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侍heart 或いは、古の英雄……。

●侍heart
 日本刀。かつて日本で使用された武器だ。折れず曲がらず良く切れる、などと言われ数多く生産され、それと同時に数多くの命を奪ってきた。中には、曰くつきのものも多い。呪われているなど、怪物を切っただの、神の所有物であっただの、と実に怪しく浪漫に溢れたものばかり。
 武器としての性能もさることながら、現代では観賞用としての評価が高いだろう。
 時折、博物館などで展示会など催される。
 今回の現場もその類だ。骨董品、特に刀剣類の展示即売会である。
 参加人数は決して多くない、地方のイベントだ。体育館を借りて行われた即売会。人数は合計で30人程度だったろうか。
 その全員が、一斉に体育館から飛び出して来たのである。悲鳴を上げ、顔を青ざめさせた。混乱しているのか、意味の分からない言葉を叫んでいる者も居る。
 人が逃げ出し、静まり返る体育館。
 開けっ放しの扉から出てきたのは、1人の鎧武者だった。がしゃんがしゃん、と黒塗りの鎧の擦れあう音が響き渡る。手にした刀は、今日のイベントの目玉ともいうべき1品。かつて無敗を誇った武将が持っていたとされる1品だ。黒塗りの鎧も、その武将の者である。
 武将はかつて無敗であった。無類の強さを誇り、向かうところ敵なしであった。
 ただ運だけが無かったのだ。彼の使えた家は、とても小さな地方の大名だ。度重なる戦。群雄割拠の時代についていけず、早々と他家の傘下に加わった。
 その後も武将は、その家に仕え続けたのだ。戦となれば愛刀を手に戦場へ向かう日々。
 その度に、彼の旅路は嵐や土砂崩れ、流行病などにより遮られてばかり。戦場に付く頃には、既に戦は終わっていた。
 やがて、武将は病に倒れる。
 もっと戦いたいと、そう思いながら命を散らした。
 生涯、数十度の戦にて受けた傷は0。
 生涯、数十度の戦にて取った首は数知れず。
 名前も、刀の名も、鎧の名も残らないままこの世を去った彼の存在は、今や地方で語り継がれるのみだった。
 果たして。
 今回現れたこの怪異。E・フォース(鎧武者)がその武将と関係あるのかは分からない。
 ただ、その手にした刀は、生涯多くの血を吸ってきたものであることだけは確かだった。
 そして……。
 鎧武者に続き、4人の雑兵が体育館から出てきたのである。
 それぞれ手には刀を持ち。
 顔には能面を付けている。
 武将を含めてたったの5人。部隊と呼ぶには数が少ない。
 それでも。
 彼らの放つ闘気は、歴戦のつわものが放つそれと同じ種類のものだった。

●古のhero
「E・フォース(鎧武者)と、E・フォース(雑兵)。彼らの体は、思念体でしかない。その身に纏う鎧や刀は骨董品だけど、E・フォースの力で強化されているから注意が必要」
 あくまで刀は武器である。そう言ったのは、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)だ。
 モニターに映る日本刀は、きらり、と刃に光を反射させた。その薄く鋭い刃は、ある種の芸術品の域にまで達しているように思う。使用されることが無くなった今でも、刀鍛冶と呼ばれる者が現代に生きている理由だろう。
 人を切る道具から、人を魅せる道具へ、そのあり方を変えていった。
「もっとも、今回の相手は純粋に、人を切る道具、として刀を使っているから。遠距離攻撃はほとんどないけど、一方至近距離での戦闘には注意が必要」
 先にも述べた通り、折れず曲がらず良く切れる。
 それが日本刀の特徴であり、また時には人切り包丁と揶揄させる所以でもある。
 そう。
 切れるのだ。日本刀は。それも、あり得ないくらい鋭く、綺麗に。
 弾丸を切った、なんてマンガかなにかのような実績を残している刀もある。
「鎧武者は、防御力と攻撃力に優れているみたい。また、彼の斬撃はひどく鋭く、遠距離攻撃を斬り捨てる。一方で雑兵は、それなりに高い攻撃力と、装備の軽さから来る動きの速さ、機敏さが特徴」
 攻撃力が高いのは、刀の性能なのだろうか。フェーズ2が1体、フェーズ1が4体。合計5体のE・フォースは、主従のような関係らしい。
 また、彼らが武器として使うのは基本的には刀だけだ。
 たった1本の刀に、己の全てを賭けているのだ。
「リベリスタの中にも刀を使っている人はいるけど」
 本来なら、この国から既に失われた武器である筈なのだ。それを今持ち出してきたのは、歴史的価値や芸術品としての価値、眉唾ものの伝説を楽しみ、語り継ぐためだ。
「人を切る役割はすでに終えた刀だから……」
 その刀を振るうE・フォースを、一刻も早く殲滅して来てほしい。
 それが今回の依頼の内容である。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年06月25日(火)23:22
こんにちは、病み月です。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 私は元気です。
今回は、刀を使いこなすE・フォースの話し。
それでは、以下詳細。

●場所
体育館、及び体育館前の広場。
隠れる場所などは特になく、敵や仲間と十分な距離をとれるほどには広くない。
範囲攻撃など、巻き込まれることに注意が必要。
体育館は、直径50メートル程度。体育館前広場は、半径20~25メートルほどの楕円形。現在E・フォース達は、体育館と広場の丁度間に居るようだ。
広場と体育館の広さはほぼ同じ。屋根や壁の有無だけが違う。


●敵
E・フォース(鎧武者)
フェーズ2
地方で語り継がれている無敗無敵を誇る武将が使っていた鎧と刀で武装した思念体。正体不明。
現状が把握できていないようで、今のところ体育館を出たところで足を止めている。
防御力と攻撃力に長け、一方で素早い動きを苦手とする。遠距離攻撃を、刀で斬り捨てる能力がある。
神秘、物理関係無く、遠距離攻撃であれば高確率で切って防ぐことが可能。
【薙ぎ払い】→物近範[弱点][ブレイク]
下段から上段へ、振りあげるように刀を薙ぎ払う範囲攻撃。
【兜割り】→物近単[致命][流血]
気合い一閃。大上段から振り下ろされる渾身の一撃。 
【示現の太刀】→物近単[弱点][必殺][雷陣]
ダメージを受ければ受けるほど威力の上がる大上段からの一撃。発動後、大きな隙が出来るが威力は桁違い。

E・フォース(雑兵)×4
フェーズ1
E・フォース(鎧武者)に呼応し発生したE・フォース。雑兵の姿をとっているためか、鎧武者に忠実。
意思が薄弱なのか、ダメージを恐れず突進してくる傾向にある。
攻撃力は高く、素早い動きも可能。装備が軽装だからか、防御力は低い。
【刺突】→物近貫[隙][ショック]
走る勢いのまま、鋭い突きを繰りだす攻撃。鋭い突きは、真空の刃を生み出す。
【斬撃】→物遠単[流血][連]
眼の前の敵を切る、という強い想いはただの斬撃にオーラを乗せ、幻覚の刃を放つ。

以上になります。
それでは、皆さんのご参加お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
クロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
ソードミラージュ
ジョニー・オートン(BNE003528)
プロアデプト
五十嵐 千涼(BNE004573)

●古の武士
 ある晴れた日。体育館から出てきたのは、古めかしい鎧に身を包み、日本刀をぶら下げた武者であった。体育館にも、コンクリートの地面ににも似合わぬその姿。見知らぬ風景に困惑しつつも、鎧武者の目的だけはハッキリしている。
 もっと戦いたかった。
 それだけだ。それだけを想い、それだけの為に蘇った。ここが何処なのか、自分が何者なのかももはやどうでもいい。
 手にした刀は、自慢の愛刀。
 身を包む鎧は、生涯自分を護り続けたモノである。
 それだけでいい。
 だから……。
『………退かねば、斬る』
 目の前に居る8人の男女。彼らが何者であろうとも、戦ってくれるのなら、それでよかった。

●今は遠い戦場へ
「お初にお目にかかるわね、大将。腕効きと聞いて、ひと勝負申し込みに来たわ」
 刀身、柄共に少々長い改造剣を手に『薄明』東雲 未明(BNE000340)はそう告げる。それを受け、鎧武者の背後に控えていた雑兵が4体、槍を構える。それを手で制し、鎧武者は刀を構えた。
「人切り包丁か、浪漫だな」
 ナイフ片手に『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はそう呟いた。無表情に、淡々と。しかしすぐにでも戦闘に入れるように、気だけは張り詰めたままだ。
「そこなお侍の方。さぞや名のある武将とお見受けする。一つ、我等と合戦を所望したい!」
 そう叫んだのはツァイン・ウォーレス(BNE001520)だ。鎧武者と相対する彼は、西洋甲冑に身を包んでいる。和と洋。国は違えど、お互いに戦う者の装備である。
『承知……。されど、名乗る名もなし。それはすでに、遠い昔に失った』
 刀を正眼に構え、精神統一。
 次に鎧武者が刀を下げた時、彼の纏う闘気は先ほどよりも数段、強くなっていた。
「我等の言葉は届いているか」
 槍と盾で武装した少女『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)が告げる。直後駆け出す、雑兵達。刀を構え、一直線に飛び出してきた。刀に込められた気迫は、刺し違えてでも相手を倒す、という強い想いの現れか。
「OH!あれがかの有名なSAMURAIでゴザルか! リベリスタになってから、忍者とは何度か戦ったことはあるが、侍と戦うのは初めてである故、腕が鳴るでゴザルなぁ! 死してなお戦いを望むとは、敵ながら天晴れ! だが、拙者もNINJAを目指す者として、SAMURAI相手にも負けてはおられぬ! いざ、尋常に勝負!」
 果たして忍者とは何なのか。口から零れる流暢な日本語。喜々として飛び出す『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)である。
 突き出された刀を、手甲剣で弾く。同時に飛び出したユーヌもまた、ナイフを用いて雑兵を抑えにかかる。
「さあ、俺を斬り捨ててみろ。お前さんが今まで倒してきた敵のように。だが、簡単にこの首はやらない。取れるものなら、取ってみろ」
 雑兵の真横をすり抜けて『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は鎧武者へと飛びかかった。叩きつけるように振り下ろす盾。鎧武者の刀と、義弘の盾が衝突。火花が散って、甲高い金属音が響く。
「ぬぅ……」
 ジリジリと押し返される義弘の盾。なるほどたしかに、歴戦の侍の力。伊達ではないということか。
「正々堂々と戦いましょう、ってのも嫌いじゃないわ。戦闘こそ存在意義だし」
 そんな事を呟いて、『ツンデレ兵器』五十嵐 千涼(BNE004573)は弓を構える。集中し、番えた矢へと神経を通わせる。そんな千涼へと飛びかかってくる雑兵が2体。
「おぉ!!」
 刀と剣の二刀流。閃く刃が、二刀を防ぐ。『合縁奇縁』結城”Dragon”竜一(BNE000210)が、千涼と雑兵の間に割り込んだ。
「死力を尽くせ! 兵を率いろ! 戦術を繰り出せ! 戦略を編み出せ! 俺にお前を刻み込め!」
 喜々として吼える竜一。素早く左右へ展開し、時間差で振り抜かれた刀が、竜一の肩を切り裂いた。
「やってやろうじゃない!」
 千涼の矢が放たれる。空気を切り裂き、雑兵を貫く。ピンポイントに首元を貫き、大きく揺らぐ雑兵。そこへ飛びかかったのはユーディスだった。突き出された槍が雑兵の腕を貫く。駆ける勢いそのままに雑兵を押し退けた。
「遥か時を経て尚、武具を介して彷徨い出て来るとは……。余程の無念があったのでしょうね」
 長い金髪が、ふわりと閃く。
「これも戦い方の1つ……」
 竜一と斬り結ぶ雑兵へ、背後から体当たりを慣行するツァイン。雑兵を弾き飛ばし、そのまま剣を振りあげ、斬りかかった。その隙に竜一は、千涼を庇うように移動。
 少々手間はかかったが、当初の予定通りの陣形となった。

「ぐ……おぉ!?」
 大上段から振り下ろされた斬撃。義弘の肩から胴にかけてを切り裂いた。飛び散る血飛沫。盾の隙間を縫った精密かつ大胆な一撃であった。
 よろけた義弘の胴へ、鎧武者の蹴りが突き刺さる。重たい蹴りだ。そもそもが軽くない鎧を纏い、これだけ自在に動けていることからして、鎧武者の自力が窺える。
 だが、義弘も負けてはいない。再度振り抜かれた刀を、メイスで持って打ち払う。
「兵士を全て倒すまで、俺は敢えて攻撃しない」
 受けたダメージを力に替える。鎧武者の持つその技が、彼の攻撃を躊躇させる。
 だが……。
『ならば、まずはお主の首、貰うとしよう』
 攻撃してこないのならば、格好の餌食。気合い一閃。薙ぎ払うように下段から刀が振りあげられた。鋭い刃は、義弘の腕を、そして首筋を切り裂いた。

「どうやら素早さに自信があるようだが、拙者とてニンジャの端くれ。スピードなら負けぬ」
 素早く飛びまわり、多角的な攻撃を繰りだすジョニー。それに対し、雑兵は驚異的な反射神経でもって、攻撃を回避。カウンター気味に斬撃を放つ。
 一進一退の攻防。着地したジョニー目がけ、雑兵は飛びかかる。下段から襲ってくる刀を、ジョニーは手甲で受け止めた。
 ジャンプし、距離をとる2人。同時に駆け出す。ジョニーの姿が二重にダブって見えた。実体すら生じさせる幻惑の武術。だが、真っすぐに突き出された雑兵の突きは、正確にジョニーの腹を貫いた。
「っぐ……!?」
 よろけるジョニー。引き抜かれた刀を振りかぶる雑兵。そこへ駆け込んできたのは未明であった。鋭い一閃が、雑兵の腕を切り裂いた。
「侍じゃなくて申しわけないけどね。東雲未明、お相手させていただくわ」
 後退する雑兵。立ち上がるジョニーと、剣を構える未明。2対1だが、引く気はないようだ。ジョニーの腹からは、だくだくと血が流れている。
「時代は代わったけれど、戦う者の心は変わらないはず。手加減したら駄目よ」
 そう言って未明は、大上段に剣を構える。その剣に、全身のオーラを集中させる。ジョニーもまた、武器を構えた。
 同時に駆け出す未明と雑兵。雑兵の刀にオーラが集まる。刀を振り下ろすと同時、真空の刃が未明を襲った。連続して放たれる無数の刃が、未明の腕を、足を、胴を、と次々に切り裂いていく。だが未明は止まらない。
「はぁぁ!!」
 叩きつけるように振り下ろされる未明の剣。雑兵の刀をへし折って、そのまま後ろに弾き飛ばした。剣を振り抜いた直後、未明は地面に膝を付く。彼女の足元には、血溜まりが出来ていた。
 地面で数度バウンドし、素早く立ち上がる雑兵。
 だが……。
「御免!」
 一瞬の隙を突き、その首をジョニーが斬り飛ばす。吹き飛ばされると同時に駆け出し、背後に周り込んだのだ。一閃。ただそれだけ。忍びらしく、容赦も無駄もない命を刈り取る一閃であった。
 雑兵は霞と化して消えうせる。地面に転がったのは、ただの1本、折れた日本刀だけであった。

 鋭い突きが、ユーヌの肩を貫いた。血飛沫が舞って、ユーヌの頬を赤く濡らす。ユーヌの手から零れ落ちたナイフが、地面に転がった。
「少し黙れ」
 震える拳で雑兵の腕を殴るユーヌ。肩の傷が広がり、血が溢れた。だが、触れるだけで十分。雑兵の身体が凍りつく。
 咄嗟に刀を引き抜き、背後へ下がる雑兵。ナイフを拾い上げ、ユーヌは呟く。
「立派な置物だな?」
 凍りつきながらも、雑兵は刀を振り抜いた。真空の刃がユーヌを襲う。胴が切り裂かれ、血が溢れる。
「っぐ……」
 腹を抑え、膝を付くユーヌ。凍りつく雑兵。直後、雑兵の頭部を1本の矢が貫いた。
 氷が砕け、雑兵は消える。地面に転がる刀が1本。
「こちらの攻撃に対応できないタイミングを狙えば、十分『攻撃は当たる』のよ」
 矢を放ったのは、千涼だ。弓を構え、意識を集中させていた。当たるタイミングを逃さず、確実に当てる為に、じっと戦場へ意識を配っていたのである。
 集中に集中を重ねた結果か、その額にはびっしりと細かい汗が浮いていた。雑兵の撃破を確認し、千涼は再び、集中に移る。
「やれやれ、未練がましいな。既に骨董品、不要品」
 足元に転がった日本刀を拾い上げ、ユーヌは一言、そう告げた。 

 真空の刃が千涼を襲う。刃が彼女を切り裂く寸前、その間に竜一が割って入った。身体中に切傷を追いながら、竜一はふっと笑って見せる。
「守る為に戦う、それが俺の武の形さ」
 血を流しながらも、笑う竜一。2刀を構え、前へ出る。そこへ襲いかかるのは、2体の雑兵。ユーディスとツァインのブロックを抜け、弓を持った千涼へ狙いを移し変えたのか。
 弓を狙うのは、それが刀の天敵だからだろうか? 折れず、曲がらず、よく斬れる。とはいえ射程は、非常に短い。槍と相対した場合でさえ、刀でそれに勝つには相手の3倍の力量が必要などと言われるのだ。弓矢なら尚更。極端な話、矢を番え放つだけで刀では防ぐ事も厳しい。
 それゆえに、脅威と感じたのだろう。
 問題は1つ。千涼の身を守る、竜一の存在だ。
 竜一の放つ真空の刃。鋭い一閃が、雑兵の脚を切り裂いた。よろける雑兵。その額に、千涼の放った矢が突き刺さる。霞と化して消える雑兵。残るは1体。
 その時だ……。
「ぐ……おぉ!!」
 鎧武者の相手をしていた義弘が、ドサリと地面に倒れたのは。

 義弘が倒れた原因は混戦であった。彼の声は、仲間に届かず、また思いの外鎧武者の攻撃が、彼の体力を大きく削ったことにある。
 流血、致命。回復に回る隙も与えられず、義弘は倒れた。
 倒れた義弘の首をとるべく、鎧武者は彼の頭部へ手を伸ばす。鎧武者の手が義弘の頭を掴む、その直前、手甲に包まれたその手を、ツァインの剣が打ち払った。
「お待たせした……ツァイン・ウォーレス、参るっ!」
 剣を手に、鎧武者へと斬りかかるツァイン。剣と刀が撃ち合い、甲高い音を響かせる。

 ツァインが、鎧武者の抑えに入ったその頃。ユーティスは、残る1体の雑兵と獲物を交えていた。剣と槍が激しく打ち合う。
「さぁ。存分に、思い晴れる戦いと参りましょう」
 リーチで勝るのはユーティスか。しかし、速度で勝るのは雑兵である。雑兵は、槍の真下を低姿勢で駆け抜け、擦れ違いざまにユーティスを斬りつけた。
 斬られたのは脚だ。ガクン、とその場に膝を突くユーティス。急停止した雑兵が、返す刀で再度ユーティスの首を狙い、斬りつける。
 その時だ。ユーティスの耳に、千涼の声が届く。
「刀の動きを良く見て…………今!」
 放たれた矢が、雑兵の持つ刀身に当たる。僅かにずれた刀の軌道。ユーティスの頬を掠め、地面に突き刺さる。
 一瞬の隙。それで十分だ。ユーティスの槍が鮮烈に輝く。まっすぐ、雑兵の胸を貫いた。
「さぁ、鎧武者を包囲しましょう」
 残る敵は、鎧武者ただ1体。

激しく打ち合うツァインと鎧武者。武者の放った一撃が、ツァインの身を切り裂いた。声にならない悲鳴をあげて、バランスを崩すツァイン。苦し紛れに放った剣は、しかし極僅かな動作で回避される。
 異常なまでの見切りの技術。それが、生涯無敗。生涯無傷の秘密であった。当たらなければ、負けることはない。傷を追う事もない。
 ましてや矢や鉄砲など、真っすぐ飛んでくるだけである。彼にとってはそんなもの、斬り捨てることなど造作もない。
 千涼の放った矢は、スパン、と空中で斬って落とされた。
 旋回する刀身。ツァインを襲う。
「おっと!」
 刀を弾くのは、力任せに振り抜かれたメイスであった。額から血を流し、荒い呼吸を吐きながら、それでも立ち上がるのは義弘である。
「狂気の盾の意地、見せてやるさ」
 口の端を伝う血を拭い、にやりと笑う義弘であった。体勢を立て直したツァインが、鎧武者の右へ。駆けつけたユーティスは、鎧武者の左へと周り込む。
「さぁ、背水の陣だ。見せてみろ、無双の武を! 絞りつくしてやるぞ、不敗の武を!」
 二刀を手に、竜一が鎧武者へ斬りかかる。全力を込めた大上段からの斬撃。デッドオアアライブ。咄嗟に刀を振りあげる鎧武者だが、その瞬間、包囲網の間を縫って飛び込んだジョニーが、手甲で刀を受け止めた。
「鎧武者1体を囲む図となるが、貴殿とて戦士である以上は覚悟はしてたでゴザろう」
 ギリ、と手甲に付いた刃が欠ける。鋼の刃をものともしない斬撃だ。
「二の太刀要らずが流言か否か、その手で証明してみなさい!」
 ジョニーのフォローに回る未明。剣を突き出し、鎧武者の刀を喰い止める。盾で3方向を塞がれ、刀の動きも止められた。竜一の斬撃が、鎧武者を切り裂いた。
 顔から胴にかけて、一閃。
 そして……。
「二の太刀要らずか? いや、壱の太刀も不要だな。どうせ二度と振ることもないだろう?」
 竜一の後に続くユーヌ。その背後には、不吉な影が揺らめいていた。

●遥か遠くへ
 不吉な影が蠢いた。どろどろと地面を這い、鎧武者の身体を覆い尽くす。不吉をもたらす災いの影だ。
 沈黙が続く。数秒か、数十秒か。
 だが、変化は一瞬で訪れた。一閃。影を切り裂き、刀が旋回する。近くに居た竜一とユーヌ、ジョニーと未明の4人を纏めて切り裂く薙ぎ払い。
 降り注ぐ血飛沫の中、鎧武者は立ち上がった。影を切り裂き、血を浴びて、刀を掲げる。
 影に蝕まれた鎧はボロボロだ。竜一やジョニー、未明の攻撃により鎧も刀も、傷だらけ。
 しかし、未だその身に纏う闘気は莫大。初めて味わう逆境に心が猛っているのだろう。
『我……無敗、也』
 擦れた低い声である。集中の後に放たれた、千涼の矢も、鎧武者は難なく斬り捨てる。一瞬の隙を突いて、槍を突き出すユーティス。極僅かな動作で、回避される。
 カウンター気味の斬撃。ユーティスの肩を切り裂いた。
ゆっくりと、大上段に刀を掲げる鎧武者。刀身に纏う強大な闘気。受けたダメージを威力に反映させる、そんな剣技だ。
 地面を蹴って、駆け出す鎧武者。叩きつけるような斬撃が繰り出される。裂帛の気合と共に放たれる一閃。まさに一刀両断。
 ツァインはそれを、真っ向から受け止めにかかる。
「ガァァァァァァァァァァァァァアアアア!!」
 盾を投げ捨て、剣を掲げる。鎧武者の刀は、しかし、ツァインの剣を薙ぎ払い、その肩から胴にかけて大きく斬り裂いた。ツァインの剣が、大きく欠ける。噴き出す鮮血。二の太刀要らずの示現流とはよく言ったものだ。並みの人間では、その刀を受け切ることさえできなかっただろう。
 震える手で、ツァインは剣を振りあげた。
 しかし……。
「ガ……ァ、あ」
 グルン、とその眼が裏返る。白目を剥いて、倒れるツァイン。鎧武者もまた、刀を振り下ろした姿勢のまま停止している。渾身の一撃を放ったことにより発生した大きな隙。
「っ……!?」
 その隙を逃さず、動き出した他の仲間たち。一斉に鎧武者へ武器を向ける。
 だがしかし、それを制止したものがあった。
「……っく」
 倒れる寸前、ギリギリのところで復活を果たしたツァインである。一度は戦闘不能になった身ながら、全身を巡る闘気は十分だ。掲げた剣が鮮烈に輝く。
「お手前見事……。手合わせ感謝する」
 振り下ろされるツァインの剣。最後に残った力を振り絞ったその攻撃は、酷く不格好なものだった。事実、鎧武者の首を切り落とした後、ツァインは地面に倒れ伏した。
 意識を保つのがやっと、と言った状態のツァイン。
 そんな彼の眼前に、刀と鎧が転がった。

「さて、帰りましょう」
 弓を仕舞い、千涼は言う。額に手をあて、大きなため息をこぼしてみせた。集中を重ね、疲労がたまっているのだろう。それでも彼女は、そっと手を伸ばし、傷だらけのツァインに肩を貸して歩く。
 後は、アークへと帰るだけなのだから。

 生温い風が吹く。湿気を多分に含んだ風だ。もうじき、雨が降り出すのだろう。
 刀と鎧の転がる体育館前広場。地面に出来た血だまりも、雨が洗い流してくれるだろうか。
 足早に戦場を後にする仲間達を見送って、義弘は1人、逆方向へと足を向けた。
 その手には、1本の酒瓶。向かう先は、名も知らぬ、歴戦の鎧武者の墓所である。
「さて……酒でも供えに行こうか」
 パラパラと降り始めた雨に濡れながら、義弘は1人、誰にともなくそう呟いた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。古の鎧武者は無事討伐され、被害は出ていません。
依頼は成功になります。

鎧武者との激闘の話、いかがでしたでしょうか? お楽しみいただけたなら、幸いです。
それではそろそろ失礼します。また縁がありましたら、別の依頼でお会いしましょう。

このたびはご参加、ありがとうございました。