● ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! 一切の光が届かない静寂の闇に包まれた深淵なる海の世界に、けたたましい音を立てて鳴り響く黒電話。 「……あの……よんでますよ、リヴァイアさん?」 ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン! 一向に鳴り止まない黒電話を無視し続ける深淵の主。 「リヴァイアさん? リヴァ――」 「やっかましいんだよ! どうせまた、どこかの阿呆がこの世界へのゲートを開いて、アタシをよび出そうとでもしてるんだろう…… ちょっと行ってシメてくる!!」 そう言うと深淵の主は、鬼の形相で受話器を手に取った。 ● とある場所にあるとある地下空洞で、大規模な魔法陣を前に怪しげな儀式に取り組む集団がいた。 そこは相当に開けた空間で、野球のドーム球場がすっぽりひとつ納まるほどに広大で、地下水脈が流れ込んでいるため所々が浸水している。 刻一刻と儀式が進むごとに、空間にぽっかりと開いた虚無の穴は少しずつ大きさを増していく。 「しかし待ち遠しいな。 手に入れたこの魔道書を使えば、リヴァイアサンをよび出せんるんだぜ。 出てきたらぶっ殺して、その肉を食えば不老不死になれるんだとよ!」 大きな剣を背中にかついだ男が妄信的な目で、ぽっかりと開いた空間の穴を凝視する。 「だが相手はリヴァイアサンだぞ!? そう簡単に――」 「その為のこの戦力だろうが! お前はビビリすぎなんだよ!」 細身の剣を腰にさした神経質そうな男の弱気な発言を、ガッシリとした体躯の男が怒声と共に笑い飛ばす。 その場には儀式に取り掛かっている魔道士が6人、それを護衛する戦士が4人、その他大剣や細身の剣、拳を武器にする者に弓を携えるもの総勢30人に及ぶ覚醒した戦士が集っている。 ガッシリとした体躯の男はその顔ぶれを見渡して、自信に満ちた表情で頷いてみせる。 「怖かったら今のうちに逃げ出せば? 当然あんたの取り分は無しだけどね」 弓を手にした目つきの鋭い女が、茶化すように弱気な男をからかうと、弱気な男は勢いよく立ち上がって女を睨みつけた。 「……今更逃げ出すなんてできるもんか! やってやる、やってやるぞ俺は!」 先程までの弱気はどこへ行ったのか、細身の剣を腰に刺した男は、地下空洞に響き渡る大声で気合の雄叫びを上げた。 ● 映像の再生が終わると『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、目の前に整列したリベリスタ達に視線を向けた。 「リヴァイアサンの肉が不老不死を与える根拠は無い。 だけど彼等はそう信じきってる。 さらに、あの程度の戦力でリヴァイアサンを相手に出来ると思ってる。 おそらく覚醒したてで過信している人達」 そこまで言うとイヴはモニターに映し出されている、地下空洞にぽっかりと開いた虚無の穴に視線を移す。 「でも彼等の儀式が成功すると、召喚されたリヴァイアサンによる大災害が予想される。それだけは何とかして避けたい。 無謀な儀式に挑む軽率な異能者達の阻止。お願いできる?」 透き通るようなイヴの眼差しを向けられたリベリスタ達は、口々に了承の返事をして部屋を後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天白黒羽 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月03日(月)22:31 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●ブルマの誓い 「いるいる♪ 入口付近に見張りが4人。 奇襲をかけてサクっとヤっちゃう?」 地下空洞の入口から少し離れた岩場から、千里眼で内部を探っていた『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が獲物を目の前にした猫のように目をキラキラと輝かせて、自分の首をかき切る仕草をする。 「相手は覚醒したての人たちですぅ。 奇襲には賛成ですけど、命まで奪うのはやり過ぎでは? このブルマを被せたり履かせたりして、悪いことをするとイタイ目にあうと思い知らせてあげるのはいかがですかぁ?」 ゴソゴソと荷物の中から5枚のブルマを取り出して、仲間たちの前に広げてみせる『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)。 「ぎゃはははは! なにそれ、マジうける! これってロッテちゃんの使用済みだったりするの? クンカクンカ」 「ちょ、なにしてるですかぁ! 使用済みなわけないですぅ! 買ったばかりの新品未使用なのですぅ!」 ロッテのブルマを無造作に手に取ると、突然ニオイを嗅ぎだした『泥棒』阿久津 甚内(BNE003567)の行動に、慌てたロッテが悲鳴交じりの声を上げると、ちぇーつまんないの、と言いつつ手にしたブルマを自分のポケットの中にしまいこむ甚内。 「今回は敵がい~っぱいなんだよね? これじゃ数が足らなくない?」 沢山の敵で殺人衝動を満たせると期待していた葬識は、ロッテの提案の穴を指摘する。 「こんな事もあるかと思って……じゃーん!!! もちろん、新品未使用品よ?」 どんな事態を予測したのかサッパリわからないが、おもむろに仲間たちの目の前に新たなブルマが5枚、『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)の手によって差し出された。 さらにゴソゴソ荷物を探る音――。 「そういう事ならアリアも協力しよう! 当然、新品の未使用品なのだ! 思う存分使うといい!」 さらに『おてんばクラウン』アリア・オブ・バッテンベルグ(BNE003918)が取り出した5枚のブルマで合計15枚。 「ならばこのボクの、高貴なるブルマも進呈しようではないかっ! 当然だが、未使用だぞ!」 芝居がかった口調で差し出した『墓守』ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)の5枚のブルマで、何とこの場に20枚ものブルマが集まった。 「……でもどうしてキミたち、そんなにブルマを持ってきてるの?」 明らかに戦場には必要の無い装備? がこれほど集められている現実に純粋な疑問を抱いた『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が、 苦笑いを浮かべてブルマを持ち寄った少女たちに視線を送る。 「それは……」 「ねぇ?」 「乙女のたしなみ?」 「ふっ、そんな細かいことを気にしてるとハゲるぞ!」 常にブルマを持ち歩くことに何の疑問が? と言わんばかりに少女たちは顔を見合わせ、ノアノアが笑い飛ばしながら悠里の髪の毛をグシャグシャっと撫で回す。 「あははは……最近の女の子が考えることは、僕には分からないや」 引きつった笑顔を浮かべ、乱れた髪を手串で直す悠里。 「っという訳で、敵は殺さずブルマによる更生を促す方針ですぅ」 「はいはい、なるべくころさないようにするよー」 「そーだねー、なるべくころしはひかえないとねー」 ロッテの打ち出した方針に、まるで感情のこもらない、ただ言葉だけの返事を返す葬識と甚内。 (いやいや、ブルマによる更生ってどういうこと? って突っ込んでいい雰囲気じゃないよね……) 額からじっとりと汗を垂らしながら、表情だけは笑顔を浮かべている悠里の袖をアリアが引っぱる。 「ん? どうしたのかな?」 「これ……悠里の分なのだ」 優しく問いかける悠里に自分のブルマを差し出すアリア。 困惑の表情を浮かべることしかできない悠里。 …………。 「……僕は遠慮しておくよ」 爽やかな笑顔でブルマを受け取るのを拒否した悠里に、そうかと少し寂しそうな表情を浮かべるアリア。 「ブルマを持っていない私は…… 乙女として失格なのでしょうか?」 ポツリと呟く『深樹の眠仔』リオ フューム(BNE003213)の言葉を聞いた悠里は、ゆっくりと静かに首を振る。 「大丈夫だよ、決してそんなことないから!」 まるで今目の前にある、受け入れ難い現実を否定するかのように、力強く悠里はリオを真摯に見つめて頷いた。 ●正しいブルマの使い方? 「そんじゃま、とりあえず入口の敵さんをサクっといっちゃおうか」 言うが早いか駆け出す葬識に、遅れることなく付いていく甚内。 ふたりは躊躇うことなく入口に駆け込むと、突然の来訪者に驚きの表情を浮かべたデュランダルに、一気に駆け寄り間合いをつめる。 「いったきま~す☆」 葬識のソウルバーンがデュランダルの凍りついた表情ごと精神を切り裂き、瞬時に後ろに回りこんだ甚内の魔氷拳が追い打ちする。 「吸血鬼ちゃ~ん、ロッテちゃんが来る前にササっとバイキング楽しんじゃいなよ★」 「じゃ~遠慮なく☆」 甚内が後ろからデュランダルの口を押さえると、葬識は歪で禍々しい鋏の形状をした武器でチョキーンとデュランダルの首筋をかき切った。 力が抜けて人形のように動かなくなったデュランダルの身体を仲間たちに見つからないように岩陰に隠すと、ふたりは次の犠牲者を求めて駆け出した。 千里眼を発動している葬識には、敵の居場所は手に取るようにわかる。 敵に気付かれないようにコッソリと近づき、突然の奇襲に驚きと恐怖を浮かべる相手の表情を楽しんでさえいる。 仲間が追いつく前にひとりのソードミラージュの命を奪い、さらに覇界闘士の少女を戦闘不能にして葬識が首をかき切ろうとしたその時。 「ちょい待ち吸血鬼ちゃん。みんな殺しちゃったらロッテちゃんたちに不審に思われちゃうよ? この娘、僕ちゃんの好みだしブルマの刑で許してチョンマゲ!」 「敵はまだまだ沢山いるし、オッケーだよ☆」 ふたりの意味不明な会話に恐怖を浮かべる覇界闘士の少女の足を掴みあげると、少女のズボンを脱がしにかかる陣内。 「や、やめろ! 辱めを受けるくらいなら……」 ゴーン! 完全に襲われると思った覇界闘士の少女が悲鳴を上げて抵抗していると、突然鈍い音がして甚内が地面に倒れた。 「お前たちは、何をやっているのだ!」 ようやく追いついたアリアは、少女を手篭めにしようとしている甚内の姿を見て、思わず拾い上げた石を甚内の頭めがけて投げ放ったのだ。 「いって~、何って倒した敵をブルマの刑に――」 「どう見ても、ただの犯罪者なのだ!」 言い訳しようとする甚内に冷たい視線を送るアリア。 「女の子には、被せるだけでいいのですぅ」 甚内に冷たい視線を送りながら、ロッテは覇界闘士の少女のズボンの乱れを直したあとに、取り出したブルマを頭に被せた。 「助かったよ、ありがとう」 密着するブルマのせいで声はくぐもっていたが、覇界闘士の少女はすすり泣くような声でロッテに礼を言う。 「……これに懲りたら、悪い事はしないことですぅ」 ブルマを被せられた少女に、泣きながらお礼を言われるシュールな状況にロッテは複雑な表情で言葉を残し、仲間たちと共に地下空洞の奥へと足を進めた。 「!? まずい敵に気付かれたみたいだよ!」 「任せてください」 超直感で敵に気付いた悠里に、リオが瞬時に反応してヘビーボウを構える。 狙いを定めて放たれたアーリースナイプの魔弾は、敵の侵入を仲間に知らせようとしたスターサジタリーの足を穿って転倒させる。 そこにすかさずロッテのピンポイントの気糸が絡みつき、アリアの斬風脚が止めとなってスターサジタリーを気絶させた。 「リオ様のお手柄ですぅ。さぁどうぞですぅ」 ロッテからブルマを手渡されたリオは、え? 私もやらないといけないの? と困惑しながらも、空気を読んでロッテに従う。 (私なにをやってるんだろ……考えても無駄だよね……) 心の中でそう呟きながら、倒れたスターサジタリーの頭にブルマを被せるリオだった。 ●囮チーム 入口の見張りを倒した一行は、葬識の千里眼で召喚儀式を行っている場所までの抜け道を通って儀式を阻止するチームと、正面から派手に暴れて敵の注意を引きつけるチームとに分かれることにした。 「俺様ちゃんの教えた道順どおりに行けば、敵に見つかる心配はかな~り低いはずだよ☆」 そう言って葬識はウィンクひとつ。 「魔道書は頼んだのです! わたしたちもすぐに追いつきますからぁ!」 ロッテの言葉に送り出されて、悠里とノアノア、アリア、へーベルの4人は抜け道を奥へと進んでいく。 「んじゃこっちは、派手に行きますか★」 アクセス・ファンタズムで自慢の愛車ブラックエミリを呼び出した甚内は、乗車と同時にコンセントレーションを発動させる。 それを見た葬識は、すかさず後ろの座席に乗車して掛け声ひとつ。 「レッツGO~」 スロットルを全開にゴツゴツした悪路を疾走するブラックエミリ。 「こ、こらぁ~、わたしたちを置いてくなですぅ~!」 悪ノリしたふたりの後を追って駆け出すロッテとリオ。 彼女たちがバイクに追いつくまでの間、甚内の協力で殺人バイキングを楽しむ葬識。 でも女の子の敵だけは、甚内の希望で気絶させてブルマを被せるだけ。 ようやく追いついたその場の不自然な雰囲気を感じながらも、敵を誘い出すのに成功した葬識と甚内は多くの敵に囲まれていた。 まずは敵の排除が最優先と、ロッテとリオも戦闘に加わる。 「あなたたち、馬鹿なことは止めなさい。 不老不死なんて妄想に取り付かれて…… 想像してみて、死にたくても死ねない状況を…… 重い病に罹っても、どんなに酷い怪我を負っても、愛する人が先立っても自分は孤独にひとり取り残されるのですよ? 死を恐れ老いを遠ざけたいあなたたちの気持ち、分からない訳ではないけれど、考え直すなら今ですよ?」 敵と味方の配置を確認して、出切るだけ目立たない場所からヘビーボウを構え、敵に投降の意思がないかを確認したリオだったが、力に覚醒したことで強気になっているフィクサードたちにその言葉は通じなかった。 啖呵を切って攻撃の勢いを強めるフィクサードに、葬識の攻撃も思わず力が入って相手の首に刃が伸びる。 「まって! 首切りはダメなのですぅ!」 悲痛なロッテの叫びを聞いて、刃を引いて暗黒のオーラで敵を吹き飛ばすにとどめた葬識。 「運がよかったねキミ☆」 そう言って倒れた敵にブルマを被せた葬識は、一度体制を立て直すために甚内と共にロッテたちの所まで後退する。 対峙する敵は様々合わせて9人。 目の前の敵を倒せば、すでに倒した敵と合わせて、事前の任務説明の敵の数の半数近くを排除できる。 「リオ様は敵の射手へ牽制を、葬識様はわたしと一緒に敵前衛に範囲攻撃、甚内様は弱った敵を狙ってくださいですぅ」 瞬時に状況を判断して、仲間たちに的確に指示を出すロッテ。 「へいへい、お姫様★ 後でブルマを履いた写真撮らせてね★」 軽口を叩きながらも、ロッテと葬識の範囲攻撃で手傷を負った敵を倒す甚内。 仲間を狙う敵の射手は、リオの射撃が押さえ込む。 数に任せて徒党を組んだ敵など、卓越した戦闘指揮官の前では赤子の手をひねるようなものだ。 リベリスタたちは大した怪我を負うことも無く、その場には無数のブルマを被せられたフィクサードが転がるだけだった。 ●儀式阻止チーム 囮チームが派手に暴れているからか、抜け道を進む一行は敵と遭遇することなく地下空洞を奥へと進む。 細い通路から開けた空間に出ようとしたその時、前を歩く悠里の肩をノアノアがガシっと掴んで身を潜めた。 侵入者の迎撃に向かうフィクサードの集団が、目の前を騒がしく通り過ぎていくのを見送り、囮チームが上手くやっていることが確認できた。 「ふぅ、行ったようだな。 !? どうした悠里ちゃん? お腹でも痛いのか?」 肩を掴んだ悠里の様子がおかしいのに気付いたノアノアは、心配そうに悠里の顔を覗き込む。 「……いや、大丈夫だよ。 ちょっとね、前の戦いで受けた傷が痛んだだけだよ」 笑顔を浮かべて返す悠里だが、額から流れ落ちる冷汗は尋常ではない。 「マイヒーロー、へーベルが治療する?」 心配そうに手を差し伸べるへーベルに、本当に大丈夫だよと笑顔で返して先に進む悠里。 仲間に心配させまいと、悠里は元気さをアピールしようとずんずん進む。 程なくして複数の人間が呪文を詠唱する声が聞こえてきた。 「もうすぐそこなのだ」 「翼の加護よ、マイヒーローに自由の翼を!」 アリアの言葉にへーベルが短く力ある言葉を発すると、仲間たちの背中に小さな羽が付与される。 一時的な飛行能力を得たことで、足場の悪さを無視して一気に召喚儀式が行われている現場へとたどり着いた一行に、気付いた4人のクロスイージスが口々に声を上げながら身構える。 「我こそはアリア・オブ・バッテンベルグ! お前たちの無謀な企みを阻止しにきたのだ! いざ尋常に、お相手願おう!」 騎士が名乗りを上げるが如く、声高に響くアリアの声に敵の間に緊張が広がる。 金剛陣を展開するアリアに、光り輝くオーラを放って防御の姿勢でマグメイガスたちを守るように前に出るクロスイージスたち。 そこにへーベルが狙い済ましたかのようにピンポイント・スペシャリティの気糸を放ち、悠里が突進して壱式迅雷で蹴散らしていく。 自慢の防御力でなんとか持ちこたえたクロスイージスたちだが、表情に余裕がない。 「これで力の差は分かっただろ! 今すぐ儀式をやめろ! 僕にさえ勝てないキミたちが、リヴァイアサンをどうにか出来ると思うのか?」 真摯な眼差しを向け敵を説得しようとする悠里だが、フィクサードたちはそれに応じる気配はない。 そこに背中の羽でふわりと飛んで、クロスイージスの頭上を越えたノアノアは、振り向きざまに仲間たちに向かってフレアバーストを放つ。 「ふはははは! この魔王さまが貴様たちに加勢してやろう! リヴァイアサンごとき、我の手にかかれば容易く葬ってやるぞ。 ただし! 分け前はしっかりいただくがな! さあ、前衛はあの眼鏡の男を集中攻撃だ! 奴は肩を怪我しているからそこを狙え! 魔道士ども、儀式は我に任せろ、あっちの小娘に回復の隙を与えるな!」 そう言ってノアノアが魔道書に力を注ぎ込むと、マグメイガス6人で儀式をしていた時よりも格段に早く次元の歪が大きくなる。 それを見たマグメイガスたちは、魔王様が降臨されたぞ、勝機は我等にある、と歓喜の叫びを上げノアノアの指示どおりにへーベルに魔法を放つ。 それにはクロスイージスたちの士気も高まり、力を振り絞って悠里の怪我している肩を執拗に狙って攻撃を始める。 「ちょ、何やってるの、ノアノアさん!?」 「マイヒーロー……どうして?」 敵の激しい攻撃を受けながら、仲間のとった信じられない行動を問いただす悠里とへーベル。 「いつか、こうなることは分かっていた! 儀式を止めたければ、我を倒してみせろ!」 高笑いを上げながら、ノアノアは先程までの仲間だった者たちを見下すように言い放つ。 士気が高まったとはいえ、元々の実力差は歴然としている。苦戦しながらも群がる敵を蹴散らす悠里と、アリアと協力してマグメイガスたちを無力化するへーベル。 そこに他のフィクサードたちを壊滅させた囮チームが合流した。 「一体何がどうなっているの?」 困惑顔で仲間達を見回すことしか出来ないリオ。 「な~んか面白いことになってるじゃん★」 ニヤリと笑みを浮かべた甚内は、ノアノアに矛の切っ先をピタリと向け、葬識も不敵な笑みを浮かべて鋏のような武器をチョキンチョキンと鳴らしている。 「あーノアノア様だけズルイ! わたしもリヴァイアサン召喚する!」 ロッテだけは仲間を裏切ったノアノアを羨ましがって、全力疾走で駆け寄ろうとしている。 「こらーノアノア! いでよはダメなのだー!!!」 しかしロッテよりも素早く、背中の羽でノアノアに迫ったアリアが、背負い投げしようとして、勢い余って大雪崩落の大技で思いっきり地面にノアノアを叩きつけた。 叩きつけたその先には―― ちょうどロッテが駆け寄ってきて、ふたりまとめて激しくぶつかる。 「エンッ!」 とノアノアが妙な声で断末魔を発し、その下敷きになったロッテも苦しそうに呻きを漏らす。 「グフッ……お、重い……ですぅ…… たす……け……」 そこでガクっと意識を失うロッテ。 やれやれと悠里が魔道書を手に取ろうとしたその時、魔道書はボロボロと崩れて灰になる。 事態が飲み込めず悠里はノアノアを振り返ると、ノアノアは満面の笑みを浮かべていた。 「ボクが本当に裏切ったとでも思ったのかい? 作戦だよ、さ・く・せ・ん! 敵を油断させて魔道書から注意を逸らし、その隙にボクが破壊してやったのさ!」 そう得意気に言うノアノアに、仲間たちはだったら最初から説明しておけ! と激しいツッコミを入れまくる。 「敵を騙すには、まず味方から。っていうだろ!」 悪びれもせず言い返すノアノアの言うことも、最もではあるため仲間たちもそれ以上は言い返さなかった。 波乱の任務も無事終わり、残された地下空洞にはブルマを被せられたフィクサードだけが残るだけだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|