●紹介されたい人この指とーまれええええええええいいいえあ! オーケー・レッツゴゥ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月30日(日)22:54 |
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●「ナビ子が 吹 っ 切 れ た 」←いつか動画が作成される日をお待ちください ハンバーガーショップRumor-Rumor三高平店の壊れた自動ドアを自力で開くと、サンバイザーのつばをつまんで絶妙な位置へ調節しているナビ子の姿が見えた。 「いらっしゃーい。とりあえず水でいい?」 あなたは無言のまま腹パンを入れた。 ショップのカウンター席に、ベビースター的なお菓子に酢イカ汁をしみこませた不思議な食べ物をつまむ高橋禅次郎があった。 「これは『すめっく』といって、地元の店に売っていたものだ」 「あ、やばいこれクセになる」 カウンターの反対側(つまり店員エリア)からそれをつまむナビ子。 「ところで、ぜんじろう先生って書くと科学博士みたいだよね」 「もしかしてそれは俺の紹介をしてるつもりなのか?」 「あっはっは! マトモに紹介すると誰が信じているっていうんだね!」 「もっともだが自分で言うな」 「で、誰か呼びたい人いるー?」 「そうだな、じゃあ揚羽な――」 「呼べるかああああああ!」 誰かからバス停で殴られ『愛してるぜー』と言いながら星になった禅次郎をフルスルーして『すめっく』を横からつまむ朧深黎明。 「ねえここ、ハンバーガーショップなんだよね? 注文もせずにカウンターでお菓子食べてていいの?」 「いいのいいの、『店内でのあらゆる自由を約束する』っていう方針だから」 「ほとんど修羅の国だね。とりあえずバーガーとポテトMセット」 「あいあい」 ナビ子は当然のように後ろにいたバイトの子(七栄さんという)に注文を丸投げした。 やがて運ばれてくるメニュー。 「お待たせしました。バイドバーガーとポテトM(マザーバイド)のセットです!」 「なんかうごめいてる!?」 「今日のお勧めです」 「嘘だ!」 そこでふと、黎明は肝心なことに気づいた。 「ね、私たちってぜんぜん面識無いけど、どうやって紹介するの?」 「えっ、プロフィール画面見たらよくない?」 「えっ、マジ本気?」 「その人間に誠実さを期待する方が間違いだ」 カウンターの裏側(つまり店員エリアである)からにゅっと生えてくる焔優希。 「だから期待はしていないが……していないが……俺に何か新しい評価をもらえればありがたいな」 「ほむほ――」 「それ以外で」 口元に手を当てて上を見るナビ子。 「精神的な成長が頭打ちしたからあとは学習による変化しかないんだけど今から変わるとなると性格が丸くなる一方だから未来像はすごく平凡になるのが今から確定しちゃってスレた堅物ロールに困ってる人っていう」 「新しいがそれは聞きたくなかった……」 「ねえそれよりさ、さっきから台詞多くない? ドラマCDの台本みたいになってるんだけど」 カウンターの向こう側(つまり店員エリアだ)からにゅっと生えてくる白石秋茄子。 「あと当然のように名前間違ってるんだけど」 「最近になるとATOKさんのほうが空気を読んで『あきな→秋茄子は嫁に食わすな』って出てくる始末だよ」 「フ、フフ……でもいいんだ。ワタシは今春が来てる、ワタシの時代が来てるから……!」 「ベッキーでいうところの笑う犬後期だよね」 「なぜベッキーで例えたし」 「キャラ被ってるかなと思って」 「被ってない! 明奈ちゃんは誰とも被ってない!」 アッキーナがカウンターを両手でガンガン叩く一方で、廿楽恭弥が煙草を吹かすモーションをした。モーションだけだった。 「ところで聞いてください。この前ほどけた靴紐を結ぼうと屈んだら前にいた女子高生のスカートが風でひるがえり、地上に天使が舞い降りましてね……フフッ、頬を染めて立ち去ろうとした彼女に私は思わず叫んでしまったのです。そう、『パンツご馳走様でした』と。彼女は私に見事な浴びせ蹴りを――」 まるで最初からいなかったかのようにスルーしていくカメラ。 しばらくメニューとにらめっこしていたリサリサ・J・丸田が顔を上げていった。 「フィッシュバーガーとサラダのセットを」 「あいあいさー。七栄ちゃーん、『本日の魚定食』一丁!」 「えっ……」 やがて運ばれてくるイワシとご飯、味噌汁、そしてわかめサラダ。 「あの、メニューにあるバーガーというのは……」 「ごめんそれ、昨晩ノリで書いたんだ」 「このお店、メニューがないんですか!?」 と言いつつイワシ定食が五百円で食べられるならお得なのではと箸をつけるリサリサ。その横でナビ子が『リサリサで画像検索したらジョジョしか出なくてビビった』という紹介文らしきものをカンペに書いていた。 「ねえ、取り込み中に聞くのも悪いんだけど……」 彩歌・D・ヴェイルがサングラスをくいっとやりながら身を乗り出した。 「前にシューティングゲームの依頼で見た『ボーナスゲーム』ってどうなったの?」 「出たよ」 「えっ?」 「えっ?」 お互いの間に微妙な間が生まれた。 「……もしかして、まだ気づいてない?」 「え、どういうこと? え?」 小首を傾げるヴェイルからつつーっと離れつつ、ナビ子は紹介シートに『腕のやつが本体』と書き残していった。 このハンバーガーショップがどのくらいの広さなのか未だにハッキリしないが、カウンター席とテーブル席があることは確かなようである。 ラヴィアン・リファールは注文用のボタン(なぜか九八式戦車の砲撃音が鳴る)を連打してナビ子を呼んだ。 「注文ー。もちろん『メガ』な! それはそうと、やっぱレベル30も超えるとアークの精鋭って感じがするぜ。きっといい紹介がされるんだろうなー」 顎に手を当ててニヤニヤしていると、まさかの速さでトレーが運ばれてきた。 「『メガ粒子砲』お待ち」 「食べ物ですらねえ! ……あ、でも新武器か? まさかの俺専用武器の……」 「中身はゴム鉄砲です」 「だよなあ!」 顔を覆って上を向くラヴィアン。ちらりと指の間から目を覗かせる。 「ところで、アークの有名人特集とか本にして……」 「50万円くれたら100人紹介するってさ」 「リ、リアルな金額だな……」 俺は払わねーぞと遠い目をするラヴィアン。 その様子を、エリスは真横からカメラで撮影していた。 「……何やってんだ?」 「取材」 「……」 「『密着アーク24時~三高平の変人~』」 「タイトル、おかしくないか?」 「それはそうとラヴィにゃん、最近新進気鋭の変人に流され気味じゃない?」 「そんなわけあるか!」 うりゃーとゴムでっぽうを乱射するラヴィアンから逃げるように、ナビ子は隣のテーブルへスキップしていった。 「よく来たな」 なぜか楠神<LS>風斗に出迎えられた。 そしてヘッドバッドがナビ子の鼻っ面をへし折った。 「ごふおあ!? あにゅ絵師の特徴的なまるくて平たいチャーミングな日本人顔に傷が!」 「思い出したように絵師を賛美するな。そして俺の名前に変なワードを入れるな。今日、俺を紹介するときに『ラッキー』『ハーレム』『ホモ』のいずれかを混入させたら頭突きするからな」 「混入させない方が難しいって言ってるようなもんじゃんそれ」 「今のは特別にカウントしないでやる。いいから説明してみろ」 「うん……」 咳払いするナビ子。 「本人の居ないところでこそ話が盛り上がる奴」 「どういう意味だ!?」 「そんなのSHOGOに聞いてよー」 「それこそどういう意味だ!?」 「はいはい、出番つかえてるからねー」 店員(非ナビ子)に抱えて運び出される風斗。 通り過ぎていった彼の横で。 「あ、今すれ違った」 DSしてた鯨塚モヨタがペンをかちかちやっていた。 そしてペンをもったままチョコボールのくちばしを開け、がらがらとラッパ飲みのごとく口に放り込む。 「あー、そうそう。こないだお菓子の缶当てたんだよ。金のエンジェルで。とっておくとなくしちゃいそうだから缶と交換したんだけど、あの中身って……言わない方がいいのか?」 「先端でキョロちゃんがくるくるまわるペンとか入ってたよね」 「なんで知ってんだ!?」 バックして戻ってくるナビ子に振り返るモヨタ。 「あ、紹介! 紹介あるんだろ!?」 「耳のアンテナ着脱可能」 「嘘の紹介された!」 「そんなことよりさおりんです!」 モヨタをぐにっと踏みつけて、悠木そあらが身を乗り出してきた。 「ちょっとこの前好きな人と花火を見に行ったのです。紹介とかいいからその時の話を――」 「そあら。さおりんぽけもそ。特定のサオリンに反応して耳が動く」 「嘘の紹介で流しちゃだめなのです!」 「つまみ出せぃ!」 男たちがやめろーはなせーと言ってあばれるそあらを御神輿みたいに担いで店外へ運び出していく。 それを見送って、蛇穴タヱはジュースのストローをずずずーっと鳴らした。 真顔で振り向くナビ子。 「タヱ。人の痴態をビデオに撮って売る」 「偏向紹介! 偏向紹介っすよそれぇ!」 「タヱ。金」 「ひどい!?」 「ほらタヱちゃん、いちまんえんをあげよう」 「マイネームイズマネー!」 ひゃっほーと言って諭吉さん片手に帰って行くタヱ。 ナビ子たちはその光景を、ちょっとまぶしそうに見つめていた。 そろそろナビ子出過ぎだと思うのでテキトーな人にバトンタッチしようと思う 「まこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこにゃんまこに……え、アタシ?」 エリスにカメラを向けられた(そしてマイクを渡された)雲野杏はハッと我に返った。差し出されたカンペに目を通す。 「ナビ子が出過ぎだから暫く別の人で繋げと……」 「そう……いうこと」 「嫌よアタシは日がな一日まこにゃんをペロペロするって決め――」 「日給五万で」 「任せなさい! 初心者だろうがミジンコだろうがよくわかる紹介をしてやるわ! 最初のリベリスタはこちら!」 「のぞみです」 「触手鎧! はい次ぃ!」 「待って、ねえ待って。それがわたしのアイデンティティなのは確かだけど紹介が三文字だけって酷くない?」 「じゃあEカップ巨乳美女触手鎧ヌメヌメ天国パート2」 「AVのタイトルみたいに紹介しないで。ね、小さいお子様も見てるからこのゲーム」 「BNEがおっさん以外にウケるわけないでしょ!?」 「広い年齢性にウケてるかもしれないでしょ!」 「そ、そうですよ……イベントで若い人とか、見かけますし……スタッフの女子率多いですし……あの、やみさんも十七歳の美少女だって聞きましたし……」 ティーポットを持った執事衣装の離宮院三郎太がのぞみにお茶を注いでいた。 「最後の部分は嘘よね」 「ちょっと、なに美少年にかしづかれてんのよ。そこ代わりなさい」 「あっ、まこにもお茶ちょーだい! あとプルパイにフィッシュバーガーセット!」 「へいおまち」 アップルパイと鰯定食を前に、一時沈黙する五十嵐真独楽。 「いやだわ私、夫の居る身でこんなこと……」 その様子を物陰から観察する安西篠。 杏は今日一番のジト目をした。 「まこにゃん……と、そのストーカー」 「バレてる! ちちち違うの、可愛らしいチーターの子を見つけたからつい!」 「十三歳の子に欲情するなんて恥を知りなさいぺろぺろぺろぺろぺろ」 「説得力がかけらも無い……」 「ところでまこ、ロボットバトルの依頼がすごく楽しかったから、上位機の乗り換えとか合体とかしてみたい!」 「まこにゃんアタシが合体してあげる!」 「あらやだ卑猥!」 「あんたに言われたくないわ!」 「み、皆さん落ち着いて」 「ね、ねえ私とメアド交換しない?」 「まこにゃんをそんな目で見んなァー!」 宙を舞うイチゴシェイク。飛び交うテーブル。砕け散る蛍光灯。 殴り合い脱がし合いの乱闘騒ぎになった杏たちを(あろうことか)スルーして、店員の七栄さんがトレーを奥のフロアへと運んでいった。 「おまちどおさまでした、ホイコーローになります」 「本当にここはハンバーガーショップなんだよな? で、シェフの気まぐれスープっていうのは?」 「しいたけの出汁(常温)です」 「気まぐれすぎるだろ! 明らかにやる気なくしてんじゃねえか!」 テーブルを強打して立ち上がる禍原福松。 「そしてデザートの梅ジャムとソースせんべいです」 「……」 こればっかりは自分で注文した手前、怒るわけにも行かず無言で着席する。 向かいの席では松戸博士が焼きおにぎりをもそもそと食べていた。もごもごと口を動かす福松。 「ま、まあなんだ……最近どうだ?」 「最近か? 『いいとも』が思ったほどヒットせんのう」 「そんな日常的なことは聞いてない」 「六角タクローソメゴローと来てまさかのきゃりぱじゃからのう。最近の芸能界はなじめん。地井武男とか来ないかのう……」 「あの人はもう来ない。悲しいことだが……」 しんみりオレンジジュースのグラスを傾ける福松。カランと鳴る氷。 「いや、そうじゃない。七栄のことで……その、困ったこととかあったら……」 「全身メンテの時に全裸にするのが面倒で困る」 「お前絶対俺のことからかってるだろ!」 テーブルを再度強打して立ち上がる。 その余波で、関狄龍のLLコーラが跳ねた。 「おっとやべえ。楽しそうだなあ、あのとっちゃん坊や」 「その表現だと、意味が逆になりませんか?」 二人がけのテーブルで、向かいのリコルが穏やかにエスプレッソをかき混ぜていた。 ろくに面識の無い二人だが、店内が混み合っているのでと自主的に相席したまでである。 「ところでなんだ、その……白い春巻きみたいなやつは」 「ああ、カンノーロですね。イタリアのペイストリーでございます」 「はあ、イタリアのタペストリーね。知ってた知ってた」 ポテトを十本くらいまとめて掴んで頬張る狄龍。 「で、俺たちの紹介がカンペで回されてきたんだが、ちょっと見るか?」 「どのような……?」 二人でカンペ(ナプキン)を見下ろす。 『性別が女よりだということを今初めて知った』 『トムソン小隊のフロントマン的立ち居位置』 「……個人的な印象だな」 「……そのわりに的確な印象ですね」 「ええー、そんなカンペ回ってきてたんですか? もーそれならそうと言ってくれればいいのに」 ひょいっとカンペ束から自分の紹介メモを引っ張り出すユウ・バスタード。 指についたケチャップをぺろぺろと舐めとる。 「んーっと私の紹介文はー……」 『サトかんの描いたやつが一番需要ありそう』 「……どういう意味?」 もう一枚めくると。 『ゆーほど太ってない』 更にもう一枚めくると。 『もしや胸のことか?』 と書かれていた。 「…………カンペを用意してただけでもえらいと言えばえらいけど」 げんなりした顔をするユウをよそに、ルナ・グランツが呼び出しベルをちりんちりんと鳴らした。 「サポ子ちゃーん」 「ご指名ありがとうございます。サポ子です」 テーブルの前で小さくおじぎしたサポ子が、そっとルナの斜め前へ座った。そして手際よく水割りを作り始める。 「ルナさんとおっしゃるんですね。どんなお仕事をされてるんですか?」 「あれ!? ここってこういう店だっけ!?」 「膝、お乗せしましょうか?」 「どうしよう! 見切り発車で呼んだからどうしていいかわかんない!」 頭をかかえてフルフルするルナに、手際よく冷えたポッキーを差し出すサポ子。 「カンペを預かっているんですが、なんと言ったらいいのでしょう……『害獣谷の住民である』くらいしか語るべきことがないといいますか……」 「嘘ォ!? もうカンストするくらいレベル上げたのに!?」 「アイフュリエにしては標準的でいらっしゃいますので、『例えるならば、元気に上京してきた神奈川県の子』と書いてありました」 「テ、テキトーすぎるよ! もっとないの? 戦歴とか、MVP記録とか」 「『主に声は民安ともえが近い』とも」 「予想外の方向で紹介されてる!」 そんな幼なじみボイスしてないよーと机に突っ伏すルナ。 そのすぐ隣には、曳馬野涼子と613番が向かい合って座っていた。 ポテトとハンバーガーが置かれているが、二人とも手をつける様子はない。 「最近、どう」 「普通よ」 「……ふうん」 ふつう。 なんと輝かしい言葉か。 涼子はポケットを探ると、棒付きキャンディーを取り出した。 「これ、福松から取ってきたんだけど」 「そう」 「あげる」 「ありがとう」 味も素っ気もない会話だった。 キャンディーを受け取ると、暫く眺めた後テーブルに置く。 「食べないの?」 「ご飯の時に……」 もごもごと口を動かす613番。 「ご飯の時に、飴を食べてはだめだって、言われたの」 「……ふうん」 涼子は頬杖をついて、微笑以下の笑みを浮かべた。 「そうだわ」 同じく、ポケットを探ってかみ切れを取り出す613番。 「紹介、預かってるの」 「……とりあえず読んでいいよ」 「『銃、折れてる人』」 「今度一発撃ち込んでおく」 「そう」 涼子はポテトを口にくわえ、613番はポテトを口にくわえた。 ユーヌ・プロメースは『木』とだけ書かれたカンペを片手で握りつぶした。 「そういえば、再来週には竜一の誕生日が来るんだったな」 「『今気づいた』みたいなこと言ってるけど、かなり前からワクワクして待ってたよね」 「阿部さんに電話するか狐に電話するか、どちらか選ばせてやる」 「本当に申し訳ございませんでした」 テーブル(二人がけ)の上で土下座する御厨夏栖斗。 「分かったら余計なことは言うな。さて……引くほど程高いものをやって引かせるか、死ぬほど安いものをやって落胆させるか……」 「なんだろう。うーぬから僕の彼女と同じ臭いを感じる」 「ドエス女と一緒にするな。一度しょげさせてから喜ばせるのがいいんだ。その後で、二十歳になる記念に酌してやるのもありか」 フフフ、とちょっぴり妖艶な笑い方をするユーヌである。 夏栖斗は顔を上げて、ハンバーガーとセットになったポテチをさらっとひとつまみした。 余談だが、このショップで『バーガーセット』を注文するとナチュラルにポテチがセットについてくる。しかも客から見えるところでカルビーのやつを開ける。 「僕これ好きだからいいけどさ……あっ、中に紹介カンペが入ってる!」 「そんな、プロ野球チップスじゃあるまいし」 「世代がバレるよねえ」 と言いながらカンペを開くと、中にはこう書いてあった。 『ブタの息子』 「僕をなんだと思ってんだナビ子おおおおおおおおおおおお!」 出番が無いのをいいことにカウンター(客席側)で暖めためんつゆをすすっていたナビ子が振り返った。 足下には結城竜一が仰向け姿勢でぴこぴこしていた。 「素敵なこと? それはナビ子さんとこうして出会えた奇跡さ! ところで体型が普通なのに胸がぺったんこなのはどうしたの粉飾決済なの?」 「あにゅ界じゃこれが普通なんだよ」 「そんな見え見えの嘘をついちゃってこ――べぎゅん!?」 竜一に生卵を叩き付けるナビ子。 「…………」 「…………」 その様子を見ていたユーヌと夏栖斗は、乾いた目で空(というか天井)を見上げた。 「こんど、夏栖斗の彼女を紹介してもらうか」 「うん……」 ●【MMD】ナビ子でウッウーウマウマ【ウマウマ】 「「ばろらじ、はっじまるよー!」」 「皆さんこんにちは。アニメ版BNE八重紅役のベニーです」 「同じくセラフィーナ役のハーシェルです」 「テテロ・ミミルノ役のミミミルノです!」 「テテロ・ミミミルノ役のミミミミミルノですっ!」 「リンシード・フラックス役のジョデル・フェルランドです」 「大石きなこ役の堀江由衣です」 「ちょ、ちょっと、みんなあからさまな嘘をつかないでください! 真面目に名乗った私が変みたいじゃないですか!」 「私がベニーではないと?」 「ベニーなんですか?」 「いえ、さっきそこで時給二百円で雇われたフリーライターですが」 「そ、そうなんですか……」 「普段は白いスーツ着てるんですけどね。今日だけ赤いの着ろって」 「はあ……」 「この番組はBNEのおもしろさと女の子のかわいさをお楽しみいただくため邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみ頂くラジオ番組です」 「あっ、リンシードさんずるい! 私もその前振り言いたかったなあ……」 「ミミミミミルノですっ!」 「ミミミミミミミルノなのだっ!」 「この子らはツッコミ入れられるまで『ミ』を増やすつもりでしょうか?」 「さて最初はふつおたのコーナーです」 「三高平市にお住まいの『この木なんの木ユーヌの木』さんから」 「『ばろらじの皆さんこんばろ~!』」 「「こんばろー!」」 「『ベニーは今ギャルゲの仕事をしているとのことですが、ヒロインを全部ナビ子にして紹介してくれませんか』」 「無理です」 「いっ……いきなり突っぱねなくてもいいじゃないですか」 「いやだって、きっと発売されても私の名前載りませんし、ゴーストですらないシャドーライターが宣伝しちゃったらダメそうじゃないですか」 「そういう、名前の載らない仕事ってあるんですか?」 「今までそれなりにやってきましたね。だから私の手が入ったゲームは世の中にちょいちょい出回ってますよ。スタッフロールにすら名前が載りませんが、宝探しのつもりで色々買いあさったらいいんじゃないですかね」 「ヒントすら出さないんですね」 「あ、『らめぇーチャーハン炒っちゃらめえー』って文面をねじ込んだことあります」 「どういう状況で!?」 「はいお次は『テテロんちのミっちゃん』さんから」 「誰だよ!」 「ミミミミミミミミルノ……ですっ」 「ミミミミミミミミミミルノなのだっ!」 「誰かツッコミ入れてあげてください。できるだけやさしく」 「『ぶれいくひゃー!』」 「あっこれ長女のだ!」 「ちなみに見分け方は序盤でドクトリンするのが次女で翼の加護するのが三女です」 「今日初めてまともな紹介を見た気がします」 「まと……も……?」 「ナビ子のカンペありますけど、見ます?」 「……一応」 「上から順に『テテロの長い方』『もっと長い方』『硬いおっぱい』『セブンスレイの人』『にひゃ』だそうです」 「それで個人が特定できそうなのがムカつきますね」 「絞め殺しますか」 「まってリンシードさん鉈を持ち出さないで!」 「ミミミミミミミミミミミミルノなのだ!」 「ミミミミミミミミミミミミミルノ……ですっ!」 「こーらっ」 「ベニーさんが優しくツッコミ入れてる……」 「きもちわるい……」 「あの、ところでなんでラジオ形式なんでしたっけ?」 「それは……」 ●『道具縛りでナビ子クラフト part16』 『宴会場、五人しか来なかっ――』 カチッと紅いスーツの男がラジカセの電源を落とした。 「あらもういいんですかベニー? 愉快なラジオでしたのに」 「いや、なんかベニーを名乗る人が出てきたんで恐くなって。あ、自分も八重紅の人とは関係ないんですけど」 「不気味ですねえ。あ、今日は労わり会なので、くつろいでいってくださいね」 「まおが企画したのです」 「はあ、どうも……なにを労られるのかイマイチぴんと来ませんし八重紅の人とは関係ないですけどどうも」 「なんで二回言ったです?」 紅スーツの人は隣に座った綿雪スピカと天井に張り付いた荒苦那まおから同時に酌をされるというかなりレアな経験をしつつ、懐から手帳を取り出した。 「いくらなんでも、もてなされる側っていうのは悪いんで、皆さんの紹介していきますね」 「どうぞ」 「スピカさんは住民検索を『運び屋』で検索して唯一出てくるキャラクターなんですよ。だからといってハリウッド映画に出るような改造高級車でアクションするブランドスーツの人っていうわけじゃなく、どちらかというと郵便屋さんに近いキャラクターなんですよね。物より気持ちを届けるっていうコンセプトの」 「ありていにいうとテガミバチっていうね!」 居酒屋の扉をガラッとあけてナビ子が乗り込んできた。 「何紅さんかは知らないが、よくも私の出番を奪ってくれたな! ゆるさん、今すぐ奪い返してく ……あっ、とりあえず生で」 奥のテーブルで既に飲み始めてる人たちへ『うぇーい!』とか言いながら混ざっていくナビ子。もう暫く出番はなさそうだった。 「まおの紹介はないんですか?」 「これはナビ子が書いた『天井に張り付いてる普通の子』っていう紹介が以外と当を得てるので、私は控えておこうかと」 「ですか」 「うぇーい!」 と、そこへ一升瓶片手に唇を突き出した犬吠埼守が乱入してきた。完全にできあがっていた。高倉健がありえないほど酔っ払ったらこうなるって感じの顔をしていた。 「まま、まずは一献」 「どうもどうも、ではご一緒に」 お互いのコップに日本酒を注ぎ合うと、肩を組んでぐいっとあおる。 「あ゛~っ五臓六腑に染み渡りますなあ~」 「ですなあ。あっ、白州のボトル開けてください。私ね、これをすぐ変な割り方するって友達に怒られて……あっ、つまみにそこの麩菓子持ってきましたよ。ラーメン婆も」 「気になったんですけど、この居酒屋って本当に駄菓子食べ放題なんですね。店内も昭和な雰囲気で……」 「ね、おもしろいでしょ。池袋で見つけた店なんですよ」 「いいですなあ。それに麩菓子! 俺は好きなんですよこれ、たまーに食べたくなるというか」 「ざっと見ましたけど、さりげに麩菓子ファン多いですよねえアーク」 「あっ、紹介とか……」 「ナビ子のメモからでいいですか? 『全裸刑事(フルオープンデカ)』って書いてありますけど」 「いやあけっこうけっこう! わははは!」 そうやって肩を叩き合いながら酒をあおっていると、グラスとビックメンチカツをかかげた新田快がテーブルに割り込んできた。 「はいかんぱーい!」 「かんぱーい!」 グラスをぶつけ合う一同。 快は肩越しによりかかってテーブルの麩菓子をつまみあげた。 「あっ、そうそう。俺の評価って実際どうなんかね」 「評価ですか? 紹介じゃなく」 「私、気になります(by全裸刑事)!」 「それ別のヒョウカね」 手帳をぱらぱらめくる男。 「評価ぁ……あ、ありましたありました。ゲームを長くやったことで『抜けへの恐怖』が植え付けられていて、成功条件の達成にリソースをさく癖があるみたいですね。『ここ』って条件達成そのものが困難っていうケース多いじゃないですか。だから活躍する機会も多いんですけど、アレ紅さんのって『成功するだけなら簡単』っていうケースの方がむしろ多いんです。快さんというキャラクターもプレイスタイルに適応したライト・ロウ型の人なんで『成功するだけ』に照準が合わさってる印象なんだそうです」 「……思った以上に真面目に語りましたね」 「一晩考えたそうで。あっ、そろそろ別のテーブル回りますね」 もう一度全員とグラスを合わせてから別のテーブルへ入っていく男。 「はいキャッシュからのォ――」 「「パニーッシュ!」」 両手にビールジョッキを持ったSHOGOがしんみり一人呑みしていた司馬鷲祐や五郎『入道』正宗、さらには松戸博士らを巻き込んでローリング乾杯していた。 「パニーッシュ!」 「ぱ、ぱにっしゅっ」 そこへグラスを合わせるベニーとリリ・シュヴァイヤー。 「プロs……リリさん、ずいぶんおっさん臭いところに混じりましたね」 「25歳の若者におっさんとはどういう意味だ」 「黒ビールで肉をかっくらってたらもうおっさんですよ」 「基準が分からん」 「それよりクズカミセウトさんの話しよう」 「おーしようしよう」 「私、最近あの人のコーポに入ったんです。『あのプール』という」 「夜のプロストライカーが日中営業を始めたわけですね」 「あの、意味が……?」 「話によるとむらがる女子に多種多様なスク水を着せる施設らしいな。やはり分かる人は分かるんだ。いい男だよ彼は」 「ヘッ! なんだよ楠神ちゃんなんて! 『俺はまた守れなかった……!』とか言うたびにあそこで100m泳いでオートチュッチュしてるってのにさ、俺はDVDの返却期限を守れないわ地面とアースチュッチュだわ……なんだよみんなしてさっ!」 「この歌、あいつが好きだったんだよ……ちーちっちっち、おっぱーい」 「「あーっはっはっはっはっは!!」」 机を連打して爆笑するおっさんたち。 おちょこを傾けて、正宗はひとりごちた。 「なんじゃあ、楠神というのは本人の居ないところで話が盛り上がるタイプなんか」 「はあ、あの人はそういう人ですね……ところで、最近下着(ブラ)がきつくなってきたんですが、これも深化となにか関係が……」 「あー、わしにその話題はちいとキツいわい。その辺の女子に聞いてみたらどうじゃ。ええと女子女子……」 正宗がぐるりと首を巡らせた、その時。 「ゾンビがあああああああっ!」 桜田京子が飛び込み前転で扉から(文字通り)転がり込んできた。扉は吹っ飛んだ。 「ああっ、ナビ子さんこんなところに! ハンバーガーショップはもうだめです。この町はゾンビに支配されてしまったのです。彼女たちに噛まれた人間はすべて……そうすべて百合畑の住人に」 「ピンクは淫乱っ!」 戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫が飛び込み前転で窓から転がり込んできた。窓は吹っ飛んだ。 「ふふふここがあの女のハウスねさあぜんぶ食べてあげるわ私の可愛い子猫ちゃんええ怖がらないで痛いのはほんの最初だけよほらすぐに気持ちよくなるから先っぽだけだからそのうちやみつきになるから」 「いーやー! 『おいでよ俗物の森』されるー!」 「いらっしゃいませ。三名様ですか?」 「はいはい。扉代と窓代はあのセルフ酔っ払いどもにつけといてくれ。ほらあんたら、遊んでないでこっちこい。麩菓子とえびせんあるから」 「「はーい!」」 ダイナミック入店を果たした舞姫さんちの三人はテーブルについて『とりま生ー』とか言っていた。 首の向きを固定したまま沈黙する正宗。 「……ここには他に女子はおらんようじゃ」 「そ、そうですか」 「そういえば紹介ってされないんですか?」 「言われてみればまだ何も言われてねえな……」 「ん? 一本やっとく?」 黒くて太い棒をくわえ込んだ(他意の無い表現)ナビ子がくりっと振り返った。 「じゃあ上から『シュゴシン』『ハイスピード真顔』『DAIGOの類似品のふりした曲者』『シューティングおっぱい』『声が織田信長』『ピンクは淫乱』『美少女のふりした曲者』『舞姫さんちの保護者』」 「おい保護者ってオレのことじゃないだろうなどういうことだ!」 「美少女ってわたしのことじゃないだろうなどうしてくれる!」 「そこ否定したいんですか?」 「っちゅーわけで私次の店行くんで、ぐっばーい!」 できあがりすぎてちょっと引く居酒屋を、ナビ子は手をぐーぱーしながら出て行った。 ●『【ナビ子】30分耐久らっしゃーせー』 「カモンッ、財布ライダーァ!」 「いでよっ、ブラックマントさん!」 「「呼ばれて飛び出てジャンバラヤ!」」 札束のスカーフを巻き¥マークのついたヘルメットを被ったオッサンと、タキシードにバタフライマスクの黒マントオッサンがアシンメトリーなポーズ椅子へ登った。 「「はっはっは! なんだそのダサダサなコスチュームは! ……な、なんだとぅ!?」」 かぶりにかぶったキャラのせいで台詞をひとまとめにされる財布ライダーとブラックマントさんの図である。 「おお、なんて無害そうなやつらなんだ」 「神秘界隈の人とは思えないよね」 「というか、仲いいな」 「老人介護と児童施設を運営することで副次的に事業を拡大した財布ライダーは基本おじいちゃんばっかりのブラックマントさんの商店街と関わりを持ちやすいんだよ」 「その声は同志ナビ子!」 麩菓子をくわえたまま振り返るベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ。 同じく麩菓子をくわえてふりかえる石川・ブリリアント。 っていうか本当に麩菓子人気だなアーク。もう売ったらいいのに。 「久しぶりー……なのか? 面識無い気がするぞ。三ヶ月は働いてないから忘れた。」 「混沌組曲以来だっけ? プリンシパリティーズみたいのが出た直後で休み始めたよね」 「えっ、なんだそれは。R-9Skみたいなやつか?」 「そうそう加熱しすぎて排熱できないから全裸になったみたいなやつ」 「なんの話をしているんだ」 「まあそれより、紹介しないと紹介」 「おお、待ってました!」 「じゃあいくねー『ガルパンでいうプラウダ高』『幼体固定26歳』あとそこにいるのが『ハイスピードラブレター』」 「俺のことか!? 俺の紹介それだけなのか!?」 隣席でうまいぼうをくわえこんでいた安西郷が高速で振り向いた。 向かいでウィスキーを水のように飲んでいた大切断鎖がほおづえをつく。 「それはそうと、なんでアタシ呼んだんだ?」 「えっ?」 「……おまえ、ここぞという時にハズすよなあ。あの、なんだっけ? 『名も無きリベリスタのなんとか』っていう連中もお前の出番を取っちゃ悪いってんで辞退したじゃねえか」 「い、いやそれは、千葉炎上事件で端役だった鬱憤を一緒に晴らそうと……」 「あの時お前出てたら、私の出場フラグ立ったんだぜ?」 「マジで!?」 ちくしょーと言ってやけ酒にはしる郷。 夜はまだ長い。 ●【R18】ナビ子の貴重なパンチラ【削除必至】 ←釣り動画 やはりナビ子が出過ぎているというPTAからの熱烈な抗議により、またまた紹介役をバトンタッチしようと思う。 「白石明奈イメージDVD第二弾よろしくな! ナ!」 カメラに向かって『これは撮影中のものです』と書かれた写真をぐいぐい押しつけてくる豚がいた。っていうかオークだった。具体的には美味しそうな秋茄子が八百屋の軒先を占拠し、店主が無駄にどや顔しているという写真だった。これがジャケットだったらどうしよう。 「金も貰ったし宣伝もしたし、今日も誠心誠意働かせて貰いますかねっと。ブヒヒッ」 家庭用ハンディカムを抱えて居酒屋のテーブルへ向ける。 連結させたさくらんぼもちをご機嫌そうにくわえる海依音・レヒニッツ・神裂がいた。 無駄に唇だけクローズアップ。 「どうもワタシです! 初ベニーイベシナッ! 知ってますかこれ、つまようじで沢山串刺しにして一個ずつ食べるのが好きでー」 「ほーいいねいいねえ。いっそのことがぶっといっちゃおうか。おくまでずぶぅっと」 徐々に下がっていくアングル。画面下に流れる『教会プレイがはかどるぜ(豚P)』というテロップ。 それをがしっと直接つかんで自分に向ける御厨麻奈。 「ちょっ、さっそくなに写しよるん! 今日は居酒屋でゆっくりできるって聞いたから来たんや。前みたいにハーレムに紛れ込まされたり事後っぽくされたりせんからなっ」 下の方に流れる『こいつは尻が弱いと見たぜ(豚P)』のテロップ。 「この子はラッキースケベフルコンボのピン出演が決まっていまーす。ブッヒヒヒ!」 「ちょっ、なんでや! なんやねん!」 「ふーん、これさくらんぼもちって言うのね。昔食べてたけど、名前は知らなかったわ」 横から神裂のぶんを爪楊枝でついっと取っていくセレア・アレイン。 「んふ、なんか初々しい名前。これのいろんな色が入ったのって、なかったかしら」 「ミックスもちですねー。実際色んな製菓会社から出てるので、名前もバラバラですよ」 「そうなの。子供の頃は皆いっしょに見えてたのに」 目の前で小さくて四角い餅あめをくるくる回すセレア。 画面下に『おおっと本職搭乗! ブッヒヒイ!(豚P)』という紹介文が流れた。紹介じゃないなこれ。 「普段から華やかなところにいると、こういう子供っぽいものが無性に欲しくなるのよね……」 「そういうものじゃろか?」 隣でポテチの袋をパーティー開きにするレイライン・エレアニック。 当然のように画面下を流れていく『サービス担当(豚P)』のテロップ。 「ポテチで思い出したんじゃが、最近ハマった安いポテチが販売終了するらしいそよ。あのバター味とかつまみに最高じゃったのに……」 「それもう確実に太るコースじゃないですか」 「むー。イギリスのお菓子は『とりあえず砂糖』って感じで逆に太りづらかったから、こっちに来てから油断しとるところがあるかもしれん」 などといいつつじゃがりこをリズミカルにこりこりしはじめるレイライン……の隣の席に眼鏡が置いてあった。 イスタルテ・セイジの名札がついた眼鏡だった。 画面下に『とりあえずぶっかけとけ!(豚P)』と流れるテロップ。 更に『好きな食べ物は二酸化炭素です(メガネ)』と流れるテロップ。 「なあ、うち無性に気になるんやけど……明奈さんってちゃんとアイドルやれとるん?」 「そりゃモチのロンロンよ」 「アダルトな方向じゃなく?」 「エッ……?」 「えっ……?」 「「かんっぱーい!」」 豚さんチームのテーブルに微妙な空気が流れ始めた所で、ちょっと個室みたくなった座敷テーブルで乾杯が始まった。 「ナビ子、エアいっきしまーす!」 「あ、飲まないんだ?」 「アルコールに免疫の弱い若者が増える昨今場の空気で飲ませる風習を後押しすることは世間的によからぬ印象をあたえてしまうのです」 「キモッ、急に真面目なこと言うな! キモッ!」 「らいおんぺろぺろらいおんぺろぺろらいおんぺろぺろでござぁふへへへへへへ!」 「虎徹がより気持ち悪くなってる!」 「写メとれ写メ、そしてらいおんたんとやらに送ってやれ」 「俺様の趣味はー! 殺しでーす! アークにいると沢山殺せてちょーお幸せ!」 「あーもう机に飛び乗るな! 変なこと口走ってからに、酔ってるな?」 「そいつはいつもその調子だ」 「シーザーサラダだけど、たまご大丈夫な人? っていうか大丈夫?」 「んー? だいじょうぶ、潰れたふりしてやり過ごしてるだけだから。でも構ってくれたらうれしいかも」 「ある意味大丈夫じゃねえな」 鬼蔭虎鐵と熾喜多葬識が荒れ狂い、すぐ隣でぐったり壁によりかかった青島沙希にサラダとか取り分けつつ気にかける浅葱琥珀……という、大学生の新人コンパみたいな雰囲気ができあがっていた。 「お前は合コンで甲斐甲斐しさを発揮するOLかっ」 微妙に長いツッコミを入れるツァイン・ウォーレス。 「いやあしかし、合法的に酒が飲めるようになってちょうど一ヶ月。いい時期に飲み会が開かれたもんだ」 「まるで非合法に飲めるみたいな言い方はしないでくださいよ」 焼酎の水割りをグラスの中でゆらすアンリエッタ・アン・アナン。 その隣ではサポ子がさりげない手際で水割りを作りつつ、カメラ目線をキメた。 「バロックナイトイクリプスは未成年の飲酒喫煙を描きません」 「そういえば私、宴会場に行ったはずだったんですがなぜここにいるんでしょうねえ」 「冒頭に書かなかったから間違って振り分けられたんじゃね?」 ウェーイとかいって乾杯しにくるナビ子。 乾杯に応じるツァイン。 隣ではオレンジジュースを手にそわそわする乱叉竹槍の姿があった。彼らの影響でどんどん盛り場に連れ出されるなこの子。 「そういや乱叉は未成年だったか。まあ好きなの頼んでくれよ、奢るからさ。ただしナビ子てめーは自腹な!」 「ハッ、膨大な財力によって運営されるアークに所属するひときわ特殊なフォーチュナというポジションにある私がいったいどれだけの生活資金を得ていると思っているのか!」 「実際今いくら持ってるんだ?」 「三千五百八十円」 「しょぼ!」 カランと水割りのグラスを傾けるアンリエッタ。 「ところでサポ子さん。布団に入っていた時も思いましたが、どうして嫌な顔一つしないんです?」「エースと同衾することに嫌な要素が何も無いからですよ」 「ファッ!?」 普段滅多に出さない声をあげ、グラスが床を跳ねた。 丸富食堂出張。路上に組み立てられたテントのような立ち飲み屋でのことである。 「あーやべ、紹介してないわ。『ロリコン』『デスコン』『疲れたOL』『少女漫画でこういう男見た』『鎧着てないと別人に見える』『ハイスピード真顔パート2』! よしこれでいいや! おばちゃん魚系のなんかちょーだい!」 「あいよ鮭ホイル一丁!」 仮厨房から顔を出した丸田富江がフライパン片手にまた引っ込んだ。 「テキトーすぎるうえに後半ただの印象じゃないですかやだー」 頼んでも居ないのにやったら運ばれてくる料理を気まぐれにつつく鳩目・ラプラース・あばた。「おばちゃんビールとホッピー二億本」 「あいよホッビー一丁!」 「暗にたしなめてるよこの人」 焼き鳥を串のまんまあぐあぐするあばた。 その皿から別の串を取って丁寧に肉だけ外していく鹿毛・E・ロウ。 「ほらほらネギマの肉だけ食べないでくださいな。アッ、時にサポ子さん来てないんですか? 別のお店に行ったとか聞い――」 「いますよ」 驚異的な存在感の薄さでサラダをとりわけるサポ子。 「これはこれはいつのまに……初対面でしたっけ?」 「今まで最低でも五回はお会いしていますが、モブの一種でしたので、お忘れなのでしょう。こうして描写がある時点で、私には過ぎたことですので」 「まあそう言わずに。おなかさすっていいですか?」 「構いませんよ。変なところを触らないでくださいね、ワンセグでちゃうので」 「なぁにやってんだかあの酔っ払いは」 隣のテーブルでは、草臥木蓮と雑賀龍治がイチャイチャしていた。 ……イチャイチャしていた。文面に間違いは無い。 「酔いつぶれた龍治を迎えに来る以外で飲むっていうのは、思えば初めてだな」 「そんなに潰れてたか?」 そこへ、サングラスをかけて無理にやさぐれたナビ子が乱入した。 「おうおうカップルで飲みに来るとは見せつけてくれんじゃねーか、おお?」 「いや、俺はただ連れてきただけだが」 「ケッ、今書いてるギャルゲの主人公みたいなこと言いやがってよ!」 無理にやさぐれた大人が増えた。紅スーツの人だった。 この場でデートをしようという時点で何か大きな無理がある気はしたが、木蓮はあえてスルーした。 「そっちのテーブルはいいのか?」 「『アークのクラシアン的存在』っていうタグを二人にくっつけてきたから。あと富さんは今更説明する必要がない人だから」 「いや、ありすぎるだろ……初めて見た人は絶対に間違うぞ、その……『富子さん』と」 「ケッ、シリアスしやがってよう! 着ぐるみと冷凍カジキはどこいったってんだ!」 「そこの人、なんで無理にやさぐれてんだ?」 「それより、紹介とか……そういうのをするんじゃないのか? そもそも俺たちプレにある会話一言もしてないんだが」 「私の見てないところで五時間くらいしてたじゃん」 「無茶な……」 「紹介もほら、二人まとめて『小銃と火縄銃』じゃダメ?」 「ダメだろ」 とかやってると、ステイシィ・M・ステイシスがドガッとテーブルに飛び乗ってきた。 「あなたの運命、予報しちゃうゾ☆」 「……」 「……」 「……」 「最近開発したナビ子さんの物まねなんですけど、似てます?」 「似てる似てる。ジョニーデップに激似」 「つまりかすりもしてないってことね」 「でー? ステイシィさんの紹介してよ紹介ー」 「『ゾンビ映画でこういう人みた』」 「ぐうの音も出ない紹介だぜ。フッフッフ……」 隣で一升瓶抱えた聖星水姫がニヤニヤしていた。 「おっと、私はスク水にパーカーを羽織った幼女に見えるがちゃんとした大人なんだぜ。だから一升瓶を抱えていても大丈夫だし挿絵にならなければたぶん『例の網』にも引っかからない」 「尚、BNEは未成年の飲酒喫煙を固く禁止しております」 カメラ目線で右から左に通り過ぎるサポ子。 ナビ子はナビ子で水姫のコップにお酌していた。 「まあ法案フルで通ったら合法ロリって言葉も無くなるもんね。そうなるまえに呑めや歌えやってこでハイ」 「ところで紹介は?」 「まだスク水パーカー以外の要素が発掘されてないからムズくない? ぶっちゃけその要素だけなら他にも割といるし」 「いるのか……世界は広いもんだな」 などといいつつグビグビやる水姫。 やがて朝日も昇りはじめ、いい大人が夜通し酒飲んで遊ぶという非行も終わりに近づこうとしていた。 でもやっぱナビ子が出過ぎなので、誰かそれらしい人に締めてもらいたい。 そんな気持ちで彼にカメラを向けてみた。 「オフの時に酒かっくらってべろべろになるとか最高だよねー」 阿野弐升が煙草を三本くらいくわえて煙をぼはーっと吐き出していた。 「いつも戦闘楽しいつってアドレナリンどばどばやってるけど、血の臭いはダメだね。あれには酔えん。だからそういうアレコレをさ、酒で誤魔化してるとかそんなんじゃないの? まあうん、どうでもいいや。とにかく楽しかったので」 ことん、と弐升はテーブルに突っ伏した。 目を閉じて、グラスを置く。 「おやすみなさい」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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