● 天気のいいある日のこと、それはとある街に進撃してきたのだ。 おひさまをめいっぱいに浴びて、ぽかぽかした白い体のおおきな、それが。 寒い冬の日は勿論、休み明けだとか、人々を魅了してやまない恐るべき魔力を持った、それが! ● 大小様々なふとんが、大量に空を飛んでくる様子がモニターに写っている。 干していたおふとんが風に飛ばされちゃったのかな、なんて感想を抱きそうなどことなく和やかな映像。 だが、大きなふとんが小さなふとんを引き連れて空を飛んでいるなんて、どう見ても異様である。それよりなにより、あんな大量のふとんが一度に飛ばされるほどの強風が吹くなんて、神秘だとか関係無く実際問題、大問題である。 「どうやら、他にも色々進撃してくるみたいだけど、皆にはこのEゴーレムの対応をお願いしたいんよ」 『セントエルモの灯火』白河 よふね(nBNE000250)は至って真面目だったが、その、ええと。なんていうか。なんだろう。この、どこかゆるゆるふわっとした感じは。 「あれは『おおふとん』と『こふとん』。見ての通り、お布団のEゴーレムなんね。 五月病でお布団から出たくないひとが多いからか、ぽかぽか陽気のせいかは分からないけれど、お布団が大量に革醒したみたいで」 よふねは説明を続ける。 大きな割に俊敏な動きを見せ、耐久力も高いおおふとん。 秀でた戦闘能力はないが、兎に角数で攻めてくるこふとん。 リベリスタたちが現場に着いた頃には既に向こうは空中に居るとのことで、少しばかり不利な状況となる。 「おおふとんでもこふとんでも、ぐるっと包まれたり纏わり付かれたりしたら、 あたたかな温もりにその身を委ねながらダメージを受けることになるから、気を付けて」 厄介だけれど、でもね、と。よふねはリベリスタたちを見る。 「どちらにも隙はあるんよ。特に人間を見ると、向こうからこちらに近づいてくる。 うまく誘導出来れば街への侵入を完璧に防ぐことが出来るんよ」 だから、戦闘に携わる人数は多い方がいい。 けれど、他にも色々と進撃してくるのだから、多くの人をこの依頼のみに回す訳にもいかない。 「……今回は助っ人として、美楼さんも呼んだから」 ぽん、と『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)の肩によふねの手が置かれる。 美楼は一度、二度、ぱちくり瞬いて。はっとよふねに向き直った。 「……、………イヤヨ!? ワタシに囮になれと言うアルか!?」 戦うことは好きだけれど、と弁解する彼女によふねが無言で美楼に差し出したのは。 「ハッ、中華まああん!!」 「………皆ならきっと大丈夫。気を付けて、いってらっしゃい」 中華まんを頬張る美楼の横で、よふねはひらひらと手を振った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あまのいろは | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月26日(日)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「お日様ぽかぽか浴びたお布団ちゃんが敵に回るなんてっ!」 「キミ達がただのふとんなら、きっと仲良くなれただろうにね」 「これはまた、たくさんの……。気持ちいいのですよね、あれ。とはいえ、これは確かにいけませんね」 すごく大きなおふとんが、ひとつ。普通サイズのおふとんが、たくさん。それらがふわふわと空を飛んでいく様子は、なんだか和やかな風景にも見える。 『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339) 、『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330) 、『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332) が、討伐対象である、空飛ぶおふとんを見つめて呟いた。 長く尖った耳を持つ彼女たちは、完全世界ラ・ル・カーナから来たアザーバイドである。ボトムへと降り立ち、こちらの生活も慣れてきたころだろうか。だから、おふとんが持つ恐ろしい誘惑を知っている。 「今此処に、お布団との熾烈な戦いが始まる……っ!」 「そうですね、1枚たりとも通さない心算で行きましょう」 弓を、杖を構えた彼女たちの周りを、フィアキィがふわふわと舞っている。自身のパートナーと顔を見合わせた三人はふわりと笑んだ。 「空飛ぶふかふかのお布団……、……なんて魅惑的なんだ……」 「本当じゃ、おふとん気持ち良さそうじゃのう……」 そう。そんなおふとんなのだから、ボトムの住民がその恐ろしさを知らない訳がなかった。 『本屋』六・七(BNE003009)をはじめ、『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)は、空飛ぶおふとんの姿を見ただけでしっかり誘惑されていた。 「……ハッ!? 違う違う、殲滅、おふとんは殲滅なのじゃ!……でもあれだけ大きなおふとんで寝てみたいのう………」 そんなレイラインの呟きを聞いていた『フェイトストラーダ』ユイト・ウィン・オルランド(BNE003784)が首を傾げる。それからすぐに、何かを閃いたような顔でぽんと手を叩いた。 「レイライン殿、それってフラグってやつでござるな!」 「え、フラグ? にゃにそれ?」 フラグ。立てると気になるあの娘と仲良くなったり人が死んだりと、色々起きる、アレ。 レイラインがそんな危険なフラグを立てるほど誘惑されているのは、おふとんのせいであり見た目からはかけ離れた年齢のせいではない。還暦プラスワンのせいだからでは、断じてない。はず。ついでに、ビーストハーフのネコだから。だとおもう。たぶん。 三代欲求のうちのひとつ。睡眠欲。そんな人間の欲望に直接訴えかけるような恐ろしいE・ゴーレム。 けれど、『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)は、そんなおふとんに誘惑されることもなく、金色のひとみで真っ直ぐに空飛ぶおふとんを見つめている。 「ふかふかのお布団は魅力的ではございますが……」 髪をすっきりと結い上げ、かっちりとしたメイド服に身を包んでぴんと背筋を伸ばす彼女は、トムソン家の令嬢に仕えるメイド。お嬢様の為に働くことが楽しい彼女は、働きたくないという気持ちがあまり理解出来ないらしい。おふとんに誘惑されているリベリスタたちの言葉に、僅かに首を傾げた。 「睡眠は一日の労働の後に取ってこそ至福と心地よい目覚めを与えてくれるのだと、わたくしは思っております!」 リコルがすらりと双鉄扇を構える。市民を守るために、神秘の秘匿のために。なによりもお嬢様のため干したおふとんをきちんと取り込むために。 「ゆるせん」 そんな、なんともゆるーい雰囲気のなか『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)だけは、穏やかではなかった。 「………羽毛布団ゆるせん」 ぼそり。エリューションと化した羽毛布団への怒りを顕わに、おふとんを見つめる比翼子のあほ毛が風に揺られひよひよしている。 フェザーナイフとフェザーダガーをその鳥と化した脚にがっちり掴んだ比翼子は、おふとんたちへぶんぶん手羽先のような手を振り必死の人間いるよアピール。 「あら、お待ちください。良い天気、良い風です。―――飛ぶのも悪くない、良い空ですね」 緑の美しい髪が、さらりと風に靡く。同じいろしたひとみが、ゆるやかに笑んだ。 ファウナから翼の加護を受けた比翼子が真っ先に飛び上がる。すると普通サイズのおふとん、―――こふとんが、比翼子に向かって急降下してきた。 「ばかめ! まんまと掛かったな! くらえ、星に最強を約束された我が奥義! ひよ」 べっと比翼子にくっついたこふとんのせいで、彼女の決め台詞は残念ながら省略されました。 ● こふとんは情報通りそれほど強い訳では無かったが、とにかくその数、数、数。 革醒するようなおふとんが、どこにこれほどあったのかと思わず疑問を抱くほど。 「こふとんっていう名前が可愛いよね……」 そんな事を呟きながら、七が軽いステップで、こふとんたちを次々と切り裂いていく。切り裂かれたこふとんたちは、羽毛をばさりと撒き散らし地面へと落ちていく。七は舞い散る羽毛を複雑な顔で見つめていた。 ばさばさと舞い散る羽毛のなか『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)が大きいサイズのおふとん、―――おおふとんに接近を図っていた。 べたべたと纏わり付こうとするこふとんのせいで、おおふとんには簡単に近づけない。 「私もちょっとだけ包まって……だ、駄目だよね、うん。お姉ちゃんは頑張ります!」 「街への侵入を防がねばなりません。美楼さん、支援は私達に任せてください」 けれど、美楼やリベリスタに纏わり付こうとするこふとんを、ファウナとルナが息の合った連携で燃やし尽くしていた。 主にリベリスタたちの回復を担うヘンリエッタだが、こふとんを誘引するため彼女も飛行していた。 ヘンリエッタは、疲れた人を装うため疲れた記憶を思い出す。思い出したのは、ボトムへ来たばかりの頃こと。見たこともない知らないことばかりの世界に彼女の興味心がくすぐられた。 知識欲が強く、真面目で勤勉な彼女はありとあらゆる本を三日三晩読み漁った。その間寝ることも食べることもすっかり忘れていたというのだから、かなりの没頭ぶりである。 「……そうだ。あの時のあの感じだ」 心地良くも重苦しい疲労感。すべてを読み終え新しい知識を知った達成感に満足感。そのままふとんに包まれたなら、さぞ幸せな眠りに落ちることだろうと、彼女は思ったのだ。 その時。ヘンリエッタへとこふとんが大量に向かってくる。そしてそのまま彼女にへばり付いた。 彼女のフィアキィ、シシィがこふとんを必死に引っ張るが、シシィの力では剥がれそうもない。 「ヘンリエッタちゃん!? すぐ助けるよ! 必殺、ダイナミックお布団剥がしっ!」 ごうと降り注ぐ火炎弾が、ヘンリエッタに纏わりつくこふとんたちを燃やし、吹き飛ばしていった。 「………だいじょうぶ、くっつかれたりしても、……ねて、ない」 自由になったヘンリエッタだが、そのひとみはとろんと眠そうである。そんな彼女の髪の毛をシシィがくいと引っ張った。 「! すまない。ルナ、シシィ。オレはもう大丈夫だ」 ぱちんと軽く頬を叩くと、こふとんへと向き直る。今回、回復が出来る者は少ない。リベリスタの勝利の為に、眠気にも誘惑にも、負けるわけにはいかないのである。 けれども、大量のこふとんに纏わりつかれたヘンリエッタの身体は、思うように言うことを聞かない。他にも似た症状のリベリスタたちは居るようで、顔を歪めている者もいる。 そこへ、神々しい光がリベリスタたちへと降り注ぐ。それはリコルの放ったブレイフィアー。 「皆様、日の高い内に眠るなんて勿体のうございます! こんなに天気の良い日でございましたら、お洗濯も掃除もお庭のお手入れも買い物もすがすがしい気持ちでできますのに!」 リコルがリベリスタたちを鼓舞する。自身を苛むものは無事打ち払られたのだが。 「………なんだか今の言葉、胸が痛いのう……。 き、気を取り直して! くっつかれる前に地上からの氷柱で串刺しにしてやるわい!」 普段からおふとんに誘惑されているリベリスタたちは、その言葉が胸に突き刺さったようだ。 ぎゅうと胸を押さえていたレイラインが、氷結の刃を作り出す。ぽかぽか暖かそうなこふとんは、ぼろぼろ穴だらけの見るも無残な姿にされ、地上に落ちる前に羽毛となって宙をふわりと舞い落ちる。 「あー。はたらきたくないでござるー、はたらいたらまけでござるー」 そんな言葉とは裏腹に、取り逃したこふとんたちを狙ったユイトが光の塊を投擲する。空で弾けた光が、弱ったこふとんを確実に落としていく。 こふとんの数は確実に減っていき、障害が少なくなった今、美楼が遂におおふとんの近くへ辿り着いた。 「美楼殿ー! 五月病っぽくしてそいつに包まれるようにするでござるよー!」 「ご、五月病ってどんなのアルかー!!」 美楼もどうやら、働きたくないの気持ちがあまり分からないようである。けれど、それは働き者のリコルとは違い、鍛錬や食べ物のことしか考えていないだけだろう。 「兎に角、コイツに包まれればいいネ!? それじゃあ行くアル、アイヤー!」 ぼふんと鈍いおとがした。美楼がおおふとんに包まれて見えなくなる。美楼をすっぽり包み込んだおおふとんはゆるゆる下降をはじめた。 囮って美味しい役でござる、作戦の要でござる、鍛錬にもなるし一石二鳥でござるよ!と。言葉巧みに美楼を囮役に引き受けさせたのは、ユイトの説得の賜物です。 「ふかふかのおふとん……、………美楼さん、いいなあ……」 七が俵のように丸まったおおふとんをぼんやりと見ながら、ぽつりと漏らした。ついつい、こふとんにくっつかれてもいいかと思ってしまう。けれど美楼の体力が持つ間に、残りのこふとんを殲滅しなければ。 少なくなったこふとんへ、畳み掛けるように攻撃は続く。比翼子が自分に近づいてきたこふとんを脚で蹴り払って、空中でくるりと旋回。体勢を持ち直す。 それから、幾重にも分身したの残像がこふとんたちを切り刻んでいく。舞い散る羽毛のなかで、赤いひとみが鋭く光っていた。 人間を見ると寄ってくる性質のあるこふとんだが、あまりにも数が減ったことで戦意喪失したのだろうか。 残った僅かなこふとんが進行方向を変え、街へ逃げ込もうとしている。数が多いので僅かなら逃しても良いとのことだったが、リベリスタたちがそれを許す訳がない。 「お待ちなさい。一枚たりとも、逃がしはしません」 ファウナが放った火炎弾が、こふとんへと次々に降り注ぐ。こふとんが、一枚残らず燃えていく。 すべてのこふとんが動きを止めたことを確認すると、ファウナは穏やかに笑んだ。 ● すべてのこふとんは倒された。あとは最後の一枚、おおふとんを倒すだけだ。 「可憐な乙女に囮を頼むのは心苦しいものだね。すぐに助けるよ」 「美楼ー! 生きとるかー!?」 アイヤーとちいさな声が聞こえた。おおふとんからのダメージは受けるが、外からのダメージは受けないことを確認するとリベリスタたちはおおふとんへ一斉攻撃を仕掛ける。 「秘儀・布団叩き……!!」 ばしーんと布団叩きが布団を思い切り叩いたようなおとが響く。リコルがおおふとんへ放った一撃。 けれど、その威力を持ってしても、すぐに倒れはしない。攻撃を受けるたびに、羽毛がふわふわ舞う。人々を魅了してやまないそれは、リベリスタとて例外では無い。 「忍者とは耐え忍ぶもの、眠気も耐えてみせるでござる」 そうは言ったものの、ぽかぽか陽気にふかふかお布団。唯一のバッドステータスの回復てであるリコルを庇っていたユイトは、ふわあと欠伸をひとつ。 「………強敵で、ござる。リコル殿、そんなに布団を高く叩いたらー……」 「お布団は強く叩いてはいけない? 勿論存じております。中綿や羽毛が痛みますものね」 「……そうで、ござるなー………」 「つまりはわざとでございます!」 爽やかな表情でそう答えたリコルへ、ツッコミを入れる余裕は、ユイトにはなかった。 暫くして、美楼の返事が無くなった。誘惑にやられて寝ているだけだろうが、すこし不安にはなる。 「美楼、今引っ張り出すからのう!」 えんやこらえんやこーら。おおふとんから僅かに飛び出ていた足を掴むと、おおふとんから引っ張り出す。 おおふとんから抜け出すことは出来たが、あの中でじわじわと攻撃を受け続けていた美楼は立つことが出来ずその場に崩れ込んだ。 ヘンリエッタとルナが、すかさず美楼の回復に掛かる。うとうとしていたところを布団から引き剥がされ、ぼんやりとしている美楼の背を、ルナがぽんと叩いた。ぬくぬくから強制的に目が覚める損失感を、ルナは理解していた。 「おはよ、美楼ちゃん。もうひと頑張りしよう?そしたらお姉ちゃん、後でご飯ご馳走するから!」 その言葉に美楼はぱっちり目を開ける。回復のおかげもあってか、俄然やる気を取り戻した。 飲み込む人間を失ったおおふとんは、ふわりと浮きあがろうとしている。真っ白なおふとんのお腹がレイラインの目に飛び込んでくる。うずうず、レイラインの尻尾がぱたぱたと動いた。 「こ、これは違うんじゃ、おおふとんを倒すためなんじゃ! 今じゃ! 構わずにわらわごとやれー!!」 「レイライン殿ー!?」 おおふとんのなかへレイラインが飛び込む。ぐるりとレイラインをを包み込んだおおふとんが、地上に降りてくる。 「レイラインさん、ず、ずるい。……だけど、誘惑に、誘惑に負けない!!」 思わず本音がぽろりと出た七だが、あと少しでおおふとんを倒すことが出来る。ぐらりと揺らいだ意思を強く持ち直した。 それから、レイラインをおおふとんに包み込ませたまま、攻撃されるがままのおおふとん。 ひとり包まれていても、リベリスタの数は八人。おおふとんが倒れるのも、時間の問題だ。 ふわふわと舞う羽毛が、比翼子の意思を鈍くさせる。とろんと重くなっていく瞼。 全てを忘れ布団に飛び込みたくなった比翼子の脳裏にひとつの光景が呼び起こされる。 ―――――― それは、切り裂かれ、穴だらけにされ、燃やされて、散っていく羽毛たちの姿。 比翼子は、瞳を見開いた。こんなところで誘惑に負ける訳にはいかない!! 「きさま……。いったい何羽の鳥をそのふわふわもこもこのために犠牲にした!? ふとんとして人を暖めるために存在し続けるのならば許そう……しかし! きさまが役目を放棄して人を襲うのなら、きさまらの中の鳥達は何のために死んでいったんだ!」 武器を握る足に、思わず力が入る。ひとみに僅かに涙を溜めながら熱く語る比翼子の言葉に、リベリスタたちが心打たれたかどうかは定かではないが、リベリスタたちは彼女を静かに見つめている。 「比翼子ちゃん……」 ルナがそっと比翼子に寄り添った。世界樹が無いとは言え、もともと感受性豊かなフュリエである。悲しむ彼女の姿を見ていることが、辛かったのだろう。 「………つーか鳥のあたしが自力で飛べないのになんでおまえら飛んでんのさ羨ましい! ふとんがふっとんだってか!? やかましいわ!!!」 顔を上げた比翼子は、途中までカッコよかったのに、私情が入り混じったせいでちょっとだけ残念になってしまった言葉を遠慮なくおおふとんに投げつけると、黄金の羽(たぶん、ひよこのもの)をばさりと広げ、武器を掴んだ脚(たぶん、ひよこのもの)をぐいと持ち上げた。 「空に散った我が盟友たちの無念を晴らす! くらえ!あたしの奥義!ひよこ!ミラァァァジュ!!」 ――――――― そうして世界は、ふわふわ真っ白に染まっていく。 ぼろぼろになった羽毛があたり一面に広がっている。 そう、リベリスタたちは恐ろしい魅惑のE・ゴーレムを無事打ち払ったのだ。 「レイラインさんってば、随分無茶なことをしたね。大丈夫かい?」 「サンドバッグに詰められて周り中からボコボコにされる夢を見たのじゃ……。でもしあわせー」 ヘンリエッタがよろよろしているが幸せそうなレイラインを心配そうに見つめると、その背を支えた。 「美楼さんもお疲れ様でした。中華まん、でしたっけ? お好きなようですし、食べに行きませんか?」 「あっ、それいいね! 皆でご飯! 美味しいお店ならお姉ちゃんに任せなさい!」 「美味しいお店ネ? 行きたいアルゥ!」 「あら! それはとても素敵なお誘いですが、わたくしは干してきたお布団を早く取り込みませんと! 今日もお嬢様にふかふかのお布団でお休み頂かねばなりませんので、わたくしはこれにて失礼致します」 リコルは申し訳無さそうに頭を下げると、お嬢様の待つ家へと足早に帰っていく。 「この高まった布団欲を解消するには……家に帰って、干したての布団を思いっきりもふもふしよう!」 こふとんとおおふとんの誘惑に耐えた七は、もふもふ不足。家に帰ったらお布団ダイブを決意する。 今日は良い夢が見られそうだ、と誰しもが思いながら。リベリスタたちは戦場を後にしたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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