● 幼馴染みから両想い、恋が実り結婚、そして相手の不倫で現在仮面夫婦――そんな人生を歩み中な男がいた。 男は妻を愛している。 とてもとても愛している。 なので。 妻と相手がホテルから出てくる所を襲って双方、 「殺してやル」 このナイフに血を吸わせ殺してやる殺してやる。お前ら二人を此の世から消し去ってやる。 「病んでいる? 俺って今流行のヤンデレって奴だよな。だって相手を殺しちまうんだもんなぁ! 上等だ上等だぁ!」 浮気相手はちょいヲタだったはずだ。 ヤンデレとかいうヲタクなカテゴリー? そう見えるように事件を起こしてやるさ。 そしたら「またヲタクが事件」とかなんとか新聞で叩かれて、奴も地獄で臍をかむだろう。 胸を焦がす情念は、何故か「ヲタクを貶めたい」という方向に歪む。その情念が彼が手にした力をより純度の高いものへと変じていく。 「あぁ、ヤンデレの俺が二人を殺すんだ」 ヤンデレ――そのキーワードで『キン!』と脳の奧で殺戮衝動の濃度が上がるのを感じた。 俺 は ヤンデレ だ。 ● 「そもそも浮気は彼、金山が先にやったの。あと趣味のクルマにお金をつぎ込んで借金だらけ」 「はぁそれはまた……身勝手な話ですね」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の嘆息に 『makeshift』高羽 祈 (nBNE000241) は呆れを示すように肩を竦めた。 「金山の力のキーワードは『ヤンデレ』だよ。自分が『ヤンデレ』であると信じる心が彼のノーフェイスとしての力を高めるの」 じっ。 真っ直ぐに見据えてくる翡翠とルビーが却って辛い。 「だから彼の『自分をヤンデレ』と信じる心を、折って。そしたら倒すコトができるようになるから」 何言ってるか噛み砕いて説明すると、だ。 ――金山はそもそもヤンデレをわかっていないので、リベリスタのみんなが『ガチのヤンデレ』を見せつけたり語ったりして彼をドン引きさせろ。 「各々語っても、あなた達で適当に組んで『ヤンデレ役』と『ヤンデレられる役』を決めて会話したり……それが混在していてもかまわないわ」 好きにやれってコトですね、わかります。 「あの」 祈は素朴な疑問と言いたげに手をあげた。 「どうしてわたしが呼ばれたんでしょうか? ヤンデレとか知らないんですけど」 「あなたは今までの人生語ってくればいいから」 イヴはさくっとぶった切った。 祈は「はぁ」と曖昧に頷く。 彼の携帯端末に下がる愛らしいアクセを模した盗聴カメラ(スイッチOFF・偽造映像録音仕込み済み)は今日も元気だ。あ、弟からのプレゼントです。 イヴの瞳には、このヤンデレ&被ヤンデレのクロスブリードが……とかそんな感じのものが映っている。 「あなた達が斃せないと奥さんとその相手が殺されるから、頑張ってね」 面倒くさそうに瞼を下ろし仕切り直すと、イヴは締めくくるのである。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:一縷野望 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月18日(日)22:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夜を征く 探偵からの報告電話を切ると、30に手が届くぐらいの男は、ジャンパーの胸ポケットに隠した刃物を押さえ眉を寄せる。 疼く。 心がむせび泣くように、背中に背負った昇り龍がくしゃりと縮む。その度に膿んだ傷が痛むように心にズクズクとした力が満ちていく。 探偵が告げたのはラブホテルの名前、妻の裏切りはあっさりと確定した。 「くっそ、赦せるか……あ」 また震える携帯バイブは、カノジョからの「今度のドライブだけどさーあー」なメールを運んできた。 「メールの相手があなたがヤンデレてる人? 満たされてるようで羨ましいわね」 みっともなく下がる目尻と紅潮する頬は恋の証。そう読み取った『以心断心嫉妬心』蛇目 愛美(BNE003231)は、眼帯で隠していた紅を晒し怜悧な声で言い放った。 「や、違う。ヤンデレてる先は……そう、俺の妻だ」 あ、考えてから答えた。即答じゃない点に愛美の瞳がますます冷たく尖る。 「浮気男が浮気され返して殺すって……ただの痴情の縺れじゃない」 それでヤンデレ名乗るとは片腹痛いわ。 「大切なのは『彼』を愛してる、ってことです」 うふふ、と口元に浮かれ三日月刻み『三高平妻鏡』神谷 小夜(BNE001462)は陶然とした眼差しで、金山の瞳を覗き込んだ。ごめん嘘、金山は映ってない。 「俺はホモじゃねぇ!」 「私、ヤンデレだよねって言われるんですけど」 うん、ホモなんて言ってないよ? 「まぁ、そうなのかもしれません。あ、えっと『彼』っていうのは……」 小夜は自分の事しか語ってないからな! もじもじ。 頬を赤らめ巫女装束の胸押え、彼の『悪戯』が自分の気を惹く為だと気がついた瞬間からの(一方的な)愛情を語り出す。 「くっ」 得体の知れない恐怖を感じた金山、だが視界の下方に入ってきた烏羽髪にほっと和む。 「こんばんは」 ぺこり。 まずはきちんとお辞儀、おにーちゃんに恥ずかしくないゆいなでいられるように。 『歪な純白』紫野崎・結名(BNE002720)の無垢な微笑みに、金山も釣られてつい「こんばんは」 美人でも頭がアレな女はダメだ、こんな時の幼女は格別に癒され……。 「えっとね、ゆいなのだーい好きなおにーちゃんはね……」 こいつも突然語りだしたぞ! ヤバイ、同類だ!! 「どこか行っちゃったけど、帰ってきたの」 「そ、そう……」 でも子供相手だからか否定はしない金山、隙を見て背を向けダッシュ。 くるり。 回り込んだ少女は、視界に映ろうと懸命に背伸びししゃべり続けた。 「それからはずーっと一緒なんだよ? えへへ」 おにーちゃんと一緒にいる『嬉しい』を分かち合いたい、そんな純粋さに兄でもある『makeshift』高羽 祈(nBNE000241)は全力で寿いでいた。 「子供達を真っ当に育てる為にも、そうした偏りは余り出さない方が良いんだろうけれど」 これから色々危険なので人イラズの結界を敷きつつ、双子の若き父『祈花の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は、小さな苦笑を浮かべた。 「悪いけれど高羽」 既に始まったヤンデレ語りを前に、ふっと瞼を半分下ろし彼は続ける。 「少しだけ付き合ってくれるかい」 おとーさん、己のヤンデレパトスを解放する気満々です。 「まぁ、お仕事ですしね」 「そうそう、ヤンデレの定義はもう大丈夫かな?」 依頼を受けた時はわからなさそうだったしと、遥紀は気遣うよう問い掛けた。 「YANDEREとは何だ? 俺のようなおっさんには何の事やらさっぱりなのだ」 見た目だけは26歳ズに馴染む『無銘』熾竜 ”Seraph” 伊吹は、遠くから歩いてくる可憐な藤色と、それをじっとりと追う金髪にギリッと奥歯を噛みしめる。 (「ヤンデレ……」) 視線の先の藤色は灰羽をはためかせ、小さく下を向く。 「シエルさん♪」 名を呼ばれ『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が振り返れば、向日葵のように艶やかな手放し笑顔の『赤錆皓姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が屈託なく手を振った。 「わたしシエルさんが大好きです♪」 大好き♪ 「まぁ」 シエルもふわり、幸い抱き小首を傾げる。 (「其れだけ想われるなら『きっとその人は幸せですね』」) ……それ自分のことだよね? と、震える声で問い質したい。 「シエルさん」 だいすきだいすきだいすきだいだいだいすきだいすきだいすきだいだいだいすきだいすきだい……。 「クッ!」 その声は耳障りなノイズ、決して此方に向きはしないから……ならばいっそ喉を潰してしまいたい。 伊吹、YANDEREわかってるじゃねぇか――でもそんなの気づかず高羽は笑みかける。 「あの、伊吹さん。小鳥遊さんからお借りした資料まわしましょうか?」 資料=ヤンデレが出てくるアニメとかラノベ。 読んだらしい、仕事だから。 「教育上よくないな、その本」 むむと遥紀は唇を曲げた。 真っ当に育っている愛しきおひさまとはなには、そんなモノは与えたくないな……そう眉を潜める彼は、この場にある唯一の良心に見える。 …………まだ、な? 「まぁ、役にはたたないかもしれません。結局読んでもどこが病んでるかわかりませんでしたし」 「定義は人それぞれだしな」 無自覚だと鷹揚に語る台詞をさらり受け流す遥紀。その瞳から徐々に薄れゆくハイライトに、もうひとりの『お兄ちゃん』な『眼鏡の豚』拙者・琢磨(BNE003701)が、ごくりと生唾を呑んだ。 (「あっ……もうこの時点で彼が可哀想に見えるんすけど……」) ぴっちぴちTシャツに染みた汗がもわり、曇った眼鏡を指で拭けば、ヤンデレベリスタ達に包囲された金山が現われた。 ●どうしよう、話が通じない 「いつもわたしのそばにいて助けてくれる、わたしだけの天使」 くるりん★ その場でまわる舞姫に、伊吹はサングラスの奧から忌々しげな眼を向ける。 「前から気に喰わなかったのだ、シエルを見る時の、俺には決して見せないその笑顔がな」 その隻眼は唯ひとりしか写さない――ならば力尽くで。 「シエルさんがわたしのことを心配してくれるの」 その声はシエルの胸を至福で満たす。 (「舞姫様……いっそ……再起不能になって下されば……」) ずっとおそばで看病いたしまするのに。 動けぬあなたにご飯を食べさせ食べさせ食べさせ、ああ、動くと治りが悪くなるから手枷足枷……。 「わたしだけを見てく……」 ぶつん! 舞姫の声が止まる。 舞姫の胸が鮮血で、染まる。 「え? あれ……舞姫様??」 妄想が現実と花咲く様に、シエルは表面上は困惑を装いつつも心では悦楽を貪っていた。 (「ああ、やはり戦姫には鮮血の赤錆色がよく似合う」) 伊吹もまた、血と泥に塗れた舞姫に興奮を隠せずにいた。 「あは、やられちゃった」 血の赫があいた方の瞳も塗りつぶす。舞姫もまた苦痛よりなお甘い想いに浸っていた。 「シエルさん、治して」 わたしだけを治して、癒して。 血も肉も内臓も全部全部シエルさんの……。 「も、の……」 「――」 舞姫への伊吹の追撃を呆然と見るのは金山です、この度のターゲット金山さんです。 どうしよう。 てか、どうしてこの人達突然目の前で殺し合いはじめたの? 駄目だ巻き込まれたら俺が死ぬ。 「非常識じゃねぇかよ、なあ?」 「いいんじゃないかな」 一番マトモに見える遥紀に同意を求めるが、彼の顔にはよろしくない影が堕ちている。 「別に、黒兎の奥さんが巻き込まれないなら俺は構わないよ」 その声が明朗だからいっそ怖い。 「黒兎って誰だよ」 あーあ、聞いちゃった。 「そんな声で呼ぶなよあの子が腐るだろう」 「腐……」 「君の爪の間にアイスピックを入れて爪を一枚一枚剥いであげないとだって君が悪いんだろう俺の大事な大事な子に手を……」 「いやぁあああ!」 なんか更に怖い単語が続いてるけど聞こえない聞きたくない! 「相手に近付く存在に害を為すタイプね」 ゼイゼイと咳き込んでいたら、隣に忍び寄る愛美の声。 「相手に好意を持ってる……と、思い込んだ挙句に攻撃・殺害するパターン」 「俺、黒兎なんて奴どうでもいいよ!」 「俺の可愛いあの子が……どうでも、いい?」 その書は何故かアイスピックのように金山の爪に突き刺さる。 「相手の悪評を流して、孤立した環境を作り出すのもこの部類」 淡々と解説する愛美が怖い、マジ怖い。 鼻血吹きながら思う。 この中で一番話が通じそうなのは、実は木の陰で(でも肉が多くてはみ出してる)琢磨ではなかろうか? ヲタクは嫌いだ。 嫁が年甲斐もなくツインテールになりよくわからん単語(リバとか)言い出したのも、みーんなあいつのせいだ。 だがしかし。 この場で突破できそうなのは彼しかない、行くぞ! ――もふっ☆ 「アガたんを視覚化し易い様、抱き枕持ってきました」 満面の笑みで銀髪ツインテの美少女と並ぶ(ように枕を持つ)琢磨である。 「アガタン?」 「違います、ア・ガ・た・ん、です!」 たんはひらがな、此重要。 「ぼ、ぼくの、世界に1人だけの妹っす><」 頬赤らめアガたんに頬ずり。肉で押されて曲がった枕のアガたんが微笑んだように見えた。 「現場まではちゃんと仕舞って来たっす!」 TOPはわきまえると荒い鼻息の琢磨に、目眩を覚えながらも金山は持ち直す。これはヲタクだ、ありがちなヲタ……。 (「仕方ないなぁお兄ちゃん。私が金山さんに話しかけてあげるよ」) 「! の、脳に直でキタ?!」 『はーいここからはあがただよ☆』 違う、此はヤバイ人だ! くるり、Uターン。 「あ、えっと『彼』っていうのは、とある男性で、職業がフィクサードなんです」 すると目に飛び込んできたのは胸で手をぐーにして頬染める小夜だった。恋する乙女、しかも巫女さん、なんだろう神に傅く彼女見てちょっと心が持ち直した。これなら話ができそうだ。 金山、既に当初の目的を完全に見失っている。 もうこの時点でリベリスタの勝ちも同然だ。 ――てか、あんたらやり過ぎだよ! ブレーキねーじゃねーですか!! 「敵との道ならぬ恋は燃えるな! 俺とアイツもライバル会社の営業同……」 「違います」 『彼』の使わすモノにも遥かに劣るゴミ虫を見るように、小夜は矢で刺した。 「倒したら彼とずっと一緒に居られるよう、生首を持って帰って防腐処理して家の戸棚に飾っておこうとか、そう考えちゃう程度に大好きなんです」 え、防腐処理? ……さすがに聞くと深みにはまるだけだと学習した。 「相手を殺害することで独占するタイプ、相手の全てを自分のものとするパターンね」 「な、ああ、そうそう、俺もそうなんだよ!」 ――思い出したよ! 俺、奥さん殺そうとしてたんだ。 ぽむっと手を打つ。愛美の解説で金山は己を取り戻した。 が。 「カニバリズムに走ったり、相手の体の一部を大切にしたりもするわ」 「かにばりずむ?」 その説明は呪いのように金山を蝕む。 「食べるのよ」 あー、実際に弾丸が蝕んでますね。 「ッ?! てめェらヲタガキの手先かよッ」 とかなんとか、己の正常領域を呼び出そうとするけれど、 「合鍵作ったから、たまにおにーちゃんのお部屋のお掃除もするよ」 結名がさっくり邪魔をする。 「勝手にかよ?!」 こくり頷く幼女はさも当然と続けた。 「ゆいな以外のおんなの気配がないかチェックしないと」 ぇぇー。 夢見せてくれよどうして小学校に行くか行かないかの子がそんな事言うんだよ! 「独占欲が強すぎて四六時中確認できる環境を作るパターンね」 そうだよね、脳内だったらずっと監視できるよね! すかさず入る愛美の解説。正直いらない、疵が余計えぐれるだけだから。 「暴力を振るうことで精神的に束縛する場合もあるわね。でもあの子は違うようだわ」 「前は鍵が定期的に変わってたから、たまに羽で飛んで窓から入ってたかな?」 さらに結名は鍵の掛かった窓を開ける方法(ふりがな:はんざいこうい)を披露してくれた。 「それ、お兄さん絶対嫌がってるからっ!」 「そんなことないよ? ねー、おにーちゃん?」 虚空に向けてこくこくと何度か頷いた幼女は、得意気な笑みの後、ぷーっと頬を膨らまして金山の前に回り込む。 「退けえええ!」 頼むから俺を行かせてくれよ……そんな感じで振らせた雨は鳩のフン程度だった。 ●俺危篤、妻帰れ 現状。 『お兄ちゃんてば私がいてあげないとダメなの。うふふ、ダメだから良いんだよ? お兄ちゃんが私を必要としてくれるから私は存在出来るの』 ――金山の脳内はエンドレスアガたんです。 でもアガたん拒絶すると他の人のヤンデレが飛び込んでくるんだ、右向いても左向いてもヤンデレだよ! 「逆に彼がリベリスタになっても何か違う気がするので、やっぱり敵同士の関係のうちに殺っちゃって、思い出とともにずっと一緒に居るのがいいかなー、って」 イイ女が語る恋バナ☆そんな中にどうして『殺』って文字が入るんだろうね。 小夜が何かと縁があると語るのは、常に一方方向なんだ、でも気にしてないんだ。 「舞姫様……私の腕の中でお眠り下さいまし」 「あ、シエルさん、シエルさぁん!」 「ぐはぁっ!」 さりげない装いで金山を巻き込みシエルが舞姫を灼く。金の髪の戦姫はなおも破顔し、藤姫へ血塗れの頬を寄せる。 「そんなにされてもまだあの女の名を呼ぶのか……」 絆に愕然とする伊吹に、シエルは陶然と嘯いた。 「勘違いなさらないで下さね」 伊吹を助けたのではなく舞姫を独占する為に傷つけたのだと嗤うは、愛し愛されしヤンデレ外道。 「……伊吹おじさま? なんでシエルさんに話しかけてるの?」 満身創痍だったはずの舞姫は、撥条仕掛けの玩具が突如動き出すよう立ちあがり伊吹を素早く滅多刺し。 「ようやく俺を、俺だけを見てくれたな。何度でも壊してやる」 舞姫の腕で溶けあいひとつになれる刻までは斃れるものかと、伊吹は地面を掻いて立ち上がる。 交差する紅、爆ぜる柘榴――いいかお前ら、運命削らずそろそろ寝なさい。 「ひ、ひぃ」 ドン引きする金山の脳内には、ずっとずっとアガたんが歌い続けている。 『だからね、いつもちょっとずつお兄ちゃんから自信を奪うの』 「やめてやれよー!」 「え、あがタン、そいつと何話してるの?!」 琢磨が嫉妬に身もだえ、こちらのお兄ちゃんは使えません。 てことで、ひとしきり黒兎さんへの想いを吐露して現世に還ってきた遥紀が、もう1人のお兄ちゃんに問い掛ける。 「ね、高羽も大事な弟に虫が付いたら嫌だよね? 五感を持って生まれた事を、祝ってあげたくならない?」 それめでたくないから! 帰ってきてないよこの人! 「高羽の話も聞きたいな」 「虫は全殺しですね」 それはそれとして、祈は金山が死ぬ前に聞いておきたい素朴な疑問を唇にのせる。 「浮気していると判っていたのに、どうして奥さんを外に出したんですか?」 「はぁ?! 夫婦なんだからふつーに鍵持ってるだろ! あの嬢ちゃんみてーに硝子割らなくてもいいようによ!?」 指さす先、あどけない少女が桜のように淡く笑む。 「ゆいなね、将来はおにーちゃんと結婚するの!」 ――結名の話は既に4ループ目に突入しています。 2ループ目で「ご飯のお残しが多いってむしろ減ってないよね、だっておにーちゃん存在してないよね」って言ったらクリティカルに躰をぶっ壊されました。 「え……」 さも解せないと小首を傾げついでに引き金も引く。 「手枷かけて足の腱切らなかったんですか?」 うん、やったやった。 「あははは! そうだよね万が一、大切な黒兎が離れるとしたら、俺だって家から一歩も出さないよ」 方法を明確にしろ、いや、しなくていい。 その後、全部『俺/私』がやってあげるという点で意気投合する26歳達である。世話灼き属性だもんね……あ、文字間違えた。 「彼らは排除系と共に、罪悪感や心の傷という形で相手を束縛するパターンも見られるわ。複合系ね」 愛美さんは淡々とずーっと解説入れてます。 金山が死路の旅路に持っていく知識はヤンデレたっぷり、地獄の渡し船の賃金に最適、やったね! 「おにーちゃん、もっとなでてー♪」 なんで結名の髪が撫でられるように動くのか? 答え、無意識にそう躰を揺らしているからだ! 「まだ居たの? 金なんとか様」 やまだよやま! シエルわかっててやってるだろ?! 「つぎは、おまえを、ころせばいいのね」 ほらシエルの声で舞姫が生き生きしてき……ずっと生き生きだったな、この娘。 「ねぇ」 ひとしきり語った小夜が、すっと金山の前に立つ。 「で、貴方、ヤンデレなんですか?」 どうしよう、頷いても拒否しても殺されそう。てかもう、金山の命は風前の灯火なのだ。 「もしも、殺すのがヤンデレとか思ってるなら全然違いますよ? 殺すのは手段であって目的じゃありません」 愛し抜いた結果、殺す。 躊躇わず、殺す。 『お互いに必要とし合うって……』 この場の全員がアガたんにシンクロ、する。 ――愛でしょ。 事切れたため、それら奏でた彼らの表情を見なくてよかっただけ、金山は倖せだったのかもしれない。 「ここに病院を建てよう」 血の海に跪き紡がれた伊吹の声は平静だった。 そうだね。 びょういんがひつようなのはおまえらぜんいんだとおもいます。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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