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とある星の願い事

●星の降る夜
 金銀をちりばめた空に小さな黒い渦が巻く。
 その紺碧を写していた静かな湖に、星が降る。
 表すならば『ぽてり』と、三つの星は落ちた。
 器用に三段重ねになった彼らはころころと塔を崩す。

 その目に映るのは空と水面の星空。
 小さな人はきらきらとしたそれを見つめて、それぞれに口を開く。
「姫様……」
「願い事を探すんだろう?」
「うん、たくさん。船か、橋が出来るくらい」
 三人は頷き合い――地を蹴りふわりと浮かびあがった。

●私の願い
 ちょきちょきちょきちょき。
 かさかさかさかさかさかさ。

 任務を請けたリベリスタ達は奇妙な光景を目の当たりにする。
 ブリーフィングルームでは彼――『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が優雅に足を組み手には少し小さなハサミを手に、ただ黙々と折紙を切っていた。
 既に作業済みだと思われる紙が平たい箱に山なりに重なっている。

「……座らないの?」
 しばしの沈黙。
 その後、ようやく紙とハサミをテーブルに置いた伸暁の声を切欠に……あるいはその光景に慣れたリベリスタから順に着席していく。
 スルーが賢明だと判断されたのか、これからの説明に託したのか。ひとまず、彼の言動にツッコミは入らなかった。

 そして、話は始まる。
「今夜、満天の星空からアザーバイドが来る」
「アザーバイドが?」
「そう。印象としては落ち…いや『降って来る』だ」
 リベリスタの声に、伸暁は自らの発言の微妙なニュアンスを訂正した。
 彼は長方形に切られた折紙を三枚手に取り、扇状に広げて見せる。

「アザーバイドは三体。おとぎ話のドワーフ――小人みたいな奴らで、臆病だな」
 外見の情報はまだ秘密だと言う。曰く、お楽しみはあった方が良いだろう、と。
 そこで青年は紙箱を探り、小人型に切り抜かれた紙を一番近くに座っていたリベリスタに手渡す。
 多忙な筈だが……暇を持て余していたのだろうか。
 そしてまた何事もなかったように、説明(?)に復帰する。

「戦闘能力はほぼ無いに等しいし、D・ホールは明け方まで開いてる。
 彼らの願い事さえ叶って――説明さえすれば自発的に帰ってくれる、親切な奴らだ」
 困惑する気配を感じてなおそれも何処吹く風と、青年はひらひらと紙切れを揺らす。

「七夕に願い事を書いて吊るす習慣は知っているだろう?
 そこでこれが、彼らの願い事を叶えることになる。つまり、アザーバイドのwishは『人々の願い事』だ」
 ――リベリスタ達は推察する。
 伸暁の手にある紙は願い事を書くための短冊であり、虫食いからの来訪者に所望される『願い事』を書いて渡してしまえばいい――ということらしい。

 テーブル上を回された紙箱の中身を覗けば、色とりどり、様々な形をした短冊があった。
 箱の内側、縁には小さな黒猫が貼り付けられ作成者を主張しているようだ。
「ま、書かなくったって良いんだ。
 拳で語ろうが叫ぼうが、アザーバイドに願い事とその思いが伝わればAll OK.」
 唐突に『願い事』を望まれたリベリスタ達を前に、黒猫がくすりと笑う。
 山のような紙の中には未だ、一枚として記入された短冊は無い。

「Wishは一人一つ以上、いくつでも。
 それが夢でも願望でも思いは強い方が良いが、何だって構わないさ。
 ――何て言っても、願い事を叶えるのは自分自身だろう?」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:彦葉 庵  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年07月16日(土)23:07
彦葉です。
今回は来る七夕に絡めて、遊べるシナリオをお届けします。

●任務
D・ホールが閉じる日の出までにアザーバイドを送還するor討伐
穏便な送還の仕方はOP参照ですが、方法は自由です。

●アザーバイド×3
特別に作戦が無ければ、皆様には湖畔で彼らを迎えて頂くことになります。
臆病なので、警戒したり逃げたりします。言葉は通じます。
戦闘行動は逃げ回る、庇う、神秘or物理での反撃のみ。

各容姿は以下の通り。
1.長い銀髪に色素の薄い肌、オッドアイの少女。
2.銀髪、色黒の肌をしたクールで美形な少年。
3.茶髪を二つ結びにし、眼鏡をかけた少女。
誰かに似ているかもしれませんが、偶然であって、何ら関係はありませんよ?
服装は和テイストで星の遣いっぽいイメージでお願いします。

●他
願い事は基本的に何でも、いくつでもどうぞ。伝達方法も自由。
ただし、殺害などの物騒な願い事には彼らは逃げ出すかもしれません。
また願い事の他、リベリスタ同士のお時間を取ることも出来るでしょうし、
アザーバイドとコミュニケーションも可能ですので、その辺りはご自由にどうぞ。

お楽しみ頂けることを祈って。よろしくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
プロアデプト
八雲 蒼夜(BNE002384)
ソードミラージュ
武蔵・吾郎(BNE002461)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
ナイトクリーク
ジュノ・アンダーソン(BNE002533)

●願いの為に
「七夕なのでみんなの願い事を募集っと……ねぇ桐ぽん、こんな感じでどうかな?」
 雪白 桐(BNE000185)に『素兎』天月・光(BNE000490)がネット上に立ち上げたスレッドを映す携帯を桐の前に出す。それを自然に受け取って、彼は目を通す。
 ブリーフィングルームを出てから、リベリスタはそれぞれに行動を開始していた。
 桐は部屋を出たその足でアーク内部の願い事集めに向かい、同じくネットの海を活用しようと考えた天月と移動がてらサイト、スレッドを作り上げていた。
「いいと思います。……私も完成したところです」
「あっ。うんうん! これなら願い事たくさんもって還ってもらえるよね♪」
 できたての携帯サイトを覗きこんだ彼女の顔にぱっと花が咲く。
「はい。皆で楽しんで願いと一緒に、思い出も持って帰ってくれるといいですね」
 折角ですし、そう小さく言葉を足した桐は知人に告知を依頼するメールの送信ボタンを押す。
 ――たまには夜空を見上げて自分が今、何を願っているのか感じてみませんか?

「うむ。領収書はNOBU、N・O・B・U。――但し書きは必要経費で頼む」
 腕組みをした青年が呆気にとられる店の従業員に対してさらりと頷いてみせる。
『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)は市場へ赴いていた。
 求める品は古今東西津々浦々、肉に野菜に飲み物、バーベキューに必須の炭と多種多様。
 リクエストされた果汁100%ジュースに麦茶、お肉もたっぷりしっかり買い込まれている。
 アザーバイド――崩壊を誘う者達の話と聞いて戦慄を覚えた雷慈慟だが、今はもうその震えはなく歓迎の宴を楽しみにする一人。
「(このような話ばかりならば、我々ももっと気を良く任務に付けるのだが)」
 ふぅ、と一つ息を吐いたところへ差し出された領収書は、丁重にしまい込んだ。
 穏便な送還、そして良き思い出という糧足り得る大切なひと時の為の必要経費――これを受け取ったときの黒猫の顔を思いつつ、雷慈慟は大きな荷と願いを抱え上げる。

「俺だ。ああ、……おう。突然なんだが、願い事ってあるか?」
 知り合ったリベリスタ達から聞き出した願い事を短冊に記していく。
 一通りに連絡を終えた所で、『首輪付きの黒狼』武蔵・吾郎(BNE002461)の大きな手が少し窮屈そうに、短冊に自身の願いを込める。
 ふと、壁に飾られた時計を確かめ、部屋で短冊を書いていた少女に声をかける。少女の、快調に短冊を書いていた手が止まっていた。
「……そろそろ行くか? 光も聞いて回るんだったら、間に合わなくなっちまうぜ?」
「! 今行くのです!」
 短冊に向かって首を捻っていた『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)が弾かれたように立ち上がる。
 知り合いの願い事も聞いて回りたいし、でも勇者としては遅刻をしては仲良くなる機会を逃してしまいそうだ。
 少女は願い事を書いたたくさんの短冊と、白いままの短冊を一枚、大切に鞄に入れる。
 心に秘めた願いに奮起し、異世界の来訪者を迎えに武蔵の背を追う。
 夜は静かに、近付いていた。

●星空の下
 一足先に『audacia paula』ジュノ・アンダーソン(BNE002533)は湖畔に到着にしていた。
 初夏の微風に揺れる金糸をやんわりと押さえ、まだ明るさを残して星が瞬き始めた空を見つめる。
「早いな」
 青年――『#21:The World』八雲 蒼夜(BNE002384)の声が静かに湖畔に響く。
 振り返ったジュノの目に飛び込むのはすらりとした蒼夜の姿と、その腕に収まった丸い西瓜。
 きょとんと首を傾げた彼女の目線を追って、蒼夜が口を開いた。
「ああ、湖で冷やしておこうと思ったんだ。……振舞うころには冷えて美味しいと思う」
「Oh! 東洋の伝説、親愛のシルシですネ!」
 ジュノの声が弾む。それも、叶うならば臆病なアザーバイドと友好的に時を過ごしたいと願っていればこそ。ちょっと東洋の伝説に脚色が加わるのはご愛敬。
「賑やか……」
 背の高い植物の合間の道から、『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)が顔を出す。
 続いて天月と真雁が顔を出して、アザーバイドのお迎えの三人が揃う。
 天月と真雁、読みは違うが二人の光はきょろきょろと辺りを見渡し、遅れていないことを確かめ、ほっと息をついた。
 ――この辺りで広げるか?
 ――もう少し近くでも良さそうですよ。
 吾郎達も湖畔に集い始めたようで、話す声が聞こえる。
「どこかしラ?」
「うん……、きっともうすぐ」
「それじゃあ俺達は、準備してるから」
 ほんわりとした調子で羽音が頷けばジュノも頷きを返し、湖畔の縁に西瓜を浸した蒼夜に続き宴の準備へと続く。
 彼らの去った後、三人が空を見上げ、星空に生まれる微かな歪みを見つめる。

「……一緒にのんびり、できるといいね」
 羽音の呟きとほぼ同時に三つの影が時空の虫食い穴から落ち――降って来た。
 天月と真雁は口元を押さえ、上げてしまいそうな声を抑え込む。
 三段重ねの一番上に居た小人の少女が目を丸め、そのまま三段になっていた影は崩れた。
「こんばんは」
 優しい声の主に三人の警戒した目が一斉に向く。自分達よりも大きな姿の存在に驚き過ぎたのか、動きはそれだけだった。
 微笑ましいようなその姿を前に羽音にならって天月、真雁も目線を同じ位置にする為に屈む。
「あたしは、蘭羽音。貴方達に、願い事を聞いて貰おうと思って……迎えに来たの」
「……願い事?」
「ボクもたくさん書いて来たのですよ!」
 彼女の癒しの雰囲気に呑まれたのか、警戒を和らげた少年が純粋な疑問の声で繰り返せば即座に返る無垢な声にぱちぱちと少年と二つ結びの少女が顔を見合わせる。
 銀髪の少女の瞳は羽音のルビーの石篭ネックレスに留まって、ゆっくりと頷いた。
「――さん?」
「大丈夫。……いいひと」
 二つ結びの少女が顔を覗きこみ、呼んだ銀髪の少女の名前と思しき部分にノイズが入るが構わず少女は羽音達を見上げる。
「願い事を、教えてほしい」
「……うん。仲間もあっちで……貴方達のこと、待ってるの」
 名前は……イヴイヴ、のぶりん、いっちゃん。
 どう?尋ねられた小人達の答えは勿論、イエス。

●願い人の饗宴
 ぱちぱちと焚火が小さく爆ぜ、オレンジ色の光が舞う。
 ランプが柔らかい光で辺りを照らし、BGM付き宴席に小人達の瞳が輝いた。
 そんな中、起こした焚火でナイフで刺した肉を齧る雷慈慟のワイルドな姿に小人が驚きに瞬く。
 雷慈慟も見知った顔によく似た小人にうっかり咀嚼が停止した。
 詰まらせたと慌てる吾郎とジュノが背を叩いたり、摩ったり、雷慈慟が噎せる。
「こんばんは。良い夜だな」
「最初の願い事です。一緒に楽しみませんか?」
 すかさずダッチオーブンで調理手伝いをしていた蒼夜が取り込み中のリベリスタを背に庇い、桐が作りたての温かい料理を差し出す。
「あー! 桐ぽんの手料理っ」
 驚いただけと理解した天月が小人達の横からひょいっと料理を一口つまむ。
「うささっ」
「うささ?」
「うささ!」
 口に広がる食材の活きた旨みに喜びの声が零れた。小人達が彼女を見上げ復唱し、首を傾げながら真似をして頬を抑える。
「うささ、デス♪」
 背を摩りながらくすくすとジュノも混ざる。望まぬ武器の出番はなさそうである。

「……先程は失礼した。」
 復帰した雷慈慟が咳払いを一つして、小人達に飲物を手渡す。まじまじと見る視線も恐れではないことに内心で安堵の息を吐く。
「タイミングが悪かったデスね」
 小人に様々な料理を取り分けるジュノの傍ら、天月手製の笹団子を一口頬張って桐が頷く。
「そういえばどうして、願い事を集めてるの?」
「えっと……」
 天月の何気ない問いに応じて語られる異世界は彦星と織姫の物語と酷似していた。
「東洋の伝説と一緒かしラ?」
「川を渡るための船が、願い事で……出来てるんだ……」
「……力になってくれた代わりに恋人達は残りの一年、願い事の手伝いをするとは」
「勇者はいるのですか?」
 願い事の手伝いはその世界でだけのこと、とはいえまるで御伽噺のような世界。
 羽音、蒼夜が感慨深げに言葉を零し、真雁が未知に身を乗り出す。
「まぁ、そう叶えてもらうようなモンじゃないしな」
「……ああ」
 静かに耳を傾けた吾郎、雷慈慟がアルコールのグラスをカツンと鳴らす。

 宴席が賑わうにつれ、それぞれに渡され増えていく短冊の願い事に話は移る。
「俺の友人の願い事は……他愛のない、微笑ましいものだったな」
「うむ。オレが預かった物も……心身共にイケメンの恋人を願うものと、牧場の動物の息災を願うものだった」
 牧場の動物を思ってか雷慈慟が口元を緩める。
「皆さんの願い事は……なんでしょうか」
 小人の少女がぽつりと呟く。
 言葉少なかった彼女の言葉に羽音が自らの短冊を手に、音にする。
『料理が上達しますように』
『美味しい物が沢山食べられますように』
 最後の一つ――短冊をめくる。
「あ、えっと……これは、ちょっと秘密っ」
 宴の空気に寄っていたのかもしれない。
 いつもよりも口早に告ぎ、頬に朱を差した羽音の目が伏せられる。
(……大好きな恋人と、ずっと一緒にいられますように……)
 目を閉じれば瞼の裏に浮かぶ恋人の姿に一層高鳴る胸を押さえ、大切な願いを抱きしめた。

 小人の少女も頬を赤らめ浸る中、真雁が願い事に声をあげる。
「ボクもたくさん美味しい物が食べたいって書いたのですよ!」
 美味しいご飯、フルーツ、お菓子にデザート。つめたーいアイスにケーキ。
 あ、和菓子もいいなぁ。とにかく何でも美味しい物!
「美味しい人参も!」
『美味しい人参が一杯食べられますように』と願ううさぎのビーストハーフ――天月の拳が、真雁の願い事に呼応して天を突く。
 美味しい物は大変偉大で大切である。
「光、食い物のこと熱心に書いてたのか?」
 短冊作りの姿を見ていた吾郎が笑いながら問い、真雁はふるふるっと首を横に振る。
「アザーバイドさんたちとなかよくしたいですし、リベリスタさんたちともなかよくしたいのです!
 ばこーんずごごーんって派手な必殺技もほしいのですよ!」
 それにそれに、勇者には強くてカッコいい伝説の武器と防具! 頼れるパーティ!
「かわいい犬ももふもふしたいですし、かわいい猫ももふもふしたいのです!」
「……動物か」
 もふもふ。吾郎に視線が集中した。
「吾郎ちゃんはかわいいよりカッコいいのです!」
 その一声にリベリスタ達の熱に圧倒されていた小人三人がついに笑いだした。真雁達も一緒になっている。
「……君たちも、集めるだけじゃなくて、自分の願い事を書いてみたらどうだ?」
 和やかな空気に遅れず蒼夜が小人達に短冊と筆を差し出す。
 たっぷりの間を置いて、少年が代表してそれらを受け取った。
「たまにはこういうのもいいだろう?」
「ああ」
 好奇心は隠しきれず、瞳を輝かせたまま――小人達は書き物に没頭する。
 受け取った短冊全てを穴が開くほどに見つめ、三人頭を突き合わせ(冷えた西瓜とわらび餅のデザートはしっかり貰いながら)初めてする自分達の願い事に時間を費やしていた。

 その姿を見ながら、天月が唸る。
「惜しいのは学校で回収出来なかったことかなぁ」
 重複した学校独自の七夕イベントと、一日に満たない短期間で殆ど飾る間もなく回収してしまうという条件が重なり、彼女の計画した学校での短冊回収は叶わなかった。
「こちらは凄い量ですよ」
 桐が示すのは彼女の設けたスレッド。こまめに感謝を伝えた甲斐もあって盛況だ。
 一生懸命に短冊に向かう小人達をちらりと見て、ほんの僅か目を細め天月に短冊を渡す。
「一緒に短冊にしましょう。風流ですよ」
 桐のサイトと合わせれば幾つになるのか。
 まだまだ増える願い事を届けに、二人は筆を持つ。

 リベリスタ達の胃に殆どの料理が収まるほど、一杯の短冊書き終えるほどの時間を使って、彼らは短冊を掲げる。
『つっぱしれ』
『ずっとなかよく』
『叶えて』
 イヴイヴの短冊は彼女の希望で真雁の持っていた白い短冊だった。
 そして三人は端的な願い事の仔細は語らず、満足げに、しかし悪戯っ子の顔でリベリスタ達に微笑んだ。

●願い事
「――それで、ワタシ達は世界を護るタメ、アナタ達に帰って貰わないといけまセン」
 ジュノの言葉に、すっかり世界を堪能した小人達は素直に頷く。
 リベリスタ達と今この場に居ない者達の願い事を三人がかりで抱え宙に浮かぶ。
「じゃあ、達者でな」
「また来年、会いましょうね?」
 桐の言葉に近しい、最後の願い事をレターセットに託した蒼夜が微かに口元を緩めた。
『何時かまた何処かで』
 次は西瓜割りも……出来るかもしれない。

 小人達の去った、夜空にしては眩しい程の天を見上げる。
「『強くなる』ってのはやっぱ自分で叶えねぇとな」
 彼らの書いた短冊を思い吾郎が呟く。
「……俺も『人が前向きに生きられるように』」
 何処の世界であっても、住まう命あっての世界。蒼夜はこの世界の人を願う。
「私も『泣く人が一人でも減るように』手加減なしです」
 瞬く星々に向かって、薄い唇で桐が紡ぐ。
「……『世界中の人々がただの一日デモ、飢えもナク悲しみもナク、笑ってイラレル日がありますよう二』」
 ジュノの指がアーティファクトを撫でる。
「願わくば、いつまでもこんな時の中を過ごす為に、その為に尽力させて欲しい」
「ボクはゆうしゃに……」
 尊い時間だと知る者――雷慈慟が鋭さを秘めた瞳を眇め、真雁は真っ直ぐに空を仰ぐ。
(二人なら、ずっと)
 とくとくと聞こえる心音を確かめながら、願いを胸に秘めた羽音が天の川を望む。
 七夕に由来する星を目で追っていた天月が、跳ねるようにすっくと立ち上がる。
「来年も七夕を迎えられますように!」
 その声は遠くへ届けるように、思い切り。

 深い湖が満点の星空を写す。
 二つの星空に見守られリベリスタは思いを馳せ、星が煌めく。
 願い願われ、望み望まれ。
 ――任務、完了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『とある星の願い事』、ご参加ありがとうございました!
お迎え~後片付けまでしっかりとして頂きまして、ありがとうございます。
アザーバイドな小人達は思い出と願い事をお土産にして、無事に元の世界に帰還しました。

ここでくどいと思いつつもう一度。
似た容姿なNPCの彼らとアザーバイドの彼らは一切の関係がありません。
ですが、頂いたお名前、素敵でした(笑)
余談をひとつ。願い事の詰まったプレイングは、彦葉にとっては七夕の贈り物となりました。
優しい願い事、純粋な願い事、くすっとできる願い事と様々で、それを描かせて頂けることが嬉しかったです。

皆様にとっても穏やかで楽しい、息抜きのひとときとなりましたら幸いです。
願い事の実現、心より応援しています。それでは、失礼します。