●訓練映像 鳴り響くブザー、同時に男達が室内へ駆け込む。 飛び出したマンターゲットに瞬時にトリガーを合わせると、バースト射撃が爆ぜる。 胴体に3発、別の方向で同時に飛び出したターゲットにも他の仲間が銃撃を浴びせ、胸元を貫く。 「クリア」 「クリア」 「クリア、ムーブ!」 次の部屋へ、合図と共にフラッシュバンが投げ込まれ、続けて交差する様に壁際から照準を走らせる。 死角を潰しあい、壁に擦れそうなギリギリの角度で的を捉えればゴム製のナイフを素早く回し、鋭く小さな飛刃を放つ。 火花が飛び散り、倒れる鉄板の的。素早く突入すると周囲を確認、頭上も確認した上で最後の部屋へ進む。 「っ!」 出口から唐突に飛び出すターゲットを片手で押しやる。 しゃがみ、その背後から仲間が反撃を放ち、ターゲットは倒れた。 「トレーニングしゅーりょー!」 唐突に間延びした声が響き、男達は大きく息を吐き出し、肩の力を抜く。 任務が無いときは、こうして基本訓練を繰り返すのも大切な事だ。 ●提案 「――こーいう動きを、お兄ちゃんが皆におしえたいっていってるの」 映像の最後に流れた声の主でもある、『なちゅらる・ぷろふぇっと』ノエル・S・アテニャン(nBNE000223)は集まったリベリスタ達へ振り返る。 ちなみに何時ものセリフ、『せんきょーよほー』は無かったが、代わりに。 『ぶりーふぃんぐ、するよー!』 が、聞けた。 傍には兄の『SW01・Eagle Eye』紳護・S・アテニャン(nBNE000246)もいる。 今の訓練映像は、彼が所属する偵察部隊、スカイウォーカーの訓練の一つらしい。 「最前線に立つ君達に、俺達から技術を授けるというのも変な話だと思うかもしれないが……効率的な技術に関しては誰にも負けるつもりはない。だが、この技術を君達が習得すれば鬼に金棒となるのではないかと思ってな?」 今の映像はCQBと呼ばれる戦闘技術の訓練だ。 近接戦闘と呼ばれるそれは、室内等においてほんの数mの距離で如何に素早く敵を制圧。 場合によっては人質救出を含む戦いになることもある。 「本来は銃が主体、場合によってナイフや格闘術を挟むというものだが、リベリスタは各々武器が違うことが多い。こういった共通した技術を当てはめるのは難しいんだが……こちらのメンバーは大体その手の仕事をしていた人間ばかりだ、それを改良したものを使っている」 しかし、リベリスタにはリベリスタなりのスタイルがあるだろう。 おいそれとそれを使えるかとなれば、首を傾げている者も見える。 「別に常に使ってほしいというわけじゃない、初めて顔合わせした者同士でも、共通した戦闘スタイルを一つ覚えておけば誰とでも連携が直ぐに取れる。緊急時に、何時、誰と戦っても最低限の連携ポテンシャルを出すことが出来る」 誰が次にどの動きをするのか? 誰が誰を援護するのか? いちいち確かめずとも自分達のいる場所、動きで互いが察しあう。 そんな連携の補助にも繋がるらしい。 それにフュリエ達の様に最近戦線に加わった者もいるだろう、練習には丁度いい筈だ。 「それと……俺も人に教えるのは初めてだ。君達に教える事で教えることの教育を施してもらうつもりだ、宜しく頼む」 紳護は早速と、訓練場へと案内を始めた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月06日(木)23:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 五月末日、晴天。 訓練場となるキルハウスに、リベリスタ達が並ぶ。 「よろしくお願いします、アテニャン教官!」 『俺は人のために死ねるか』犬吠埼 守(BNE003268)は気合十分、紳護の方がビクッとする程だ。 「めっちゃテンションあがってきた!」 言葉通りの高まり具合で叫ぶ虚木 蓮司(BNE004489)もそうだが、情熱溢れるものはまだいる。 『正直な話、こういう訓練を密かに待ってたんだ』 『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)や、『白紙』カラモリ アキ(BNE004508)は平穏な世界から唐突に世界の闇へと放り込まれ、戦いに関しては何も知らなかった。 今日は本格的に手取り足取り教えてもらえる、この機会は願ったり叶ったり、戦いから生まれた技術は大きな参考だ。 「さて歩き方だが、素早く反応し、音を極力立てない為に指の付け根で体を支える様に歩く」 早速紳護が実践し、足元を指差す。 「歩幅は気持ち小さめ、だが速く動かす。気をつけるのは足が接地する瞬間だ。爪先、膝、腰、関節で衝撃を押し殺すイメージで足を下ろさないと音が立つ」 その立ち方からライフルを構えて前進すると音は殆ど無く、寧ろ気づくのが難しい。 「まずはこれを習得してもらう。その後は各武器に合わせた構えの訓練に分かれる」 早速と一斉にその構えで歩くのだが、意外と難しい。 重力引っ張られる体重を徐々に下ろすも、気を緩めると結構な音が立つ。 『む、難しいぞコレっ でもここで特殊部隊式のスマートな立ち回り方を覚えれば俺も映画の主人公みたいに無双が出来る日がいつか……!』 思っていた通り、難しい足捌きに四苦八苦する蓮司だが、未来の自分を思い浮かべながら頑張る。 そう、襲い掛かるフィクサードの不意を突き、奇襲攻撃を華麗に決め、反撃するフィクサードの攻撃を鍛え抜かれた体術でかわしながら撃ち抜く無双具合。 『来る……ような気はしないけど頑張ろ!』 なれるかと言われれば首を捻りそうな想像図に直ぐに諦めが出るが、より集中して取り組む。 「難しいな」 晃も思う様に静かな足運びが出来ず、基礎が難問の如く塞ぎ込む。 響く足音が、砂を噛み締める晃の心模様といったところか。 「焦らなくていい、大げさな位の動きからやればいい」 紳護が傍によると、問答を繰り返しながらレクチャーを続ける。 (「つま先から静かに」) 歩くだけなのに額に汗かきながらの一歩、それは砂を鳴らさず羽毛の様に降り立つ。 「それでいい、後は繰り返し、慣れてから早くすればいい」 小さな一歩、だが確かな前進だ。 ● 一方、晃やアキとは逆に、力を得てもこの訓練を望むものもいた。 『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)や『一般的な少年』テュルク・プロメース(BNE004356)がそうだろう。 今は構えと制し方の訓練を受けている。 「体から離してはならぬのでござるか?」 スカイウォーカーの紅一点、SwaEの教授は、ジョニーにとって意外な事実な内容だった。 メインの攻撃手段を脇に押し付けるぐらいに引っ込め、片手は顔の前に構えるという明らかにリーチを消した構えだからだ。 「えぇ、といっても状況によるけどね? 至近距離ならこの方がいいわ」 「デモヨ、切っ先向ケテタ方ガ、仕掛カケルノ早クネーカ?」 スピードファイターの『瞬神光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)が率直な疑問を零す。 他のメンバーも確かにと頷くのが見える。 百聞は一見にしかずと彼女に練習用のゴムナイフを二振り渡すと、SwaEも同じものを一本手に取り、見本の構えを見せる。 「リュミエール、例を見せるから攻撃をお願い。 ただ、全力の速度はやめてね? 私が反応できないから」 ならばと少し速度を抑えて一気に距離を詰めながら素早い突きを繰り出す。 SwaEは眼前に構えた手で軌道を御し、反れた切っ先が流れ、すれ違う様に距離を詰めれば、刃はリュミエールの首筋を捉えた。 「こんな感じね。ちなみに攻撃の手を体に寄せるのは、その手を押さえさせない為。押さえようものなら相手は無理な体制をとらないといけなくなるわ」 CQCを体感し、力の流動技術に表情こそ変わらないが、リュミエールの心の中は驚きに満ちる。 より速く、いなし、切り裂く。彼女の求めていた力に合致していた。 「モット教エテクレ」 勿論と構え方からの教習が始まる。 (「えっと、こういう時なんて言うんだったかしら」) 『黒渦』サタナチア・ベテルエル(BNE004325)の訓練は紳護一人で担当していた。 というのも、彼女のクロスボウを使った事がある者がおらず、武器サイズの事も考え、紳護のポジションに近いという判断故だ。 「お願いします、紳護先生?」 「こちらこそよろしく頼む」 彼女の微笑に堅苦しい挨拶を返してしまうのは相変わらず。 早速と紳護は自分のライフルを手に、構え方をレクチャーし始める。 メモに取りつつ、早速構えを取るサタナチア。 大型のクロスボウは少々おぼつかないが、力学に沿った銃身保持は安定性を感じる。 そのまま歩き方、状況に応じた構えの切り替え方と続け、階段での移動訓練へ。 (「……戦闘って、ただ戦ってるだけじゃないってよく分かるわ」) 照準を上へ向けたまま、足元を見ずに螺旋階段を上がる。 横歩きの移動で回る動きも含めての移動は、ゆっくりとやるのが精一杯だ。 「いいぞ、その意気だ」 紳護が後ろから続き、順調なサタナチアを励ます。 期待に応えんとペースを上げようとするが。 「っひゃわ!?」 階段を踏み外し、素っ頓狂な声と共に後ろへ転倒。 直ぐに紳護は彼女の体を肩に手を添えて支え、受け止める。 「気をつけてくれ? 後ろに仲間がいたら将棋倒しだ」 「え、えぇ、ごめんなさい」 心音が跳ね上がったのは驚きの所為か否か、訓練は続く。 こちらは守、蓮司、アキの三人の研修だ。 OwlEによる正しい構えは銃を握った手をしっかりと伸ばし、添えるように反対の手をあてがい、胴体と腕の三角形に頭を突っ込む。 こうすることで安定した狙いと、頭を引っ込めることで撃ち抜かれるリスクを減らす。 特に腕を伸ばす事は不安定になる要素を感じさせるが、実際は照門を覗くと共に照星が見えたのは驚きだろう。 「教官、盾を組み合わせる場合はどうすればよいでしょうか!」 守が手にしているのは小型の盾、警察庁で近接武器に対する対抗策として考案されたタイプとよく似ている。 「そいつだと正面に構えて腕を回す様にして出すやり方は出来ねぇからな……ライトと一緒に構える感じでやればいいんじゃないか?」 グリップを握った手の甲とライトを握った手の甲を合わせ、手首を交差させる見本の構えを見せた。 アレンジを加えた結果、横向きに傾けられた盾が肱と手元を隠し、鳩尾辺りまでの胸元を覆う構えとなる。 「ついでに突っ込むときはしゃがんで低姿勢になれば味方の壁にもなるし、盾の覆う面積もちょいと増える」 なるほどと納得した様子の守に続き、今度は蓮司が手を上げる。 「俺、二丁拳銃なんっすけどどう変えればいいっすかね?」 「クソ難しいぞ、右目で右のサイトを見ろ、左目は左だぁ。同じターゲットでも同じ場所には撃ち込むなよ? 一発目の穴で貫通して抜けたら無駄だからなぁ」 二つ持つ理由のある狙い方、早速やればわかるが両手で別々のことを考えながらやるとなればぎこちない。 こうして各武器のクリアリングに必要な技術の訓練を重ね、お待ちかねの全体練習が始まろうとしていた。 ● 全体練習が始まり、今取り組んでいるのはスライシング・パイという動きである。 簡単に言えば物陰から徐々に体を乗り出しながら索敵し、角や部屋の外から敵を制圧する戦闘方法だ。 「あの、利き手とは逆の角を曲がる時はどうすればいいですか?」 いち早く、違和感に気づいたのはテュルク。 二対の武器ですら気づいた違和感、それは曲がる方向による違いである。 右利きなら右、左利きなら左と、利き手から壁の向こうに出せるが反対だと違う。 「その場合は、構え方等を鏡移しに入れ替えて行う必要がある」 構えの訓練中、何故か攻守の手を入れ替えさせられて構えを取らされた事があった。 つまり、どちらから来ても同じ動きを出せるようにする必要があり、即ち対応範囲が広がる。 ここは重要とテュルクは構えの時に染み付かせた動作とあわせる。 ぎこちなく不恰好なことも気にしない、只管に愚直なほどに繰り返し、繰り返す。 (「どちら側からでも、自然に出せるようにしないと実戦には活かしきれませんからね」) 今日ばかりは格好に拘っている余裕は無かった。 次の訓練に移り、紳護がホワイトボードに図を書き出しイメージを伝える。 説明と実践を繰り返し、ジョニーは目標であった見る事の難しさを再認識していた。 (「これほど時間が短いと感じさせられるのは初めてで御座るっ!」) 中衛の彼が突入すると、先ずは前にいる守やリュミエールの動きを見て視野の穴を探さねばならない。 勿論、サインやポジションで大体見るべき場所は分かるが、部屋の構造によっては予想外の死角が生まれる。 「ジョニー、家具の裏のターゲットを見落としている。難しいと思うが逃さずチェックしてくれ」 箪笥の陰には無傷のターゲット、実戦なら連携を崩されていることだろう。 「申し訳ない、もう一度で御座る!」 「勿論だ」 部屋を変え、再び練習。 二人が突入した後、守の壁に続きながら数秒の間に死角を探る。 「そこかっ!」 刀身を放ち、梁の上に隠れたターゲットへ直撃させる。 甲高い金属音、人間であれば肺を貫く位置だ。 (「ここは前に出る!」) 晃も遠近両方をこなせるのと持ち前の硬さを活かせる様に中衛として勤めを果たす。 踏み込んだ瞬間、敵の距離を把握し、直ぐに攻撃手段を決める。 今回は敵との距離があと2歩程度、跳躍し距離を詰めれば輝く鉄扇を縦一文字に振り下ろした。 けたたましく倒れるターゲット、クリアリング訓練も順調に進み、残すは試験だけである。 ● 「おい、どうするんだ?」 「しかし、ここで勢いを殺すわけにも」 スカイウォーカーの面々が顔を揃えているのは、試験についてだ。 シチュエーションを考えた上で試験をマンターゲット相手に行ってもらうのだが……リベリスタ達はこれで対人でのテストもいけると活気付く。 「みんなで『優』を目指そうな!」 蓮司の士気高揚の台詞が拍車をかけ、結果、ラストの部屋のみ人を配置する事となった。 シチュエーションはフィクサードが行動を起こそうと集まった廃屋、敵はこちらに気づいていない。 目標は2階にいる主犯格の制圧、人質を取っている為、被害が出ないようにする必要もある。 仮想状況の説明に耳を傾けるリベリスタ達は説明終了と同時に突入プランを練る。 試験開始のブザーが鳴り響き、前衛はリュミエールと守、その後をジョニー、晃、テュルクが固め、後衛にサタナチア、蓮司、アキが続く隊列を組む。 最後の部屋までは順調に進めたが、試験ともあって人が待ち構える部屋はかなり難易度が上がる。 まず部屋が二部屋あること、更に隣接していること。 幸い部屋のサイズは小さい事を作戦前に見たマップから確認済みだ。 そして試験前に相談したこともしっかりと覚えている。 人質がいる方の部屋に守、晃、蓮司、アキが向かい、隣部屋にはリュミエール、テュルク、ジョニー、サタナチアが向かう。 前者は壁を築きながら、変則的な要素を持って制圧。 後者は前衛の素早さと後衛のカバーを活かして、一気に制圧を狙う布陣だ。 隣部屋に取り付いた前衛が最適なポジションを探る。 出来れば開いた出入り口の反対側に一人送りたいところだが、見つかって察知されるのは宜しくない。 ここはモディファイドエントリーという、一方向から部屋の左右を確かめつつ突入するのが最適だろう。 リュミエールは得物を一つ尻尾で保持し、ハンドサインを出す。 二つ指で目を指差し、親指を突き上げる。視野に敵はなし。 3人が頷くと、テュルクは自分を指差し、進行方向まっすぐを握りこぶしを振って指し示す。そちらに突入するということだ。 ジョニーはリュミエールの突入予定のポイントより奥の方をテュルクと同じサインで意思を伝える。 サタナチアはジョニーを指差し、クロスボウを握った手の甲を包む。彼の援護だ。 同じタイミングで人質部屋側もハンドサインで意思疎通を行う。 回りこみ、両サイドに前衛を配置したところで守と晃は互いに交差するように進行方向を示す。 クリスクロスエントリーという、名の通り交差しながら死角を潰しあう突入だ。 アキは晃を、蓮司は守を援護するハンドサインを出し、互いの動きを決めるとアキはリュミエールの方を向く。 サムズアップのサイン、準備OKを送り、頷き返事が返る。 後はタイミング、アキは手首を指で小突き、それからサインの手を高く上げてから指を3つ立てた。 タイミングは三秒、カウントダウン準備を示す指を回すジェスチャー。 そして開始の握りこぶし、3,2,1。 ゼロ、拳は平手になり、チョップの様に振り下ろされ突入が合図された。 同時に突入開始。 隣部屋の方は死角となっていたところへスピードを活かしてリュミエールが壁を回りこむようにして突入する。 出迎えた隊員の正面から切り込み、構えた銃口を守り手のナイフで払いのければ、回りこみながら首元に一閃が刻まれた。 勿論、大怪我防止に刃止めのカバーがついているが、ダメージは大きく体は揺れる。 同時に突撃するテュルクは正面左側に現れた敵に突っ込み、鉄扇で敵のナイフを受け流しながら、体を押し付けるように密着しつつ炎の拳を腹部に叩き込む。 リュミエールとは違い、お手本通りの綺麗なCQCを決めて制圧。 続くジョニーは前衛二人の間に無造作に置かれたコンテナを宙返りしながら飛び越える。 (「やはりそこで御座ったか!」) その影に完全に隠れた敵影、今すぐにでもテュルクの背後を撃とうとしているがそうはさせない。 着地と同時に手甲剣を×の字に振り下ろし、沈黙させる。 残った一人はリュミエールを狙うのだが、回り込みながら斬りつけた事で敵の体を盾に隠れ、反撃を許さない。 しっかりと敵の体が相手に向く様尻尾で調整しながら攻撃していたりと、彼女なりのアレンジが見受けられる。 もたつくその隙を突いて、最後に突入したサタナチアがしっかりと狙い済ました一射を放つ。 吸い込まれるように矢が敵の胸元を直撃し、冷気が動きを束縛していく。 上体を持ち直した3人が動きを封じられた敵に切っ先を向ければ、降参の小さな声が聞こえた。 同時刻、人質部屋。 合図と共に交差しながら晃と守が部屋へと突入する。 守は身を屈めながら突入することで晃の視野を潰さず、且つ、間接部分の被弾面積を下げる。 動く壁となりながらも、柱の影から飛び出した隊員へ素早く胸に二発。 だが壁の脇を狙って別の隊員が散弾銃を構える。 「守、9時方向だ! 俺が撃つ!」 開戦した今、無音の合図は不要だ。 蓮司が短く的確な指示を飛ばし、守は9時方向へ向き直る。 装甲と盾の上を小さな礫が滑り、その影に隠れた蓮司にはダメージは届かない。 蓮司の二連射が火を噴き、腹部にヒット。 スーツ一つでも連携というサポートが十分効いている。 「はぁっ!!」 鉄扇を広げ、生身を覆いながら突撃する晃の相手は槍の使い手。 飛び込みながらの一撃を、守り手の扇で槍を後ろへと流す。 前のめりになった上体へ、軽い足払いを放ち、宙に浮いたところで懇親の重撃を振り下ろした。 その力は隊員の体が地面で跳ねるほどだ。 「投降しなさいっ!」 残った隊員は一人、しかし人質を盾に抱えている。 守の大声は相手を声で制圧と陽動の意味合いもあって無駄ではない。 じりじりとにじり寄る4人、この硬直をアキが崩しに掛かる。 「やめなさい」 仲間には伝達済みの合図、そして向けた銃口を少しだけそっぽにずらし、隊員の脇のほうを一瞥する。 ハンドサインで撹乱を考えていたアキだが、味方の混乱を避ける為、代わりに別の方法に出たのだ。 まるでそこに何かあるようなそぶり、気になった一瞬だけ、隊員の視線が反れた。 二丁拳銃の見せ所、蓮司は武器を握る手と人質を抱える腕の肱を撃つ。 同時の銃声、そして銃が転げ落ちると同時に取り囲み、両手を上げさせる。 「クリア」 アキの現状把握と共に終了のブザーが鳴り響く。 『試験終了、たいしたものだ、全員 優とはな』 ここまでの結果は紳護も予想外であり、無事訓練は幕を閉じるのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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