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<Verzweifelt>汝、不朽不屈の刃なれ


 三ツ池公園。ボトムにありてボトムと全く異なる空気を纏う、正しく『異界』と呼ぶに相応しい神秘の充満は、常に自信と自負に塗れたフランツですらもその背を粟立たせるに足る状況だった。
 ……無論、それが怯えなどであれば既に彼はこの世に居るまい。そんなものを覚えた時点で、優生種としての誇りなど消し飛んでしまうだろう。彼は、そういう男だ。
「曹長、準備完了しております」
「そうか」
「現状の戦力は十二分。且つ、再配属の面々を含めれば堅牢と言えるでしょう。我々は――」
「そうか」
「……曹長?」
 カルステンは、そんな彼の後ろ姿に報告を伝え、同時に、彼の背がとても小さく見えたように感じた。
 馬鹿な話だ、と思う。フランツが、そこまで小さい男ではないことを彼は知って居る。
「カルステン。『新型兵装』の戦術運用価値はどうか」
「は。私には過ぎた物を下賜されたと感じますが、調整は十全に。いつでも問題ありません……曹長、やはりお疲れではないでしょうか」
 フランツが……曹長が、自らを「伍長」ではなく名で呼んだ。これは、今までになかった。つまり、今までにないことが起ころうとしている、或いは今まで口にしたことがないことを述べようとしているのか。
「素晴らしい。ではカルステン、前進する前にもう一つ、確認しておくぞ」
「……Ja」
 厳つい影が、翼を広げる。
 その姿に潜む闇に、カルステンは声もない。
「私でもお前でも構わん。戦場に於いて何れかが生き残ることを……念頭に置け。そして勝つ」
「Ja」
 その顔を見ずとも、その震えを見ずとも。
 カルステンは、フランツが凶暴なまでに『笑っている』と確信していた。

●不運な夜
「三ツ池公園に『親衛隊』が進行を始めました。……当然ながら、目的は制圧です。大田剛伝と組んで創りだされた兵器はみなさんも幾つか対処済みでしょうが、あんなものに対抗するにはアークの精鋭勢力、つまるところは諸君らの努力しかありません」
  背面に表示された三ツ池公園の地図とリベリスタ達が対面するのは何度目か。既に『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)は数えることを辞めていた。詮ない話だからだ。
「既に主流七派の首領の面々の対処に向かった戦力は期待できません。それでも、食い止めなければ今後に大きく影響が出ます。何としても、回避せねばなりません……当然、本気の彼らを相手にすることをご覚悟下さい。一度戦ったアークのリベリスタに対応するのに、十分な装備強化を行なっている、そう考えて間違いは無いでしょう。確実な対処、及び撃滅を。但し」
 そこで、夜倉は言葉を切った。サングラスの奥の眼光は、異常なまでに細められている。
「絶対に、命だけは粗末になさらぬ様」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年07月03日(水)23:20
●成功条件
『親衛隊』勢力の駆逐ないし撤退

●エネミーデータ
・フランツ:階級は曹長。フライエンジェ×スターサジタリー。本来は設置兵器である下記アーティファクトを構え、自在に操ることが可能な偉丈夫。
 性格は豪放磊落が相応しく、細かいことを考えず正面突破を是とする。
 Rank3までのスキルを使用可能。射撃武器マスタリー、非戦いくつかを所持。
 EXP 決命残死
 EX ツヴァ・コメート(遠2域・溜1)
『フォルトイグザーム・リューゲ』:表面に特殊なリアクティブアーマーを搭載した取り回しの利く軽迫撃砲。
 装備者は『F.E.L(反撃系パッシブ。詳細不明)』を操る事ができる。

・カルステン:階級は伍長。メタルフレーム×プロアデプト。プロアデプトスキルのほか、レイザータクトスキルの一部を使用可。魔術知識保有。
 フランツが考えない分をすべて彼が受け持っているため、非常に冷静に動く。
 任務遂行と引き際を最も弁えて行動するタイプ。
 精神無効を保有。
 攻防一体のブラックコード系兵装『リーニエイグザーム・リューゲ』所持。
 フランツ同様、EXP『F.E.L.』使用可。

・親衛隊フィクサード×10
 高い継戦能力を軸とした精鋭兵。忠誠度が非常に高いため勝利するか死ぬかの二択レベルまで戦います。

●戦場
 三ツ池公園・パークセンター付近。
 夜間のため視界確保が必要ですが、足場は悪くないと思います。

●重要な備考
1、『<Verzweifelt>』には『<絶望的な>』の冠を持つシナリオに参加しているキャラクターは参加出来ません。参加が行われた場合は、参加を抹消します。この場合、LPの返還は行われませんのでご注意下さい。
2、『<Verzweifelt>』はそれぞれのシナリオの成否(や状況)が総合的な戦況に影響を与えます。
 各シナリオによる『戦略点』が一定以下となった場合、三ツ池公園が陥落する可能性があります。
 損失点は『シナリオの難易度』、『シナリオの成否』、『発生状況』、『苦戦度合い』等によって判定されます。
 又、シナリオが成功した場合でも上記判定により『戦略点』が減少する可能性があります。
 以上二点を予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。

●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定の可能性があります。
 予め御了承下さい。

 皆様の奮戦に期待します。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
デュランダル
梶・リュクターン・五月(BNE000267)
ナイトクリーク
源兵島 こじり(BNE000630)
クロスイージス
ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
ソードミラージュ
フラウ・リード(BNE003909)


 パークセンターの地面をしとどに濡らす血の痕に、舌打ちを向けたのは果たして誰であったのか。
 その血を流したのは果たして誰であったのか。
 哄笑するカルステンの表情は既に狂気の域に到達し、その指先を這う兵装は血を吸ってぬらりと赤い糸を引く。虚ろな目をしてその命の灯火が僅かであることは明白だが、撤退しようと言う気は一切、無い様に思われた。
「オレは、悪足掻きは得意なんだ」
「そうか、なら足掻いてみせろよ! 私は退かない、『その一瞬』までは絶対にだ! どちらの足掻きが上か、試させてやる!」
『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)の、消耗して尚不敵な笑みに対し、カルステンはやはり笑みを返す。狂笑を。悪足掻き、いい言葉だ。敗残から立ち直り七十余年を雌伏とした彼らに相応しい。足掻いて足掻いて勝利を待ち構えた彼らは、この上なく強力な一個戦力。
「かつての貴方達に守りたいものがあったように、俺にも譲れないものがある」
「……では、貴様が譲れるものは全て奪わせて貰おう。生憎と我々も物入りなのだ。夜盗の様に、『死霊遣い』のように隠れては奪わん。正面から貴様の譲れるもの全てを、な」
 片膝をつき、しかし未だ戦う意思があることを伺わせる『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)に向けて砲口を差し向けたのは、未だ健在の色が強いフランツ。ゲルトは、戦場の趨勢を決めて現状に至るまで一つならず勘違いをしていたといえるだろう。
 それを見抜き、この状況に落とし込んだフランツは力馬鹿でこそあれ、『軍人』だったのだ。
 彼を気遣うように、動揺を隠さないエリス・トワイニング(BNE002382)の癒しが届くが、事態は彼女の想像するそれを上回っていた。
 まだ戦える。だが、それとこれとは話が違う。
 肉体を限界まで酷使して勝利するのか。命を最大限尊重した上で生き残ることを重視するのか。
「あっさり、終わらせるのは……」
「力の伴わない言葉など下らぬと教わらなかったか、女。『コトダマ』を尊重するヤマトが言葉以上に自分を信頼できていないとはお笑い種だがな!」
 満身創痍という言葉がふさわしい『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)へ向けられたフランツの声は寒々しく、同時に激しい嘲弄の色が見えた。
 向けられた砲口の先は無間の闇だ。それが彼の意思そのものであるかのようにも感じられた。
 ……その震えは果たして何から来たものぞ。理解できぬまま、彼女は。


「殴り合いに勝った方が前に進める。いいじゃないですか」
「殴り合い? その程度の覚悟で来たなら引き返せ。我々は戦争に来た。戦争に於いて殴る蹴るで済まされることなどない。違うか?」
 その場の兵員に防御陣形を取らせ、半身で構えたカルステンは雪白 桐(BNE000185)の挑戦的な台詞を然し、真正面から切って捨てた。
 兵員としてのプライドが、眼前の少年の言葉をそうではないと殴りつける。死地に立ったことはお互い少なくはない。だからこそのずれが苛立つのか、と彼は自分を分析した。
「根っからの軍人なのよね、貴方たちは」
「…………く。ははは、ははははは――!」
 紛れも無い哄笑。喜びからか冗句からか、弾かれたようなそれを呼んだのは『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)その人の言葉だった。
 無論、冗談を言ったつもりはない。彼女は、彼ら二人と一度対峙したからこその現実を理解し、だからこそ身構えている。それが全てだった。
「これは困った。強敵ですよ曹長。彼の小娘の言葉に嘘も方便もない。あれは本気ですよ」
「分かっている、興を削ぐなカルステン! ……さて」
 全身に燐光を纏い、砲身を正面に構えたフランツからは侮りや嘲りの色はない。完全に、目の前の相手を敵と理解した者の表情がそこにはある。
「私は軍人でも何でもない、それでも構わないのかしら」
「だが戦う為に来た構成員だ。兵員と何が違う?」
 暗に、肯定する。
「戦争を、始めましょう」
「――その言葉、墓地へ持って行かなかったことを後悔するだろう」

「ヘイヘイ、勿論理解してるっすよ」
「……言葉ほどの『理解』は感じられそうに無いが」
 彼ら二人のやり取りを傍らにしても、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)の気勢が削がれることはなかった。寧ろ、そのやりとりが意思をより堅固にしていくのを自身で感じているようですらあった。
「御機嫌よう、亡霊の諸君。アークのリベリスタ、メイだ」
「――! 成る程、そうか。戦場で色香を語るか、面白い!」
「ウチらは冗談でやってるつもりは無ぇっスよ」
 傍らに立った五月との距離感と空気は、戦闘にのみ特化したフランツには理解できまいが……機微の分かるカルステンにはありありと写ったことだろう。だからといって、それが正しいか否かと言う話ではないが。
 ただ、少なくとも。フラウと五月、二人の意思に戦意こそあれ、色恋を持ち込んでやわな決意で戦おうなどという甘えはなかろう。
 お互いを思ってこそ戦える。お互いを活かし守る為に強くなれる。それを否定できる者が居るはずがない。
 既にゆらりと前進するフラウから放たれたグラスフォッグが、直撃を受けた兵員の何名かの動きを止めてすらいる。
 五月はその隙間を縫い、前進するのみだ。

「えーと、三ヶ池公園が狙われたのってジャックの時から数えてひぃふぅみぃ……まあいっか☆」
「楽観的なものだな。安心しろ、その無駄なカウントは終わり……これから我々がここを頂くのだからな」
「駄目だよ、何度狙われてもその都度追い返して倒しちゃうよ☆」
『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)の言動は、氷棺と共に振るわれ、親衛隊の感情を僅かながらも揺らすものだった。だが、これは彼の素直な感情であり、それ以上でもそれ以下でもないのだから……果たして笑えるものでもない。
 言葉の軽さに反比例し、その刃と意思の重さは本物。十分な戦意を受け取って、彼らが終を御し易し、と考えるならとんでもない間違いであろう。

「フラウ、君がいるから強くなれる」
「メイが居るから、うちは何処までも強くなれる。……一気に切り込むっすよ。準備はイイっすね?」
 静かな決意が木霊する。
 夜はまだ更けない。


「教育をしてやろうアーク。感情や意思でどうにもならない状況というやつを、身を以て識れ」
 カルステンがブラックコード、否、『特殊兵装』を掲げ、自らのオーラを上乗せして放つ。
 彼が戦場を統率している以上、自らにヘイトを集め戦場構築を有利に運ぶ……そう予測したリベリスタ達の目論見は、最初の一手で引き剥がされた。
 慮外の命中精度を誇るオーラの乱舞は、直撃した者の傷を強引に押し開き、エリスの癒しを阻害する。
 彼らにとって『過去』となりつつある中位スキルが、ここにきてじわりと戦局に楔を穿つ形となったか。
「総員、面制圧に重点を置け。曹長と私に構うな!」
「「Ja!」」
 既にカルステンまでの進路を守ろうと身構えた数名は、相次ぐ攻勢にその身を凍らせ、或いは麻痺させられ動きがとれない。だが、それでも意気軒昂たる精鋭兵。指示には誰より忠実に動く。
「前、は片手間、でごめん。今回は、思い切り楽しもう……さあ、踊って……くれる?」
「ならステップに付いてこい、と言いたいところだがな……貴様の行動パターン、覚えていないとでも?」
 変幻自在にステップを踏み、瞬く間に間合いに入った天乃がカルステンへ向け縛術を伸ばす。が、返すカルステンのブラックコードが不可解な真紅に染まった瞬間、跳躍姿勢にあった彼女は、『まるで自らを縛ったように』膝から不自然に崩れ落ちた。カルステンもブラックコードを防御に構えたまま、指先を震えさせその動きがとれないことを示すが、抵抗値で言えば彼が上だ。
「どちらも白旗をあげる心算はない。なら、どちらかが死ぬしかない。そうよね」
「話が分かるというのはいいことだ。貴様、善き妻になろうにな……ここで散らすか、それを」
 業物を振るった余波からカードをばらまき、叩きつけたこじりもまた、不可解な赤光に顔をしかめる。先のカルステンの一撃を凌いだにもかかわらず、その肉体の復調が覚束ない。……これは、まさに。
「伍長……!」
「私一人どうということはない! 怯むなァ!」
 親衛隊服に劣らぬ暗色を配した大剣を構えたダークナイトが叫ぶが、カルステンの返す言葉には些かの衰えも感じられなかった。
 その声は、状況を見守るフランツも同様だ。周囲に配した護衛数名ごと吹き飛ばし、切り刻もうとするリベリスタ達の一点突破は確かに脅威だ。だが、それを想定していたからこそ『特殊兵装』を預け、事実その通りに推移している――心中を抉る棘以外に、誤差はない。

「皆、彼らの兵装は反射ダメージだけじゃない……状態異常も反射している……!」
 攻勢に加わった五月がフラウに続く様に一撃を叩き込んだ時、その叫びはこだました。
 攻撃した筈なのに、何かスキルを受けたかのように指先が鈍った。相手が動けない筈なのに、避けたスキルを再現するように傷を癒せない。何より、動きを縛られた。
 それは全て、あの赤く輝く反応装甲の成果だとすれば不自然でもなんでもない……!

(回復しか……出来ないから……皆を、絶対に……)
 癒しの波長を紡ぎながら、エリスは喉奥から悲鳴が漏れるのを堪えていた。
 眼前のゲルトは、自らを守る為に眼前に立ってくれている。動きを止めず、一切の状況を受け止める頼もしさがあればこそその全力を出せる。感謝は、その異能によって返さねばならない。
 しかし、現状はどうだ。癒しの波長を受け容れない呪いの如き状況は、彼女の能力の届く幅を強引に狭めてすらいる。状態異常を祓えても、確率は頼りなく。
 焦燥ばかりがその胸に募る。
「チェリァァァァァアッ!!」
「かつての貴方達に守りたいものがあったように、俺にも譲れないものがある……!」
 ゲルトに向け、古の拷問器具の顕現たる一撃が放たれる。絶対者。堅牢を是とする者として確かな響きの一つではある。だが、それでも防げぬ要素は少なくない。
 堅牢を崩すに足る細く鋭い楔。エリスの癒しで一瞬にして消える程度の楔も、幾度と無く撃ちこめば話は異なる。回数やタイミングを超えて、それは彼に明確な疲労を強いる要素ともなりうるだろう。

(死ぬことは怖い、殺すことも怖かった)
 こじりは心中で反芻する。
 決して優位に立っている戦いではない。今時点でも、カルステンを順当に追い詰めていても、フランツの存在感が底の見えぬ虚の様に暗くのしかかる。これから殺すであろう重圧。死を背負う恐怖。しかし、彼女はそれを、既に克服している。
「勝ったほうが前に進める、いいじゃないですか」
「勝った方が欲を紡ぐ、当然の摂理だ……!」
 辛うじて息を吐く神聖術師の癒しを身に受け、カルステンは吼える。桐のシンプルな言葉が嫌いではない、とでも言いたげだ。
「……降伏勧告、などしない」
「実に肝の据わったことだ。そのコトダマとやらに実力が伴えば美談にもなったろうに」
 再びフランツを拘束しようとした天乃の首筋を、一切の妥協無い一射が襲う。致命的な部位を躊躇せず打ち込んできた射撃は、しかし彼女の運命の輝きが強引に逸らし、その傷をも塞いでのけた。――生命還元の奇跡(フェイト)の代価は、次がないという強迫観念の裏返しでもある。
「腐っても歴戦。相変わらず嫌になる連中っすよ!」
「大丈夫だ、フラウ。君はオレが死なせない」
「果敢な健闘、実に結構――だがな、アーク」
 フラウと五月の声が相乗し、カルステンを襲う。
 自らに与えられる反動も、エリス、あるいはゲルトが祓う。仲間を信じるからこそ全力で叩き伏せることができる。
 しかし、それを嘲笑うように。
 否、自らを徹底的に無視されたから、か。フランツの底冷えのする声が、響く。

「貴様等の言語は学んでいる。エフェメラル……『ハカナイ』とは『果敢ではない』とも記すのだろう? 貴様等はよくやった。だが、果敢と呼ぶには遠かった」
 ず、と振り仰いだ迫撃砲が宙を向く。誰がみても彼の隠し球の予備動作。行動阻害や戦力減衰をカルステンに強い、返す返すに自らに被ったリベリスタ達は、ここにきて絶対的な不利を悟る。
 ほぼ完全な状態で、その一撃を放つことが出来る状況。止めようがない、元より誰も彼を重要視していない状況で……許されるのは、決死の覚悟。

「しまっ……」
「おおおォ!」
 何とか攻勢をしのいでいたゲルトが、決死の一撃の前に弾き飛ばされる。体勢を崩した彼が空を振り仰いだのとほぼ同時。
 劈くような響きとともに、砲弾が降り注いだ。


「まだだ……! 足掻いてみ、せろ、あー……ク! まだ、私ハ……!」
「軍人さん、貴方は戦場を連れて来てくれた」
 ボロボロになった両者の彼我の距離が、更に詰まる。息すら詰めるような距離で、こじりの声が反響する。
 死ぬことも殺すことも、活かすためで死ぬために。殺し殺されることの是非を戦場に見出してしまった彼女に、最早退路などとうの昔から消えていて。
 だから殺すとつきこんだ業物に、疑いもない死の色が交じる。

「お待たせ……さあ、やろ、う?」
「既に立てぬ貴様がか。死ぬ気か」
「戦えない、くらいなら……死んだほうが」
「そうか、なら下らぬ一撃の下に死ね」
 既に動きもままならぬ天乃の挑戦は、フランツにとっても愚挙にしか見えなかった。寧ろ、止めを刺すのは武人の役目であるが故に、それには躊躇ないが……それを止める者も、居る。

「過去の亡霊なんかに仲間はあげれないよ」
 ギン、と爆ぜる音と共に、フランツと、それに飛びかかった影――終とが、同時に弾かれる。互いの得物が白く凍りつき、その状況を端的に伝える。
「終せんせ、無茶はだめだ!」
「……そうだね」
 飛び退った彼をかばうように五月が身を乗り出し、終は視線だけで残るリベリスタへと意思を伝える。退くのであれば、今を於いて他にない。

「この場所は良く戦場になるんだ。オレも良く訪れるよ、良い場所だろー?」
「……調子の狂う女だ、貴様は。そこの連れ合いも、手綱はひいておけ」
「女じゃない。メイだ、オレの事を覚えておくれ」
「メイは家畜でもペットでもねえっすよ! それに、うち等の仲間をテメー等なんかにやらせるかっすよ!」
 フラウの言葉が届くが速いか、その氷撃が届くが早いか。容赦無いフランツの砲撃を文字通り『煙に撒き』、僅かな体力を振り絞り紡ぐエリスの癒しで糊口を凌ぐようにして、リベリスタ達は窮地を脱す。

「……戦場で怖い、などと」
 数えきれぬ戦場で戦ってきた自分たちには分からない。彼らも同じだろうに、と思う。
 決意でなく暴威でなく、氷塊が崩れていく自らの右腕を振るい、フランツはカルステンの骸へと歩を進める。
 その限られた勝利の号砲を、至近の彼に聴かせるために。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
戦力集中の一点突破、悪く無いと思います。
ただ、不確定要素が多い以上はある程度の想定も、広く浅いカバーリングも合ってしかるべきでした。
結果的にカルステンは死亡、フランツ他数名がパークセンターの占拠に成功、という形になります。
お疲れ様でした。