●げに恐ろしきは無自覚なり ――縁があれば来てみると良い。 ”事件”が終わったあと、出逢った人たちの口から出た言葉にはびっくりしたものだ。 てっきり『来なければ記憶を消す』とか、そういう秘密組織にありがちな脅しがあるもんだと思っていたもので。 「でもまぁ、来ても良いって言われて悪い気はしないよね」 実際のところ、私は余り事態を良く飲み込めていないままなのだ。 彼等の言うところの『神秘』ってものも、自分自身の『力』の事も。 だが、どうやら運命を視るというフォーチュナの力とやらは、そんな私の意思なんて知るかボケといわんばかりに今後も消える事はない。 だから、アーク(?)に行くことを決めるのにそう時間はかからなかった。 「おみやげ何が良いのかなぁ。やっぱり、此処は花の女子高生らしく手作りの料理でも作って持っていけばいいのかな♪ これぞ、女子力ってヤツ?」 『キャー、鈴ヶ森さん素敵ー』とか。 『料理上手だなんて、女子力高いー!』とか、言われちゃったりするんじゃないだろうか。 「ふ、ふふふ……」 み、視える、私には視える! 未来が視える! 我ながら完璧、第一印象はバッチリ。 そんなことを思って料理を始めたのが、小一時間ほど前。 過去や未来を視る力、なんてものをもっていながらこの時私――鈴ヶ森・優衣(nBNE000268)は、まさかこの短い人生、生まれて初めての料理がおそろしい悲劇を招く事を知る事は出来なかったのである……。 ●過去や未来を視る前に、まずは料理の参考書を見るべきである 「集まったわね」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は頭を抱えながら、リベリスタ達をブリーフィングルームに招集した。 「今度、ここに新しいフォーチュナが配属される事になったわ。それだけなら良いのだけど」 そのフォーチュナ、鈴ヶ森・優衣という少女が早速トラブルを引き起こしたというのだ。 「彼女。自分を助けてくれたアークの人たちにお礼のつもりで、手作りの料理を持参してたんだけど――」 その料理というのが、フォーチュナの力で視てしまったイヴが思わず目を逸らす程のおそろしい出来だったようで。 余りの料理の下手さ加減に、犠牲となった食材達が革醒、怨念の塊のE・フォースとして出現してしまったのだという。 ああ、キレちゃったんだな……ってそんなのありかよ、とリベリスタ達が何処か遠い目になった。 「その料理の凄まじさは、例えるなら暗黒街のフィクサード達が要人暗殺に用いるような……いや、本当なの。お願い、ちゃんと聞いて。説明してる私も馬鹿らしくなってきてるのは否定しないから」 ジト目でちゃんと聞いてね、とお願いするイヴちゃん。 そうだね、こんな話を真面目に説明するのは大変だね。 「とにかく、敵『贖罪の使徒』はそんな優衣の料理と同じ、酷い味の食材を相手の口に放り込んで来るわ。食らうと余りの不味さに倒れこみそうになるから、頑張って」 頑張って、て何だ。頑張って、て。とリベリスタ達がツッコミそうになるのを「何?」と視線で遮るイヴ。 「ちなみに、その優衣ちゃんはどうしてるんだ?」 「彼女は、ものすっごい逃げてる。『贖罪の使徒』はとにかく彼女に、自分の料理が如何にヘタクソでどうしようもないかを教えてやりたいみたい」 「いや、教えて貰えよ。それ」 「お願い、貴方達が行かなければ彼女は程なくして、敵の犠牲になってしまう」 思わず突っ込んだリベリスタの言葉を無視して、物凄くシリアスな顔で言うイヴ。 いいからとっととこの事件、早く終わらしてと言わんばかり。 「それじゃあ、お願いね。あ、上手く片付いたら彼女には二度と料理をしないよう、言い聞かせておいて。少なくともアークには絶対に持って来ないでって」 何故か、最後のほうイヤに力が篭っていた気がする。 深くため息をつきながら、リベリスタ達は事件の解決に向かったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月09日(日)22:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●真昼間からか弱い女の子がエリューションに襲われてるのを助けるお話 「まずい料理に命を吹き込む……資料によると彼女は未来を読むフォーチュナのようだけれど」 ボトムで言うレンキンジュツシでもあるのかしら、と首を傾げる『沈黙の音色を奏でし者』ミュールネール・ディネリンド(BNE004368)。 ま、まぁいいわと溜息をつくのは無理もないことだろう。 「作ったお料理が作ったお料理が動き出すんですか……? すごい、僕、そんな事一回も起きたこと無いです。楽しそう……」 『白銀の輝きを宿せし者』ミューネルーネ・ケレブリル(BNE004370)。 何故に君は、そんなに『楽しそう!』とキラッキラとそのキュートな瞳を輝かせてしまったのか。 ミューネルーネさん。その、動かしてる本人、現在進行形でおもいっきり恨まれてます。 「えぇっ!? 作った人を恨んでいる……!? それに、美味しくない!?」 そう、その通り。 「い、行きましょうミュールちゃん! スズガモリさんを助けてあげないと……!」 急にキリッ、と真剣な表情になって隣のミュールネールにそう言うミューネルーネ。 「急にシリアスになったわね。まぁ……うん、行くわよミューネ! これが本当の意味での私達の初舞台!」 えれがんとかつ、すたいりっしゅに決めてやるのだわ、とミュールネールが勢い良く走りだす。 「え、ちょっとミュールちゃん!? 待ってー!?」 慌ててミューネルーネを追いかけるミュールネール。 そう、急がないと危険が危ないのだ。 ●味見、それは最悪の未来を回避する唯一無二にして究極の手段 「なんでしないんだ」 味見、しろよ……! お前、アークにお土産として持ってくるつもりだったんだろ……! だったら……するだろ、普通……! ざわ、ざわ…… ざわ、ざわ…… そんな良く解らない擬音が背後に浮かびそうな、初夏の空の下。 何をどうしたら料理を兵器に変えられるのかと、『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)の脳裏には疑問がそれはもう浮かんでいた。 無自覚に、料理を兵器に変える。 ある意味それは凄まじい才能であり、アークは意図せずしてとんでもない最終兵器を手に入れてしまったのかもしれない。 「味見一つしておけば、大抵それで不味い飯を出す事は回避出来ると思うのだが……」 「本当にな。そもそも、変なアレンジは辞めて、本の通りに作ればこんなメシマズ展開はなかったはずだが……」 ああ、でも考えても仕方ないと『アッシュトゥアッシュ』グレイ・アリア・ディアルト(BNE004441)。 こうして向かっている間にも、彼女は怒りに我を忘れた凶悪なエリューション(棒読み)に襲われているのだ。 心情的には、すっごくエリューション側に味方してやりたかったが、そうもいかない君はリベリスタ。 まぁ、ほうっておくとどんどん被害も増えそうだし。 「いや、まぁ、やるかね」 何か釈然としない表情のまま、グレイが言う。 「そもそも、何でお弁当?」 疑問No.2。 『アカイエカ』鰻川 萵苣(BNE004539)は言う。 どうせお土産持ってくるなら、クッキーとかのお菓子のほうがいいんじゃないかって。 真昼間のランチタイム。 そこへ突然『これ、お土産で持って来ました!』てどんっ!とオフィスに置かれる大量のお弁当。 殆どの人が昼食くらい自分で用意しているだろう。 喜ぶのは、昼食を作る暇がない独身で何時か彼女に手作りのお弁当を持ってきて貰えれば嬉しいな、て感じるような人たちだけかもしれない。 少し脱線したが、要は自前のお弁当を食べきったところでやってくるお弁当(ゲキマズ)である。 なんだそれは、試練か。 「まぁ……持ってきたものは仕方ないとして、捕獲レベルが高そうよね」 もしかしたら、このお弁当は我々リベリスタではなくどこかに居るかもしれない武闘派な美食家達に任せたほうがいいんじゃないだろうかと萵苣は思う。 ●可愛い女の子のお弁当が食べられると聞いてやってきたって? 間違っては居ない。 そんなこんなでリベリスタが辿り着いた三平高駅は酷い有様であった。 「だ、大丈夫ですかー!? 傷は浅いのですよー!」 真っ青な表情でピクピク痙攣している犠牲者であろう人たちのもとに『ピンクの変獣』シィン・アーパーウィル(BNE004479)がかけより声をかける。 「べ、弁当……」 「えっ、なんですか!?」 「ま、マズ……うっ!」 まるで、おぞましい何かを思い出そうとしてSA●値が削りきったかのようにガクリと倒れこむ哀れな犠牲者。 「大丈夫ですかー!? 大丈夫ですかー…………し、死んでる!?」 いいえ、気絶してしまっただけです。 そうですか、よかったーとシィンがホッと溜息をついた。 「な、なんて恐ろしい……これが彼女の料理力(りょうりちから)だというの……!?」 ゴクリ、と生唾を呑み込む『百合色オートマトン』卯月 水華(BNE004521)。 お姉さん、可愛い子の手作り弁当が食べられるって聞いてきたんだけど。 何この惨状、E・フォースが出来てしまうほどの料理の腕前、これほどのものか……恐ろしい、と水華さん。 用意しておいたタバコ型のチョコを口に咥えながら、彼女が見た先には激しい追いかけっこを繰り広げる……この惨状の原因達。 鈴ヶ森・優衣 (nBNE000268)と、E・フォース贖罪の使徒。 「あれが、鈴ヶ森さんと弁当男……もとい贖罪の使徒さんですか」 この依頼のためにわざわざ用意して来たおにぎりを抱え颯爽登場するのは、エプロンよく似あってますね・街多米 生佐目(BNE004013)。 エプロン。 それは女の子が勝負に挑む時に着用するという正装。 真剣な瞳で自分の用意してきたおにぎりを見つめる生佐目さん。 はたして、自分の料理はどのような味がするのか。 どのようなコメントが返ってくるのか。 「期待半分、怖さ半分、嗚呼、私は今青春している、青春ing! 小生春ing!」 青春スイッチ、オン! ぐっと拳を握りしめ、生佐目は叫んだ。 ●私じゃない-いつか、過ちを許せるなら- 鈴ヶ森・優衣(どう見てもこの惨状の原因)は逃げていた。 後方には、凄まじい形相で自分を何故か追いかけてくる良く解らない変態みたいな、何か。 奴は言う。 お前の料理はドヘタクソだと。 どれほどヘタクソかその身で味わって、罪を数え続けろと。 「私そんなにヘタクソじゃない!!!」 あんまりだ。 あんまりすぎる。 花の女子高生が初めて作った手料理なんだぞ、恋人のいない同級生なんかにある日突然渡したらその場で恋が始まるようなものじゃないのか手作り弁当って。 確かに、ちょこっと失敗したかなーとか。 ちょこっとアレンジを加えて女子力を魅せつけてやろうとか。 「……その考えが間違っているのだ! レシピどおりに作ればこんな事になるはずがないだろうが! 考えただけで腹立たしいわ! このドヘタクソが!」 「ま、間違ってないし! っていうか追ってこないで!? ってぎゃあああああ!? なんか良く解らないもの投げないでえええ!?」 投げつけられた名伏しがたい何かを、すんでの所で躱す優衣。 関係ないが、ぎゃあああああってその叫びが、すでに女子力皆無だった。 「止まって、スズガモリさん! あなたもリベリスタなら、これ以上一般の人に被害を広げてはいけないのだわー!」 「はぁ、はぁ、待ってミュールちゃん、早いですー……!」 とうっ! しゅたっ! 自身と贖罪の使徒の間に勢い良く滑り込んで来たミュールネール(と息切れしながら同じく飛び込んできたミューネルーネ)の声に『私のせいじゃないってば!?』と涙目になりながら、優衣が応える。 「なんだ貴様らは! どけっ! 邪魔をするな!」 「――悪いがそうも行かない。これ以上優衣を危険な目に合わせてたまるか」 真剣な瞳で、優衣を庇う様にミュールネール達と共に贖罪の使徒に立ちはだかるのは、禅次郎を始めとしたリベリスタ達! あ、すっごいシリアスな流れになってきたかもしれない。漸くである。 「大丈夫か?」 「あ! え、えっと、こないだの……」 「高橋 禅次郎だ。明の件は無事乗り越えたようでよかった」 禅次郎がもう大丈夫だ、と優衣に軽く微笑んでみせる。 「本当に、立ち直って前向きになれてるみたいでよかったのですよー。憶えてるですかー? 自分はあのときに居た者ですよー」 そういえば、きちんと自己紹介をしていなかったとシィンが優衣へ軽く自己紹介し、ひとまずこの状況を切り抜けましょうと言う。 「……にしても、ホントよっぽどあんたの料理不味かったんだな。あいつ凄く怒ってるじゃねェか……」 怪物に襲われている自分を助けに来てくれたんだ、と目元を熱くさせながらじーんと感動していた優衣がグレイの其の一言で凍りついた。 「ち、違うし、私のせいじゃないし!」 「貴様のせいだ、このドヘタクソのまな板娘がぁッ! 貴様そんなに立派なまな板を持っていながら料理がヘタクソとか、腹立たしい!」 グサァッ。 ものすごい効果音と共に、優衣が何かに射抜かれたようにその場にorz←こんなポーズでうなだれた。 「ま、まな板でもないし……うぅっ」 「胸の大きさと料理の上手さに因果関係はありません! 優衣さん、しっかりして下さい!」 何だか物凄い形相になって、贖罪の使徒を睨みつけた生佐目(特徴:ひんにう)が優衣の手を硬く、硬く、握り締める。 そのただならぬ勢いに、贖罪の使徒が一瞬怯む! 「……貴方の無念は、私が晴らします……!」 そう、その為にわざわざエプロン姿でおにぎりまで持参してきたのだ。 許すまじ、贖罪の使徒。 許すまじ、胸で人を判断するエリューション。 「本当に。貧乳は世界の宝よ? あと料理は愛情……可愛い子の手料理は特上って、言葉を知らないのかしら?」 「胸で人を判断するとか、許せないのですよ! 優衣さん、仇はうってあげるのですよ!」 ぷるん。 激昂する水華(すいか)、シィン両名の胸元にはたわわに実ったすいかが……。 「ぐはっ!?」 瞬間、優衣が謎のダメージを受けた。 駆け寄る仲間達。 「茶番か! はいはい、僕はそういうの付き合わないのですよ?」 唯一人、残された萵苣がタブレット型の魔術書を手に、付き合ってられないと言わんばかりにため息をつく。 料理は愛情、という点に物凄くツッコミを何故か入れたくなる空気だったが、此処で付き合うと危ない気がしたのだ。 そう、わかっていた事だ。 この展開。 シリアスなんて、無かった。 ●色々あったけれど、戦闘です。戦闘、ですよ? 「弁当箱男! これを見なさい!」 颯爽と懐から取り出したるは、生佐目(特徴:殺人料理)さん特製手作りおにぎり! 渾身の想いを込めて、作り上げたおにぎり。 「さぁ、私のおにぎりを味見し……」 「誰がするか! このヘタクソがァッ! 食べる価値すらないわ!」 問答無用で名伏しがたい弁当の具材を発射する贖罪の使徒。 「あっ!」 掲げたおにぎりに、軽く命中。 そのまま真夏のコンクリートに落下したおにぎりは、無残にも飛び散りバラバラ死体としてその生涯を終えてしまった。 突然の悲劇。 声を失う生佐目と、「あ、この流れはやばい」と思わず一歩後退する仲間達。 場の空気が変わった事に気づかないのは、おにぎりを撃ち落とした贖罪の使徒ただ一人。 「腹立たしい! おにぎりに謝れ!」 「あなたが謝りなさい! せっかく作ったのに……!」 ブチ切れた生佐目の身体から漆黒の霧が溢れだし、瞬く間に贖罪の使徒を覆い尽くす。 「ぎゃあああああああ!?」 「私だって、好きでこんな料理の腕になったわけではないのに! 食べる価値すらないって言われるならまだしも……!」 「ええい! だったら、貴様が食わせようとしたおにぎりがどれ程メシマズか思い知らせてくれるわ!」 執念か、気合か、スケフィントンの娘の呪縛を解き放った贖罪の使徒が生佐目やリベリスタ達に向けて名伏しがたい弁当のおかずを次々に発射する。 「何でこっちにまで来るの!?」 自分の方にも当然のように飛んできたモザイクがかかりそうな食材に優衣が恐怖の叫びをあげる。 思わず背中を向けて逃げ出そうとする優衣に。 「大丈夫だ、全て受け止めてやる」 結果はどうあれ、彼奴の作り出すものは元は優衣が(余計な)好意で創り出し(てしまっ)たもの。 「俺が全部食い尽くしてやる……!」 「高橋君!?」 優衣を庇う様に前に立ち、襲い来る食材を華麗にキャッチ! そのまま口の中に放り込んで一口。 「うっ……!?」 その味を、なんと例えようか。 喩えようのない、名伏しがたい味。 余りの出来に走馬灯の様に駆け巡るこれまでの記憶――! ――禅次郎。出されたものは残さず食べろ。 (爺さん……親父……) ああ、解っているさ……! 禅次郎の中で、何かが解き放たれる! こう、種が弾けるような。 「ば、馬鹿な……貴様……なんともないのか!」 フラフラになりながら、クワッと目を見開き料理をバリボリ噛み締め、飲み込む。 「……」 禅次郎は答えない。 実際には、コメントを返すのに気力を使いたくなかったりしていただけだが、その武蔵坊弁慶をも彷彿とさせる勢いに贖罪の使徒が息を呑む。 「むぐん?! なに……この口の中に広がるこの芳醇な味わい……甘くて……苦くて……焦げた臭いでカリカリチクチクカリカリチクチク……ま、まずいじゃなああああい!!」 「……ひうっ?! これ……なんですか……くさすっぱい……美味しくない……全然美味しくないです……!!」 仁王立ちのまま、立ち尽くす禅次郎の傍で同じ様に運悪く口にしてしまったミュールネールとミューネルーネが泣きじゃくりながらエル・レイを反撃にぶっ放す。 巻き起こる爆発。 爆発に巻き込まれる贖罪の使徒の弁当の顔から溢れ出る食材。 「お、おい、こっちに飛んで来……むぐっ!?」 「これは、なんというか……物凄く個性的な味付けになっているわね?」 流れ弾が飛んできたグレイと水華が思い思いの感想を告げる。 「お前も被害者なのかもしれねェ。けれども、こんな糞不味いモノを食わされた八つ当たりだけはさせてもらうぜ!」 この不味さを返せないのが残念でならないとげんなりしながらエル・レイ祭りに参加するようにペインキラーを撃つグレイ。 「せめて作ったのが可愛い子なら良かったんだけど」 怪物相手なら容赦はしない、と水華も容赦のないバウンティショット。 凄まじいリベリスタ達の怒りとか色々な感情が篭った反撃の嵐。 余りの料理の不味さに圧倒されがちだが、所詮はフェーズ1だった贖罪の使徒が本気になったリベリスタ達に敵う筈もなく……。 幾重かの阿鼻叫喚の攻防の果て。 「メ、メシマズある限り……俺は、不滅だぁぁぁぁッ!」 そう言い残して消滅していくまで、時間はさほどかからなかったという。 「ご馳走様。一つだけ言わせて貰うが……味見を……しろ」 仇敵の繰り出す料理を食べ続け、耐えぬいた禅次郎がそう言い残し倒れこんだ。 まっしろになっていた。 清々しいくらい、燃え尽きていた。 こうして、真昼間の駅前を騒がした奇妙な事件は幕を下ろし……下ろし……? 否、最大の問題がそこには残されていたのである。 ●もうちょっとだけ、つづくんじゃよ 「――で、結局どうしてこうなったですか」 戦いが終わり、アークのスタッフがえっさほっさと昏倒してる怪我人達を運んで行くなか。 世間話から上手く事の経緯へと話を誘導するシィンの眼の前には、泣きそうな目で正座させられている今回の事件の元凶がいた。 「成程。味見せず、レシピも見ず、その上でアレンジを加えたですか」 何だかそれ以上の恐ろしい何かがそこにはある気がしたが、聞いてはならない気がした。 「だ、だって……そのほうが、こう、女子力とか高そうに見えるかなって」 「わかります。わかりますよその気持ち」 「わかってくれる!? そうだよね!」 「そこの二人はちょっと黙りなさい」 解るよね、うんうん! と分かり合ったような生佐目と優衣に笑顔で言う萵苣。 笑顔だけど、目がわらってなかった。 萵苣さん、おもむろに優衣の弁当箱からおかずを一つ取り出すとそれを本人の口にぽいっ。 「!?」 瞬間、涙目になってその場で泣きそうになりながら痙攣し始める優衣。 「ゲロまずだろ? お前これを人に食わせようとしてたんだぜ。悪魔か」 泣きながらブンブン首を縦に振る優衣。 「……スズガモリさん、お、お料理は、食材の命をいただいている以上、作り手は責任をもって美味しいお料理に昇華させてあげなくちゃいけないんです」 「今度料理をする時はお姉さんを呼んでね? なんならアークで料理教室とかしてもいいかも」 ミュールネールと水華の言葉にブンブン首を振る優衣。 「それじゃ、話もまとまったし……今回の加害者確保ォッ! アークへ連行!」 「アークへようこそ。 歓迎しよう! 盛大にな!」 まるで政府に捕らえられた宇宙人の様に両腕をがっしりと萵苣とシィンに掴まれながら、優衣は引きずられていったのだった。 ※散らばった料理とかは、スタッフが後で美味しくいただきました。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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