●依頼名『お金の恨みは恐ろしい!』 「楽勝でござるー」 『クノイチフュリエ』リシェナ・ミスカルフォ(nBNE000256)達が受けた任務は『見ると思わずお金を入れたくなる貯金箱』というアーティファクト回収である。 持っていたのも一般人で、通りで突っ立って小銭を稼いでいるという程度の小悪党。革醒者にはアーティファクト効果は及ばず、作戦開始から三十分ほどで終了となった。 「お金の怨念のEフォースとか意地汚かったよねー」 「地味にMアタックが効きました……違うんです! お金がないと名誉が死ぬんです!」 「ま、まぁラーメンでも食いにいこうか。安くてうまい店知ってるんだ」 「「「さんせー」」」 そんな弛緩した空気は、幻想纏いから入ってくる通信により霧散する。 『注意してください! あなた達のチームへの襲撃を予知しました! 『親衛隊』です!』 そして通信を証明するが如く銃声が響き、ホーリーメイガスが倒れる。結界が張ってあるのか、銃声で人が来る気配はない。派手に戦えばいつかは誰かがやってくるだろうが、それまでにこちらを全滅させるつもりのようだ。 最善手は仲間を抱えて包囲網を突破することだが、 「……数が多い……!」 「全滅は時間の問題でござるよ!」 こちらの倍以上の火力で鉛弾が飛んでくる。半分はこちらの足止めもあるのだろうが、うかつに突っ込めば集中砲火は確実だ。 突破口もなく、物量も乏しく、策もない。ならば打開策は一つしかなかった。 ――味方からの援軍。 ●緊急指令 「ポイントCCQ地点付近のリベリスタに緊急連絡です。 『親衛隊』の襲撃を受けているリベリスタチームの救援を願います」 幻想纏いから『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)から聞こえてくるSOSコール。 バロックナイツの一角リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイターの率いる『親衛隊』。それが活発的に動いていることは耳にしていた。 「最優先目的はリベリスタの救出です。そのために『親衛隊』と交戦することになるでしょう。 詳細データは添付してあるファイルを確認してください。 彼等は訓練された軍隊です。攻めるときは攻め、退くときは退くでしょう。皆さんも無理をしないでください」 和泉の通信が終わると同時に、ファイルが幻想纏いに転送されてくる。幻想纏いで仲間達と通信しながら、リベリスタは現地に向かって走る。 ●鉄十字の元に 人は生まれながらにして不平等である。金持ちの子に生まれた子とそうでない子では生活の差が生まれ、親の愛を受けることができるか否かはそれこそ親次第だ。人種によって体格の差が生まれ、運動能力の差が生まれる。 なるほど唯人に全ての不平等をなくすことは不可能かもしれない。 だがしかし、それを可能とするのがアーリアの血統だ。 「優れた血統、優れた育成、優れた財産! 我等アーリア人なら為しえることだ! 優れた血統による人類の統制。優れた遺伝子による世界の統制!」 ヨーゼフ・エーゼルシュタインは叫ぶ。自らの血統を誇示するように。人の世の不平等を嘆き、そしてそれを解決しようと苦悶し、そしてこの結論に至る。 「アーリア人以外の婚姻は認めず、アーリア人以外の出産は許さない! これによりいずれ全ての人類が純潔のアーリア人種になる! これこそがアーリア人による完全なる世界!」 優生学。遺伝子至上主義。 競走馬に良い血統を与える様に、農作物を良質にするように、エーゼルシュタインという男は人類を『改善』しようとしていた。 「軍曹、準備が整いました!」 「では往こう。敵を侮るな。彼等は百戦錬磨の革醒者。その命絶つまで戦い続ける戦士。 だが忘れるな、我々はそれ以上の訓練と教育、そしてアーリアの血統という生まれながらの祝福があることを!」 JA! 一糸乱れぬ敬礼と共に動き出す軍団。 『親衛隊』が動きだす。箱舟殲滅に向けて。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月07日(金)00:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「久しぶりの相手が因縁の相手とはね……」 『甘くて苦い毒林檎』エレーナ・エドラー・シュシュニック(BNE000654)は冷静な表情を保ちながら、その内心は憤っていた。かつてドイツの行ったオーストリア併合により彼女の一族は迫害を受けて亡命することになった。無論ドイツだけが悪いとは言わないが、それでもいい感情はもてない。 「ふん、非常識共が。頭の中まで鉄でできているのだろうな」 淡々と『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が走る。無感情無表情のままアスペルマイヤーを呪符で構成された銃で狙う。打撃ではなく衝撃を込められた弾丸が、アスペルマイヤーを吹き飛ばず。 「……死体斬ってるよりよっぽど気が楽ですね……」 吹き飛ばされたアスペルマイヤーに『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)が迫る。チェロケースから剣を取り出し、アスペルマイヤーに斬りかかった。リンシードの描く弧月の軌跡を、銃剣が受け止める。しばし拮抗し、鉄と鉄が交差する音が響き渡った。 「『親衛隊』というからには相応の年代だと思っていたのだけど、思ったより若い世代もいるのですね」 アスペルマイヤーの姿を見て『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)がそんな感想を抱く。もちろん当時の人間ではないのだろうことは理解できる。シンパかあるいは思想教育か。どちらにしてもロクでもない話だ。 「弱い奴等はいっつもこうだ。もっと弱い奴探しちゃ叩いて調子クレてやがんだ」 拳に炎を宿して『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)が戦場を突き進む。さながら炎の矢。尖角の炎は助けるはずの仲間達を一気に突き抜け、その奥にいる『親衛隊』の陣にまでたどり着く。 「待たせたな」 呆然とする先発組のリベリスタの耳に響く馬の蹄鉄音。その鞍にまたがるのは『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)。威風堂々と背筋を伸ばし、傷ついた彼等を守るように敵の前に立つ様は、まさに王の如く。 「私の手が届く限り簡単に命の火を消させません!」 『手術用手袋』を手にはめて 『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は仲間を庇っているクロスイージスに癒しを与える。戦争とは非情だ。弱っているものを叩くことは戦場では正しい。だが、それをさせないのがホーリーメイガスの努め。 「取り敢えずしばらくは弾き返して向こうの情報とる時間作らないと……!」 同じホーリーメイガスでも『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)は癒すではなく盾となることで味方を助けようとする。ソードミラージュの武技による精神攻撃をもっとも効率よく防げるがゆえの吶喊だ。もっとも、物理的な防御は心許無いのだが。 「曹長、作戦の優先順位を変更します」 「許可する。血と鉄の名の元に、アーリアの栄光をここに示せ!」 エーゼルシュタインとアスペルマイヤーの短い会話。その言葉で兵士達の動きが変わる。弱者をじわじわ追い詰める慎重な動きから、獣を狩る荒々しい鉄血の軍団に。 だがその気迫に押されるリベリスタではない。彼等は破界器を構え、仲間のために戦場を進む。 ● 「どしたぁ王様! 腕鈍ったかぁ!? もっとやれんだろぉ!」 「くくっ……誰に口を利いておるか?」 敵の最奥に飛び込んだ火車と刃紅郎がそんな会話をしながらその破界器を振るう。馬上で『真打・獅子王「煌」』を掲げた刃紅郎が刃に風を纏わせ一気に振り下ろす。愛馬もそれに合わせて重心を移動させ、王の剣を加速させる。大地を蹴る馬の力が鐙から人体に伝達し、刃紅郎の力と技により刃の暴風を生んだ。 その暴風が過ぎ去ると同時、火車がレイピアを持ったソードミラージュに迫る。小指、薬指、中指と人差し指はほぼ同時、そして親指の順に拳を握って力を込める。まるで呼吸をするように拳に火が宿る。幾多の戦いを共にしてきた炎の拳。幾多の戦いを刻んできた肉体は思考よりも先に動き、軍服の胸に紅蓮を叩き込む。 「勝てる相手だけ選んでりゃあ、そりゃ優秀だって勘違いしちまうよなぁ。軍服よぉ?」 火車は歯をむき出しにして笑い、一番偉そうな男を挑発する。 「確かにな。故に感謝するぞ『消せない炎』に『百獣百魔の王』。貴様等ほどのリベリスタを討ったとあらば、わが血統の優秀さの証明になる!」 「血統ごときで王の首を易々と取れると思うな。痴れ者が!」 エーゼルシュタインの言葉を一蹴した刃紅郎。ここより先は言葉ではなく力の領域。激しい戦闘音が響き渡る。 「……おっぱいさん、まだ生きてます?」 「リンシード殿、拙者そういう認識でござるか!?」 アスペルマイヤーと切り結びながら、リンシードがリシェナたちの無事を問いかける。直線的な銃剣の動きを剣で流し、払うような銃座の殴打を身を屈めて避ける。黒のスカートを翻し、踊るように軍服の懐に踊りこむリンシード。剣閃がアスペルマイヤーを強化していた軍神の加護を払いのける。 「仲間への攻撃はさせません」 リセリアが細身の刀身を持つ片手半剣を手に相手を足止めする。囲まれて傷ついた仲間を逃がすように自らを盾にしながら、独特のステップで相手の隙を生み出し攻撃する。相手も同じ剣士だが、練度はリセリアの方が高い。蒼い刀身が流れるように動き、翻るたびに相手の鮮血が舞った。 「リシェナさん、今のうちです!」 その言葉に弾けるようにして彼等は動き出す。傷ついて動けない仲間を抱え、リベリスタが作ってくれた脱出路に。 無論それを逃がす『親衛隊』ではない。だが、 「さて、踊ろうか?」 ユーヌが符を展開する。陰と陽。影と光。二律を制するがインヤンマスター。ユーヌの影が立ち上がる。影は逃げる仲間達の壁となり、あるいは輸送の手助けを行う。影は頑丈とは言いがたいが、それでも傷ついた仲間の盾になるには十分だ。 「脳味噌お花畑に調子に乗られては迷惑だ。熟成たっぷり腐臭が酷いな」 「ちょっと! 舐めてかかってる場合じゃないわよ!」 悪態をつくユーヌをアンナが嗜める。ユーヌは分かってると頷いて意識を戦場に戻した。 「状況的に仕方ないとはいえ、ソミラのブロックするホリメとかちょっと洒落になんないわ……!」 軍刀が二度舞い、アンナの肩に突き刺さる。もとよりアンナは前に出るタイプではない。だが身を張った甲斐は、あったといえよう。逃げる仲間達の足音が少しずつ遠のいて行く。癒しの光で仲間達の傷と拘束を解く。 「なかなか耐えるな。だが――」 エーゼルシュタインが鉄十字を掲げる。血と鉄の演説が親衛隊たちに炎の耐性を与えた。 「アーリア人に敗北を刻むほどはない!」 エーゼルシュタインの周りにいる射手と魔術師が一斉に炎を掲げる。魔炎が親衛隊ごとリベリスタを焼き、同時に業火の弾丸が降り注ぐ。 「仲間ごと、ですか!」 凛子が信じられないという顔で炎から顔を上げた。確かに親衛隊たちは炎への耐性を得ている。だが着弾の衝撃はそのまま彼等を傷つけている。効率的とはいえ医者からすれば信じられない行動だ。炎を払い傷を癒すべく凛子は魔力を集める。魔力を乗せた風がリベリスタたちを癒していく。 「ふん、アーリア人以外の血統などこの世に不要! アーリアの子を産むのなら投降を認めてやってもいいぞ」 「ふざけんな! そんなことできるわけないでしょう!」 「そこの女はそれを認めて軍門に下ったのだがな」 エーゼルシュタインは銃剣を持つ兵長を指差す。 「家族を守るために優良種(アーリア)に身を捧げる健気な精神。それは彼女の四分の一に流れるアーリアの血統の賜物といえよう。 この素晴らしさが理解できないとは所詮劣等種。だが安心したまえ。私は血統で人を差別しない。お前達にもアーリアの支配下で生きる権利があるのだからな」 差別している……と反論しかけて唐突にリベリスタは気づく。エーゼルシュタインの中ではアーリアの血統以外は人間以下の扱いなのだと。 猫や犬を排斥せずペットとして飼うように、純血のアーリア人種以外は『人間』ではない。『人間以下』のカテゴリ内においてはどのような民族であれ差別しない。 優生学。遺伝子至上主義。 競走馬に良い血統を与える様に、農作物を良質にするように、エーゼルシュタインという男は人類を『改善』しようとしていた。 「人間性を排斥した優生学者ね」 エレーナはエーゼルシュタインの『優生学』に身震いする。彼は『アーリア血統X%』という分類で人を分けているのだろう。 「優生学も行き過ぎれば、人を迷わす麻薬のようなものですか」 リセリアは片手半剣を手に狂人を見る目で呟く。事実狂人なのだろう。ただ狂気の方向性が探究心というだけで。 「知ったことか。その頭で優秀な家畜でも作ってろ」 ユーヌがばっさりとエーゼルシュタインの熱を斬って捨てる。他のリベリスタも付き合いきれないとばかりに破界器を構えなおす。どの道彼等と相容れるつもりはないのだ。 襲われていたリベリスタたちの背中が小さくなっていく。あそこまで逃げれば追うのは難しいだろう。救出と言う目的は達したといってもいい。 だがリベリスタの戦意は収まらない。それは仲間を傷つけられた怒りか、あるいは『親衛隊』に対する挑戦か。 血と鉄が激しく交錯する。 ● 『親衛隊』の戦い方は、攻撃的だ。味方を巻き込むことを躊躇しないほどに。 マグメイガスとスターサジタリの炎が戦場を走る。炎の加護がないだけダメージはリベリスタ側が多く受けることになる。 「させません!」 凛子はその炎を払い傷を癒すために力を注ぐ。しかし火力と物量的に完全に払いきるのは難しい。癒す量すら凌駕する炎の侵略。 「……ああもう、戦力充実している連中が賢く立ち回るって本当に厄介ね!」 後ろに下がったがアンナも全力で癒しに回る。二人の回復が尽きれば戦線の維持は難しい。そして全力で癒しに回っている以上、限界は近い。 「……あ……」 その火力の中でエレーナが倒れ伏す。銀の花が折れるにエレーナの体が冷たいアスファルトに転がった。 「どうした、言葉だけかぁ! テメェ等みてぇに言うだけなら、下等なオレでもできらぁ!」 火車が叫ぶ。丹田に力を込め、息を吐き出すと同時に全身に体中に活を入れるように。全身に炎が駆け巡るイメージ。そのイメージを崩さぬように拳を構え、ソードミラージュに殴りかかる。炎に包まれて力尽きる軍服を見下ろし、次の目標へ―― 「なら証明してあげよう」 エーゼルシュタインの放つ糸が、火車と刃紅郎を貫く。 「宮部乃宮!」 「フリだ! よそ見してる余裕はねぇぞ!」 ホーリーメイガスを吹き飛ばした刃紅郎が背中越しに仲間に声をかける。だがけして楽観していいダメージではないことは声の口調から分かる。 「やる事は卑怯というかなんというか……優れた血統とやらが聞いて呆れますね……」 「アークの戦果を考慮しての作戦だ。魔人二人を討ち取った組織を侮るつもりはない」 リンシードが神秘の力を込めて『親衛隊』を挑発すれば、それに応える様にアスペルマイヤーが刃を向ける。その銃剣がきらめくたびに、狙われたリンシードの肌が裂け、血が舞う。 「これで終わりです。グーテ ナハト」 リセリアの蒼の刃が翻る。地面をけると同時に刃が走り、その速度を殺さぬように重心を移動させる。蒼の軌跡が横一線に走り、ぐらりとホーリーメイガスの体が揺れた。リセリアの『よい夢を』という言葉と共に、『親衛隊』は地面に倒れる。 これで三人。リベリスタの疲弊はエレーナ一人だけ。状況は―― 「……まずいな」 ユーヌは天秤の傾きを冷静に感じ取っていた。これで数はリベリスタ七人に対して『親衛隊』は九人。召喚した影人はスターサジタリの炎に焼かれて無と消えている。『親衛隊』のうち一人はリンシードが相手をしているが、それ以外の火力がどこに向くかというと……。 「宮部乃宮さん! 降魔さん!」 「突出したところを狙ってきたか……!」 エーゼルシュタインのいるグループにまで突き進んだ火車と刃紅郎に、刃と銃弾が叩き込まれる。凛子のアンナの癒しを凌駕する暴力が火車と刃紅郎に膝を突かせる。 「やれば出来んじゃねぇか、偉ぇ偉ぇ!」 「この程度で玉座から引き摺り下ろせると思うな!」 運命を燃やし立ち上がる二人。ここからが本番だとばかりに笑みを浮かべ、破界器を突き出す。 「そうでなくては困る。アーリア人の優勢を証明するには、箱舟が相応に強くなければな!」 エーゼルシュタインはその言葉に応じるように笑みを浮かべた。 血と鉄の匂いはさらに濃く戦場に漂う。 ● 「この程度か?」 集中攻撃をそらそうとユーヌが挑発を行い銃口を自らに向ける。しかし元々体力が高いとはいえない彼女は、敵の攻撃を受けて長くは持たない。ある程度の攻撃は回避するが、数十秒で運命を燃やす羽目になる。 「……まだ、です……!」 激しい出血に耐えかねて、アスペルマイヤーを相手していたリンシードが膝を突いた。運命を燃やし剣を杖にして立ち上がる。挑発をしている分手数が消費され、その差が出た形になった。 もっとも『親衛隊』の方も傷は深い。回復手を失い、リベリスタの鋭い一撃に一人、また一人と倒れていく。 そして、決定的な天秤の傾きが訪れる。 「王は屈せぬ……! 朽ちるそのときまで誇りを失わぬが帝王と知れ!」 『親衛隊』の一撃が刃紅郎の防御を打ち砕く。馬上で弾丸を受け、気を失う。鞍から落ちずにいるのは、王の誇りゆえか。 「ガ……ッ!」 そしてリンシードとの抗争の隙を縫って放たれたアスペルマイヤーのエネルギー弾が火車の意識を奪う。歯を食いしばって意識を保とうとするが、崩れ落ちる体を支えることができなかった。 「ようやく倒れたか。劣等種にしては勇猛な動きだった。敬意を表して私自らトドメを刺してやろう」 エーゼルシュタインが懐からナイフを取り出し、倒れている二人に迫る。 「させません!」 そのナイフをリセリアの剣が受け止める。ユーヌと凛子が倒れている二人を抱えて、後ろに下がる。 『親衛隊』からの追撃は、なかった。彼等も余裕があるわけではない。倒れている仲間を回収し、街中に散っていく。 「世界最強の一角の癖にハゲタカみたいな真似するな! 優性が泣くわよ!?」 「その誹謗、今は受けよう」 アンナのセリフに答えるエーゼルシュタイン。 「心に刻むがいい劣等種。我等の血と鉄の行進は始まったばかりなのだ!」 「皆、大丈夫でござるか!?」 しばらくして比較的傷の少なかったリシェナが走ってくる。リベリスタたちは満身創痍といった感じで傷の手当をしていた。 こちらの被害は軽くはないが、『親衛隊』の損害も大きいだろう。部隊の再編には時間がかかるはずだ。無茶をした価値はあっただろう。 「それにしても、ゲリラ戦とは面倒ですね」 傷の手当をしながら凛子が口を開く。任務に出ているところを襲われれば、対応は厄介になる。 「何か目的があるのかしら?」 エレーナが半身を起こしながら言う。 「ふん。卑小なだけだ」 ユーヌはばっさりときって捨てる。他のリベリスタも概ね同じ意見だった。 『我等の血と鉄の行進は始まったばかりなのだ』 エーゼルシュタインの言葉をアンナは心の中で反芻する。狂気の熱が濃いエーゼルシュタインの会話の中で、唯一『まともな熱の』会話だった。 血(兵士)と鉄(武器)の行進。始まったばかり。 つまり、これは始まりなのだ。 箱舟をゲリラで攻めるのは目的ではないのか? それともこの先に何かあるのか? 答えを出すにはパーツが足りない。今は、まだ。 「重傷者、五名。部隊の再編が必要です」 「ふん。所詮は劣等種が混じった兵士達か。兵長共々使えぬものばかりだな」 「……申し訳ありません」 「だがそれを有効に使うのがアーリアの血統だ。箱舟の精鋭相手に善戦できたのも私の采配とこの鉄十字と銃剣のおかげだ」 「JA!」 「部隊再編後、更なる攻勢をかける。ベーレンドルフ少尉の報を待ち、恐山のフォーチュナと接触する。 全ては『祖国』のために!」 「JA!」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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