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神のまにまに


 ――神隠し。
 突然、人が行方不明になる現象。

「また一人……消えたか」
「警察は!? 何をしているんだ!!!?」
「ああ、息子が、息子がいないんです!!」
「娘は!?」
「無事で、どうか無事でいてくれ」


「皆さんこんにちは、今回のお相手は神様です」
 『未来日記』牧野 杏里は集まったリベリスタ達へそう切り出した。
「とある地方の集落にて、子供が神隠しに合う事件が多発し、今もなお解決しておりません。結論から言って、フェイトを得たアザーバイド『白狐』の仕業なのです。自ら扉を作ってこの世界に来た、九尾の稲荷。帰る道も……おそらく自前できるのでしょうね」
 誘拐した子供を千本鳥居に放り込んで、慌てふためく姿を見て楽しんでいるという白狐。このままでは子供は自然と餓死してしまうので、その前には止めたい。
「白狐は神主服を着た少年の姿をしていますが、基本的に人の前に姿を現す時は気配も足音も温度やその他諸々を巧妙に隠して来る様です。対抗手段は幻想殺しと言った所でしょうか」
 白狐は特定の技により自身の姿を隠す他、狐火や管狐を召喚して使役する技がある事が解っている。敵はけして一体では無い。戦闘する場合は、子供に戦火がいかないように十分に気を付けて戦闘するべきだろう。
「フィールドですが千本鳥居と言いまして、文字通り同じ色形の鳥居が永遠に続く場所に子供は居ます。これを作ったのは白狐なので、彼の死か任意で消す事ができるでしょう。加えて、敵と見なされ戦闘し、戦闘不能した瞬間にフェイト復活を無視して外へ弾き出されるのでお気をつけて下さい。
 入り口は逢魔時に数秒だけそこへ通じる鳥居があるので、そこからですね」
 能力の無い子供にとっては、とおりゃんせと言う事か。タチが悪い。
「あくまで一般人の子供を閉じ込めているので、白狐に対抗できる能力者は戦闘不能になったら追い出されると踏んでいます。それを念頭に置いて戦ってください」


「帰りたい! 帰りたいよおお!! まま!!」
(ダメダメ。帰ったら僕が暇になっちゃうでしょ?)
「あああーん! おなかすいたよううう!!」
(安心しなよ。神界への案内はするよ?)
「うあーーーん!!」
(楽しい暇つぶしになりそうだ)

 ――神の生きる時間は永遠の様に退屈で、長い。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年06月10日(月)21:04
 夕影です

●成功条件:一般人全員の救出
●失敗条件:一般人全員救出する前に、リベリスタ全員が千本鳥居から排除される

●アザーバイド:白狐
・上位の神様。フェイト有り
・戦闘はソードミラージュとデュランダルを足して2で割ったような感じです
 宝刀を持ち合わせ、威力の高い攻撃を行ってきます
 フェーズ的には2です
 管狐、狐火を召喚する他に、以下の非戦を持っています

・姿隠し
 姿、気配、音、温度を全て隠し、完璧に見えない存在になります
 また、戦闘行動をした瞬間に此れは解除されます

●狐火
 フェーズ的には1
 一回の召喚で5体召喚されます
 全ての攻撃にBS火炎が付与され、攻撃は単体オンリーですが遠距離2まで届きます

●管狐
 フェーズ的には1
 一回の召喚で2体召喚されます
 攻撃は単体のみですがBS麻痺が付与されます
 回復技も行ってきます

●一般人×10人
・5~10歳の男女の子供
 泣いていたり、お腹空いて倒れてぐったりしていたり

●千本鳥居
・幅は大人が5人並べる程度なので、幅を考えて戦闘すればペナルティはありません
 夕方と夜の間の時刻。暗所対策はあったほうが良いです
 足場にペナルティはありません
*フェイト復活をした瞬間に、千本鳥居から追い出されます

それではよろしくお願いします
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
インヤンマスター
岩境 小烏(BNE002782)
インヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
レイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
ソードミラージュ
桃村 雪佳(BNE004233)
レイザータクト
アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)

●幻想の中にて
 偉容を誇る鳥居が無数に連なって群れと成していた。
 此の世界は現世と常世の境界を司る――それこそ文字通り、黄泉の狭間の幻想世界。
 九つの尾を揺らし、『黒耀瞬神光九尾』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)は辺りを見回した。
 うっそうと木々が生い茂る中を、赤い鳥居が直線を引く……ただそれだけの世界。実につまらない、と彼女がそう言ってしまえばそれまでだ。
「これじゃあ出口を探す気にもならないだろうな」
 『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)はため息を吐いた。
 神隠しなんてよく言ったものだ。本当に隠されて、魔道を彷徨う子供の恐怖は計り知れないだろう。
 だからこそまずは子供探しから始めようじゃないか。
「取り掛かるぞ」
 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は次の瞬間に走り出していた。今にも腹を空かせて泣いている子供のために。
 福松に続いて七人のリベリスタは駆け出した。この何も無い直線の道を、何処まで進んでしまったか解らない子供を捜すのは苦労を極めていた。



 ――しばらくして。
 景色の変わらない風景を横に、何十キロ走ったかは定かでは無かったが、確かに子供は十人きっちり存在し、回収した。
「うああん! もううごけないよぅぅ」
「サァもう大丈夫でゴザイマスヨ」
 時には泣きじゃくっている子供の頭を、左手で撫でる『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)の姿があり。子供へ勇気を分け与え、その涙を止めた。
 またある時は、道端で虚ろな目をして倒れている少女へ。
「腹が減っているのだろう……君達を助けに来た。もう大丈夫だぞ」
「ぁ……ご、ぁん」
 『百叢薙を志す者』桃村 雪佳(BNE004233)は飲食物を渡して食べさせてやった。泣きながら「ありがとう」を何回も零しながらパンへ噛み付く少女の姿は、何処と無く……生きたいと願う人の姿が感じ取れる。雪佳はそんな人間の姿を見ながら「ゆっくり食べるんだぞ」と優しく彼女の頭を撫でた。

 そんなこんなでフルパワーを取り戻した子供たちは。
「すっげー!!! なにこれ超、機械だああ! 変身、合体!!!」
「あんまり叩くと、爆発するでゴザイマスヨ」
 とか。
「尻尾だ!! たくさんある! へんなの!」
 とか。
 アンドレイの足を引っ叩く少年や、リュミエールの九尾に抱きつく少女の姿。まるで此処は幼稚園か昼休みの小学校の様だが、死にかけていた姿を晒されるよりかは最良の状況なのだろう。
「おねーさん。わたしおうちにかえりたいの」
 『宿曜師』九曜 計都(BNE003026)がお菓子をひとつ少女に分け与えていると、その子は計都の袖を引っ張った。不安に満ちた目を此方に向けて、揺れる袖がホームシックを直に伝えてくる。
「そうッスよね、もうちょっとで帰れるッス」
 膝を折った計都は少女の頭を撫でた。その横でツァイン・ウォーレス(BNE001520)は稲荷寿司を皿に乗せて歩いて行く。その後ろを少年が追いかけてきた。
「兄ちゃん、それどーすんだよー!」
「あ、神様へのお供え物だから食べちゃダメだぞ?」
「かみさま?」
 ハテナが頭上に浮かぶ少年に苦笑しながら、ツァインは歩く。数メートル離れた場所でそれをそっと地面へ置いた。

 ビュゥッ。

 が、次の瞬間にはその稲荷寿司は皿から消えてなくなっていた。少し遅れて、ツァインの横を風が通り過ぎていく――何かが通ったのは確実。
「今のが白狐か?」
「そうっぽいッスね」
 雪佳は仲間に問う。彼には見えない――あの風の正体は福松と計都だけには見えていた。ただ、早すぎて金色の風が駆け抜けていった程度のものになるが。
「悪いがかくれんぼは得意なんだ。特に鬼はな」
 今度は福松が油揚げを持った。そして彼の眼に映ったのは手。白く、そして長い爪を持った手だ。
「いきなり遊びに割り込んで済まない。あんたの高等な遊びには脆弱な人間は耐えられないんだ。ちょっと話を聞いてくれないか?」
 子供たちの目には虚空に喋りかける福松の姿があった。

『我の姿が、視えるとは奇妙な。今宵は退屈せずに済みそうだな』

 神主服を来た、九尾の少年の姿があった。

●九尾の若様
 色の違う九尾が揺れる。リュミエールは虚空から聞こえる声に言う。
「蟻を水攻めシテ楽しんでるノトニテルナ。余り良いお遊びジャアネーナァ趣味悪いぞお前ー」
『都を血に染めるよりは良い遊戯だろう?』
 時は暗黒が頭上を支配していた。正に、闇の世界の中。子供とリベリスタ、そして白狐だけが存在していた。
 今は語り合いの時、武器は言葉である。
『我が生きた永遠の時間の中、この会談でさえ一瞬よりも短き時間に過ぎない』
 油揚げと寿司を掴んだ指を舐めながら、白狐の声だけは周囲に響いた。
『んー、だもんで話があるならゆっくり話せば良いから、我の暇を潰してくれちゃっていいんだぞ』
 結局の所。理由(わけ)とやらは其処らしい。
 突然口調が軽くなった神様。一応は話を聞いてもらえる様だ。
「人の世に興味はありませんか?」
 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は白狐へと問いかけた。彼の目に白狐の姿は見えないものの、声のする方向を向いて、背に子供を隠して彼は問う。
『興味は無いけど、暇潰しの欠片にはなるからね。故に、我は此処に在る……みたいな』
 ならば、暇が別の理由で潰れればと雪佳は言う。
「神よ、どうだろう。この様な何もない所にいては、貴方も退屈だろう」
 できれば平和に終えたい雪佳。
「恐れながら、外の世界という物に興味はないだろうか。そこはあらゆる刺激に満ち満ちており、きっと貴方を満足させる事だろう」
『魅力的な言葉なんだけど……探すのは飽き飽きだ、しばらく此処に居る』
「だが……この世界の者を脅かされるのは少々困るんだ」
 雪佳の言葉に、白狐は「むう」と言ったきり。
 計都が前へ出た。巫女服の裾を揺らし、目を伏せ、自らが白狐を奉る体勢をもってして。
「憐れな幼子らが、父母を慕い泣いております。慈悲深き大御神よ。どうか、この子らを連れ帰ることをお許しください」
『……対価を出せばいいよ、子の泣き顔に見合う程度の』
 丁寧に、そして畏怖を漂わせて彼女は神に願う。更に小烏は付け加えた。
「単に遊び相手が欲しいだけなら、自分達でも構わんのではないか?」
 子供は脆い。子供に限らず、一般人とは脆い。神が少し弄べばすぐに壊れて動かなくなってしまうだろう。
 だからこそ、リベリスタが遊び相手を買って出よう。
『……りべりすたを相手にするのも一興かな』
「ん? リベリスタを知ってんのか? なら、フェイトや三高平の事……フィクサードや七派とか!!」
『知っているけど、此の世界の事情に手を出す事はけして無いからね』
 ツァインは白狐が此方の文化の情報が一つも持っていないとは思っていなかった。そしてそれは的中していた。
 おそらく彼は上位の存在なりに、己の力を使った範囲での下位の世界への影響を気にしているのだろう。ならば、辺境の地の子供の数が減るくらいは些細な出来事である。ましてや、白狐にとって『神隠し』という言葉は最大の盾であり、隠れ蓑であったに違いない。だがその行動の全てはただの『暇潰し』であるが故に。
 下界の事情は知っている。だが暇は潰したい。最低限のルールで子供を弄ぶ事を選んだ白狐。
 壱和の手が動いた。大戦旗の柄に触れて、それは宣戦布告の合図と見ていいのか。
「このような人を傷つけるお戯れなどお許しできませんが、それよりもっと楽しいものはいっぱいありますよ」
 にこりと笑った壱和の顔。
『他人の子を助けようとか面白過ぎるけど……。で、その楽しいって?』
「力比べです」
 単純に、戦闘能力をぶつけ合う。
 虫をも殺せなさそうな顔をしながら、この壱和という少年は大きく出た。その番長の様な格好は伊達では無い、という事なのだろう。
「アークに来れば定期的にここに赴いてオレ達が遊び相手になってやれるぞ。と言ってもあんたの気の長さでかくれんぼをやるのも少々疲れてしまう。もっと刺激的な『戦闘ごっこ』なんてどうだ?」
 福松も武器を持つ。
 説得は失敗した訳では無い。
 むしろ逆で、成功しているのだ。
 『子供を帰す』の対価に『戦い』で解決する事が可能なのだ!!
「見ているよりも共に遊んだほうが楽しいと思うが、さて如何?」
『相手しろ。今から千本鳥居は戦地と思え――!!!』
 小烏の、左手の羽が舞う。その先、子供の様に無邪気に嗤った白狐は宝刀を抜いた。

●戦場鳥居
 鳥居の内部には似合わない、福松の銃声が響く。
 無礼講と言う言葉はこの時のためにあったか。白狐は己を殺しに来ても良いと言うのだ。ならばそこに容赦は不要。
 神と呼ばれた存在だ――敬われ、奉られる存在。それが殺意を向けられる事は、長い時間の中を探しても一欠片も無かっただろう。確かに福松が言うとおり、戦闘ごっこというものは刺激的な言葉以外に何者でも無いのだろう!

 リベリスタ達は召喚される狐火と管狐を壊しながらも果敢に白狐への攻撃を重ねた。そして戦闘に誰より瞳を輝かせたアンドレイ。機械の足を持ち上げながら、巨大な斧を軽々と振る。
「Здравствуйте(こんにちは)神様トヤラ」
 現世で神と戦争できる日が来ようとは。左手の獲物が暗闇の中で唸る。既に戦闘行動を――宝刀を奔らせている白狐の姿はアンドレイの瞳には見えていて。
「我が名はアンドレイ・ポポフキン。いざ勝負!!」
『我が名は狐陽帝(こようて)。宜しく』
 アンドレイの牙である斧は白狐の首を一直線に狙った。そして彼の頬に一筋の傷を着けつつ、勢いのままに鳥居の足へ斧の刃が食い込んだ。
 その間に白狐はアンドレイから離れて大きく後ろへ跳躍した、手に燃える狐火を元として五つの焔が彼の周りに付きまとう。しかし、その背後、既に光の飛沫を軌跡に置いたリュミエールがナイフを打ち落としている最中――!!
 ボッ!!
 彼女のナイフは狐火を斬り、消した。庇う、召喚されし妖。チッと舌打ちをひとつ落した黒狐。
『本気で殺しに来る眼が良いね、二人』
「そうカヨ、じゃあサッサトその首ヨコセ」
 もう一度ナイフを振るうリュミエールの横で、雪佳は召喚された狐火や管狐を休まずに消していた。
「俺達は、言葉で解り合えるはずだろう、狐陽帝!?」
『説得の後ろに、かっこ物理と着けるときもあるだろう?』
 燃える、蒼い狐の炎を百叢薙剣が貫く。同時に服の袖が燃え上がって、焦げていく。熱い――熱い!!
「……やむを得ん。実力で押し通らせてもらう!」
 雪佳の頬から汗が流れてはすぐに炎がそれを蒸発させた。

「昔、片腕を鴉にやっちまってね。その残りでも良けりゃなんだが」
 貰ってくれるかい? と、小烏は無数の札を放った。それは鴉の形を作って全てが全て、白狐へと飛んでいく。羽の塊が九尾を包んで蠢くが、宝刀の切っ先が一匹の鴉を貫きながら、羽の塊を切り裂いて白狐は出てきた。
『ただいま』
「おかえり」
 進行してきた白狐――その先、子供の場所へか行かせまいと小烏は彼の腕を右手が掴んでそれを止めた。
「こんな事するから、子供が怖くて泣いているよ」
『りべりすたも泣いても良いんだけど、な』
 瞬間――二人の、否、近くに居たリュミエールも含めてその視界が真っ白になった。
 というのも投げ込まれたのは壱和の閃光弾。例えダメージが無いと言えども、リベリスタを巻き込んでの攻撃であった。それは仲間がきちんと回避してくれて呪いは着かないと信じての行動かは定かでは無いが、呪いは綺麗に狐火と管狐だけに付与されたのだ!
「今です!!」
 壱和の旗が震える――その光が消えかけた、その時。白狐の胸から鮮明に輝いた剣の切っ先が真っ赤な血を連れて生えてきた。
「楽しいか? 狐陽帝」
「い゛、がっ!?」
 背後――ツァインだ。九つの尻尾の間に立って、剣の柄を持ち、その先を背中から差し込んでいた。
 今までは召喚された彼等の執拗なブロックや庇いがあったものの、怒りの矛先が全て壱和に向いた今が狙い時であった。
 折角、白狐には運命の加護があるんだ。ツァインは平和になんとかしたかったが……戦闘になる事態――打開策は無いかと頭に湯気が上るくらいには考えたが、神殺しがその策になるならば――。
 剣を抜けば、見慣れた血が鳥居とツァインの顔面を染めた。
『このまま被害が出るなら、あたしらも覚悟を決めて敵性アザーバイドを駆除せにゃならんッス』
 リベリスタには聞けない、解らない単語を計都は淡々と喋る。
 被害――どんな些細な事件であってもだ。この世界に仇を成すと言うのなら彼等は容赦無く神を切り捨てるのだろう。
『しつこいッスよ、あたしらアークは』
『箱舟か……鬼の事件は、大変であったな……』
 よろり、ふらりと前へ傾いた白狐。その前方に見える計都の姿。白狐に攻撃する訳でも無く、ただ、子供達を護る位置に立つ巫女。
 彼女はウィンクしながら、人差し指を唇へ当てた。
『ちょいと悪さを自重するってトコで、落としどころにしないッスか?』
 しかし、しかし。
 子供を――もしかしたら死者が出ていたかもしれない事を仕出かした事くらいは、断罪しても許されるだろう。
 振り返り、ツァインへ宝刀の刃が噛みつこうとしていた。しかし、銃声がひとつ響いた瞬間に宝刀は白狐の手から弾かれて、氷塗れになりながら宙を舞って鳥居のひとつに刺さって静止した。
「子供は日が暮れたら家に帰るんだ。一緒に遊ぶならそれ位覚えておけ」
『……ちぇ』
 福松の、精密な一撃であった。雑魚を蹴散らし、幾度と宝刀へとちょっかいをかけてついにその宝刀は神の手を離れた。
 ――今こそ。
 長い夜は戦闘音と共に流れていたが、それを終わらす鐘の音が近い。
「ураааааа!!」
 ――アンドレイの咆哮だ。
 まるで止まらない彼の好戦的なまでの戦う意思。その背に子供を護るという約束を背負って、彼の鉾は攻撃と言う名の最大の防御を全うする。
『怖い、って思う事も、もしかしたら初めてかもしれない』
 闇夜に響いた咆哮が消える時――白狐の頭部が首から離れて遠くへと飛んだ。


 まるでテレビのチャンネルを変えた時の様に、あっさりと。
 一瞬だけ真っ暗になったと思えば、リベリスタと子供達は千本鳥居への入口となった元の鳥居の前に立っていた。
「此処、現実……か?」
「だと思うッス。多分、陣地作成中に術者が戦闘不能になったあんな感じだと思うッス」
 雪佳はまだ幻想の中なのかと周囲を見回し、計都は冷静な判断を下す。
 そう、此処は現実。天の高い所で月と満点の星が帰還を見守っていた。ふと、背後から声がする。
『長く生きてても、首を刎ねられる事も無かったんだよね。無礼講無礼講、楽しい宴だったよ?』
「うわ!? 居た!?」
『術から弾き飛ばされたからね、一緒に出てきた』
 小烏の背後から白狐は顔を出した。その首、胴体に繋がっている。多分……フェイト使用というやつだろう。
「なんだ、死んでナカッタノカ。ナラ、テメェハ普通の遊びを体験シテコイ。多分アアイウ馬鹿らしい遊びヨリャ楽しいと思うゾ」
『君の命令はつくづく的を得るからやだ』
「クク、ツーカココントコ現れる九尾ハマトモッポイノイネーンダロウナァ」
『君もまともじゃないでしょ』
 黒狐と金狐の視線に火花が散った。横から小烏はぼそっと。
「あんな空間を作れるなら、今度迷路を作ってみんか? 自分を含め、嬉々として攻略しに来る輩がアークにゃ山といそうなんだがな」
『考えておこう、前向きに』
 どうやら迷路を作る事も可能らしい。そして白狐の横から手が伸びてきた。
「これも何かの縁。もしよければ、友達になってほしいです。えと……狐陽帝?」
『友人? まあ、良いけど……』
 壱和の手が白狐の手を重なる。白狐の長い爪がちくちく手の甲に刺さって痛かったが、まあ爪を切れと言うのもなんとやら。
 一方。
「ほんと? 偉い?」
「ヨク頑張りましたね、エライエライ。勲章モノでゴザイマス」
「やったあ!! 良い子にしてたからお家に帰れるんだね!」
「そうデス。夜道は怖い怖いでゴザイマス。まだバラバラにならないで待っててクダサイ」 
 アンドレイが一人一人丁寧に子供の頭を撫でていく。さて、どういう事情でこの子達を還そうか。その時、白狐の背後の空間が割れたのが福松には見えた。
「還るのか?」
『まあまた会う事もあるだろう、小烏とやらが言っていた三高平に迷路でも作りに、さ』
「へえ、本当に作りに来るんだ」
 小烏の横から携帯がひとつ飛んでいく。計都が投げたものだ。
「携帯あげるから、いつでも電話してくれておっけーッス♪」
 広がる穴へ入っていく白狐は空中に舞うそれを取り、背を向けて、そして穴は消えていく。
 待って、とツァインが白狐の名を呼んだ。
 振り向いた神様――顔を傾け、なんだと一言。
「とにかくよく分からなければ三高平のアークを訪ねてくれよっ、また遊ぼうぜ!」
『ああ、まあ……それなりに楽しかったかと思うよ。また、な』
 子供に危害を加えた神様。頑固で戦闘までしたのに、笑顔を向けられた事に、奇妙な奴等だと白狐は心底思ったに違いない。

 終始、神の気まぐれに付き合わされた闇夜のお話は、彼の帰還と共に終わりへと至った――。

 次の日、神隠しに合っていた子供達が帰ってきたというニュースがテレビでやっていたとか。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした
結果は上記の通りになりましたが、如何でしたでしょうか?
鳥居が沢山連なっている姿を実際見ると凄いですよ
それではまた何処かでお会いしましょう