● 「女と子供は逃がせ! 戦える者は前へ!」 「奴等は何が狙いだっていうんだ!?」 漂う血臭。 耳に届く剣戟の音。 山奥にある小さな山村は、壊滅の危機を迎えていた。 迫り来る敵の数は100を越えるだろうか。 もちろんその目的は略奪であり……、2割にも満たない村の戦士達では歯が立つわけもなく。 ――その日、村は世界から姿を消した。 残されたのは、僅かに垣間見える生活の跡。 『……れ、守れ』 『……んだ、押し返すんだ、何としても』 しかし彼等の戦いは終わってはいなかった。 肉体が滅びようとも、守るべき存在が既にいなくなっていたとしても、そして戦うべき敵がいなかったとしても。 彼等は虚空に刃を振るう。 ● 「守りたい情念の塊……ね」 敵はE・フォースではあるが悪意の感じられない存在だと、桜花 美咲 (nBNE000239)は言う。 それはそうだろう。 迫り来る賊から村を守るために戦い、散った戦士達。 そこにあるのは『防衛』の意思しかなく、望んで自分達から攻撃を仕掛ける連中とはわけが違うからだ。 とはいえ彼等は死して遥かに時間の過ぎ去った今において、その意思を再び現世へと舞い戻らせた。 遥かなる過去に起こった戦いが、まるで今も終わってはいないと言わんばかりに。 「彼等の戦いに、終止符を打ってあげて」 もう戦わなくても良い。 彼等の戦いは終わったのだと、刃を持って告げること。 「戦い散った戦士達に、永久の安寧を――ね」 集まったリベリスタ達に、美咲は託す。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月31日(金)01:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●死して後、貫く想い 風に乗って声が流れる。 敵を恨むような声が、滅びた村の跡に響く。 『侵入を許すな……』 『村を守れ』 『逃げられる者は逃げろ』 声の主は自身が既に死んでいることを知らない。 声の主は守るべき存在が既に滅びている事を知らない。 その声は風に乗り、少し離れた場所まで到達したリベリスタ達にまで届いたようだ。 「死して尚、愛する地を人を護りたいと願われたのでございますね……」 その声を、『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)は決して否定しようとはしなかった。 否、出来ないという部分もあるだろう。 「普段の私達が背負っているものと、普段の私達がそうしている事と同じですね」 大切なものを守りたい、『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)の言うそれこそが自分達リベリスタが戦う理由だからだ。 生きているか、死んでいるかの差はあれども、そう願う気持ちはやはり同じだと彼女達は考える。 それでも、違いはある。 想いは同じであったとしても、既に死した彼等は敵が何なのかを忘れてしまった存在。 「戦士としては鑑かもしれないけど、それで周囲に被害を出しちゃう、というのも考え物ね」 そこに訪れただけで敵と認識される今、『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419)が『困ったものだ』と考えるのも無理の無い話かもしれない。 考え方には共感できる。 一方で、その存在を認めるわけにはいかない。 「……ま、気持ちはわからなくもないし、責めようとは思わないわね。せめて無関係の人を傷つけて後悔させる前に幕引きといきましょう」 「彼らを哀れに思うか尊敬の念を抱くかは、人によって異なるでしょうね」 と沙希の言葉に頷いた『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が言うように、エリューション達への想いは人それぞれ。 モニカ自身は、『哀れむ方だ』と思っている。 (最後まで勇敢に戦ったという古の戦士たちに、敬意を。大切な場所を護りたいという気持ちは、とてもよく分かる) 戦士達の声に耳を傾け、静かに目を閉じた『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)は、彼等がこうした形であれ蘇った理由も、そうまでして戦おうという想いにも共感しているようだ。 (誰かを、何かを身を賭して守ろうというのは素晴らしいことだと思うの。その無念な気持ちは、私には到底解らないけれど) 近くに立つ『尽きせぬ祈り』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)は、そこまでして立ち上がった想いの強さがわからない。 そして、 「守りたい情念の塊ですか。無様で滑稽ですね。守るべき存在がもう無い事にも気付かず、戦いを続けてるんですから」 彼等を『残念な』山田・珍粘(BNE002078)もとい那由他は滑稽だとすら言う。 考え方に共感するも、否定するもそれぞれの自由。 それよりも大事な事は、害を成す存在と化した彼等を殲滅する事なのだから。 『敵だ、敵が来たぞ』 『迎撃準備……!』 声が風に乗って届いた場所から少し歩けば、そこは既にエリューション達が陣取る村跡の前。 「もう君達の戦いは終わってるんだ」 最早、彼等が戦うべき敵も守るべき者も存在しない中、そう告げたのは『双刃飛閃』喜連川 秋火(BNE003597)だ。 敗北と言う結果であれ、彼等の戦いはもう、終わっている。 「さぁ、ボク達が眠らせてやるよ。君達の最後の戦いの相手をしてやる」 故に完全に終わらせるのだと。 終わりを知らずに戦い続けようとする存在に、終わりを迎えさせるのは今だ――。 ●王道戦術 「皆様方の戦いは遥か昔に終わっているのでございます! もう武器を納めて下さいませ!」 全身のエネルギーを防御に特化させたリコルの叫びも、彼等には届かない。届きはしない。 戦いの鏑矢を放つべく弓兵が構え、剣兵が突撃態勢を取り、十字槍もそれに続く攻撃の構えを見せ続けているからだ。 「ふふ、視野狭窄多いに結構! 自己陶酔に酔っぱらった頭のまま、もう一度殺してあげますね?」 その様子に、那由他の口からはとんでもない言葉が飛び出す。 (まあ、所詮は残留思念……当人とは言えはしないでしょうね) 相手がもしも生きた人間だったならば、言葉も代わっていたのだろう。 とはいえ相手は既に死した人々の想念。故にそんな言葉を告げても構わないと彼女は考えていた。 もしかしたら生きていた頃の彼等が相手でも言っていた可能性はあるが、それはその時でなければ判らない話でもある。 「最初は弓からか。王道だな」 ヘンリエッタがそう言うように、エリューション達の戦い方は、合戦で言えば王道ともいえる戦術を駆使していると言えよう。 まずは軽く距離を詰めた弓兵による先制射撃。 『いくぞ、突撃!』 続けて十字槍の率いる剣兵が、迫る敵を薙ぐ。 近代的ではなく古典的な戦い方は、彼等が生きていた時代を知るには良い材料か。 「彼らの想いが具現化しただけあって、相応に手強いな。でも、オレ達だって気持ちの上では負けていない!」 とはいえ矢雨の砲火で誰かが倒れるようなリベリスタ達ではない。吼えるヘンリエッタの言葉に続けと、攻勢に出るリベリスタ達。 「向こうの方が数が多い。数で押されたらさすがに厳しいからな、まず向こうの手数を減らそうか」 エリューション達の前衛は十字槍も加えれば11体であり、その数を減らす必要があると考えたのは秋火だ。 彼女が自身の反応速度を高める傍ら、 「実際、これだけ数が多ければ私の大好きな黒死病を使う機会も有るでしょうし。ふふふ……」 黒さを感じる笑みを浮かべ、那由他は己の攻撃のタイミングを待つ。 「もう戦う必要はないのよ? 馬鹿なんだから。……ゆっくり休ませてあげるわね」 そして静かにそう言ったシュスタイナの放つ炎が、口火を切る。 突撃をかけようとする出鼻を挫くかのように激しく炎が奔り、エリューション達を包んでいく。 「こちらの被害を抑えて戦わないといけませんね……」 自分達の構成を顧みた佐里は、余計に傷つく状況を避けるためにと、剣兵の次の動きを解析しつつ的確に連続攻撃を仕掛けた。 この戦場におけるリベリスタ側に、ホーリーメイガスがいない現実。 シュスタイナが天使の歌を歌う事が出来はするが、彼女が歌わなければならない状況になれば火力に大きな問題が出るだろう。 それを考えた時、プロアデプトである彼女の判断は当然でもあり、そして正しいものだ。 『敵は……どこだ、敵は……お前等だ!』 佐里が狙ったのはこの剣兵の混乱である。 「たとえ倒せなくとも、これなら同士討ちを狙えます!」 数の上の劣勢は、こうする事で多少なりともひっくり返す事が出来るはずだと彼女は考えていた。 結果、その考えの通りに、味方ですら敵と認識する剣兵。 「なるほど、これで少しは楽になるかしら?」 であるなら、その剣兵が混乱している間は放っておいた方が得策だと判断した沙希は、別の剣兵に狙いを定める。 迫り来る剣兵は突撃を主眼においているために、一列に近い状態で突っ込んで来ている部分は彼女にとってとても捌きやすいところでもあった。 「向こうの味方は敵でもあるみたいよ? 私達だけ狙っていて良いのかしら?」 直死の大鎌を手に、沙希が舞う。 一振りごとに周囲の空気すらも切り裂き、巻き込まれた剣兵の体に幾重の刃傷が浮き上がっていく。 その様子は嵐とすら呼べるかもしれない。 『凄まじい気迫。山賊にもこのような輩がいるとはな……』 一気に敵に切り込むはずの剣兵が、逆にやられる姿に十字槍の表情が一瞬変わった――かのようにみえた。 否、実際に変わったのだろう。 「指揮官は私ですよ!」 『……ならば俺が薙ぐか』 わざとらしく自身が指揮官だと名乗るリコルを一瞥し、ただ静かに、心を研ぎ澄ますかのように構えられる槍。 「ボクの動きについてこれるかな?」 目にも留まらない秋火の音速の刃で仲間達が傷つき、あるいは倒れていく中、十字槍の切っ先は一寸たりともぶれる事がない。 「前ばかりに気を取られると、村にいっちゃいますよ?」 『弓兵、牽制を』 さらには突っ込む剣兵の脇をすり抜け、廃村の方へ進もうとする那由他に対しては、弓兵にそう指示を飛ばすくらいには冷静だ。 ――これほどまでに冷静な十字槍が指揮する中、彼等は生前何故敗れてしまったのか? 『……行くぞ』 その理由は100を越える、圧倒的な数の敵に押し流されてしまったからに他ならない。 では、相手の数が同数に近かったらどうなっていたか? 『くだらない賊め、我が槍を受けてみよ!』 その答を出そうと言わんばかりに、構えた十字槍が疾風となり、敵を、リベリスタ達を貫く。 「ここなら、剣兵を全て巻き込めますね、って……っ!』 弓兵を巻き込む事を一旦諦め、剣兵の排除を考えガトリングを放つ直前のモニカを、 「狙い通りではありますが……!」 指揮官だと名乗って注意をひきつけたリコルがその疾風に巻き込まれ、傷口からは血が溢れ出し始める。 パーフェクトガードのおかげでやや傷が浅く済んだリコルではあるものの、十字槍の一撃は彼女の防御に特化させたエネルギーの壁があったとて重さはさほど変わりはしない。 『面倒な防御をするものだ』 それでも彼女が僅かに跳ね返した衝撃に、十字槍もほんの僅かな手傷を負う。 石突で大地を打ち、攻撃を終えた彼はその傷に軽く視線を移した後、すぐさま周囲の戦況を見渡し始めた。 『お前達を入れるわけにはいかん!』 まともに受ければタダでは済まないだろう、全力で刀を振り下ろす剣兵が最初に目に留まった。 「入るつもりはないですけど、その一撃を受けるわけにもいきませんね」 決してその力に逆らわず、閃赤敷設刻印の刃を上手く扱って受け流す佐里は、剣兵と同等か、もしかするとやや彼女のほうが勝っているか。 「……アナタたちもそうだったのよね。村を、みんなを守るためにせいっぱい戦ったのでしょう」 『過去形だな、俺達は今、こうして戦っている!』 現在と過去の違いのせいか会話にズレが生じているが、剣兵の放った疾風の刃をかろうじて避けたシュスタイナの織り成す四色の魔光は、神秘を知らぬままにエリューションと化した彼等にとっては妖術そのもの。 実際のところ妖術なのだが、それはさておき。 『数では勝っているはずだ。しかし相手の力量はこちらよりも上か?』 冷静に見極めた十字槍がポツリと呟く。 「冥土の土産に大奮発で、出し惜しみは一切しませんよ」 勢い良く火を吹いたモニカのガトリングの弾が、3体の剣兵を倒していく。 ばら撒かれた弾丸はさらに他の剣兵や十字槍の体を撃ち抜き、じわりじわりとエリューション達を追い詰めていく。 『冥土の土産か。だが、俺はここで倒れるつもりはない!』 「私は個人的に、戦う事は生きる為に行う事だと思っていますからね。あなた達は過去の時代、既に死んでいるんですよ」 『何を言う、生きているからこうして戦っているんだろう』 遥かな過去、エリューション達が既に死んでいる事を告げたモニカの言葉を一蹴し、十字槍が再び空を切った。 「キミ達の戦はもう終わったんだ、無念に気付けないのならそのままでもいい。だけど、周りを良く見ろ!」 切り結んでいた剣兵を倒したヘンリエッタは、そんな彼に叫ばずにはいられなかったらしい。 もう、守るべき者は存在していない。 残されたのは、枯れ井戸や僅かに残った土壁の跡などの遺物のみ。 「アナタたちの目に映る私たちは、侵略者に見えるのかしらね」 侵略してきた賊達もとうの昔に死んでいるが、シュスタイナの言うように、今こうして戦っている彼女達は彼等にとっては侵略者に見えているのだろう。 「うふふ、この技を受けたら、溶けますよ?」 そんな時、十字槍の後ろから聞こえてきたのは那由他の巻き起こした異界の疫病により苦しむ弓兵達の悲鳴。 恐ろしさを感じるまでの毒に侵された弓兵達の苦しむ顔を眺め、笑みを浮かべる彼女の姿は記憶に残る賊達の浮かべた笑みのそれに近い。 『貴様等、よくも……!』 どんな奇麗事を口にしても。 自分達が既に死んでいるだとか、守るべきものがないだとかを告げたとしても。 今もって耳を貸してはいなかったが、結局は攻めてきた彼女達の本質はこうなのだ――と十字槍は知る。 それが間違った事実だとしても、那由他の笑みがその判断を後押しさせた。 『貴様等のような賊には、何も渡さない! 奪わせない!』 既に剣兵は壊滅し、弓兵達が瓦解するのも時間の問題ではあるだろう。 「つい最近まで人の死を玩具にしていた人達が見たら、喜びそうな光景ですね」 死しても守ろうとするその情念の強さは、モニカの記憶に残る楽団にとっては滑稽な姿に見えていた事だろう。 その彼女の手によって、弓兵も次々に倒されていく姿を見れば、勝敗は決したも同然だ。 だが、負けを認めて槍を捨てるような愚行を十字槍は決してしない。 「十字の槍持つ武人よ、次は君の番だ」 ならば最後まで戦おう。秋火の二刀小太刀が、一瞬の隙を突いて十字槍を襲う。 一刀目は槍に阻まれ、しかし二刀目はその隙間を縫い、深々と。 『お前達は何を奪いたいのだ……! 食料か、金か! そんなものはここにはほとんどない! あるのは小さな幸せだけだ!』 「そんなもの、ボク達は奪わないさ」 奪うのは、守りたいという想念を怨念に変え、蘇った彼等の負の部分だけだと秋火は言った。 「あなた達の気持ちが痛いほど分かる。あなた達にお父さん達を重ねてしまう」 攻め立てる佐里は、奪われる気持ちを十分過ぎるほどに知っている。 奪われる理不尽さを知っている。 命を賭してでも大切なものを守ろうとする姿は、最後に見た両親の姿とまったく同じだ。 「あなた達は守りきれずに死んでしまった。でも、守ろうとした人達はあなた達を恨んでいるでしょうか?」 続けて佐里が言葉を紡ぐ。 「ありがとう、って。守ろうとしてくれてありがとう、って、そう言ってくれるんじゃないでしょうか。あなた達が守りたかった大切な人達は、そう口にしてくれるんじゃないでしょうか」 戦い散った彼等を恨む者など、誰がいようか。 最後まで戦い続けたその姿を見れば、そんな感情が芽生えるはずはないのだと。 「もう全ては遠い時の彼方の出来事……。皆様方はもう休んでもいいのですよ……」 「その想い、オレ達が継いでいくから……!」 リコルの双鉄扇が、十字槍を安息へと導いていく。 ヘンリエッタの言葉に嘘がない事は、刃を交えた今ならばわかる。 『俺達は……何も守れなかった。そんなものを継いだとして、お前達の糧とはならぬ……!』 だからこそ、十字槍は最期の瞬間に彼女達の言葉を受け入れたのだ。 「いいえ。……ちゃんと皆さんは守ってくださいましたよ」 ふと、そんな彼に声がかかる。 「おかげさまで敵は逃げました、村を救っていただきありがとうございました」 それは何時の間にか声も顔も変えた沙希が、村人に扮し、演じる姿。 嘘でも構わない。 最期の時に、彼等に僅かでも救いを。 「だからもう……おやすみください」 告げた沙希の言葉に、小さく『そうか』とだけ返す十字槍。 戦った彼女達は、何も奪う存在ではなかった。 無事を告げた村人と同時に目の前にいるのだから、彼女達は敵ではなかったのだ。 『……後は頼む』 手にした愛槍を佐里に託し、誇り高き戦士は逝く。 残された十字槍に、次代の戦士達への想いを込めて――。 ●継いだ誇り 「まあ気の毒ですが、こうなるのは貴方がただけではないのでご安心下さい」 消えていった戦士達への言葉を風に乗せ、モニカが呟いた。 「この世の物は、大抵の物が最後には必ず滅ぶ宿命からは逃れられませんから」 形あるものはいずれ滅ぶ。 もしかしたら、自分達も未来に彼等のような存在となる可能性だってあるのだと。 「ごめんなさいね。そして、お疲れさま」 「どうか心安らかに。さようなら、異世界の戦士たち」 そしてシュスタイナとヘンリエッタは、散っていった彼等を労い、そして弔う。 隣では秋火も、無言のままに黙祷を捧げていた。 「どれだけ強い思いだろうと過去に囚われて前に進めないのでは、見世物止まりですね」 辛辣な言葉を続けていた那由他は、常に前に進み、未来を見ているからこそ、あの言葉が出たのだろう。 常に前へ。 そして未来へ。 今を生きる彼女達に、立ち止まっている時間はないのだから。 「それにしても、良い演技でしたね」 ふと、リコルがそんな事を口にした。 「別に正義感とかそんなのじゃないわよ。あたしの演技でエリューションを誤魔化せるかやってみたかっただけよ!」 軽く照れたように応えた沙希の演技は、バレている、いないに関わらず十字槍にとっては確かな救いとなったはずだ。 その演技が救いとなったのも、 「私達が、あなた達の分まで背負っていけるから……」 託された十字槍をしっかりと握る佐里の言葉があったからこそ。 「戦士達の魂が愛する方々の魂に迎え入れられますよう。どうか安らかに……」 せめて、彼等に穏やかな安息の時を。 リコルも他のリベリスタ達も、ただそれだけを想い、天を見やる。 受け継いだのは、力の限りに大切なものを守ろうとする強い想い。 託されたのは、過去から未来へ続くその想いの連鎖――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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