● 正義のヒーローになって、月日は目まぐるしく過ぎていった。 日々を役目に費やし、自分なりに頑張ってきたつもりだ。辛いこともあったし、悲しいこともあったが、それなりに嬉しいこともあった。特に子供の笑顔は忘れられない。それを守るために戦っている自分が誇らしく感じるのだ。 しかしだ、終わりの時は突然にやって来た。 明日からはヒーローではなく、むしろ普通の一般人にされるこの身。いつかこの日がやってくると覚悟していたが、実際に来た今、心の中は穴が空いた様に物足りない。こうなって解ったのだが、『正義のヒーローという役目』はこんなにも自分という存在にこびり着いていたと痛感している。 だからこそ根付いてしまう、欲望。それを罪と呼べるのだろうか? ただ言えることがあるとすれば、思いを革醒させるには十分過ぎる理由はあったのだ。 このままで終われるか。 このまま消えてなるものか。 正義のヒーローとして存在してきたんだ。 ならば最期の最期まで正義のヒーローでいさせてくれ!!! ● 「遊園地なんですけどね、取り壊しが決まってですね」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へ経緯を説明し始めた。 「遊園地には、遊園地オリジナルのヒーローが居て、豊作戦隊イナレンジャーっていうものがありました。そのヒーローショーは大人気だったんですけどね、廃業と一緒に運命を共にしたと言いますか」 残念な話だが、そこまでは良かったのだ。問題は此処からであって。 「そのヒーローのリーダーをやっていた男性が突如、意識不明の昏睡状態になっていてですね。それと同じ頃に、遊園地のヒーローが、お昼時に子供を蹴ったチンピラを病院送りにするという事件がありまして」 一件関係ない様で、関係ある。つまり、それって。 「神秘的現象と神秘事件の管轄ですね。男性は思いの強さからEフォース5体も生んだのです。が、このフォースたち、どうやら男性の生気を吸って成長しているのです。早めの対処を、できれば明日までにお願いします」 今はまだフェーズが2で止まっているが、男性の命を全て吸い尽くした時にはフェーズは更に進行することが解っている。その前に対処しなくては、手に負えない存在になってしまうのだ。それも5体も。 「男性は正義の味方であることを願っていたからでしょうか、フォースはエリューションが活発化する深夜にて、一般的に悪と思える者の前にしか現れません。ですのでそこで、悪が必要です! 男性が一人亡くなる前に、必要悪を!! お願いしますね?」 杏里はリベリスタ達へ頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月29日(土)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 昼間に存在していた愉快な雰囲気一変。 夜空を見上げた『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)は黒の間に消えた星を探す。 「こんな時間に来る遊園地も、なかなか面白いのう」 彼女が立つのは、かつてヒーローたちが輝いていた舞台の上。見渡せば、壊れた観客席に、倒れた看板。もはや廃墟と呼んでも相応しいと呼べる程に錆びれていた。 そこで瑠琵は影人を一体一体丁寧に召喚していく。 「悪役には幹部が必要じゃろうて」 すぐ目の前では『ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)が細かい作業をしていたのか。 「できたぜー!!!」 大きく声を出しては悪意に塗れた笑顔をしながら、手元のライターを使って火を点けた。 そこにスプレーを吹き掛け、ライターの火が勢いを増して燃え上がった。ゴミの様に荒っぽく積まれた花火たちへと火が引火――あとは、分かるな? 良い子はけして真似してはいけないアレである。 バチバチブブブと音を奏でながら、七色の火が燃え上がったのは良いとして、相当黒い煙が天へと上っていく。 「ちょっと燃やし過ぎたぜ」 けろっとしながら岬は頭を掻く。その炎から離れる岬。その後ろから瑠琵の影人が岬にセクハラしようとじりじり距離を詰めていた。 そんな光景を見ながら、舞台の屋根に座っている『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419)は妖しく、くすくす笑った。 「深夜の遊園地って素敵。子供を攫うための下見や練習にはもってこいの場所」 そう、今宵が終われば此処は子供で満たされる。決行は明日――子供を攫って喰うのが沙希の目的(嘘)。 漆黒の瞳が更にドス黒く染まる。月明かりが逆光になって、沙希の表情が上手く読み取れないがおそらく笑う口元からして楽しんでいるのだろう。 彼女が取り出したのは髪の毛の束(ウィッグ)。それに軽くキスを落として、嗚呼、と、この髪の毛の持ち主の味を思い出す(妄想)。 ――次の獲物はどんな味がするのでしょうね。 金属が折れる、砕ける、切り離される――轟音をあげてジェットコースターの線路が圧倒的な力で破壊された。 その音を背後で聞きながら『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)は、両手の剣を仕舞う。呪われた剣、魔女の銃剣を持っていた手を見ながら拓真は思う。 「こんなもんか。たまには正義とは逆の事をするも良い」 悪を行う事も、この世界にとって正義の鱗片となるのなら。 そんな中、ガラガラガラガラガシャーンと崩れ落ちた線路。もはや原型を忘れた程には、超破壊。恐る恐る背後を見た拓真。 「……やりすぎたか?」 「大丈夫だー燃やしてしまえば証拠なんて無かったも同然!」 『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)が拓真の下へ嬉しそうに走ってくる。その手に炎を従え龍とし、その拳を大きく振り上げ。 「ガハハハー、こんな遊び場など焼きつくしてくれるー」 放った蛇炎は煉獄の炎の如く。木を炭にし金属を溶かす――轟!! 燃え尽きろ、全て。そこには何もなかったのだ。そう、それこそ根本的な破壊。存在の破壊!! 高笑いするミリーの姿を見ながら、拓真は自身の胃を抑えた。 海賊衣装で闇夜を歩く『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)。 皮のミニスカートから見える、彼の、いや、彼女の太ももに線を引くガーターベルトがなんとも誘惑的で刺激的だ。 「みんなとちょっと悪役の方向性違ったかなー?」 と、ちょっとばかし不安を持ちながらも、とある場所で足を止めた。 大きなコートを揺らしながら真独楽が見上げたのはメリーゴーランド。今は使われなくなって、馬車を引く白馬の目がなんとも哀しげで寂しげ。 「これもお仕事だから、仕方ないよねっ」 真独楽は白馬の頭を何度か撫でた後に、馬車を爪で引き裂いた。 「さあさあ暗い夜、暗い街、そして朽ちた夢の跡。アハ、アハハ!」 ギギギギギギ――と音を立てながら、肉切り包丁が遊園地内に設置されたゲームセンターのゲーム機やら壁やらに線を引いた。機器の中から飛び出して包丁に纏わり着く電線をも引き千切り、『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)の軌跡には壊れたゲーム機が倒れていく。 時に、ゲーム機の画面に力いっぱい肉切リを振り落し、時に、骨断チでクレーンゲームを横に切った。 「アハ、アハ、たまにはこんな仕事も良いデスネ」 仕上げにゲームセンター建物内にある大事そうな柱を切断して破壊活動。 瓦礫の上、空を見上げた少女の瞳は次の獲物を探す。一瞬、本当に一瞬だった。その時だけ月明かりに照らされて瞳が嬉々と輝いた。 剣がベンチの座る部分を射抜いて穴を開けた。そのまま勢いで剣を振り上げ、ベンチを投げ飛ばす。 近くの売店の窓ガラスが割れながら、飛んできたベンチを受け入れた。売店の中から色々倒れたり壊れたりした音が聞こえたが、ま、いっか。 他愛も無いと息を吐いた『白銀の鉄の塊』ティエ・アルギュロス(BNE004380)は刃を次の設置物へと向ける。 「どうした、正義のヒーロー。早く出てこないと、この遊園地は全て瓦礫となるぞ――!!」 早く来てヒーロー。望まれてるよヒーロー。 悲しみの声が聞こえた。 苦しみの涙が見えた。 助けてと叫ぶ少年少女の声が聞こえた――気がする。 何もない空間から手が飛び出し、力強く拳を握った。そこから腕、肩、胴体、顔、と姿を現す。やっと来てくれたんだね。待っていたよ!! 「現れたわね」 沙希が悪性の笑みで出迎えた。その頃には闇よりの使者(リベリスタ)は舞台の上に集結している。 燃える赤! 「許せない……この遊園地を破壊したのはお前らか!!」 怒りに震える青! 「此処は、子供たちの笑顔が集う場所だ……」 心が痛い緑! 「むごい、こんな壊して」 優秀な黄! 「みんな、油断したら駄目。あいつら……強い!!」 なんかよくわからないピンク! 「やぁーん、ピンク、おぱんちゅはいてくるのわすれちゃったぁーん!」 「「「「「我ら豊作戦隊★イナレンジャー!」」」」」 ――今此処に、正義VS悪の戦いが始まった――!!! ● 五色の正義が現れた瞬間、一斉に喋りだすカオス達――真独楽、瑠琵、拓真、行方、ティエ! 「うふふ、出たなイナレンジャー!」「はーっはっはっは! 現れたなイナレンジャーよ!」「漸く現れた様だな、正義の味方……いや、イナレンジャーよ」「きたデスネ、イナレンジャー」「まんまと釣られたなイナレンジャー!」 なんだがごちゃごちゃしていてよく聞こえない。イナレンジャー言い過ぎてなんだか小物っぽく見えるがそんな事は無い。そんな事は無いんだ!! まだ台詞は続く。此処は空気呼んで正義の味方も耳傾けてくれてるお決まりのシーンである。 「この地のおいしいお米は、明日の美しさとツヤツヤお肌のため、キャプテン・クレイジー・まこが、ぜーんぶ頂くぞっ!」「今この時よりこの遊園地は我等、うっかげ団が頂くのじゃ! 長きに渡る貴様等との因縁も今宵限り! 行けぃ、戦闘員共!」「お前達の命運は今日、此処で尽きる。覚悟を決めて貰おう」「今日いまこそこの場所でお前達の息の根を止めてやるのデス! アハハハハ!」「私達にとっては神の贈物だがお前等にとっては地獄の宴の開園だ」 思い思いのポーズを取りながら、この有様。 「掴みはオーケーか」 仲間を見ながらティエがうんうん、と頷いていた。 「なんだがよくわかんねーけど、統一感ねーなー」 岬がアンタレスで素振りしながら、我関せず。 やっぱりごちゃごちゃしていて聞き辛い。統一感が迷子になっているぞ。正義のヒーローが聖徳太子だったら苦労しなかっただろうが、それでも五人一緒に名乗るのは聞こえない。 頭にハテナが浮かんだままのイナレンジャー。お互いに顔を見合わせ。 「な、なあ、もう攻撃していいんじゃないか……?」 「ちょっと台本から外れてきたよね、ア、アドリブとか恥ずかしい」 「頑張ろう、こういう時にカバーできてこそだよ」 「やれるよ! あたしたちなら!」 「おっぱいがかゆい季節よね」 と業務的な用語が飛び交っていた。刹那、レッドが此方へ武器を向ける。 「よ、よし……。悪の軍勢たちよ! 今此処で成敗してくれる!!」 アドリブしたレッド。なんかちょっと時代劇臭したが、上手く開戦の合図をしてくれた。 最速で飛び出したのはブルーだ。その身軽さを利用して、短剣で切り刻むのは真独楽。 真独楽は闇の軍勢の中でも群を抜いて速度が速い。だがブルーの方が一歩早かった。ピンクへ向かうその小さな体の前に立ちはだかるブルー。 「この先には、いかせん、キャプテン・クレイジー!!」 真独楽の身体に入る傷――だがお返しと言わんばかりに真独楽の作った気糸がブルーを縛った。 「キャプテン・クレイジー・まこまだ! ちゃんと最後まで覚えてくれないと泣いちゃうんだぞ!」 縛ったブルーへウィンクひとつ。ブルーの顔が少しレッドになったのは、ハッ、これは恋!? 「駄目だ、俺は……このキャプテンに手は出せない……!」 「ブルー!!?」 「キャプテェェン! ブルーに何をしたー!!?」 「特になにもしてないぞー」 きょとんとする真独楽の手前で、ブルーは突如消えていった。真独楽の可愛さに、敵になる事を決心したからか、正義ではなくなったからか。 「真面目に相手しなくていいぞ五十嵐……」 拓真は両刀を持ち、ジャガーノート発動。 その右隣左隣を瑠琵の影人軍勢が走っていく――一人はレッドを、ブルーを、グリーンを、と。彼等の足を動かせまいと征く。 「こっから先は」「行かせぬ」「此処で」「黙って」「見ててもらうのじゃ!!」 リレーで喋る影人群勢。抑えられた正義たちの足は動かせない。 正義のヒーローたちの背後――!! 「んぁあんっ」 「ピンクー!?」 「その精神力、貰うのじゃ」 本体の瑠琵がピンクからメンタル吸収。怒るレッドが影人へ剣を放った。 ピンクの近くへ真独楽が走っていく。クローを持ち、ピンクの服と髪を揺らす彼女を見て。 「キャラ被ってるわ!」 「違うもん、まこもピンクだもん!」 一瞬、ジジっと目線から火花が飛んだ二人。ピンクのクローが敵ピンクの肩口を切り裂く。 そして――。 「背後に注意じゃの」 瑠琵が言った。 「さあさあボクの相手は誰デスカネ? 血塗れ、肉片、思う存分撒き散らしてやるデスヨ!」 大きく弧を描いて走ってきた行方がピンクの背後側から、肉斬リを大きく振り上げて――下ろす!! ピンクの背から鮮血が飛び散っては行方の顔を濡らした。目の前の肉が裂けた光景を見て、行方はアハ、アハと笑う。 闇の軍勢の攻撃は完全にピンクへと集中していた。それも影人のブロックあってのおかげだろう――。 「遊ぼうぜーまっぴんくー」 岬が回転しながらアンタレスの刃をピンクへと。ピンクの右腕がどこかへと吹き飛んでいく。 「脆いなー正義の味方、そんなにもろくていいのかー?」 体力的にも一番衰えていたピンクがダウンするのも時間の問題か。 ガチャリ。剣を持ち上げてティエは立つ。 「終わりだ。貴様の命。この謙虚なナイト系フュリエが貰う」 光る剣。その光は今のピンクには恐るべきものとして見えたのだろう――。 「皆、ごめん……ピンク――何もできなかった」 「生意気なピンクはこうしてやるー!」 真独楽はもう一度クローを奔らせる。空中を裂いて、その三本の刃はピンクを切り裂き。3、2、1――ダウン。 ● 攻守は一進一退。回復手を失くしたヒーローたちと、回復手が元々いない闇の軍勢。これで状況はタイとも言える。 「ぼくの防御が……だが、負けられない。名乗れ、君!」 「ボク―? これから死にゆくお前らに言っても無駄だけど。ハルバードマスターと名乗っとこうか―」 唸るアンタレス。岬が振り上げた漆黒は目の前のグリーンに直撃しながら、イエロー、レッドを巻き込んで射抜く。 正義のヒーローが、悪役探してどうするんだ。そう目を細めた岬はもう一度、漆黒の力を練り上げていく。 「此処で終わらせないと正義のヒーローとして終わらせらんねーんだ」 もう一度、漆黒は正義を貫く。 だが敵も負けられないのだ。正義として、闇を照らす光となるために。 続く真独楽。 (心の奥までヒーローな、寧彦みたいなヒーローが。まだまだ皆には必要なんだ!) 目の前のヒーローもそうだが、何か違う。真独楽のクローはグリーンを切り刻んだ。 (起きて、寧彦――!!) そう願いを込めて。そうすればきっと、彼が命をこれ以上無駄にすることは無いと願って。直後、岬のアンタレスがグリーンを襲う――。 「く、皆大丈夫か……諦めるな、諦めるんじゃない!! うおおおお!!!」 イエローが影人を破壊し、レッドの足が動く。目指したのは拓真だ。 「どうした、イナレンジャー! お前達が、正義だと言うのなら……この俺に打ち勝って見せろ!」 彼の力、剣の一撃。その威力はグリーンを見ればよく解った。正直に言えば危険だ、彼の凶器は止めなければ!! 「打ち勝ってやるさ……正義は絶対に負けない!!」 「そうだ、その意気だ……全く、この俺を本気にさせるとはな」 レッドの剣が拓真の肩から胸へと切り込まれた。それでも拓真は立つ。肩が痛い、だがこんなもの歴戦のフィクサードに比べれば! 両刀が――レッドの胸へと刺さっていく。 「負け……ら、れないんだ……!」 拓真の剣を、レッドは掴んだ――。 そうだ、それでいいと拓真は思う――今ここで彼等は負けるのだろう。だが心では、己を貫き通せと。 「覚悟も、想いも! それを貫く為の力が無ければ、何も守る事は出来んぞ!」 「言われなくても、分かって、いるんだあああ!!!」 突如レッドを光が包んだ。負けられない意思がレッドに味方をしたか。 「――アハ」 「ふん」 レッドの背後。そのドラマを笑うように行方とティエの刃がレッドを切り裂いた。 「ほう、イナレンジャー如きがこの魔王イグニールを止めようと?」 闇の軍勢に魔王参戦。しばらくミリーを見ないなって思ってたらいつの間にか舞台の天上に立っていた。 腕組み、高笑いをひとつ。 「面白い。ゆけい、者ども! 止められるものなら、やってみろ!」 両手を天高く上げたミリー。小さな火種が轟と燃え上がり、それを地上へと投げれば一面火の海。リベリスタをナチュラルに巻き込んでいるが、まあ、闇の軍勢って群ても仲良くなさそうなので良し。 火の海フィールドの上で、踊れ、踊れとミリーは次のゲヘナの詠唱へと入った。 さあ、次にそれを放つとき。どれだけの正義が倒れるんだろうか!! 「皆、気を付けて! 集中して攻撃していこう!」 イエローが叫ぶ。 「よそ見していたら危ないデス」 だがイエローはその声にハッとした。すぐ背後には行方が居て、その腕は断頭しようと上がっていて!! 右腕の刃がイエローの左腕に食い込んだ。左腕の刃がイエローの右肩を食いちぎった。 「きゃああ!!」 「アハハハハ! 細切れになるか、ぶつ切りになるか、選ぶといいデス」 「ほら、今までに食べた子供達の記念よ。この遊園地に来るのはどんな子かしら。貴方達、子供はお好き?」 バサリと投げたのは髪。それが風に攫われて散らばっていくのをイエローは、朦朧とした意識の中で見た。 「貴女って人は……どうして、そんな事ができるのですか!!」 「ふふ、それこそ私が私であるからこそよ」 沙希がイエローと一気に間合いを詰めた。イエローの顎を片手で持ち上げ、耳元に唇を寄せ、「さようなら」と呟いた。 瞬間、大鎌がイエローの首を弾き飛ばして――行方の刃がイエローの心臓を食いちぎった。 ティエはレッドを切り刻む。仲間を思う彼の気持ちに準じてか、彼は何度でも立ち上がってくる。 「敵にしてはあっぱれだ、だが、一人で何ができるというのだ」 「一人でも、平和を望む――!!」 「フッ……だがダークパワーを得たナイトがやられる訳が無い」 ティエの武器は光輝いた。その光は少し暗くて、漆黒めいていて、悪の力が武器に吸収されていくような――。 その剣を受けたレッドは地面に転がった。 「みんな……俺は、俺は……!」 消えた仲間たち――もはや頼れるのは己のみだ。それでも尚、立ち上がろうと足掻くレッド。 もはや腕も、足も、痙攣していて限界だと悲鳴を上げている。 「終わりだよ、これでね!」 屋上から飛び降りてきて、そのまま空中で回転しながら腕に炎を纏うミリー。打撃――拳がレッドの胴を捉えた。 「が、ぶっ!!」 「イグニール様の炎は赤よりも赤いんだわ」 ミリーの笑う顔が見える。レッドは剣を支えとし、負けぬと瞳に闘志を燃やし。 だが、レッドの後頭部に銃が着けられた。瑠琵だ。 「コレで終わりじゃ。イナレンジャーよ。貴様等はよく戦った。貴様等の所為で新たなヒーローを志す子供達も増えたじゃろう。貴様らの魂は子供達に引き継がれ決して消えぬ。実に忌々しい」 引き金に力が入る。おやすみ、ヒーロー。労う言葉はそれで十分。 「嗚呼……」 そろそろ夢から目覚める時間だ。課せられたヒーローとしての義務は、今、此処で敗北という名で終焉を迎えるのだ。 一種の解放と呼んでもいいだろう。 ――銃声が、ひとつ。 「見事だ、イナレンジャー。……お前達は、確かに正義の味方だった。俺が保証してやろう」 拓真は、そこに居たはずの存在にそう言い残して武器を仕舞った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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