●「ピクニックに行きませんか?」 ちょっとぎこちなさのある笑顔でそう言って。 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は、自作のパンフレットらしきものを机の上に広げてみせた。 それから少しだけ間をおいて、きゅっと拳を握りしめて…… 「色々あって、のんびり休むなんて気持ちになれないという方もいると思います。でも、だからそ……そういう時だからこそ、短い時間だけでも良いから肩の力を抜いて、安らげたら……そう思うんです」 そういってリベリスタたちを見回すと、堅苦しくてすみませんと謝って…… 少し表情をくずして、少女はピクニックの舞台について話し始めた。 三高平からそれほど離れていない場所に、緑の豊かな丘陵に作られた大きな公園があるらしい。 「今の季節は晴れると少し暑いですけど、木陰もたくさんありますし微風もあって湿気もあまりないので過ごしやすいと思います」 公園内には散策路がいくつもあり、所々に木製のテーブルやベンチが備え付けられている。 敷地内に川も流れていて、川縁や広場などは手入れの届いた芝生で覆われているのだそうだ。 「飲み物や食べ物などはもちろん持って行って構いませんし、不足の無いように私の方でも準備していきますので」 フォーチュナの少女はそう言うと、集まっていたリベリスタ達を見回した。 「よろしければ皆さん、いかがでしょうか?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月24日(月)22:58 |
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■メイン参加者 26人■ | |||||
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●晴れた初夏の日 「今日は晴れてよかったね~! ちょっと暑いぐらいっ」 壱也はマルガレーテと一緒に木陰に入ると、お弁当を広げた。 (マルガレーテちゃんとピクニック!) 一緒に行きたいねって言ってたから、すごく嬉しい。 「前に一緒に練習した卵焼き、たくさん入れてきちゃった! じゃーんっ! 前より綺麗にできたんだ」 「おお~これは……」 「ど、どうかな?」 「や、これは本当に綺麗にできてる感じがします」 「あとね、今日のいちおしは塩麹のからあげなんだ~!」 嬉しくなりつつ、もう一品を勧めてみる。 「塩麹っておいしいしお肉も柔らかくなるし便利! ぜひ食べてほしいな」 そこで壱也は思いついた。 「そーだ! マルガレーテちゃんおかず交換しよ! わたしからあげあげるから何かちょーだい~」 「えと、じゃあ……このアスパラをお肉で巻いたのを」 「わーい! ありがとう! えへへ嬉しいな! いただきまーす!」 それぞれのおかずを頬張って、おいしいと笑い合って。 「今度はお菓子も一緒に作ろーね!」 そう言えば、少女は笑顔で頷いてみせる。 「今日はピクニックに相応しい良いお天気でございますね!」 (目に鮮やかな緑に吹き抜ける風もさわやかでお弁当がより美味しく感じそうでございます!) 以前に挑戦してみたのと同じお弁当を作ったリコルは、せっかくなのでとマルガレーテに声をかけた。 「お弁当は上手くできましたか?」 お互い丁寧に挨拶を交わし、さっそくお弁当について話題をふる。 「わたくし、あれから色々と練習してみまして前回より味付けが上手くできるようになったように思うのですが、まだ誰にも食べて頂いた事が無いのでございます」 よろしければ味見して頂けませんか? そう問いかければ、私で良ければとフォーチュナの少女は笑顔で応じた。 「……如何でございますか?」 少し緊張気味だったリコルの表情は、マルガレーテの感想を聞いて笑顔に変わる。 「色々と気遣いいただき感謝ですわ」 「いえ、そんな……こちらこそ、ご参加ありがとうございます」 マルガレーテと挨拶を交わし、茉莉は荷を開いた。 ランチバスケットにはサンドイッチとアイスティーを入れたボトル。 サンドイッチはロールパンに具材を挟んだシンプルなものだ。 卵サンドに野菜サンド、ウィンナーを挟んだホットドック風。 付け合せには、完熟したプチトマトを。 「知り合いに頂いた物ですが、甘さと酸味の釣り合いが素晴らしくて美味しいですよ♪」 「彩もステキになりますよね?」 頷いて、茉莉は紅茶を少女に勧めた。 紅茶はダージリンの今年のファーストフラッシュ。 「私は入れませんが、お好みでガムシロップを」 そしてデザートには冷やしていた枇杷ゼリー。 「気分も入れ替えて明日からまた精一杯生きて生きたいと思います」 穏やかな言葉に、マルガレーテも唯、静かに頷いてみせた。 ●昼食の時間、と 「サバサンド、初めて作ってみたんですけど……どうですか?」 木蔭にレジャーシートを敷くと、嶺は作ってきたお弁当を広げてみせた。 「香辛料で味付けしてみたり、玉ねぎやピクルスを挟んでみたり、資料を参考にしてみたのですが」 早起きして作ったお弁当のメインは、ローストビーフサンドとサバサンド。 副菜には、蒸し野菜のサラダ。 デザートはイチゴクリームサンドで、大きな水筒には麦茶を入れた。 もちろん出発前には日焼け対策。 義衛郎も比較的早起きしたものの実際にやる事が全くなかったので、せめてと公園までの荷物持ちをして。 公園に到着した2人は木陰のひとつを居場所に選び……今に至る。 (で、初体験のサバサンド。トルコ料理らしいけど、トルコ料理自体が初体験だわ) 「いただきます……へえ、旨い」 鯖の塩気にピクルスの酸味、玉ねぎの辛味が合わさって……素朴ながらも絶妙な旨さ。 どこか嬉しそうな嶺に見守られるようにして、義衛郎はお弁当を平らげる。 「食べ終わったらお昼寝しましょうか」 こんなお陽和なんですもの、お昼寝しないと逆に損です。 嶺の言葉に義衛郎は素直に頷いた。 眠気を感じ始めたのは、満腹になったせいかも知れない。 「私はそんなにまだ眠くないので……膝枕、いりますか?」 嶺の申し出をありがたく受け入れて横になる。 「風が心地良いなあ」 「ふふ、良い日ですねえ」 呟く彼に、そう言って。嶺は優しく微笑んだ。 ●傍らの木陰 自分の歩調は、少し早いらしい。 だから、合わせてゆっくりと。 義弘は祥子と一緒に川縁をのんびりと散歩していた。 暑さが増してくると二人は靴を脱いで、足だけ川に入る。 「簡単ではあるが、こういうのも水遊びって言うのかね?」 景色を眺めながら義弘が呟く。 少し遊んでから木陰にシートを敷くと、ふたりは一緒に準備したお弁当を広げた。 おにぎりと玉子焼き、から揚げ、たこさんウインナー等々。 (ひろさんは納豆以外は好き嫌いないって言ってたから、はずれはないと思うけど) そんな事を考えながら祥子は、ちらと義弘の顔を見る。 食べ終えてお腹がいっぱいになったら、少しの休憩。 彼の頭を自分の膝にのせて…… 「川遊びもいいけど、やっぱり海に行きたいな」 枝葉を微かに揺らす風を感じながら、祥子はゆっくりと話した。 「そうだ、今年は浴衣を作ろうと思ってるの」 できたらお祭りとか浴衣で遊びに行こうね。 そう言って微笑む彼女を見上げながら。 (……最近は、奴らのせいで色々あったから、な) 義弘は刹那の間だけ、想いを馳せた。 守れなかった命もある。 それでもこのひとときだけは……愛する女の事だけ。 そんな想いも、風と日差のなかで、まどろんで…… いつの間にか寝てしまった義弘の髪や頬を撫でながら。 祥子はキラキラと陽の光に輝く川面と、楽しそうに遊ぶ人たちへと瞳を向けた。 ●からあげ団の始まり 「やぁリリちゃん。キミの唐揚げ、いただいちゃうぜ☆」 「はい、SHOGO様。是非食べて行って下さいね」 火を使ってよい場所を確認し手早く準備を始めていたリリは、表情を綻ばせあいさつした。 「マルガレーテ様も是非どうぞ」 「あ、すみません」 丁寧に挨拶するフォーチュナの少女に、悠里も声をかける。 「ありがとう、マルガレーテちゃん。君のこういう優しいところ、僕は好きだよ」 これからもずっとその心を忘れないで欲しいな。 そう言って微笑むと、少女は気恥ずかしそうにしながら頭を下げた。 頷いてから、悠里も準備を始める。 料理もそこそこ出来はするが、今回はリリに任せて調味料等の準備……他は、後片付け辺りが良いだろうか? 「風斗くんやアリステアちゃんはまだまだ成長盛りだしいっぱい食べないとね」 その風斗の方はというと、昨日の内にしっかりと下拵えしておいた鶏肉を、さっそくリリへと手渡した。 「これは……食欲をそそる香り……出来上がりが楽しみです」 礼を言ってリリはお肉を受け取る。 美味しくなれと、心を込めて。 「揚げる作業は少し自信があります。お任せ下さい」 そう言って調理を始めるリリに、後は任せて。 (彼女が調理してる間、『食卓』の準備をしておこう) 風斗は用意していた千切ったキャベツの方を盛り付ける。 「そろそろ飲み物は冷たいほうが美味しい季節だよな」 言いながら快が、持ってきた大きなクーラーボックスを開けた。 「じゃ、アリステアさんはお客さんにお茶配ってあげて。唐揚げ揚げてるリリさん達には、一番冷えた奴をね。暑いだろうから」 ギッシリと詰まった冷えたビールやお茶を取り出しながら青年は少女に呼びかける。 返事をしてお茶を届けると、アリステアは笑顔で通り掛かったアークの職員らに呼びかけた。 「いらっしゃいませー。おいしい唐揚げいかがですかー!」 (お手伝いなのです……でも「お子様は火を使っちゃダメ」ってふーとおにぃちゃんに言われたので) お客様に笑顔をふるまう売り子さんになる。 (声を出すのはちょっと恥ずかしいけど、お客さんこいこい) 「新田酒店提供の、つめたい飲み物もありますよー!」 そんな彼女の声が……ふらふらと散歩をしていた比翼子の耳に飛び込んだ。 「うーん木陰が涼しくて気持ちいい」 川は綺麗であっちでは鳥たちが元気にさえずっているしそっちでは鶏たちが揚がっている。 (揚がっている? ……揚がっている) 「や、やあ……リリくんとゆかいななかまたち……きぐうだ……そこで香ばしい香りを放っているのは……たわし?」 いやからあげか。 「鶏のからあげだ」 光のない目で、比翼子が呟く。 「あっ、閑古鳥……」 それ以上何も言わず……風斗はそっと、目を逸らした。 ●唐揚、完成! 「お料理とか、こう見えてもそこそこできるんだよ?」 合間合間に唐揚げサンドを作るアリステアの鼻に、香ばしい薫りが届く。 (……ぅぅ、いい匂いのせいでお腹すいてきちゃったなぁ) 「私の分、最後にちょびっとでいいから残しておいてね?」 「大丈夫ですよ、アリステア様。一緒に頂きましょう」 朝に焼いたパンを用意しながらリリが微笑んだ。 からあげぱーちー! ……の為に。 「いくら美味しく食べれても、わたしたちがリベリスタだとしても油物たくさんは胃がもたれるです」 エリエリはアクセスファンタズムに収納していた飲み物を取り出す。 ウォーターサーバーに入った真っ黒な濃い烏龍茶は、前日に孤児院で作り冷蔵庫で冷やしておいた物だ。 (本当は熱い方がおなかにはいい……とおもうです) なのでお湯も魔法瓶に入れて運び、茶葉と一緒に温かい烏龍茶も用意してある。 「ふふふ……苦くて濃くて口の中しゃばしゃばになるくらい渋い烏龍茶で、もがき苦しむがいい!」 準備しつつ邪悪な笑顔を浮かべる彼女を含め、額に汗して働く少年少女達を……翔護は優しく見守っていた。 「決して生活力ゼロとかそういうことじゃないんです。見守ってるんです」 まるでハートを盗むかのような言い草で飯をたかる男、それがSHOGO。 彼が見守る中、配膳が終わる。 「ああ……美味そうな匂いでござる……」 (これはまぎれもなく……) 「からあげでござるううう!!!」 揚げたての唐揚げに虎鐵が満面の笑みを浮かべる。 「というわけでぇ! からあげと言ったらおビール様だろうがー!」 「さすが快! わかってるね!」 「……おビール様? 様付けなのですね」 快の言葉に悠里は笑顔で頷き、リリは不思議そうに首をかしげる。 大人は地ビール。 秘密兵器、生ビール用のサーバーと炭酸ガスも持ってきた。 「さあ、SHOGOも飲め! 生だ! ビールだ! 楠神さん! ……は来年か」 皆に飲物が行きわたると、さっそく乾杯の音頭が掛けられた。 ●ミーミミ、ミミミ、リュミエール! 「からあげだんのからあげはミーノたち、テテロセクシーズがいただいたのっ」 (このおいしそうなにおいのもとを、いちもうだじんにしてみせるのっ!) きりっっと、ミーノが表情を引きしめる。 「おねーちゃん、ちゃんとならばないとだめなのです」 そんな彼女に、ミミミルノが声をかけた。 「よいこにしてたらきっとからあげをたくさんもらえるとおもうです」 だからならんでまちましょうっ。 「いちもーだじんのためなら、すこしくらいのくろーはしょうがないのっ」 うなずいて、ミーノは並んで……もらうのを待ちながらそわそわし始める。 「ミーノおねーちゃんたちとらんにゅーするのだっ!!」 からあげを食べて食べて食べまくるのだと、ミミルノも続くように宣言した。 「きょうはそのためになんと! あさごはんをがまんしてきたのっ! もうすでにちょうちょうおなかがすいてるのっ!」 きょうは5ニンマエはたべられるはずっ、と……ミミルノも、きりっと表情を引きしめる。 (からあげだんにミーノおねーちゃんたちがらんにゅーするみたいなのですっ) よゆーなのだと笑うミミルノを見ながら、ミミミルノが拳をぐっとにぎりしめた。 (めーわくをかけないようにちゃんとおねーちゃんを、コントロールしないとっ) 決意しつつ、もちろん彼女も、並んでよい子にして待ち続ける。 (よいにおいがただよってますです……おなかがすいてきたのです……) きゅるるるるる~と、何かが鳴る。 その様子を、少し引いた感じでリュミエールが眺めていた。 「……何かフエタナア」 呟きの方は、もっと引いた感じが漂っている。 とはいえミーノは勿論、彼女の妹たちの方も放っておくという訳にはいかない。 引率のような気持ちと共に全員面倒見ようと彼女が決意したころ、3人は唐揚げタイムを開始した。 \いっただっきまーす!/ 「ほふほふほふもぐもぐもぐ、あちちっ! でもおいしい!!!!」 これはきゅーきょくのからあげにちがいないのと叫ぶミミルノと一緒に、2人もから揚げを頬張りつづける。 (ほっぺとか一杯汚れツケルンダヨナー) 「この二人熊と獅子ダッケナ……アア、ウンコイツラミーノの妹ダワーホント」 用意したお手拭きやウェットティッシュを使って面倒を見ながら、リュミエールは自分の作ってきたお弁当も差し出した。 3人の顔を模したお弁当や、たんぱくしつ以外の栄養分を補えるおかずたちも、次々と3人の口の中へと消えてゆく。 そして、時が過ぎて。 「ふぅ~~~~だいまんぞくなのっ!!」 言葉通りの笑顔で、ミミルノが3人分の気持ちを口にする。 何か疲れきったような状態のリュミエールは……ミーノの満面の笑顔を見て、何となく満足したような気持ちになった。 ●からあげ団の永遠 「拙者は肉々しいからあげが大好きなのでござる」 (塩につけても美味いでござるしな) 「折角でござるから今後の陰ト陽の為にもからあげの味付けを学んでみるでござるかな」 じっくりと味わいながら虎鐵が考え込む。 「これ、すごく美味しいね。流石だよ」 悠里は皆と楽しく談笑しながら、からあげと野菜を摘む。 「皆で作って皆で食べる……本当に美味しいです」 笑顔で、感慨深げにリリが呟いた。 「むむう……リリのからあげは美味いでござるな……」 悠里の言葉に虎鐵があいづちを打つ。 (拙者も何かオリジナルで作ってみとうござるな) 「鶏肉にハーブを隠し味でいれてみたらどうでござろうか……あんまきつくない程度にでござるが」 「出汁がどうだとか切り目がどうだとか隠し味がどうだとか、SHOGOは食通の知ったかぶった高説には騙されない。何故ならもう3日食べてないから」 頬張り味わいながら翔護が断言した。 「お腹に入ってしまえば、カロリーとコレステロールは誰にだって平等なんだ!」 (いい加減働けばいいじゃないっていう声は聞かなかったことにするけど、そろそろ安定した暮らしも欲しい) そちらの方は、口には出さない。 「ああ……幸せでござる……」 からあげをツマミに酒を飲みながら、虎鐵は何とも言えぬ表情で呟いた。 「初夏を味わいながらビールってのも乙だね!」 揚げ物のじゅわっと広がった脂の旨味を、コクとキレのビールで洗い流す快感。 「たまらないね!」 快も喉から奥へと伝わる冷たさを味わいながら笑顔を見せる。 「閑古鳥様、お一つ如何ですか?」 揚げたてを追加したリリが、そういってお皿を差し出した。 「……共食いするのでござろうか……」 呟きながら虎鐵が見守る。 ……粗末にはできない。 比翼子は礼を言って1つを口に入れた。 「くそう……! おいしいし……」 (同胞よ……きみをからあげにしたのがこの人達でよかったな……) 洗練された中に残る優しい家庭的な味わいは、いつかおかあさん(存命)が作ってくれたからあげを思い出す。 「くっ……おかあさん……」」 「あ、わたしもからあげたべるです」 リリさんみたいに成長したい。 「おもにむねにく。むねにく」 エリエリがもぐもぐと唐揚げを頬張る。 卓に並べられたものは、残さず食べる。 (青空の下、皆でひとつの皿を囲んで揚げたての唐揚げを食う。これが美味しくないわけがない) 「おいしい唐揚げと、みんなの笑顔で、明日からの戦いへの気力をチャージするぞ!」 風斗の言葉に悠里は笑顔で頷いた。 「色々大変だったし、これからも大変だろうけどこうやってみんなで誰も欠ける事なく楽しみたいね!」 「ええ、こんな日がずっと続いたら良いです」 悠里の言葉に、リリが微笑む。 「設楽様の仰る通り、皆で」 みんな、で。 こんな日が、ずっと続いたら…… ●それぞれの一面 「あ。トニオトニオはじめまして、黎明は黎明ちゃんだよ?」 一人で訪れた黎明は、同じく一人でのんびり過ごしている青年に声をかけた。 「ねねね、トニオってばお料理上手? みしてみして!」 そう言って彼の用意してきたお弁当をのぞき込む。 「……ほわー、おいしそう! トニオがつくったの?」 「モチロンよ、紳士淑女のタシナミですもの♪」 「ひとくちちょーだい黎明ちゃんもひとくちあげ――――……ごめんアイスしかないや。いや、ほら、あっついかなーてえへへー」 ピクニックかーとは思ったものの、一人だし頑張ってお弁当作るのも切ない。 そんな気がしてお手軽に、黎明はたくさんのアイスを買ってきていたのである。 (ちょっと涼しそうな木陰でアイスとか、きっときっとしゃーわせだよね!) 「…………あ、やっばいしかも溶けかけてる」 「あらら、まあ気にしないで食べて頂戴♪ 私ひとりじゃ食べきれないし?」 そう言ってトニオは笑顔で黎明へとお弁当を差し出して見せる。 「ぼっちじゃないです! 俺にはマルガレーテたんが居ます!」 「この前の女の人は一緒じゃないんですか?」 「わざと言ってるね! マルたんは!」 「まあワザとですけどね」 「まあマルたんを可愛がるのが、俺のお兄ちゃんとしての役目だしね!」 「……何人いらっしゃるんですか? その妹さんは?」 「お弁当持ってきたよ! はい、あーん!」 「話、聞きましょうよ?」 「マルたんのお弁当もたべてみたいなー! 食べさせてー! はい、あーん!」 「……寧ろ親鳥の心境ですよ」 開けられた竜一の口に、マルガレーテが箸でつまんだエビフライを放り込む。 「うまうま。マルたんはいいお嫁さんにもなれるね! ……まあ、マルたんと仲良くなろうというなら俺を楽に倒せるのが前提条件だが……」 「もうツッコミきれないですよ」 「それはともかく、ゆっくりしよう!」 「……はいはい、お付き合い致しますよ」 彼の教育の賜物か、妙に拗ねた仕草をしながらも……少女は苦笑いしながら頷いてみせた。 ●まどろみの時間 ベンチに2人で腰を下ろして。 レイチェルとエルヴィンは、のんびりとランチタイムを過ごしていた。 用意したお弁当は以前アークの皆で作った時と同じものだが、全く同じという訳でもない。 (主に俺やレイの好きなものを中心に、って程度だけどな) 今日まで普段通りというのも寂しいので、ちょっと中身を豪華にとエルヴィンは手を加えてみたの。 「このおかずどうだ? 好きだったよな?」 そんな兄の言葉に頷きながらレイチェルも少し改良したお弁当を差し出した。 ポットに詰めておいた、よく冷やしたお茶もそそぐ。 枝葉をそよがせながら通り過ぎる風を感じながら、2人は初夏の心地を楽しんだ。 食事の後はそれぞれ本を開きながら、のんびりと言葉を交わす。 「ん、眠いのか?」 欠伸を抑えるような妹の仕草を見て、エルヴィンは首を傾げた。 「じゃあこっち来いよ、膝枕してやるからさ」 「んー、それじゃあお言葉に甘えて……」 レイチェルはそのまま横になり頭を預ける。 たまにはこんな一日も悪くない。 すぐに、ゆったりとしたまどろみが彼女に訪いを立てにやってくる。 その幸せに、レイチェルは身を委ねた。 揺らさぬようにと気を配りながら再び本をひらくと、青年は小声で呟いた。 「良いね、こういう時間も」 ●思い出に変わるもの 「こうやって皆で食べるご飯は、幸せ味なのだ」 雷音の言葉に、そあらは頷いた。 「忙しいお仕事の合間にこうやって安らぎの時間を作れるのは嬉しいのです」 緑の良いにおいがする。 「夏に向けて日差しも強くなってきたですねぇ」 そんな言葉が、自然とこぼれた。 用意したお弁当は、あの時と同じ。 ここにいる4人も、あの時と同じだ。 だけど、違うことがある。 「みんなで作ったお弁当、もっともっと美味しくかんじるのです」 自分の作ったお弁当をみなに勧めながら、そあらが微笑んだ。 「あたしのお弁当、好きなの食べて下さいね」 あたしも頂いちゃうのです。 一つ一つていねいに作ったお弁当。 「こ、このまま残しておきたいのだ!」 (そうだ!) 「そあら、4人でこのお弁当とボク達を写真に写そう」 ウインナーで作られたライオンを食べるのに少し戸惑った雷音は、みんなにそう提案した。 「だったら、ずっとこの思い出ができるのだ」 そう言って撮った写真を、雷音は父にメールする。 「らいよんちゃんのからあげおいしいのです」 「楽しいな、やっぱり、いつもより美味しく感じるのだ」 梢からの風が、汗ばんだ肌を優しくなでてくれる。 「デザートはもちろんいちごなのです」 お弁当箱より大きいのは、仕方ないこと。 「だっていちご大好きなのですもの」 「私は、さくらんぼ持ってきましたですよ~」 そあらに続いてヤミィが笑顔で容器を回し、マルガレーテが感心した様子で2人を見つめる。 みなの笑顔を眺めながら、雷音はデザートと一緒に……何かをかみしめた。 初夏のピクニック。 大切な友達との優しい時間。 こんな時間を、ずっとずっと大切にしたい。 食べ終えると、お弁当箱を閉じながら……雷音は顔を見合わせ、声を合わせた。 「ごちそうさまでした」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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