●重厚な世界 一面を金属が占める世界。天をも貫く摩天楼。超技術。文明謳歌。絢爛な。 けれど、そこに生き物の影はどこにもなかった。 「我々の世界は、もうお終いだ」 防護硝子越しの光景。人々は誰も彼もが嘆いていた。 こうするしかなかった。もう、自分達の世界は、公害毒に満ち満ちたこの世界は、とても生き物が住める場所でなない。死の世界となってしまった。 生き残ったのは本当にごく僅か。生き残っただけでも奇跡的。彼等は死から逃れるべく、未完成のまま製作者が死んでしまった『異世界へ脱出する装置』へ――ハコブネと呼ばれる船へと乗り込んでゆく。老若男女。誰もが不安の顔。母親は泣きじゃくる赤子をぎゅっと抱き締め、兵隊はただ口を引き結んで立ち尽くし、恋人は寄り添って涙を流し、子供は隅でひたすら震え、老人は黙し祈りを捧げ。 「上手くいく事を、ただただ願おう」 スイッチオン。稼働。ごごごごご。光に包まれる。 このハコブネが何処に行くのか。何処かに行けるのか。それさえ分からず、されど一縷の希望に賭けて。 そして――ハコブネが辿り着いたのは、緑豊かな場所だった。 「……ここは……?」 空気のなんと済んでいる事だろう。空のなんと青い事だろう。植物だ。生き物だ。 人々は警戒しながらも辺りを見渡し。そして、確信した。 ここは、間違いなく楽園であると――。 ●されど彼等は愛されず 「うーむ……なんとも困った事が起きてしまいましたぞ」 事務椅子をくるんと回し、振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は言葉通りに困った顔を浮かべていた。 「実はですね。オーバーテクノロジーによる公害で元々のチャンネルが生き物の住めない場所になってしまった者達――即ちアザーバイドが50名ほど、このボトムチャンネルに流れ着いてしまったのです。 住む世界を失った彼等はこのボトムチャンネルを新天地とし、居住しようとしておりますぞ。彼等は決して悪意のある存在ではないのですが……」 アザーバイドとは、その存在がボトムチャンネルに悪影響を及ぼしてしまう。例え彼等にその気がなくっても。 だから、とメルクリィは続けた。リベリスタは、彼等を『何とかせねばならない』――言い方は悪いかもしれないが、要はボトムからアザーバイドが居なくなってくれれば良い。そこには『武力行使』も含まれているし、『交渉』も含まれている。 しかし。一人が問うた。ボトムに来れたのなら、『来た』技術で別のチャンネルにいけばよいのでは? と。 「それがですね。彼等が使った『異世界を渡る』装置は非常に不安定でして……使うとどうなるか分からない上に、次に付く場所がどんな所かも分からない様で。 それに、彼等はひどくこのボトムを気に入ってしまったようでしてな。折角、それも偶然、奇跡的に見付けた新天地。それを捨てて見ず知らずの場所へ行くなど――危険な賭けに出る事など、彼等は是としないでしょうな」 つまりただ『自分達の不利益になるから出ていけ』と言われても易々と頷いてくれないのである。命が懸かっているのはお互い様、という訳だ。 そして当然、武力行使に出れば彼等も武力を用いるだろう。尤も好戦的な種属ではない故に、こちらから手を出さない限りは攻撃してこないらしいが。 方法は無限にある。「では」とメルクリィは一同へ機械の目を向けた。 「非常に厄介な案件ですが……よろしく頼みましたぞ、皆々様!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月22日(土)23:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ハロー世界 視線の果てには、『ボトムの一般常識ではあり得ぬ建築物』が聳え立っていた。 「止まれ!」 リベリスタの耳を打ったのは警戒に満ちた声。緊張に張り詰めた顔で、銃の様な兵器を突き付けた10人のアザーバイド。武装している。重工世界からの来訪者――彼等の内の『軍隊の様な存在』。 「待って。私達に敵意は無いわ」 険呑な雰囲気の中、一歩。彼等を一望したのは『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)。 「その姿……同胞か?」 「敢えて『そうだ』と言わせて貰うわね。私達はこの世界の住人。そして――ようこそ。異世界の同胞としてあなた方を歓迎するわ」 「我々は貴君等の仮住まいの礎を作った文明種だ。意思疎通が取れると見受けるが」 ミュゼーヌに続き、『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)も彼らへ眼差しを向ける。敵意は無いと広げられた両手。機械の腕。 「貴方達との会談、懇親を希望したいの」 続けたミュゼーヌの言葉に、兵士が指揮官らしき人物を見遣る。彼もまた困惑した表情だった。だが、ミュゼーヌと雷慈慟の自分達と近い姿と感じられない敵意に多少の警戒は解いているようだ。 「会談……?」 「あぁ、そうだ。俺達は戦いに来たんじゃない」 指揮官の言葉に『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)が答える。 「諸君は我々の事を知っているのか?」 「そうだな。まぁ説明すると長くなるから今は良いだろう。……で、」 対話を受け入れて貰えるだろうか。ランディの言葉。一寸押し黙る指揮官。それから、ややあって。 「うむ……承知した。押しかけてきたのはこちらである故。我々も、会談を望みます」 そう言って、彼等は武器を下ろしたのであった。 出だしは上々、と言ったところか。『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)は仲間と共に改造された廃墟の中へ案内されつつ周囲を見渡していた。機人の少女が不思議そうに彼女を見ている。目が合うやパッと物影に隠れてしまったが。 嗚呼。瀬恋は視線を前に戻しつ思う。押し黙ったまま。出来るならうまいこと船で出て行って貰いてえもんだ。瀬恋とて人である。そしてサイコパスではない。好き好んで殺しがしたい訳じゃない。 (ま……それが必要な時は躊躇なくブチ殺すけどな) ポケットに両手を突っ込んだまま、音も無く溜息。作戦に従って敵意は見せない。されど友好の意を見せる事も無い。ヘタをすれば殺す事になるかもしれない相手だ。そんな存在と、馴れ合うなど……どうも、なんとも。 されどその一方では。 「はい、これ。ハイオク」 「何は置いても腹ごしらえは大切なのだ! 僕の天才的頭脳もそう結論を出している」 「プレゼントっすよ!」 「少ないかもしれないけれど、気持ちだけでも」 来訪者へガソリン――彼等にとっての食糧を手渡したのは、『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)、『ジーニアス』神葬 陸駆(BNE004022)、『しゃも』軍鶏月 千幸(BNE003999)とミュゼーヌ。 おぉ、と来訪者達は目を丸くする。 「丁度食糧が切れそうな所で……助かります、ありがとうございます」 「いーっすよいーっすよ!」 頭を下げる彼等に千幸は笑いながら手を振った。先ずは歩み寄る事から始めねば。という訳で。 「来訪者の皆さん初めまして、自分は軍鶏月千幸っていうっすよ。もし苗字が物珍しかったらチユキって呼んでくださいっす」 ニコニコ、あどけなさの残る微笑み。 「自分たちは別のものを食べるんっすよ。お互いに食事をしてるだけでびっくり出来るってステキっすね!」 ああ良かった。一安心だ。思いつ、千幸は「さあ」と手を広げる。 「沢山食べてください、お腹がぺこぺこだとその分いやな考えをしてしまったりするっすから」 好意的なリベリスタに、来訪者達の警戒もほぼ無くなって来たか。彼等の周囲には多数のアザーバイド達が集まっていた。 「きれいな足ー……!」 「ありがとう、嬉しいわ」 ミュゼーヌの鋼脚にそう呟いた子供の頭を、彼女は優しく撫でた。穏やかな微笑み。照れながらも、機人の子供も笑う。その光景に周囲で見守っていた大人達も一安心といった様子だ。そんな中の一名が、不思議そうに問いかけてくる。 「貴方達は皆同じ『この世界の方』なのですか? それにしては、随分と見た目が様々ですが……」 「その通りよ。見た目が違うのは……そうね、貴方達だって、同じ姿をしている人はいないでしょう? それと同じ事よ」 成程、と来訪者が頷いた。と、その時――何処かから聞こえてくる、美しい旋律。 アマーティレプリカモデル。それを奏でていたのは、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)だった。優しい旋律――それは子守唄。異世界の音楽に来訪者達は言葉も忘れ聴き惚れている。 (彼らはただ安住の地を求めてるだけなんだ……) 薄笑みを浮かべ、音楽を奏で、最中にアンジェリカは思いを秘める。そんな彼等を、この世界に留まらせる訳にはいかないけれど。でも、僅かでも、少しでも、彼等が『無事』でいられる可能性があるのなら。 ――ボクのフェイトを投げ打ってでも、か細い蜘蛛の糸を掴み取ってあげたい! (生を否定せず抗い尚、生きようとする。誰がソレを責められると言うんだ) 雷慈慟も同じ思いだった。崩界に等しい事象だと、想像すれば身も震える事だと理解しているけれど。けれども、なのだ。故に、差し出す手があるのなら幾らでも差し出そう。それが崩界を食い止める事に繋がるのであれば、尚更だ。 「おぉ……凄い、凄い!」 雷慈慟が幻想纏いより取り出した物――AM-750汎用BULLET、4WD、馬匹運搬車に興味津津であった。知的好奇心旺盛だと前もって知らせれていた通り、雷慈慟はさっきから質問攻めである。 これは何ですか、あれは何ですか、これはどうやって使うのですか、どうやって動いているのですか、どうやって作ったのですか、燃料はなんですか、素材は何ですか、ここのパーツはどうなっているのですか、使ってみても良いですか 老若男女etc。答えても答えても次から次へと。されど、雷慈慟は一つ一つ丁寧に説明を行った。 どるるん。エンジン音。軍用バイクに試し乗りしていた機人や周りの者がおぉっと歓声を上げた。機械に対する興味は、やはり大きいようで。 「興味があれば譲渡も吝かではない」 「なんと、よろしいのですか!」 「構わない」 ガソリンを渡された時よりも彼等は嬉しそうだ。試乗する者に、次は自分もとぞろぞろ付いて行く程に。バイク。乗り物。それらを見、ランディは技術者やそういった者達と和気藹々と談笑していた。 そんな中、雷慈慟が連れてきた鷹と猫は子供達に人気であった。動物についての説明をしてやると、子供達も目を輝かせてその説明を聞き入った。 「かわいい~」 猫を抱きしめ、機人の少女が微笑む。猫も彼等も互いに怯える事は無く、何よりだと雷慈慟は安堵の息を吐く。 「食事の問題がなければ、里子に出しても良い」 「ほんと!?」 少女が親らしき者へと振り返る。困った様に、されど、親が頷いて。少女が再度雷慈慟を見上げた。 「……大事にする!」 「幸いだ」 新天地、それは故郷を失ったものにとってソレは大きな希望なのだろう。陸駆は思う。『ハコブネ』を頼りに『アーク』に感知されたのは何の偶然か、奇跡が起こした運命の出会いか。 (だが僕達は崩界を絶対に防がねばならない) 決意は固く。その為に、陸駆はフラッシュバンを彼等に見せてみる。魔法技術。見た事も無いその現象は、機人達の好奇心を刺激するには持って来いであったらしく。こちらもまた、質問攻め。だが天才に答えられないものなどない! 「皆さん空は飛べるっすか?」 自分、こんな感じに飛べるんっすよ! と宙でくるーんと旋回してみせたのは千幸だ。機人には無いふわふわの翼に彼等も興味を示している。 「皆さんも飛んでみるっすか?」 「出来るのですか?」 「任せるっす!」 そう言って、千幸は立候補した者をえいやっと抱え。シャモを思わせる黒翼を広げ。ふわり。浮かび上がれば周囲から歓声が。 (わわ、もしかして体重も自分たちより重いっす……!?) 重たいメカボディ。でも落とすものかと、翼をばさばさ。 さて。 機人達の警戒が解けた所で。リベリスタは彼等と仲良くなる為だけに来たのではない。 「異世界の客人よ、こんにちは僕は天才神葬陸駆だ。まずは僕達の話を聞いてほしい」 一同を集めて。陸駆を始め、リベリスタ達は機人達を見渡した。 「ここはボトムだ。上位階層の貴様らアザーバイドの存在は、崩界という危機を招く。 そうなったら、ここも君達がもといた世界よりも、危険極まりない世界になってしまうのだ。自然と貴様らも望まぬ戦いをすることになるだろう」 「崩界……アザーバイド? あの、どういう事なんですか?」 いきなりの事に全く理解が出来ない、と彼等は動揺を見せる。そんな彼らの為に、綺沙羅はノートパソコンを広げてこの世界の仕組みから説明を開始する。 この世界について―― 神秘について―― それを悪用する者、問答無用の怪物について―― 自分達『リベリスタ』について―― 彼等『アザーバイド』について―― 「――って事。OK?」 包み隠さず正確に。説明を終えた綺沙羅の眼差しは、一様に顔を見合わせる機人にあった。 「あんた達が決死の思いでこちらに渡って来たのは分かってる。けれど、それでもこの世界に受け入れる事はできない」 「とても酷なことですけど、もう一度旅立ってくれませんか。皆さん、ガソリンみたいに必要なもので自分たちが用意出来るものなら準備するっす!」 悲痛な声で千幸が言い、雷慈慟も静かに言葉を放つ。 「薄々気がついている明晰な者も居るだろう……残念な事だがこのままでは共倒れだ。この世界を貴君等の元居た場所の様にだけは、出来ない」 「私としては、貴方達をこのまま受け入れたい。だけど貴方達の存在は、この世界を侵すバグになるの。 貴方達の子らが、孫が、子孫が。貴方達がかつての世界で味わった様な思いをする事になるわ」 だから、とミュゼーヌは続ける。ごめんなさい、と。 「此処は一時の寄港地として、どうか再び船旅に戻って欲しいの。その為に出来る事なら、可能な限り協力するわ」 「僕達はアークという組織に属している。奇しくも貴様らがのってきた『ハコブネ』と同じ意味の組織だ。 貴様らとこの世界で一緒に暮らすことはできない。だが、貴様らの希望であるハコブネと同じようにアークが希望になってやる」 陸駆は真っ直ぐ、彼等を見る。眉根を寄せた指揮官が口を開いた。 「全て、理解した。確かに我々はこの世界から去るべきなのだろう。我々は諸君を信頼しようと、思っている」 だがしかし。苦渋の色を、瞳に映し。 「ハコブネさえ、正常に動けば……諸手を上げて快諾するのだが」 だがそこで、「できるかもしれない」と声がかかる。一同が見返った。そこには機人の技術者や知識者達。ランディと共にハコブネについての打ち合わせを行っていた者達だ。 「出来る限り力は貸す、其方の望みは知っているし理解もするが、全て飲み込む事は出来ない。此処に居ても全員が平穏に暮らす事は無理だ。其方がどんな結論を出すにしてもそれは解ってくれ」 仲間の言葉を纏める様に、ランディはハッキリと一言。「リベリスタの技術を合わせれば上手くいくかもしれない」と機人の技術者が付け加え――斯くして、アザーバイドは了承を示したのであった。 ボトムは彼等にとっては良い環境であろうし、大抵の事も脅威ではないだろう。 されど世界は彼等を異物と認識した。その上、この世界には良い人だけではないのだ。 (最初に出会ったのが俺達なのは連中に幸運か不運かは解らねぇがな) 思いつ、ランディやリベリスタの目の前にあるのは不可思議な造形をした宇宙船のようなモノ。これが件のハコブネだという。 「必要なモノは手配したから。……ハコブネの図面とか、そういうのある?」 既に行動を開始した綺沙羅。ノートパソコンを広げ、デジタルカメラでハコブネを撮影し。陸駆も非戦の技能で何とか手掛かりを得られないかと奮闘する。アークの智親は多忙故に手伝う事は出来ないが、それでもリベリスタ達で出来る事はある筈だ。 さて。綺沙羅とランディはハコブネに触れる。電子の妖精。ハコブネと自らを接続――異界のモノ故に複雑怪奇。それでも、おそらくは最も役に立つ力であろう。 得た知識は、技術者へ。綺沙羅はどうすればハコブネが安定するのか機人達と考察し、ランディはシンクロを用いて機人達と作業を開始する。 一方で、アンジェリカはハコブネや図面に片端からサイレントメモリーを行っていた。亡くなった製作者が、何か想いを遺していると信じて。それをハコブネが覚えていると信じて。 真剣に励む少女を訝しむ者など居ない。絶対に諦めず、瞳を閉ざしたアンジェリカは気力を振り絞って記憶を辿る。 そして――その目を、開けた。良し。大切にハコブネの図面をその手に持ち、アンジェリカは綺沙羅に声をかけた。そして伝えるのは、ハコブネの『記憶』。 「成程……」 綺沙羅と技術者たちが頷く。直接的な情報でこそ無いが、それは大きな手掛かりになりそうだ。 作業は続く。 続きに続いた。 気が付けば日が暮れすっかり夜に。 それでも続いた。尚も続いた。 斯くして、その果てに。 「いけるかもしれねぇな」 ふぅ、と顔を機械油塗れにランディは息を吐いた。パソコンを前に綺沙羅も頷く。 出来る手は全て尽くした。後はもう、祈るのみ。 「相変わらず行く先を指定できませんが……以前より安定しております、いけます!」 ハコブネから顔を出した技術者が喜びを抑えきれずにそう言った。わぁっと歓声が上がる。或いは、やれやれと安堵に笑みを浮かべる。 良かった。本当に良かった。 そして――アザーバイドの出発の支度も済む頃には、朝も近付いて。東の空が、蒼い。 「お菓子公爵とかにこっちから連絡つけば協力してくれそうなんだけど……はいこれ」 役に立つかは分からないが、と綺沙羅は彼等にボトムと友好関係にあるアザーバイドの紹介を行った。 「今日、この日の事は覚えていて欲しい。遠く、親しき友人達よ」 「こちらこそです。……深く、感謝致します」 出来る事ならば、また。雷慈慟と機人が交わすは握手。アンジェリカも記念に、と以前使っていたバイオリンを手渡した。 ハコブネが飛び立てるか。無事辿り着けるか。成功するかは、分からない。 それでも――駆動音が辺りに響く。乗り込んだ機人達が、窓からリベリスタを見下ろしている。 手を振っていた。感謝の気持ちを込めて。 手を振り返した。無事を祈ると意味を込めて。 そして、光が溢れて。 もうそこには何も無い。 彼等は何処に行ったのだろう? それを、リベリスタが知る術は無いけれど――一件落着、であった。 ●ハロー世界2 ――皆様、お元気ですか。あの日から随分と経ちましたね。 あれから、我々は別の世界に辿り着きました。草原が何処までも続く、何も無い世界です。 何も――生物も無いが故に少々大変ですが、皆様のお陰で辿り着いた場所です。 私達はここからまた全てを始めます。 私達は頑張ります。精一杯頑張ります。 本当にありがとうございました。 どうか、皆様の行く先が幸福で満ちていますように。 ――この手紙が、時空を超えて皆様の下に届くと信じて。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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