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The bird feels not its wings heavy. (鳥はその翼を重いとは思わない)

●The bird feels not its wings heavy.
(鳥はその翼を重いとは思わない)
 ――英語のことわざ
 
●ファイアスターター・ゴー・バック・トゥ・ギルド

 2013年 2月某日 某所
 
「ハッ……とんだ下手ァ打ったもんだ……」

 とある路地裏。
 そこで一人の青年が精一杯不敵に笑ってみせる。
 とはいえ、その息遣いは苦しげだ。
 不敵な笑みを浮かべたつもりの表情も、苦しげに歪んでいる。
 
 それもそのはず。
 彼は深手を負っているのだから。

 種々雑多なアーティファクトの蒐集を目的とし、構成員としてフィクサードを擁する組織。
 ――キュレーターズ・ギルド。
 その一員である異能者――三宅令児。
 
 彼は組織の手から脱走したとあるアザーバイドの再捕獲を命じられて出向いた。
 そして、そこでE・ビーストの群れとアークのリベリスタ達に遭遇したのだ。
 三つ巴の戦いの結果、E・ビーストは全滅、アザーバイドはアークに保護された。
 
 当初の目的を果たしたリベリスタ達はフィクサードである令児へと矛先を変えた。
 彼を捕縛しようとするリベリスタ達と交戦した令児。
 迎え討とうにも、相手は十二人。
 ひとまず撤退を考えた令児は自らの異能で生み出した炎により、足元の地中ガス管に着火。
 巻き起こしたガス爆発に紛れて離脱を成功させたのだ。
 
 とはいえ、彼自身も深手を負った。
 白い燕尾のドレスシャツは脇腹部分に大きな赤い染みができている。
 それ以外にもブラックのジーンズは所々が破け、やはり赤い染みが見える。
 爆発を起こした際に飛散した破片が突き刺さったのだろう。
 小さくはない破片が幾つも高速で突き刺さった――。
 フェイトを得ている者とはいえ、これだけの重傷を負えばただでは済まない。
 
 必死に足を動かす令児。
 だが、程なくして彼は前のめりに倒れ込む。
 意識の朦朧としていく彼が道路に激突する瞬間。
 横合いから現れた誰かが彼を正面から抱きとめる。
 
「……!」
 抱きとめられたことに気付く令児。
「危ない所だったね」
 抱きとめた誰かは、小さな笑いが混じった声で令児に言う。
 顔を上げていない令児には見えないが、きっと『誰か』は微笑んでいるような表情をしていることだろう。
 
「来人、か――」
 声のおかげで誰か気付いたのか、令児は消え入りそうな声で名前を呼ぶ。
「まさか令児がリベリスタに負けるとは思ってなかったけどね。けど……もしも、ってこともあるから。来といて正解だったよ」
 言いながら声の主は令児を路肩にそっと座らせる。
 
 改めて令児は消え入りそうな意識の中で相手を見て、やって来たのが来人であることを確認する。
 
 髪の長さは令児と同じく顎のあたりまでの長さ。
 令児の顔立ちも端正だが、彼――来人の顔はそれ以上に端正だ。
 そのおかげで彼の容姿は、もはや可愛らしいといえる所にまで達している。
 加えて彼の身体はほっそりしている。
 令児もスリムな方
 そして、肩まで露出した上衣。
 そうした特徴ゆえ、彼には中性的な印象がある。
 見た目の印象に違わず声も中性的だ。
 
 来人は壁にもたれかかる令児の状態を軽く観察する。
 その後、彼はその細腕を令児の身体に回した。
 特に力を入れた様子はない。
 それ以前に、スリムではあるが身長はある令児の身体。
 しかも、ほぼ気絶している彼は自分で踏ん張れる状態ではない。
 それを華奢な来人が持ち上げようとしたところで、どうにかなるとは思えない。
 
 だが、令児の身体は軽々と持ち上がった。
 そのまま来人は片手一本で令児を担ぎ上げる。
 どこかへと歩き出す来人。
 そして、彼は担いだ令児の耳元にささやいた。
「大丈夫。君はゆっくり休んでなよ。その間は『キュレーター』からの頼みも、メッセンジャーも僕がやってあげる」
 
●ミステリアス・ボーイ・カムズ

 2013年 6月某日 アーク ブリーフィングルーム
 
「集まってくれてありがとう」
 イヴに迎えられたリベリスタ達。
 早速、彼等は依頼内容を聞く体勢に入った。
「ここ最近、活動を控えていたキュレーターズ・ギルドが活動を再開したわ」
 それだけ告げると、イヴは端末を操作する。
 すぐにモニターには、中性的な見た目の青年が画像が映し出された。

「彼が今回、襲撃をかけてくる構成員――三鷹来人(みたか・らいと)。当然ながら彼もフィクサードで、異能の持ち主よ」
 リベリスタ達の視線が画像に集中したのを見て取り、イヴは説明を続けた。
 
「重力操作――それが彼の異能。そして彼自身のフィクサードとしての強さはそこそこ……といったところ。でも、厄介なのは――」
 そこで一旦説明を止めると、イヴはモニターを指さした。
「――彼が組織から与えられたと思われるアーティファクト……『力ある者のタッツァ』」
 
 イヴはそう前置きすると、端末を操作して画像をズームする。
 ほどなくして画面には彼の右手がアップで映し出された。
 彼の右手には親指を除くすべての指にリングが嵌められている。
 すべてのリングは同一の形状をしているようだ。
 リングには宝石の代わりに小さな皿が嵌められている。
 もっとも、その皿は小さいなりに深さを持たせてあるおかげで、皿というよりは『杯』にも見える。
 
 幾らか右手のアップを映し続けた後、イヴは端末を操作した。
 今度は左手がアップになる。
 左手にも同一のリングが嵌められており、その数も同じく四つだ。
 
 リベリスタ達全員が画像を見終えたのを見計らい、イヴは説明を再開する。
「このアーティファクトは使い手が持つ異能の力を少しずつ溜め込んで、E・エレメントを生み出せるの。これも詳細は不明だけど、どうやら三宅令児の炎や、彼の重力のように自然現象――E・エレメントとなれるものにまつわる異能だけに使えるみたい」
 
 説明しながらイヴは更に画面を切り替えた。
 今度は画像ではなく映像だ。
 画質が粗いあたり、フォーチュナの予知だろう。
 画面の中では来人の周囲を八つの球体が旋回している。
 球体は総じてバスケットボール大だが、その大きさはまったく同じではない。
 それぞれ色も違うのから考えて、どうやら個体差があるようだ。
 
「彼はこのアーティファクトの力で生み出した『惑星』と呼ばれるE・エレメントを従えているわ。別個に戦うのは勿論、連携して発動する異能も駆使してくるから気を付けて」
 
 彼に関する説明を終えたイヴ。
 彼女が続いてモニターに映し出したのは、アーク所有のとある研究施設の外観だ。
 
「彼の今回の目的はこの研究施設に保管されているアーティファクト――以前アークと交戦したキュレーターズ・ギルドの構成員である黒山アイリから押収した『巣穴を統べる資格』……その奪還」
 語りながらイヴは更に端末を操作する。
 すると画面には鉄細工の蟻がリング状に連なったデザインの指輪が映し出される。
「元々はキュレーターズ・ギルドの所有物だし、それを奪還しに来るのは当然と言えば当然ね。そして、私達アークとしても、悪用できるアーティファクトを彼等のような危険な組織に還すつもりはない」
 
 そして、イヴはリベリスタたち一人一人の目をしっかりと見据え、言った。
「悪用することがわかっている相手にアーティファクトを渡すわけにはいかない。それに、研究員の人達が危険な目に遭うのも防ぐ必要がある。その為にも――みんなの、力を貸して」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:常盤イツキ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2013年06月25日(火)23:23
●情報まとめ
 舞台はとある研究施設の付近。
 敵はフィクサードが1体とE・エレメントが8体。
 
 敵のスペックとスキルは以下の通り。

・スペック

『三鷹来人』
 そこそこの強さを持つフィクサードです。
 重力を操る異能を持ちます。
 本人の強さはそこそこですが、『惑星』との連携を行う為、侮れません。
 
・スキル

『重力球台(グラヴィティー)』
 任意発動(A)自
 来人が『力ある者のタッツァ』を長年使用し、引き出した能力です。
 指輪の『杯』部分を台座とするように重力球のE・エレメント――『惑星』を精製します。
 同時に八つを精製可能。
 一方、精製には異能の力のチャージが必要な為、精製できるのは『杯』一つにつき1シナリオ1体です。
 
『惑星投網(プラネット)』
 神、近~遠~遠2 単~範~域(※)
『惑星』との連携で発動する異能力です。
 配置した『惑星』を中継点として重力エネルギーを増幅し放出。
 高重力を網のように張り巡らせ、範囲内の標的を押さえ込む攻撃です。
 バッドステータスの『重圧』が付与される危険性があります。
 
 ※連携に参加する『惑星』の数に比例して効果範囲と攻撃力は上がり、『重圧』付与の確率も高まります。
 
『1000kgの重力子(グラヴィトン)』
 神遠範
 局所的に高重力をかけ、標的を押し潰す攻撃です。
 命中すると重量物が落下してきたような衝撃を受けます。
 
『空中待機(エアウェイト)』
 任意発動(A)自
 自分にかかる重力を操作し、自らの重量を軽減する能力です。
 空気のように軽くなることで気流に乗ることも可能になる為、空中に立つことすら可能です。
 判定処理上は、発動すると飛行状態になります。

『????』
 任意発動(A)自
 来人の切り札たる能力。
 任意のタイミングで使用可能。
 発動と同時に(たとえ相手の手番中であっても)自分の手番の行動を一回得ます。
 ただし、長時間を要する行動や複雑な行動はできません。
 現状ではもっぱら撤退の補助に使用されるのみです。
 1シナリオ1回のみ使用可能。
 
・スペック
 
『惑星』
 来人がアーティファクトの使用によって精製するE・エレメントです。

・スキル

『惑星投網(プラネット)』
 神、近~遠~遠2 単~範~域(※)
 詳細は『三鷹来人』の項を参照。
 彼と連携しての攻撃方法です。
 
●シナリオ解説
 今回の任務は来人の撃退が目的です。
 別に殺傷せずとも、ある程度までダメージを与えれば来人は撤退していきますので、シナリオは成功となります。
 今回のシナリオも、クリア条件を満たす方法は一つではありません。
 リプレイを面白くしてくれるアイディアは大歓迎ですので、積極的に採用する方針ですから、ここで提示した方法以外にも何か良いアイディアがあれば、積極的に出してください。一緒にリプレイを面白くしましょう!
 今回も厄介な相手が出てくる依頼ですが、ガンバってみてください。
 皆様に楽しんでいただけるよう、私も力一杯頑張りますので、よろしくお願いします。

 常盤イツキ
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
ソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)
■サポート参加者 4人■
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
マグメイガス
綿雪・スピカ(BNE001104)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
クロスイージス
リコル・ツァーネ(BNE004260)


「ここだね」
 アーク保有研究施設の前に現れた来人は正門に軽く手をかざした。
「さて、1トンの加重に耐えられるかどうか強度実験でも――」
 クスリと笑う来人。
 そんな彼に何者かが声をかける。

「生憎、その門扉にもアークの予算が使われてるんでね。実験はよしてくれよな? ミスター重力」
 声のした方へ振り向く来人。
「どうやら、お見通しみたいだね」
 彼の視線を受け止め、『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)は余裕の笑みをみせる。
「重力を操るとは、珍しい異能だな。一つ御教授願おうか」
「いいよ。なら、その重力で叩き潰すことで身をもって教えてあげる」

 次の瞬間、来人の周囲に合計八つの球体が出現する。
「早速『惑星』を出したか。八つか……水金地火木土天冥海には一つ足りないな」
 冗談めかしたように指摘する影継。
「最新の定義では冥王星を抜いた八つが太陽系の惑星なんだ。何かの役に立つかもしれないから覚えておくといいよ――もっとも、君が生きて帰れたらの話だけどね」
 
 八つの球体は漂うように動き、各々散開していく。
「こっちは九、そっちは一。多勢に無勢は明らかだけど、やる?」
「ならここで戦わない理由はないな。そっちは九。こっちも八――数の上ではそれほど不利でもない」
 影継の言葉に呼応するように、仲間のリベリスタ達も一斉に姿を現す。
 
「ご機嫌うるわしゅう、三鷹君、惑星がお友達なんてユニバーサルだね。いうなれば君は太陽気取りってとこ?」
 気さくな調子で話しかける御厨・夏栖斗(BNE000004)。
「そんな風に考えたことはなかったな。まあでも、褒め言葉として受け取っておくよ」
 同じく気さくな調子で応える来人。
 来人の言葉に反応したのか、『惑星』達が夏栖斗へと向かっていく。

「私も混ぜてくれませんか? あの蟻みたいな指輪、せっかく私達が没収したんですから、みすみす奪還なんてされたくありませんし」
 夏栖斗に狙いを集中させまいと、戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)も割って入る。
「君も邪魔をするんだね。なら、潰すだけだよ」
 舞姫の挑発に反応したのか、『惑星』達は彼女へも向かっていく。
 
 順調に『惑星』を誘導していく夏栖斗と舞姫。
 すると今度は『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が来人に話しかけた。
「面白そうなアーティファクト、沢山集めてるんだな。一つくらい寄越してくれても良いんじゃないか」
 愛刀鮪斬を抜き放つ義衛郎。
「『キュレーター』が聞いたら喜びそうな言葉だね。伝えておくよ。というか、だったら君もギルドに入れば良いんじゃないかな」
 義衛郎はその提案を一笑する。
 
 続いて『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)と、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)が来人の前へと立ちはだかる。
「『巣穴を統べる資格』に『力ある者のタッツァ』……キュレーターズ・ギルドは随分と厄介なアーティファクトを沢山持ってるんだなぁ。それもエリューションを操るものばかり。目的はわからないけど……兵器として運用されるだけでも厄介だ」
 ガントレットに鎧われた拳を握る悠里。
 その横では、疾風がAFを起動しながら来人へと言い放つ。
「お引取り願おうか、どうせ禄でもない事にしか使えないのだろ。来るなら退ける、変身ッ!」
 AFに収納された装備を一瞬で纏う疾風。
 
「失礼な。アーティファクトは道具。そして道具には色々な使い方がある。それだけだよ」
 臨戦態勢に入った三人へと即座に言い返す来人。
 彼は警戒の眼差しを三人に向ける。
 そんな彼に、今度は頭上から声がかかった。
 
「わ、お星様たくさん。でも危ない網は、びりびり破きたいとまおは思いました」
 はっとなって顔を上げる来人。
 その視線の先には、研究施設の外壁に張り付いた『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)がいる。
「危ない網――それなら、君だって使うだろう?」
 変異部位からまおがクモのビーストハーフだと見抜いたのだろう。
 来人は冗談めかしたように問い返しつつ、手をかざそうとする。

 来人がまおを攻撃しようとしたのを察した『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)。
 彼女は注意を引くべく、来人に話しかける。
「貴方のようなフィクサードが相手なら、ノーフェイスと違って気兼ねする事も無いですね。神秘の力を悪用する人はきちんと捕まえて更生させないと。特に、エリューションをぽんぽん呼び出すような人は」
 セラフィーナに向き直った来人は、かざした手を彼女へと向ける。
「更生? 冗談でしょ? 僕達がやっているのはアーティファクトの力を引き出してあげていること。君達アークがやっている研究とそれほど変わらないよ」
 
 来人は平然とそう語る。
 セラフィーナは彼へと更に言い放った。
「それは随分とご立派ですね。でも、いいんですか? ゆっくり語ってても? 既に貴方の『惑星』は一箇所に集まっています」
 彼女の言わんとすることを理解したのか、来人の目つきが僅かに変わる。
「貴方の能力――『惑星投網』はその名の通り、網目状に配置した『惑星』が中継する重力波で広範囲を拘束する異能。つまり、網の結び目にあたる『惑星』が一箇所に集まった今の状態ではそれほど広い範囲を攻撃できない。違いますか?」

 セラフィーナの指摘に対し、来人は驚いた様子を垣間見せる。
「へぇ……そこまでお見通しなんだ。流石はアーク」
 思わず感心したように呟く来人。
 そんな彼に向けて、夏栖斗と舞姫以外の六人が一斉に襲いかかった。
 
「その情報は間違ってない」
 襲い来る六人を前にしても来人は余裕の表情だ。
 そのまま軽く手をかざす来人。
「けど、完全でもない」
 六人の攻撃が炸裂する寸前、凄まじい高重力が彼等を圧迫する。

 来人に攻撃をしかける影継と義衛郎も重力攻撃の前に苦戦を強いられていた。
「攻撃しながら相手の進撃も抑えられる――便利な能力じゃないか!」
 それでも義衛郎は務めて平然と言い放った。
 彼に続くようにして、影継もあえて不敵に笑う。
「俺を止めたかったら、この百倍は重くするんだな!」

 必死に高重力に耐える二人。
 その後ろではまおとセラフィーナも餌食となっていた。
 張り付いた外壁から強引に引きずり降ろされるまお。
 そして、うずくまることを強いられるセラフィーナ。
 
 そんな彼等に向け、来人は余裕の物腰で語り出した。
「この能力は君達も知っての通り僕と『惑星』たちの連携技でね。そして、連携に参加する『惑星』が多ければ多いほどその威力と効果範囲は増大するんだ。確かに『惑星』を一箇所に集められると厄介だけど、それでも集合した『惑星』を起点に放射した重力波で君達を圧し潰すことぐらいはできる」

 重力波で六人を圧迫しながら、来人はなおも語る。
「もっとも、網の『結び目』がダマになってるせいで、まんべんなく重力が行き渡らないのは僕としても厄介だけどね。おかげでまだ君達は自分の足で立ってる。ちゃんと『結び目』を拡げてたら――今頃、君達全員立ってられないよ?」
 
 来人は横を見るように首を動かして六人を促す。
 
「その意味では君達の作戦は正しいよ。ただし、『惑星』を引きつけた二人は無事じゃ済まないけどね」
 はっとなって視線を動かす六人。
 その視線の先では、夏栖斗と舞姫が倒れていた。
 すぐ傍で『惑星』八つが一極集中しているせいか、二人は指一本ろくに動かせないようだ。

「どうする? このままだとあの二人、遠くないうちにぺしゃんこだよ。それが嫌なら、『惑星』をまんべんなくバラけさせてもいいよ? そうすればあの二人は死なずに済むけど、今度は君達全員がダウンだねぇ。どちらにせよ、僕の勝ちは変わら――」
 
 歯噛みするリベリスタ達を前に、来人は余裕綽々だ。
 だが、彼が語り終えようとした瞬間。
 唐突に眩い閃光が辺りを包む。
「――ッ!?」

「三鷹さんの言う通り、ハーシェルさん達の作戦は実に正しかったようね。『惑星』達をダマにしたおかげで、わたし達は網に入らずに済んだ」
 サポート要員として別方向に待機していた四人。
 その一人である『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)。
 彼女はフラッシュバンを投げ終えるとともに言う。
 
「アイリ様の指輪も厄介な代物でございましたが、来人様の指輪も相当困った代物でございますね」
 二人目のサポート要員――『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)。
 彼女の放つ邪気を退ける神々しい光で、八人のリベリスタ達は高重力による圧迫から解放されていく。
 
「……くッ! 何者なんだッ!?」
 油断していたせいで閃光をもろに見てしまった来人。
 先程の余裕が嘘のようにうろたえる彼に向け、『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)が答える。
「リベリスタよ――手癖の悪い子は放っておけない、ね。たとえばあなたのようにアークの大事なアーティファクトで悪戯しようって人とか。悪いけど」
 答えながらスピカは詠唱で清らかなる存在に呼びかけ、味方全体を回復する福音を響かせた。
 それを受け、八人の仲間達は幾らかながら力を取り戻していく。
 
「かれいにとうじょうっ☆ サポートするよ! みんなのやるきアップ!」
 最後に現れたのは四人目のサポート要員。
 ――『わんだふるさぽーたー!』テテロ ミーノ(BNE000011)は発達した五感をフル活用し、的確な戦闘指揮を行う。
「ミーノのかんぺき! なサポートりょく!」

 サポート要員達からの援助を受け、再起する八人。
 
「さあ実験といこうかミスター重力! 影だの闇だのは、重力で動きが鈍るものなのか!」
 まずは影継が動いた。
 暗黒の瘴気を発散し、『惑星』達を攻撃する影継。
 
「さて、次はオレ達もいこうか?」
「はいっ!」
 義衛郎はセラフィーナと言葉を交わすと、鮪斬を握り直す。
 その隣で霊刀東雲を握り締めるセラフィーナ。
 次の瞬間、二人は凄まじいスピードで『時』を斬り刻む事によって、範囲内の対象を飲み込む氷刃の霧を作り出した。
 氷刃の霧は幾つもの『惑星』達を斬り刻んでいく。
 
 攻撃はそれだけに留まらない。
 今度は悠里と疾風が果敢に攻撃を仕掛ける。
「アーティファクトが奪われれば悪用されるのが明らかだしね。そして研究員達の安全も守り抜く!」
 神秘術式で補強された片刃の大型コンバットナイフ――龍牙。
 その刀身に雷撃を纏わせ、疾風は戦場を駆ける。
 すれ違いざまに次々と『惑星』を斬り刻んでいく疾風。
 彼に続くようにして、悠里も神秘の氷を纏った拳を『惑星』へと叩き込む。
「三鷹くん、僕には一人で君に対抗する程の力はないけど、足止めぐらいはしてみせる!」
 高重力で身体が悲鳴を上げていることなど全く感じさせないほど、二人の戦う姿は勇猛だ。
「悪いけど、君達の目的は果たさせないよ!」
 来人への進路を塞ごうとする『惑星』に、悠里は渾身の拳打を叩き込み続ける。
「……ッ!? 既に骨も間接も軒並み壊れてるはず……どうしてそこまで……!」
 
 怯まず向かってくる疾風と悠里を前に、更にうろたえる来人。
 彼に向け、疾風と悠里は堂々と宣言する。
「お前達のような連中にアーティファクトが渡ったら、抗う力さえもない人々が悲しむことになる」
「だから僕は……僕達は、死にものぐるいでこの手を伸ばす!」
 
 二人の威勢に気圧される来人。
 彼は無事な『惑星』を迎撃に向かわせようとする。
 しかし、その『惑星』も気糸によって縛られ、動けずにいる。
 
「危ない網、今こそびりびり破く時――そうまおは思いました」
 気糸でがんじがらめにした後、まおはオーラで作り出した爆弾を『惑星』へと植えつける。
 すかさず起爆される爆弾。
 大ダメージを受けた『惑星』を見て、来人は焦り始める。
 
 そんな彼に追い打ちをかけるように、セラフィーナが上空から襲いかかる。
「惑星も宇宙も好きですけれど……それがエリューションなら、破壊するまでです!」
 背中の翼で飛翔した彼女。
 頭上から迫る彼女に向けて来人は重力を飛ばす。
「その程度では、私の翼は縛れません!」
 しかし、セラフィーナは重力に耐えて飛び続ける。
 それが癇に障ったのか、来人は更に重力を強めた。
「いつまでそんなことが言って――」
 
 更なる高重力が襲い来るという危機的状況。
 だが、セラフィーナは小さく笑ったのだ。
 来人の言葉を遮るように、彼女は言う。
「重力を利用するのは貴方だけではありませんよ」

 その途端、彼女はあえて落下することを選んだ。
 重力によって加速された落下速度。
 その勢いを乗せ、彼女は眼下の『惑星』に向けて刃を振り下ろす。」
 
「やってくれるね……!」
 セラフィーナの奇策に歯噛みすると、来人は軽く地面を蹴った。
 来人は数メートルの高さを垂直跳びし、そのまま滞空する。
「空まで飛べるとか、本当に便利な能力だな!」
 すかさず跳躍からの斬撃をかける義衛郎。
 咄嗟にかわし、致命傷はさけたものの、高度を下げた来人。
 それを狙うようにして舞姫が斬撃をかける。
「この厄介な能力。単独ならまだしも、他の異能者との組み合わせで、脅威度は格段に上がる――この機会を逃さず、叩く!」
 舞姫の刃に斬りつけられた来人の前に、影継が再び躍り出る。
「さて実験だ。太陽がぶっ飛んだ時、周りの星はその勢いについて来れるのか! 斜堂流、惑星直列打!」

 影継の渾身の一撃は来人を後方へと吹っ飛ばす。
 転がった後、起き上がった来人はリベリスタ達に手の平を向けた。
 
「僕も『惑星も』随分と痛めつけてくれたね。けど……僕はまだ立ってるし『惑星』もみんな残ってる。でも、君達はもう立ってるだけの力も残ってない……僕の、勝ちだ」
 そう宣言する来人。
 だが、影継は武器を杖に立ちながら声を上げた。
 
「違うな……今だ、御厨ッ!」
 影継の声に呼応し、満身創痍の夏栖斗が来人の視線上に立つ。
「やめておくんだね。『惑星』を引き寄せたせいで高重力をもろに受けた君の身体じゃ、技が出せたとしても後一回が限度。それで僕達すべてを倒そうなんて」
「見てみなよ……君の目の前にいる『惑星』達をね」
 夏栖斗に言われ、来人ははっとなる。
「――! まさか、最初からこれを狙ってッ……!」
 
 来人の前に居並ぶ八つの『惑星』。
 それらは来人に向けて直列に並ぶ位置に誘導されていたのだ。
 
 拳を握る夏栖斗。
 その意図を察した来人は焦りながら叫ぶ。
「たとえ『惑星』をいくつか砕けても、僕までは届きはしないっ!」
「僕たちがこうやって、君達の後の先をとれるのは神の目と何より研究員のおかげだと思っている。だから守りぬく。フィクサードの、キュレーターズギルドのいいようにはさせない。その為にも、届かせる――!」
 
 夏栖斗は目にも止まらぬ武技を繰り出す。
 それは『飛翔する武技』。
 彼の放った武技は『惑星』を貫通し、来人へと迫る。
 一つ一つ砕けていく『惑星』。
 遂に来人の眼前――八つめの惑星が砕ける。
 その瞬間、来人は勝ち誇ったように笑った。
「八つめで止まった……僕の勝ち――が……はっ」
 
 だが、かざした手から反撃の重力を放つ間もなく、来人は鳩尾を抑えて吐血する。
 八つの『惑星』を砕かれ、傷も負った来人。
 追い詰められた彼の前に舞姫が立つ。
 彼女は少女が写った一枚の写真を取り出すと、来人に見せる。
「聞きたいことがあります。彼が――三宅令児が持っていたこの写真の人について。そして彼が無事なのかも」
 
 すると来人は小さな笑みをみせる。
「そうか。その写真、君が持っていたのか……いいよ。教えてあげる。まず一つ目、令児は無事だよ。あれから休んでたおかげで傷も治ったしね。そしてもう一つ。その子は静。三宅静。令児の――妹だよ」
 
 驚きはしたものの、すぐに頭を切り替える舞姫。
 彼女は来人を捕縛するべく動き、仲間達もそれに合わせて動き出す。
 
「背に腹は代えられない、よね……!」
 だが、リベリスタ達が捉えるよりも早く、来人は自ら吹っ飛されるようにしてどこかへと姿を消す。
 離脱されたのはわかるが、腑に落ちない八人。
「三鷹様はご自分の体重を空気並に軽くして、その上でご自分を横殴りの重力で吹き飛ばしたのだと、まおは思います」
 まおがそう呟くと、悠里も口を開く。
「でも……そんな時間はなかったはずだけど」
 それを聞いていた疾風。
 彼は悠里が腕に巻いている銀時計を見た途端、何かに気付いたようだ。
 
 おもむろにアークフォンの画面をじっと見つめた後、急いでどこかへと電話をかける。
「――なるほどな」
 ややあって通話を終えた疾風は仲間達に向き直る。
「俺のアークフォンは電波時計対応だ。なのに今、約十秒の遅れが出てる――時報にかけて確認した」
 はっとなって悠里も銀時計に目を落とす。
 やはり針の動きに変化が出ていたようだ。
「なるほど。重力は時間にも影響する。もしかすると……たった十秒程度の誤差とはいえ、局所的に時間をスロウにしたのかもしれないな」
 推察する義衛郎。
 仲間達も驚きを隠せないようだった。
 
 ともあれ、来人の撃退は完了。
 任務は無事成功に終わったのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者各位

 この度はご参加ありがとうございました。STの常盤イツキです。
 
 今回のMVPですが、『身を挺して『惑星』を引き付け、その上で来人に決定打を与えた御厨・夏栖斗』さんに決定致します。
 そしてご参加頂きましたリベリスタの皆様、今回も本当にお疲れ様でした。
 どうぞごゆっくりお休みください。

 それでは、次の依頼でお会いしましょう。

常盤イツキ