● 日本中を震撼させた『楽団』に続き、来日した新たなるバロックナイツ――リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター率いる『親衛隊』。 彼等はこれまでに日本を訪れた何れのバロックナイツとも一線を画した動きを見せていた。 親衛隊は、先ず日本の軍需産業に大きな力を持つ大田剛伝と結託し日本における活動のバックアップを得ると共に国内主流七派とも接触。 彼等七派との武力による衝突を巧みに避けた上で、彼等の有するフォーチュナ情報を武器に、アークのリベリスタ達を標的とした『狩り』を開始したのだ。 そんな事態に大きな転機が訪れたのは、アークと逆凪の首領・黒覇の夕食会の事である。 黒覇の言によって明かされる親衛隊の目的。 それは、『一般人にも扱える革醒兵器の量産』を始めとした、『ミリタリーバランスの破壊による第三次世界大戦の誘発』。 世界を巻き込む危険な事態はアークに相応の準備を整える暇を与えず、既に加速を始めていた……。 ● 「――三ツ池公園の制圧ですか」 「ひひっ、そうだよ軍曹。あそこは日本に存在する神秘の特異点ッ! 故に、ボク達の新兵器を強化するにはもってこいの場所って事さ!」 「それでは、彼等アークも相応の防衛網を敷いているのでしょうね」 三ツ池公園。 そこに存在している『穴』はこれまでにも多くの組織が狙い、行動を起こしてきたのだという。 そんな場所を安々と明け渡すような真似は彼等アークはしないだろうと親衛隊に所属する軍曹、アンネマリーが懸念したのは必然である。 だが、そんな彼女の懸念を或いは無くすような事態が起こっていると言うのは彼女の側に立つ同じ親衛隊所属のディートハルト少尉だ。 「いやいや、それがねぇ……どうやらそうも言ってられないような状況が起きちゃってるみたいでね! ひひっ、いっひひひ!」 ひひっ! 相変わらずの奇妙な笑い声と共に、彼が告げた”偶然”に納得したようにアンネマリーが相槌を打った。 「ああ……日本の七派の首領達が”偶然”同時に動き出していましたね」 「そうそう、偶然にも、彼等が一斉に動き出してくれたお陰でアークはそっちに精鋭部隊を回さなくっちゃならなくなったみたいでね!」 「では、我々を遮る障害は本来想定されているものよりも小規模なのですね」 「ひひっ! とはいえ、彼等も必死だろうからねぇ、油断はいけないよ!」 「……心得ています。立ち塞がる者あらば、その全てを踏み抜きましょう」 「ひひっ! その意気だよ、ちょっと練習でボクとか踏んでみないかい! いーっひっ……いッ!?」 上官に対するものとは到底思えないような、感情のこもらない瞳に思わずディートハルトが冗談に決まってるじゃないかぁ!?と訴える。 「全く……緊張をほぐして下さるのには感謝しますが、その、セクハラですから」 本当に、踏み抜きますよと。 呆れたようにため息をつきながら、ほんの僅かではあるがアンネマリーは表情を緩ませた。 見るものが見ればその表情は心なしか、何処か紅潮しているようにも見えるかもしれない。 「悪かったよ。ちょっと今回重要な作戦だからね、緊張してるの見るとついねぇ、ひひひっ!」 さぁ、時計の針を逆に回してやろうじゃないかとディートハルトは自分が率いる部隊と共に、三ツ池公園へ向かうのだった。 ● 「何で来たばっかりでこういう緊急事態が来るかなぁ……」 アークっていつもこんな大事件起こってるの?と、ため息ひとつ。 本当ならこういう状況の説明はもっと場数を踏んだフォーチュナのほうが適性は高いのだろうが、今はどうやらそんな事を言っている場合ではないらしい。 表情を直ぐに切り替えた鈴ヶ森・優衣 (nBNE000268)が説明を始める。 「昨日、主流七派の首領達が一斉に事件を起こしたのは知ってるでしょ?」 目的は不明だが、同時に動き出した国内主流七派の首領達。 アークの有する精鋭部隊達が 彼等の迎撃に向かったのはアークに居る者達であれば誰でも知っている周知の事実だ。 「此処からが本題。そんなすっごく大変な時なのに、別の人たち――親衛隊が動き出した」 親衛隊。 日本に現れた新たなバロックナイツであり、先日の逆凪との夕食会で明らかになった様に第三次世界大戦を目論む危険な敵である。 その彼らが、首領達の動きに合わせる様に動き出したとあれば、正しく非常事態と言えるだろう。 「……敵の狙いは、三ツ池公園の制圧」 閉じない『穴』を有する国内有数の神秘の特異点。 「大田剛伝と結託して強力な新兵器を開発し続けてる親衛隊はすごく強力な敵だよ」 そんな彼等に、幾ら七派の首領達に戦力を割かれているとはいえアークの予備戦力をぶつけるのは危険であり、無駄に被害を増やす事に繋がってしまう。 「だから、残っているみんなにお願いするしかない」 親衛隊はどうやら今回の任務をかなり重要なものと位置づけているようで、それはつまりこれまでの『狩り』とは本気度も異なるという事だ。 「みんなに迎撃して貰いたいのは、親衛隊所属のディートハルト少尉と、アンネマリー軍曹の二人が率いる小隊」 実戦経験豊富な親衛隊の部隊……その中でも部隊を率いる二人は、太田剛伝と開発した革醒兵器を所持しており、注意が必要だ。 なお、彼等の持つ革醒兵器は彼等自身が倒れれば作動する自爆スイッチによって、アークの手に渡る事はない。 神秘の特異点に、危険な嵐が今訪れようとしていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月02日(火)23:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「御機嫌よう、公園で遊ぶ事がお好きか」 「また会いましたね。何処かで見覚えが……と、思い出すまでもありませんでした。此処から先は行き止まりです」 爆音轟く戦闘が続く三ツ池公園の一角。 公園を散歩していたら、偶然君達と出会ってしまったよと遭遇した親衛隊の一団に嘯くのは『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)だ。 「ひひっ! 覚えていてくれたとは光栄だねぇ!」 「その下品な笑い声に、ドリル。あなたの強烈なキャラクターは嫌でも忘れられないですよ」 嫌味をくわえながら『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)がそう、言葉を吐き捨てた。 「いひひっ! 下品とは失礼だねぇ! ああ、そうだ、ボクも当然君の事は覚えていたよ? 二流民族とはいえ、君のような可憐な娘は記憶に嫌でも残ってしまうからねぇ、ひひひ! 確か、名前は……」 名前は……はて、何だったかねと一団を率いる少尉、ディートハルトが首を傾げた。 「少尉」 「ん? なにかね、軍曹」 「我々は彼女の名前を聞いていません。ゆえに、思い出すのは無理かと」 「ひひっ! そうだったよ! いやぁボクとしたことが!!」 「事前の情報通りの強烈さだな。オレはアークのリベリスタのメイだ、どうぞよろしく頼もう」 「これはこれは丁寧なご挨拶を……ボクはディートハルト、見ての通りの……」 「変態ですが、少尉を除く我々親衛隊は誇り高き鉄の猟犬ですので、勘違いのないよう。アークのリベリスタ」 ディートハルトの言葉を遮るように、アンネマリーが台詞を被せた。 「軍曹!? 君のせいでボクが変態扱いじゃないか!?」 「何か? 踏みますよ?」 (御ほ……違う様式美だ。こうなんか親衛隊って感じがしない二人だな……) 妙に息のあった二人の掛け合いに、彩花達の後方に位置する『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)が思わずそんな事を考える。 しかし、例え見てくれがそんな二人であっても、その実力は本物だと聞いている。彼等は、油断ならない鉄の猟犬なのだ。 「ホント、真っ当な相手に真っ当な敵がくるとは限らないデスガ、少々ネジが外れてるようデスネ」 ディートハルトを真っ直ぐに見据えながら、『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)が言う。 「軍曹、言われているよ!」 「はぁ……少尉の事では」 「いえいえ、両方デスヨ、まぁ真っ当でないのはボクもデスガ。そう……正気であっては戦場に立てず。されど狂気でなければ夜の街へは降り立てず。都市伝説が戦場を夜の都市へと塗り替えるデスヨ。アハ」 「都市伝説とは言うじゃないかッ! そういうのは我々アーリア人の特権だよ! 君も聞いた事あるだろう? 我が祖国の都市伝説ばりの超兵器の数々をッ! ひひひひひっ!」 行方の都市伝説という言葉に、妙な対抗心を燃やしたディートハルトが楽しげに笑いを響かせながら言う。 「それ、戦争に負けた国が言う言葉じゃないよね。正直、失笑ものだよ」 超兵器だか何だか知らないが、先の大戦で敗北を喫し、今なお姑息に世界の裏で暗躍せんとする旧国の亡霊。 彼等は自分達の敗北を認める事は出来ず、けれども今の世界にも馴染む事も出来ず。 そんな連中が、誇りだの何だのと語るのは正直見ていてどうかと『疾き風の如く』秋月・惠一(BNE003639)は思う。 「言いますね。では、この場で貴方がたの守りを踏み抜き、突破し、その言葉を撤回させて差し上げましょう」 祖国を馬鹿にされたからか、アンネマリーが冷たい視線で惠一を睨みつける。 「やってみなよ、やれるものならさ」 その視線に屈する事なく、挑発に乗るように、惠一が愛用のナイフを構える。 「ひひっ! それじゃあ、名残惜しいがご退場願おうじゃあないかッ! ボク等の計画の邪魔をする連中を、鉄の誇りと共に打ち貫きたまえ!」 ディートハルトの掛け声と共に、兵士達が即座に戦闘行動を開始する。 ● 空気が変わった。 それを敏感に感じ取った『アカイエカ』鰻川 萵苣(BNE004539)がわずかに息を呑む。 此処に来る前に目を通した親衛隊に関する報告書には、彼等はイカれた連中だと書いてあった。 実際に自身の目で見た限り、それを疑う余地こそなかったが、彼等は引き際を心得る冷静さも兼ね備えていた。 それは同時に、一度戦いが始まれば冷静に、したたかに、獲物を狩る猟犬となる事を示している。 (きっと、僕より場数を踏んだ先輩の方がこの場には相応しいんだろうけど) この場に居ない誰かと比べられるのは正直、好きとは言い難い。 「僕は、僕のやるべき事をやるだけですよ。どんな時でも」 前に出てかっこ良く大立ち回りを演じるなんて出来ないけれど。 代わりに、前線で傷ついた仲間を、相手が嫌がって泣き言を言うくらい回復に徹してやればいい。 「けーいち、ちょっとだけ駆けっこをしてみよう。きっと楽しいのだ」 「じゃあ、メイはスタートの合図を宜しくね」 よういドンで風になろう、と。 アンネマリーのラグナロクによって、相対する者全てを殲滅する軍神の加護を得た兵士達と、合図と共に飛び出した五月や惠一が衝突する。 リベリスタ達は二手に分かれて攻め込んでいた。 そうする事で、指揮官二人を分断させ、あわよくば各個撃破する構えだ。 「貴方達に興味はありません! どきなさい!」 突撃あるのみ。 アンネマリーへの進路上に立ち塞がる兵士達を、雷光を纏う疾風怒濤の武舞が荒れ狂う! 壱式迅雷――彩花の雷牙による凄まじい拳撃の嵐だ。 その攻撃は、彼女の至近距離に居た兵士達全てに等しく放たれていく。 「狙いはこちら、と。ですが、そう上手く事が進むでしょうか? 貴方達、私の脇を固めなさい」 彩花の狙いが自身である事を素早く察知したアンネマリーが自分の周囲に居た兵士達に指示を送る。 「進ませて見せますよ。私達の実力をもって!」 「道を阻むというのならば、この手で君達を一閃しよう」 だが、そんな事くらいは想定していた事だ。 彩花や五月が凛とした表情は崩さず、自信に溢れた声でアンネマリーにそう言い返す。 「親衛隊は搦め手がお好きらしい。それもとても素敵だな」 でも、と五月は言葉を続ける。 「オレは、力押しのが好みだ!」 アンネマリーを庇う様に前に立つ兵士へ向けて、五月が師から授かりし護りの刀――紫花石を力任せに目一杯振るう。 何が何でも押し通る。 全身のエネルギーが込められたメガクラッシュに兵士がたまらず声をあげながら大きく仰け反った。 瞬間、道が拓く。 それは常に移り変わる戦場における時間においては僅かな刹那とも呼べる時間であり、機を逃せばすぐに別の兵士が今度は立ち塞がるだろう。 「けーいち!」 自分を呼ぶ五月の言葉に、惠一が頷く。 今この瞬間、僅かな隙に滑り込めるのはソードミラージュである惠一を置いて他にはいないだろう。 だが、出来る事なら自分よりも戦闘力の高い彩花をアンネマリーの元まで届けたい。 その為に目の前の兵士達と戦うのを優先すべきか。 五月と同じく、前衛をノックバックさせる予定の行方はまだ控えているが、今度も上手く行くとは限らないのだ。 「構いません、先に行って下さい!」 「彩花さんの道は、私が開いてみせるデス。惠一さんは気にせず特攻するのデスヨ!」 彼女達の先に行って欲しい、という言葉が後押しとなり迷いは消えた。 「そうだ、父さんと母さんが守ろうとしたセカイを壊すなんてさせられない!」 一陣の風となりアンネマリーの懐へ飛び込んだ惠一がそのまま、愛用のナイフでソニックエッジを繰り出す。しかし。 「残念ですが、私の守りを崩すには少々力が足りませんでしたね。速さはなかなかのものですが、軽い」 麻痺するどころか、連続攻撃をさして気にもとめないアンネマリーは流石は部隊の副官をつとめるクロスイージスといったところだろうか。 「周囲を飛び交うカトンボは、落として、踏みつぶしてあげますよ」 その言葉に、カチンと来た。 「それ、自分達がWWⅡで踏みつぶされた癖にその口癖、皮肉が効いてるよね。見ていて笑いを誘うだけだからやめた方がいいと思うよ」 惠一の言葉には、無論挑発の意図もあったが、それ以上に言い返してやりたくなったのも事実だ。 「どうやら、貴方とは反りが合わないようですね。いいでしょう、その言葉……覚えておく事です」 冷たい、猟犬の声に惠一が息を呑む。 挑発してしまったものは仕方がない、アンネマリーの目は確実にこちらへ向くだろう。 後方を見る。 丁度、一歩遅れて行方が放ったハイメガクラッシュがアンネマリーへの道を阻害する兵士を仰け反らせ、刎ね飛ばした所だ。 「さあ、彩花さん! レッツ突撃デスヨ!」 「ええ!」 肉斬りと骨断チ、対となる巨大な肉斬り包丁をアハ、と笑いながら行方が振り回して道を文字通りに切り開く。 これで直ぐとは言わずとも、彩花も彼女があけた道を通って、自分の元へ駆けつけてくれる筈。 「構わないけど、早くしないと直ぐ僕の仲間が駆けつけるよ」 何が何でも耐えてやる。 決意と共に、惠一が眼前の強敵へナイフを構え直した。 ● 「良くもまぁ、何重にも策謀を重ねて自分達に有利な状況を作り出してくれたもんだな。さすが、昔から戦争していた奴等は違うって事か?」 戦争屋ゆえの、クレバーでしたたかな戦略は敵ながら見事だと『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は感服する。 だが、義弘達とて幾つもの修羅場を潜り抜けて来たリベリスタ。 簡単には負けはしないと手にしたメイスによるリーガルブレードを眼の前の兵士へ叩き込み、後方に控えるこの部隊の指揮官たる男を見据える。 そう、彼が目指す先は、この部隊を率いる指揮官ディートハルトの懐唯一つ。 「お姉ちゃんはそういうメカニカルだとかギミック凝ったりなものとかは好きだけど……」 義弘の隣で『Eyes on Sight』メリュジーヌ・シズウェル(BNE001185)が気糸で兵士達を縛り上げながら呟いた。 「解ってるじゃあないか! ひひっ! 特に、このドリルなんかはボクの趣味をとびきり反映させたメカニカルな代物で……」 案外、好意的とも取れるメリュジーヌの言葉に嬉しそうにご自慢のドリルをディートハルトが戦闘中にも関わらず、これ見よがしに見せつける。 「ええ、でも……」 「でも、なんだね? ひひっ!」 「ゴメン、生理的に無理!」 生理的に貴方の事は受け付けられないとメリュジーヌが言い放つ。 「なっ、ななな! ボクとドリルの親和性が解らないだなんて! 万死に値するよ君ぃぃぃッ!」 「どうぞどうぞ、でもお姉ちゃんだけが相手じゃないを忘れずにね?」 「勿論さ! さあ、ボクの自慢のドリルを味わい給え! ヒイヒイ声を上げて哭いてくれたまえよっ! ひひひひひっ!」 「義弘殿、メリュジーヌ殿! 気をつけて!」 後方からの射撃でアンネマリーのラグナロクを剥がしつつ、二人の支援を行なっていた七海が声を上げたその、一瞬後。 フザけた笑い声と共に、発射装置から激しく回転するドリルが撃ち出される。 ワイヤーで繋がれ、変幻自在に軌道を変化させるその夜色のドリル、シュラーク・ナハトの威力は先の交戦で折紙済みだ。 「こんなもの!」 義弘が即座に迫るドリルを回避しようと試みるも、まるで回転に吸い込まれる様にドリルの身体を巻き込まれ、切り刻まれるそうになる。 「祭さん!」 情報によれば、あのシュラーク・ナハトは対象を麻痺させる力を持っており、義弘にそれを受けさせる訳にはいかない。 無論、今飛び込めば逆に、確実にメリュジーヌはあのドリルに斬り刻まれるに違いないが。 「祭さんはお姉ちゃんがやらせない!」 迷いはない。 義弘を庇う為に、メリュジーヌが盾になるように前に立つ。 自分はパズルの1ピースのようなもの。 仮にこれで倒れても、こちらが敗北するわけではないと飛び込んだメリュジーヌの身体を回転するドリルが無情に切り刻んでいった。 全身を襲う鋭い傷みが、致命傷である事を即座に告げる。 「ひひっ! ボクのドリルの素晴らしさに心が震え、シビれるだろう!?」 「上手いこと言ったつもりかもしれないけど、お姉ちゃん全然そんな事思ってないんだから」 そうは言うも、身体が重い。痺れて、動けない。 「よくもメリュジーヌ殿を!」 「ひひっ! 怒るのは結構だが、君結構ドリルに見惚れてなかったかね? 気が合うと思うから生かしておいてあげてもいいよ! ひひひっ!」 「……あんまりそうやって調子のんなよお前、胸が熱くなったのは本当だが仲間を傷つけられて笑っていられると思うか?」 既に判明しているホーリーメイガスの兵士諸共、インドラの矢でディートハルトを七海が狙い撃つ。 想いを打ち鳴らす様に放たれた緋は、戦場を烈火の炎で覆い、焼き尽くしていく。 「なかなか熱くなって来たじゃないか! ボクのドリルも益々ギンギンに燃え上がって来そうだよ! ひひっ!」 攻撃を確実にその身に浴びながらも、おどけたように嗤うディートハルト。 「ひひひって、その態度と笑い声、本当気に入りません」 七海と同じく後方に居た萵苣が、ディートハルトを睨みつける。 「常に笑い、おどけ、余裕ぶって……余裕は本当にあるのかも知れませんけど」 笑って戦争するディートハルトの方に戦場の空気が流れるのは、気に食わない。 一発ぶん殴ってやろうか。 いや、自分にはもっともっと相手にとって嫌な事が出来るではないか。 「こうやって安全圏で仲間を回復し続ける相手が居るのって一番嫌でしょう?」 萵苣の想いを乗せた天使の歌が、清らかな存在へ届けばそれは確かな力となって味方全員の傷を癒していく。 一度の詠唱で空気を変える事はとてもとても、叶わないけれど。 「僕は捻くれてますからね、一番嫌がる事を辛抱強く続けてやりますよ」 得意げに精一杯ほくそ笑みながら、萵苣がディートハルトに言い放つ。 戦いは熾烈を極めて行く一方だったが、きっとそうしていれば風は此方へ向くと萵苣は思うのだ。 ● 「かはッ!?」 何度目だろうか。 アンネマリーのヘイトをその身一つに請け負った惠一に、強力無比な蹴撃が叩き込まれる。 夜色に染め上げられた鉄の義足――ラプターバイン・ナハトの一撃はまるでその名の通り、猛獣に襲われたかのような衝撃だ。 防御の上から踏み抜かれ、気絶しそうになる身体を精神力で凌駕し即座に反撃を行う。 「戦場を自在に動きまわるその脚、不愉快です」 憎いのか。 哀しいのか。 複雑な感情の篭った声。 「貴方達の存在自体が不愉快です!」 「けーいち、後は任せるのだ」 「うん。メイ、後は任せた、よ……」 倒れこむ惠一の隣を、兵士達の攻撃など気にも留めず追いついた彩花、五月の二人が駆け抜ける。 自分の横を通り抜けた二人を見て、安堵したように倒れこむ惠一を行方が支える。 「良く頑張ったのデスヨ。惠一さん」 一瞬、惠一に気を取られていたアンネマリーの、僅かな隙。 仲間が稼いでくれた時間、与えてくれた最大のチャンス。 「逃がさない!」 間合いに入り込んだ彩花が、即座に回避行動を取ろうと後方に跳んだアンネマリーの気配を追って自身もまた跳躍する。 「けーいちが作ってくれた時間は絶対に無駄にしない。さぁ、オレという劣等を覚えておいてくれ」 決着は、一瞬だった。 彩花の弐式鉄山と五月のデッドオアアライブが同時に打ち込まれ、それを受け切ろうとしたラプターバイン・ナハトが耐え切れずに砕け散り、起動した自爆スイッチによって跡形も無く爆散する。 彼女の両脚でもある鉄の義足を砕かれ、為す術もなくアンネマリーが地面に叩きつけられる。 「軍曹!?」 義弘の侠気の鋼にドリルを突きつけ、貫かんとしていたディートハルトが副官の危機に思わず叫び声を上げた。 「どうやらクライマックスみたいね。どう? まだやる?」 戦況を見極めたメリュジーヌが撤退勧告に出る。 正直、メリュジーヌ自身は激しい戦闘でボロボロの状態でこれで退いてくれればという感じだ。 「……いや、やめておくよ。ボクも結構これでキツいし兵士の損傷も酷い」 「随分あっさり敗北を認めるんだな」 武器は構えたまま、警戒は解かずに義弘が言う。 「軍曹は見ての通り。革醒兵器も壊されちゃったからねぇ。やめだよやめ、他の部隊にまかせてボク達は退かせて貰うよ」 撤収だよ、と白旗を上げるように両手を掲げディートハルトが告げるや否や、統制の取れた動きで部隊の生き残りの兵士達が退いていく。 「よっと、ひひっ! お姫様抱っこされる気分はどうかね軍曹!」 唯一人、満足に動く事も出来ないアンネマリーを抱え上げたディートハルトが普段の口調に戻り嗤う。 「最悪ですよ。それと、動けない能なしの私を失うよりも『穴』を抑えるほうが親衛隊の後々を考えれば――」 撤退すべきではない、というアンネマリーを無視して少尉が撤退を始める。 「リベリスタ諸君。君達の仲間も無事公園を守り切る事が出来るといいねぇ、ひひひっ!」 「……この借りは、次に会う時返させて頂きます」 また逢おう、とそれだけ言い残しディートハルトの一団は、三ツ池公園を後にしていく。 だが、これでこの公園を覆う親衛隊の嵐の全てが過ぎ去った訳ではない。 他の戦場で戦う仲間達もまた、無事に勝利出来ている事をリベリスタ達は願うのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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