサード集団の下位組織である三墨会は、地域に根ざして悪事を働く。 であるからして、地元地域とは運命共同体である。 もしエリューションが現れて地元の商店街を滅茶苦茶にすれば、その恩恵に与っていた黒船会にまで不利益が生じる。こんな時、黒船会はエリューション退治に乗り出さざるをえなくなる。 『金をよこす代わりに怪物から守ってやる』 利害は一致する。 私利私欲のために働くことが必ずしも他者を不幸にするとは限らない。清い関係ではなくとも、一種の共生関係といえるだろう。現に、ナイトメア・ダウンを境として極東の空白地帯と呼ばれるまでに日本のリベリスタの勢力は低下している以上、こうした形でのフィクサード組織の台頭も必要悪であった節がある。 しかし今やアークの活躍に楽団襲来と、七派に属さぬ三墨会はその存在意義を問い質されていた。 急速に存在感を失いつつあることは、次第に赤く染まってゆく帳簿が示している。 『勝たねば』 三墨会の組長、三墨は焦っていた。 この戦い、負ければ大きく威厳を喪失しかねない。二束三文とラーメン三杯で雇い入れたチョロサードの三姉妹だけでは、不慣れなバレー勝負に確実な勝機をもたらすことができるだろうか。 否だ。 だからこそ、上位組織に頼んだのだ。 最強の用心棒を――。 あははは。 うふふふふふ。 砂浜を追いかけっこする美男美女のカップルふたり。 少女漫画の主要人望と見紛うような、あるいはハリウッド映画の名優のような顔立ちである。きらきらと漣は光を反射して輝いてみえる。 「ああ、インドメタシン。待っておくれよ」 「ここまでおいで、タウリン」 相思相愛の恋人たちは浜辺でキャッキャウフフと追いかけっこする。 ただし、鋼鉄製のタイヤを2ダース腰に結びつけて。 「インドメタシン、キミの腹筋は天の川より素敵だ」 「タウリン、貴方の上腕二等筋は大熊座だって絞め殺せるわ」 筋肉イジメ隊――。 最強にキレてる筋肉カッポー様のおでましだ。 ●敵チーム資料 以下は出場する敵チームについての資料である。参考にされたし。 ・【残飯アイオーン】チーム ・青猫アオン、藍猫アイン 双子。ビーストハーフ×プロアデプト。単体それなり、連携すれば本来の実力以上に強い。 スタイルがよくて黙っていれば美人、喋ると残念な外国人。愛嬌はあるが食人経験アリ。 「革醒者は人外の怪物」を持論としている。ノーフェイス革醒した妹の紫猫シエンを守るために革醒、我が子を葬ろうとした父親を食い殺した過去がある。――のわりに、目的もなく残飯漁りレベルの野良猫暮らしを送っている野良フィクサード三姉妹。道場修業で強くなった。 敵チームでは二強の一角。素早さが高く、双子ならではの連携プレーが手強い。 ・【廃退エリート】チーム ・紫猫シエン、エリート黒服 紫猫はビーストハーフ×デュランダル。エリート黒服はメタルフレーム×インヤンマスター。 紫猫シエンはアオン、アインの溺愛する妹である。勘と要領がよい。ゴスロリ系。 エリート黒服は昔バレー部に所属していた為、黒服Cではなくエリート表記。むしろネームドの筈のシエンより強い。特技は切り払い。 個人単位では強いが即席チームのため連携ガタガタである。 ・【筋肉イジメ隊】チーム ・タウリン、インドメタシン 筋肉カップル。超美形の男女。ただし首から下は「ソレCG?」と問いたくなるマッチョ。 筋肉を魅せつけるために戦い、更なる筋肉増強のために崩界を望む。報酬ではなく筋肉を見せびらかすために出場する。一目瞭然フィジカル全振り。 ジーニアス×デュランダル。ただし当人曰く「ジョブはボディビルダー」。 敵チームでは二強の一角。無駄に高すぎる物理攻撃力ですべてを蹂躙する。 ・【黒服サングラス】チーム ・黒服A、B やられ役。実力は並み程度。上司に無理やり出場させられた。しかし強面にサングラスの男達にビーチバレーの経験などあるわけもなく、能力を発揮できぬまま99%負ける運命にある。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:カモメのジョナサン | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月19日(金)22:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●海の家 海の家「箱舟屋」。 「人手……足りない」 エリス・トワイニング(BNE002382)は絶望の海辺でひとり孤独を知る。 「注文、焼きと……」 「はい、お待ちどー」 特製カレーダレが無駄にスパイシーな一品に、エリスは絶句した。 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)に厨房を任せたら大半がカレー味に。 そも寡黙で片言なエリスに声出しの大事な接客は向かない。メイド服は飾りです。 「カキ…」 「オイスターカレーのお客さまー」 「…氷」 氷をシャリシャリ削って皿に盛ると、春津見は熱々のカレーを――。 「…ダメ、絶対ダメ」 袖を掴み、震える声で懇願するエリス。 「…接客、やる、今すぐ」 海の家「三墨屋」の繁盛をよそに、早くも箱舟屋は崩壊寸前であった。 どうなる、箱舟屋! ●第一試合 「ぬわああああああああ!!」 『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)の野太く雄々しき大絶叫に会場は騒然とした。 黒服A、Bは尻餅をついて抜銃する。 「な、な、何だ一体!」 筋骨隆々ザ覇王といった威風の刃紅郎は憤怒に激震、王気を爆発させる。 「ぬぅぅぅぅんっ!」 ビカッ。 真っ赤に滾る瞳が激烈に明滅、威風ビームが地平線の彼方まで海を真っ二つに切り裂いてモーゼの奇跡を再現した。 「マントを踏んだヌァ!」 「は? いやソレはあんたが急に」 靴跡に汚れた外套が覇王の怒風に棚引く。 「これは逃れられぬ破滅の『運命』よ! 骨肉一片、塵芥すらもこの世に残しはせぬゾォオ!」 それは強制的に対戦カードを組むための、刃紅郎の迫真の演技だ。 閻魔大王もたじろぎかねぬ激昂ぶりを誰もが固唾を呑んで見守る中、審判はさらっと告げる。 「あ、第一試合の選手は遊んでないで早くコートに集まってください」 ――結果オーライ! やったね! 【渚の超次元暗黒覇王美威血刃麗暴流2013】 vs 【黒服サングラス】 両チームは観客の見守る中、コートを挟んで対峙する。 「ふん……無頼の王と百獣の王が組んだオレ達に挑むとは、お前等運が無かったな」 『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)は威圧感や体格こそ刃紅郎より控えめながらも、年若き無頼王の恐ろしさは同じ無頼の徒たる黒服A、Bには十分に伝わってくる。 「往くぞ禍原! 民草の遊戯など規則書を読めば十分だ」 試合開始。 早々、福松の一打が相手コートの白砂を爆ぜ飛ばした。 普通に打ち込み、普通に決まってしまった。黒服AとBがとっさに動けなかったのは仁王立ちする刃紅郎の全力威風に気圧されていたからだ。が、これではつまらない。 「なんだ、三墨会の連中は皆カカシか」 次のサーブを福松は叩き込む。しかし今度はレシーブからトス、スパイクと黒服ABも返す。 「手前等っ、うちの仲間までバカにすんじゃねーよ!」 刃紅郎は仁王立ちしたままブロックに動かず、失点をあえて見過ごす。 「ほう……雑種犬がよく吠える。褒美に今暫く、我は猶予を与えてやる」 ルールブックを手に。 「この書を読み終えた時、我は直々に手を下そう。今の貴様らなど禍原一人で十分だ」 「ああ、その通……え」 「ふざけやがって! 二対一でも構わねえ! 全力で潰すぞ!」 「応っ!」 黒服チームの猛攻撃がはじまる。 稚拙だが執念深くボールを拾い、怒りを膂力に変えて無頼の拳をスパイクとする。 が、一人でも福松は強い。失点を奪われつつも得点をひとりで奪い返してギリギリの接戦となる。 『ゴクドウスパイク』 必殺技を叫ぶと共に、テロップが劇的に画面上に打ち出される。これぞ超次元だ。 天高く跳躍、真夏の太陽を背負って激烈な極道拳をボールに抉り込む。その刹那、背景には謎の禍々しき化身が現れ出でて隕石めいた拳を振り下ろした。 敵コートでは、なぜか黒服たちのすぐそばで恐竜たちが草を食み肉を喰らい支配種として太古の地球を我が物顔で闊歩している。そこへ突如として襲来する、メテオインパクト。天地崩滅の一撃によって恐竜が絶滅、コートに巨大なクレーターが生じた。 「どうだっ」 「流石は我の相棒、じつに超次元しているな」 「いやいやいや! バレーで絶滅させんな恐竜を!」 「どこから湧いたんだ恐竜……」 黒服ABも必死で食い下がり、20対20の五分へ。この大会では1セット決着、25点制につきあと5点を先に得たチームの勝利となる。 ここに至り、刃紅郎は規則書を放り投げて参戦する。 「八割は読了したぞ。雑草どもよ、ここまでよく健闘した。褒美に敗北をくれてやる」 超次元メガクラッシュが無頼弾を豪快に弾き返し、得点する。 「ゴルゴンの眼!」 「ハードブレイク!」 24対20。成す術なく蹂躙される黒服たちは、しかし負けじと立ち上がる。自然と、その熱き雑草魂に観客は黒服をより応援していた。 が、覇王は我が道を往く。 「終いだ。全てを原初の渦に還せ、超次元! 戦鬼烈風スマッシュ!」 激しき凄まじき烈風の一打が超高速ドリルと化して一直線にネットごとコートを破壊、粉砕した。 「ふっははははは!」 ピーッ。 「ネット壊したらダメ、反則負け」 沈黙の渚。 「ぐああしまったぁーっ!」 ちらっ。 「くっ、我らが早々に反則負けで敗退するとはな」 ちらっ。 「だが美事……文句の付けようもない程の完敗だ!」 ちらっ。 しきりに茫然とする黒服A、Bの表情を確かめて、刃紅郎は大げさに演技する。 「くそっ!何故だ!」 福松も屈辱を演じる。白亜期から時は移ろい氷河期到来、大雪原でマンモスに鼻先で肩ポンされながら犠牲になった恐竜の化石を握り締め、福松は吠える。 「このオレ達があんな奴等に! ありえん!」 大歓声。今ようやく黒服ABは勝利を実感する。 「勝った、のか」 「あ、ああ」 滅びゆく魔王は黒衣の勇者たちに問う。 「名乗れ、我らを破りし勇者よ。今や貴様等は黒服A、Bではない。もはや生半可な敗北は許されぬ。真名と誇りを以って、この争いに終止符を打つのだ! がはっ」 血糊を吐いた。 のではなく、長い寸劇に飽きたエリスの稲妻あほ毛に刺されて吐血したのだ。 「手伝い……早く」 刃紅郎はずるずると砂上をエリスに引きずられて退場する。 ●第二試合 【パツキンボインたゆんたゆん】 vs 【残飯アイオーン】 暑苦しい熱戦から一転、ようやく水着回の面目躍如という華やかなでセクシーな対決だ。 『興味本位系アウトドア派フュリエ』リンディル・ルイネール(BNE004531)と『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)の肢体が大胆に躍動するたびに歓声があがる。 相手チームの青猫アオンと藍猫アインの双子も優美で艶やか。 夏の日差しに照らされた素肌、女らしい豊な輪郭に垣間見えるしなやかな筋肉、煌く汗はダイアモンド、たゆむ胸元は太陽よりも眩しかった。 瞑が真横に跳ぶ。 「かわいい敵は萌えるけど、手強い敵はより燃えるのよ」 レシーブで拾い、トスを貰って即座にD.Actソニックスパイクへ繋ぐ。 鋭利な一打が得点を奪う。 「速っ」 「イェイ! これでも昔はバスケ部、運動神経抜群のハイブリッドニートなのよ」 瞑はあらかじめ幕間に砂浜を走り込み、一分一秒を争うつもりでコートの感覚を掴んでいた。砂を足裏で掴み、蹴る。速さにこだわる瞑ならではの着眼点は功を奏した。トップギアに達した身体は流星のように素早くボールに喰らいつける。 「ヤバイなにあれ、ぬるぬる動く」 「加速装置なう」 当然、瞑の水着は絶対ズレないに定評のある競技用だ。色彩は黒地に白縁。セパレートのビキニ系で胸上部と腹部は大胆にカットされている上、密着感が強い。惜しげもなく肉体美を披露するビジュアル性と砂が入らず動きを制限しない機能性が両立されており清々しくも美しい。 瞑、本気です。 しかしフル稼働できれば疾風迅雷の瞑は持久力に欠ける短所もあって、強力なソニックエッジ派生技も乱用はできない。 「ここはスタミナ抜群! リンディルお姉さんにおまかせ!」 リンディルは白兎の如くブロックをつづけ、ゆるい紐パン紐ブラが躍動感を醸し出す。 「ウッド・ブロック」 樹木のように固く、しなやかな体裁きで普通にブロック。が、貫通される。 「ボイン・ブロック」 樹木に実るたわわな果実のような双丘を弾ませて普通にブロック。やっぱり貫通される。 失点連発、瞑の稼いだリードが徐々に縮まる。 「あれ?」 「持久力あっても元々防御が低いし普通に打ってちゃ意味にゃーし」 「必殺なう!」 藍猫アインの宣言に身構える二人。 「超……」 「ダブルブロック!」 「猫騙し!」 パンッ、とアインの猫騙しが不意をつく。青猫アオンが連携、時間差で弓なりに頭上を越える軌道を狙った。 「キャットポーキーぱくられた!」 「なんの!」 瞑のD.Act。自在に身動きできない空中で唯一足場になりえるリンディルを踏み台にして三角跳び、側転宙返りから無理やりレシーブを滑り込ませ、さらに連撃で音速スパイクを叩き込み、敵コートを抉るという神業が炸裂した。 が、ここで瞑のスタミナが限界に達した。22対18、あと3点さえ稼げれば。 「ここはお姉さんの必殺技で決めるっきゃない!」 突如として背景に暗雲が立ち込め、稲光と雷鳴が轟く。 「変幻自在! ライトニング・サーブ!」 回転しつつ落雷を受け止め、あざとく横ピースをピカリンッ☆と決めて稲妻サーブを疾走させる。 予測不可能な稲妻軌道が23点目を稼ぐ。 が、ここで双猫は反転攻勢に。 「弱点めっけ!」 アオンの正確無比な一球がまさに決定打となった。何せ、リンディルの紐パン紐ブラをものの見事に断ち切っていた。 神は言っている、ポロリをする定めであると。 「……あ」 「見せられないよ!」 轟く観客席。ずざざと超絶スピードで瞑は滑りこみ、全力ブロックに徹した。 真っ赤に茹だる乙女の恥じらい。 「きゅー」 叫び声さえあげられず、熱暴走を起こしたリンディルは混乱の果てに目を渦巻かせてダウンした。 第二試合、結局スタミナ切れと大混乱でたゆんチームは惨敗した。 「元気だしなって」 「ごめんね、津布理さん」 海の家を手伝う二人。休憩時間、リンディルは疲れきった瞑の肩を揉み解してあげる。 「いいよ、水着回に……ぽろりという犠牲は宿命だもの」 夏の入道雲を眺める。白雲が、あの赤裸々な乙女の恥じらいと重なってみえた。 ●第三試合 【メビウスの赤い糸】 vs 【廃退エリート】 「うわああエリート兵だあああ!」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は絶叫する。 エリート黒服のドス黒い威圧感。 「いかん、ヤツは何でも切り払うぞ! ぱ、パワーが違い過ぎる…」 にやり。口許が三日月に吊りあがる。獲物を定めた狼犬の狩りに抜かりなし。 試合開始。 「……しつこい」 紫猫シエンのメガクラ弾が迫る。 「今回は別件、ベルカさんと一緒に優勝を目指すことが私の目的です。だから――」 『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)は残像が生じるほどのスピードで素早く、そして高い演算力と精密な動作でレシーブを成功させ、ベルカのトスを貰って最善の一手を冷静に判断する。 「熱血必中……ピンポイントシュート!」 ソレは因縁の紫猫シエンではなく、エリート黒服の守備範囲を狙い済ましていた。 「踏み込みが足りんっ!」 エリート黒服は切り払いレシーブで鮮やかに拾い、シエンにトスを期待するが紫猫シエンは強引にスパイクを打ち込み、甘い攻めとなる。 「バイカル・ブースター!」 身長180cm越え、かつ強靭なベルカの鉄壁ブロックが遮る。 背景では、赤い軍歌をBGMにロープでシベリア犬を縛りつけたロケットが砕け散る薄氷と噴煙の瀑布より宇宙へと飛び立ってゆく。 失点した黒猫シエンは目を白黒させ、ベルカの迫力に戸惑う。 「なに、これ」 「貴様らには分かるまい! 我ら【パブロフの家】で暮らした姉妹の命名は、祖国の輝かしい宇宙開発に殉じた忠犬達の名を冠している」 国旗を掲げるように高らかとボールを掲げ、サーブ体制へ。 「我が名はベルカ! 先行者の犠牲を礎に、燃え尽きる事無く地球へ帰り着いた犬の名だ! ゆえに姉様達の遺志は、今もこの胸で輝き導く一等星なのだ!」 アタッカーのシエンは再び強烈な重い一打を見舞い、突破を試みるが。 「よってこのブロックは鉄壁である! うおお、ウラーッ!!」 高い。圧倒的に高く、固い。その強度は鋼に等しかった。 試合は優勢に進む。 「ピンポイントシュート!」 佐里の的確な判断は、ベルカの戦闘指揮でより的確に働く。 「アウトレンジ・ゼロ! ビーム属性は切り払えまい!」 絶対零度の殺意がハイでメガなビームキャノンと化して虚脱、無力、崩壊で弱ったエリート黒服を幾度となく消し飛ばす。 「やってやる、やってやるぞーっ!」 グラサンの兵士が轟き叫ぶ巨大な化身を背負って、ベルカは一方的に殲滅戦を展開した。 連携力の差が大きな実力差となり試合は25対9の圧勝に終わった。 「ここまでか! 脱出だ!」 「……解せぬ」 エリート兵と紫猫シエンは諸共に爆発炎上、キラッと星になった。 ●第四試合 【燃え尽きるほどクール】 vs 【筋肉イジメ隊】 戦況は互角のまま佳境へ、激闘によって双方とも傷だらけであった。 「芸能プロ対抗戦の不戦敗、借りは返せそうね」 『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)は白のビキニに際どい破れ方をしてしまっており、並大抵の男子にとっては目に毒な妖艶さであった。 滴る汗、荒い吐息、傷だらけの肌と衣、そして何より声優『黄昏サイネ』として培った声色が自然とエロティシズムを醸し出すのだ。 「くっ」 筋肉イケメンのタウリンとて、例え筋肉隆々でなくても集中力を奪われる。超直感が、めざとく彩音にソレを告げた。それを薄々と感じる彼女インドメタシンもまた試合に集中できない。 「僕は今、清々しい気分です……」 『Average』阿倍・零児(BNE003332)は強力なフィジカル無双に体力を大きく削られつつも、誰より冷静にこのゲームを支配していた。 「世の中はバランスが大事なんです。平坦こそ正義」 彩音のボンキュッボン!(古典表現)に一切心を乱さず、零児は、海の遥かな地平線を見つめる。 「フィジカル偏向は、その顔と筋肉のアンバランスは断固として許しません!」 ヘッドショットキル。 タウリンのイケメン顔にボールを直撃させ、轟沈させる。 「顔は! 顔はヤメロォ! ノーッ!」 「タウリンーーッ!」 試合終了。25対21、精神の強さが命運を分けた。 彩音と零児はハイタッチをかわして勝利を祝した。 ●準決勝 準決勝 第一試合【黒服エリート】vs【残飯アイオーン】は黒服が僅差で勝利を遂げた。 刃紅郎と福松の熱烈な応援だけでなく、海の家が役立った。 「お魚カレー要らんかねー」 と春津見がカレーを売ってたら、戦い疲れて空腹のアオンとアインが匂いに釣られてやってきた。 「タダで食べ放題」 「マジでっ!?」 とあっさり罠に引っかかり、山ほどカレーを平らげて食べ過ぎて自慢の機動力を失っていたのだ。 この双子、チョロネコである。 準決勝 第二試合 【メビウスの赤い糸】 vs 【燃え尽きるほどクール】 双方とも真剣勝負と意気込み、佐里とベルカ、零児と彩音はお互いに一歩も譲らぬ試合運びだ。 「どちらかが棄権して体力を温存、次に進む。それが正しいとして――」 「燃え尽きるくらい頑張っちゃいます!」 零児はハイバランサーで砂浜を縦横無尽に駆けまわり、狂いなき回転レシーブを決める。 「秘技! 視聴率ゲットハプニングサーブ!」 「ポロリしたらどうするんですかぁ!」 彩音に反撃とばかり佐里はブレイクシュートを浴びせ、彩音の思考加速を阻む。終わりなき彩音のポロリアタックから佐里を守ろうと、ベルカは顔面レシーブを決行した。 「うぉ!? まだまだ勝負はこれからよ!」 ベルカ跳躍、サングラス兵士の化身を背負って零児を狙う。 「アウト“レイジ”・ゼロ!」 「テ、テラーテロール!」 零児もまな板の女神(化身です)を呼び起こして、絶壁のシールドを展開した。 絶対零度と凶悪恐慌、二つの眼光が熾烈に激突、火花を散らす――。 「勝者、メビウスの赤い糸!」 大歓声。 されとて、死力を尽くした四名は灰に散る。 「燃えた」 「燃え尽きましたね」 「ええ」 「真っ白にな……」 ●決勝戦 【黒服サングラス】 vs 【メビウスの赤い糸】 死力を使い果たしたベルカと佐里は満身創痍の中、気力で挑もうとする。 「あとは黒服だけ、です、よね」 が。 黒服A、Bは佇まいや声、顔つきまで別人のようにエリート化していた。 「うわわあぁぁぁっ! エリート兵だぁぁぁっ!」 絶叫のベルカ、凍りつく佐里。 その背後では刃紅郎と福松が学ラン着て応援団長してる。 「絶対に負けるなよ、手前等!」 「応!」 「この優勝、降魔と禍原の兄貴に捧げるぜ!」 激励を受けて気力150%、体力は万全、覇王譲りの威圧感でエリート黒服A、Bは熱血する。 「立て…そして栄光を掴め! 一撃に全てを賭けろ!」 決勝戦――開始! 結果。 海の家はエリスの重労働で事なきを得て、優勝した黒服チームは渚の宝箱を手土産にアークへ。 かくて三墨会は解散、消滅す。 善哉、善哉。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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