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天の涙に包まれて

●梅雨の頃、柔らかな雨

 雨が降る。
 静かに、時には音をたて。
 静々と、ザアザアと、雨がふる。
 天より降りて、石畳を打って……砂利の下へと流れて沈む。
 紫陽花を、葉を、揺らして跳ねる。

 大地のすべてを潤すように。
 すべてを包み込むかのように。
 誰かの代わりに泣くように。

 どこかあたたかい雨が、紫陽花の園を濡らし続ける。


●紫陽花の苑
「あじさいを見に行きませんか?」
 そう言って、マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は写真付きのパンフレットを皆に見せた。
 一年の間で、この時期だけ賑わう庭園がある。
「紫陽花が沢山あって、すごく見事なんですよ」
 普段は閑散として誰も訪れない様なその庭園は、梅雨に入った事で紫陽花が咲き誇っているのだそうだ。
 その紫陽花に囲まれるようにして建つ東屋では、お茶や御茶菓子を楽しむ事もできる。
「数日は雨が続くみたいですが、折角ですしその方が雰囲気が合っていると思います」
 紫陽花に満たされた散策路を、傘を手に歩くのも良いだろう。

 そして……
 紫陽花がたくさん咲き、賑わっている庭園の、ずっと奥には……別世界のように思える一画がある。
 幾つかの紫陽花が道脇に、散策路の先の小庭にひっそりと咲く……そんな場所。
「寂しいくらいに静かですけど……何か落ち着けて、気が楽になる場所です」
 雨音に混じって微かに聞こえてくるのは、鳥たちのさえずりくらいだろうか?
 考え事などをしたり、静かな時を楽しみたいという人には良い処かもしれない。
「良かったら、いっしょに如何ですか?」
 マルガレーテはそう言って、皆を見回し微笑んだ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年07月05日(金)22:46
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。

オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は雨の日に紫陽花を見たり物思いに耽ったり、東屋で御茶や御茶菓子を味わったりして過ごしませんかというお誘いになります。
場所や雰囲気等が気になる方は、宜しければ自分のシナリオ『でんでんむしむし』や『ちまたにあめの、ふるごとく』を御参照下さい。


●紫陽花園
天気は一日中、雨。
広い敷地内にたくさんの紫陽花が植えられた庭園です。
入口付近には売店等のお店が幾つかあり、しばらく歩いた庭園の中、離れた場所に東屋が立っています。
道は石畳になっていますが、入口や東屋、散策路の本道から離れると、舗装し切れなかったのか地面がむきだしになっており、所々に水たまりが出来ています。
東屋では緑茶と御茶菓子等を楽しむことができます。
水羊羹や水饅頭ほか、夏の祓いとして日限定で水無月(外郎生地の上に小豆をのせたみたいな感じの和菓子です)なども。

●紫陽花園の奥
紫陽花園の中で人の少ない、ほとんどいない散策路。
下は砂利が敷かれ道の中央に平たい大石が続いている造り。
幾つもの道は所々にある小庭のような場で繋がっており、紫陽花は道脇や小庭に咲いています。
所々に木製のベンチやテーブルがあり、雨に打たれています。
全体的に落ち着いた雰囲気の造りになっており、考え事をしたり静かな話をするのに向いています。


●備考
・多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCに話しかける場合、ID等は必要ありません。

マルガレーテ、ヤミィ、シロは一緒に傘をさして(かっぱを来て)紫陽花を眺めながら公園内を散歩しています。
トニオは雨を眺めながら物思いに耽っているようです。
他、三高平市に住んでいるアーク協力者の一般の人とかも、のんびり散策しています。
御希望の方はそういった参加者と絡む描写をさせて頂きます。
特に何事もなければ、風景を楽しんでいる人たちがいるという背景描写以外では登場しません。


それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 
参加NPC
トニオ・ロッソ (nBNE000267)


■メイン参加者 13人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)

焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ナイトクリーク
椎名 影時(BNE003088)
プロアデプト
椎名 真昼(BNE004591)
   


●紫陽花の散歩道
 雨は好きだ。
 空が落とす涙は地上に恵みを与え、海からもう一度……雨となって帰ってくる。
 優しいサイクル。
「そのサイクルを目にできることは、小さな幸せなのだろうと思う」
 雷音は、空を見上げた。
「らいよんちゃんは雨が好きなのですねぇ」
 傍らのそあらはそう言ってから、表情をちょっと……へにゃっとさせる。
「あたしはちょっと苦手なのです」
 だってみてください。
 そあらはそう言って、自分の耳などを雷音の前に差し出して見せた。
「毛並みが湿気でぱさぱさしてぼわーっとなるのです」
 (´・ω・`)
 言いながら、そんな表情をして見せる。
「でも雨がないと豊かな緑が保てないのです」
 大事なことなのです。
 不満ぽく言った後で、そあらはそうも付け加えた。
 苦手、とは言ったけれど。
 嫌い、という訳ではない。
 おそろいの傘で一緒に歩く紫陽花園は、雨の日の散歩は、楽しいものだ。
 雷音と、そあらと。マルガレーテと、ヤミィと。
 4つの傘が、石畳の上をゆく。
「小鳥たちもあまやどりをしてるのだろうか?」
 雨音に交じって聞こえてくる鳴き声に、雷音が小首を傾げる。
「小鳥さんも葉っぱの傘で楽しくおしゃべりしてるのですよ」
 あたしたちみたいですねぇ。
 そう言って、そあらは微笑んだ。
「みんな仲良しなのです」
 自分の中の何かが綻ぶような、そんな心地を味わいながら。
 雷音は、想う。
 大切な友人と同じモノを見ているという幸せ。
(紫陽花は綺麗で、青からピンクへのグラデーションが素敵だ)
「紫陽花は土が酸性かアルカリ性かで色がかわるのだ」
「あ、なにか聞いたことありますよ!」
 目に留まる紫陽花のことを言葉にすれば、ヤミィが興味津々という感じで同じ紫陽花へと瞳を向けた。
「日本の土壌は酸性が多いから青い紫陽花が多いのだぞ」
 大好きな花の話になると饒舌になる自分がいる。
「逆にヨーロッパではピンクが多いのだ……ほんとだぞ?」
 我に返ると、ちょっとだけ恥ずかしかったりもするけれど。
「らいよんちゃんは物知りなのです。紫陽花って理科の実験のアレみたいなのです。えっと……なんでしたっけ?」
 とにかく青いのもピンクなのも可愛くて素敵なのです。
 そう締め括ろうとした、そあらに向かって。
 考え込んでいたマルガレーテが……ああ、リトマス試験紙ですねと、少し間を外す感じで答える。
 噴き出したヤミィを見て、彼女にもそういう処があるなと考えたりしながら。
 雷音は、そあらと顔を見合わせた。


●笑顔の花
 雨に打たれる紫陽花を眺めながら。
 アリステアは涼と共に、紫陽花園の奥の道をゆっくりと歩く。
「もう少しで梅雨も明けるかな」
 そう言って少女に笑顔を向けながら。
 涼は、アリステアの傍らを歩幅を合わせるようにして……支える傘で、彼女が濡れぬようにと天よりの滴を遮りながら、ゆるりと歩む。
 足元の泥が跳ねないようにしてくれている事にも気づいて、アリステアの胸にほんのりとした暖かい気持ちがこみあげた。
 笑顔が、優しさが、嬉しい。
「もうすぐ夏休みだし、色々遊びに行きたいね。花火とか見に行きたいなぁ」
 どれくらいまでなら、良いのだろう?
(これくらいのおねだりなら、我侭じゃないかな?)
 いろんな思い出をたくさん作っていけたら……
(そう言ったら、笑うかな?)
「そうだね。海とかプールとかもいいかもしれないね。水着とか楽しみにしてるよ」
 そう言って涼は笑ってみせた。
 笑いながら、色々沢山想い出を作れると良いよね。
(なんて伝えれたらな……)
 そう、思う。
 お互い伝えたいものがあって……どこまで望んでいいのか分からなくて。
 でも、望んで欲しくて。
(あ、そうだ)
「あの……彼女さん、って何すればいいの? 今までと何か違うの?」
 アリステアは聞いてみた。
 言った瞬間、ものすごく後悔したけれど……違いが、よく分からなくて。
「彼女…? さあ。別に気にしなくて良いんじゃない?」
 少なくとも、一緒に過ごせるだけで幸せだから。
「むしろ何か違うことでもしたいの?」
 笑いながら涼は、そうだなあと首を傾げてみせる。
「……恋人っぽいことがしたい、て言うならキスでもしてみる?」
「……って。え? そんな事言われても……!」
 真っ赤になったアリステアはそこで、冗談めかした涼の表情に気付いた。
(か、からかわれてる……?)
 そう思いはしたものの、頬は熱くて、鼓動は激しくて……
 きっとからかわれて頭に来たのだと、自分自身に言い訳のように言い聞かせて。
 少女は少しでも落ち着くために深呼吸をしてから、口を開いた。


●ふれあう気持ち、伝わる気持ち
 紫陽花の続く散策路。
(ゆっくり散歩でも楽しませて貰うかな)
「雨の中をそれを眺めながら歩くってのも良いもんだ」
 リセリアと相傘を差しながら、猛はゆるりと歩を進めた。
 雨音に耳を傾けながら、紫陽花園の其の奥へ。
「ちらほらと、道端で見た事はあったが数が集まってるのを見ると中々壮観だな」
「私は好きです、紫陽花。これだけ数があって雨の中だと、すごいですね……」
 猛の言葉に、リセリアが応える。
「降り頻る雨の音……聴いていると、落ち着きます」
 散策しながらリセリアは呟いた。
 元々雨の音を聴くのは好きだったけど……今日は、何時にもまして落ち着くような……そんな気がする。
「こうしてるとほっとするぜ。ハードな任務も続いてたしな」
 そう言って猛は、ゆっくりと息を吐いた。
「……日常に帰って来た、って感じがして安心する」
 リセリアの肩をそっと、抱き寄せる。
「日常……そう。そういうものかも」
 肩を抱かれるに任せながら、リセリアは目を閉じて雨の音に聴き入った。
 その耳に……自分の名を呼ぶ、彼の声が響いた。
「……リセリア」
 名前を呼び、猛はリセリアを抱き締める。
「た、猛さん?」
 抱き締められて、ちょっと慌てはしたものの……少女はそのまま力を抜いた。
(――人の暖かさ)
 抱き締めあう身体から暖かさが伝わるように、重なり交わされた唇から……何かが伝わってくるような、そんな心地。
 互いの暖かさを感じあう……そんな、時間。
 これが生きてる実感というものだろうか?
 リセリアはふと、そんな事を思った。
 稍あって、重なった唇が離れる。
「今日一日、ずっと放してやんねーからな? 覚悟しておく様に」
「……いいですよ」
 笑みを浮かべた猛に笑みを返すと……リセリアはそっと身に力を籠めて、彼の身体を抱き返した。


●いつものふたり
「ユーヌたんと一緒!」
「お茶とお菓子は落ち着く、何種類か有るのは嬉しいな」
 竜一とユーヌの2人は、東屋でお茶とお菓子をのんびりと楽しんでいた。
「珍しく竜一が大人しいし」
「好き勝手に暴れまわるだけが俺の一面であっても、全てじゃないしね」
(たまには、しっとりとした感じのもいいはず)
「それに、しばらく気を静めたほうがいい気がするし」
 竜一が音を立ててお茶を飲む。
「休めるときに休め。どうせ馬鹿はボウフラのように沸いて出る」
 そんな竜一の気持ちを知ってか知らずか、ユーヌもお茶をすすりながら口にした。
「働き過ぎならなおさらな?」
 そう言って少女は、竜一の頭を撫でる。
(全力で走り続けすぎた)
 そんな事を考えながら、竜一はお茶菓子を頬張った。
「………うむ、紫陽花きれい」
 しばらく無言で過ごした後、少女の肩を抱き寄せしみじみと呟き、髪に頬を寄せる。
「髪の匂い嗅いでも変わりはないと思うが、雨の匂いに花の香りを楽しんだらどうだ?」
 抱き寄せられ、そのまま寄りかかりながらユーヌは尋ねてみた。
「まぁ、褒められて悪い気はしないが」
「きれいだけども、やっぱしっとり濡れ羽色のユーヌたんの髪の毛は素敵だよねー」
 言いながら竜一が頬擦りする。
「さ、濡れて体を冷やさないように暖めないとね」
「別に東屋の中まで濡れる訳はあるまいし。それとも竜一がずぶ濡れにするのか?」
 抱きしめられながら、ユーヌは付け加えた。
「少し冷えてるな、自分の体も温めろ」
 それに応えるように、抱きしめる腕に力がこもる。
(あまり何時もと代わり映えがない気もするけどな)
「ふむ、好き勝手にだけが、じゃなかったのか?」
 ぺろぺろしてくる竜一にそう言いながら、ユーヌは彼の頬にそっと……唇を寄せた。


●雨の日の出逢い
 影時が来ていると聞いて、真昼は紫陽花園の奥へと足を向けていた。
 和傘をさして、急ぎ足で、砂利を踏みしめ、その先へ。
 すれ違う人へと軽く会釈をしながら少年は進む。
 本当は……怖かった。
(あの時何も出来なかったオレを妹はどう思っているだろう?)
 何て言葉をかけたら良い?
 そもそも髪の色や雰囲気も、色々変わってしまったオレに気付いてくれるだろうか?
 今更なのは判ってる。
「でもずっと考えて決めたんだ」
(家を捨てでも大切な妹を守りたいって)
「今はどんなに微力でも、何時かその背中に追いつくよ」
 誰かに語り掛けるように呟いた時、彼は園の奥で……その姿を見出した。
 影時は賽の河原のようにして、砂利を積み上げていた。
 彼女としては、遊んでいるつもりだった。
 傘、ないよ。
 めっちゃ濡れてる。
(寒くない)
 言ったのか、思ったのかは自分でも分からなかった。
 寒いのは心。
「まあ、いつもの事だから気になんてしてないけどね?」
 納得したのか。諦めたのか。
 どうでも良いというのが一番近いのか。
 それすらも、どうでもよくて。
「ねぇ、影時。会いに来たんだ」
 そんな少女に、真昼は声を掛けた。
 ねぇ、影時。伸ばす手は諦めない。
 ねぇ、影時。今度こそは絶対に。
 傍に行って……傘を差し出す。
 声の震えはきっと雨音が誤魔化してくれるから。
「誰。君」
 呆気ない問い掛けに溢れそうになる想いを……言葉に篭めて、紡ぐ。
 それに対する言葉は最初と変わらず無感情で、向けられた顔は無表情だった。
 突然兄と言われても。
(僕は覚えていないし、興味もない)
「でも君が兄というのなら兄なんだろう」
 影時は目の前の誰かに、そう言った。
(そういうことにしておいてあげようね)
 兄だからといってどう接すればいいか知らないけど。
「僕は影時。よろしくね、兄さん」
 その時……少女はそれを見出し、表情を突然、大きく変えた。
「あ、あの」
 口籠ってから、それに視線を向けながら、再び口を開く。
「へ、蛇可愛いですね……」
 振り子の幅が大きく反対に振れたように、先刻とは正反対に心をきゅんきゅんさせながら。
「なでなでしていいですか、もふもふとか、ありでちゅかね?」
 口調を変えながら、少年に巻き付く蛇に心を奪われるようにして、問い掛けた。
 問い掛けへの答えは肯定で、少女はその手を蛇へとのばす。
 きゅるるんきゅん、きゅんきゅんきゅうん。
「よーちよちよち……」
 そんな風に、しゅるしゅるする蛇を慈しんで。
 少女が我に返ったのは、それから少し後の事だった。


●東屋にて
「紫陽花という花は元々日本が原種で、中国を経由、欧州で品種改良されたものが西洋アジサイだそうですね」
(でも、ともに花言葉は「移り気」という意味を持つ)
「周りの状況に合わせて変化する様からそう取られたのでしょうね」
 東屋で1人、紫陽花を眺めつつ……星龍はとりとめない思考に身を委ねていた。
 世の中は日々移ろい行き、その変化に戸惑うことも多くある。
(紫陽花の如く、周囲の変化に対応できる柔軟な姿勢は素敵だと思いますね)
 そんな花の表面だけを見て移り気と称しているのではないだろうか?
 もしかしたらその実は、確たるものを抱えているのかも知れないのだ。
「……ああ、どうも思考の迷路に陥りそうですね」
(それも静かな風景故に思索に耽ってしまうからでしょうか?)
 微かに、サングラスの奥に表情を滲ませてから……星龍は再び目の前の風景に瞳を、想いを向ける。

「助かるよ。むさい男がお茶菓子配るより、可愛い子が手伝ってくれたほうが場も華やぐからね」
「先輩は別にむさくはないと思いますが」
 そんな言葉を交わしながらも、快とマルガレーテの手は止まらない。
 快は普段とは違い、和傘に白の作務衣という格好だった。
 今日はアーク協力者の一般人の集まりで、三高平商工会の人たちへのお付き合いである。
 商工会の催しで紫陽花見物ツアーでの来場だ。
 快は幹事兼雑用を引き受けていた。
 バスの手配や会計その他は既に片付いている。
 好き勝手もとい自由に希望を述べられる皆さんを引率して紫陽花園にやってきたのは、少し前の事だ。
 東屋の一画に皆を案内し和菓子やお茶を配っていたものの手が足りず、近くにいたマルガレーテにヘルプ要請したのは、つい先刻の事である。
「おかげで一息つく時間ができそうだよ」
「お役に立てたなら何よりです」
 よければ一緒に紫陽花をと誘えば、少女はお供しますと頷いて微笑んだ。
(こういう時間が転がり込んできたことを考えれば、この仕事の持ってきた偶然と幸運に感謝すべきかな?)
 そんな事を考えながら、快は自分を呼ぶ声に答え、用意されたお茶に手を伸ばした。

 普段は閑散としている紫陽花園は、この時期だけは多くの人で賑わっている。
 梅雨が明け、紫陽花の花が終わる頃まで。
 賑わいはしばらく、続きそうだ。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
御参加、ありがとうございました。
好い時を過ごせたと少しでも思って頂けたら、嬉しいです。

それではまた、御縁ありましたら。