● 「マルガレーテ様! 全員揃いました! 後は出撃の許可を!!」 「うむ、まあまあの人数だ。戦争は数で無くてはな」 一人の軍服女の目の前に数十人の男が揃った。 縦横綺麗に整列し、一寸足りとも誤差の無い整列に女は素晴らしいと首を縦に振る。 「覚悟は良いか! 目標は三ツ池公園に開く神秘の穴!! 我等が栄光のために」 いざ――!!! ● 「ついに親衛隊が動き出しました」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は青ざめた顔でそう言った。 親衛隊達の狙いは三ツ池公園だ。この公園、狙われすぎだろう――『革醒新兵器』をより強化する為に神秘的特異点である『穴』は彼らにとって喉から手が出る程に欲しい代物らしい。 「――が、今五十人もの精鋭達が七派首領の対応で不在です。今此処にいる皆さんも立派な精鋭である事に違いはありません。この危機を、なんとか脱出しましょう!」 敵は大田剛伝との結託で強力な新兵器を開発した。つまり兵器によって更なる力を増しつつあるのだ。 「これまで敵はアークリベリスタ狩りをしてきました。ですが、この三ツ池での戦争は今まで以上の気合いの入りようです。皆さんが向かう場所は兵器はありませんが、それでも強敵に間違いは無いでしょう。此処で、食い止めます。だって」 亡霊達の夢は実現させてはいけないのだから――!! 「皆さんには里の広場へ向かってもらいます。そこでマルガレーテ上等兵率いる親衛隊を迎え撃ちます」 時刻は夜。明かりもほとんど無い広場へ敵はやってくる。 「部下はほぼ、マルガレーテの指示に従って動くようなので、司令塔である彼女さえどうにかできれば統制を崩し、こちらを有利にする事が可能……かと思うのですが、どうにもこうにも、敵の数が多くてですね」 個々の実力は親衛隊にしては落ちこぼれ程度だが、花があっての花畑の様だ。 「里の? 広場?」 ピクリ。傍で座ってただ見ていた『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)がむくりと起き上がった。 「あそこ、嫌いなのよね」 ――色々あったから。 機嫌悪そうに眉間にシワを寄せた彼女。途端に。 「マリアも行くわ。人数、足りないんでしょう? 宜しくしてやるわ、ふん、面倒見てあげるのよ、ふっふーんだ」 「はい……でもマリアさん、あんまり無理せずとも……」 大丈夫だと、マリアは言う。アークには優しい人たちが沢山いるもの、と――それに目的は別にもあって。怒りが収まらないのだ、マリア自身でさえ近寄りたくも無いクリスマスのあの場所を更に血で染められるのが。だから、ね。 「全部殺しちゃっても良いのでしょぉぉ?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月03日(水)23:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「敵襲か」 「マルガレーテ様! 如何なさいますか!!」 「勿論、決まっている」 ――全滅させる。 随分勝手な事言う連中だ。 土足で人の土地に来ておいて、制圧するなんて。一体何処の組織に喧嘩を売ったのか解っているのだろうか。 「あいつらがなんかしようとしてるらしい、と沙織くんたちは言ってたが、あたしには難しくて何がしたいんだか全くわかんねー。たまに言葉すらわかんねー」 Ja!ってなんだよJa!って。日本語でおk。 『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)は速さのリミットを最大限に上げながら、遠くの敵を見た。 拍手でも送りたくなるくらいに陣形は綺麗に縦横並ばれて、その奥には恐らくマルガレーテなのだろう、女が一人健在していた。 「綺麗好きってのはよく解ったー。だがそれ意味あるのかー?」 「さぁな、今言える事があるとすれば……数は多いが負ける気はしないな! 変身ッ!」 『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)はAFよりメタモルフォーゼ。その身体に青いスーツが指先から腕、肩、そして全身へと絡みついては撃龍を身に纏う。見事変身した彼に比翼子は羽の手で拍手を送れば、疾風は少し照れて笑った。 珍しく地面に素足を置いて歩く『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)は、『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)に手を引かれながら眠たい目を擦っていた。 「ママ……、マリア、眠いわ」 「マリアさん、もう敵の目の前やよぉ……」 殺伐した言葉で啖呵切って来たものの、時刻は夜だ。一二歳の少女には些か遅い時間である。椿がマリアの頬を軽く叩きつつ、敵影を指さす。 「マリアさん、マリアさん、あれは遊んでも良いフィクサードやよ。折角のお外やん、目、覚ますんよ」 重い瞼をこじ開けて、目を開き、そしてその目が更に見開く。 「マリア、あいつらで遊ぶ!」 彼女にとって遊びとは殺し合い。彼女の教育どうなっているんだ組長。 どんどん目線が見開いて、奥歯を噛むマリア。彼女にとってこれほど嫌な場所は無いのだろう――それを荒らす敵は全て、殺すと心に決めて来たのだ。 ルビーの様に輝くマリアの瞳に、人差し指が立った手が映った。 「私達が一緒に居る、思いきり痛い目を見せてやるといい」 『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)は彼女に言う。解ったと両手を広げ、ぴょんぴょこ跳ねたマリアに彩音は頷く。 そして椿と目線を合わせ、再び頷いた彩音。事は、相談通りに。少女を護ることを誓う。 楽しそうにキャアキャア騒ぐマリアの頭に、そっと手が乗った。『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)だ。赤い瞳と赤い瞳がぶつかる、できればこんな少女に戦いなんてさせたくないという還暦(+1)少女。 「でもこれは戦争じゃから仕方ないのう」 「?」 自身が通う孤児院を思い出しながら、レイラインは優しい手に武器を携えた。戦意と忌々しい敵へ殺意を込めて。 ――遠くからマルガレーテが吼える。 「アークと見受けた。速やかに殲滅されるが良い!! 往け、我が軍、我が同志達よ!!!」 一斉に攻めてくる敵。もはや逃げ場は、無い! 「おっに、さん、こっちら! 手、の、鳴る、ほー、へ!」 『ましゅまろぽっぷこーん』殖 ぐるぐ(BNE004311)は尻尾を振りながら軍勢を見ていた、が、くるり。マリアの方向へ瞳をずらす。彼女の耳元でぼしょぼしょ喋った後、 「ボク達を信じなさーい」 と、前に突き出された胸をぽんと叩いてウィンクをひとつ落とした。マリアは何回も頷きつつ、ぐるぐの突撃を見守る。その覚悟、確かに受け止めたと勇気を渡しながら。 「よーし、じゃあ滅茶苦茶にしてくっぞー」 わくわくしながら比翼子もぐるぐに続く。 「後顧。憂いなく、後ろは任せたまえ」 軍服を身に纏った『剣』獅子吼・高原・鶴来(BNE004503)が僅かに頷いた。だが内心。 (どっどどどどどどうしましょう? どうします?) 慌てふためき、震える身体を止めるのに精いっぱいの力を使っていた。だってだってだって、いくら精鋭が不在だからって新人を戦争に放り込むなんて鬼だよ、鬼だよね、アーク。 心の中で理由を並べても、もはや戦場内。顔色ひとつ変えずに軍人に成りきるのは鶴来の特殊能力と言えよう。 そんな彼女の隣で『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)がマリアを背中側から抱えて、言う。 「女指揮官だからって敵の男、張り切っちゃって無いわ。ほんとスケベ!!」 「キャハハハハ!」 「でもこっちには幼女万歳、マリアちゃんがいるんだからでへへへへへ、ちょ、ちょっとだけ……」 マリアの髪と背中と翼に、もふもふくんかくんかすりすりすり。 「くすぐったいのよ」 「何してんねん!!」 敵陣へ攻撃を仕掛けようとした椿が、マリアセンサーで超反応。狐面のちょっと飛び出した部分でぱこーんと瞑の頭を叩いた。 叩かれた部分にたんこぶを作りながら瞑はマリアの耳元へ囁く。 「じゃ、マリアちゃん。やっちゃいなさい」 「はーい! 謳ってね、無垢なる刃に削がれる断末魔をォ!」 瞑はにっこり笑いながら、刹那、マリアの目から消える程の速度で敵陣へと走る。 マリアが手を振り上げた瞬間、瞑の後方より漆黒の魔法陣が出現。刹那――黒き閃光が敵の陣営へと雨の如く降り注いだ。 ● 「実践。されどこの場にて先達の力、見せて頂こう」 鶴来の目線の先、走っていくリベリスタ前衛陣は敵陣営と混ざって刃を交え始めた。未だ綺麗に陣形を保つ敵に、鶴来は心無しか天晴と頷く。 漆黒の横雨が降る中、最速の瞑はデュランダルとソードミラージュの陣の中へと身を投じた。 すぐ隣、刃を仕掛けてくる速度狂の敵より早く、彼女は彼の首元を掻っ切る――! 「さってと、最初に死にたいのは誰?」 瞑が笑う。瞬間、マリアの閃光が敵を射抜いていた。 「怯むな、一体ずつ集中攻撃して落せ!!」 遠くのマルガレーテの声が耳に入った。サジタリーの矢の矛先はレイラインだ。だが向かってくる矢を彼女は扇子で薙ぎ払って進軍。 目指すはマルガレーテの御身だ。司令塔こそ倒す事が、この敵を破る最高の一手と信じて。 レイライン目の前、クロスイージスの男が立ちふさがった。だがそれで負ける彼女ではない。笑みを浮かべて、レイラインは一言。 「邪魔じゃよ」 荒れる猫又の殺気を見た時、男の喉元は綺麗に切り裂かれていた。金色の髪を濡らした、血。もう一度――攻撃が止まらないレイラインは男の息の根を止めるまで扇子で風を仰ぐ。 「まー、考えても時間の無駄だ。どうせきみたちは何もできずにここで倒されるんだからな!」 中指を突き立てる、比翼子。男の目線を此方に向けさせ、言葉は続く。 「木偶の坊如きに負ける気しねーなー」 彼女の心はピンポイントで彼等の心を揺さぶった。親衛隊の中でも落ちこぼれている部隊だ、だからといってプライドはある。 「頼んだぜー」 「おう」 ひらり、剣が比翼子の身体をすれすれで通過した。敵の攻撃をかわしながら、入れ替わりで走っていく疾風へ比翼子は言葉を贈る。 「人の夢は儚いと書く、世界を破滅に導く夢等儚く消えろ!」 彼の腕は雷を纏っていた。ジジジと音が、すぐ耳の横で鳴っているように思える程に鮮明で、大きな雷を背負って。 背後からソードミラージュの攻撃を受けようとも、デュランダルの剣を抑えようとも、疾風は雷を従え走る――その先、レイラインを超え、瞑を超え。 「うおおおおお!!!」 撃ち放たれた拳は地面に直撃した瞬間に、暴走した雷がサジタリーを射抜く。 紫電の檻を突き抜けて、ぐるぐはぐるぐはぐるぐはぐるぐは大量に増えていた。 大勢のぐるぐが一斉に葉っぱを手に持って、ほぼ同じタイミング、同じ動作でサジタリーへと攻撃。 「ボク達は本物でしょうか?」 四人のぐるぐが総攻撃して、一人落ち。 「そうです! ボク達は本物です!!」 更に増えて五人のぐるぐが総攻撃して、二人落ち。 「く……これほどまでに綺麗な陣形があああ!!」 怒ったマルガレーテ。出したのは大鎌だ。それは瞬間移動して一人になったぐるぐの背後で出現。一気にぐるぐの腹部に刃が突き刺さった。 「おんろー? なんか刺さってるのらー!」 楽しそうに笑うぐるぐ。体力が無くなってこそ、彼等の力は最大限を引き出す。 「調子でてきたのららららららーー!!!」 「いやいや、それかなり痛そうなのじゃが」 後方で見ていたレイラインが首を傾げながらぐるぐを見ていた。 前衛がハッスルしている後方。その惨劇を見ながら後衛陣は詠唱を詰む。 全部といくのは無理は話だが、マリアの石化のおかげで一部分の前衛は動けなくなっている。だがそれでも回避の高いソードミラージュは後衛へ切り込んでくる奴もいる。 「前衛は楽しそうやんなぁ」 椿は軽くぼやきながら、迫って来た敵の剣をRetributionでいなしす。そして護符手袋をした手で敵を影に包み込んでは蹴り飛ばしてマリアから遠ざけた。 「はは、まあまあ」 小さく笑った彩音は、比翼子のアッパーに釣られていない敵へと気糸を放って、意識を此方へ向けさせた。勿論彼はやり返しというように十字の光を放ってくる。だがそれでいいのだ、前衛がより壁を突破できるようなれば。 十字の光を頬に掠め、彩音はマルガレーテを見た。 「上質なリベリスタが多いことを、解らせてやるさ」 もう一度だ、彩音は精神力を練り上げる。けして自分たちが弱くない事を、けして精鋭が全てで無い事を証明するために彩音は止まらない。 そんな先輩達の行動を見つつ、思考の片隅で敵軍の軍服のかっこよさに惚れ惚れしている鶴来。 「羞恥。何故此方は此処へこれを着てきたのか」 パンパンと顔を叩いて、己を奮い立たせた鶴来だ。しかしその前方、抜けて来た敵が短剣を振り上げていた。 弱い者から狙うのか――それは作戦的には有効な事。勿論、敵が仕掛けてくるのも目に見えていた。 まずい、と目をつむってしまった鶴来。だがそのナイフは彼女には刺さらない。 「あ……」 「なっ」 椿の額、血管が浮き出る――。 彩音はハッとした、彼女がすぐ隣から走り出していた事を――。 「ああ……」 椿の瞳、血走った――!! 彼女が見たのは、己の娘と慕うマリアが、己を身を呈して鶴来を襲うナイフから護った景色。 大きな翼で鶴来を隠し、己の小さな胸にナイフが食い込んで背中から刃先が飛び出していた。庇われていた手を振りほどいたマリアは恰好の的だと、そこに追撃が飛ぶ。サジタリーの矢と弾丸が幼い身体に穴を空けた。 「キャハハハ……ハハ、ハ、い、痛っ……」 「重傷。救護は……無しか」 崩れ落ちるマリアの身体を鶴来は受け止めた。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 椿の咆哮が大地を揺らす。 攻撃よりも前衛よりもマルガレーテよりも何よりも。優先するのはマリアの無事。 椿は爪が食い込むまでに握った拳で大罪人の顎を破壊し、そのまま髪の毛を掴んで地面に落す。かち割れた頭から血飛沫が飛んだ。 「詫びろとは言わん!!! 消え去れやワレェエ!!!!」 何度も何度も何度も何度も、拳は『死体』へと叩きつけられた。攻撃はもう必要無いと気付くまで、まだ少し時間はかかる。 「無事かしら」 見上げたマリアに鶴来は頷いた。抱える腕がどんどん温かくなっていくかと思えば、彼女の血で染まっていた。 踏み込んできた、敵のソードミラージュ。だが、これ以上マリアに怪我をさせてなるものかと、彩音が前に立ち動向を食い止めるのだ。 ピンチは紙一重でチャンスでもある。 鶴来は太刀を振った。例え、小さな己の力であろうとも。 「ぁぁああ!!!」 暗黒騎士の名を冠する力は敵を穿つのだから――。 ● 「うー」 比翼子は己の身を守りながら、アッパーに徹する。だがそれだけで、終わる比翼子では無い。 「うーーーーーおーーーーーーーーーー!!!」 両手のナイフを最大限に振りかざして、刃の舞。幻影か、それとも本物か、それを知るのは彼女一人だが、ナイフは群れていたイージスに刺さっては混乱を置いていく。 逆手を取って敵を味方にした比翼子はにやりと笑う。その笑みの先――マルガレーテ! 「く、こ、このぉお、このおおおお!!!」 折角綺麗にしていた陣形がもはやごっちゃごちゃ。秩序なんて無い、混沌しか無い。それが司令塔には許せぬ事で。 「汚い陣だな。よくやった比翼子君。これで少しは荒れる戦争っぽくみえるよ」 「貴様ぁぁああああ!!!」 彩音がわざとマルガレーテへ聞こえるように、高らかに挑発した。その声を聞く度に、マルガレーテの葬送の音色の精密さも消えるというもの! 彩音が織るのは気糸の群。それを石で動けぬ敵陣に降らしながら、笑う。 「そんなものか、マルガレーテ」 これしきでイラつくのなら、それまでだと彩音は言う。そこへ無慈悲にもレイラインの追い討ち。 「折角揃えた綺麗な陣形が台無しじゃのう! 今どんな気分? んな気分じゃ?」 「最悪な気分ですぅうよおおおお!!!!」 怒り狂う彼女の葬送曲が突き抜ける、だがその鎖の間を縫いながら、目の前のサジタリーの首を掻っ切った。 死体に食い込む刃を抜いて、鶴来は刃をマルガレーテへと向けた。 人生何が在るか、なんてフォーチュナでも解らない。まさか己がドイツ人と剣を交えて、あげくに殺すなんて思っていなかった。 片腕で荒い息を吐くマリアの重さが突如軽くなったと思えば、鶴来の前で彼女は翼を広げた。 「引率するって、言ったもん」 瞬時――漆黒の閃光が敵を突き抜け、石化の嵐が舞い上がった。 後衛陣のフォロー、堕天落としの行動妨害あってして、前衛が司令塔へたどり着くのも易々と出来た。 息を合わせて突き抜けていく、レイライン、疾風、瞑。三人で同じ方向、同じ敵を薙ぎ払いながら前へと進む。目指すは――マルガレーテ。 その頃には椿がマリアを攻撃したサジタリーたちの中軸へ単身突っ込んでは、断罪の殴打殴打殴打殴打の連打。 「つ、椿は大丈夫か!?」 「気にすんにゃ、いつもあんなじゃのう」 血走る椿に心配する疾風だが、そこは上手くレイラインが流す。今はそんな事よりも、だ。 「やほやほ、どっちが本物?」 「!?」 一番にたどり着いたのはぐるぐ。いつの間にかにマルガレーテの隣に立っては質問を投げかける程の余裕があった。 声が聞こえた右を見たマルガレーテ。だがそこに彼等の姿は無い。 「こっちだよ?」 今度は左だ。だが、またいない。 「ざーんねん、こっちでした」 マルガレーテは背中に熱を覚えた。見れば、縦に斬られて血が噴き出す。 「な!?」 驚いた時にはもう遅い。 「古今東西、戦いでは指揮者が倒れた方の……負けじゃ!」 交差した扇子を解き放ち、レイラインが前方よりマルガレーテの胴を切っていた。何故、此処まで踏み込めているのだと、マルガレーテは驚く。 四つの壁を乗り越えて来たリベリスタ達、事は上々、全て上手く運んでいたのだ。 前衛の攻撃は止まらない。飛び込んできたのは、 「歯ぁ、食いしばれ」 音もなく近づいた疾風が、マルガレーテの頭を地面へと落とす。メキメキと音を立て、地面が凹んだのは疾風の怪力からか。 「じゃあいつ殺るか? 今でしょ!」 そこへ身を投じて来た瞑。 「ひ」 怯えを感じた司令塔に、未来を図る力は消えた。感じるのは――ただ、ひたすらの死。 瞑のにっこり笑った顔が見えた瞬間、彼女の首が胴体とお別れをして遠くへと飛んだ。 頭部をキャッチしたぐるぐが、 「これ持って帰る!」 と、奇抜な事を言い出したが、それは後でメッされた。 「なんだーわいわい騒いで楽しそうだな」 比翼子が見る景色。司令の鎮圧によって、乱れる、否、どよめく取り巻きの男達だ。誰かは撤退するんだと叫んだ、誰かは黙りこくって武器を地面へと落とした。 「こんな程度で」 崩れるものなのか。比翼子はため息交じりに武器に着いた血を払う。 この戦い――もはやリベリスタの勝利であろう。 「マリアさん、あんまり動いたらあかんよ?!」 「……逃がさない」 マリアが血を吐きながら立っていた。それを支える椿。 詠唱したのはゲヘナの炎。青く、轟く光がアーリア達を飲み込んでいく。前衛のリベリスタが最奥に居たこの瞬間を狙って、域は燃え上がった。 「たぶん、簡単に殺せるわよ?」 マリアは鶴来へと行ってこいと言うのだろう。これが戦争、これが、殺しあい――!! ぐるぐと交わした言葉。味方を巻き込んでの攻撃――それは仲間を大切に思うマリアにはできない約束。 「やれやれ、上がいなくなった瞬間これとは驚きね」 「全くじゃのう。わらわ達は精鋭が不在でも護りきるのにのぅ」 生き残った者たちを狩るのも時間の問題。取り逃がしてしまう者も少なくは無いが、敵に打撃を与えるために狩ろう、その命。 「さて、何人生き残れるかな? あんまりアークを舐めないでくれ」 思い切り、痛い目を見ればいいのだと彩音は戦火へと身を投じた。尤も、恐ろしさを知った敵は、その時、命を落としている可能性は高いが。 炎の中で始まった狩り。それを見据えながら椿はマリアを両手で抱えながら戦場を後にした。 「やっぱり……此処、嫌いだわ」 「そうやね……」 始めての場所は、いつも戦場――。 まだ、戦火燃え続ける。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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