● 「……響希君」 「なに、体育館でもとる? チラシ作る? それともそもそも当日を手伝えばいいの?」 「未だ何も言っていませんが、そうですね。察しが良くて助かります」 「うわあー段々扱いが酷くなっているのって気のせいじゃないわよね?」 「いえいえ、まさかそんな」 「白々しい事この上無いわ、……で、どれ」 「前者二つで。……何時も感謝しています」 「えっ……あ、はい、此方こそ……ええと、や、やっておくわ」 「はい、どうぞ宜しくお願い致しますね」 ● 「梅雨ね。雨あんまり降らないけど。まぁとにかく梅雨なのよ。どーも、今日は『お願い』を聞いてくれる?」 ひらひらと手を振って。『導唄』月隠・響希 (nBNE000225) は定位置とも言うべき椅子へと腰を下ろした。 「以前から狩生サンが遊びに行ってる、老人会があるの。其処の人たちがね、小学生と交流する事になったんですって。内容は……ええと『憂鬱な梅雨を吹き飛ばそう! エンジョイ★たのしいむかしのあそび』だそうで。 ……いや、これ書いてあるのそのまま読んでるからね。因みに草案は狩生サンだからあたしは悪くない。まぁ、そう言う催しがあるのよ、とにかく」 ひらひらと、手元で揺れる一枚のチラシ。頼まれて作ったらしいそれを机に置いて、じゃあ続き、とフォーチュナは肩を竦めた。 「お願いって言うのは要するに、それの手伝い。兼、現れてしまいそうなエリューションを事前に……そうね、防ぐ事。まぁそんな難しい事じゃないわ、一緒に遊んできてくれればいい。 当日は大体30人前後の小学生と、老人会の皆さんが居るから。……一緒に、お手玉作ったり、折り紙したり、ベーゴマとかけん玉もあるらしいわね。あ、竹とんぼとかも作れそうって言ってた。 一応体育館を確保してあるから、竹馬とかもできるんじゃない? 必要なものは、基本的に言ってくれれば用意出来るんで。遊びに来るつもりで来てくれればいい。 時間はだいたい、お昼過ぎから夕方までくらいね。おやつ食べる時間、とか、細かいスケジュールは皆で決めてくれて大丈夫だそうよ」 一通り話を終えて。大雑把にそろえられるものやら体育館見取り図を置いたフォーチュナは、やり切ったと言わんばかりに背伸びして首を傾げる。 「ああ、因みに狩生サンは当然一緒に行くらしいんで。なんかあったら、彼に言って。あたしは生憎仕事で行けないからさ、まぁ、羽根休めのつもりで……うん、楽しんで来て頂戴」 それじゃあ宜しくね、とひらひら手が振られた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月28日(金)23:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● その日、体育館の外の世界は、生憎のどんより曇り空。普段なら気分も沈みがちな筈の天気だけれど、今日は違った。集まった子供達に、老人会の面々。その全員を見回して。 『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)が、真っ先に駆け寄ったのはもう何度も顔を合わせた愛しの梅。お久し振りねと笑った彼女は今日も素晴らしい位に泳ぎ疲れた人魚の色気に満ちている。良く分からないが恐らくアンニュイな感じのそれなのだろう。 「君と会えただけでテンションマックスだな! あ、子供達は初めましてだな、メイだ。気軽にメイと呼んでくれ!」 今日は楽しもう、と笑えば少しだけ年下であろう子供達が勿論と頷く。この光景を見ているだけで、心は自然と楽しさを覚えていた。そんな彼女の横で、狩生の紹介で来た者だと挨拶して見せた『関帝錆君』関 狄龍(BNE002760)は、笑顔で子供達の前にも立つ。 「ガキどもオイーッス! 声が小さいぞー! もいっちょオイーッス!」 「おいーっす! せきさんはお兄ちゃんですか、お姉ちゃんですかー?」 「好きに呼べ! それでお前ら自身の将来的な願望が分かる!」 初っ端から実にインパクトの強い自己紹介である事この上ない。呼びづらいなら、と名乗った呼び名はあっという間に子供達にも老人達にも定着して。それに笑い声を立てながら、じゃあ遊んでみようぜと用意された数々の玩具たちを指さした。 よろよろ。毎度のことながら本当に外出歩いても大丈夫なのだろうかと不安になるレベルの足取りで。ベーゴマを集めた台の傍に寄った『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)は、子供達を手招きながら最早友人とも言うべき老人たちへと笑みを向ける。 「お久しぶりですな……今日はお手柔らかに……子供達は初めてでしょうからな」 勿論、丁寧に説明しよう。そんなおじいちゃんがポケットから取り出したのは形の違う幾つものベーゴマ。まさかの自前である。同じに見える様で、実はベーゴマにも種類があるのだ。知らなかった。 ひとつひとつ。机に並べたそれを興味津々と見つめる子供達に微笑んで。まずは、と指先で示すこま。 「初めて回す方には回しやすい丸六か角六がよいでしょうな……」 何方もバランス型。前者は持久力に優れ、後者は攻撃力が高いのだ。へー! と上がる歓声。ベーゴマって奥が深い。逆に、一番背の低いぺちゃは上級者向け。薄さ故に扱いは難しいけれど、勝負強さは中々のもの。 此処まで使いこなせてこそ一人前のベーゴママスターなのだ。そう言われるとやりたくなるのが子供心である。ひとつとって、どうやって回すの、と首を捻る子供達に混じって。『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)もまた、一つのこまを取る。 ゲー研所属は伊達じゃない。無電源系ゲームだってお任せあれ、流石クレバー明奈である。教わって、一緒に楽しむ。勿論フレンドリーに明るく。華やかとも言うべき笑顔で子供を見遣って、如何も上手く輪に入れない小さな手を引いた。 「何、こういう物はやってる内になんとかなるもんさ。ほら、知ってるか? ベーゴマは現代にだってリバイバルしてるんだぜ?」 所謂アレである。差し込んで引っ張って回すアレである。現代のベーゴマは比較的簡単だけれど、本物はそうはいかない。紐を巻いて、と四苦八苦して、まずは一勝負。どうせ実力は子供達と大差ない。革醒していようと居なかろうと関係ないだろう。 かつん、と音を立てて回り出したこま同士がぶつかる度に上がる歓声。頑張れ頑張れと熱心に応援する瞳は何処までも楽しげに輝いて居て、見ているこっちの気分が和んでしまう。そんな声を背景にしながら。 「家に余っていたはぎれがあるから、好きな模様を選んでいいよ」 『鷹蜘蛛』座敷・よもぎ(BNE003020)を中心に集まった子供達が作るのはお手玉である。昔の遊びと言えば、自分もラップ芯で万華鏡を作ってみたりもした。そんな記憶を懐かしめば竹次郎がいいねえと笑う。 お手玉も実は奥が深いのだ。まくら型やらかます型やら。今回作るのは、ポピュラーな座布団型。こうやって組み合わせて、縫って。中にはこれを詰めて、と丁寧に説明していくよもぎの手を眺めながら、自分の好きな布を選んだ『逆月ギニョール』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)は、面白いわね、と興味深げに眼を細める。 「こういう文化は伝えていかないと廃れるだけだものね。素敵な考えだと思うわ」 「……エレオノーラくんのはどんな感じだい?」 材料は同じでも、作る人によってそれが持つ雰囲気は容易く変わる。エレオノーラの選んだそれを興味深げに眺めるよもぎに、これは如何するの、と尋ねる声は幾つもあって。微笑ましさに表情を緩める。こうやって、一緒に楽しめるのがとても嬉しかった。 未だ幼い頃に作り方を教えてくれた祖母には感謝するべきだろう。遠い記憶を懐かしみながらも、子供達の手元を確認するのは忘れない。 「ねーねーエレーナわかんなーい」 「そうね、じゃあおじいさんやおばあさんに聞いてみましょ?」 笑顔で首を傾ける。実際は自分もおじいさんだけれど。言っても、彼らは多分分からないのだ。何処かの誰かが中々同年代だと信じて貰えなかったように。子供の振りをして、どうやるのかしら、と首を捻る彼の横を通り過ぎた狩生が、小さく笑ったのは勿論視界の端に収めていた。 ● 「ヘイユー! 子供達、わたしと竹とんぼ作りしましょ~。あ、竹次郎様! 教えて欲しいのですぅ」 伸びた手が子供数人を拉致……否、優しくご案内。ついでになんかすごい玄人っぽい竹次郎も捕まえて。『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)は用意されていた竹を握り締めて瞳を輝かせる。 プリンセスは勿論遊びでも天才だ。竹馬だってお手玉だって出来てしまう。教えてくれたのは、大事な大事なお城で自分を育ててくれたおじいとおばあだ。何一つ分からなかった自分を笑顔にする為に、たくさんたくさん教えてくれたのだ。遊びは楽しい。誰かを、笑顔にしてくれる事をロッテは一番知っている。 「だからわたしも、おじい達に教えてもらった遊びで、皆笑顔にするのです! さああしょぶのです!」 「まおも竹とんぼ作りたいです。 ぴゅーんって飛ぶのがすごいとまおは思いました」 だから一緒に遊ぼう。きょろきょろしてた子供の手を取って、『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)は小さくはにかむ。初めてで、どきどきだから。一緒だと心強い。そんな彼女について来た少女と一緒に、見上げた老人たちはまおにとっての憧れだ。自分よりずっとずっと長く生きている彼らは知らない事をたくさん知っている、すごい知恵袋だ。 学校で見た事しか無いものを、彼らはきちんと知っている。すごい、と自然と輝く目。そんな彼女の頭を撫でて、狄龍も適当な位置に腰を落ち着ける。3人揃えば文殊の知恵、と言いたい所だが実は誰一人作り方を知らない。彼らの目線は自然と老人に向いて。 「こうなー、大胆に、でもすーっといくんだよ、わかるか? あ、指気を付けろよ」 「えっと、親指を小刃の前に出さずに添えて竹を優しく削って……」 「なるほどなるほど、ナイフで……」 「ひねりの角度とバランスが大事……バランスなら任せろ! えいっ!」 思い思いに。削り始めたそれは三者三様。すーっと削れていく狄龍や竹次郎の手元に見惚れたまおの手が思わず止まって。その視線の先で、ガリッ。明らかにこう硬いものに硬いものがぶつかった音。微かに落ちる沈黙。視線を巡らせて、よし、子供は気付いていない。狄龍の手がそうっと、指先に当たったナイフを離す。 手先が不器用なのも困りものである。嗚呼、焦った。それを見ながらも、まおは慣れて来た刃物に少しだけ安堵の息をつく。ちゃんと使えば、怖く無いのだ。危ないのは使い方を知らないから。 「狩生様、見て~! わたしが作った竹とんぼ! 林檎の絵描いたのです!」 「おや、……これはこれで趣がありますね、ロッテ君のセンス、私は評価します」 どうやら愛しの王子様並のバランス感覚は発揮されなかったらしい。でも大丈夫。これでもちゃんと飛ぶ。多分。きっと。飛べばいいな。若干罅入りのそれを青年へと差し出せば、レンズ越しの瞳が驚いた様に瞬いて、けれどすぐに微笑ましげに笑ってそれを受け取る。 皆の完成を確認して。まおがはい、と手を挙げる。飛ばし合いっこがしたい。そんな提案は勿論満場一致で賛成。一列に並んで、勿論、一番遠くまで飛ばせた人が勝ちである。 「い、いきますよ、せーの」 「いけ毒林檎ちゃん号! 蹴散らせー!」 「よーし爺さんガキども、俺の飛ばしテクを見ろー!」 一斉に舞い上がる竹とんぼ。誰のが何処に行ったのか。かつん、と落ちたそれを追っていく子供達の中で、一人天井を見上げるのは狄龍。飛ばしテクは素晴らしかったようです。其れこそ、天井にインしてしまう位には。やっちまったなぁ、と眉を寄せる横で、同じように天井を見上げる子供。 視線の先には高い所に引っかかったもう一つの竹とんぼがあって。そっと、その頭を撫でてやる。新しいの作ってやる、と言えば少しだけ元気を取り戻した少年の顔と、竹とんぼの位置。しっかり覚えて視線を外した。あとで、こっそり返してやろう。そんな優しさを見せる狄龍の横、悔しげに狩生を見上げるロッテ。 「やはりおじいちゃん……強いのです……」 「ええ、それは勿論、まだまだ若い人には負けられませんね」 若干得意げに押し上げられる眼鏡。次は負けないと胸を張ったロッテが休憩がてらおやつを食べよう、と言う中で、一番飛ばなかった竹とんぼを拾い上げたまおは、コツを教えて欲しいと老人にそれを差し出す。もう少し――なんて教授を聞くのも、やっぱりすごく楽しいのだ。 「上手だなチクショー!」 「明奈ねーちゃんもすげー!」 全力で遊んで全力で楽しむ。勝ち負けも勿論楽しみだ。子供達とベーゴマを楽しむ明奈の後ろで、くるくると紐を巻く五月はやってきた狩生に回せるか、と首を傾げる。一応は、なんて彼が答える前に。嗚呼聞くまでもなかったと少女は首を振る。 だって、出来て当然だ。彼はスタイリッシュ。スタイリッシュに死角など存在しないのだろうから。そう納得して、練習と台の中へとこまを放る。くるくる、回ったけれど勢いのないそれに首を捻って、梅、と名を呼んだ。 「ベーゴマスペシャリスト梅、手本を見せてくれ!」 任せといて、と回されるそれの美しさはやはり気だるげな人魚。フォームも勿論流麗である。これもまた煌めくポジションなのだろうか(但し五月にしか見えない)。素晴らしい、何て思って、ふと。思い出した様に首を傾ける。そう言えば、彼女の本名はなんなのだろう。よくよく考えると、自分は余り彼女を知らないような―― 嗚呼けれど今はこの実力を見る事が出来ただけで十分だろう。そんな彼女の横で、老人達とベーゴマを語り合う小五郎は懐かしむ様に目を細める。相棒は倒されにくく攻撃力もそれなり、けれど軽くてそのままでは競り負ける。そんな時に、子供達が行ったのは改造だ。今の様に部品なんて無い。 鉛を流したり、やすりで削ったり。工夫は幾つだってあった。それを思い返す様に立ち上がって、用意しておいた改造用の用具を机に並べる。 「せっかくじゃから、まわしてなれてきたらこまを自分の使いやすい様に改造してみなされ……」 危ない作業は手伝う。そう微笑んで、彼もまた回してみようかと準備済みのそれを構えた。何故だか張り詰める空気。掛け声と共に、想像も出来ない程華麗なフォームで放られたこまが安定した速度でくるくる回る。すげえ、と瞳を輝やかせる子供達に微笑んで。 「こうしてますと童心に返りますな……さあ、いざ勝負ですじゃ……」 楽しいからって全力出しすぎたおじいちゃんの筋肉痛は、はたして明日来るのか明後日来るのか。どちらにせよ心配過ぎて、無理しないでおじいちゃんと願う声は届くだろうか。 ● 賑わう子供達に、無言で近寄る影一つ。突然の気配に振り向いた子供達の前。何だかかっこいい感じの変身しそうなポーズを取った『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)がかっと目を見開く。 「すいーとくらまーめー……出来るかボケェ! やっていいことと悪いことが在るんだよ! 超えちゃいけないライン考えろよ! 俺が!」 捻りを付けて叩き落されたお面。このお兄さんどう見ても情緒不安定です本当に(ry)。まぁ、それはさておいて。冥真が皆に教えるのは、ホイール転がしである。無駄な部品の無いそれを、長い棒で転がす遊びらしい。そのままである。 敷物を引いた其処で、まずはお手本。転がるそれにおお、と関心を示す子供に、持っていたそれを差し出して。やってみろと首を傾けた。 「倒しても重くないから怪我しないし大丈夫だろ。慣れてきたらホイールをちょっと転がしてみ?」 出来る様になれば二人でキャッチボールとかも出来ちゃう遊びなのだ。実は結構すごい。教えながら、こんな感じですよねと老人達を振り向いた。興味津々なまおや五月にも棒を私ながら、もし良ければ模範見せてやって下さいと告げれば、楽しそうに輪に入ってくる後姿。 それに微笑ましさを覚えながら、冥真は他も見回ろうと視線を動かす。其処で繰り広げられていたのは、メンコだった。多分メンコだ。でも柄はどう見ても、アイドルブロマイド。アイドルは明奈。勿論、手作りである。 「フフフ、販促活動を兼ねた上手い作戦だろう?」 勝っても負けてもプレゼント、最終的には今回のお土産として全部配っちゃうつもりなのだ。嗚呼実に太っ腹。お財布は空きっ腹だがそれはまぁこの際気にしない事にしておくのだ。アイドル活動、なんて打算的な事を想わない訳ではないけれど。 子供の面倒を見るのも好き。おじいちゃん子だったから、年上と話すのも好き。こんなに楽しいのだから、まさに今日は一石二鳥。満足げな彼女の前で、今日も老人達にちやほやされるのは『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)、じゅうよんさい(笑)。 「わっ、この間の飴ちゃんじゃな! あのな、メンコが何度やっても一回転して元にもどっちゃうのじゃよ」 だから、得意な人がいれば教えて欲しい。そんな声に任せろ任せろと寄ってくる手。嗚呼、これなら孫――じゃなかった友達にも教えてやることが出来そうだ。そんな彼女の横を通り抜けた子供が、冥真にびしっと指を突きつける。 「兄ちゃん勝負! いざじんじょうにー!」 「え? 俺が……仕方ねえな」 なんかかっこいいポーズをとってみる。でも持ってるのはブロマイドメンコである。決してかっこいい武器とかではない。変身も出来ない。――救慈さんちの坊ちゃんは変に器用ね。だなんて言われた男の本気である。それって如何見ても貶されているのは気のせいだろうか。気のせいと言う事にしよう。そして此処で発揮するのも如何なのかと言うツッコミも無い。さあ、止められるなら止めてみせろ。 なんていう勝負が実際どんな感じに収まったのかは現場に居た人のみぞ知る。 「いいですか、ここがポイントで……ガニ股にさせるのです」 「けん玉捌きの女王……いや、正に必殺仕事人なのだ! 流石梅なのだ、おお、こっちではキモ足鶴の大いなる羽ばたきだ!」 にゅっと生えた折り紙の足。ロッテの手元で作成されたそれに上がる悲鳴は歓喜か恐怖か。とにかくなんかすごいそれに、弾のベイベーと言う新たな名を授かった梅の素晴らしいけん玉捌きに見惚れていた五月も楽しげに加わる。 量産されるキモ鶴。非常にがに股なそれが並ぶ様はどう見てもホラーである。でも、これ今流行の鶴進化バージョンらしい。人気者間違い無しらしい。つられた子供達が楽しそうに折り紙を折る中、やってきたまおが驚いた様に瞬きした。本物に、似ているだろうか……? 「足がにょきっと生えてて、まおは面白いと思いました」 「こ、これは鶴、かい? ……と、狩生くん、お疲れさま」 よもぎが放ったお手玉をそっと受け止めた狩生に、投げかけた問いは彼の幼かった頃の世界の事。銀月は微かに瞬いて。もう随分昔過ぎて、と困った様な笑みを浮かべた彼がそろそろお開きですね、と告げれば集まる子供と老人たち。 楽しかった、何て囁きかわす声の中、響希へのお土産の梅ブロマイドと駄菓子(多分喜ぶだろう)を握り締めた五月が駆け寄ったのはやはり大好きな梅。そして皆――の中でも特に輝いていた少年三太夫の下。 今日だけで梅の異名は3つくらい増えた。そして、五月と泳ぎ疲れた人魚、梅の心の距離も縮まったのだ。所謂ス゛ッ友である。ハイカラで気に入ったわと笑う彼女と確り握手。 「また遊ぼうな! 指きりげんまん、嘘ついたらデッドラなのだ!」 「また来るのです! 遊んで欲しいのですぅ」 なんだかとっても怖い約束の気がするがきっと気のせいだ。眠たげに目を擦った彼女の頭を撫でたロッテに頷く顔はどれも笑顔で。誰ともなく扉を開ければ、差し込むのは夕陽。随分日の伸びた外は、いつの間にか綺麗に晴れていた。 もう、雨の気配はない。どんより雨雲は何処へやら。憂鬱な気持ちごと雨の気配を拭い取った楽しい一日は、笑顔のまま終わりを告げたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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