● 本来はただのガラクタの塊。 そのガラクタも、その気になって組み上げればいくつかの人形となる。 だが組み上げた人間も、過去にそれを見たことがある人間も、この人形が動き始める事など想像がついただろうか? ただのガラクタの塊だったはずだ。 武器のような物を取り付けてそれっぽく見せてはいたものの、殺傷力のある兵器となりはしない。 「あー……宇宙人のオーバーテクノロジー? いや、それにしてはこう技術が凄すぎるっていうか、いやだから宇宙人って事か?」 長らく地方に出張し、放置していた自分の家。 久方振りに帰ってきたその家では、自分が作り上げたガラクタ人形が意思を持って動いていました――。 「……敢えて言おう、ありえんわ! 何が起こったんだ!」 その問いかけに答える者はいない。 答えられる者もいない。 足の代わりに大きな車輪を取り付けた騎士の人形は、右腕のランスと左腕の盾を利用した軽快な戦いを得意とする。 両肩に巨大なキャノン砲を背負い、両腕部にミサイルランチャーを装着した人形は、その見た目の通りに砲撃戦を得意とする。 「そんな設定を妄想して作り上げたんだが……その設定の通りになった本物ってすげぇな」 呟いた彼は、ガラクタを組み上げて人形を作る趣味を持つ。出張した先でもこの趣味を楽しみ、人里から離れた場所にある家を借り続けるくらいの資金も有している。 しかし、こんな状況は予想だにしていなかったことだろう。 「まさかなぁ、家に帰ったら自分の人形に襲われましたってなぁ……!」 乾いた笑いをかき消すかのような砲撃音。 『ギギ……ギィ』 爆炎と煙の立ち込める中、歯車の刻む不気味な音だけが部屋に響く――。 ● 「ガラクタ人形が仮初の命と意思を持つ。夢のような話だけど、現実は多分こんなものね」 しばらく先の未来の話ではあるがと前置いた上で、桜花 美咲 (nBNE000239)は話を先に進めていく。 現われたE・ゴーレムは6体。 騎士タイプが3体と砲撃タイプが3体の構成であり、大きさは人間と殆ど同じ。 「幸いな事に、彼は現時点では未だ出張中。家の周囲には他の民家もないから、存分に戦ってもらって構わないわ」 何がきっかけとなって、ガラクタ人形が意思を持ったのかはわからない。 だがエリューションと化した以上は倒す以外の道は無く、一方で戦闘に入ったとしても何かを守らなければならないとか、そんな不利な条件も存在しない。 純粋に戦える場。 家の持ち主には悪いが、リベリスタ達にとっては腕を磨く絶好の好機だろう。 「と言う事で家の見取り図はこれね。――ところで」 必要なものを手渡した後、軽く咳払いをする美咲。 その視線の先には、『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)の姿があった。 「あなたもいくの?」 「うん。腕試しなら、ボクも頑張ってみようかなと」 少女は今回、進んで戦いを望む。 自身が強くなるため、そして自身の強さを知るために。 「じゃあ、よろしくお願いするよ。ボクも今回はやれる事を頑張るから」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月31日(金)00:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●くず鉄の徘徊する家 「とんだ『おもちゃの行進』ですね」 苦笑いを浮かべ、『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)が千里眼を駆使して家の中を見渡し、ぽつりと呟く。 しばらく家を留守にしていた間に、家の主が人間ではなく『ガラクタ人形』に替わっていた――などという話は、普通に聞けば童話にでもありそうな話に聞こえはする。 「神秘界隈では良くある話ではありますかな。もっと非常識な物が動いたりもする訳ですしのう」 頷いた『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は、今まで出会い、戦ってきた存在を思い返しているようだ。 大半のそういった存在は人に害を成す存在であることが多く。そしてやはり、この新たな家主も侵入者の存在を許さない。 「家の主が不在なのは幸いか。ま、多少壊れるかもしれんが、命が失われるよりはマシだろう」 例え本来の家の持ち主であってもそれは同様で、『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)の言うように家主がいないのは確かに幸いだと言えよう。 「家に帰ると、ガラクタの塊が勝手に動いた挙句に襲ってきた。そりゃ驚く」 そんな『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の言葉は、万華鏡を通して見えた未来の話。 それほどまでに家を乗っ取ったガラクタ人形たちは凶暴であり、心を持たない機械の塊なのである。 この家の地上階に部屋は4つ。 キッチンダイニングと片方の洋室には騎士型。 和室には砲撃型。 そして残る洋室に、騎士型と砲撃型がいると光介が告げた。 「残りの砲撃型は?」 もたらされた情報の最後を求め、『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト(nBNE000259)が問う。 「それがね、廊下に居座っているんですよ」 答えた光介は、面倒なところにいてくれたものだと頬を掻いた。 入り口は玄関ひとつ。窓を破れば侵入場所はいくらでもあるが、家の外からの攻撃だと判断されて地下室にエリューション達が篭ってしまう恐れもある。 「確かに――面倒な位置ですね」 ポンとルーナの肩を叩き言ったのは、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)だ。 「ですが初撃さえやり過ごせば、こちらの狙い通りにはいけるはずです。無事に終わらせましょう、この任務も」 侵入すると同時に、砲弾が飛んでくる可能性は非常に高い。 が、それに耐えれば次が来るまでに目的の部屋に突入するだけの余裕は十分にあると彼女は言う。 「相手がどれほどの強さかにもよるですけど、きっと大丈夫ですよっ」 問題があるとするならば、巴 とよ(BNE004221)の懸念する相手の強さ次第ではあるが、その点についてはリベリスタ達も決して劣ってはいない。 「話は纏まりマシタカナ?」 ここまで沈黙を守っていた『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)が、ゆっくりと口を開く。 得られる情報は既に得られた。注意すべき点も理解できた。 半身半機のジェネラルの思考は、既に『正面から叩き潰す』方向へとシフトしているらしい。 「さぁ戦争でゴザイマス。大胆不敵痛快素敵超常識的、且つ超衝撃的に勝利シマショウ」 アンドレイの脳裏に見えるのは勝利の2文字のみ。 それは他のリベリスタ達も同じであり、敗北を考えずに『勝つ』という姿勢こそが、勝利を手繰り寄せるのだと彼等は知っている。 「最近は親衛隊とやらが暴れ周っているようですが……、普段の仕事の手を抜くわけにはいきませんね。それじゃ、やっちゃいますか」 今現在、リベリスタ達は親衛隊との戦いが始まったばかり。 とはいえこういったエリューションも相手にせねばならず、『スウィートデス』鳳 黎子(BNE003921)はどちらにも手を抜かずに全力で戦う心構えを見せた。 玄関を開ければ、そこはもう戦場――。 ●Junk Warriors 「まずは最初の砲撃、耐えて見せねばならないな」 扉を開けると同時に、シビリズの目は赤く光る砲撃型の目を捉えていた。同時にラグナロクの加護の光を放ったシビリズは、耐える事だけを念頭に置いているようだ。 距離はギリギリで20mといったところか。十分に相手の射程距離に玄関は収められている。 キリキリと砲塔を調整する音が僅かに聞こえた後、放たれる砲弾。 「誘導する必要がアリマスネ」 玄関の扉を隔てた家の外までも響く轟音に、戦いの気配をしっかりと感じたアンドレイが提案するも、 「難しいかもしれないな」 即座にそう判断したのは義衛郎だ。 もしも廊下に陣取っていたのが騎士型だったならば、誘導は出来たかもしれない。 しかし攻撃してきたのは砲撃型であり、その攻撃方法を考えればあまり動いてくるとは考えにくい。 下手に誘導を考えれば、廊下で激戦などと言う目も当てられない事態を招く可能性もあるだろう。 「それなら、一気に行ってしまったほうが得策ですね」 ならばこうしようと言うが早いか、ルーナの手を引いたとよが目的の部屋へと走る。 立ち止まれば的になる事を考えればその判断は正しく、残るリベリスタ達も廊下の砲撃型を無視する形で部屋へと突入するのだった。 「器用に動くものですね」 黎子がそう評するように、キッチンダイニングを動き回る騎士型の動きは軽快で、前情報の通りに避ける事を得意としている事が見て取れる。 「ドッチのロボが優れているか、白黒ハッキリ着けようではゴザイマセヌカ」 見た感じそのままのロボと、メタルフレームの自身のどちらが上か、それは戦って勝った方だとアンドレイは言う。 「それだと、劣っているのはあちら――ということになりますね」 真っ先に騎士型を時を刻んだ氷刃の霧で飲み込んだリセリアにしてみれば、どちらが優れているかなど、結果は既に決まっている話でしかない。 「その車輪、あからさまに脆そうでゴザイマス!」 そしてアンドレイは大胆にも、騎士型の全ての要とも言える車輪に狙いを定めて攻撃を仕掛けていく。 「……悪い判断じゃないね。あれが壊れると、動きは止まるだろうし」 ルーナの言うように、当たれば確実に好結果を残す攻撃であり――そして彼の手にした『断頭将軍』の刃は見事にその車輪に大きな傷跡を残した。 氷像と化しているが故に狙いやすかった部分は否めないが、それでも確実に当てきるところからは彼の技量の高さが伺えるというもの。 「わたし達もいきましょう。ルーナさん、ううんルーナちゃんで良いですか?」 「別に構わないよ」 これは好機だと、とよの魔力を凝縮した大鎌が続けて騎士型を襲う。 会話を交わしたルーナも、周囲すら焼き尽くす炎を呼び出して彼女に続いた。 「あれからまだそんなに経っていないけど……強くなりましたね、ルーナさん。心強い限り」 アークに所属する前からルーナを知るリセリアは、成長した少女の姿に頼もしささえ感じているらしい。 「後ろからは来る気配がない、存分にやろうぜ」 入り口付近で後方からの攻撃に備える義衛郎からの声は、未だかからず。 「さて、ガラクタ相手ですが。新しい技を試すには良い機会ですかな」 もうボロボロの騎士型は、九十九の放った精密射撃に撃ち抜かれ、動きを止めた僅かな後にガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。 最初からガラクタの集まりだった存在が、再び元のガラクタに戻る姿を見た九十九の表情は、仮面の下に隠れて窺い知ることが出来ない。 それでも彼は、新たに得た力の強さを感じているのだろう。 「敵はまだ動きを見せず……ですか」 1体目を倒したにも関わらず、千里眼で再び家を見渡した光介は敵が未だ動きを殆ど見せていない事を仲間達に告げた。 「誘いなのか、単に連携が取れていないのか……それは進んでみないとわからないか」 「……熱がないのが残念ですかのう」 それがエリューション達の戦い方なのかはわからないものの、義衛郎は殿を務める役目を決して忘れはしない。 もしも九十九の熱感知にガラクタ人形が引っかかるようならば、彼が役割を果たす上で大きな助けとはなっただろうが、そこは仕方の無い話ではあるだろう。 「では、次の部屋だな」 まだラグナロクの加護が残っている事を確認し、次の部屋への突入を促すシビリズ。 廊下に陣取る厄介な砲撃型も、廊下を突っ切って一気に移動してしまえば何ら問題はない。 「大丈夫?」 「うん、大丈夫だよ」 年上としてルーナを気遣うとよに、少女は軽く微笑んで返した。 「コノママ、共に勝利致しマショウ。宜しくお願い致しマス」 傍らに立つアンドレイは、奇襲からルーナを守るべく警戒の姿勢を崩そうとしない。 「元がガラクタ人形といえど、油断は出来ないですからね」 リセリアの言うとおり、相手はエリューションなのだ。 一瞬の油断が、想像を絶する被害を生む可能性だってある。 「殿は任せてもらおう。遠慮なく前の敵に打ち込んでくれ」 バックアタックがこの後発生するかどうか、したとしても戦線にどこまで影響するかは義衛郎次第。 彼等は連携を頼りに、次の部屋へと進む。 「サァ戦争を、血沸き肉躍る戦争を!」 「まずは先手を取らせて頂きます!」 新たな戦いにアンドレイがテンションをあげる中、やはり真っ先に仕掛けたのはリセリアだ。 彼女の動きは、軽快さを武器とする騎士型のソレを上回るものであり――突きつけるように打ち込まれた騎兵槍を避ける事など、造作もない事でしかない。 「あまりに正直に突きすぎましたね。それでは……当たりませんよ」 軽く床を蹴り、ステップの反動をも利用して騎士型の懐に飛び込んだリセリアが放つ、時を刻んで作り上げた氷の霧。 その霧が騎士型を凍りつかせれば僥倖ではあったが、それは攻撃についてくるオマケのようなもの。 「流石に凍りませんか……しかし!」 リセリアの視線は騎士型の横。 攻撃の後の隙を突くように接近していた義衛郎を捉えていた。 「後ろからの攻撃がない今は、攻撃しても問題はないよな」 「ええ、まったくその通りです」 天井を蹴って加速した義衛郎の鮪斬は、それなりに硬い手応えを持つ騎士型の装甲を軽々と切り裂き――、 「しかし1対1では、痛みを感じようにも感じられないな」 激しく風を切る音と共に薙いだシビリズの双鉄扇が、傷ついたガラクタ人形のパーツを打ち砕いて本来のガラクタへと戻していく。 本来ならばもっと激しい戦闘になるだろうと、彼も、そして他のリベリスタ達も想像していた事だろう。 だが、敵はあまりに単調な布陣過ぎるのだ。 「まさかこのまま終わり……ってことはないですよね?」 黎子がそんな疑問を口にしたのも最もであり、 「そうみたいです。他のエリューションが移動し始めてますね」 その疑問に応えるかのようにガラクタ人形が動いたと、光介が告げる。 廊下に陣取っていた砲撃型も、和室に佇んでいた騎士型も、その行き先はもう1つの洋室であるらしい。 「最終決戦……そういうことですかな?」 やはり九十九の言うとおり、エリューション達も単体ではやられると感じたのだろうか? 「ならばこちらがそれに乗るのもまた一興。総力戦といこうか」 であるならば、それもまた良し。殿として後ろを警戒する必要が無い分、戦いやすくなったと感じる義衛郎にとっては臨む所の話でもある。 ●くず鉄達の最終決戦 「先手必勝! 全身全霊全膂力全知力を以て粉砕致します、ソレガ小生の礼儀!」 扉を開くと同時に、リベリスタ達がなだれ込んでいく。 アンドレイのいう先手必勝となるかどうかは定かではないが、それでも砲撃型の速度はリベリスタ達全員が上回っているはずだ。 「まずは動きを止めます!」 3度、グラスフォッグの霧を作り上げたリセリアは切り込み隊長としての役割を十全に果たしている。 「敵は前だけだ。後ろを気にする事は無いぜ!」 「一気に気勢を削ぐぞ!」 続いた義衛郎とシビリズの連続攻撃は、騎士型を一瞬にして引き裂きかねない程の威力がある。 だがここまでやられるだけだったエリューション達も、この最後の場でまでやられるだけの存在ではない。 「気をつけてくだされ、車輪がえらく回転してますぞ!」 注意を喚起した九十九の声と、激しく、そして勢い良く回る騎士型の車輪が床を蹴ったのはほぼ同時。 「突っ込んでくる……!?」 「そうはサセマセヌぞ!」 突撃する騎兵槍をその身で受け止めたアンドレイは文字通りの『壁』となり、 「軍人が倒れるナド言語同断! 一刻でも戦争を! 縋り付き泥の様な爆花の様な戦争を!」 戦いを求めるジェネラルは、立ち込める火薬の臭いに高揚を隠し切れない! 「砲撃が来る前に、少しでも削るよ!」 「わかった」 攻撃態勢を整えている砲撃型の姿を見れば、ミサイルなり砲弾なりが飛ぶまでに時間はない。 背合わせに立ったとよとルーナは、ここが全力の出し所だとありったけの魔力を込め、部屋に己が最大の一撃を迸らせていく。 轟音と閃光の轟く中、騎士型がいとも簡単に、そして脆く崩れ落ちていく姿は最早見慣れた光景か。 「さあ、最も不運なのはどれでしょうか」 残る3体の砲撃型はほぼ固まっているおかげで、黎子の周囲を漂う魔力のダイスにとっては格好の餌。 どれにしようかと品定めするダイスが、やがてその中の1体を爆花に飲み込めば、 「小生と戦え、戦え、戦え! お前ノ相手ハこの小生ダ!」 既に脳内を『攻撃のみ』に絞りきったアンドレイが、再び大胆に狙うは砲撃型の砲塔だ。 だが、その一撃は確かに弱点を突くも、砲塔を使用不能にするまでは至らず。 そしてミサイルと砲弾の爆炎が部屋中のあらゆるものを薙ぎ払い、そして後から漂うのは硝煙の匂い。 「術式、迷える羊の博愛!」 3体もの砲撃型による一斉砲撃を食らえば、流石のリベリスタ達も決して無傷とはいかなかった。 が、その攻撃を耐えた光介の息吹がすぐに仲間達の傷を癒し、決して戦線を瓦解させはしない。 運悪くルーナと九十九が動きを止めてしまっていたが、2人を動けるようにするよりも、まずは受けた傷を癒す事に光介は重点を置いたようだ。 「ここからが本番ですよ! ボクも癒しの手は止めません!」 「そうだな、倒させんよ。狙うならば、私をまずは倒してもらおうか」 リベリスタ達にとっても彼の存在は重要なポジションであるため、総力戦となった今、シビリズも攻撃よりも光介を守る事を優先し始めていく。 体力に自信のある者達が、誰一人として仲間を欠けさせまいと守る姿はエリューションにはない戦い方。 火力と連携、相対する双方の勝敗をわけるのは、どちらが先に相手の数を減らすかとなる。 「痛みは須らく闘争の証ッ! ハハハハハ! 素晴らしいな! さぁもっと痛みを寄こすが良い! 然らばそれが私の全力に繋がるのだからな!」 全力で光介を護り続けるシビリズにとって、受ける痛みすらも戦いの糧となっているのだろう。 エリューションが攻撃をすれば、その後にリベリスタが。その後には再びエリューションが。 撃ち合う双方に、手加減の様子はまったく見えない。 しかし勝敗の天秤は、徐々に傾き始めている。 (……いけるですか?) (もちろん) 戦い方の似ているとよとルーナは、目で合図しただけで攻撃を重ねられるだけの連携を見せた。 「どれほど固くとも、そんなに鈍重では避けられないぜ?」 「ついた傷は楔ですかな。打ち砕くのは容易ですぞ」 床から天井まで達するほどの跳躍と共に仕掛けた義衛郎の残した傷は、九十九の精密な射撃を受けてより大きな傷となる。 硬い装甲も、同じ箇所を狙えばその一点は脆くなるというもの。 「……付喪神、という概念がこの国にはありますけど、持ち主の執着の強いこれらもその親戚という事になるのでしょうか」 どうしてこのガラクタ人形が動き始めたかはわからない。 しかし動き始めて神秘世界の住人となった以上、討たねばならないとリセリアの剣が華麗に舞う。 1体、2体――と崩れ落ちていくガラクタ人形。 「最後まで残ったあなたは、もっとも不運な存在ですね」 次々にガラクタ人形が崩れ落ちていく中、最後に残った砲撃型を前に黎子が軽やかにステップを踏む。 右と思えば左へ、左かと思えば後ろへ。 「捉えられないですか? 隙だらけですよ!」 ステップと同時に斬りつける刃が、1つ、また1つと装甲に傷をつけていく。 「最後まで気は抜きません。さぁ……皆さん!」 再び砲撃型が攻撃を仕掛けるも、与えた傷は光介の存在がある限り決定打となりはしない。 度重なる攻撃を受け、ギシギシと軋みながらそれでも動く砲撃型。 「トドメは俺がやらせてもらうぜ」 それは最後の抵抗だったのだろうが、硬い装甲の隙間を縫うように義衛郎の刃が何度も突き立てられた時、最後の1体もついにその動きを止めた。 先程まで轟いていた戦いの轟音は消え、静寂が家を包み込む。 鼻先をくすぐる硝煙の臭いは、今しばらくは家の中を漂う事だろう。 「……少しは強くなったのかな、ボク」 「強さを知るのはいい事だ。ただ、深みには嵌らぬ様に、な」 ぽつりと呟いたルーナは、勝利した事でそれなりの自信はついたらしい。 しかしシビリズは言う。 その強さに溺れてはいけないと。 「うん、わかったよ」 少女は素直に頷き、答えた。 得た力は何のためのものなのか? その力で何が出来るのか? 力を求める少女には、まだまだ覚える事がたくさんあるようだ――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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