●スイートな少女と鋼の男 ある晴れたオープンカフェ。一組の男女が対面にすわり談話していた。 「つまりクリームホイップにイチゴのコンボは最強なのです」 「甘味の話をしているのなら私にとっては専門外だ。覚醒して機械の身体になってから味はデータ以上には感じられない」 「それは不幸なのですね。私は幸せですわ。太陽の明るさも、頬をなでる風も、小鳥のさえずりも。全てを感じることができるのです」 「あなたが幸せというのなら、それは幸せなのだろう。幸福の定義は個々様々だ」 「むぅ。レオは心まで機械化したみたい。そんなしゃくししょうじな答えでは世の中はつまらないですわ」 「ノー。それは『杓子定規』と訂正する。あと私の機械化した部位は神経部分と左胸部だ。それ以上の機械化は認められない。それは――」 「えーえー。四十六種類の検査により完璧なコンディションなのでしょう。フィクサードの技術はすばらしいですわ」 「ご理解いただければ。それで『ギガイチゴパフェ』のオーダーをするがそれでいいか?」 「……いらない。 だってこれ以上幸せだと、死ぬのが怖くなるもん」 女が微笑みながら男――メタルフレームのフィクサードをみる。 「だって、私はノーフェイスだから。 いつかは死なないと、世界がとんでもないことになるんでしょう?」 「イエス。ご理解いただければ幸いだ。 私はあなたの心残りが解決すれば、即刻あなたの首を刎ねるつもりだ」 フィクサードは変わらぬ口調で応対した。 物騒な会話であること以外は、二人の行動は男女の一日である。恋愛映画を見て喫茶店に行き、ウィンドウショッピングをして女性の服を買う。そのまま公園で―― ●誰がために戦う? 公園で待っていたのは二人の男だった。 「――見つけたでゴザルよ。『ニュートラル』レオ」 「ノーフェイスを狩るのがリベリスタの正義だからなぁ。それを守るフィクサードも同罪だぜぇ」 一人は日本刀を差し、もう一人は銃を持っている。結界が張られているのだろう、公園には人通りはなかった。 フィクサードは女性の前に立つ。ただ言葉をつむいだ。 「リベリスタ。しばしの猶予をいただけないだろうか? 彼女は覚醒するまで難病で病室で植物状態だった。今日まで外を知らず、ただ死を待つ存在だった。 覚醒した彼女の願いはただ一つ。『嘘でもいい。デートをしたい』……だ。彼女は自分の世界に対する危険性を理解し、午後六時の夕日の見える場所でなら命を奪われてもいい、と約束した。せめてあと一時間まってくれないだろうか?」 「否。時がたてばフェイズが進行する恐れがある。何よりそのノーフェイスが嘘を言っていないという保障がどこにある?」 「どうせ殺すんだ。今でも何処でも一緒だろうがぁ! ノーフェイスは、世界の為に存在してはいけないんだよぉ!」 運命に選ばれていない存在がどうなるか。そんなことは説明されなくてもわかる。 少女の顔に陰りが落ちた。たった一つのささやかな願いがかなえられない。望んだ小さな奇跡は、望んではいけない奇跡だったのだ。 「あなたたちは正しい。反論する言葉が私には思いつかない」 フィクサードはリベリスタの言葉を肯定する。少女は味方なく世界に居場所がないことを再認識する。 「――しかし、その答えに心はない」 フィクサードはノーフェイスを守るように前に立った。 少女はその背中を見る。例え許されなくても、今だけはこの背中が私の居場所なのだ。 偽りの恋人。偽りの居場所。全てが嘘であっても、少女は充分だった。 「レオ」 こみ上げる思いで喉が熱い。これ以上は言葉にならない。だから切に願う。 (かみさま、おねがいです。どうかさいごまで。さいごまでレオをまもってください) 世界を守ろうとするリベリスタと、世界を壊そうとする者を守るフィクサード。 それは、世界の裏側で起きているよくある構図だった。 ●アーク本部 「排除対象はノーフェイス一体。フェイズは1。 護衛に一人のフィクサード」 『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)は静かに任務を告げる。 「ノーフェイスの名前は『菊池・理江』。十歳の女性。覚醒はつい最近だから大した力もない。元々植物人間だったから、体力もない。 フィクサードの名前は『ニュートラル』レオ。十八歳の男性。メタルフレームのクロスイージス。ノーフェイスに情を抱き、リベリスタからフィクサードに転向したという記録がある」 「情?」 「ノーフェイスを倒すこと自体はリベリスタとかわらない。だけど退治に余分な時間を割いて結果フェイズを進行させたりしてしまう。 ノーフェイスを守るでもなく、倒すでもなく。どっちつかずという意味で『ニュートラル』という称号がついた」 気持ちはわかるリベリスタは嘆息する。しかしそれはリベリスタとしては許されない行為だ。人間を守るために人類が犠牲になっては、いけない。 「なお現場到達時、『ペネトレイト』とよばれるフリーのリベリスタチームがフィクサードと交戦している。実力はリベリスタの方が強いから、いずれフィクサードは倒れる。 うまく隙をつけば、ノーフェイスだけを攻撃できるかもしれない。それが最速の解決法」 イヴは事件に関する資料を皆に渡す。最速の手段を教えながら、しかしそれを催促はしない。過程は皆に任せる、ということか。 「排除対象はノーフェイス。フィクサードは無理に倒さなくてもいい。みんなの実力なら苦労はしないとおもうけど、気をつけて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月11日(月)23:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夕暮れの公園で 公園は静まり返っていた。日本刀を構え鯉口を切ろうとする小林と、銃をいつでも抜けるようにホルダーの辺りで手を構えている瀬戸口。そして巨大な盾と鈍器を持ち、背後のノーフェイスを守ろうとするレオ。 まさに一触即発。そこに飛んできたのは、カマイタチの一刃。 「あら、デートの邪魔してごめんなさいね。私、足癖が悪くて」 蹴りを放ったポーズのまま『正義を騙る者』桜花 未散(BNE002182)はいう。ペネトレイトの二人は突然の乱入者に驚き、その中に見知った顔を発見して再度驚く。 「てめぇら!」 「また会ったわね、自称リベリスタさん達。 前も言ったと思うけれど、ここはあたし達がやっておくから帰ってくれない?」 『Krylʹya angela』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)が瀬戸口から向けられた殺意を受け止めて、笑顔で答える。挑発すると同時に、相手に要求を求めるが目的はあくまで戦闘の牽制。戦況を確認し、それぞれの相手を確認する。 「貴方達がペネトレイトですか……あまり良い評判は聞いていませんね」 ペネトレイトとレオの間にわって入ったのは 源 カイ(BNE000446)である。カイ自身はペネトレイトのことを知らないが、彼の知り合いが一度相対したことがあるらしい。 「アーク、か」 「はっ! フィクサードを倒すのに加勢してくれる、ってわけじゃなさそうだなぁ。その目だと!」 「いや、そうでもない」 紫煙と一緒に『八咫烏』長谷川 又一(BNE001799)が言葉を吐く。煙は風に拭かれて消える。それを待ってから又一は言葉を続けた。 「少なくとも俺とエレオノーラとこっちのお嬢ちゃんは『ニュートラル』に用がある。他のやつらは知らないがな」 又一が親指で示す先には『斬人斬魔』蜂須賀 冴(BNE002536)がいた。彼女もエレオノーラと同じようにペネトレイトと相対したことがある。が、今回彼女はペネトレイトのほうを見ていない。フィクサードのレオと、彼が守るノーフェイスのほうをみていた。 「フィクサード・レオ。私の正義に賭けて貴方を倒します」 レオは冴の瞳を真っ向から受け止める。言葉はない。ただ、応じるように盾の角度を冴のほうに向けた。 「仲間割れか」 「いや、根幹は一緒だ。『ノーフェイスの消滅』を見守る。そこまではな。 ただ途中過程が違うだけだ。俺たちはどうあっても救うことができない命を前にして、自分を救うことを選んだだけだ」 「自分を救う? は、何言ってやがるんだ?」 「わからなければそれでもいい。お前たちペネトレイトは眼を背けて、向き合うことを止めたのだからな」 又一の言葉に怪訝の色を深める瀬戸口と、肯定も否定もせずに口を閉じる小林。 ペネトレイトにせよレオにせよ、会話による引き伸ばしの間行動しなかったのには意味がある。アークのリベリスタたちの目的を計りかねていたのだ。誰が味方で、誰が敵か。 五人がペネトレイトに向かい、三人がレオに向かう。互いの敵は決まったようだ。 風が吹く。夏の熱気を含んだ湿った風。それが公園を駆け抜けたが同時、リベリスタたちは動き始めた。 ●少女のために戦う者 「さて、今日の18時に夕陽が見れたとして。彼女が彼と共にそれを見られる確率は何%かな?」 ペネトレイトと相対しながらフィクサードとノーフェイスのほうを気にかける『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)。ノーフェイスとペネトレイト達の距離を開けたかったが……具体的な作を思いつかないため断念する。、 「決まってるだろう。0%だ。正義は執行されるのさぁ。 俺たちが勝てばあのノーフェイスは殺す。お前たちアークが勝っても結局殺す。ニュートラルが勝つ? はっ、それこそありえねぇ!」 「でしょうね。『私達』は彼女を殺しにきた。 だから罪人がえらそうにするんじゃねぇよ」 「なんだとぉ?」 「『正義は執行される』……そんな言葉は感情を正当化するためのロジックに過ぎない。 行動は言葉より雄弁だ。その姿を鏡で見て見なさい。正義を語るには粗悪すぎる」 あからさまな挑発はノーフェイスから狙いをそらさせるため。それに乗ったのか瀬戸口の銃口はノーフェイスからリベリスタのほうに向かった。 「あの子は――」 瀬戸口の相棒である小林に迫る影一つ。『雪花の守護剣』ジース・ホワイト(BNE002417)がグレートソードを振りかぶり、全力で叩きつける。 「罪人なんかじゃねぇよ!」 火花を散らす日本刀とグレードソード。押される小林が、猛攻に耐えながら答える。 「否。ノーフェイスは人間を襲う。フェーズが進めば更なる悲劇も生む。フェイトなく覚醒したその瞬間に『菊池理江』のという存在は世界の敵になったのでゴザル」 「違う! 例えノーフェイスが世界に許されなくても、彼女はただの女の子なんだよ。 俺は小さな願いを守ってやりたいだけだ!」 「それが他の誰かを危険に晒しても構わないでゴザルか?」 「理屈じゃないんだ。世界に、運命に、愛されなかった少女の切なる願い。それを守ってあげたい」 小林の言葉は正しい。だけどそれは理屈だ。ジースが守りたいのは理屈では計れないもの。ほんの小さな幸せ。そのために剣を振るう。 「情に流されたでゴザルか。だが情では救えぬ命もある」 「情に流された? えぇ、その通りですよ。 フェーズ進行を促すだろうフィクサードの肩を持つ……本来リベリスタとして有るまじき行為ですが」 ジースと連携を取りながら、カイも小林を攻める。オーラで形成した爆弾が、小林の近くで爆ぜた。アークに咎められるのを覚悟の上で、ノーフェイスに加担する。彼はそう決めたのだ。 「情をかけることで、多くの命を失うことになる。それがわからぬほど愚かでゴザルか?」 「情けを掛ける事が愚かと言うのなら、その汚名を甘んじて受けましょう。 あの子の死の結末に変わりが無かろうと、少しでも苦しみや辛さを和らげてあげたい」 十一年前の事件で家族を失ったカイにはわかる。孤独や寂しさという名の苦痛が。あの時助けてくれたリベリスタの暖かさをカイは一生忘れない。この一撃は、彼女にその温もりを伝える為に。 「小林さんは何でノーフェイスが嫌なの?」 クローを構えながら。小林の気を引こうとする『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)。 「愚問でゴザルな。いまさら崩界のことなど語る必要もあるまい」 呆れたように答える小林。それを知らずしてこの場に立つ物はいない。つまらぬ会話と切り捨てて日本刀を抜き―― 「『ノーフェイスは罪人』だって、まるで自分に言い聞かせてるみたいだったよ」 抜刀が一瞬だけ止まる。しかし止まったのは一瞬。抜き放たれた日本刀は黄昏の空気ごとミカサの肩を凪いだ。夕日より赤い鮮血が舞う。 「……ノーフェイスはいずれ悲劇を生む。それを罪人と称して何が悪い?」 「確かにね。だけど気になったんだ。 俺はね、俺の望む俺でありたいから戦うよ。今回はペネトレイトが気に入らないから全力で邪魔をする」 「大儀よりも己の欲をとるか」 「ああ、俺は悪いやつだ。だから全力でノーフェイスの希望を叶えさせる。 悪に加担する目の前の俺を殺しなよ、ペネトレイト」 「安い挑発でゴザルな。だが、あえて乗ろう。どの道、突破せねばならぬ」 挑発で生まれた会話の間に、リベリスタによるペネトレイト包囲網は完成していた。向こうのほうではフィクサードに対する包囲も完成している。 「はっ! 正義のリベリスタ様に歯向かう時点でてめぇら全部悪だ! 俺たちは世界を守るために尽力してるんだから、そこ退きやがれぇ!」 「無粋ね。悪いけどデートの邪魔はさせないわ」 瀬戸口が狙いを定めずに銃を乱射する。雨のように降り注ぐ弾丸の隙を縫って、風の刃が瀬戸口を切り裂いた。 「私、正義って大っ嫌いなのよね」 風の刃を放った未散は瀬戸口に笑顔を見せる。言葉とともに敵意を乗せたその笑み。 「人を人して見ない、それが正義なのかしら」 「人? はっ、お笑いだな。ノーフェイスは人じゃねぇ。砕き、殺し、殲滅する対象だ」 「ノーフェイスは、彼女たちは人間よ。罪人は私たち。 彼女たちの死を背負う覚悟がない人間に、正義を語られたくない」 仮のノーフェイスを人間と認めないのなら、今は亡き未散の恋人は人ではないことになる。そんなことはない。例え世界にとって敵であっても、滅ぼされなくてはいけない存在でも、人として生きた証は消えない。 アークのリベリスタによって殺された未散の恋人。その死を背負うからこそ、未散はアークのリベリスタとしてここにいるのだ。 「男なら全力で守りなさい。それが、彼女をエスコートする貴方の義務よ」 遠くで戦っているレオに向かって未散が叫ぶ。漢女として気に入った相手にウィンクし、戦場に目を戻した。 リベリスタ同士の戦いは加速していく―― ●世界のために戦う者 「彼女の願いを叶える時間をあたし達はあげられない。だからせめてここで、貴方の手で理江ちゃんに最後を与えてくれないかしら。 仮初でもまだ恋人でいるのなら、デートの終わりは貴方で終えるべきだと思うのだけれど」 フィクサードとの戦いは、エレオノーラの交渉で始まった。理江は驚きながらも瞳を閉じて、レオの服を掴む。レオはノータイムで答えた。 「ノー。仮初でも恋人というのなら、恋人を殺せという命令を受け入れる理由はない。 彼女は確かに殺す。だけどそれは彼女の願いをかなえてからだ」 「そう。若い子は本当に年寄りの言う事は聞かないんだからあ」 その返事にエレオノーラがどう思ったかは、わからない。 「貴方はリベリスタだった。世界を、人を守る事以外に戦う理由を求めるのは許容されないわ」 「だから私はフィクサードなのだろう。正義でも悪でもない。どっちつかずの」 「どっちつかずのあなたは何の、誰の為に戦うの?」 菊池理江を殺すと言った以上、彼女の為ではない。 ノーフェイスに肩入れする以上、世界の為でもない。 どっちつかずの『ニュートラル』。故にレオから答えは無い。ただ回答を拒絶するように盾を構える。 「戦う理由に迷った貴方に負けられない」 リベリスタたちは明確に戦う理由をもってここに立っている。その意思が、リベリスタの強さの根源。 「俺達は理江の望みを邪魔するわけだが、お前さんがいる限りは理江には手を出さないと約束するよ」 又一は打刀を構えてレオに振り下ろす。レオのメイスがそれを受け止め、固い物同士がぶつかり合う音が公園に響いた。 「お前は目をそらした。救うことができない命を前に自ら選ぶことを止めた」 「何の話だ?」 「今の話だよ。ノーフェイスが救われないことなんて今更だ。それを前に迷い苦悩し、ノーフェイスの判断に任せてお前は思考を止めた」 「……違う」 「本当に理江を救いたければ一緒に逃げればいい。世界を守りたければ殺せばいい。妥協案なんてない。お前はどちらかを選ぶことを止めただけだ」 「では問う。ではあなたは何のために戦う? 誰のために戦う?」 「理江の為だ。俺は最後まで理江を人として扱う。人の世界を護る為に、人の尊い命を奪うことを選ぶ」 「結論はあのリベリスタたちと同じか」 「自分で選んだか否か。その差だ」 歯を食いしばるレオ。その目線が長さ六尺七寸の巨大な刀を捕らえる。盾で受け止めきれず、その衝撃がレオの骨に衝撃を与えた。冴が愛刀「数珠丸」を手に、レオを見据えている。 「ノーフェイスを可哀相だとは思います。できることなら願いを叶えてあげたいとも」 だけどそれは感傷なのだ。 「自身の感傷の為に、無関係な人を犠牲にする可能性を作ることを私は許しません」 「イエス。リベリスタとしてそれは正しい。 だがいつか罪の重圧が君を襲うだろう。それに耐えられるか?」 それは、誰の経験談なのだろう? レオは自分より若いリベリスタに問いかける。 「私が選んだ、私が決めた私の生き方です! 誰に否定されようと! 悪鬼と面罵されようと! 外道と吐き捨てられようと!」 一刀毎に力を込めて冴はレオを打つ。その一撃毎に押し込まれるレオ。 「折れず! 曲がらず! 私の正義を貫くのみ!」 それは一振りの刀の如く。何度も何度も打ち鍛えられ、何度も何度も考え抜かれて生み出された結論。 辛くない筈はない。苦しくない筈はない。艱難辛苦の末、冴が得た冴の正義。それを乗せて刃は振るわれる。中途半端な盾を打ち砕こうと。 戦いは加速する。空は紅に染まりつつあった。 ●Whom do you fight for? 5対2と3対1に分かれた戦いは、消耗戦となった。 個人の戦闘力ではペネトレイトやレオに分があり、アークのリベリスタは数の優位性を分断する形で失っている。 小林の日本刀がミカサの胴を薙ぎ、瀬戸口の銃弾が未散の足を貫き行動不能にする。 レオのメイスが冴の胸部に当たり膝をつかせ、又一の意識を闇に沈めた。 カイの手を借りて起き上がるミカサと、自らの刀を杖にして起き上がる冴。ともに死力を尽くした戦いの行方は、 「レオっ!」 ノーフェイスの叫び声。糸が切れたようにレオが倒れ、動かなくなる。エレオノーラの展開した罠に絡め撮られたところを、冴の一刀で切り伏せられたのだ。 「ちっ!」 消耗したペネトレイトの二人は任務達成不可能と知ると、武器を使ってリベリスタを牽制しながらその場を離れていく。 残されたのは、ノーフェイスとアークのリベリスタ。ノーフェイスは膝をつき、倒れているレオの手を握る。 「きっと 君は一人ぼっちでいなくなってしまうのが嫌だったんだろ? 俺達は君を救うことはできないが、君の事を決して忘れない」 又一は座り込むノーフェイスにそう言って、タバコをすう。シノギのあとのタバコなのに、いつもより美味しくないのは何故だろうか。 「ええ、レオも同じことを言っていました。 変な話ですが、有難うございます。夢はかなわなくても今日はとても楽しかった」 ノーフェイスは笑みを浮かべる。それは本当に今日という一日が楽しかったからだろう。病魔に縛られた彼女の、幸せな一日。 「さよなら。次は良き人生を」 冴の一刀が、ノーフェイスの命を絶った。 ●カーテンコール 十八時の鐘がなる。 それは弔いの鐘。救うことのできない少女の為に、各々が鎮魂の意を示す。黄昏が夜の帳に落ちる前に、リベリスタたちは公園を去っていた。 夜の訪れとともに物語の幕が下りる。ただ、もう一度問いかけよう。 Whom do you fight for? 答えはそれぞれの心の中に。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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