●しかし忙しい忙しいと仰る割にはいつもとほとんど変わらない 「――という事をクリスティナ中尉に命ぜられてね。まだ試験段階なんだが……やってくれるかい、アウグスト?」 「Ja! 勿論でありますブレーメ曹長殿ッ!」 「いやぁ俺もやる事が色々あってねぇ……後でアルトマイヤー少尉の所にも行かないと。アウグスト、少尉見なかった?」 「Ja! 見ておりませんッ!」 「そうかぁ。まぁ、どっかで『面倒臭い』って昼寝でもしてるんだろ。 ……じゃ、君、そっちはそっちで任せたよ。Sieg Heil Viktoria」 「Ja!! Sieg Heil Viktoria!!」 回想終了。 なので自分は務めを果たす。 「――そういう訳だ。理解したな諸君ッ!?」 「Ja! 了解でありますアウグスト上官殿!」 「よろしいッ! では励もうッ! 我らの鉄十字に栄光あれッ! ジィイイーーークハイル!!!」 「Sieg Heil! Sieg Heil!!」 一斉に地を蹴り突撃開始。作戦開始。栄光あれ。栄光あれ。 ●びりびり 「親衛隊の出現を察知致しましたぞ!」 事務椅子をくるんと回し、集った一同へ『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が言い放った。 親衛隊。それはここ最近に胡乱な気配を落とす、バロックナイツの『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイターが率いる危険な集団だ。 「はい、今回もです。友軍が襲撃を受けております」 メルクリィの言うタイプの事件は他にも起こっていた。何でも、日本のフィクサード主流七派と組んでフォーチュナ能力等の情報提供を受けている結果らしいのだが。 だが、それはさておきだ。 多発している他の事件の様に、今回も励まねばならぬ。仲間の命を救う為に。 「その通り。皆々様に課せられたオーダーは『友軍の救出』ですぞ!」 さて、とメルクリィが一間空ける。その眼差しには何処か、困惑に近いものがあった。 「実はですね、皆々様。今回の件、どうもおかしいのです。今まで観測されたほかの親衛隊とは『明らかに』、おかしい点が一つあるのでございますよ。 なんと、今回の親衛隊は『ノーフェイスを率いています』。しかも完全な指示下にあるようで……どうやったのかは未だ不明。 更に。救出対象の友軍ですが、彼らは任務をこなしていました。その内容は『ノーフェイスの討伐』――もうお気付きかと思いますが、そのノーフェイスと親衛隊が率いているノーフェイスは同タイプ。 つまり罠に嵌められたのですよ。親衛隊が撒いた餌にまんまと引っ掛かってしまった、という訳です」 悔しいですが、と付け加え。それにしても、奇妙だ。奇怪だ。剣呑な気配。 リベリスタ達は表情を引き締める。何はともあれ、戦わねばならぬ。 「どうか御武運を。……行ってらっしゃいませ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月08日(土)22:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●マッハでドーン あらあら、またしても噂の親衛隊! アクセスファンタズムより流れたのは『連絡どころではない』友軍の様子であった。悲鳴と喧騒と。リベリスタ側は随分と大ピンチなようで―― 「落ち着いて、大丈夫。すぐに着くから……もう少しだけ、我慢してて?」 ふわふわ羽を翻し、『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)は彼等に言う。世の為人の為アークの為。今日も大事な命をお届け致しましょう。 「親衛隊な。最近大はしゃぎだな。……全く、いや、好き勝手しやがってるぜ」 コレ以上にはやらせるわけにはいかない。時代錯誤のヤツらに付き合う暇も無い。仲間を助け、敵を思ックソぶん殴ってやろうじゃあないか。『パニッシュメント』神城・涼(BNE001343)は妖艶に笑う。 「ま、いっちょやらせてもらう。……行くぜ?」 「よ、よくわかんないけど……とりあえず、倒せばいいんですね!」 夜の中、疎らな街灯の光の中、仲間と駆けつ『リコール』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)はグッと拳を握り締める。 親衛隊――今回の任務は他の親衛隊絡みの任務とは一味違うようだ。 「罠か。手の込んだことだな」 無表情のまま『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は言う。彼等は救助者狙いだろうか。 「ノーフェイスの『運用』だと……? 舐めた真似をしてくれる!」 次は無いぞ、ファシストめ。眉を吊り牙を剥くのは『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)。ノーフェイス。他の親衛隊と大きく異なる部分。 ユーヌは思考する。何処も彼処も似た様な事を、と。尤も、手頃な労働資源としては適当だろうが―― 「ゴミを撒き散らされても迷惑」 ポイ捨てがいけない事は『常識』だ。常識は大事だ。自重しろ非常識共め。 斯くしてリベリスタ達の視線の先。 鬨の声を上げる黒衣の兵。 不気味に蠢くノーフェイス。 蹂躙されるリベリスタ。 銃声。 「……他所から来てオレ達のシマで好き勝手やってんじゃねぇ、日本では人様の家に入る時は靴を脱ぐんだよボケが!」 一喝。友軍と親衛隊の間に割って入った『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)が大きく声を張り上げた。防御に構えた腕は、その背に護る友軍の代わりに親衛隊が放った弾丸に穿たれて。じわじわ。純白のスーツに赤い花を。 「来たか、方舟ッ!」 新たなリベリスタの到来。続々と割入ってくる彼等。拳をゴキリと鳴らしたアウグストがそれを一瞥する。 「『人様の家』だとッ! なにゆえここが崇高なるアーリア人の領地となる事を喜ばないのかッ!?」 「うるっせぇなぁ~」 吐き捨てる言葉と、ノーフェイスの横っ面をどつき倒す『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)と。 「やる事成す事歪みまくって曲がれぬもクソもねぇだろう、間違った思想理想思念理念信念も? 貫き通しゃある意味派手で結構かぁ?」 燃え盛る拳。搗ち合わせる鬼暴。睨ね付ける眼光。 「ま、ウチの奴等マトにかけてんだ。当然タダならぬ覚悟あんだろうなぁ?」 「Sieg oder tot!」 勝利か死か。それを返答に、親衛隊が一斉に躍り掛かる。 一方で。 「よく生きててくれたわね……嬉しいわ。さぁ、耳を澄ませて……再び溢れる力をイメージして?」 保護した友軍へ、歌う様に優しく呼びかけたスピカがドルチェ・ファンタズマを甘く奏でる。その旋律は癒しの姿となって、傷付いた彼等を優しく包み込んだ。それと同時、軍旗『だった』物を構えて親衛隊の攻撃を受け止めていたベルカも防御教義を展開する。 「さぁ今の内に撤退せよ同志諸君!」 「そーゆーわけだ。御苦労さん。仕事の引継ぎしてやんよ!」 「外に車置いてありますけど走ったほうが早いなら無視してください! それから! 二人抱えるのつらいとか言ったらグーで殴りますからね!」 ベルカに続き、前衛にて敵の進行を阻む火車とヘルマンが声を張り上げる。 だがハイソウデスカと通さないのが親衛隊だった。アウグストが部下に指示を出す。 「逃げる奴を狙えッ!」 しかしそれをそのままにしないのもリベリスタ。 ユーヌは福松へ目配せをした。頷いた彼は、エネミースキャンによって判明した親衛隊のジョブを彼女に伝える。了解した。そして少女は敵を見据えて。 「楽しそうだな? 過去の祭りに縋り付き踊り狂って――慌てる乞食は貰いが少ないぞ? まぁ、お寒い懐事情では宜なるかな」 淡々とアッパーユアハート。神経を逆撫でする毒舌一つ。それは2体のノーフェイスと、レイザータクト・マグメイガスの気を強烈に引き寄せる。 「さて踊ろうか?」 コスプレハロウィンには時季外れだが。そう言った、彼女目掛けて伸びるノーフェイスの腕。腕。鋭く放たれる眼光に、呪いの大鎌。全てが直撃する事はなかったものの、ざくりぐさりとユーヌの肌を切り刻む。尤も、少女の表情が崩れる事など、その薄紅の唇から悲鳴が漏れる事など、一切ないが。 だがその血を代価に。彼女が多くの敵を引き付けた為に。或いは、リベリスタ達が壁となった為に。 「すまない、ありがとう」と言い残し、先発隊のリベリスタは傷付いた仲間を抱えて下がってゆく。ヘルマンが公園外に残した4WDもきっと彼等の撤退の役に立つだろう。一安心。一先ずは、一安心―― ――ここまでは。 轟。何かが耳元を掠めた。或いは、吹き飛ばされた。 通り過ぎたエンジン音。 その正体を、スピカは知っていた―― 「劣等種族がァアーッ!」 拳を構え、背中に取り付けた超力特攻エンジンをドルンと吹かせ。 迫る迫る。殲滅の闘気を纏う拳。 ぐしり。 肉が潰れて骨の砕ける鈍い音。 明らかに『痛い』を連想させる嫌な音。 嗚呼。スピカは眉根を寄せた。 いずれも己の身体から発せられる音だ。 ごほっ。不協和音。吹っ飛ばされて。地面に叩きつけられて転がって。ロリィタ服に砂と血と。 友軍が彼女の名を呼んだ。だから、大丈夫だと答えた。確かに致命的な一撃。だが倒れはしない。『この程度』で。 「……さて、今日は随分と大勢で出迎えてくださるのね。 わたしは『運び屋わたこ』――今日のお仕事は運命に守られた大切な命を運び届ける事」 貴方達には奪わせないわ。恐らく、彼女が先発隊を身を以て護らねば、必ず死者が出ていただろう。バイオリン構え直し、 運び屋が奏でる音色は轟く雷鳴。 迸る。迸る。 「己の体を砲弾代わりにって感じかしら……面白いわね」 スピカが身体を張って護った友軍が撤退してゆくのを後目に、蔵守 さざみ(BNE004240)は魔陣甲で武装した拳を搗ち合わせ魔法陣を展開する。最中に、超直観――観察するのは親衛隊。 「貴方達の好き勝手に付き合ってあげてるんだから、少しは貰える物を貰っておかないとね……情報じゃなくて、命でもいいわよ?」 あのノーフェイスを操る『司令塔』は居るのだろうか? 何か拾える情報は? 注意深く。深く深く。 されど――どうやら彼女の予想は外れたようだ。ノーフェイスが従うのは『親衛隊』の指示。特定の人物ではないらしい事を知る。それに加えて超直観では敵の情報まで詳しく知る事は出来ない。 なら、攻撃だ。戦おう。思うようにすればいい。自分もそうさせてもらうだけ。尤も、好みである接近戦が出来そうにない故に眉を顰めながらではあるが。 「ノーフェイスの耐久は高くねぇようだ! さっさとぶっ潰すぞ!」 「Да,同志福松! 攻勢に出る!」 敵の分析を行っていた福松の声に応えたベルカがчетыреを雄々しく振るった。夜に揺らぐ、革命の赤。урааааと声を張り上げ展開するのは攻撃の陣。 さざみが拳を突き付けた。そして展開されるのは―― 火。 「まーた数押しかい! 死体級の無能っぷりだなぁ!」 轟々。拳を燃やし、火車はノーフェイスを睨ね付ける。 さて。こいつらは自爆するらしいが、炎はそれを誘発するだろうか? するなら上等。手っ取り早いしカスみてぇな火の粉なんざ喰らってやらぁ。 「実践一番よぉ! 試したろうじゃねぇか!」 思いっ切り振り被った。思いっ切り叩き付けた。振り抜く紅蓮。燃え盛る火柱。 メラメラ。肉の焼ける生々しい音。ぱちぱち脂が爆ぜる。斯くして炎が切欠か、それともリベリスタの猛攻に体力を削られたからか、3体のノーフェイスが手近なリベリスタへ――火車、ユーヌ、ヘルマンへとそれぞれ襲い掛かる。それからドカーンだ。肉と内臓と血をを伴う爆風が彼等の肌を抉り焼く。 「ぶはっ。ははァ! 良いぜ なんだろうがどうでも良いぜぇ! 親衛隊諸共灰燼となりやがれぇ!」 殴る。殴る。 痛いとかどうのこうの言っている暇はない。ヘルマンはノーフェイスの自爆に焼かれた身体の痛みをぐっと堪えつつ、蹴撃によって風を生み出しノーフェイスの身体を切り裂いた。 「悪いが俺達の相手をして貰うぜ」 闇に溶け影の中を往く闇鴉の双翼。涼は翳す両掌から爆花のダイスを連続して作り出し、福松は曰く付きの黄金銃オーバーナイト・ミリオネアを敵陣へと突き付けた。 「よく解らんが、つまり喧嘩を売ってるって事だよな? だったら買ってやるよ。言い値でな!!」 バウンティショットスーパースペシャル。つまりバウンティトリプルエス。神速の44マグナム。回る弾倉。銃声の遁走曲。 殴られ蹴られ撃たれ燃やされ、ノーフェイスは早急に数を減らしていった。ベルカが鼻と耳でそれらを観察し、自爆の被害も最小限。だが一方、アッパーユアハートによって敵の集中砲火を浴びていたユーヌが運命を削ってしまう。 被害はそれだけではなかった。ノーフェイスを片付けたリベリスタが親衛隊のホーリーメイガスへ攻撃の矛先を向けた様に、親衛隊もまたリベリスタの回復役へと攻撃を繰り出していた。つまり、スピカへだ。 少女の小さな呻き声。それから、ドサリと倒れる音。バイオリンの甘い音色が戦場から掻き消える。 轟。またエンジン音だ。完全にフリーであるアウグストは文字通り『好き勝手に』暴れ回って猛威を揮っていた。急襲し、さざみを、そして涼のフェイトを拳で奪う。 「諸君はそこの『毒吐き女』を狙え!」 アウグストは『厄介だ』と判断したユーヌへ矛先を向けるよう部下へ指示し。自信は、ホーリーメイガスを護るクロスイージスへ吶喊を仕掛けるヘルマンの前に躍り出た。 「君はアーリア人かッ!? 鬼畜米英かッ!? イワンかサレンダーモンキーかッ!?」 「そんなのこれっぽっちもしらないです! わたくしはヘルマンです!」 交差する。ハイキックと右ストレート。ぐしゃっ。掠めた蹴りと、頭部を強かに打ち据えた拳と。 脳が滅茶苦茶に揺らいで気持ち悪かった。視界がぐしゃぐしゃになって鼻血が出て口の中が切れて痛くて痛くて。それでも。やられたらやり返す。押されたら押し返す! 「人の意志を奪うひとって、だいっきらいです! このまま! ドイツまで! 帰っちゃえ!」 もう一度。『想い出』に薄黒くくすんだ脚甲で武装した脚に力を込めて。繰り出す蹴り。ガードしたアウグストが勢いに押され飛び下がった。 そこへ降る弾丸。ぎらつく銃を持った白い無頼。オレンジの味を舌の上で転がして。 「ご自慢のメリケンサック、オレの拳と勝負と行こうじゃねえか」 来いよ。片手の指先で福松は挑発する。幾らその身体が血に染まろうと、真っ白い『自負心』に『美学』が染まり切る事はない。 「良いだろう、貴様などコテンパンに――」 そこまで言いかけたアウグストの動きが止まる。がくん。絡め捕られた。ユーヌの呪印封縛。 「おや、整備不良か? 敗残兵にはお似合いだな」 ニヒルに笑った。回復も途絶え集中砲火を浴びる今、ユーヌは満身創痍だけれども。いいさ、置き土産だ。冥土の土産だ。存分に掻っ喰らえ駄犬。そして途絶える視界意識。 その間。 「ぶっとべぇー!」 一徹。ヘルマンの闘気を込めた蹴撃にクロスイージスが薙ぎ払われ、親衛隊のホーリーメイガスが無防備な状態となった。 その隙を逃さない。 「抉るぜ」 「去るが良い、ファシストよ!」 無罪であれ純粋であれ斬殺する不可視の刃。涼のイノセントが妖しく煌めき、告死の印を刻みこむ。立て続けにベルカの恐るべき眼光が突き刺さる。血を吹いた兵は睨ね付けた。にっくきにっくき赤い旗を、その持ち主を。 「くそ――イワンめ、憎々しい赤軍め! 下劣なコミュニスト共め!」 「何とでも言え。何であろうと罪無き民衆を狂わせる貴様らよりはうんとマシだ! うんとうんとマシだ!!」 咆哮。牙を剥き。『主義者』では無く『趣味者』である彼女はWWⅡも、親衛隊が経験した世界も、知る由も無い。だが。これだけは言える。奴等は倒さねばならないと。奴等は倒さねばならぬのだと。 「アーリア人とかそういうのどうでもいいから。燃え尽きて頂戴」 怜悧に言い放ったさざみにとって、世界や人身主義理念より己の目的が至上であった。突き付ける拳。組み上げる炎の魔陣。ガントレットの紋様が光を放つ。 拭き上がる火柱――親衛隊の回復手が炎に飲まれ、遂に頽れた。 互いの回復手段はなくなった。ならば後は、殺すか殺されるかの泥試合。削り合い。 上等だ。ここからだ。 地面に叩きつけられた白い無頼が、黒衣の兵へと真っ直ぐ突っ込み唸りを上げて拳を突き出す。 音速の剣に切り裂かれ赤く体を染めながら、鬨の声を張り上げる戦闘官僚は脅威の眼光で迎撃を。 胡乱に転がるダイスが慈悲も無く、攻撃教義を展開する者を爆発と共に粉砕して。 雷の魔法と炎の魔法が交差し、互いの身体を激しく焼き伏せ。 繰り出される強靭な蹴りを、分厚い盾が受け止める堅い音が何度も何度も響き渡った。 「……っげほ」 激戦の真っ只中。火車の腹に突き刺さるアウグストの重い拳。逆流する胃液。ブレる視界。舌打ち一つ、くの字に折れた身体を起こすなり鉄拳ストレート炎付き。 「ウゼェなこの野郎! ランドセル! アッチコッチ方向変えて曲がりまくってんじゃねぇよ!」 「なッ……ラ、ランドセルだとッ!? なんたる愚弄ッ! なんたる愚考ッ! この超力特攻エンジンが、らららランドセルだとオッ!!!」 ユーヌの毒舌には乗らなかったアウグストであったが。予想だにしなかった悪口に歯を剥きだして指を突き付けた。 「フン! 貴様の如き顔の平たい劣等種族には我々崇高なるアーリア人の素晴らしき技術力の機能美が理解できまいッ!」 「言い訳だけが歴史級だなおい! テメェ如き言いなり劣等がオレ退かせるとでも思ってんのか!? 自爆でも何でもいいから黙ってろや貧弱劣等が!」 張り上げる声。構える拳。燃える熱に宿るは『爆』。良い感じに血みどろだ。頭もグラグラして内臓がグズグズして。ああ全く以て最高だね。 「コッチ来い! 業炎撃でぶん殴ってやる!」 「上等ッ! 叩ッ潰してくれようッ!」 ざん。踏み込んだ。拳を振り被って。全身全霊で。 どごぉ。振り抜いた。インパクト。クロスカウンター。顔面に。 「「――~~ッ……!!!」」 じーんと脳に深く響く。びりびり拳に衝撃が伝わる。 一瞬の星。 赤い視界。 「知ってっか? 業炎撃 ってんだ スゲェだろ?」 振り払い。不敵に笑い。運命クソ喰らえ。ドラマがある。火車は血に染まった歯を剥いた。 鼻血を拭ったアウグストは舌打ちをして拳を構える。まだだ。もう一度だ。何度でもだ。負けるぐらいなら死んでしまえと『曹長』は言った。 しかし。 戦場を広く見渡していたベルカは一つの結論を下す。これ以上の戦闘は危険だ。被害を徒に出すだけだ。自分達の任務はあくまでも『仲間リベリスタの救出』。そしてそれは既に達成された。ミイラ盗りがミイラになっては笑えない。 然らば。 「……退くぞ、同志諸君! 任務は既に達成された! これは戦略的撤退である!」 赤い旗を翻し。ベルカは鋭く跳び下がった。ノーフェイスの残骸を持ち帰りたかったが、生憎全て爆発四散してしまっている。仕方ない。飛び散った肉片を集めている暇も無い。 彼女の声にリベリスタは続く。或いは倒れた者を担ぎ、或いは撤退の為に牽制攻撃を行いながら。 「逃がすか、逃がすかッ!」 「また今度な、『曲がれぬ男』! うちに帰ってジャガイモで剥いてやがれ!」 走りださんとしたアウグストへ、バックステップする福松が連続で放つ弾丸。それは真っ直ぐ、アウグストの背中の機構へ。流石に一撃二撃で壊れるような代物ではないが、牽制には十二分だ。 撤退戦と追撃戦の混沌。それでも、リベリスタ達はそこから脱出する。 走って走って。そして。軍靴の音は、もう聞こえない。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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