●〆切に間に合わない 「ああああ、何もネタが思いつかないし、筆がぜんぜん進まないぃいいいいっ! 締め切りがもうすぐなのにプロットがっ! どこかにいいネタはないのっ!!」 「――思いつく限りのありとあらゆるパターンは考えたわ。このままでは読者にあきられてしまうっ。もっともっとすごい、刺激的な題材はないのかしら――?」 家で引き籠っていたアラサーで独身彼氏なしのBL作家が嘆いた。新たにボツになった原稿を屑かごに向かって放り投げる。辺りにはすでに夥しいゴミが溢れていた。 彼女の名前は伊藤蘭子。BL業界でも中堅に位置するベテランだった。 だが、最近彼女はスランプに陥っていた。これまでたくさんのBL本を同人時代から書いてきた。そのため、ネタが尽きかけてマンネリ化していた。 人気もこのとことろ急降下気味だった。このままではBL作家として長年築いてきた地位を捨て去ることにもなりかねない。 蘭子は生粋の腐女子だった。年齢=彼氏いない歴28年をほこる彼女にとって、人生のがけっぷちに立たされていた。この世知辛い世の中、今から就職先を探すなんてことは無理な話だった。もちろん、永久就職先もあるはずがない。だから蘭子にとってBL作家でないことは死を意味していた。 「ああ、ダメよ、私の大切な愛蔵本が――」 そのとき、彼女の所持していた大量の薄い本たちが、急にむくりと起き上がった。 「行かないで! 私のマイスイートエンジェルたち!」 薄い本やBL本が大量に窓から飛び出して行ってしまう。 家で腐っていた売れないBL作家はそうやって、やっと長い引き籠り生活からぬけだすことができたのであった。 ●BL本の進撃 「とある男子校の校庭にノーフィスのBL作家が進撃してきた。彼女はE・ゴーレムになった大量のBL本と共に攻撃してくる。そのBL本は空を自由に飛び回ることができ、その中身を見た者はたちまち、魅了されてホモになってしまう。このままでは、男子校がホモの巣窟になってしまうだろう。はやくBL本と彼女を退治してきてくれ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。あまりの非常事態に言葉を失ってしまう。 まだ若い学生である彼らがホモになってしまったら、それこそ勉強が手に付かなくなってしまうだろう。そうなると彼らの将来が心配だ。今回の事件がきっかけでホモに目覚めてしまったら普通の人生を歩めなくなってしまうかもしれない。 「伊藤蘭子のほうは、BL本を敵に向かって投げてくる。BL本は、殺傷能力があってあたると出血をともなったり身体が麻痺してしまうので注意が必要だ。また、危なくなるとBL本の中身を広げて相手の眼つぶしも行う。それを見た男はメドゥーサのごとく、激しく同姓にトキメいてしまうから気をつけろ。それじゃあ、くれぐれも健闘を祈る」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月20日(月)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●┌(┌ ^o^)┐<ホモォ 男子校の校庭にはすでに帰宅しようとしている学生が大勢いた。仲間と楽しそうにふざけたり話したりしながら歩いている。まるで仲のよい親友同士のようだ。 男同士の友情は表向き互いをけなし合う。一見して仲が悪いように見えてしまうが、実は心の中では相手に気を許しているからこそ軽口を叩ける。 表面上は互いを褒め合う女同士の関係とはそこがまず違うところであった。女同士の友情になると本当は心の中でどう思っているかわからない。おそらくそういうオープンな男の友情が腐女子にとってホモの魅力の一つになっているのかもしれない……。 「さあ、今日も起こそう、奇跡!! 簡単に起こるわけないけど、起こしたいんだ! 世界の腐女子は貴重なんだ、財産なんだ、ある意味生産者なんだ!! そんな腐女子を失ってたまるか!! 腐女子は大切な仲間でしょ!!」 『モラル・サレンダー』羽柴 壱也(BNE002639)は冒頭からすでに叫んでいた。興奮しすぎて目がギラついている。彼女にとって前を行く男全てがホモに見えていた。 「行きましょう壱也。苦しむ同士を見ているのは、辛いわよね……! 同士蘭子が苦しんでいる! そんなの、あひる達が見捨てれるわけ無いわ!」 普段は大人しいはずの『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)が満面の笑みを浮かべる。同士の袖を引っ張って駆け出していく。 「あえて言わせてもらうわよ! たいした関係性もない一般人同士をホモにしてくっつけたところで、そんなのは熱いBLにはならないわ!」 『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)に至ってはすでに蘭子の作風に対する文句を言い放っていた。 「アラサーでもワタシ少女だもん! 女の子は20過ぎたら年齢をごまかしていいって法律あるもん! 28才独身、うわああ婚活しなきゃ! 絶対しなきゃ、男同士でくっつかれたら喪女はどうすればいいんです!」 『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)に関しては先ほどから意味不明なことを喋っている。突っ込みどころ満載な台詞にあえて誰も突っ込まない。誰にも相手にされない可哀想なびっちシスター。 「敵が腐女子のノーフェイスだと思ってたら味方も腐女子のノーフェイスでした。何を言ってるか分からないと思いますが、僕も分かりません、分かりたくありません! 何でもしますから許してください! 僕、小学生ですよ! まだランドセル背負ってるんですよ!」 餌にされそうな『親知』秋月・仁身(BNE004092)が貞操の危機を叫んでいた。びっちシスターに脇を固められていて逃げることができない。 「しんげきするびーえる……がんばってとめないとっ! ……でもとめないほーがうれしいひともいる……かも~?」 『わんだふるさぽーたー!』テテロ ミーノ(BNE000011)がぴょんぴょん跳ねながら喋る。びーえるについてはよくわかっていないが、何やらかなり楽しそうだ。 「BLT……ベーコンレタストマト。BL……トマトがない? マァ、腐女子とか ホモォとかいうのは目の前にいるからワカル」 『瞬神光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)はBLにトマトが含まれていないことを残念がる。前にいるピンクの狐と仲良く一緒にしゅたーんしゅたーんと元気よく飛び跳ねていた。 「オレもびーえるには興味がある。付け焼刃で足止めできるほどの知識は得られなかったから、今回は本や蘭子、それに皆から学ばせて貰おう」 『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)がまるで修行僧のような大真面目な顔で発言した。それを聞いたびっちが「だめよ! びーえる知識フュリエなんて間違った方向にはいかないで!」と言うが、当人は全く気にしない。 一行がようやく男子校に到着する。すぐにこれ以上の犠牲が出ないようにヘンリエッタが強結界を張った。 辺りに大量のBL本が宙を飛んでいる。その中身を見てしまった男子校生たちが、互いに顔を赤らめて身をもじもじと捩らせていた。 ●┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐<ホモォ 「……え? 男同士で裸で……え? ワセリンってそんな……え? デュランダルがフリークスでバーストブレイクしてるじゃないですか?……え? 餌ってこういうそれですか?……お兄ちゃんたちが迫って来てるのはこういう事を……僕に……するために?」 仁身が無理やり海依音に同人本を見せられて困惑した。すでに目の前に屈強な男子ホモ学生たちが美味しそうな目線でこちらを覗きこんでいる。 「避難誘導の囮にするためです。男ならこれくらい我慢してください!」 「いやああああやめてえええええええええ!」 仁身は海依音に蹴飛ばされた直後、迫ってきたホモの男子学生の渦の中にもみくちゃにされて消えて行ってしまった。 「もっと……もっと激しく絡んでちょうだい!」 伊藤蘭子が即席のホモを見ながら嬉々とする。だが、まだまだ絡みが甘い。蘭子はより激しく絡んでいる男子校生を探してBL本を大量にばらまいて校庭を走り回っていた。 「ここは危険だから、早く離れて」 ヘンリエッタがバーストブレイクで男子生徒に襲いかかろうとしていたBL本をまとめて焼き払う。まだホモになっていない男子校生に避難を呼びかける。 男子校生たちはようやくちりぢりになって逃げる。セレアも避難を誘導しながらマジックミサイルで容赦なくBL本を撃ち抜いた。 だが、一部のBL本がセレアの頭上に覆いかぶさってくる。前が見えなくなったセレアはBL本に向かって躊躇わず唇を突きだした。 「はあん、BL本を……吸血できるなんて浪漫だわ」 セレアはBL本のエキスを吸い取って喜びに悶え苦しんだ。 仲間たちがBL本と奮闘している間に壱也とあひるの腐女子コンビが伊藤蘭子に迫って行く。蘭子はスケッチに夢中で二人にまったく気がつかない。 「同人誌投げる腐女子があるかー!!! ばかやろー!!!」 いきなり蘭子にむかって壱也が頬をグーで殴りつけた。 「いたあああっ! あんた何すんのよっ!」 ホモを観察していた蘭子が壱也を睨みつける。すぐにBL本を構えて壱也たちにさらに投げ返してきた。 「スイートエンジェルを投げるなんて事……よく出来るわね! 蘭子、やめなさい! 大事な作品……あっ! ちょっと待って! それ、あひる読んだこと無い本だから攻撃するの待って……!」 蘭子に対して宣戦布告しようとしたあひるは、降ってきたBL本に思わず目を奪われてしまった。すぐに落ちてきたBL本を壱也と一緒になって読みだす。 「これ、Eゴーレムですからね! ほらそこ! 読み込んでいないで手伝ってください! ああ、もう聞いていますか?」 海依音は呆れながらジャッジメントレイで奮闘する。ふだんはびっちとか言われているが、本当は結構気を使う性格で優しい所もちゃんとあるのだ。 腐女子の二人がBL本に気を取られている間に、蘭子がピンクの狐と青い狐に向かってBL本を投げつけてきた。あまりに大量のBL本に二匹ともなすすべがない。 リュミエールはついに剣を取りだしてめった切りにした。斬撃が利かないのは知っていたが、あまりの鬱陶しさに思わず手が出た。 「マタ、ツマラヌモノヲ切ッテシマッタ、ナア」 だが、リュミエールも負けてはいない。高速で剣を巧みに操ったために、BL本がばらばらに引き裂かれた。元に戻ろうとしたBL本が、誤って別のBL本のページとくっ付いてしまう。それを見た蘭子が目を丸くした。 「ななななななん、なんてすばらしいい組み合わせなの! これだわ!」 有り得ない設定に有り得ない組み合わせ。本来なら実現するはずの絶対にないパターンがそのページに偶然できあがっていた。有り得ないシュチュエーションに新しい体位の組み合わせになったBL本。それに狂喜乱舞する蘭子。 リュミエールは開いた口がふさがらなかった。 「むむむ?? なげてきてるほんからときどきなにか、すっごいオーラをかんじるの……ぴこぴこぴこ」 横で応戦していたミーノの狐耳がぴこぴこと反応した。 「ミーノのますたーふぁいぶのちからっ……ごかんがそーどーいんでこのほんっていってるのっ」 ミーノは五感を頼りに退治済みの一冊の同人本をキャッチした。ピンクの文字に怪しいタイトルが並んでいる。これはきっといい本に違いない。そう思って傍でBL本を読みこんでいたあひるにミーノはその本をおもむろに手渡した。 「…………つつつっ!?」 あひるの表情が固まった。湯気から大量の湯気を放射した。あまりの衝撃に胸のドキドキが最高潮に達してしまう。 『NOBU×HUTU~坊主頭を汚したい、その袈裟すら汚したい~』 その同人タイトルを一目見たあひるはとても大きな奇声を発した。 「くわくわくわくわくわくわくわくわつっ!! くわくわくわつっ!! くわわわわっわわわあわわあわわあああああああつっ!!」 ページをめくったあひるは、大事そうにそれを抱えると誰にもそれを取られないようにしっかり握りしめてどこかへ駆け出して行ってしまった。 ●┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐<ホモォ すでに大量の同人本はほとんど焼かれた。残るはあと少しの同人本と伊藤蘭子だけになった。海依音はまだやっつけていない残りのBL本を求めて、校舎の裏側に回ってみた。 そこには密着した男子校生がBL本を前にして何やら怪しい雰囲気で囁き合っていた。 「神前くん、好きだよ、愛してる!」 「俺もだよ、凸三……!」 海依音はとても嫌な予感がした。前にもこのような場面に出くわしたことがあるようなデジャヴュを覚えたが、きっと気のせいだ。 「あなたたち、早くそのBL本をワタシにワタシなさい! はやくしないとホモになってしまいますよ! そうじゃないと一生童貞決定です!」 海依音は口を酸っぱくして寒いギャグで説教した。このままでは未来ある若者がホモになって一生彼女が作れなくなってしまう。 海依音は意を決した。いたいけな男子を救うためだ。スカートの裾を一気に手繰り上げる。それを男子校生の前に堂々と広げて見せた。 「ぐあああああああ! 目が目がああああああああっ!!」 「たたすけてええええええ。目がくさるうううううううううう!」 男子校生は一目散にBL本を捨てて逃げ去ってしまった。ホモの男子校生にとってそれは――あまりにも目に毒なものであった。 さすがびっちシスターの本領発揮である。だが、そんなびっちも一抹の寂寥を感じて溜め息をついたのは言うまでもない。 伊藤蘭子は最期の力を振り絞ってBL本をセレアに向かって投げつけた。それをセレアは容赦なくマジックミサイルでぶっ放す。 「仕事仲間でも同級生でもライバルでも何でもいい、何かしらの関係にあった人が昇華してこそ、熱いBLが生まれるのよ! 今まで意識していなかった親友との関係性! 単なる仕事仲間だと思っていたのに、それ以上の存在になっていた驚き! 命を取るか取られるかの関係だったのに、それ故に生まれてしまった相手への理解! そういう根底を支えるものがない愛情など、所詮はまがいもの! BLの神髄は、そこに至る過程をしっかり描くことによって生まれる共感と! 強い絆によってもたらされる愛情と背徳感じゃないの!?」 マジックミサイルの流れ弾にあたって蘭子はその場に突っ伏してしまった。セレアの熱いBL談義に胸を撃たれて言葉も出てこない。自分はもしかしたら間違っていたのかもしれない。なにか大事なものを思い出させられた気になる。 「私……私これからどうして生きて行けばいいの? 大切なスイートマイエンジェルたちももういなくなってしまった。男子校生達ももうホモってない。何もネタが思いつかないならもう私は死ぬしかない」 哀れな伊藤蘭子に誰もが同情を禁じ得なかった。このままでは、伊藤蘭子を倒さなくてはならない。腐女子たちにとってそれはあまりに忍びないことだった。 「蘭子はどんなホモが好き? ちなみにあひるは犬系年下の攻めが良くて基本可愛いけど、懐き過ぎてヤンデレるのもアリかな。静々と愛を育むようなホモも良いと思うし、関係を隠してるけど、さり気なく教室で手をつないじゃうとか熱いよね!?」 あひるは蘭子に嬉々と話しかけた。実は彼氏に内緒でベッドの下に山のように積み上げている薄い本がある。その秘密に蓄えた知識を思う存分に使って蘭子と話をした。時節彼らの間には怪しい専門用語が飛び交う。 「ふむむ~ふむむむ……ΣΣ ほわぁ~~」 聞き耳を立てていたテテロは思わずうなり声をあげた。 「リバ……? ……横攻め? やおい穴?」 ヘンリエッタは彼らの時節繰り出す用語をそのままメモに取って行く。あまりにもよくわからないため、ヘンリエッタは帰ったら調べてみることに決めた。 あひると話していた蘭子は次第に彼女と意気投合していた。さきほどよりも笑みが多くなっている。だが、このままでは蘭子を討伐しなければならない。それを聞いた蘭子も意気消沈してしまった。皆でお祈りを捧げる。 壱也は自分で作った同人本を蘭子に上げた。『ひとみ、君の眼鏡すら汚したい』と書かれた薄い本を手渡す。白濁液を眼鏡に塗られたショタのひとみ君がマッチョに次々に辱められている同人誌だった。 「これ、読んで。わたしが書いたやつ。それで自分の内側から猛る何かを引っ張りだすんだ!」 壱也は蘭子に叫んだ。すると、それを読み始めた蘭子の身体が急に光り出した。 「リフレ―――――――シュッ!!」 蘭子はついに光に捲かれながら吠えた。もう疑う余地もなかった。腐女子たちの必死の祈りについに蘭子はフェイトを獲得することに成功していた。 ●┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐<ホモォ 「男でも男と『こい』をして良いんだね。オレが男になったらこいをする相手は乙女だと思っていたけど、男も選択肢に含めていいんだ。男同士が可能なら、女同士でもいいのかな。だとしたら凄い発見だ。こいをする可能性のある対象がほぼ倍に増えるんだから興味があると言っていた姉妹たちへも知らせてあげたい。共感出来ないのがもどかしいくらいだね」 いつも落ちついているヘンリエッタがめずらしく興奮してまくし立てる。蘭子や壱也たちに享受してもらったボトムの新しい知識が楽しくて堪らない。 同胞のリッカは確か百合に興味があったはずだ……ルナはどうだったろう? とヘンリエッタは仲の良いフュリエたちの顔を想い浮かべた。すでにヘンリエッタは戻れない道を驀進しつつあった。 「男子校は汗臭イナ。早く帰ってミーノとクレープでも食べようソウシヨウ」 「ひゃあーまってえー」 ピンクの狐は青い狐に首根っこを引っ張られるようにして帰って行く。 「そういえば誰かを忘れているような気がしますが――」 海依音は首を傾げたがどうしても思い出せない。 「気のせいじゃないの? それより早く蘭子先生の家にいきましょう」 セレアが海依音に答えた。このあと、蘭子の家で腐女子たちは、新しいネタを考えるという名のお茶会を開くことになっていた。 すっかり仲良しになってしまった彼らを見て海依音は溜め息をつく。このままでは蘭子も自分も結婚できないまま三十路に突入しそうだ。 「あっ、あそこにホモがいる!」 そのとき、壱也が急に立ち止った。嬉々として後ろの方を指し示す。 壱也が指摘した先には、屈強なマッチョに絡まれているメガネのショタがいた。 「たすけてええええええええ――」 ショタは必死の叫び声をあげる。だが、いまは蘭子先生のところに行くのが先決だった。名残惜しそうに壱也はすぐに顔を元に戻す。 みんなの必死の祈りによってフェイトを得た伊藤蘭子はこれからもBL作家として生きて行く決意を固めていた。そのためにみんなで知恵を絞って蘭子を応援していくという同盟が密かに出来あがっていたのである。 「帰ったらこれを読まなくちゃ、ね。くわくわくわっ」 あひるは密かに隠し持った同人本を手に不気味な笑みを浮かべていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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