●怒りの鉄の処女 『親衛隊』の少尉であるアイゼルネ・ユングフラウは冷酷無慈悲な女傑として、その名前を知られていた。またの名を『アイアンメイデン』と称する。 長いブロンドの髪に鋭く切れ長の紅い双眸。色白の美貌の女性士官は、その華麗な美貌とは裏腹にこれまで多くの人を突き殺してきた。 戦場ではその合理的な判断によってその場で最善策を組み立て、最短でもっとも効率のよい作戦を実行することに定評がある。 「ユングフラウ少尉、三ツ池公園の拠点を制圧するにあたって、武装ヘリの手筈が整いました」 金髪碧眼の大男――『月盾のイージス』ハンス・ローゼンバーグ曹長が上司に報告する。部隊をさらに強力にするために指揮下の戦力に新たに大型兵器を投入した。今度の作戦は非常に重要な作戦と位置づけられている。『革醒新兵器』をより強化する為に神秘的特異点である『穴』を利用するために三ツ池を制圧しなければならなかった。 アイゼルネの忠実な部下として、ハンスは新たに強力な部隊を編成するために精鋭たちの人材確保と機械化に奔走していたのであった。 「ハンス、今度の作戦は失敗は許されない。もし、万が一のことがあれば、お前には首を切ってもらうことになる」 アイゼルネは冷たく言い捨てた。鋭い目つきでハンスを威圧する。あまりの冷徹な相貌にハンスは背中に冷や汗を掻いた。 ●不利な迎撃戦 「三ツ池公園が『親衛隊』に狙われている。事態は一刻の猶予もない。お前たちには、アイゼルネ・ユングフラウ少尉が率いる少数精鋭部隊を迎え討ってくれ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。 『親衛隊』は今度の作戦を重要なものと捉えているようだ。それに対してアーク側も予備戦力で戦うには荷が重すぎた。すでに首領事件の対応に向かった戦力はあてに出来ないが、残存する精鋭で彼等を食い止めなければならない。 「状況は極めて不利だ。しかも、今度襲ってくるユングフラウ小隊は、大型兵器を投入している。この間のような白兵戦とはわけが違う。夜間でおまけに足場も悪い。おそらく奴らは奇襲攻撃をしかけてくる。くれぐれも気をつけて行ってきてくれ。無事に撃退できることを切に祈っている」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月02日(火)23:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●約束の雪辱戦 不穏な爆音が上空に響いている。大型戦闘ヘリが旋回して地上の様子を伺っていた。三ツ池公園の大砂場に突如としてユングフラウ小隊の勢力がなだれ込んでくる。前衛のナイトクリーク陣がダンシングリッパーでリベリスタ達に一斉に襲い掛かった。 「邪魔をする者はすべて薙ぎ払え」 刺の甲冑に身を纏ったアイゼルネが味方に指示を出す。鋭い目つきで立ち向かってくるリベリスタ達を威嚇した。ブロンドの髪を靡かせて積極的に立ち回る。 だが、そんなナイトクリーク陣の猛攻を浴びながらも『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)と『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)が抜け出してきた。 互いに刀とブレードで裁きながら一目散にアイゼルネの所へ向かってくる。すでに少なからずダメージを受けていた。それでも目標はあくまでも少尉の首だ。 「この間は世話になったね、少尉。もう会いたくはなかったけど、あんたたちの企みは全て止めてみせる。借り、返しにきたから。救えなかった子たちの分」 壱也はすでに怒りを漲らせていた。度重なるナイトクリークの攻撃を浴びて息が乱れている。それでも気迫はまだ十分に残っていた。 「この間の傷はもういいのかしら?」 ようやくアイゼルネの前に立ちはだかったこじりが大業物を突きつける。壱也と一緒になってアイゼルネを絶対にここから動かすつもりはなかった。 「お前たち一体だれだ? どこかで会ったことがあるというならそれは勘違いだろう。私の姿を見て生きて帰れた奴はこれまでにいないはずだからな」 アイゼルネは首をひねった。どうやら覚えていないらしい。こじりと壱也は舐められて今度こそ怒りを爆発させた。 「上等ね。いいわ。此処で全て、終わらせましょう」 「そんなわけでさっそくわたしのお相手願えるかな。こんな小娘じゃ不満? 大丈夫、満足させてあげるよ!」 こじりと壱也は互いに目配せをした。アイゼルネを挟むようにして左右から迫って一気に間合いを詰めた。 「約束通り、また会ったわね。ハンスさん。あたしはお嬢さんじゃないわ、日野原祥子よ。今度は前みたいに中途半端には終わらせないわ。あたしは最後まで立ち続けて、きっちり決着つけてあげるから」 『蜜月』日野原 M 祥子(BNE003389)が月の盾を構えて金髪碧眼のハンス・ローゼンバーグ曹長に立ち向かう。後ろから敵の猛攻をくぐり抜けてきた『薄明』東雲 未明(BNE000340)もハンスを威嚇した。 「雪辱戦なのはお互い様、今夜こそは一勝させてもらうわよ!」 ハンスは祥子と未明を見てニヤリと笑った。 「またお前たちか、性懲りもなくやってくるとは物好きな奴だ。それともよっぽど俺に惚れてしまったのか?」 「生憎様。私には最愛の恋人がいるのよ。それよりその盾、いつから使ってるの?ステキな盾ね。あたしとおそろいみたい」 「ああ、これか? つい先日なぶり殺した敵が持っていた奴だ。でも残念だ。そいつがお前の恋人――ひろさんって奴じゃなくてな。そしたらあの世で一緒に仲良く暮らせたのに。これじゃ先にお前が地獄に堕ちることになる」 ハンスの言葉に祥子は唇をかんだ。自分は言うまでもなく他ならぬ最愛の人を侮辱するとは許せなかった。それにあの人は簡単に殺される人ではない。 「日野原、ハンスはあんたに任せたわ。あたしはホリメを倒しにいく。くれぐれも絶対に前みたいに無茶しないでよ。ただでさえ少ない戦力なんだから」 「わかってる。未明さんこそ大事な人がいるから――」 「あたしはいつでも覚悟して戦ってるわ。それにあの人のことも信じている」 未明はそれだけを言い残して祥子の元を去って行った。未明に力強い言葉を貰った祥子はもう何の迷いもなかった。ハンスに向かって月の盾を突きつけた。 ●剛鉄の機関銃 「みんな、気を付けて! ヘリが降りてくる」 大型戦闘ヘリが突然地上に向かって急降下してくる。それにいち早く気がついた『灯色』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が注意した。 その瞬間、辺りが機関銃の嵐に巻き込まれる。堪らず『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が味方の後衛を庇った。 「ぐふうっ!! さすがはヘリコプターを発明した国の出身ですね。私は精鋭などと呼べるほど強くはないですけれど、しぶとさだけには自信がありますよ?」 彩花は苛烈な攻撃を受けながらなんとか味方を守り切る。 ナイトクリーク陣がダンシングリッパーで後方にいるエリス・トワイニング(BNE002382)や『さぽーたーみならい』テテロ ミミミルノ(BNE004222)を狙ってくる。敵の目標は明らかに回復役の抹殺だった。 考えることは敵も味方も同じ。執拗な攻撃に二人を庇っていた『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)と『働きたくない』日暮 小路(BNE003778)も防戦一方となる。小路はディフェンサーとオフェンサーのスキルで皆を支援した。なんとか京一が星儀で敵を駆逐した隙にミミミルノが翼の加護を味方に施すことに成功する。 「みついけこーえんはぜったいにまもるのですっ…! つばさのかごをふよしますっ!みなさんにつばさをっ!!」 翼の加護を貰った『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)と『リコール』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)がようやくヘリの迎撃に立ち向かった。 「やられているばかりではありません。こちらも反撃できることをみせてやります」 ヘルマンはまおと一緒になってヘリの後を追いかけた。急旋回しながら逃げるヘリの腹に向かって必死になって食らいついていく。 だが、ヘリは小周りに優れていた。機関銃の方向を修正すると今度は飛んでいるヘルマンに向かって容赦のない銃撃を撃ちこんでいく。 「ぐっはあああああああ――」 ヘルマンが上空で機関銃によって撃ち落とされてしまう。すかさずエリスたちがヘルマンを救助して回復をなんとか施した。 「ヘルマン様の勇敢な行動は無駄にはしません!!」 まおはヘルマンが敵の猛攻を浴びている隙にヘリの腹にへばりつくことに成功した。面接着を使って絶対に離れようとはしない。ヘリの方もまおをふるい落としにかかるが、どうしても離すことができなかった。 「逆さまにへばりつくのは得意中の得意です。これでどうですか!!」 まおは機関銃に向かってハイアンドロウをかました。そのとき爆発音がして機関銃の銃身が壊されてしまう。ヘリはまおによって攻撃を封じられてしまった。 「ヘルマン様!! 今です。登って来てください」 まおは回復したヘルマンに向かってワイヤーを垂れ流す。なんとかワイヤーを掴んだヘルマンはようやくヘリの足にしがみつくことができた。すぐにフロントガラスまでよじのぼりカラーボールをガラスに叩きつける。 その瞬間、ヘリがぐらりと揺らいだ。ヘルマンの攻撃に前が見えなくなってしまったヘリが激しく揺れながら飛び始める。その隙にまおはワイヤーを羽が回転しているところに捲きつけて息の根を止めに掛る。 ヘリは動きが鈍くなってそのまま地面に向かって急降下し始めた。最後のあがきとばかりにミサイルを発射させる。 ミサイルは地上で戦っているリベリスタ達に向かって飛んでいった。大きな爆発音がして敵も味方も関係なく吹き飛ばされてしまう。 「くっそ!! ヘリだけは地上に激突するまでに破壊してみせます」 ヘルマンは渾身の力でエンジン部分を強打した。爆発が起きてヘリが斜めに傾いて地上に落ちて行く。なんとか味方がいないところに向かって思いっきり蹴飛ばした。 地上にいた彩花と未明が落ちてくるヘリにむかって行く。彩花は落ちる寸前でヘリに向かって渾身の回し蹴りを尾翼に向かって叩きこむ。 「堅さなら私だって負けてはいません!!」 尾翼が吹き飛び、ヘリは落ちて行く方向を変えた。続いて未明が後ろからメガクラッシュでプロペラの部分を弾き飛ばす。 ボロボロになったヘリはもう飛んでいることはできない。堪らず乗組員がフロントガラスを突き破ってしがみついているまおとヘルマンに銃撃を食らわす。 その瞬間、爆発が起きた。 まおとヘルマンは容赦なく煙に吸い込まれる。ヘリから吹き飛ばされたまおとヘルマンはそのまま池の畔に突っ込んでしまった。 ●負けることだけは慣れない ヘリのミサイルで吹き飛んだアナスタシアは血を吐いてアイゼルネの前に転がり込んだ。身体を踏みつけられてもがき苦しむ。 「くっ! そんな針鼠みたいな恰好して息苦しくないの?」 「――こざかしい」 蹴られてアナスタシアは堪えた。反対に脚を掴んでそのまま起き上がると、渾身の拳をアイゼルネの両脚に向かって叩きこんだ。 これにはアイゼルネも苦痛を歪めた。踏ん張りが利かなくなったアイゼルネはその場に膝をついて蹲る。続いてハイキックを甲冑に向かって叩きこんだ。 「ぐはあああっ!!」 アイゼルネはアナスタシアの蹴りを受けて後方に倒れ込む。甲冑を身に付けているとはいえその上からでも十分威力のある攻撃だった。 それでもアイゼルネは無数の刺のピンポイントスペシャリティでアナスタシアをめった刺しにする。これにはもうアナスタシアも防ぎきることはできない。 満身創痍の深手を負ったアナスタシアにこじりと壱也が歩みよった。三人とも多数の刺を全身に負っている。お互いに協力して刺を引っこ抜いた。 「そうそう、一つだけ、謝れる内に謝らないといけない事があるのよ」 こじりは口に溜まった血を吐き捨てて言った。 「私は貴方たちを誤解していた。全てに於いてただただ、過去の栄光にしがみ付いているだけの亡霊だと思っていた。でも、違うのよね」 「――なにが言いたい?」 「貴女はただ、軍人として生きているだけ。それは私たちが学生として、社会人として生きている事と何等変わりのない事だと、気付いたのよ。だから貴女を殺す前に謝っておきたかったのよ、御免なさいね」 こじりはアイゼルネに向かって刀を構えて威嚇する。動けないアナスタシアを壱也にまかせてふたたび斬りかかって行った。 さらに刺が飛んでくるがこじりは表情ひとつ歪めない。無数の刺に突き刺されながら鬼神のように迫ってくるこじりにアイゼルネはついに冷や汗を掻いた。 堪らず物質透過で地中に潜ろうとする。すかさずこじりが甲冑の刺を掴んで引きずりだした。アイゼルネはそのまま抱き締めるようにこじりを羽交い絞めにする。 まるでアイアンメイデンに全身を突き刺されたこじりは大量の血を噴いた。あまりの激痛に失神しそうになる。 「痛みならもう慣れた。でも、負ける事だけは慣れないのよ私――」 こじりは抱きしめられたまま刀でアイゼルネの甲冑を切り裂いた。 「ぐあああああああああ――」 絶叫とともにアイゼルネはもがき苦しんだ。あれほど堅かった甲冑が割られていた。こじりの捨て身の攻撃によってアイゼンルネは自身の最大の武器を失ってしまう。だが、力を使い果たしたこじりもその場に倒れ込んでしまった。壱也はそれを見てブレードを構えてこじりを助けにいく。 「必ずみんなで生きて帰る。だれもこれ以上死なせはしない!!」 甲冑が壊れたアイゼルネにはもう刺を出す能力はない。それでも残ったわずかな力でピンポイントスペシャリティを撃ち放つ。 壱也はブレードで薙ぎ払った。高く跳躍してアイゼルネと一騎打ちになる。わずかにはやく壱也のほうは先にアイゼルネの脇に到達した。 「ああああああ―――!!」 壱也は吠えた。重心を低くしてついに無防備なアイゼルネのわき腹目がけてブレードを横に向かって切り裂いた。 ●業火の向こう岸 「未明、後ろ!!」 マジックアローで支援していたエリスの言葉に、未明が振り向くとナイトクリークが迫っていた。 未明は構わずに相手の中核にいるホリメに飛び込む。京一と小路がナイトクリークを抑え込んでいる間に一気にソードエアリアルで決着をつけにいった。 「ぎゃああああ」 敵の懐に飛び込んでトドメを刺した未明はそのままの勢いで残りのナイトクリークたちを蹴散らしにかかる。 堪らずハンスが未明の方へ突進してきた。 「あんたの相手は日野原と大御堂、両手に花を楽しんでなさい!」 未明はメガクラッシュで相手の身体を突き飛ばす。どうしても支援にいくことがこれ以上できないと判断したハンスは舌打ちをして引き下がった。 「あなたの相手は私たちです。覚悟してください」 彩花の言葉にハンスはようやく意を決した。まずは目の前の敵を倒すことが先決だということを悟る。ハンスは超幻影で無数の木の障害物を作った。影に潜んで奇襲攻撃を狙うべく今度は祥子の方へと向かう。 「そうはさせません!! 超幻影と影潜みのイリュージョンは面白いですが、この眼には映らないのがとても残念です」 彩花は幻想殺しで相手の動きを見破った。ハンスの動きを先回りして出てきたところを渾身の拳でハンスの顔面を強打する。 「ぐはっ!?」 ハンスは不意をつかれて地面に倒れ込んだ。まさかの彩花の攻撃にハンスは動揺を隠せない。顔を拭ってハンスは立ち上がった。 「お前なかなかやるじゃないか。気の強い女ばかりでいやんなるぜ。ユングフラウ少尉だけでも日ごろから苦労しているというのに……まったく」 ハンスは思わず愚痴をこぼす。叩いても叩いても何度でも這い上がってくる彩花と祥子にさすがにハンスも消耗を隠せない。 「だがな――俺も負けているわけにはいかないんだよ」 ハンスは立ち向かってくる祥子にリーガルブレードで切り裂いた。何度も何度も容赦なく薙ぎ払う。祥子は血だらけになってふらふらになった。 月の盾同士が激しくぶつかり合う。どちらも一歩も譲らない。 彩花が交代して連続的に技を放った。絶対的な堅さを誇っていたハンスも次第に血反吐がでなくなるほど息を切らした。 「これ以上、立ち向かうとせっかくの美人の顔が台無しになるぜ? ひろさんはお前の顔を見てさぞかし悲しむだろうな」 祥子の顔はすでに殴られた跡で青黒くはれ上がっていた。それでも目にはまだ闘争心がみなぎっていた。ハンスもそれを見て祥子の覚悟の程を知る。 「今回失敗したら、あなたの首危ないんでしょ? あのお姫様の尻に敷かれてないで、あたしたちの所に来ればいいのに」 祥子の言葉にハンスは苦笑いを浮かべた。 その時だった。 ヘルマンとまおが対峙していたヘリが地上に向かって墜落してくる。制御の利かなくなったヘリは真っ直ぐにこちらに向かって落ちてきた。 彩花と祥子は堪らず戦線を離脱する。だが、ハンスはまさにヘリが落ちていく方向にむかって突進して行く。 「ハンス!! あんたまさか死ぬ気?」 祥子は敵だと言うことも忘れてハンスに向かって叫んだ。ハンスの行く手にはまさにこじりや壱也と激闘を戦って倒れ込んでいるアイゼルネがいる。 すでに残った数名のナイトクリークもリベリスタも避難していた。このままヘリが地面に突っ込めば辺りが大惨事になる。今ならハンスも間に合う。 「お誘いありがとう。祥子といったな? あれでも大事な上司なんだ。いつも気を張っているが、そのぶん敵が多くて上の方と喧嘩して落ち込むこともある。忘れてしまいそうになるが――彼女もまた一人の若い女性だ。だれか一人でも彼女の味方になってやらなくちゃいけない」 「ハンス――待って!!」 祥子の言葉にハンスは一人で飛び込んで行った。 次の瞬間、大砂場にヘリが墜落して大爆発が起きる。辺りは業火に包まれた。火を逃れるようにリベリスタ達は池の中に飛び込む。 先に池に嵌っていたヘルマンとまおたちに合流して無事を確認しあった。重傷を負っている者も少なからずいたが誰も死なずにほっとする。 敵の姿はもうどこにも見あたらなかった。撤退したのかそれとも大爆発にまきこまれてしまったのかはわからない。 「ハンスとアイゼルネはもう――」 未明が炎を見つめて言った。湖畔沿いをまるで花火のように真っ赤に燃えがあらせている。とてもではないが人が生きているように思えない。 「ねえ、あれを見て!」 壱也が突然皆に向かって叫んだ。炎の中に黒い影が蠢いている。向こう岸の坂の辺りに大きな男がいた。胸に気絶した女性を抱えている。 炎から出てきたのは紛れもなくハンスだった。全身に大やけどを負っているが、まぐれもなく彼の姿だった。胸には重傷で気絶したアイゼルネを抱えている。 アイゼルネは死んでいるのか生きているのかここからでは判然しなかった。それでもハンスはこちらに向かって口元に笑みを浮かべる。 『今度こそは決着をつけよう』 祥子にはハンスがそう口を動かしたような気がした。やがてハンスは背を向けて公園の向こうへと静かに去って行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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