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鍛えた心身。或いは、異世界レスラーの挑戦。

●もっと鍛えろと吠える筋肉
 この季節にしては少々気温が高い。俗に言う、真夏日と言う奴だ。じりじりと照りつける太陽が肌を焼く。木影の多い山の中であれば、幾らか涼しいだろう。
 けれど、この日、この時、ある山奥では世にも暑苦しい異常な光景を見る事が出来た。
「行くぞーーー! 1! 2! 3!」
「「「「う”おぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
 全部で5人分の雄叫びが木霊する。山奥、元はキャンプ場か何かだろう開けた土地に集まる大男達。金肉達磨、という表現が似合うその外見は見ているだけで暑苦しい。肩を組み、2メートル近い巨体で何度も何度も気合いを入れる為に叫んでいる。
 そして、そいつらは皆、カラフルなデザインのマスクを頭から被っていた。そう、それはプロレスラーの被るそれと似ている。
 プロレス。プロレスリング。かつて大きなブームを巻き起こし、衰退した今でも根強いファンを持つ見せ物の色合いが濃いスポーツ、というか格闘技というか……。
 そこにいた男達は、まさにそれであった。おまけに、彼らはこの世界の住人ではないらしい。彼らのすぐ傍にはディメンションホールという異世界への出入り口が開いている。どうやら、そこからこの世界へ来て、どういうわけか皆で叫んでいるらしい。
 なるほど確かに……。良く見ると、男達の肌は硬そうな鱗に覆われている。
 そして……。
 暑苦しいことこの上ないのだが、彼らは何故か、その場でトレーニングやスパーリングを開始したのだった。

●燃えろ筋肉! 
「異世界にもプロレスラーっているものなのね……。彼らは(チーム・ストレングス)という団体みたいね。その活動理念は「技と体を鍛えること」「自分より強い相手に会いに行く事」の2つ。異世界へ行っては、試合、或いはトレーニングをして帰ってくるのを常としているみたい」
 暑苦しいわ、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は言う。モニターに映る、汗をかき、スクワットを繰り返している5人の男達。盛り上がった筋肉と、硬そうな鱗が特徴的だ。
「彼らはチームストロングは、遠距離攻撃のダメージを大幅に軽減する能力を備えているわ。また、ロープとリングを作り出す能力も。彼らはリング上での戦闘に慣れているから、あまりそこでの戦闘はオススメしない」
 徹頭徹尾、彼らはレスラーで在り続けようとするようだ。満足すれば帰っていくのだろうが、その満足するのが今日、明日中とは限らない。また無関係の一般人に試合を申し込まれても困る。
 やはり、迅速にその場へ急行し追い返すのが一番だろう。
「基本的な攻撃方法は、打撃やキックなどの肉弾戦ばかり。ただ、得意な技というものはそれぞれ違っているみたいね」
 イヴがモニターを切りかえる。映ったのは、赤いマスクの5人のリーダーらしき人物の姿だ。
「彼の名は(ミスター・ストレングス)。5人のリーダーで、得意な技はフランケンシュタイナー。相手の頭部を足で挟みこみ、地面に叩きつける技ね。技巧派よ、気を付けて」
 次にモニターに映ったのは、白地に翼の絵が描かれたマスクを被った男だ。他のメンバーよりも幾分体が細く、引きしまっている印象を受ける。
「彼は(スカイ・ストレングス)。空中殺法を得意としている。一時的に空中を移動する能力を持っているわ」
 速度が速いのが特徴ね、とイヴは言う。その次に映ったのは、黒いマスクの男だ。
「彼は(アイアン・ストレングス)。5人の中で最も頑丈な男。ボディプレスを得意としているわ」
 頑丈な鱗と、巨体によるボディプレスはさぞ強力だろう。
 そして最後に、連携技を練習している2人の男。緑と青のマスクをそれぞれ付けている。
「連携攻撃が得意な(エース・ストレングス)と(ジャック・ストレングス)。他のメンバーが個別に戦いたがるのに対し、彼らはほとんど一緒に行動しているわ」
 今回の相手は、こちらが分断するまでもなく個々で戦いたがる性質らしい。とはいえ、油断できるものではない。それだけ個人の力に自身があるということだろう。
「時間をかけてもいいけど、あまりオススメはしない。戦いを続ければ続けるほど、彼らは強さを増していくから……」
 幾分か簡単に勝てる今のうちにこそ、早目に戦い、倒すべきだ。
「彼らを倒して、元の世界へ追い返してきて。それじゃあ、よろしくね」
 そう言って、イヴは仲間達を送りだしたのだった。
 モニター上では、筋骨隆々な男達がトレーニングを続けている。その光景は、これ以上ないってくらいに暑苦しかった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月22日(水)23:31
こんにちは、病み月です。暑くなってきましたね。いかがお過ごしでしょうか? 
今回は、異世界から来た暑苦しいプロレスラーとの試合となります。複数で囲むもよし、1対1で迎えうつもよし。
それでは、以下情報。

●場所
キャンプ場。山奥にある開けた空間で、周囲は木々に囲まれている。熱い日差しと、涼しい風の吹く場所だ。大変過ごしやすい場所であるはずなのだが、レスラー達のせいで今は少し、暑苦しい。
地面は硬い土である。場所によっては、砂利が混じっているところも。足場に関して問題点などはない。

●敵
アザ―バイド(チーム・ストレングス)
打撃、蹴り、投げ技など肉弾戦を得意とするレスラーの集団。
遠距離攻撃のダメージを大幅に軽減する能力。
戦えば戦うほどパラメーターを増していく能力を持つ。体を鍛えること、強い相手と戦うことを目的として、別の世界へ行ったりもするようだ。
【リングイン】
一定時間、レスリング用のリングを作り出す能力。リングに張られたロープは、触れたものを同等の力で弾き返す。チーム・ストレングスの面々は隙あらばこのリングに上がろうとするようだ。

・アザ―バイト(ミスター・ストレングス)
チーム・ストレングスのリーダー。心、技、体に加え知力も兼ね備えた歴戦のレスラー。肉体だけでなく、頭も割と良いみたいだ。テクニカルな技を多様する。
【フランケンシュタイナー】→物近単[必殺][弱点][ブレイク]
相手の頭部を足で挟みこみ、そのまま地面に叩きつける技。派手で強烈。

・アザ―バイド(スカイ・ストレングス)
引きしまった体躯。素早い動きと、空中を駆ける能力が特徴。反面、少々打たれ弱い。複数の相手とも渡り合える、目と反射神経、鋭い手刀が得意。
【フライングクロスチョップ】→物遠貫[流血][ショック]
腕をクロスさせ、相手へ高速で飛びかかる。高速で放たれるチョップは真空の刃を生み出す。

・アザ―バイド(アイアン・ストレングス)
メンバー1頑丈な体を持つ男。打たれ強く、豪快な性格。身体ごとぶつかったり、相手を掴んで叩きつけるなど、力任せな攻撃を得意とする。
【ボディプレス】→物近範[崩壊][麻痺]
体重と打たれ強さを活かしたボディプレス。地面を揺らし、衝撃波を巻き起こす。

・アザ―バイド(エース・ストレングス)&(ジャック・ストレングス)
2人1組でのコンビネーションプレイや、連携攻撃を得意とする男達。言葉に頼らない意思疎通が可能。力強いエースと、知能派のジャックによる連携は強力。
【ダブル・ダブルラリアット】→物近範[致命][ノックB][連]
両手を広げた状態で回転、ラリアットを叩き込む。単体で放つこともある。


以上になります。
それでは、みなさんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
クロスイージス
シビリズ・ジークベルト(BNE003364)
ミステラン
秋月・仁身(BNE004092)
ソードミラージュ
鷲峰 クロト(BNE004319)
ホーリーメイガス
キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)

●山に木霊す雄叫びは
 獣の吠える声かと錯覚しそうになる。野太く暑苦しい雄叫だ。普段はキャンプ場として使われているこの場所だが、現在は、筋骨隆々の5人の大男がトレーニングに励んでいる。
 見るからに暑苦しいその光景を、遠目に眺める8人の男女。アーク所属のリベリスタ達である。
「俺達の目的はなんだぁァぁァぁ!!」
「「「「強い奴と! 戦う事だぁァぁァ!!」」」」
 男たちが吠える。強い奴と戦うこと、それが彼ら(チーム・ストレングス)というアザ―バイドの目的らしい。
 やれやれ、と溜め息を零し。
 リベリスタ達は、彼らの前へと出ていった。

●強さを求める求道者
「解説の司馬鷲祐です」
 突然、そんなことを言い出す『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)。チーム・ストレングスの面々は、突如現れた鷲祐を訝しげに見つめている。
「なんだ? お前は?」
 チーム・ストレングスのリーダーである(ミスター・ストレングス)が鷲祐にそう問いかけた。警戒し、臨戦態勢を整える。
「チーム・ストレングス、いい仕上がりですね。ウォームアップも必要以上です。入念に時間をかけた準備が行われていますね」
 ミスターの質問を無視し、解説を続ける鷲祐。手にしたラジカセのスイッチを入れる。そして流れ始めたのは、心を熱く滾らせる入場曲だ。
「この曲はボトムチャンネル代表、アークの入場曲ですね」
 鷲祐がそう言った途端、レスラー達の顔色が変わる。喜びと、闘志を内包した眼差し。登場してくるリベリスタを迎えうつべく、一列に並びポーズを決める。鍛え抜かれた肉体を、これでもかとアピールするのである。
 住む世界は違えど、彼らはレスラー。古き良き伝統に則った、言わばこれは試合前の儀式である。入場、挑発、そして闘争。これを求めていたのだ。
「羽柴選手の入場でーす」
 愛想を振りまきながら手を振るキンバレイ・ハルゼー(BNE004455)。場違いな赤いバニー服に身を包み、入場してくる仲間の紹介役を務める。この状況を楽しんでいるようだ。
「対戦相手の登場か!? 先陣は俺が切らせてもらうぞ!」
 地面を蹴って飛びだしたのは空を駆ける能力を持つ男、スカイ・ストレングスだ。迎えうつのは『モラル・サレンダー』羽柴 壱也(BNE002639)。登場と同時に赤い大剣を振り抜いた。それを受け止めるスカイの手刀。膠着状態に持ち込まれる。
「スカイさんの相手はわたしだよっ! こんな小娘じゃ不満? やっぱりマッチョの方がいい?」
 挑発的な台詞を投げかける壱也。鋭い手刀を交互に振り降ろしながら、スカイは笑う。
「否。小娘でも構わない。武器凶器、多いに結構! 強い相手ならばどんな奴でもウェルカムだ!」
 壱也VSスカイ・ストレングス。その戦いの火ぶたが、切って落とされた。

「ハッハッハ。なんともはた迷惑な、面白い連中だな。だが帰って貰おう。早々に、な」
 パーフェクトガードを発動させ、前線へ踏み出す『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)。手にした鉄扇を、チーム・ストレングス一の巨漢、アイアン・ストレングスに突きつけた。
「なんだ? 俺の相手はお前一人でいいのか?」
 鋼鉄のような筋肉に包まれた巨体が前へ出る。シビリズよりも頭2つ分は巨大だ。腕や脚の太さもまるで違う。先制攻撃、とばかりに突き出されたアイアンの拳を、シビリズは鉄扇で受け流す。そのままアイアンの体を受け止め、押し返した。
「私もそれなりに耐久力には自身があるつもりでね。なに、退屈はさせんよ」
 ニヤリと笑うシビリズ。返す刀で、アイアンの腕へと鉄扇を叩きこむのだった。

「俺の相手はそこの兄ちゃんが良いね。コンビでっつーなら、こっちも2人で行くぜ?」
 エース・ストレングス&ジャック・ストレングスを指さす『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)。それを受け、エースとジャックが前に出た。
「言葉は通じるみたいだな。相手になってやるぜっ!」
 両手に構えたナイフをくるくると器用に回転させる鷲峰 クロト(BNE004319)。2対2での戦闘である。力自慢のエースが前へ。一方、ジャックは僅かに後退。その直後だ。4人の足元から、突如としてプロレスのリングが出現した。
 エースが前を引き受け、その間にジャックがリングを作成。チームプレイによって、猛とクロトは相手の土俵へと連れ込まれたのである。

「君達は、どうやら戦う者のようだ。俺も一勝負して貰おうか」
 開いた両手を前に突き出し、体を半身に開く。飛びかかる直前の獣、といった姿勢。隙はなく、迫力と闘志ばかりが溢れて来る。ミスター・ストレングス。チーム・ストレングスのリーダーだ。
「レスラーの武器はその肉体。騎士の武器は剣と盾、卑怯とは言うまいな?」
 剣を構え、そう問いかけるのは『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエンである。構わない、と武器の使用を許可するミスター。歴戦の戦士である彼にとって、武器の有無も、フィールドの状態も、関係ない。鍛えた肉体と、戦いの経験。荒ぶる闘志とは裏腹に、その思考は冷静そのものである。
 ミスターは気付いていた。アラストールの意思が、己の剣に集中していることに。何か来る、そう思った直後だ。アラストールの剣が、眩い光を放ち始めた。

「おいでよ! その自身に満ちた自慢の眼、絶望させてあげる」
 挑発するようにそう叫ぶ壱也。剣を振りあげ、力を溜める。壱也の剣が放電している。
「良いだろう。行くぞ!」
 地面を蹴って、姿勢を低く駆けるスカイ。壱也が剣を振り下ろすと同時、スカイは素早く地面を蹴った。空中を駆け抜け、壱也の頭上に。そのまま自分が作り出したリングに飛び乗った。レスラーの性か、リングインと共にポーズを決める。
「跨がせてもらいますよ」
 スカイに続き、躊躇なくリングに飛び乗ったのは『親知』秋月・仁身(BNE004092)だ。ポーズを決めて隙だらけのスカイへと光球を撃ち出した。手刀でそれを弾こうとするスカイ。だが、間に合わない。光球がスカイの胸を撃ち抜いた。
「う、ぐっ!?」
 僅かによろけるスカイ。その隙に、壱也もリングへ飛び上がった。
「おーっと! 2対1だぁ! リベリスタ軍ついに正義を捨てたか?」
 実況席からそう叫ぶキンバレイ。アナウンス自体はチーム・ストレングスよりではあるが、すぐにでも回復スキルを使用できるように構えている。
 しかし、スカイも流石と言うべきか。複数相手でも戦える技術を彼は持っている。スカイへ向けて仁身は光球を撃ち出した。それと同時に、放電する剣を大上段に構え、壱也がリングを蹴って駆け出す。
「ふん。好都合だ」
 壱也と仁身の体が一直線上に並んだ。その瞬間、スカイはロープへ向かってバックステップ。ロープが張り詰め、ぶつかったのと同じ勢いでスカイを押し返す。反動を利用しスカイは飛ぶ。腕を交差させ、高速で。
「チャンス。飛び上がった後は軌道を描くだけ。どこへくるかわかるよっ」
 真っすぐに向かってくるスカイ。それを迎えうつべく、壱也は剣を振り降ろす。放電と共に放たれた叩きつけるような一撃が、交差させたスカイの腕とぶつかった。
「決まるか? 決まるか!? フライングクロスチョ―ップ! きまったぁ!」
 叫ぶキンバレイ。
 力比べの末、打ち勝ったのはスカイの必殺技だった。巻き起こる真空の刃が、壱也の体を切り裂いた。飛び散る鮮血。壱也の体がリングから投げ出された。剣の一撃を受けスカイの肩からも血が溢れている。しかしスカイは止まらない。壱也によって勢いは大分削がれたが、彼の攻撃は終わっていない。
 渾身の力を込めた手刀が仁身を襲う。
「異界の力には異界の力。真っ向勝負だ」
 リング一面を冷気が包み込んだ。仁身の放ったエル・フリーズだ。空中を舞うスカイの体を、氷が包む。冷気の壁に阻まれ、スカイの動きが止まった。凍り付いた腕を見て、呆然とした表情を浮かべた。
「今です!」
 好機と察して、仁身が叫ぶ。それに応じて、リングに飛び込む影が1つ。
「これはフィニッシュの気配ですね」
 実況と共にリングへ乱入した鷲祐。背後から、スカイへ向けてナイフによる突きを繰り出した。連続して放たれる芸術的な突きだ。光の飛沫を辺りに散らし、スカイの全身を刺し貫く。
「美しい技……だ」
 光の飛沫に混じって、大量の血飛沫が舞う。全身を赤く濡らしながら、スカイはリングに落下する。呻くようにそう告げて、スカイはその場に倒れ伏した。

「カウント―。ワン! ツー!」
 ダウンカウントを取りながら、キンバレイは傷ついた壱也に治療を施す。スカイの技は、彼女の全身に深いダメージを与えていた。舞い踊る燐光が壱也を包み込むが、彼女が戦線復帰するまで、まだ少し、時間がかかりそうだった。
「いいねー! そこの筋肉!」
 もっとも、当の壱也は今の内にとレスラー達をスケッチしているのだが……。

 握手を求めるように手を差し出す猛。それに応じて、エースもまた片手を前に。
 しかし……。
「馬鹿がっ! 誰がお前らの土俵になんざ登って戦うかよ! 生憎と俺は悪役なんでね」
 エースの腕を掴むと、そのまま巴投げの要領でリングへと叩きつけた。
「TAKERU容赦ありませんね。この不意打ちはエゲつないです」
 実況の鷲祐が解説する。リングに倒れたエースへ追撃しようと猛が拳を振りあげた。瞬間、後ろにいたジャックが駆け出してくる。
「捕まえろ」
「応!」
 猛の足をエースが掴む。足を掴まれ、身動きを封じられた猛。そんな猛の首元へ、ジャックの上腕二等筋が叩きつけられた。抉り込むようなラリアット。首の骨が軋み、猛の口から血が零れる。弾き飛ばされた猛はロープへぶつかる。
「ぐ、っは」
 ぶつかったのと同等の力で、ロープは猛の体を弾き返す。跳ね返ってくる猛目がけ、更にもう1発、ジャックはラリアットを叩き込む。今度は両腕を左右に広げ、豪快にその場で回転。ダブルラリアットだ。
「おっと、お前のブロックは俺だ!」
 地を這うようにリングを駆け抜け、ジャックと猛の間に割って入るクロト。2本のナイフが閃いた。けれど、ナイフはジャックの体へ届かない。
「させねぇ」
 体を張って、クロトのナイフを受け止めるエース。腕や肩から血が噴き出した。
 次の瞬間、ジャックのラリアットが猛を捉える。胸を強打された猛がリングの上に転がった。意識はある。動く事も出来る。だが、ダメージは大きいようだ。
 助けに向かおうにも、エースに阻まれそれは叶わない。トドメを刺すべくジャックが猛に近寄っていく。
 その時だ。リング目がけ、無数の火炎弾が降り注いだのは。
「けんか売るからにはそれなりの備えがありますよ」
 声の主は仁身であった。スカイを倒し、こちらの援護に回って来たのである。火炎弾を防御するエース&ジャック。その隙に、猛とクロトはリングの端へと距離を取る。
「逃がすかっ!」
 火炎弾の雨を突っ切って、エースが駆ける。一歩一歩が力強い。雄叫びをあげるエースを迎えうつべく、猛が駆け出す。
「動きを封じろ! こいつら速いぞ!」
 力任せなエースとは正反対に、ジャックは現状を冷静に分析している。火炎弾をやり過ごすことが先決と考え、防御の姿勢をとったままだ。そんなジャックの眼前に、突如クロトが飛び出して来た。ロープを使って、跳んだのだ。
「そら、御自慢の技を決めたかったら捕まえてみな」
 クロトの姿が二重にダブる。武術によって発生した幻影だ。ナイフが閃き、ジャックの体を切り刻んだ。大きくよろけるジャックの体。これだけ切り刻まれては、戦闘続行は不可能だろう。しかし、倒れるその直前。
「うおおおおおお!」
 怒号と共に放たれた最後のラリアットが、クロトの首を叩く。リング外へと弾き飛ばされるクロト。それを見て、満足そうに笑うジャック。白目を剥いて、その場に倒れた。

「ジャック!?」
 ダウンした相棒の名を呼ぶエース。一瞬の動揺が隙を生んだ。猛は、不完全な状態で放たれたラリアットを受け止め、突進の勢いを利用してそのままエースの体をリングへと叩きつけた。衝撃、轟音。自身の体重と、突進の勢い。それがそのままダメージへと直結した結果だ。気絶したエースは、ピクリとも動かない。
「そぉら……隙ありだ。容赦はしねぇぜ、おい」
 息を切らし、口から血を吐きながら猛は拳を突き上げた。
「タッグマッチ、ここに決着ぅ!」
 キャンプ場一帯に、キンバレイの実況が響く。

「実況はおっぱい担当小学生ことキンバレイでお送りします」
 深いダメージを負った猛とクロトを治療するキンバレイ。残りのレスラーはあと2人だ。治療を受ける2人の傍では、壱也がレスラーのスケッチをしている。
「プロレスといったらマッチョ、マッチョといったら筋肉、筋肉といったら兄貴、兄貴と言ったら! これは!」
 腐腐腐、と笑う壱也は、なにかに憑かれたかのようにスケッチを続けていた。

●燃え尽きぬ闘志
「歓迎は出来ないが、持て成しはしよう」
 鮮烈に輝くアラストールの剣。ギリギリでそれを回避するミスター。突き出されたミスターの拳が、アラストールの胸を叩く。見極め、回避し、着実に叩く。それがミスターの戦い方だ。それでいて、隙を見ては大技を決めにくる。
「……厄介」
 目の前の男は強敵だ、とアラストールの直感が告げていた。

「どぉらぁ!」
 雄叫びと共に地面へ叩きつけられたシビリズ。骨が軋み、内臓が悲鳴を上げる。彼が起き上がるよりも早く、アイアンは高く飛び上がった。巨体を広げ、シビリズ目がけて自由落下。フライングボディプレス。地面が揺れ、アイアンを中心にクレーターが出来る。
 しばらくして立ち上がるアイアン。その胸部は赤く腫れあがっていた。ボディプレスが決まると同時に、シビリズの鉄扇がアイアンを打ったのだ。
「やるじゃねぇか」
 胸を抑え、シビリズを見やる。クレーターの真ん中に倒れたシビリズの体は、ボロボロだった。戦闘不能。そう判断し、アイアンは拳を振りあげる。勝利を宣言しようとした、その時だ。
「私にできるのは、ただひたすらに抑え、耐える事のみだ」
 割れた額から血を流しながら、シビリズが立ち上がる。満身創痍。それでも、大上段に鉄扇を振りあげる。
「舐めてたぜ」
 アイアンの足元にリングが発生。リングに飛び乗り、支柱を駆け上がる。先ほどよりも高高度からの大ジャンプ。迎えうつシビリズ。全力で振り抜かれた鉄扇が、アイアンの体を受け止める。衝撃波が巻き起こる。シビリズの足元で、地面が砕けた。
 全身の骨が悲鳴をあげる。筋肉の断裂する感覚。このままでは押し負ける、と、シビリズはそう思った。その直後。
「その筋肉、頂きます!」
 放電と共に駆けこんできた人影が1つ。ドカーン! なんて叫びながら壱也が剣を振り抜いた。アイアンの胴を剣が薙ぎ払う。一瞬、アイアンの体が宙へ浮いた。
「勝つのは私ではなく、我々だ。さぁ、勝利を掴もうか」
 その隙をシビリズは見逃さない。渾身の力を込めて鉄扇を振り抜く。アイアンの胴へ突き刺さり、その体をリングへと叩き上げた。
 
「後は俺だけか……。舐めてかかっていたのは、我々だったようだ」
 ミスターはアラストールの背後へ回り込み、その肩を極める。ギシ、とアラストールの肩が悲鳴を上げた。関節技。攻撃と動きを同時に封じる、まさに攻防一体の技。僅かに呻くアラストールを突き飛ばし、ミスターは宙へと飛んだ。よろけるアラストール。その首を両足で掴み、前転。頭を地面へ叩きつける。フランケンシュタイナーと呼ばれる、彼の必殺技である。会心の一撃だった。本来なら、この一撃で勝者はミスターに決まっていたかもしれない。しかし、そうはならなかった。
「ぐっ、流石は戦闘強者」
 地面とアラストールの間に滑り込んできたのは、鷲祐だ。身を挺して、アラストールを庇う。
「乱入か」
 意外、とでも言うように目を見開くミスター。そんな彼の背に、光球が激突する。背後にまわった仁身の攻撃。
「このプロレスは筋描きのないドラマだ」
 光球による攻撃が、ミスターを襲う。防御の姿勢を取るミスター。遠距離攻撃のダメージは低いとはいえ、効かないわけではない。
「さて、本気で行こうか」
 背後からミスターへ駆け寄ったのは鷲祐だ。ナイフを手に、ミスターへと斬りかかる。咄嗟に反転、ミスターは鷲祐の首を両足で捉えた。光球を受けながらも、再びフランケンシュタイナーの姿勢を取るミスター。
「いい試合だった。団体戦はそちらの勝ちだ」
 この技は決まる。そう確信し、ミスターは言う。
 しかし……。
「でしたら、決着次第御帰還願いましょう」
 頭から地面に叩きつけられる鷲祐。地面が砕けた。瞬間、ミスターの眼前に迫る輝く剣。アラストールだ。鮮烈に輝く一閃が、ミスターの胴を深く切りつける。技が決まった直後の隙を、アラストールは突いたのだ。ミスターの体が地面に倒れる。
「その技、肉体。素晴らしいものがある。だが俺達は、貴様らには屈しない。例え必殺の一撃を受けようともだ!」
 だらだらと血を流し、勝利を告げる鷲祐。地面に伏した5人のレスラーを尻目に、キンバレイが紙吹雪をばら撒く。
 レスラーVSリベリスタ。勝負あり。後は5人を送還し、Dホールを破壊するだけだ……。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
こんにちは、病み月です。
お疲れ様でした。異世界から来たレスラーたちは無事元の世界へと帰って行きました。団体戦は、リベリスタたちの勝利で幕を下ろしました。
依頼は成功です。
異世界から来たプロレスラーの話、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。

それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。
この度はご参加、ありがとうございました。