● 『親衛隊』のフェヒター少尉は帽子を直しながら、部下の前に姿を現わした。 背に巨大な長剣を背負い、左手にマシンピストルを構えた彼の姿は歴戦の戦士そのものだ。 既に齢80を超えた老人であるにも拘らず、革醒によって保たれた若さによって、屈強な肉体は健在。短く切り揃えた金髪は、彼の実直な性格を表している。 「状況の報告を」 「ヤー、現在狐を狩場に追い込んだ所です。程無く、狩りは終わるかと」 フェヒターの言葉に副官のロッテもまた短く返す。作戦時に無駄な会話を行う性格ではないのだ。 彼らはこの地を守っているリベリスタ組織「ビーツ」の殲滅にやって来た。「ビーツ」はアークの協力組織で「楽団」との戦いにも活躍があった。しかし、今や猟犬の群れによって、壊滅の危機に追い込まれていた。 「ときに少尉。回復スキルは必要でしょうか?」 ロッテが副官としてフェヒターの状態を確認する。リーダーに問題があってはいけないのだから。しかし、別働隊として動いていた「ビーツ」のリベリスタと交戦を終えてきたフィクサードは顔色も変えずに答える。 「不要だ。『アイゼン・ファルケ』だけで事は足りた」 フェヒターの言葉を聞いて、副冠たる女性は一礼すると一歩下がった。 そこでぽつりとフェヒターは呟いた。 「アーク、か」 「は? 如何なさいましたか?」 ロッテはフェヒターに聞き返す。今上がった名前は、これから戦うべき敵の名前だったからだ。 「アークはどれ程の相手か、とな。向かうぞ」 フェヒターは歩き始めると、わずかばかり唇を吊り上げて見せた。 ● すっかり初夏らしい風が流れるようになったm5月のとある日、リベリスタ達はアーク本部のブリーフィングルームに集まっていた。そして、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は、メンバーが揃っていることを確認すると、依頼の説明を始めた。 「これで全員だな。あんたらにお願いしたいのは、ちょっと厄介な件になる。噂は聞いているんじゃないのか? 『親衛隊』が国内で動き始めた」 守生の言葉に表情を引き締めるリベリスタ達。 その名は聞いたことがあった。『親衛隊』とは『厳かな歪夜十三使徒』の1人である『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター率いるフィクサード集団の通称だ。戦闘力、その組織力という面では極めて危険な集団であると言われている。既に国内に入っていたと聞いていたが、いよいよ行動に出たということか。 「連中は『ビーツ』っていう、リベリスタチームを襲撃している。既に半ば壊滅状態だが……残っている奴だけでも助けて欲しい」 守生が端末を操作すると、スクリーンに地図が表示される。「ビーツ」の構成員は既に半数が倒れている。残った5名がアジトの一角に潜んでいるのだとか。 「付近の道路に逃走用の車両を用意する。そこに彼らが逃げる時間を稼いでほしい。もちろん、『親衛隊』の連中を倒すことが出来るのがベストなんだろうが、それは簡単じゃないと思っておいてくれ」 向こうに相応の準備があるとは言え、逃げた先まで追跡する用意は無いようだ。 リベリスタ達が向かえば、ちょうど『親衛隊』が『ビーツ』を発見した所に到着するだろう。 『親衛隊』には『楽団』のような独自の戦闘体系は無い。しかし、非常に実戦的な部隊なので、連携や効率的な攻撃に優れている。真っ向から戦って勝てるかは分からないが、目的を果たせないと分かればあっさり撤退するだろう。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月31日(金)00:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● しとしとと雨が降り出した。 どんよりと曇った空のせいで、全てが灰色に見える。 そんな中、時代錯誤な軍服に身を包んだ男女が、山小屋を目指して歩を進めていた。 「どうやら、逃げ込んだ先はあの建物ですね」 「あぁ。しかし……どうやら、『神の目』とやらは伊達で無いようだ」 軍服のリーダー、フェヒターは楽しげに口元を歪める。その視線の先で、『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)は、山小屋に潜んでいたリベリスタ達に叫ぶ。 「大丈夫です、ここから先はワタシたちにお任せください」 「済まない……助かった」 アークが増援に現れたのだ。 その姿を見たビーツの面々は、海依音の促すままに駆け出す。 「嫌だわ、死亡フラグみたいじゃないですか」 そして、彼らを見送った海依音は、やって来たフェヒター率いる『親衛隊』に悪戯っぽく流し目を送る。 顔は笑っているが、その目は笑っていない。 「ごきげんよう……グーテンアーベントと言ったほうがよろしくて?」 「卿らの好きなように話すと良い。現地の言葉を調べておく程度のことはしてある」 獲物を狙う鷹の目で睨み返すフェヒター。 そんな『親衛隊』に鋭く詰問を仕掛けたのは、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)だ。 体を半身に構え、油断の無い仕草で「同国人」を詰問する。 『この国へ何をしに来たのです。此処は貴方達の戦場ではありません』 『売国奴か。知れたことだろう。我らの在るべき世界を取り戻す、その一歩を踏み出すためだ』 フェヒターの返答にリセリアは確信し、唇を噛む。 思っていた通りだ。 彼らの時は紛れも無く、「あの戦争」から止まっている。旧大戦の生き残りたる『親衛隊』。実際に相対するとなると、なんとも複雑な物だ。 「やれやれ、あの戦争の亡霊が動き出したか。なんでこう、WW2で同盟結んでた国のフィクサードは面倒くさいのやら」 『狂奔する黒き風車は標となりて』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)は肩を竦める。拍子に首筋へ雨が入り込んで、ちょっと冷たい。 日本の主流七派然り、イタリアの『楽団』然り。思想・戦闘能力、いずれを取っても厄介極まりない存在だ。『親衛隊』に関しても同じことが言えるのは、言わずもがなであろう。 「『楽団』の次は『親衛隊』とか、もういい加減にしてください……」 「そもそもこの人達何しに来たのさ、イェェガァァ!」 『Dreamer』神谷・小夜(BNE001462)はうんざりした表情を浮かべ、『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)は悲鳴を上げる。 『極東の空白地帯』と呼ばれる日本の神秘情勢は、数年前までは「平和」と呼んでも差し支えの無い状況ではあった。国内のフィクサードは自分達のいる地盤が必要以上に荒廃するのを恐れ、一定以上の争いを行わない協定を結んでいたからだ。 しかし、ジャック・ザ・リッパーの来日を皮切りに平和は破られてしまった。 先日の『楽団』の攻撃は、都市に大きな被害を与えた。 そして、『親衛隊』の登場である。 真の狙いは未だに憶測の域を出ないが、少なくともリベリスタと利害が一致していないのは明らかだ。だからこそ彼らは国内リベリスタを積極的に狙っているのであろうし、アークの構成員が狙われたという話も流れてきている。 「ま、面倒くさいのはこれらに限ったことじゃないか。とりあえずとっととお帰り願いましょ」 剣と言うには巨大すぎる漆黒の鉈を風車のように振り回してフランシスカは構える。その手に握られた得物は骨のようでありながら、この世界に存在するどんな生き物の骨にも思えなかった。 『ルミナスエッジ』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)も、瞑目していた瞼を開けると、刀をすらりと抜き放つ。 刃は一瞬、清冽な光を放つ。ほんのわずかの間だが、灰色の世界が茜色の光に照らされる。フェヒターはほうと息を漏らした。 その中で、当の本人であるセラフィーナは、敵の一挙動も見逃さない姿勢だ。 セラフィーナは思い出す、冬の三ツ池公園で出会った『倫敦で二番目に危険な男』セバスチャン・モランのことを。かろうじて撤退させることには成功したものの、アレは誰が死んでもおかしくない激戦だった。そして、目の前にいる猟犬たちも『倫敦で二番目に危険な男』と同じく、バロックナイツに従う直属のフィクサードなのだ。 (だけど……敵が強くても、そこに助けられる命があるなら助けてみせる。ビーツの皆を救ってみせるよ!) 幼い心を覚悟で満たし、少女は迫り来る『世界』へと刃を振り上げる。 「手負いの狐は云々、ってのはちょい無理か。ま、精々頑張らせてもらいましょう」 眼鏡が雨に濡れて視界を邪魔するのが鬱陶しい。 そんなことを思いながら、『群体筆頭』阿野・弐升(BNE001158)は気だるげに、歪な形をした刃を猟犬たちへと向ける。 (親衛隊、ね。奴さんらとは初対面だし楽しめるといいのだけれども) 退屈しのぎとしては上々過ぎる相手だろう。 まとめて、薙ぎ払ってやる。 そうして居並ぶアークのリベリスタ達を前に、わずかに散開していた『親衛隊』のフィクサード達は目配せをすると、位置取りを変えようとする。 そこへ、牽制するかのように『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は弾丸を撃ち込み、足止めを行う。 「悪しき十字の徒、忌まわしき時代の亡霊よ。全ての人間は神の下平等であり、差別や戦争を望むなど、悪魔の思想です」 「神、か。笑わせてくれる。所詮、正義は時代に応じて、形を変えるものだ。今は卿の言う通りだとしても、間もなく変わる……いや、変えてみせる」 リリの言葉に対して、フィクサードの言葉は頑なだ。 元より挑発。こんなことで、彼らが数十年にわたって抱えてきた怨念を払うことが出来る等とは思っていない。この場でもっとも早い手段はこれだ。 「良いでしょう。ならば、その狂った思想を破壊し、我が十字の正義を示します」 二丁の拳銃を構えるリリ。 それが合図となって、「親衛隊」も手に取った刃や銃をリベリスタ達に向けてくる。 そして、リリはいつものように、「祈り」を始めた。 「さあ、『お祈り』を始めましょう」 両手の教えと胸の十字、自身の誇りの全てを賭けて。 ● 友軍が逃げ切るまで、ほんの少しの時間を稼げばよい。 言うだけなら、これ程簡単な話は無い。 しかし、リベリスタ達が「予想した通り」に、それは大変な困難を伴った。 『親衛隊』のフィクサード達の練度は極めて高い。連携の取れた戦闘行動と相まって、集団として高い戦闘力を見せてくる。 (ま、そう来ますよね。下手に突っ込みすぎれば即落ちなので致し方なし、と) 後衛で支援を行うフィクサードに狙いを定めた弐升に対して、剣と盾を構えたフィクサードが立ち塞がる。向こうも向こうでチームとして、明確な役割分担が出来ているということだ。 それが分かっているから、弐升は走る勢いを利用して振り回していたギロチンアックスに、込めた力を……外に向かって開放した。 「アルティメット実践編、ってか。いい的だ」 弐升の持つ巨大な武器から、さらに巨大なエネルギー弾が飛び出す。 それは後ろに控えているフィクサードにぶち当たる。とっさにカバー役が現れている。 どうせ短期決戦で、自分が止まったら終わりなことだって百も承知。だからフルスロットル、消耗を気にせずガンガン行くだけだ。 (最低限の目的は果たせたようですね) チラッとリセリアが戦場の外に目をやる。どうやら、フィクサード達はこの場に戦力を集中させたようだ。変に戦力を分散させて『ビーツ』を追うよりも、この場でアークのリベリスタに戦力を集中させた方が良いと判断したのだろう。 しかし、そうなればリベリスタにとっても望むところ。目の前の敵だけに集中すれば良いのだ。相手が狩人だと言うのならば、獲物が黙ってばかりではない所を見せてやろう。 フランシスカが黒き風車、アヴァラブレイカーを振り上げる。くるくると彼女の生命力を風として回る風車は、周囲に暗黒の瘴気を撒き散らしていく。 「猟犬? はっ! 逆に狩り取ってやるよ!」 「等しく降り注げ、天の裁きよ」 リリは両手に握った二丁拳銃を天に振り上げた。弾丸は業火へと変じ、銃に刻まれた名の通りに裁きの炎がフィクサード達へと降り注ぐ。 正しき十字の剣であり盾である彼女にとって、天上に居る万軍の主以外に恐れるものなどありはしない。 そして、光と闇が戦場に激しく交差する間隙を縫うように、『禍を斬る緋き剣』衣通姫・霧音(BNE004298)は大地を駆ける。その身を竜巻に変えて、荒々しく猟犬に斬撃を与えて行った。 「次なる連中はこいつらって訳ね」 剣を合わせながら霧音は冷静に相手を測る。 確かに数は楽団と比べて遥かに劣る。しかし、統率力と個々の戦闘力は比べ物にならない。何よりも、後衛からの射撃攻撃に徹するフェヒターの動きも不気味だ。 だが、そんな状況にあっても言えることが1つある。 「アークはそこまでヤワじゃないって教えましょう」 「どうしました? 親衛隊と言ってもその程度ですか。これなら、楽団のほうがずっと強敵でしたね」 凍気に覆われた刀を手に、セラフィーナがフィクサード達を挑発する。 半分は嘘じゃない。 相手は同じ人間であり、その手を読むことは不可能では無い。このまま、上手く動きを封じ続けることが出来るのなら、「ビーツ」が逃げ切る時間は稼げそうだ。 そう思った時だった。 「あの気取ったイタリア人共と同じに思われるのは心外だな」 フェヒターがマシンピストルを構える。 鋼の銃身は雨の中であるにも拘らず、凶悪且つ鈍い輝きを見せた。 「このまま逃げられても困る。ここは一気に行かせてもらおうか」 「皆さん、気を付けて……!」 淡々とした言葉と共に、フェヒターは引き金を引いた。 刹那、弾丸が戦場を駆け廻る。 弾丸の嵐という表現がふさわしい。 蜂の襲撃を思わせるが、それ以上の勢いだ。 鷹の強襲と言うのがふさわしい。 そして、弾丸の雨は晴れる。 その先に見えた光景に、フェヒターは再び驚きの声を上げる。 「ほう、今の攻撃に耐えるとは……さすがだ」 「そりゃ、それしか能が無いけどー、そんなことよりカレー食べたーい」 フェヒターの言葉に対して、小梢はいつも通りのマイペースを見せる。映画などなら軽口を叩いて自分を鼓舞しているシーンということなのだろうが、彼女の場合は本気の言葉だったりする。 そして、小梢の負った怪我の大きさも紛れも無い事実である。それでも、運命の炎が燃え上がり、彼女を立ち上がらせる。 一気呵成にと親衛隊のフィクサード達が斬り込んでくる。しかし、それをおいそれと許してやる程、リベリスタ達はお人好しではない。 「この祈りこそが、私の全て――Amen」 祈りの言葉と共に、リリが引き金を引く。 現れた業火が猟犬達の進軍を阻む。そして、その一瞬があれば十分だ。 「回復は任せて下さい」 「せいしんのいぶきで、みんなもすぐにいやすのっ!」 小夜と『わんだふるさぽーたー!』テテロ・ミーノ(BNE000011)、2匹の狐が発した声は、上位世界の彼方に届き、戦場へ癒しの息吹を届ける。 小夜にしてみると、小梢が怪我を負ったのは自分を庇ったからだ。もちろん、戦場の性質上、自分達が倒れれば味方も総倒れになりかねないということは分かっている。しかし、それはそれ、これはこれだ。自分を守ってもらったのなら、自分も相手を助けるのが正しいチームプレイと言うものだ。 「ふふ、軍人のお仕事って手負いの獣を狩ることなのかしら? それとも数で押し切ることしかできないのかしら? 六道紫杏……あの無様な女の子飼いだったなら納得行きますけど?」 シスター服の破れも気にせず、身体の傷を抑えようともせずに、海依音は不敵に笑う。 フェヒターの顔に怒りとも笑いともつかない表情が浮かぶ。彼らの言う所の「いけ好かないジョンブルに尻尾を振った女」と一緒にされたことは、それなりに不快なのであろうが。 「いずれもさせてくれない状況でよく言う」 「鋼を穿つ弾痕がアークですもの」 雨に濡れてへばりつく髪の毛をかき上げると、海依音は破邪の詠唱を始める。 『親衛隊』にとって『ビーツ』等と言うリベリスタ組織は前座に過ぎないはずだ。可能ならば、アークのリベリスタも潰しておきたいというのが本音だろう。であれば、単にこの場を護るだけでなく、撃退することも視野に入れなくてはいけない。 セラフィーナはフィクサードと切り結びながら、その時心に浮かんだ疑問を口にした。 「貴方達の目的は何ですか? アークを倒して名を上げるなんて、そんな目的ではないのでしょう?」 アークがギリギリ救援に間に合うタイミングでの戦闘ということは、アークの実力を測ることなのかとは思う。しかし、その先にあるのは何だ? 「少佐にとっては卿らは通過点、道筋にある障害物に過ぎん。もっとも……」 そう言って、フェヒターは剣に溜めたエネルギーを解き放って、セラフィーナを襲わせる。 軽く空中を旋回し、間一髪でそれをかわすセラフィーナ。 「いけ好かないジョンブル、気取り屋のイタリア人、奴らを降した卿らとの戦い、俺は焦がれていたぞ!」 「この国で戦争を始めようというのなら、そんな事は……絶対にさせません」 リセリアが戦場の真っ只中に飛び込み、戦場を氷刃の霧に包みこむ。 命を賭して国の為に戦った親衛隊の戦士。敗北を認めずに戦い続ける彼らを亡霊等と呼ぶ心算等、リセリアには無い。 しかし、彼らがこの国を戦火に巻き込もうというのなら、自分は……! ● 「少尉、どうやら標的は車両と接触した模様です」 後ろに控えていたレイザータクトの女性が淡々と告げる。 その言葉を聞いて、フランシスカはようやく息をつく。ダークナイトの戦い方はとかく疲れるのだ。 「お互い、余計なリスクは要らないわよね?」 アレだけ挑発したとは言え、まさかブチ切れることも無いだろう。もちろん、戦いを続けるようなら、捕虜を取るだけ取って逃げられないかと言う打算も無いではないが。 「良いだろう。十分ではないがある程度任務は達成できている訳だからな」 フェヒターが武器を納める。リベリスタもそれを素直に受け取ってはやれないが、互いに戦闘不能状態に陥ったものは存在するのだ。敵の目的が『ビーツ』の壊滅だったのなら、それなりの成果は上がっている。これ以上、戦いを行う必要はあるまい。 「まったく、楽しそうだ事。で、どうだったかね親衛隊さんよ。俺達はあんた達の敵たり得る存在だったかねぇ」 「予想以上だったぞ。貴様らを狩れと少佐から命令があるのが楽しみになる位にはな」 「ま、どうでもいいね。どのみち、戦場であったら殴り合うだけだ」 互いに凄惨な笑顔を交し合う弐升とフェヒター。どんな集団にだって、戦いにしか生きられない人種と言うものは存在する。 そして、猟犬達は雨の中を去って行く。 「アウフヴィーダーゼーエン、またお会いしましょう」 警戒を緩めず、さりとていつものように軽く、海依音は手を振って猟犬達を見送る。 彼らとはまた別の戦場で会うことになるのだろう。 ぱらぱらと降り注ぐ雨は、まだ止む気配を見せなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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