●破壊せよ! 「三高平公園の中に、E・ゴーレムが現れました」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)がそう切り出す。 といっても、まだフェーズ1にカテゴライズされるエリューション。 「公園の池の傍で観測されたそのゴーレムは、巨大な岩のゴーレムです」 そう。岩。 どこからどう見ても、岩。 当初その場にあったのは、池の周りを囲む大きな石程度だったはずなのだが、一夜にして巨岩と変化したそのゴーレム。 まるで森の主だと言わんがばかりの存在感でそこに鎮座しているが、実際にはエリューション化のエネルギーをほぼ全て巨大化につぎ込んだようで、その他の力がまるで観測されてはいなかった。 「つまり……現状では移動も戦闘も出来ない、頑健で巨大なだけのただの岩なんです」 だからといって放置はできない。 この先にフェーズが進んだ時、その強固さと大きさがどれほどの破壊力をもたらすのか、想像に難しくない。 言わば眠れる獅子なのである。 「これは未来の危険因子を、未覚醒の間に安全に撃破できる絶好のチャンス。戦術的にも戦略的にも非常に価値の高い作戦です」 むんっと小さな拳を握って、力説する和泉。 大切な仲間である実動隊のみんなが安全に戦えるのならそれにこしたことはない。言外の彼女の喜びである。 「みなさんの普段の練磨の成果を見せる、絶好の機会です。 思う存分、自らの力を出し切り、当該神秘の破壊を遂行してください」 かっこいいところをみせてください。 彼女の淡い微笑みはそう語っているように見えないこともないこともなかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:仁科ゆう | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月02日(火)23:09 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●森の王との対面 頭上でこれでもかと光と熱気を放つ太陽の下、リベリスタ達は三高平公園内へと足を踏み入れる。 「場所が三高平公園の池の傍だし、すぐわかるかな」 地図を確認しつつ先導する『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(ID:BNE001656)に続いて、園内を移動していく。 やがて、森というにはいささか小さいが、緑に溢れる池傍の森林ゾーンへと到達する。 「あはっ! 動かないモノを壊すだなんて素敵!!!」 そんな中、普段の数倍増し増しの危ないテンションで『ヴァルプルギスの魔女』桐生 千歳(ID:BNE000090)が手を振り回している。 「一方的な破壊よ!!! 人間だれしも破壊願望はあるわ! 今日はそれをぶつけちゃいましょ! ましょ!!」 一般人が入り込まないように結界の準備をしつつの移動ではあるが、人様に聞かれたら危ない人認定は避けられない。 森の中でよかった。 何人かがそう思ったところで、それが目に飛び込んできた。 森の中の、本来であれば憩いのゾーンとして使われる少し開けた広場。その広場を埋めるような巨大な岩が鎮座していた。 無駄な巨大さと無意味な存在感。これがきっとフォーチュナーが言っていた岩。もといE・ゴーレムに間違いないだろう。 ゴーレムを見上げ、『金狐』ヒルデガルド・フォン・エーリッヒ(ID:BNE002659)はサーベルの腹で岩の表面を軽く叩き、強度を確かめ得意げに呟く。 「ふん、ただでかいだけの塊だな」 凡そ直径10mにも達しようかという巨大な岩は答えない。 「要は俺を活躍させるためのボーナスステージって事だろ? 主人公たる力って奴を見せてやるよ!」 やたらテンションを高めているのは『人間魚雷』神守 零六(ID:BNE002500) 普段は中々できない力の使い方を考えているようである。 対して、『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(ID:BNE002649)は頭上の太陽を眩しそうに見上げながら冷静な一声。 「他所よりは比較的涼しいけれど、夏だし体力温存しつついきますか」 持参したクーラーボックスの中に詰めてきた飲み物入りのペットボトルを仲間たちに見せる。 「欲しい人はご自由にどうぞ」 クーラーボックスのフタを閉め、邪魔にならないように少し離れた場所へと置く。 「日頃の鍛錬の成果をお見せする良い機会です。この身、アザーバイド殲滅の為に鍛えたこの力。存分に振るわせて頂きましょう」 『夕暮の海鳥』レイ・マクガイア(ID:BNE001078)も、両の腕に幻想纏いで取り出したガントレットを装着し、呼気を整え、体の中の気を練り上げていく。 森の息吹を感じ取りつつ、丹田に溜まり高まる気を爆発させる準備に入っていた。 「練磨の成果、か――人の琴線に触れるのが上手いお嬢ちゃんだな。デュランダルとしての矜持を賭けて受けさせて貰う」 『戦闘狂』宵咲 美散(ID:BNE002324)は不意の一般人の乱入を防ぐべく、強結界を展開する。 「今回の結果次第では今後の道筋も見えて来るだろう」 ●初手 「さて、硬さはどれ程のものか……小手調べと行こう」 小細工の一切ない真正面からの鉄槌での一撃。 美散が放った初手は、甲高い金属音を響かせながら岩の表面を叩くに留まる。 「ビクともしないか――面白い、それでこそ森の主だ」 腕の痺れを余所に、口の端に僅かに笑みを浮かべる美散。 (伊達や酔狂で物理攻撃ばかり鍛えている訳では無い。だが……この程度で砕けるようでは張り合いが無いな) 存分に力だけをぶつけられる相手に、武人としての喜びが湧き上がっているのだろう。 その様子に、事前の打ち合わせ通りに仲間達は動き出す。 「んふっ、おっきぃ! でも駄目ね。岩如きが森の主だなんて失笑よ?」 千歳が翼を広げ、空へと舞い上がる。 上空から巨大な岩を見下ろし、研ぎ澄ませた直観を頼りに、”壊れやすそうな一点”を探る。 「自分の勘だと……アソコかな?」 そして、見極めた箇所にマジックで印をつける。 次に動いたのがキリエと疾風。2人は岩をよじ登っていた。 「この岩石これだけ巨大化しても、密度は変わっていないどころか、むしろ硬くなっているのだろうか? それでも性質が変わらないなら、理屈ではきれいに割れるはずなんだけど」 千歳がつけた印と天頂とを結ぶ一線にキリエがダガーを押し当て、疾風に頼むよと声をかける。 「何とも堅そうな相手ですが、このままフェーズを進行させるわけにもいきませんからね」 声をかけられた疾風は、岩の上に立ち、取り出した携帯型アクセス・ファンタズムを起動させた。 「放っておいてもこの先厄介になりそうですから破壊します! 変身!」 一瞬の輝きが収まると、戦闘服に身を包んだ疾風の姿がそこにあった。 流水の構えをとり、小さなダガーの柄尻を狙う。 「堅そうな巨岩であろうとこのメイスで砕く!」 ガギィーン! 手に帰る大きな衝撃。ダガーは僅かにだが岩の表面に食い込んでいた。一撃ではムリ、だが数度の打撃であれば打ち込むこともできるかもしれない。 この一本をはじめにして、直線状に何本もの楔を打ち込んでいくことを考えると、地味で時間のかかる作業になりそうだ。 「なにはともあれ、地味な作業に協力を申し出てくれた疾風に感謝を」 次のダガーを岩に押し当てて、キリエが微笑む。 ●2手 「アーッハッハッハ! それじゃよろしく頼むぜぇ!」 そう言うと、零六はパイルバンカーを担いで瞳を閉じ、ただひたすらに一撃のための集中を開始する。 色々と試行をする仲間達を見て、雪白 音羽(ID:BNE000194)は軽く吐息をつく。 「皆色々とやるのなぁ。この中で目立てと?」 無言で、考え込む……そして突如、閃きと諦めを同時に表情に浮かべた。 「よし同じ方向でやるのは諦めた。解説でもやろう」 そういうと、インカムをつけてとカメラを回しながら、簡単な実況をはじめた。 「ふん……動かないとはいえ、脅威であることに変わりはない。本来なら動けぬ相手に全力を出すのは気が引けるのだが、今回は別だ」 こういった勘はあまりよくないと自覚するヒルデガルドは千歳を信じ、彼女がつけた印に狙いを定め集中力を高めていく。 「容赦はしない。私の初戦、勝利で飾らせてもらうぞ」 そして、構えた武装でその印をピンポイントに突き込む。 硬い岩と武器が打ち合う高い音が鳴り響く。が、先ほどの美散の時に比べれば、岩に小さな痕がついたのが見て取れる。 次の一撃はもっと集中をして……ヒルデガルドは次に備え呼吸を整えていく。 「硬く頑強な岩であろうとも、内部に衝撃を加える土砕掌であれば効果は見込めるはずです。私が特化したのは『継戦能力』!」 一撃の貫通力を高めるヒルデガルドに対して、レイが高らかに宣ずる。 呼吸を整え、拳法の型に沿って、力強く大地を踏み締め、拳を突き込む。 徹った感触はある。内部の何かに確かに届く手応え。だが、浅い。 「何度でもこの拳を叩き込み、破砕してみせます!」 レイはリピート再生のように同じ動きで気を練り上げていく。 「あー。千歳は集中していて、美散は離れたところで全身に破壊的なオーラを漲らせてるようだな」 音羽は全員の様子をカメラに収めて、一応働いている証拠に片手間にマジックミサイルを印に向けて撃っていた。 ●破砕点 「んふっ、この魔女の一撃。受けてみる?」 集中し練り上げた魔力を使い、4つの魔術を同時に編み上げる千歳。 4篇の魔光が王岩の表面に傷を穿つ。 「この岩……どこまで壊せば撃破になるんだろうか」 岩上で地味な作業を繰り返すキリエに疾風にもわかるはずもなく。小さく頭を振り、岩に押し当てられたダガーに次の一撃を叩き込む。 「報告書を読む限りではE・ゴーレムにも心があるように思える。今、どんな気分なんだろ」 「……動けなくて悔しい?」 作業のコツがわかってきたのか、少しずつ必要な打撃数が減って来ている。 後何本打ち込めばいいのかはわからないが……仲間たちの助けとなるよう、2人は黙々と作業を続けていく。 彼らの耳にはこんなやりとりが聞こえてきていた。 「待たせたな……チャージ完了だぜ」 「あぁっと20回の集中を終えた零六が来たぞー」 「主人公は遅れてやってくるってなァ! 俺が、この200秒という長きに渡る戦いにッ! 終止符を打つッ!! これが、主人公の力だッ! 打ち砕け! デスペラードッ!!」 振るわれるパイルバンカー! 「アーッハッハッハ! ひとぉつッッ! …………か……堅ぇ……」 ガキーンと、先端は岩に傷をつけるも弾かれ腕を押さえる零六。間違いなく会心の一撃ではあったのだが、まだ相手を破砕するには足りない様子。 幾分しょんもりした雰囲気で、彼は再び集中をはじめた。 最初にヒルデガルドがつけた痕に向けて、左右に位置した美散とレイがただ只管に腕を振るう。 「んふふっ!折角大きくなったのに破壊され、蹂躙される気持ちはどう?」 合間に、千歳が魔術とヒルデガルドのサーベルと、たまに音羽の魔術が孔に撃ち込まれるが、集中を伴う彼らとは違い、力を込めた美散の鉄槌が、気を纏わせたレイのガントレットが、只管に打ち付けられていく。 レイのメタルフレームの体からは、長い髪が放熱のために広がり、湯気を上げている。 過度の酷使でガントレットが悲鳴を上げるが、構わずに殴って殴って殴って殴る! 「大丈夫なんだろうか、レイの拳は」 音羽がカメラ越しに訪ねるが、レイはにこりともせず拳を振るいながら返す。 「私が出来ることは愚直に殴ることだけですから」 「それは……奇遇だな」 同じく、掌に滲む血も省みず、鉄槌を打ち付け続けていた美散が、こちらは獰猛な武人の笑みを見せる。 「唯、愚直で在れ――婆さんの遺言でな」 そういって、さらに鉄槌を叩き込む。 「えーと……今回はどんな対策を?」 「対策?そんなものは無いさ。だが、強いて言うならそんなものすら不要の一撃を求めているんだよ、俺は」 音羽のコメントに、今度は美散が応えた。 「有象無象の区別無く、立ち塞がるものは全て打ち砕く」 叩き込む 「デュランダルとして」 叩き込む 「一振りの刃として」 叩き込む 「一介の戦士として」 叩き込む! 孔の深さ、大きさは少しずつ広がっていっている。 穿ち削られた岩の欠片が足元に溜まっていっているが、レイは積み重なっていく岩片を乗り越え一歩ずつ、削岩機のように重厚に、ただ無表情にゴーレムを削りとって行く。 ●破壊の宴 「生物じゃないから、痛くはないと思うけど、感情探査で何か感じたりするだろうか」 少しずつ穿たれていく岩ゴーレムの感情を少しでも理解しようとしているのか興味からか、キリエがふと考える。 「んーふふふふっっ!! 木っ端微塵よ! 見る影もなく、砂として人に踏まれるといいわ!」 そして、地上で攻撃をしている某魔女さんの叫びを聞いてやっぱり探査を諦めた。 「……まわりの方が感情高ぶってて、無理、か」 コーン、コーン…… 下で聞こえるガンガガガンという激しい打突音と違い、一定の間隔で響くシンプルな音。 幾本目かの楔を打ち込んだ瞬間に、疾風が気付く。 「あ……ヒビが」 カーン! と一際高い音を奏でて、今打ち込んだ楔から先に打ち込んだ一本へ、さらに下の仲間たちの作っている破砕痕に向かって一直線に小さく細いヒビが伸びた。 さらに、下から音が聞こえると同時に、ヒビが長く伸び、先の楔へとヒビが伝播していく。 「一点集中は悪くは無い狙いだったようですね」 「上手くいったね。下からの攻撃が一定のラインを超えたら普通の岩みたいに綺麗に真っ二つになるのかな?」 気付いた音羽がレンズを向けてくるのに、二人で手を軽く振り返す。地味な作業をやり遂げ、顔には疲労と達成感を浮かべながら。 そして、一旦落とした腰をもう一度上げた。下に向かって最後の一押しを手伝うために。 「手が痺れても力の限り差し込んでやる。……砕けろ!」 ヒルデガルドは、頭上に向けて奔ったヒビに刃を沿わせるように、サーベルを叩きつける。 言葉どおりに跳ね返る衝撃が手を痺れさせるが、すぐ傍で両の手を朱に染めて武器を振るう2人がいるのだ、今更この程度の痛みに弱音を吐けるわけもない。 「んーふふふ! うっっゲッホゲホゲホゲホゲホッ」 テンションが上がりすぎてむせる千歳の手からはさらに4色の魔力光が飛ぶ。 レイは拳を振るい続ける。愚直な攻撃が決定的なチャンスを作っているのを見て取った今、エリューションへの怒り、アザーバイドへの怒り、リア充への怒り。全てを拳に乗せて殴る。 「リア充爆発しろ!」 パキッ……ビキビキビキ…… 最後の一声、一撃が引鉄になったのか、大きな亀裂が岩を縦一文字に広がっていく。 そこで、ハイエナ……もとい零六が再び大きな声を上げた。 「待たせたな……チャージ完了だぜ」 前に聞いたような気もするセリフで額に血管が浮き出るほどの激しい集中をした彼は、パイルバンカーを王岩に仲間がつけた破砕点に向ける。 「主人公は遅れてやってくるってなァ! 俺が、この長きに渡る戦いにッ! 終止符を打つッ!!」 先ほどと同じセリフでしかし、今回は仲間のつけた決定的な破砕の目標がある。 「やぁっておしまい!!」 「見せてくれ、本気の一撃を」 千歳がやたら偉そうな悪の女幹部っぽい口調としぐさで命令をしヒルデガルドが期待の目で道を譲ると、ニヤリと笑い返した零六が渾身の一撃を叩き込む! 「これが、主人公の力だッ! 打ち砕け! デスペラードッ!!」 王岩に喰い込む杭。さらに、立て続けに杭はパイルバンカーに引き込まれ、放たれる。 「アーッハッハッハ! 楽しい楽しいショータイムの始まりだァ!」 連続で放たれた杭の衝撃で王岩に入った亀裂は一周し、岩が真っ二つに。 「やっぱりこの俺がッ! 俺こそが主人公だッ! ヒャハハハ!」 王岩の中からは、それが核なのか、大きなルビーのような真赤な岩が転がり出てきた。 ●宴の終り 地味作業のお礼とでもいおうか。疾風が核を壊す役目を譲られ、業炎撃で叩き壊した。 コアは攻撃を受けると弾けて消えた。 「……この破片、アークの人回収するのかな? 大変そうだね」 しかし王岩は消えずに残ったのをキリエが見上げていた。 「本音を言えば、動き出したお前さんと戦ってみたかったが」 リベリスタとして見過ごす訳には行かなくてな、許せよ。と言外に伝える美散。 「んふっ楽しかった!でも次は悲鳴のあるターゲットがいいかも!」 千歳はやりきった満足げな顔で、大きく伸びをする。そんな彼女に続くようにリベリスタ達はそれぞれに帰途に着いた。 こうして、破壊の宴は幕を閉じた。 だが、破壊すべき物がある限り、宴はまた開かれるだろう。 破壊せよ、リベリスタ! ~END~ |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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