●京の動乱 「――新撰組で御座る」 座敷が突然闇に襲われた。蝋燭が敵の何者かに一瞬で切り捨てられる。旅亭で会合を開いていた在野リベリスタたちが喚いた。 「何奴!」 リベリスタの一人が声をあげる。意を決して襖の戸を開けた。そこにいたのは外で見張りをしていた仲間のナイトクリークだ。 「ぐはああああっ」 その瞬間、彼は大量の血を吐いて倒れた。すでに白目を剥いて息をしていない。仲間が助けに行こうとして、はっと足を止めた。 後ろに見慣れぬ武士たちが鋭い刀を構えている。 袖口にダンダラ模様を染め抜いた浅黄色の羽織。頭部に鉢巻をして、白い襷を胸に掛けている。隊旗には金字で大きく『誠』の文字が躍る。 「局長の近藤で御座る」 屈強な男が前に出てきた。局長の近藤勇が自ら指揮をとる。部屋の中に『新撰組』と名乗る隊士たちが続々と乱入した。 「まずい――早く逃げろ」 若いリベリスタの安倍行哉が仲間に叫んだ。 刀の刃を水平に構えた侍たちが一斉に斬りかかる。闇の中で激しい殺し合いが始まった。障子や壁に血しぶきが飛び散る。 「お兄様、助けて!」 行哉が外に庭へ逃げようとした所で妹の芽依香が悲鳴をあげた。彼女の前にひとりの新撰組の美青年が迫っていた。行哉が妹のところへ向かう。 「芽依香! 今助ける」 「逃げられると思ったらいけませんよ」 沖田総司が激しく剣を切りつける。その瞬間、行哉が芽依香をかばった。激しい斬り合いに行哉が倒れた。腹を刺されてその場に突っ伏す。 「たのむ……芽依香だけは助けて」 沖田がなかなか倒れない相手に舌打ちする。思わず咳を蒸し返す。口の中から少量の血を吐いた。すこし息が上がる。 「沖田君――君は下がっていたまえ。残りの悪は俺が全て斬り捨てる」 目つきの鋭い大男が立ちはだかった。斉藤一が左手に刀を水平に構えて重心を低くする。「いくぞ」斉藤は猛烈なスピードで行哉に突撃を繰り出した。 ●血に飢えた狼 「京都の旅亭にフィクサード組織の『新撰組』と名乗る連中が現れた。中で会合を開いていた二十人の在野リベリスタたちが奇襲を受けた。すでに半数以上死者が出ている。このままではまだ残っている彼らも皆殺しにされてしまう。そうなるまでになんとかして奴らを撃退してきてくれ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が一刻も争う状況に早口で説明した。ブリーフィングルームで集まって聞いていたリベリスタたちも思わず息を呑む。 『新撰組』と名乗る男たちは幕末の動乱で活躍した志士たちの名をかたっていた。彼らはそれぞれが新撰組の隊士の生まれ変わりであると自称している。 もちろん、本当に生まれ変わりのはずはない。だが、遠い血のつながった祖先ではあるという。それぞれが隊士の縁ある土地の道場で子供の時から厳しい修行を積んできた。実力を身に付けると共に彼らはいつしか自分こそが維新志士の生まれ変わりであると思い込んだ。 彼らの目的はもう一度幕末の動乱の時のように京都の覇権を握ることにある。そのために最初に目星をつけたのが京都にいる在野リベリスタ達だった。そして今宵池田屋旅亭という会合場所にあつまっていた若いリベリスタを襲った。 「池田屋を襲ったのは奴らの精鋭部隊だ。ちなみに近藤、沖田、斉藤の他に幹部クラスが土方、永倉、芹沢といった奴らが今回参加している。奴らはまさに血に飢えた壬生の狼たちだ。自分たちこそが唯一の正義であると信じてただ悪を斬る。非常に考え方はシンプルだがそれだけに厄介だ。意思疎通がきちんとしてブレがない。他にも志士たちが20人以上いるから慎重に気を付けてくれ。激しい戦闘になるがくれぐれも頼む」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月18日(火)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●後ろ髪を引かれる思い 「曲者が現れたで御座るな」 裏口を固めていた新撰組の局長近藤勇が目つきを鋭くさせた。前から翼とラグナロクの加護を受けたリベリスタたちが決死の形相で迫ってくる。近藤はすぐに仲間に指示をだして応援を要請した。 近藤自ら前線に立ちはだかってリベリスタを迎え撃つ。 「正義を語って悪をなす非道を私たちは絶対に許しません」 先頭を切った蘭堂・かるた(BNE001675)が、無数の隊士たちの中に飛び込んだ。大きく跳躍して漆黒の一撃を放つ。刀を抜いて周りの敵を切り裂いていく。『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)と『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)が近藤と芹沢の間に割り込んでブロックする隙に、後ろから『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が迫った。刀を振りかぶって近藤に狙いを定める。 「拙者の相手はおぬしでござるよ!」 強烈なメガクラッシュを放つ。攻撃を受けた近藤は耐え切れずに弾き飛ばされた。塀の壁に激突して当たりに砂煙が巻き起こる。 凄まじい攻撃に近藤は相当なダメージを食らったように誰もが思った。 「どうしたで御座る? これがまさかアークきっての実力者の攻撃ではあるまいな。もしそうなら幻滅で御座る」 「バカな……拙者の渾身の一撃が――」 虎鐵は思わずつぶやいた。近藤はすぐに立ち上がっていた。擦り傷や打撲を負っているが、それ以外は大きな損傷もない。これにはリベリスタたちも舌を巻いた。 「どうやら、固いというのは本当のようですね。ですが、いまだに――刀を抜かないとは、舐められたものというべきでしょうか」 ユーディスがリーガルブレードで近藤に襲い掛かる。だが、近藤も右腕でユーディスの攻撃を受け止めると、反対の腕を使って手刀を繰り出した。まともに鳩尾に攻撃がヒットしたユーディスは吐いてその場に崩れる。 「絶対に行哉さんを助けるんです!! こんなところで負けてなんかいられません!!」 『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)は敵に包囲されながらも東雲を操って隊士達に斬りかかる。次から次へと襲ってくる敵の村雨の刃に防戦一方となった。『閃刃斬魔』蜂須賀 朔(BNE004313)も猛スピードで後から続いて、刀を一閃して切り刻む。わずかに出来た隙を狙って残りのリベリスタたちが突入した。 「甘いな――そうはさせん」 芹沢が後ろからやってきたリベリスタに向けて、爆竹を投げつけた。とっさにユーディスとシビリズがブロックに入るが、爆発で外に弾き飛ばされる。 「きゃあっ!?」 セラフィーナは前方の敵と殺りあっているうちに、横から別の隊士の刀にわき腹を刺された。出血が止まらなくなった。すぐに『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)が助けに行こうとしたが、当のセラフィーナにとめられる。 「お願い……先に行哉さんとこに行ってあげて」 へーベルは一瞬、迷ったが、力強く頷いた。 「必ずまた戻ってくるから! それまでがんばって、マイヒーロー!!」 後ろ髪を引かれる思いでへーベルたちは乱戦の隙間を先へと進んでいく。 ●悪をただ斬る、それだけの理屈 庭ではすでに沖田総司と斉藤一を含む新撰組隊士たちが手負いのリベリスタ兄妹を追い詰めていた。すでに行哉の方は身体の骨を折られて重傷だ。ふらついて満足に動くこともできない。いつ倒れてもおかしくない。それでも後ろに妹の芽依香を背負いながら最期の奮闘を見せていた。 「何度でも助けるって、言ったでしょ!」 『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)が間一髪のところで割り込んだ。周りを護衛していた隊士達にブレードで斬りかかる。血が飛び散って乱戦になった。敵の執拗な攻撃に壱也も決死の形相で立ち向かう。 「壱也さん!」 行哉は、壱也の姿を見つけて急に弾んだ声をあげた。だが、その晴れやかな顔も一瞬だった。後ろから沖田が猛スピードで壱也に襲い掛かる。 「壱也さん、逃げてください!」 行哉が叫んだが、前の敵にかかりきりになっていた壱也は振り向くことができない。沖田の刀が襲い掛かる。もう間に合わないと誰もが思った。 「ダメだよ、よそ見しちゃ。そーじちゃんの相手は俺様ちゃんだよ☆」 『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が、沖田の攻撃を鋏で受け止めていた。ニヤリと笑って壱也に微笑みかける。 「今のうちだよ、羽柴ちゃん! はやく安部くんのところへ」 壱也は大きく頷いた。助けてくれた葬識に目で合図する。 「もう死んじゃえなんて言わない。怖かったんだもん。なんとしてでも生きてここから出るよ。そのために力を貸して。一人じゃ無理でも、みんなでならできる!」 敵を蹴散らしてようやく壱也は行哉の元に辿り着いた。後ろから朔に連れられてやってきたへーベルが急いで回復を施す。 「妹さんを護ったげてね。慌てないで、ゆっくり自分のすべき事と生き残る事を考えて。大丈夫、マイヒーローは強いんだから!」 壱也とへーベルの優しい語り掛けに行哉は頷いた。芽依香を庇いながら壱也とともに戦線を後退しようとする。 「壬生の狼から逃げられると思うなよ」 斎藤が村雨を弓矢のように引いて構えた。次の瞬間、猛スピードで斎藤の刀による突撃が繰り出された。壱也の背後に朔が立ちはだかる。 「壱也君ここは任せて」 「ありがとう、朔」 朔が斎藤を抑える間に壱也が二人を連れて逃げる。 「斎藤一、貴様の強さと正義、見せてもらおうか。『閃刃斬魔』推して参る」 朔は斎藤の攻撃を刀で受け止めた。凄まじい破壊力に弾き飛ばされそうになりながらも斎藤の刀に最後まで食らいつく。 「他の組員はいざ知らず、少なくとも貴様は国の為、人のために刀を取ったのではないか? だから徳川の時代が終わり明治の世において警察になったのだろう。今の新撰組はバロックナイツという夷敵が人々を害しているにも関わらず京の覇権などというものに執心している。貴様はこの現状を真に正義と思うのか?」 「ほざかしい。藤田の名はもう捨てた。今の俺は、斎藤一。俺には悪を斬る、ただそれだけの理屈があればいい」 斎藤の刀が朔を押切った。重心を引いてゼロ距離射程の突撃を放った。懇親の一撃に朔は吹き飛ばされて庭の池に堕ちる。 壱也は決死の思いで二人を連れて後退した。葬識と朔がそれぞれ敵に集中砲火をあびて今にもやられそうになっている。 「安部兄妹! 中の味方の状況は!?」 そこへ乱戦を突破してきた『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)がすれ違いざまに行哉と芽衣香に声をかける。 「手前の座敷に二人、廊下に一人です。特に手前の座敷が危険です」 行哉は青ざめて答えた。後ろから『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)とツァイン・ウォーレス(BNE001520)も続く。竜一が前の敵を蹴散らしながら、ついに廊下に斬って入った。永倉新八が槍を持って襲い掛かってくる。ツァインは真っ向勝負を挑んで挑発した。 「おぉっとぉ! お前にゃ俺の相手してもらおうかいッ!」 「いま、いい所なんです。邪魔しないでくださいよ」 薄汚い笑顔を浮かべた永倉がツァインと竜一に牙を向ける。 「新撰組を名乗る資格が、お前らにはあるのか? 『誠』の元に正しく刀を奮っているのか? なんのための誠忠だ。尽忠報国ではないのか。壬生狼はただの血に飢えた獣じゃない! お前らに新撰組の名をこれ以上、汚させはしねえ!」 槍の攻撃を交わした竜一がまずメガクラッシュを叩き込んだ。その隙にそばにいた負傷したリベリスタをツァインが確保することに成功する。 だが、そのとき宿にいた一般人が騒ぎを聞きつけて廊下に出てきてしまった。悲鳴が起きて現場は混乱する。ロウはすぐに一般人に向かって避難を呼びかけた。あわてた宿泊客は四方八方にばらばらになって逃げる。 「だめだ! そっちに逃げてはいけない!!」 ツァインも必死になって客を抑えた。 「邪魔だ! どけ!!」 「ぎゃあああああ」 血しぶきが飛び散って一般人が倒れた。リベリスタたちも自分のブロック相手にかかりきりで一般人の避難まで手が向かない。有効な対策もとれずに、次々に無抵抗の一般人が殺されていく。 「このままでは、手前の座敷のリベリスタがマズい!」 ロウは直ちに奥の座敷に切り込んでいった。 「ぐはああああっ!」 だが、ロウは突然血を吐いて倒れる。後ろには、いつの間にか土方歳三が姿を現していた。 「残念だったな。貴様の相手はこの俺だ。むろん命があると思うなよ」 土方は続けて刀をふるってロウを刺し殺そうとする。間一髪のところで、ロウは振り向きざまに土方の刀を受け止めた。 「貴方がたが何を悪と断ずるのかは知りませんが……僕としては、それが神秘であれば斬るに足ります。神魔、須らく掃うべし! 猿真似の平突きなど、何する物でもありません!!」 ロウが土方を押切った。相手の刀を横に流して反対に自分の刀を相手の腹に叩き込んで一気に決着をつけにかかった。土方は血を吐いた。 ロウは土方を置いてすぐに手前の座敷へと進もうとする。 ●仁も忠義もない 「貴様の相手は俺だといっただろう?」 後ろから土方がいつの間にか迫っていた。猛スピードでロウの背中を突いた。ロウは回避することが出来ない。 「ぐはああ!! くっ! これでは手前の座敷まではどうしても突破できない!」 ロウは唇をかんだ。ツァインは確保した一人のリベリスタの避難と自分の身を守ることで精一杯だった。竜一もすでに負傷していた。永倉と戦いながらツァインとリベリスタを護衛するので限界だった。ロウも土方の相手でこれ以上先は進めない。 ロウは土方の刀に何度も切り刻まれた。土方も無傷ではなかった。お互いが物質透過を頻繁に使って探りあいを続けた。 「仁も信も忠もないお前らに、俺が討ち果たせるものか!」 竜一はその場に留まって攻撃を防いでいた。永倉を相手にしながら、他の取り巻きたちを渾身の一撃でなぎ払う。竜一の凄まじい攻撃に隊士たちの包囲網も崩れ始めた。その隙にツァインが負傷したリベリスタや一般人を連れて庭まで後退する。 庭では壱也がすぐさま沖田に向かって飛び掛っていった。二人を安全な場所に避難させた壱也は遠慮することは何もない。ブレードを沖田に向かって突きつける。 「うわ~いけめん! でもあんたより志も覚悟も強い似た名前の人知ってる。ちなみにイケメン度も勝ち」 壱也は倒れて動かない葬識をかばうように立ちはだかる。葬識は沖田の苛烈な攻撃に脇腹をやられていた。身体を押さえて必死に痛みを我慢していた。壱也は絶対にこれ以上葬識を傷つけさせるつもりはなかった。 壱也は沖田の懐に飛び込んで、一気に旋回するようにブレードで敵の身体を横になぎ払った。これには沖田も声をあげて口を押さえた。 「ゲホゲホオッ……」 沖田は大量の血を吐いた。だが、目はさっきよりもギラついている。 「いいねその目。餓狼の目だ。お腹を減らしてるのは君だけじゃないんだよ」 壱夜が奮闘している間に、葬識が立ち上がっていた。葬識にとっても、これ以上壱也が敵に切り刻まれる姿を見ているわけにはいかない。 挑発に乗った沖田が刀を振りかざしてすぐに間合いをつめてくる。渾身の一撃を葬識は鋏で全力で受け止めた。 「羽柴ちゃんいまだ!」 葬識が叫んだのと同時に、壱也が村雨めがけてブレードを垂直にたたき降ろす。その瞬間、葬識の鋏と壱也のブレードにはさまれて、村雨が砕け散った。 「――しまった」 沖田がそう叫んだとき、壱也と葬識の同時攻撃が炸裂する。 「そーじは二人もいらないんだよ」 「ぐはあああああっ!!」 壱也と葬識に切り刻まれて沖田は吐血しながらついに倒れた。 ●これ以上犠牲を出さぬ為に ツァインが安部兄妹ともう一人のリベリスタを伴って、裏口まで後退してきた。そこで待ち構えていたへーベルがピンポイントで残りの隊士を狙う。 「ね、芽依香のお兄ちゃんはかっこいいね。芽依香の予知能力だってかっこいい」 皆誰かのヒーローだから、とへーベルは励ます。芽衣香も泣きそうになりながらへーベルの言葉に頷いた。 「必ず助けてみせます。約束したんですから。お寺が復興したら遊びに行くって。 行哉さんも芽依香さんも揃って、皆で帰るんです!!」 セラフィーナも東雲で敵を切り刻む。裏口で何とか行哉たちが逃げ出そうとしているのを見届けたかるたは、芹沢に目標をかえて攻撃をしかけた。 「力で劣ろうと、心まで劣りはしません……そちらの流儀では『気組』と言いましたか」 近藤をシビリズと虎鐵が抑えこんでいる隙に、刀を振りかぶって間合いをつめる。気がついた芹沢も爆竹で反撃した。辺りに白い砂埃が巻き起こる。 「士道など語るもおこがましい蛮人であれば是非も無し。業は外道、名は騙り……運命を捻じ曲げてでも斬り捨てるに憂い無し!!」 今の自分が如何に攻撃偏重の部類にあっても、それを理由に軽々に倒れる事は許されなかった。手足の数本くらいどうということもない。片足が動けば立ち上がれる。片手が動けば剣は振るえる。牙が健在ならば喰らいつくまで。 かるたは決着をつけるつもりだった。もうこれ以上、犠牲を出さない為に。 白い砂埃から突然現れて飛びかかかる。大きく跳躍して刀を振り庇って渾身の力で芹沢めがけて斬りこんだ。 「ぐあああああああああああああああ――」 芹沢はかるたに致命傷を負わされた。ぐったりとして近藤に助けを求める。 「馬鹿で御座る。弱い者は死ぬで御座るよ」 闘いながら近藤は冷たく言い放った。仲間に援護してもらえなかった芹沢は自分の刀を取り出して腹を掻き斬って自害する。 芹沢と沖田が死に、他の部下の隊士たちも甚大な被害を受けた『新撰組」はついに近藤によって撤退命令が出された。 「待ちなさい。このまま逃がすわけにはいきません!」 ユーディスがリーガルブレードで近藤の背中を狙う。一瞬、近藤は不意を突かれて背中を容赦なく切り刻まれた。それでも近藤は倒れない。 「……今の時代に剣で京都の覇権を握って、如何しようというのです。単に力を揮いたい、血を見たいだけですか? ――仮にそうならば、始めから志が無いも同然」 「おぬしたちの様な悪を斬る、それ故に」 「どうやら私たちは相容れないようですね。ならばこちらの正義を押し通すまで!」 ユーディスが近藤の顔面に向かって斬りかかる。さすがの近藤もこれ以上、猛烈な波状攻撃を受け続けることができなくなっていた。 「さすがに同時に3人の相手はきついで御座るな」 近藤はついに刀を一本だけ鞘から抜いた。さきほどよりも目つきが一段と険しくなっている。構えた剣先から邪悪なオーラーが漂っているかのようだった。 「覚悟するで御座るよ!!」 近藤は刀でユーディスに向かって切りかかった。そこへ聖骸闘衣をまとったシビリズと虎鐵が間に入る。それをもろともせずに近藤は渾身のオーラを纏った一撃でなぎ払った。凄まじい衝撃音と風刃が辺りをめちゃくちゃにした。 あたり一面に砂塵が巻き起こる。視界が開けると、池田屋が半壊しそうになっていた。地面に大きく溝を掘ったような攻撃のあとが残っている。その瞬間、いたるところで奮戦していたリベリスタと幹部の隊士たちは、とっさの判断で逃げ出していた。 間一髪のところで近藤の攻撃を逃れることに全員が成功する。 「おい、誰もいないぞ! 斎藤や永倉もいない!」 朔が叫んだ。いつの間にか隊士たちの姿が見当たらない。 霧が晴れたときには、そこには誰もいなかった。まだ斎藤たちが影潜みで周囲に隠れているかもしれない。しばらく警戒したが物陰には隊士たちの姿はなかった。 代わりに残っていたのは、手前の座敷で無残にも殺されているリベリスタの無残な姿だった。ロウは彼らにそっと近づいて目を閉じさせる。 「くそっ、もっと早く駆けつけていれば……」 竜一が悔しそうにこぶしを突き立てた。一般人の救助に手間取った分、土方や永倉を抑えるのに時間がかかった。手前の座敷にたどり着くことができなかった。 もし、表の入り口から突破していれば最大で4人助けれたかもしれない。だが、そうしたらおそらく安部兄妹の命はなかっただろう。 「奴らを追うか――それとも」 虎鐵が一瞬、判断に迷う。 だが、それよりも救出した人たちの身の安全が先決だった。撤退した新撰組を追うよりもまず一刻も先にセラフィーナが行哉たちのもとへ駆け寄る。 「行哉さん、無事でよかった……」 セラフィーナはすぐに行哉に寄った。満身創痍で倒れこんでいた行哉は差し出された小さな手を強く握った。セラフィーナは頬を濡らして嗚咽した。 「もう死んじゃえなんて言わない。怖かったんだもん。なんとしてでも生きてここから出るよ。そのために力を貸して。一人じゃ無理でも、みんなでならできる!」 壱也も行哉の反対の手を握る。 「ありがとう……セラさん、壱也さん」 「お兄様! まだ奴らはそこに潜んでいるかもしれません。今は安全な場所へ」 芽衣香が気丈に振舞った。フォーチュナーとしての勘だろうか。まだ奴らはあきらめてはいないはずだ。いますぐにでなくても近いうちに必ず襲ってくる。 リベリスタたちは、助け出した一般人を伴ってすぐに池田屋を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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