●G・G ぽつり、ぽつりと雨が降る。 先程無人と“化した”境内には、全体的に黒でまとめられたゴシック調のドレスを着る少女が一人。 これまた黒を基調とし、縁に白のフリルをあしらった一本の傘を右手で差しながら、そこに転がる複数の“何か”をじぃ……と、無感情な瞳で見つめていた。 しかし正確には、彼女は“少女”ではなかった。 別世界より来訪してきた“アザーバイド”と呼ばれる者。 彼女は待っている――強き者の存在を。 彼女は待っている――血肉が踊る戦を。 彼女は待っている――ずっと、ずっと。 そして『ゴシック・ガール』は嗤うのだ。一本目とまったく同じ形状をした真っ白な傘が、鮮血色に染まってしまうほど何度も“何か”に叩きつけながら。 「さあ、崇高なる殺し合いを、を始めましょう? ……ウフフフフ♪」 ●最悪と最善 「…………話を、始めても、いいかしら――?」 まさに顔面蒼白、といった面持ちで『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタ達の前に立つ。 「大丈夫なのか?」 「ええ、気にしないで。それより、皆には早急に当たってほしい事があるの。今ならまだ、間に合うはずだから」 そう言って、未だに呼吸の整わぬ様子でイブは今回自らと万華システムが予測した“最悪”について話し始めた。 小雨の降る夕方頃、とある寺院に一体の少女の身形をした、フェイト持ちのアザーバイドが現れる。 そのまま彼女は“強き者との純粋な殺し合い”をするがために寺院に乗り込み、中にいた住職ら五名を抵抗させる間も無く殺してしまう。 「皆には、彼女が絶対に寺院に立ち入らないよう、出来うる限りの強さをアピールして、彼女の気を引いて欲しいの」 そうすればきっと、彼女は襲い掛かってくる――否、殺しに掛かって来るだろう。 途中、物音に気付いた住職らが様子を見にやって来るかもしれないが、彼女は強き者と死合えるのであれば誰でもいいという考えの持ち主。一目で住職らが取るに足らない者達だと見抜き、興味を失くすだろう。その間に万一彼らが巻き込まれないよう避難させて欲しい。 「相手は桁外れの身体能力を持つアザーバイド。排除よりも元の世界へと戻すことを最優先に考えて。どうやら彼女、お気に入りの傘を持って出掛けることが好きらしくて、雨が止んだらどんな状況下であれ帰ってしまうようだから」 イブは未だ網膜にこびり付くように残る、凄惨な――最悪の状況を振り払うように目を閉じる。 そしてまた開いたときに、彼女の表情は元の“白”を取り戻していた。 「彼女を倒す、又は元の世界へと返したら、D・ホールの破壊を忘れずに行って。多分、寺院のどこかにあるはずだから。――くれぐれも、無理はしないで」 そう言ったイブは、強き信念を灯した両の瞳で、リベリスタ達を見送った――。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:坂譬海雲 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月02日(火)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ゴシックガールは厭わない 寂れた寺院の廃れた大地に、麗しく咲くのは黒き華。 今宵も望むは、強くある者との崇高なりし“戦闘”のみ。 さぁ、リベリスタ達よ――まずは、朗らかなる“選定”から。 示せ。 汝の強さを、魂の在り方を。 死すら厭わぬ少女の下に。 雨は大地をノックする。激しく、強く。 「――あら、あらあら? 今日、私と“死合って”くださいますのは、もしかすると貴方達なのでしょうか……?」 十代半ばのような顔付きに、あどけなさの残る未熟な四肢。 それは誰がどう見ようとも、少女としか形容し得ない見てくれで。 差すは黒傘。少女愛用の特注されし一の傘。 薙ぐは白傘。住職の血に未だ塗れぬ二の傘。 「こんにちは、異世界からのお客様。こちらの世界の言葉は解るかしら?」 まあ別に、わかってもらう必要も無いのだけれど。 開いた傘を、くるりと閉じて。『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)は溢れんばかりの余裕さと、満たせず疼く遊び心を携えた笑みでゴシックガールに語り掛ける。 「ええ、ええ。勿論、このような低俗な言語如きなら、私にも通じますわよ?」 溢れんばかりの闘気と、満たせず疼く闘争心を携えた挑発的な笑みを浮かべながら、ゴシックガールも黒傘を閉じた。 「あらあら皆さん、まるで合わせてくれたかのように私とお揃いの恰好で……綺麗なお洋服ですこと? でも、何かが足りませんわねぇ……。 ――ああ、そうです、そんな薄さじゃ目立ちませんよ? もっと、もっと、真っ赤に染めてあげなくては!」 二本の傘を、まるでそれが“私の剣”であると言わんばかりに構えた少女は、有無すら言わせず地を蹴った。 「ではまず、貴方達が本当に私を“殺す”に相応しき力の持ち主か、準備運動と称し、見極めさせていただきましょう」 人智を超える速度で振るわれた殺人傘。 しかし一人の少女の拳が火花を散らしながらも、それを受け流す。 「へぇ、止めてしまいますか、たかがヒトの脆弱な腕如きで」 「……御託とか、いいの。さあ……踊って、くれる?」 存外、硬い。 『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は傘の強度を自らの拳で直に知り、ひとまず距離を取る。 「ん……でも、次は避ける、よ?」 「そうですかぁ、ウフフフフ? ――相手の力量を弁えず、あまり生き急ぐなよ小娘? ですわ♪」 ほんの一瞬だけ。 どす黒い表情を覗かせたゴシックガール。そんな彼女から数メーター程の距離にて憂うのは、蒼き瞳と銀の髪を輝かせた、白き翼の生えし魔女・『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)。 「雨の日は翼が濡れてしまうから嫌いよ……錆び付いた鉄のような赤い雨は尚更、ね?」 「ではでは。それなら見なくて済むように、貴方を使って致死量の血雨(ちさめ)を降らすとしましょうか!」 二傘(にさん)流。 そう名付けられたのは少女独自のスタイル。文字通り、狂うほどに愛した二本の傘を携えたまま、氷璃の方へとゴシックガールは疾駆する! 驚異的な脚力を持つ彼女にとって、数メートルなどあって無いような距離であり、たった一歩で氷璃との距離を半分まで詰めたところで――。 「傘は持ってきてないから濡れ濡れだよ……早く終わらせないとねっ?」 「――ッ速い!?」 桃色の髪が宙を舞い、二本の傘諸共、少女を薙いだ。 トップスピードを駆使することにより得た限界を超える速度で、『純情可憐フルメタルエンジェル』鋼・輪(BNE003899)が放ったのはソニックエッジ。 直撃、とまではいかなかったものの、輪は確かな手応えを感じる。 「……あ、れぇー?」 感じたのにも、関わらず。 「……フフ、フフフ。まさか、まさかですよ? この私が、先制を許してしまうなんて、ええ、ええ! 愉快過ぎて血反吐を吐いてしまいそうです! さあもっと! 私を愉しませてくださいなァ♪」 リベリスタ達の陣形――そのど真ん中にて浮かび上がったのは、狂気と狂喜に染まる恍惚の笑み。 たとえほんの一瞬垣間見ただけであっても、かの聖母マリアが連想できてしまうほどに、この世の全ての生命を等しく愛し、慈しんでいるかのように錯覚してしまうような、酷く歪みきった微笑みだった。 「さあ貴方達全員纏めて相手してあげますわ? ほら、私が認めて差し上げましょう、“強者”たち。私を殺してご覧なさい?」 ゴシックドレスをふわりと翻し、舞うは武神たる少女一人。 「準備運動は此処までに、始めましょうか――本当の、“死合い”を。ウフフフフ♪」 ●或る男の決断 一方その頃寺社の内部では、“警官服を着こなした”一人の男が行動を始める。 「ふむ、聞こえるかなシャルロッテ嬢? ――自分だ」 『あっ、ウラジミールさん? 私たちはただいま絶賛戦闘中だよ、どうぞぉ~?』 無線機にて会話を行っているのは、どうやら『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)とゴシックガールと交戦しているはずの『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)の二名のようだった。 「……であろうな。少しだが物音が聞こえてきたよ。では、自分もひとまず作戦を開始する。外のシャルロッテ嬢らには支障が出ないよう――」 『寺社の警護は私らに任せて~。張り切っちゃうよ!』 「そうか、ならば心配など万に一つも無さそうだ。成功の報せは後ほど。ではな」 無線機を切り、ウラジミールは廊下を渡った先にある一枚の障子をわざとらしく物音を立てながら開いた。 「××警察署のものですが、こちらにお住まいの方はいらっしゃるかな?」 右手には偽造警察手帳。 「ええ、どうやらこの寺社を襲撃するという犯罪予告が、つい先ほど自分らの下に届きましてな。悪戯という線も考えたのですが、不審な人物も見受けられまして。はい、この周囲を調査させていただきたいのです。――そうですか、ご協力感謝致します。では、万一物音などがした場合、此処から出ないよう注意して下さい、ええ、危険ですからな。それでは本官も調査に向かいますので、これにて――」 ウラジミールは己に課せられた使命を迅速にこなす。元からの厳かな風貌も相まって、効果も大きく出たようである。 少々急ぎ足でふすまを閉じ廊下に出ると、外からの激しき物音がウラジミールの耳に届く。 「これは自分も、向かうべきであるかな?」 誰の、何による物音なのか判別が付かぬ以上、状況の良し悪しも自分には判らない。 「こちらウラジミール。作戦はたった今終えたところだ――これよりそちらに自分も向かうつもりであるが、いいかね?」 ●ゴシックガールは謳わない 寂れた寺院の廃れた大地に、麗しく咲くのは紅き華。 今宵も交すは、強くある者との快楽伴いし“死線”のみ。 さぁ、リベリスタ達よ――続いて、解など無き“試験”へと。 晒せ。 汝の脆さを、魂の彷徨いを。 生すら謳わぬ少女の下に。 雨は勢いを弱め、しっとりと絡みつくように降り注ぐ。 「速度は残念ながら輪ちゃんには及ばないけど、ボクのソニックエッジも、中々の威力じゃない?」 先ほどウラジミールが耳にした物音の正体。それは或る者より受け継ぎし、四方に刃を持つハルバード・『アンタレス』を振るう、戦場を舞う七人のリベリスタの一人・無線機にてウラジミールとの連絡を取り持ったシャルロッテのソニックエッジが、寺社前の大地を抉り取った際のものだった。 子供っぽい見た目とは裏腹に、繰り出される攻撃の重さはゴシックガールに一歩も引けを取らないようである。 「ひゅ~♪ なんて馬鹿力ですの? 貴方本当に、ヒトなんで――くッ!?」 「傷つけるのも勿体無いような、素敵なお洋服“でした”ね……まあでも、私の大切な服が汚れてしまっては困りますし、お姉さまたちに風邪を引かれてしまうのも嫌ですから、さっさと片付けてしまいますね?」 それは今戦闘において最速の斬撃を誇った、歪み無き一閃。。 『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)は両手で抱えた『Prism Misdirection』を空中にて一薙ぎすると、さらなる追撃の構えを取る。 「痛い、痛いですわ……それに、私の大切なお洋服も――っと!」 黒傘で地面を叩き、その反動で飛来してきた魔法製のミサイルを回避する。 「一発じゃ物足りない? 安心しなさい、まだあるわ」 連続して展開されていく魔方陣から放出される魔力弾の雨に、ゴシックガールは小さく舌を打つ。 「ッ! 貴方、私に喋らす気ないんですの――!? 開け、白傘ッ!」 血染めに塗れた白き傘が、その全ての魔力弾を触れた瞬間に霧散させていく。元々擁する大地をも砕く堅さに、魔力封じの力。 「この“白傘”は、私を守るために造られし世に一つの傘。ヒト如きの腐った秘術では、私に傷など付けられない!」 「“知ってる”。嵌められたのよ、貴方は。これで、決めるッ」 氷璃の口から紡がれていく詩篇と共に、編み込まれていくのは幾重に連なる魔方陣。その昔、とあるフィクサードが極めし技を氷璃なりのアレンジを加えることによって完成させた、オリジナルの魔術。 「あらあら、嫌な予感しかしませんね。いくら白傘があると言っても、これは流石に私も回避しておいた方が――」 「まあ待て。物は試しというだろう? 一度くらい喰らっておいても損は無いと自分は考えるが?」 「なッ、誰ですの貴方、さっきまで――!?」 寺社での仕事を終えて駆けつけてきた、八人のリベリスタの中で唯一の男は問答無用で雨露の中唯一つ光り輝く短剣を降り下ろす。 左手で握り締めた黒傘を薙ぎ、初見の男の短剣を弾き返すも、少女の左手には少量の痛みが迸る。 「八人目、援軍と来ましたか……まさかですけれど、私、追い詰められているのかしら?」 「氷璃の魔方陣が完成するまでの時間を稼げばいいのかしら?」 ひゅっひゅっと連続して乾いた風切り音が、雨音を掻き消し木霊する。咄嗟に黒傘を振り直すも、その“刃”達は静かに黒傘を捉えて、離さない。 「思わず防いでしまいましたが――これは、投、刃?」 ともなれば。その使い手はこの場において一人しかいない……糾華である。 「骨組みの部分は硬質なようだけど、傘布の部分はそうでもないみたいね?」 「どうせなら、骨まで砕いてあげたい、ね。でもその前に、動く、な」 「――あらあら、身体が動きませんけれど、これは貴方の仕業なのかしら?」 『ディスピアーギャロップ』。 初めに盾を務めた天乃。彼女によって張り巡らされた気糸たちが、ゴシックガールの動きを捉えた。磔のように動けなくなったゴシックガールは、氷璃の方に視線を向ける。 「異界の狂姫。名があるのなら名乗りなさい」 「……あら、どうして、ですの?」 「名乗ってもらわないと、貴女の墓標に名を刻む時、困ってしまうわ」 冷たい視線がゴシックガールを射抜く。その視線は、もはや生者に送られるそれではない 「ご心配無く。生憎と、私の墓標は此処ではないようですし――だってもう、雨が上がってしまうんですもの」 「そ、ならいいわ……逃れえぬ石化の呪い、その身を以て味わいなさい――ッ!」 放たれる氷璃の切り札とも言える、『堕天落とし』。同時に周囲にいたリベリスタ達は退避を決め込む。 ただ一人、ゴシックガールは殆ど動かなくなった身体でそれを一瞥すると、右手の手首だけをくいっと動かす。 「そんなもの、白傘で――ッ……あら?」 防いだはずの白傘が、色褪せていくと共に重みを増していく。 その時既に雨は止んでいて。 だけれどもゴシックガールは、大好きなお気に入りの傘たちを差そうとはしない。否、差せない。 「石と化してしまいましたわね、私の傘」 静かに、だけれでも熾烈に。 「二本とも、大切で、大切で、大切な、傘でしたのに」 少女の闘志が膨れ上がっていく。 「私の命の代わりに散った、二本の傘」 堕天落としのダメージを防ぐことはできても、その先を防ぐことは叶わないようで。 「もう今日は終いにしませんこと? 雨も止んでしまいましたし……何より私、今虫の居所が大層悪いんですのよ」 気糸の縛りも解かれて、まるで肩の重荷を降ろしたかのような清々しい表情に一点のみの曇りを陰らせ、ゴシックガールは跳躍しようと膝を曲げた。 ――向かうは寺社の屋根の上、D・ホールへ。 ●ゴシックガールは……? 寂れた寺院の砕けた大地に、麗しく咲くのは何の華? 今宵も想うは、強くある者との必然的なる“再会”のみ。 さぁ、リベリスタ達よ――少女は、次こそ真の“災害”とならん。 砕け。 汝の強さと脆さがもたらす、彷徨えし魂の在り処を以て。 救いを知らぬ少女の為に。 「あら……もう帰るんですか? もう少し私と遊んでくださいよ……さっきまであんなに楽しそうだったんですから……!」 そんな少女にリンシードは目にも留まらぬ速さで剣を振るい、最速のソニックエッジを浴びせかけようとする。 が。 「“常識的に考えて”、傘って武器には不向きだと思いませんこと? 好きでもなければ、絶対に使わないと思うんですのよ」 そう言って。 ゴシックガールは右手で握り拳を作ると、リンシードの剣の腹を力任せに殴り付け弾き飛ばす。そのまま同じ要領を以て作られた左の拳で、リンシードを殴り飛ばしにかかる。 「そうはいかん――ッ」 咄嗟にハイディフェンダーを駆使し、リンシードを庇うウラジミール。 しかしその凄まじく重い拳の一撃により、数メートルほどの後退を余儀無くされる。 「助かりました、ウラジミールさん」 「いや、礼には及ばん……が」 「何だか貴方達は最初から私の手の内を知っていたようですけれど、ごめんなさいね、私、雨が降ってないほうが強いんですのよ。だからわざわざこうして、雨の日に死合いをしに来ているんですから」 一足飛びで跳躍し、ゴシックガールは寺社の屋根に音も立てずに着地する。そして三、四メートル程下の位置にいるリベリスタ達を見下ろすと、 「私の名前はガウェインと申します。この名前、あまり気に入っていないのですけれど、貴方達は結構気に入りましたので、特別に教えて差し上げますわ――それではまたお会いしましょう?」 霞がかった笑顔で“再会”を望む少女。天乃は一歩前に出てそんな彼女を見上げつつ、告げる。 「楽しかった……また、いつかやろう? 待ってる、よ」 「……ええ、そうですわね。次死合う時は、私も本気で行かせていただきますわ。それに、こんな狭いところで貴方達のような強者と死合うのは、何だか勿体無いですし」 そう言って、少女はゲートを潜り元いた世界へと帰還していった。 ●ガウェイン 「ゲート、破壊完了したよー」 屋根の上で岬がシャルロッテより借り受けた無線機を使って、氷璃にゲート消滅の旨を伝える。 わざわざ無線機を使用したのは、大きな声を出すことによって寺社内の住職らにゲートなどの存在を聞かれてしまっては困るからだ。 『こちらウラジミール。住職らには、今回の件は悪戯であったと適当に誤魔化しておいた。まあ、これにて任務完了だろう』 「そう、二人とも了解したわ。――ありがとう」 「にしてもガウェイン……でしたっけ、反則じゃないですかぁ、あれぇ……」 寺社の鳥居に寄りかかっている輪が、独り言のように不満を漏らす 「だけど向こうも、本気を出さなければならないと思わずにはいられなかったようだし、それならむしろかなり善戦できた方だと思うわ」 糾華はそう言って砕け散った傘の残骸をふと見つめ、一度目を閉じてから視線を外す。 「……甘かったようですね。でも次こそは、必ず――!」 残骸の一部を持ち上げ、リンシードは己の手の中ですり潰す。 粉々になったそれは、流れ行く風に乗せられてどこかへと運ばれていった。 少しだけじめじめとしたそよ風が、疲れきったリベリスタ達の頬を、そっと撫でた。 「次は負けませんわよ、私が認めし強者たち――ウフフフフ♪」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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