● 「我等が崇拝せし悪魔よ、今こそその姿を現したまえ」 目深な黒いフードを纏った男達が、儀式を行う。 もちろん、何時も結果は失敗だ。 彼等が扱うのは『馬鹿でも出来る悪魔召還』、『3分で悪魔を召還しよう』などと言った冗談めいたもの。 こんなもので悪魔が召還されたりしたら、目も当てられない。 鶏の血をささげても、それらしい魔方陣を描いても、今まで決して『悪魔』が姿を現すことはなかった。 要は、単なる遊びなのである。 「さて、今日も終了だな」 「いい年をして、よくやるもんだ……」 乾いた笑いが木霊するが、その後に飲む酒は『何かを一緒にやった』という一体感からか、格別に美味しくも感じる。 もちろん酒の肴は、血を抜いた鶏がメインだったりする。 「しかし俺達、別の遊びを見つけたほうが良いんじゃないか?」 「そうだなぁ……スポーツでもやるか」 「ハハハ、いいねぇ!」 そんなくだらない会話と共に、酒が進む。 しかし彼等は気付いてはいなかった。 偶然。 そういうには余りに不運かもしれない。 たまたまタイミングよく、その場に『バグホール』が開いただけだとリベリスタ達なら考えるだろう。 しかし――儀式の直後に穴は開いたのだ。 「……なんだ?」 ふと、1人の男がその穴に気付く。 「まさか、召還しちゃった……いや、できたのか?」 ありえない『まさか』に、他の連中もざわめく。 冗談みたいな本を使って儀式をやったら、本当に悪魔が来ました。しかも2体も。 とかいう話が新聞に載るかもしれない。 否、そんな事を言っている場合ではない。 「うわぁぁぁぁっ!!」 1人の男が、悪魔に食われた。 身体に目立った傷はないが、触れられただけで男の命の鼓動は止まり、目を見開いたまま硬直した姿はやはり死んでいる。 『うふふ、クスクス』 悪魔の片割れは女性の姿。 男の魂を抜き去り、彼女は恍惚とした表情を浮かべ。さらに彼女はまだ生きている男達を次々に殺していく。 『別世界か。しばし遊ぶには丁度良い』 残る片方は、男性の姿。 彼にとっての『遊び』とは、この世界で僅かな時間でも暴れまわる事。 『じゃあ……こいつ等、使いましょぉか?』 男の悪魔に対し、女の悪魔が妖艶に笑う。 彼女の掌から生まれたのは、小さな卵。 殻を小気味の良い音と共に生まれたのは、見た目も醜悪な所謂、悪魔。 ――望まれない来訪者達の宴が始まる。 ● 「不運っていうのは、いきなり訪れるものね」 ただのお遊びで本当に召還できたとも感じてしまうのだから、余計に性質が悪いと桜花 美咲 (nBNE000239)は言う。 現われたのは2体のアザーバイド。 彼等のいる廃ビルに、もう生きている人間はいない。 「女の方は魂を抜いて、自分の配下として扱う術に長けているようね。ただし、弱い人限定みたい」 早い話、女の悪魔が掌から生み出した卵は殺された男達の成れの果てであるらしい。 しかし能力を持たない弱い存在に限定された力であり、リベリスタ達がその攻撃を受けても効果は薄いようだ。 とはいえ、相手は異世界からの来訪者。 「変な能力が皆にはあまり通用しないといっても、実力は折り紙つきよ。決して油断はしないでね」 男の悪魔『ヨルグ』は魔力を自身の身体に奔らせた肉弾戦を得意としながら、魔力を放出する技も行う。 女の悪魔『ユリシーズ』は相手を魅了する魔眼を持ち、遠距離戦を行う支援タイプ。 加えて異世界の存在であるが故に、8人が束になってかかっても敗戦する可能性もある。 「しばらくすれば穴から帰っていくようだけど、それまでに出る被害は間違いなく甚大になるわね」 それでも倒すか止めるかしなければ、大きな被害となることは確実だ。 「皆なら出来るって信じてるわ。頑張ってね」 美咲は静かにそう言い、リベリスタ達の出撃を見送る。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月30日(日)23:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●悪魔の部屋の扉 「因があれば果がある物。或いはその『お遊び』が偶然を引きつけたのかもしれないけれど……ある種の自業自得、不運な偶然ですね」 アザーバイドのいる部屋を目指す道中、『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)が呟いた。 確かに『馬鹿でも出来る悪魔召還』、『3分で悪魔を召還しよう』などといった本で悪魔を召還しようなど、遊びに過ぎない。 その遊びとアザーバイドの来訪は直接的な関係はないものの、重なった偶然を自業自得だと彼女は言う。 「悪魔を呼び寄せる儀式にハマるなんて、暇人なのね」 大人の、ちょっとした戯れ。やはり『蜜月』日野原 M 祥子(BNE003389)がそういうように、儀式を行って遊んでいた彼等は暇だったのだろう。 話の種ともなるし、色んなことにチャレンジしてみて新たな道を模索しようとしていたのだろう。 「そんなので悪魔を召喚できたら苦労しないわ……」 などと『虚実之車輪(おっぱいてんし)』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)は言うものの、『遊び』と『穴』という2つの関係のない事象が重なった結果、偶然の『召還』が発生したのは事実だ。 「嘘から出た誠って奴かしらね。運が悪かった、で済ますには重い結果だけどね」 それでも、殺されるような結果が酷いと考えるのは来栖・小夜香(BNE000038)だけではない。 「運命の導き(偶然)で片付けられちゃ、死後まで苦しんでる奴らが浮かばれないぜ」 続いた『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)も同様の考えであり、そしてリベリスタ達の考えは1つに集約されている。 「どんな経緯で現れようとどんな思惑があろうと関係ありません。有害であるから排除する。それだけです」 彼等の存在はこの世界にとっての害悪。であるが故に排除をと言う『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)の言葉がまさしくそれだ。 2体の悪魔は戦う力のない存在を、戯れで殺す。 殺すだけでは飽き足らず、魂を奴隷として使役もする。 「以前にも、こういった手合いはこの世界に流れて来ていたのだろう。そして、その事実が後世に語り継がれている、と」 ならば、『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)がそう考えるのもおかしくはない話。 そのような悪魔が伝承となり、語り継がれたのだとするのは自然な流れではある。 「悪魔と戦うのは聖職者の仕事であろう。柄ではないのだがな」 対するリベリスタ側――仲間達をエクソシストと称し、『無銘』熾竜 伊吹(BNE004197)は悪魔達が血の宴を楽しんでいるであろう部屋の扉を見やった。 扉の向こうから聞こえてくる呻くような苦しい声は、使役される魂の苦悶の声か。 「たとえろくなことしない暇人でも、人を殺しちゃったなら、容赦なく相手させてもらうわ」 彼等に対しての容赦を持たないのは、祥子だけではない。 「そうだな。望まずにやってきた来訪者であるなら、我らも奴等を元の世界に送り返すまで」 ゆっくりと、葛葉が扉を開く。 むせかえるような血臭と、肌にまとわりつくような悪魔達のプレッシャーが、部屋から外へと溢れ始めた。 ●悪魔のもてなし 『あらぁ、お客様かしら?』 『この場合、客は我々ではないか?』 被害者達が食べるつもりで用意していたらしい食事を口にしながら、リベリスタ達の来訪に気付いたのはユリシーズだ。 一方でヨルグは、その豪腕で被害者の遺体を破壊した直後だったようだ。 悲しむように破壊された死体にすがりつくスレイヴソウルは、どうやらその体の持ち主であるらしい。 『……もてなしくらい、しっかりできんのか。楽しみすらないぞ』 悪魔達からすれば、この世界の住人は貧弱な存在に過ぎないのだろう。 もてなしとは彼等の攻撃に耐え切る存在であり、楽しみとはその上で『戦える相手』を指している事は想像がつく。 (出来れば呼ばれた二人も討伐されるのではなく、帰って欲しい所。聞き分けがいいと助かるのだけれど……) 自身にマナコントロールを施した小夜香は、口には出さないがそんな結果を切に願う。 もちろん、それは理想論でしかない。 討伐できるかどうかすら定かではなく、どのような会話なら通じる相手かもわかってはいないのだから。 加えて被害者の死体を弄ぶ様には、 「――進撃阻止なんて甘い事は言わねぇ、徹底的にブチのめす!」 周囲を取り巻くスレイヴソウルに真っ先に攻撃を仕掛けた影継のように、怒りを覚える者もいるだろう。 「そうですね。まずは取り巻きから排除しましょう」 「誰かに喚ばれたならいざ知らず――異界の魔神よ、此処は貴方達が居ていい世界ではありません」 冷静ながらも確実に当てる事を狙うあばたや、白鷺結界で数体のスレイヴソウルを包み込んだ悠月は、会話よりも武力行使での送還を考えている。 大半はこう思っているのだ。『帰れと言われて大人しく帰るような存在ではない』と。 だからこそ、会話よりも先に攻撃を持って『この世界の住人』として彼等は悪魔に対峙する。 「ここはそなたらの来るべき世界ではない。早々に立ち去ってもらおう」 そう言った伊吹も、聞き届けてくれるとは微塵も思ってはいない。 それでも、小夜香は会話を望んだ。 (貴方達をこの世界に降り立たせた事、申し訳ありません。しかし我々もなるべくなら戦いたくはないのです。帰っては頂けませんか?) テレパスを通じて送った言葉に、ヨルグもユリシーズも眉ひとつ動かしはしないが、それでも彼女は続ける。 (もし戦えば、貴方達が勝ったとしてもタダでは済みません。どうでしょうか?) 勝敗はどうあれ、双方に甚大な被害が出る事はリベリスタ達もわかっている。だがアザーバイドである彼等には、そこまで傷つくつもりもないだろうと小夜香は考えたようだ。 ――が、既に攻撃は始まっている。 「随分と立派な体格を持っている様だが、中身は腰抜けか。つまらんものだな」 魔力鉄甲を装着した腕で『来いよ』とジェスチャー交じりに言う葛葉の言葉は、ヨルグに対しての挑発。 「のんびり構えて余裕を見せすぎると、足元を掬われるぞ?」 忠告すると同時に奔らせたシルフィアの雷を受けたスレイヴソウルは、苦しげな表情を浮かべて右往左往してもいる。 攻撃を仕掛けて撃退する意思と、少しでも対話をする事で双方の被害を減らそうとする意思。 この2つは、通常では決して共存する事はない。 が、対する相手はこの世界の常識ではなく、自分の世界の常識で動くアザーバイドである。 『……ふん』 ゆっくりと、破壊した死体の後を踏みにじったヨルグがリベリスタ達を向き直った。 『じゃあ、ゲームをしましょうか』 同じく食事を止めて立ち上がったユリシーズは、攻勢に出ているリベリスタを前にしても余裕の笑みを崩してはいない。 否、シルフィアの雷や悠月の結界で受けた傷を気にも留めていないところを見れば、実際にまだまだ余裕があるのだろう。 『あなた達が私達にそうするだけの『もてなし』をしてくれたなら、あなた達の勝ち。してくれなければ、私達の勝ち』 要は、『撤退を判断させろ』とユリシーズは言っているのだ。 撃退を考えるリベリスタにとっても、2体の悪魔の命を奪う事無く還す事を考える小夜香にとっても、それは望んだ回答だった事は間違いない。 『しかしお前達の一部は、我々を殺す覚悟で攻めてきているな。ならばこちらも全力を出すのが、礼儀ではある』 唯一、リベリスタ側に誤算があったとするならば、影継やシルフィアが討ち取る心算で望んでいた点か。 挑発に応じるかのように葛葉に爪を突きたてたヨルグは、楽しませてくれる相手であるならば『奥の手』を使わずにいても構わないと考えていた。 それはユリシーズも同様だ。 「やっと……やる気になったか」 『敢えて挑発は受けてやろう。全力でな』 突き刺さった爪の痛みに顔を歪めながらも言う葛葉に笑みを零したヨルグの顔は、闘いを楽しむような顔。 殺す気であるならば、全力を出す。即ち、『ラスト』の解禁――。 「――俺もまだまだ未熟であるな」 相対しているだけでも、相手の強大さを伊吹は肌で感じていた。 だからこそ、彼はそんな存在との戦いに高揚を覚える。ヨルグに張り付いた彼に、怒りや義務感といった感情はないが、高揚感だけは抑えきれずにいる。 「時間をかけるわけにもいくまい、お前と全力で戦うためにはな」 それだけの相手と真っ向からぶつかるためには、スレイヴソウルを如何に迅速に倒せるかが焦点だと彼は、リベリスタ達は考えていた。 現時点では攻撃を仕掛けてきているのはヨルグだけではあるものの、ヨルグの爪に貫かれた葛葉以外にも影継やシルフィア、悠月がわずかながら傷を負っている。 「厄介な能力ね」 祥子がそう感じたのも無理はない。 攻撃を仕掛ければ仕掛けるほどに、その衝撃の一部を反射するスレイヴソウルを相手にすれば、無傷では済まないからだ。 彼女が仲間に施したラグナロクの光が、どこまで相手の攻撃に対抗出来るかも、この戦いにおいては重要となるだろう。 『じゃあ、私も行こうかしら』 ここまで静観していたユリシーズもゆっくりとした足取りで動き――違う、緩慢だったのは最初だけだった。 「早い!?」 ゆっくりとした動きを見せたかと思えば、次の瞬間には狙いを定めるあばたに肉薄し、そのままリベリスタ達の魂を抜き去りにかかる。 もちろん一般人と違い覚醒しているリベリスタ達の魂は、ユリシーズであっても抜く事など出来はしない。 「く、あっ……!」 とはいえ活力が奪われ、誰の表情にも苦悶が浮かぶ。この攻撃を受け続ければ、先に手詰まりになるのはリベリスタ達となる事は間違いない。 「アンタらも災難だな。すぐに死なせてやるぜ。安心しろ、痛みは一瞬だ!」 悪魔を取り巻くスレイヴソウルにそう告げ、速攻を狙う影継が再び奴隷達を暗黒に包む。 「……異界は思ったよりもファンタジー通りの存在が居るようだな……。だが悪いがここは常世だ。幽世の住人の居場所ではない」 「遊ぶ、等と気軽に言うものですね。見知らぬ異界に在ってその態度、力ある存在故の傲慢か」 跳ね返ってくる事よりも殲滅を優先するシルフィアと悠月の雷は、スレイヴソウルに甚大な被害を与えるには十分な威力もある。 だが使役される魂は、消え失せるその時になるまで悪魔達を守り続ける壁。 『全力で戦いたいのだろう? 早く突破したらどうかね』 「わかっている……!」 逆に挑発をかけたヨルグを攻め立てようとする葛葉の攻撃は、その壁に阻まれて届かず。 「悪いが、俺は貴様らのような輩をもてなす術を他に知らんのでな」 神速の早撃ちで2体の魂を消滅させた伊吹が、その壁に小さくとも穴は開けた。 「そうですね。もてなすというより、迎え撃つといった方がこちらにはピンと来ますし」 ユリシーズの周囲を漂う魂に狙いを定めたあばたの射撃は、ユリシーズに魂を傷付ける一撃を受けながらも正確だ。 「癒しよ、あれ」 跳ね返ってきた衝撃や悪魔達の攻撃で受けた傷は、小夜香の息吹が優しく癒していく。 攻撃一辺倒に見えながらも、戦略的に動くリベリスタ達は万全の態勢で迎え撃っているとはいえよう。 「感謝する。傷を負ってでも、こいつ等を先に片付けないとな」 癒し手の小夜香に礼を述べたシルフィアが言うように、まずはスレイヴソウルを素早く殲滅する事。 その考えは定石であり、この戦いにおいても決して間違いではなく、最も効果的な戦い方ではある。 『先にその厄介な雷の娘からかね』 『なら、私はあっちを攻めるわ』 対する悪魔達はヨルグがシルフィアを見やり、ユリシーズは小夜香へと狙いを定めた。 「俺をほうっておくのかよ」 『お前とはまた後で踊ってやる』 挑発して気を引こうとする葛葉を一瞥し、シルフィアへと突き進んでいくヨルグ。 感情を読み取る彼等にとって、殺気はとても心地良く感じる。 『貴様からも良い殺気が感じられるな。ならばそれにはコレで答えねばなるまい』 全力には全力で。 己が『奥の手』である『ラスト』も、殺気を放ち殺しにくる存在に対しては惜しみなく使うのがヨルグの流儀。 加えてその足を止めようにも、スレイヴソウルが周囲に漂うおかげで止めきれもしない。 「シルフィアさんっ!」 叫ぶ小夜香の視線の先で、シルフィアに絡みついたのはスレイヴソウルの鎖。 「く……あっ!」 呻くと同時にシルフィアが見たのは、全てを砕くかのような強靭なヨルグの拳。 如何に小夜香の息吹で癒されていたとしても、2度のチェインライトニングを魂達に放ったことによる反動は全て癒されてはいない。 「悪魔というだけあって強いな……。だが常世に居座る悪魔は歪夜だけで手一杯だ……。ここで討ち取ってくれる!」 『良く耐えた。と褒めるべきか』 運命の力を手繰り寄せてまで耐えはしたものの、シルフィアの傷は相当に深く。次を受ければ危ないだろう。 『あらあら、あなたが先にお相手してほしいの?』 「悪魔だか何だか知らないけど、あなたの攻撃はあたしが全部受け流してやるわ」 一方ではユリシーズに狙われた小夜香を、祥子がしっかりと守りきっていた事は僥倖である。 とはいえ、抱きつかれた上に力を吸い取るようなキスを受けた祥子は身体から力が抜けたかのように弱体化しており、受け流しきれるかどうかは定かではないが。 『ま、それは後の機会にでもね』 そんな彼女を一瞥したユリシーズは、獲物は他にもいるのだからと値踏みするようにリベリスタ達を見渡した。 それはまるで遊び相手を探すかのようで、 「魂はストック切れですか?」 「彼等には安寧を。自業自得とはいえ、ね」 視線の先では最後まで使役されたままの魂が、あばたと悠月によって消え去っていく。 『面白い連中だ』 「俺達と遊ぼうぜ、悪魔の旦那!」 それほどまでの力を有し、かつ自身の最大の攻撃にも耐える面白いとヨルグが評した『遊べる相手』が周囲にはまだまだいるのだ。彼に肉薄し剣を振るう影継しかり。 「隙が多いな。奴隷のほうがまだ手応えあったぞ」 後ろからヨルグの首をかききろうとする伊吹しかり。 「我が拳、そう容易く躱せる物では無いぞ……!」 氷を纏った拳で襲い掛かる葛葉も、か。 ●悪魔の帰還 互いの全力をかけて、リベリスタと悪魔が凌ぎを削る。 攻めと守りを両立させるリベリスタ側が、攻め一辺倒の悪魔に対しては構成的にはやや有利か。 『うふ、私と踊らない?』 それでも支援を主とするユリシーズの魅了の瞳は、リベリスタにとってはやっかいだ。 「この程度の痛み、殺された連中に比べりゃ……くっ」 斧の刃で掌を裂いてまで耐えようとした影継でさえも、その瞳をまともに見てしまえば虜となってしまう。 「どうした、こちらはピンピンしているぞ。それとも、本当に大した事が無いのか?」 『あぁ……もうお前、煩いよ。下手な挑発に乗るのも最後だ、もう諦めろ』 ずっと挑発をかけていた葛葉をいい加減に邪魔だと感じたヨルグの拳が、彼を一気に追い詰めていく。 「生憎と、諦めは悪い方でな……この性根は、死んでも直らん……!」 『まったく、本当にそのようだ』 2度目のラストすらも耐え切られたヨルグは少々辟易している様子ではあり、攻め立てられている分だけ傷も深くはなりはじめている。 魅了された影継の剣によってシルフィアが倒れたものの、両者の損耗は五分五分か。 (――そろそろ、終わりにしませんか?) 激戦の最中、再び小夜香が悪魔達に問う。 仲間達の攻撃は未だ苛烈で、相対する悪魔達の攻撃もまた熾烈だ。 互いに傷を受け、消耗し――否、小夜香の存在がある分だけリベリスタ達の消耗は緩和されているが、『ラスト』を食らえば誰が倒れてもおかしくはない。 「……貴方達より強い存在はこの世界にも普通に居る。それらに及ばずとも――私達の力、甘く見ないでいただきたいものです」 「あたしは意外と頑丈よ? 倒せるかしら」 それでも、攻め立てる悠月や祥子は強気だった。 「温い炎に下らん小細工も俺には通用せん、ボトムの意地を見せてやろう!」 ボロボロでありながらも、伊吹の目は相手を喰らいつくさんばかりの力を感じさせる。 『貴方達はまだ、やる気なのでしょう?』 その攻めの姿勢に、影継や伊吹を砕く『ラスト』を叩き込んだユリシーズが、リベリスタ達や自身の血で染まりながら笑った。 「あぁ、まだまだ……な!」 気合で耐え抜く影継は、放つ殺気を一寸たりとも衰えさせはしない。 『その気迫や良し、遊ぶには十分ではあった……か!』 「ならば、そろそろ帰りませんか?」 絶対にこれ以上の被害を出さないという激しい気迫に、流石のヨルグも撤退を飲み込みかけている。 脳天を正確に狙ったあばたの射撃と言葉は、その後押しだ。 『なら、そうさせてもらおうかしらね』 置き土産とも、容易な撤退のためとも取れる魂を抜き去る光を放ち、そのまま『穴』へと下がっていく。 『楽しい時間ではあった。押し切れんとはな』 カパッと開いた口から放たれたレーザーが部屋の床を撃ち抜き、充満する着弾の煙。 その煙が晴れる頃には、悪魔の姿は既にそこにはなかった。 引いた彼等は、元の世界でこう語るだろう。 『この前に遊んだ世界では、我等を撃退する強き存在がいた』 ――と。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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