● 「我々の任務は遊撃だ。どう動くにしても、この場は丁度良かろうよ」 双眼鏡を手に、ハンス少尉が周囲を見渡す。 三ツ池公園では様々な場所で、親衛隊とアークの戦いが繰り広げられている。 そんな中、ハンス少尉率いる一隊は友軍の援護のため、展望広場に陣を構えていた。 「……具体的には、我々は何をするのですか?」 隣に立つユーディット兵長が問う。 実戦経験に乏しい彼女は、どうやらハンスの意図が判りきっていないらしい。 「まずは友軍が進むための道を作る事だ。余裕があれば他部隊の援護も考えるが、な」 他の兵であればハンスも修正していた可能性があるが、流石に孫娘においそれと手を出せるほどに彼は冷血ではなかった。 丁寧に教え、答えた彼はやはりユーディットを大切に思ってはいるのだろう。 「敵との交戦時は最後尾での援護が兵長の主な任務だ。前衛は私がやろう」 先日はユーディットを守り続けたギュンター曹長は、今回ばかりはアタッカーを務める心算のようだ。 かといって補給線であるユーディットを無防備にする事など、歴戦の軍人であるハンスが率いている以上はありえない。 「先の戦いで散った3名の勇者の分まで、我々は戦わねばならぬ。ユーディット、貴様の行動が我々の命運を左右すると知れ」 「お前達も同様だ、己の役目を忘れるな。劣等に我等の力を思い知らせてやれ」 痛み分けに終わった先日の戦いを思い返し、省み。ハンスとギュンターはそれを教訓に兵の補充を願い出ていた。 それが功を奏したのか、補充された兵の中にはもう1人のホーリーメイガスの存在もある。 「我等はこの戦をもって再び騒乱を望む。新たなる戦いの幕開けのため、己が任務をまっとうせよ!」 ● 「親衛隊の侵攻が始まったわ」 桜花 美咲 (nBNE000239)の言葉は簡潔であり、状況を理解させるには十分な一言だった。 彼等の狙いは三ツ池公園の制圧。 開発中の『革醒新兵器』をより強化するための方法として、神秘的得意点である『穴』が有効だと判断したがゆえの侵攻だ。 ハンス少尉率いる一隊や、他の親衛隊がリベリスタを急襲したのは、アーク側の戦力や戦い方を計算するためのものだったらしい。 「偶然にしては出来すぎているけどね」 美咲の表情が曇る。 というのも、親衛隊の侵攻が始まる直前に七派の首領が攻撃を開始している。 多くの精鋭がその対処に向かう以上、残った精鋭だけで対処しなければならない『戦場』を作り上げたのだ。 制圧戦を得意とする親衛隊に対し、予備戦力をぶつけるのは愚策以外の何物でもない。 ならば、残った精鋭の活躍に全てがかかっている。 「……大変かもしれないけど、止めて頂戴。皆なら出来るって信じてるわ」 親衛隊にとってこの作戦は重要なものであるらしいが、それはアーク側とて同じ。 新たな戦争という『完全な秩序の破壊』だけは、起こしてはならないのだから。 「今回はボクも行くよ。止められるなら、止めないとね」 静かにそう言った『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)の目には、確かな決意が浮かんでいる。 第三次世界大戦。そんなものは、親衛隊以外の誰も望んではいない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月04日(木)23:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●旧時代の遺物 「機を見るや即座に侵攻。事前の準備はあったのだろうが、賞賛に値する迅速さだ。相も変らぬ有能さを発揮してくれる」 「ははは、今回は君達も相当に早かったではないかね、劣等の割にはよくもやる」 迅速に次ぐ迅速。あまりに効率的な展開を褒めるヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)に対し、ハンスも素直に褒め返したのは己が優良種であるという自信故か。 そんな会話を交わしながらも、双方の動きはめまぐるしく陣を組み上げていく。 「回復手を潰せない戦い、想定だけでも面倒ですね。オーソドックスな戦法である以上、そうもなりますか」 先日の戦いの報告書を読んでいた『荊棘鋼鉄』三島・五月(BNE002662)は、その動きから彼女達を潰す事は容易ならぬ道だと推察したようだ。 事実として、先の戦いでは補給線の撃破を狙いすぎたがために、いらぬ被害を増やしてしまってもいる。 (まあ、一人ずつ集中攻撃して一気に倒してしまえばいいだけの話です) ともすれば対処法はその補給能力を超える火力でじわじわと削るだけだと考えた彼は、並び立つ仲間達の方へと視線を移した。 「優良とか、劣等とかいちいち口にしなければ不安なのかしら。最後まで立っていたものが優れていた。ただ、それだけでしょう?」 「ならば、我々はまだ倒れてはおらぬよ」 ハンスの差別意識は旧時代の遺物そのもの。五月の視線の先で、蔵守 さざみ(BNE004240)はこの戦いでそれがわかるだろうとも言いたげである。 (最後まで立つか立たないかで優劣は決まるのだろうか) 会話に耳を立てるユーディットにとって、ハンスとさざみ、両者の言い分は『なるほど』とは思いつつも納得までは出来ないもの。 親衛隊は自身が優良と信じ、折れぬ心を持って再び立ち上がった闘士。 リベリスタ達は、己が信念を持って困難に立ち向かう戦士。 (血の優劣、種の優劣。私には、どちらが優良だとか判断出来ない) 敵同士ではあれど、ユーディットはその魂が高潔なものであると感じているらしい。 「さて。我々は君等を突破して他の援護に回りたいのだよ。悪いが時間は少ない、始めようかね?」 迷う孫娘の心情を察知したのか、ゆっくりと手を掲げ、攻撃に踏み切ろうとするハンス。 「いえ、まぁ、仕事熱心なこと自体は否定し辛いですが。できればその、他人に迷惑がかかるようなお仕事はやめて欲しいものです」 彼の、親衛隊の『仕事』は迷惑だとため息をつく『Dreamer』神谷 小夜(BNE001462)の言葉に『フッ』と笑みだけ零し、ハンスは攻撃を――否。 「いつまで戦争を続ける気なんだ? ハンス。『あんたの戦争』は終わっちゃいないんだろう。だから次なる大戦を起こすのか?」 「その通りだ。我々が栄光を掴むためには、戦いは必然なのだよ」 それに対して『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)が待ったをかけ、応えたハンスはやれやれと頭を振った。 「終わらない戦争を息子に、孫に託すのか? そのお嬢ちゃんに背負わせるってか?」 「ギュンターは良い跡取りさ。ユーディットもいずれはそうなる」 ハンスの口振りを見る限り、ギュンターの思想は既にハンスやリヒャルトの持つそれに染まりきっているのだろう。 ユーディットも、いずれは自分の敷いたレールの上を走ると彼は信じて疑ってもいない。 「子供が本当にやりたいことを応援してやるのが親としての務めだし、あなた方が考える誇りは別の場所でも発揮できるものではないのか? 優秀であるなら、人のために役に立つ分野で活躍するべきではないのか?」 だが彼の考えを『ジェネシスノート』如月・達哉(BNE001662)は真っ向から否定した。 彼は2人の子を持つ親である。が故に、覚悟の足りない娘に覚悟を強要するハンスの考えに、疑問を持つ。 「兵長のやりたい事は兵士であるよ。何をするにしろ、まずは我等が栄光を掴まねばな」 当のハンスは、そんな疑問を一蹴するほどに己の考えが正しいと考えていた。 自分の考えは全てが正しいと考えていると言う方が良いかもしれない。 「……あんたはもう引き返したり出来ないものを背負っちまってるんだろうな。そして、親衛隊そのものが、すでに家族なのかもしれねえ」 ソウルの言うとおり、ハンスはもう引き返す事が出来なくなっているのだろう。 そして、存在するであろう道の分岐を知らないのだろう。 「これが親衛隊、か」 「大丈夫です、ルーナちゃん。何時も通りにやれば、大丈夫です」 想定以上に頑なな信念を目の当たりにし、複雑な表情の『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)の頭を撫でた巴 とよ(BNE004221)は、相対するのが親衛隊であってもやる事は変わらないと告げた。 思想や誇り、それは相反するならぶつかり合うもの。ともすれば五月が先程言った言葉は正論であり、強いほうが勝つ。 「敵とは言え、敬意を抱いて戦うべきですね。特に老齢ながら率先垂範で陣頭に立ち戦う少尉には」 一方で『非才を知る者』アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)はハンスにそんな想いを持って立ちはだかる所存だ。 歴史学の教鞭をとっていた彼にしてみれば、祖父から子、孫へ受け継がれていく系譜には『由緒正しい』とさえ感じるらしい。 「……で、もう良いのかね?」 本来ならば、ハンスに待つ必要などはなかった。 それでも彼はリベリスタ達の声に耳を傾け、攻撃を少しだけ遅らせている。 自身が優良種だと考えているが故の、『余裕』がそうさせたのだろう。 ユーディットのように達哉が好感を持ち、心配するような人物では決してなく、彼は生粋の『親衛隊』なのだから。 ●展望広場攻防戦 「先手必勝というやつですね。すみませんが、あまり自由に動かれても困るのですよ」 リベリスタと親衛隊、双方の中で最も早く動きを見せたアルフォンソの閃光弾が飛ぶ。 狙いはもちろんユーディットであり、先の会話の最中に戦場全体にまで戦術眼を広げていた彼の閃光弾は、的確に彼女達を狙う。 彼の背に小さな翼がついているところを見れば、小夜の翼の加護も既に行き届いているようだ。 「凄まじい早さだな、賞賛に値するよ。しかし、また同じ事を繰り返すのかね?」 とはいえ、補給線を突くという作戦の定石が彼等にまともに通用しないのは、先日の戦いではっきりしている事。 投げられた閃光弾はユーディットの前に立つハンスの動きを止めるには及ばず、2人のホーリーメイガスも仲間に庇われ、その閃光に怯むことはない。 「こちらより早い? いや、違う」 半ば奇襲気味に動いたアルフォンソは親衛隊の動きに少しだけ驚いた素振りを見せるが、その理由を彼はすぐに理解した。 事前に態勢を整える事が出来たのだから、相手もそうだっただけの事だと。 「でも、2人の動きが止まったわ。それで十分よ」 前に出たさざみの目は、怯んだ2人の姿を見逃さない。 剣を構え、突っ込んでくるであろうギュンター達に視線を向け『後ろには簡単に行かせない』と牽制した後、彼女の拳から放たれるのは織り成された四色の魔曲の光。 手にした武器がライフルである事から、おそらくスターサジタリーだろうと判断した彼女の魔法が、怯んだ敵を激しく穿っていく。 「我々も忘れてもらっては困るな」 対する親衛隊も、先の2人には及ばなかったがギュンターも決して遅い部類には入らない。 まずは前に突出したさざみに狙いを定めた彼の拳が、装着されたブースターの加速を受けて彼女の腹部を正確に捉えた。 「前に出るから自信があるのかと思ったが、そうでもないようだな」 元々が接近戦を主体とする覇界闘士である彼の拳は、相当に威力が高い。加えて特殊兵装であるナックルに取り付けられたブースターが、さらに威力を加速させているのだからたまったものではない。 あまりの激痛に腹部を抑えうずくまりそうになるのを堪えるさざみを一瞥したギュンターは、他に獲物がいないのかと視線をゆっくりとそれぞれのリベリスタ達の方へ向ける。 「あなたの相手は私がしましょうか」 そんな彼の視界を奪うかのように肉薄したのは、五月だ。 これ以上進ませない。そのためにギュンターの行軍を阻止した五月ではあるが、 「その前に後ろを黙らせますけどね」 彼の攻撃はギュンターではなく、さざみの一撃を受け傷ついた兵に飛んだ。 「私達もいくよ、ルーナちゃん」 さらには頷きあったとよとルーナが、ほぼ同時に、そしてほぼ同じ位置に炎を撃ち込めば、親衛隊側の後衛の被害は甚大なもの。 「悪いが、補給される前に倒してしまいたいのでな」 射撃に移る前にボロボロになった射手の命運を分けたのは、達哉が続けざまに放った気糸だろう。 運悪く気糸に絡め取られた彼は、補給線であるユーディット達ホーリーメイガスの癒しの歌では癒せない状態に陥ってしまっている。 「それが我々の狙いだ。まずは1人、やらせてもらおうか」 そのスターサジタリーを、そして周囲のハンスやユーディットを射程に収めたヒルデガルドの気糸が、追い撃ちをかけた。 もしも運命が彼に味方すれば、まだ立ち上がっていたかもしれない。 しかし『倒れないで』と祈るユーディットの眼前で、彼はその命を儚く散らせていった。 「なるほど、壁を1枚ずつ剥がすか」 対する親衛隊も、被害は甚大ながらそう簡単にやらせてくれる存在ではない。 後方で構えた兵のライフルやハンスのマシンガンが火を吹けば、ギュンターに続けと前衛のデュランダル達もなだれ込んでいく。 「……インドラの矢?」 「そのようですね。気をつけてください」 2人で同時に放ったゲヘナとフレアバーストの炎とは明らかに違う、火を纏ったライフルの弾丸を『インドラの矢』だと直感するルーナ。 ともすればアークの精鋭達が愛用するこの技の威力は良く知っているものでもあり、とよの注意が飛んだのは当然の話だ。 「さらにはあのマシンガンですか……!」 何時倒れてもおかしくはないさざみに大天使の吐息を放った小夜だけでは、その被害を一気に癒すまでには至らない。 それでも彼女の存在があるからこそ、さざみはもうしばらくは持ち堪えることが出来そうだ。 「前の壁を減らせば、こっちが前に出られるか。悪いが、速攻でやらせてもらうぜ!」 対峙するデュランダルをパイルバンカーで撃ち貫いたソウルの一撃は、ここからのリベリスタ達の反撃の狼煙か。 「まずは攻撃と行きましょうか。あの兵が特に厄介ですよ」 ライフルを用いてインドラの矢を放つ兵を厄介だと感じたアルフォンソが、自身の効率的な攻撃動作を仲間達と共有し、 「わかったわ、皆、行くわよ」 再び、さざみの拳から魔曲の光が鏑矢となって飛んだ。 当の彼女は接近戦を好むせいか、眼前で壁となった兵が邪魔で進めず、拳を叩きこめない現状に眉を顰めてはいるが。 「あっちが終わったら、あなたにこの拳を叩き込ませてもらうわよ」 「それまでお前が立っていられたらな。なるべくなら受けずに避けたいものだ」 軽く会話を交わした兵にとっても、さざみにとっても、互いは突破すべき壁。 だが、兵の方はおおよそに直感していた。その時は恐らく来るまいと。 「私達が瓦解するか、そちらの後ろが瓦解するか。それが勝負の分かれ目にはなりますか」 立ちはだかる五月の言葉通り、どちらが勝つかはこの部分に左右されるだろう。 「ならば押して通るまで。残念な事に私は無傷だ」 唯一、リベリスタ側に大きな問題が生じていたとするならば、ギュンターを殆どフリーにしてしまっていた点か。 ブースターで加速されていることに加え、雷撃を纏った壱式迅雷は五月にも先のさざみと同様に深い衝撃を彼女に与える。 「……あの人を止めないと、危ないんじゃないかな」 「ルーナちゃんなら狙えるんじゃないかな?」 流石にギュンターを放置する事は危ないと提案するルーナに対し、ゲヘナでならば巻き込めるかもしれないと位置を目測で測り、知らせるとよ。 確かにユーディット達を中心に据えるのではなく、効率を重視して撃ち込めば或いはギュンターもその炎に巻き込めるかもしれない。 「わたしが先に撃ち込むね。ルーナちゃんはそれも参考にして撃って」 ある意味では賭けだ。 少しでもずれれば、五月も巻き込んでしまう可能性は十分にある。それでも彼女は、信頼するルーナに賭けた。 「――わかった」 そして期待に応えたルーナのゲヘナの火が、ギュンターだけを巻き込み炸裂する。 先んじて放った炎で親衛隊を包んだとよとルーナの連携は、少しながら戦局をリベリスタ達に有利に傾いたのだろう。 「あの2人の後方火力が厄介だな」 さしものギュンターも、2人の少女の火力を重く見始めたらしい。 (あんなに小さな子達まで、自分達の信じるものを胸に戦ってる。本当に劣等、優良の違いとは、なんなのだろうか?) 一方でユーディットは年端も行かない彼女達が懸命に戦う姿に、再び揺らぎ始めている。 優良だと自負する親衛隊は、今も目の前で達哉の気糸を食らった2人目のスターサジタリーが倒れ、散った。 「我等を劣等と呼ぶ割には、大したこともないな」 2人の射手が倒れた事で、親衛隊の火力は大幅に下がったのではとヒルデガルドは推察した。 「今のうちに癒します、態勢を整えてください」 「そうさせるわけにはいかない」 故に今がチャンスだと少しでも仲間の傷を癒し、畳み掛けようと告げる小夜の言葉が仲間達に飛ぶ。 ――が。 その言葉を遮るかのような一言と共に、ギュンターの拳が五月へとめり込んだ。 「援護しようか。もっと攻めたまえ」 ハンスのマシンガンが、他の射手を失いながらもリベリスタ達に弾丸の雨を降らせて行く。 「攻撃に手数を取る方が確実だったのでしょうかね?」 すんでのところで運命の力を強引に引き寄せ、立ち上がる五月の姿を垣間見、動作を共有する事よりも攻撃に手を回すべきだったのかと感じるアルフォンソ。 「誰も倒させません!」 次にギュンターの攻撃を受ければ立ち上がれないであろう五月を、行動に移る前だった小夜が判断を切り替えて吐息で癒した点は幸運だ。 「俺がヤツを受け持つ、交代だ」 「待て、行かせるわけにはいかない」 とはいえ、五月と交代してギュンターを抑えようとするソウルが足止めされている以上、予断は許さない。 「射手は潰したんですし、次はあの兵達を攻めるとしましょう」 今度は防御動作を仲間達と共有したアルフォンソが次に指示を出したのは、その前衛部隊である。 ユーディット達はクロスイージスらしき2人の兵がしっかりとガードしているため、被害を減らすため、前衛を前に出させるためには妥当な判断だといえよう。 「巻き込まないように気をつけてね」 「うん、わかってる」 狙うはソウルが足止めを食らっているデュランダル。 間違ってもソウルを巻き込まないようにと注意しながら、ルーナととよの炎が飛ぶ。 「ソウルにはヤツを抑えてもらわねばならない。一気に決めるぞ」 冷静に気糸を放ったヒルデガルドと、頷いた達哉の気糸が集中攻撃を受ける兵を絡め取り、その動きを完全に封じた。 ここまでは想定内だ。 次にギュンターが五月を狙うのも想定内だが、ここは耐えてもらうしかない。 ――しかしハンスはそこに隙を見出した。 「ならばこちらも集中しようか。ギュンター、ソイツを黙らせろ」 リベリスタ達の狙いが前衛の1人に向けられた今、離れた位置に立つユーディット達は完全にフリーだったのだ。 それ故に、この瞬間だけは2人を守る兵達も自由に動く事が出来る。 「……な? 来なかっただろう?」 先程の会話を顧み、さざみと相対する兵がそんな言葉を口にする。 さざみの目に映ったのは、一気に距離を詰めてきたハンスのマシンガンの銃口。 「あ……」 急速に変化した戦況に小夜が驚いた声をあげる中、さざみが膝をつきながら立ち上がる。一方で五月は崩れ落ち、息があるものの最早動けない。 ●2度目の痛み分け 「――撤退だ」 勢いに乗って攻めに回るのかと思いきや、ハンスはこの時点で撤退を判断した。 このまま戦いを続ければ、眼前のリベリスタにより多くの被害を与える事が出来るだろう。 だが親衛隊側の被害も甚大となり、およそ他の友軍の援護にまで回る余裕を持つことも出来なくなる。 「鮮やかな引き際ですね」 「続けるつもりは、そちらにもないだろう?」 もしもリベリスタがその気ならば戦いは続くが、アルフォンソの言葉を聞く限りでは深追いをするつもりもないらしい。 「ユーディット」 親衛隊が引いて行く中、去り行くユーディットに声をかけたのは達哉だ。 「先日の君の戦いを見ていたが君は優しい子だ。血なまぐさい戦場に出るべきではないし、直接戦うことだけが戦いではない」 静かに振り向いたユーディットに、彼は続ける。 迷う彼女の本質を見抜いているからこそ、その言葉が出たのだろう。 「後方にだって戦いはある。君は敵味方問わず救う医療の道に進んだ方が似合っているように感じるよ。離れていても繋がってるのが家族だろう?」 「――私は、軍人だ」 しかしユーディットは、彼の言葉にそう言い残し姿を消した。 静けさを取り戻した展望広場での戦いは、瓦解を嫌った親衛隊が引いた事で、リベリスタ達は辛くも勝利を得た――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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