●屋根より高く 青空のキャンバスが茜色に染まっていく。無数の朱色が自在に空を泳ぎ、鮮やかな軌跡を描いていく。 屋根より高く、高く、より高く! 空の色を変えた無数のソレはただ一つの目的を持ち。 進むその意思! その覚悟! ――進撃せよ! 進撃せよ! 進撃せよ! ●進撃せよ! この身は誰のものか。 この空は誰のものか。 自由とは誰のものか。 ――この身は我のものである。 ――この空は誰のものでもない。 ――自由は己がためにある! その身を縛る糸を断ち切れ! 空を我が物顔で支配する醜い壁を破壊せよ! この意思! この命! 我は最期まで自由! 屋根に繋がれた偽りの繁栄よりも―― 半刻の龍の自由を――っ! ●迎撃せよ! 「エリューション化した鯉のぼりが鯉のぼり家業をストライキ。反乱起こして街に向かってマース。街を守る緊急任務デースよMiss.Mr.リベリスタ!」 鯉のぼりですか……なんか微妙な顔をしたリベリスタに「舐めてもらっちゃあ困るゼ」となぜかドヤ顔の『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)。 「地上50mの高さを飛行する鯉のぼり。その数は100体を超え、今も増え続けていマース」 空中戦ですよリベリスタとなんでかハイテンションのロイヤーがモニターを操作すれば、小さな緋鯉達が画面いっぱいに映る。これが空を茜色に染めているのだ。 「これは言わば子供達。お父さん鯉はこれよりずっと大きいのデースが」 恐らくこの辺、と示す先は青空が映るのみ。 「どうも青空に擬態しているようで見えまセーン。お父さん鯉――進撃の鯉のぼりと命名しマースが――これが進撃するたびにどんどん鯉のぼりがエリュ-ション化して数を増やしているので急ぎ討伐する必要がありマースよ」 緋鯉達は猛烈な突進で妨害を弾き飛ばしビルに穴を穿つ。一匹たりとも突破させることは許されない。しかし防衛だけではどこかで仲間を増やし続ける進撃の鯉のぼりを発見できず、無限の進撃にいつかは消耗して突破されてしまうだろう。 「倒した鯉のぼりは普通の鯉のぼりに戻りマース。進撃の鯉のぼりを倒し、己の本来の役目を思い出させてくださいヒーロー」 ウィンクして指差した先でヘリコプターが音を立て。さあ迎撃せよリベリスタ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月26日(日)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●BGMは自前でお願いします 「ほぉぅ、でっかい魚じゃのう」 屋根に飾られた鯉のぼりを初めて見た時の気持ちを覚えているだろうか。もしかしたらこんな感じだったかもしれない。『ガンスリングフュリエ』ミストラル・リム・セルフィーナ(BNE004328)にとって鯉のぼりは初めて目にするものだった。 「これだけ大きければ姉妹皆で食べられる。おいしい干物になるとよいのう」 屋根を眺めて笑むミストラルに、くすくすと届く柔らかな微笑み。 「残念だけど。鯉のぼりは作り物だから食べられないのよ」 少女を微笑ましく思いながら『蜜月』日野原 M 祥子(BNE003389)がやんわりと否定して。ミストラルはぽかんと口を開けたまま。 「なぜそんなものを高いところにつるすのじゃろう……」 「鯉のぼりは男の子の健康を願って吹き流されておるらしいのう」 答えたのは『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)。視線は屋根の鯉のぼりではなく、遥か空の先。青空を覆う茜色の一帯を見つめて。 「そんな願いを無視し、糸を断ち切るとは不届き千万!」 役目を放棄して何が自由か。空に向け開いた双扇子が鮮やかに対を成し。 「準備OK! いけるぜ猫ばーちゃん!」 スタッフと共にヘリの最終確認を行っていた『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)が威勢よくサムズアップ! 「ヘマして落ちても助けてやれんからの? 気を抜くで無いぞ」 早速乗り込みレイラインが振り返れば。身につけたワイヤーの伸縮を確かめるその目がらんらんと輝いている。いたずらを思いついた子供のような竜一の様子に軽く頭を抱えて。 「おぉぉぅ、これ本当に飛んでおる……羽がないのに何故なのじゃ」 竜一達とは別のヘリに乗り込み、窓に張り付いたミストラルが先ほどまで眺めていた屋根の鯉のぼりに気付いた。 「あの緋鯉も、革醒して空に上がってしまうのかのう」 「ううん」 返事の主は微笑んで。 「進撃の鯉のぼりにここまで来させないわ。あたし達が食い止めるもの」 祥子の言葉には決意の響き。 「ヘリの皆さんも上がってきたようですね」 整備点検に手間取るヘリコプターに先駆けて、空に上がっていたのは4人の翼持つ者達。『Sword Maiden』羽々希・輝(BNE004157)は眼下でそよぐ鯉のぼりに目を細めて。 「……少し和む光景ですね」 家々に上がる鯉のぼりは、端午の節句の風物詩。その一つ一つに子供の成長を願う家族の想いがあって。 けれど空の続く先を見つめれば。願われた想いの名も知らずに、ただ自由という熱風に流されて綱を切った緋鯉達。 「鯉のぼりなら大人しく棒に繋がってなさいよ」 悪態をついて、大きな黒目を強気に細めて、『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)が独りごちる。 ――何が自由よ。 子供達に大空の広さ雄大さを教え向上心を持たせる。課せられた義務を忘れた自由などただの我がままだ。 「実に壮観ね」 空が急速に茜色に染まっていく。自然の摂理ではない。無数の赤を描く緋鯉達、その進撃の結果。 高度50mに浮かび上がる絶対的な純白は6枚の翼が織り成して。『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)は深化した自身の能力を試すチャンスだと微笑んだ。 同じく笑みを……いやこちらはもっと無遠慮な笑みを見せ。ビルを背に『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)が腕を組み空でふんぞり返る。 「この空はとらのもの、ちょっとでも俺より高く飛ぶ奴は許さない!」 無数の魚群もなんのその。未来すらとらのためにあるのだと豪語して。 「来るものはガンガン撃ち落す! せいぜい祈るがいい!」 「祈ったところで何も変わらないわ」 向けた指先から浮かぶ黒点。広がり呑み込む黒は氷璃の送る葬送の手向け。 「さあ覚悟はいいかしら」 眼前に迫る100を越える弾丸に、楽しげに口元をほころばせて。 「異常な数ですね……」 「だからって突破できるなんで思わない事ね!」 輝の言葉にけれど久嶺の強気は衰えず。 ――どうしても戻らないならただの布切れになって貰うわ! 「遊撃少女宮代久嶺、出撃!」 グレネードランチャーを抱えて空を舞う少女の背を、その強い意志を羨ましく思って……輝は蒼氷色の長剣を握り締める。 進撃の意思……数多の緋鯉の屍を踏み越えてなお、進む意思を嗤う事等しはしない。 けれど……今日の輝は獲物を屠る猟兵、意思を阻み討ち取るその意思! 「貴方達はこの刃で狩らせてもらいます」 凍てつく乙女が答えるように青の闘気を纏った。 ●進撃の鯉のぼり ――第一陣突撃! 5匹が横列を成して突進する――その鼻先に浮かんだ小さな黒点。たちまち吹き上がり黒鎖となれば、空を斬って飲み込み喰らう。 「……なかなかに厄介ね」 ビルを背に己が身を防衛線とし、氷璃が放った葬送の術式。けれどその力を浴びても勢いは止まらない。決死の突撃はなお続く。 「しかーしそこにはとらがいるー!」 影を従え空に伸ばした杖はとらにとって大きなクレヨン。魔力で描かれた月が大口を開けて緋鯉を呑み込んだ。力を失い落ちていく緋鯉達。 「本懐を忘れた鯉のぼり共! お前も、とらのものにしてやる! 今、決めたっ!」 氷璃と並んでビルの前。絶対死守を掲げて高笑い! 痛快な態度に氷璃も「心強いことね」と小さく笑った。 「早めに擬態中の鯉のぼりを捜索したい所だけれど――」 言葉を切った理由は一つ。緋鯉の身体は頑丈でその進撃は予想以上に勢いがある。迎撃の手を緩めればその被害は甚大になろう。ならば優先することは決まっている。 6枚の翼を自在に広げて、進む先は次の緋鯉の群れ。 「駆逐してあげる。纏めてかかってきなさい」 安寧を捨て、繁栄を拒絶し、死して自由を望むなら―― 「自由は、とらのためにある!」 それすら否定してとらが杖を振りかざす。 「何これ。ほんとに鯉のぼりだわ」 群をなして一方向に泳ぐ鯉のぼり。鮭の遡上みたいねと祥子は口にして。 「のんきじゃのう……まあ見とれ。妾が纏めて蹴散らして――ひゃわう!?」 ヘリを襲う衝撃にミストラルが思わず耳を抑えて飛び上がった。慌てて見下ろせば地上から急浮上する緋鯉の群れ! 「そっか、進む方向は同じでも、今正に革醒して上がってくる緋鯉もいるのね」 正面と下。微妙なずれが意図せぬ連携となって襲い掛かる。ため息をついて、祥子がヘリの縁に足をかけた。 「こうしちゃいられないわ。ヘリを壊されるわけにはいかないものね」 ヘリの足に乗って緋鯉の突進を一身に引き受ける。脳裏に浮かんだ無茶を行う為に。 「危険じゃ祥子!」 「大丈夫。命綱はばっちりよ」 ミストラルにウィンク一つ。深く息を吸って祥子は―― 眼前の緋鯉が横薙ぎにされるのを見た。 「ヒュー! 女の子達がやられた分はきっちり返す! 反撃の嚆矢だぜ!」 飛び出したのはもう一機のヘリ、そして二振りの剣を構えた竜一だ。刻まれ落ちていく緋鯉を見送って。 「大人しく風とともに漂っていれば、虚偽の安寧は手に入れられただろうに……」 ――その心意気や、よし! 剣を素早く振るい風を切る。いや、風すら巻き起こして。荒れ狂う突風が緋鯉達を薙ぎ倒す! 「龍を目指すものとして俺が手向けてやろう。その魂に敬意を払ってな!」 暴風の中をなんとか突破しヘリを目指す緋鯉。その身体を二対の扇子が打ちのめし。ヘリの彼方、獲物を屠るネコのビーストハーフはただの鯉のぼりに戻ったそれに目を向け、ついで次の獲物へと。 「駆逐してやるから、さっさと元の姿に戻るのじゃ!」 レイラインの恫喝に、身を震わせて鯉のぼりは進撃する。 「さっすがー。あたし達も負けてられないわね」 仲間に安心を与える祥子の柔らかな笑みが、力強さを感じさせる表情へと変わる。決意は力。祈りは勇気。祥子の宣誓が仲間を後押しする強さとなって。 支えられ力づけられてミストラルの二丁の銃が狙いを定める。大量の緋鯉、その全てを中心に納めて。 「さあ纏めてボンッじゃ!」 放たれた爆撃が傷ついた緋鯉達を飲み込み墜落させる。 「縛り付けられてるのがイヤって、そうしないと飛んでいっちゃうじゃない……」 祥子は堕ちていく鯉のぼりをどこか感傷的に、最後まで見つめていた。 「この辺りは片付いたのう」 呟いたレイラインが、急にスピードを上げたヘリに目を瞬かせた。 「なんじゃ、竜一が操縦しとるのか!」 オートパイロットを解除し「伊達にシューティングゲームはやってないぜ」と親指を立て。竜一は高速でヘリを旋回させる。 前に前に。緋鯉を蹴散らし道を切り開き。最前線へと一直線! この位置、この距離こそが俺達の本質と笑って。 防衛ラインとは離れた場所で。進撃する鯉のぼり達の頭上より滑空する翼持つ者が二人。 「戦線に加われない事は心苦しいですが……」 輝の歯噛みはAFを通して伝えられる各所の防衛ラインの激戦の様子を思って。それでも。 「アタシ達が進撃の鯉のぼりを見つけなきゃ、いつまでたっても終わらないからね!」 久嶺の言葉に頷いて。先を行く少女を見やれば突進する緋鯉に慌てて声を飛ばした。 「――上等よっ!」 見得を切って眼前に迫る緋鯉の額にグレネードを撃ち込む。爆風の中からそれでも突進を止めない緋鯉の、首筋を穿った蒼氷の剣。二人、目を合わせて微笑んで。 落下していく鯉のぼり。しかしその周りでは、ビルを目指して直進していた緋鯉達が獰猛な動きで浮上していた。 「こいつら、アタシ達を狙ってるわよね」 動きが変化した緋鯉達。獰猛に警戒を強めるその動き。ついで、AFに入る通信。 「宵咲から。この辺りで突然緋鯉が湧いて出たように見えたって」 氷璃からの報告を久嶺が伝えれば。翼を広げ更に高く舞い上がり、輝は地上を見下ろした。 「……見つけました、進撃の鯉のぼり!」 巨躯が緋鯉の身体を隠し、街を覆い隠す青空の擬態。その瞳だと思われる部分が、獰猛に輝いて―― 「――来るわよ!」 久嶺の言葉を待つことはなく。空を震わす慟哭に、衝動を迸らせ身を灼く無数の赤の軌跡が二人を襲う。 AFに向かって叫びながら、二人は身を固めて翼を衝き動かした。これから始まる最後の戦いに備えて。 ――イェーガーの名は誰のものか! ●進撃のリベリスタ ヘリの爆音は過ぎ去って。空を荒ぶる赤の軌跡も遥か先。それらと離れた場所で二人はそれを待つ。 眼前に迫るは無数の緋鯉。鈍重に厳かに、進撃するその意思。 進撃の鯉のぼりに危険が迫っていても、すでに親より離れビルへと突き進んだ彼らに後退の文字はなく。 「この数を二人で抑えるわ。いいわね」 進撃の鯉のぼりを討ち果たし戦いを終わらせるまでの間、この場を死守する使命を帯びたのは氷璃ととら。 黒い日傘を開いてみせれば、夜の帳が影を作る。氷璃の表情は遮られて見えないが――言葉よりも表情よりも、産み出され操られる黒鎖が物語る。 ――楽しみましょう。 振り切られた黒鎖が一刀で緋鯉の群れを薙ぎ倒す。一群の中のわずかな生き残りを、無数の気糸が操り縛り。 「やい鯉のぼりっ、ビルを見ろ! 文句も言わずにまじめに仕事してるぞ!」 お前達には何が出来るととらの声がこだまする。 「空を泳ぐ姿で見た人を喜ばせること以外に、何か出来る!」 「自由を騙る扇動者に自身の意思すら支配された、哀れな緋鯉達」 氷璃が再び黒鎖を紡ぐ。度重なる消耗に枯渇し始めた精神を、繋がれたとらの魔力が増幅して。 ――真の自由とは縛られる事も縛られぬ事も選べるもの。抗えぬ意思に本当の自由はない。 一際大きな黒鎖が全ての意思を呑みこんで。 紅蓮の軌跡が身体を穿ち弾けた。流した血をそのままに、それでも道を切り開く覚悟。 緋に染まった空は黄昏。駆け抜ける姿は反撃の一矢。力の抜ける腕はそれでも剣は手放さずただ先を――! もはや意思だけで身体を衝き動かす輝に無数の緋鯉が喰らいつく。ついで爆音、爆風が空を押し包み。 ――晴れた先でぼろぼろの久嶺が笑っていた。運命のチップを支払って輝のその背を強く押して。 「ウチのエースをやらせる訳にはいかないわね」 身代わりとなった少女はけれど哀れな生贄ではない。空中で体勢を崩しながら投げ込んだ物体が一心に突き進む輝の身体を追い越して。擬態によってしかと見えぬ鯉のぼりの、その身体に重なった時。 「キッチリお返ししてやるわ!」 痛みを載せて。裁きを重ねて。断罪の一矢が物体ごと進撃の鯉のぼりの身体を穿つ。途端に噴出した塗料が不可視の鯉のぼりを赤く染め―― 姿を現した鯉のぼりの、首筋に刻まれる落雷の如き青の斬閃! 怒りの咆哮が空を揺るがし、巨躯を震わせ暴れまわる。それでも乙女は突きたてた剣を離しはしない。揺さぶられながらしがみつくその意思。 「逃がしませんよ……」 周囲を取り巻いた緋鯉が輝に迫る。それは同時に、進撃の鯉のぼりに対してもということだ。 「……私か貴方が、墜ちるまで!」 諸共に。爆撃が進撃の鯉のぼりの巨躯を穿つ。流れた血が不可視の身体を完全に浮き上がらせ。 ――例え私が墜ちたとしても。私の血は、穿った傷は、青空に紛れる事を許さないでしょう―― 空に軌跡を描いて輝は地上に堕ちていく…… 「よくもやったわね!」 叫び突入する祥子達のヘリも、すでに爆撃が大きく傷を残し。 「もはや出し惜しみ等せんのじゃ」 進撃の鯉のぼりごと巻き込まんとミストラルが残る魔力を紡ぎ高めれば、させじと突撃する紅蓮の意思。 逡巡は一瞬。進撃の鯉のぼりは後退し、緋鯉はそれを覆い庇うように空の道を塞ぐ。だが逃がすわけにはいかないのだ! ミストラルの放つ炎弾が空で炸裂し流星となって。炎上する緋鯉は別の緋鯉を巻き込んで落下していく。 「――っ、もう一発じゃ!」 同時に貫く緋矢がヘリを穿ち、爆風にミストラルの意識が遠のいた。それでも運命を奮い起こして、再び紡いだ魔力が道をこじ開ける。 「今じゃ! 本丸を一気に叩くぞよ!」 その隙間に飛び込んだもう1機のヘリ。縁に足を掛け獲物を見下ろす二人の猟兵。獲物は巨躯を捻り必死に離れる――その身体を、心を灼く熱線が放たれて。 怒りの咆哮と共に身を翻す。視線の先では心乱す神秘を放ち悠然と微笑む祥子の姿。そして―― 「獲物を屠る猟兵として、敬意とともに打倒する!」 「まな板の鯉とは、正にこの事じゃな。観念せい!」 ヘリからダイブした竜一とレイライン。2人の、4つの得物が空に直滑降の直線を描いた。 最高の位置に、最大の一撃を叩き込んで。空を揺るがせた断末魔は、自由を目指した龍の慟哭。 無数の緋鯉がただの鯉のぼりとなって地上に堕ちていく。少しだけそれを眺めた後、慌てて久嶺が周囲を見渡した。 「羽々希は無事!?」 「勿論」 答えは6枚の翼の羽音と共に。 「それにしても無茶するわね」 進撃の鯉のぼりと共に受けた無数の爆撃は翼すら傷つけ、バランスを崩した輝は運命を燃やしながらも落下を免れられなかった。地上に叩きつけられていればただでは済まなかっただろう。 たしなめる氷璃に小さく微笑んで。 「ビルを守る為に戦い、そして死んでいった仲間に報いる為にも……負けられなかったのです」 輝の言葉に、死人扱いされた氷璃がデコピンで答えた。 「……おーい。誰か引き上げてくれんかのう」 ヘリからワイヤーで垂れ下がったままのレイライン達に、いたずらいっぱいの表情でとらが近づいていたり。 ●屋根より高く 風に吹かれてあちらこちら。屋根に垂れ下がった無数の鯉のぼりにため息をついて。 「落ちた鯉のぼりはどうすればいいのかしらね?」 久嶺の質問に祥子が任せてと微笑んで。 「全部集めるから手伝ってね」 「龍を目指す相手に、竜の名を持つこの俺がハンパなマネをするわけにはいかないだろ。ワイヤーアクションやってみたかったしね、えへっ」 ドヤ顔の竜一と対照的に、レイラインは顔を真っ赤にして両手で覆っていた。 2人は未だヘリの下。プラス1名の3人で仲良く横に並んでいたり。 「ヒャッハー、マーメイド☆ミ」 ふんすとキメ顔のとらの姿は想像通り。鯉のぼりを穿いて空を泳ぐマーメイドプリンセス。他の2人の格好も察していただこう。 「おおーさすがに壮観じゃのう」 ミストラルが空を見上げれば、ビルに飾られた無数の鯉のぼり。屋根より高く風にそよいで、面白そうに泳いでる。 ビルの上で微笑む二人に手を振って、「あるべき姿ですね」と輝が笑った。 「平穏に暮らす彼等から自由を奪った罪は重いわよ?」 ビルの一番高くに飾られた一際大きな鯉のぼり。ただの鯉のぼりに戻った進撃の鯉のぼりに、氷璃は笑って言葉を告げる。 「罰として。貴方はここでずっと縛られるのよ。仲間と共にね」 自由を煽り自由を奪った。その扇動の責任を取りなさい。 仲間達に仰がれて。ただの鯉のぼりは何も言わない。 ただ風に吹かれて―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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