●刈り取られた姫百合 これ以上、私たちを苦しめないで―― 工事現場の作業員は突然、誰かに呼び止められた気がした。すでに辺りはショベルカーなどの重機で丘は掘りつくされていた。黒い土の山が辺りにいくつもできている。 場所は沖縄南部の人里離れた丘にあった。この辺りは昔から赤い姫百合がたくさん生えている場所として地元住民に愛されてきた場所だった。 だが、いまやもう見る影はない。咲いていた赤い姫百合の花は根こそぎ刈られていた。一瞬、作業員は地元の人が工事を止めてほしいと訴えてきたと思った。 地元住民の反対を押し切って住宅地の開発を進めていた。最初の頃はデモ隊がやってきたこともあったが、最近では見かけなくなっていた。 「気のせいだったのか――おい、それより不発弾には気をつけろよ」 唯一の地上戦だった沖縄にはまだ大量の不発弾が残されている。現在でも開発のたびに年に数十件もの不発弾が発見されている。用心に越したことはない。 工事を再開しようとしたときだった。その年老いた作業員は、重機がなにかに当ったのに気がついた。不発弾ではないかと一瞬肝をひやした。おそるおそる確認する。 それは戦時中に作られた壕だった。石で作られたトーチカはまだ形がきれいに残されていた。中から大量の人骨が掘り起こされてくる。おそらくこの豪で死んでいった戦死者たちだろう。作業員が顔をしかめて工事が一時中断した。 「貴様ら――手をあげろ! さもないと撃ち殺すぞ!」 その時だった。作業員は後ろを振り返る。 軍服姿の兵隊が銃剣を突きつけていた。作業員は堪らず絶叫した。 だが、作業員は容赦なく撃ち殺される。作業員の悲鳴に気がついた他の従業員達も一斉に振り返った。そこには紛れもなく旧日本兵の姿をした兵隊がいる。 「はやく攻撃をやめろ。でないと貴様らをまとめて銃殺する!」 その兵隊の後ろには怯えたように佇む女学生たちがいた。彼女らは戦時中の看護女学生の姿をしていた。救護道具を身につけている。その手には自殺用とみえる手りゅう弾を持っていた。作業員たちは霊が現れたといって騒ぎを起こす。 「この娘たちに危害を加える者は、隊長であるこの上林慎一郎が許さん。騒ぎをおこす奴は問答無用で始末する。これは隊長命令だ! はやくここを立ち去れ」 ●繰り返される悲劇 「沖縄南部のある丘陵の工事現場に、旧日本兵と看護女学生の霊が現れた。彼らは作業員たちを銃剣や機関銃で撃ち殺そうとしている。はやくしないとこのままでは現場の作業員が皆殺しになってしまう。そうなるまでに彼らを倒してきてほしい」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が端的に情報を説明した。どこかいつもよりはやりきれないという表情を見せる。俯き加減で窓の外を見遣った。外は激しい雨が降っている。集まったリベリスタ達はつぎに彼が喋るのを静かに待った。 「どうやら彼らは、発見された壕の中で死んだ者たちのようだ。戦争が終わって彼らはずっと長い間そこに静かに眠っていた。いつしか時を経てその丘には姫百合が咲いた。だが、工事によってその長い安穏もついに破られた。姫百合も根こそぎ刈られて、壕も破壊されてしまった彼らは、怒っている」 誰にも発見されずに長い間彼らの遺骨は放置されたままだった。その場所を今さら無残にも掘り返されて憤るのも無理はない。それに後ろにいる看護女学生たちも重機に怯えていた。おそらく戦死した時のことを思い出しているのだろう。工事の重機がアメリカ軍の戦車に似ていたのかもしれない。 「隊長の上林を始めとして、兵隊たちは後ろにいる看護女学生たちを必死になって守ろうとするだろう。また看護女学生たちも手りゅう弾をもっているから、気をつけなければならない。危なくなると地下壕に逃げ込もうとする。そうなるまでに全員倒してきてくれ。非常に心情的にはやりにくいかもしれないが――お前たちなら出来ると信じている。くれぐれもたのんだぞ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月16日(木)22:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●焼けつくされた焦土 太陽が容赦なく照りつける地面は焦土と化していた。周りには工事で作られた土の山が至る所にできている。まるでそこは再び地上戦が行われた跡のようだった。 あの一面に咲き誇っていた姫百合の姿はどこにも見ることはできない。かつて多くの人々がこの地で命を落とした。民間人か軍人をとわず、今も名もなき人たちが人知れず地面の中に埋もれている。 「沖縄、それは今も国防上重要な役割を持つ場所であり、経済もそれによって成り立っている特異な場所……元を辿れば大戦で散った多くの犠牲者に行き当たる」 『ジェネシスノート』如月・達哉(BNE001662)は重い口を開いた。これからそのかつて死んだ者たちをふたたび討伐しにいく。 「終ってしまった過去を知らずに過去の亡霊が復活する。悲しい事だったというのは容易いですが、それでも想いは変らないものです。彼らの安らかな眠りのため、全力を尽くします」 『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)も同じ気持ちだった。同じく戦医として戦場を駆け巡った経験を持っていた。彼女達の辛くて苦しかった気持ちは痛いほどよくわかる。だからこそ自分の手で安らかな終わりを迎えさせてやりたい。 「貴方たちの境遇には同情しますが、この世に死人の居場所はありません。誇り高い日本軍なら潔くもう一度散ってください」 『親知』秋月・仁身(BNE004092)も容赦をするつもりは全くなかった。 「キミ達は嘗てこの国を護っていた戦士なのだと、書物で読んだ。せいじ、歴史。まだあまりよく知っているわけではないけど、それでも、護るべきもののために勇敢に闘った戦士へは敬意を表するよ」 『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)は、ボトムのことをよく本で調べていた。かつてこの地で悲惨な戦争があって多くの人が死んだことを。彼らが必死に戦ったからこそ今の世がある。 「聞いたことある。ボトムのニホンでは前におっきな戦争があって、多くの人が死んだって。でも、寝ていた場所を掘り起こされたら確かに困っちゃうけど、だからって工事の人を殺していい理由になんてならないよっ。」 『アメジスト・ワーク』エフェメラ・ノイン(BNE004345)はそれでもいま生きている人を傷つけてはいけないと思った。 「貴方達に守りたかったものがあった様に、今の私たちにも守るべきものがあるの。互いに譲れないものを守るために、決着を着けよ?」 『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)が問いかけた。自分達も大きな戦争を乗り越えてこの世界にやってきた。犠牲になった同胞たちの分もその使命を果たさなくてはならない。ルナの問いかけにエフェメラとヘンリエッタも静かに頷いた。 「そっか、お花畑無くなっちゃったんだね。この事件を解決すれば、再び重機の唸り声が響くのだろう。花畑の変わりにコンクリートが建ち並ぶのは悲しい事だけど」 『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)はこの場所に咲いていた姫百合が刈り取られたことを寂しく思っていた。 そこへ先に地下へ潜伏していた『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)が仲間の元へ戻ってきた。眼鏡をゆっくりと外して、眼を閉じた。そして髪を掻きあげたあと、何かを思い出すように瞳を開ける。 「地下には無数の不発弾が存在する。いずれも小規模のものだからそれほど恐れることはない。だが、戦場の中央にかなり大きな不発弾がある。誘発させるととても危険だ。そこだけはくれぐれも攻撃を外さないように気をつけろ」 オーウェンの指示した場所をリベリスタ全員が頭に叩きこむ。 情報の共有が終わるとすぐにオーウェンは超頭脳演算を使用しながら物質透過で地下に潜っていった。ルナもエル・ユートピアを使って準備に入る。 ●出来ればこの蒼い空の下で 「手を挙げて、相手を刺激しないように一旦下がって!」 へーベルが慌てふためいている作業員たちの前に現れた。すでに周りは日本兵たちに取り囲まれている。はやく状況を納めないと彼らが危なかった。 「命が惜しければ重機から降りて撤収するんだ。重機は彼らにとって脅威と映っている。関係各位には某国軍に不満を持つ右翼テロリストが武装蜂起したと伝えてある。我々は上のほうから派遣された交渉部隊だ」 達哉が凄味を利かせて作業員たちに迫った。それを聞いて本当だと思った彼らはすぐに手をあげて一目散に逃げようとする。 「おい、騒ぎを起こすなと言っただろう!」 隊長の上林が空に向かって発砲した。 作業員が急に大人しくなる。一瞬、リベリスタ達もひやっとしたが、どうやら上林たちはそれ以上攻撃する様子はなかった。 「危険ですから早く退避してください。ここからは私たちが案内します。くれぐれも不発弾には注意して」 凛子と達哉が一緒に作業員たちを避難させていく。念のためにエフェメラがハイバリアを施して万が一の時に備えた。へーベルはまだ稼働していた重機の方に向かって急ぐ。スイッチを止めてようやく動きを止めることに成功した。 「このひとたちはキミの要求通り、今すぐここから立ち去る。どうか彼らに危害を加えないで」 ヘンリエッタは上林たちに向かって言った。そして、作業員たちをマイナスイオンで落ち着かせながら凛子たちと避難活動に加わる。 それを日本兵たちは銃を突きつけながらじっと監視をしていた。少しでも不審な動きがあれば容赦なく発砲する気でいる。 ようやく避難を無事に終えることができた。凛子はすぐに仲間たちに翼の加護を施して再び戦場へと戻ってくる。 「どうやら貴様たちだけは、どうしてもここを立ち去りたくないようだな。いいだろう。その心意気に敬意を表する。だが、こちらも民間人を抱えている身だ。誉高き帝国軍人として貴様たちを始末しないわけにはいかない。隊長命令だ! 攻撃開始!」 上林大尉の合図とともに機関銃を持った倉橋軍曹が走りながら機関銃をぶっ放してきた。すぐにリベリスタ達も行動を開始する。 オーウェンは物資透過を使用して看護学生とトンネルの間に先回りをしていた。とつぜん現れたオーウェンに看護学生たちは恐怖に怯えた。看護学生たちが危機に陥ったのを見て日本刀を振りかざした寺田中尉が怒りを露わにする。 「卑怯? ここは既に戦場と化したのだ。ならば、如何なる手段を以っても敵を排するのが、軍人としての役目ではないかね」 オーウェンは問答無用に看護学生たちにピンポイントで攻撃する。 「きゃあああああっ!」 看護学生たちが攻撃を受けて悲鳴をあげた。 「ねえ、また暗いところに戻っちゃうの? 出来ればこの空の下で眠らせてあげたい。だから、穴倉に戻る事はしないで?」 さらにそこにへーベルと達哉がピンポイント・スペシャリティで一気に看護学生の駆逐に努める。攻撃を受けたヒサと智子がついに倒れてそのまま突っ伏した。 「やめて、これいじょう苦しめないで!」 律子がすぐにオーウェンの方に向かってきた。手りゅう弾を投げつける。爆発音とともにオーウェンはトンネルの方へ吹き飛ばされた。 オーウェンは弾き飛ばされながらも何とか身を引き上げる。過激な攻撃に全身に傷を負ったが動けないことはない。竹槍で攻撃してくる律子を迎え撃つ。 「戦場から退場しなかった時点で、お前さんたちは民間人とは看做されなくなったのであるからな」 オーウェンは集中した。片目を瞑り敵をロックオンする。ピンポイントで正確に律子を狙い撃った。そのまま律子は後方に倒れて動かなくなる。 ●燃え上がる火花 「軍人なら熱と衝撃は慣れっこでしょうけど冷たいのはどうですかね?」 仁身が上林や寺田に向かってエル・フリーズで攻撃して足止める。看護兵たちを倒されて彼らは怒りを露わにしていた。 「貴方達の気持ちがわかるが故に私は立ち上がるのです!」 凛子が前に出てジャッジメントレイを倉橋たちにむかって放つ。 「ぐはあああああ――」 倉橋がその場に突っ伏して崖から墜落した。 攻撃を受けて三等兵たちもちりぢりになる。だが、間隔を開けて四方八方から銃による射撃を食らわしてきた。 「ヘンリエッタちゃん、エフェメラちゃん、うしろ!」 ルナが二人に向かって注意をする。 その時だった。横から倉橋が走り込んできて機関銃をぶっ放した。ヘンリエッタとエフェメラが同時に撃たれて倒れ込む。 「大丈夫ですか? 今回復致します!」 すぐに凛子が回復を施して、二人をサポートした。 「――絶対にゆるさないんだから」 ルナの目が一層険しくなる。目の前でなかのよい同胞の二人が攻撃をうけて苦しんだ。その場面を見てルナは怒りを露わにする。 突撃してくる三等兵に向かってルナは両手を広げて構えた。バンザイ突撃をしかけてくる兵士たちに渾身のバーストブレイクを叩きこむ。 「ルナおねえちゃん、ありがとうっ」 「すまない、ルナ」 エフェメラとヘンリエッタがルナに助け起こされる。もし、ルナの注意が少しでも遅れていたらもっと深い傷を負っていたに違いない。 「貴様、よくも律子達を殺してくれたな! 絶対に殺してやる!」 日本刀を持った寺田と銃剣を持った上林たちが突っ込んでくる。一度の同時攻撃にフュリエの三人は波状攻撃を避けることができない。 「戦闘を決するは圧倒的な火力! 貴方たちが身をもって証明させられた答えです。数の暴力に頼るには相手が悪かったようですね!」 そのとき、仁身が横から攻撃して前にいた三等兵を全て駆逐した。残る敵は士官の二人だけになった。それでも決死の形相で突っ込んでくる。 それはほとんど戦時中の最期に見せたバンザイ突撃のようだった。二人の目にはもう生命を捨てた覚悟だけが残っていた。 「もう誰も苦しませないっ! まとめて吹き飛べっ!」 エフェメラが決意を込めた。もう二度と苦しい思いをさせないために。ここで終わりにして安らかな眠りについてもらえるように。 「キミ達に護りたいものがあるように、オレ達にもあるんだ。だからだれもこれ以上傷つけさせたりはしない!」 ヘンリエッタは弓を大きく引絞って重心を低くした。エフェメラと目で合図すると同時に二人で一斉に攻撃を撃ち放った。 二人の激しい攻撃が残った日本兵に向かって襲い掛かる。あまりの攻撃の威力に避けることはもはや不可能だった。 だが、それでも攻撃のほとんどが寺田と上林の少し前に着弾する。一瞬、エフェメラとヘンリエッタの攻撃は少し外れたかのように思えた。 「おい、馬鹿が! どこを狙ってやがるんだ!」 上林が笑い飛ばしたかに見えた時だった。 ズッドオオオオオオオン―――― 辺りに巨大な爆発が起きた。 「ぐはああああああああ――」 上林と寺田の断末魔の叫びが辺りに響く。リベリスタたちはあらかじめ爆発を予期してみんなで後ろに下がっていた。 わざと外れたかに見えた攻撃は実は地下にあった不発弾の誘発を狙ったものだった。オーウェンが事前に皆に教えていた場所。そこを集中的にエフェメラとヘンリエッタが波状攻撃した。 「その箇所は‥‥計算通りで、な」 燃え上がる炎を見つめながらオーウェンが呟く。目を一瞬だけ、歪ませた。何か思いつめたように血で汚れた頬を袖で拭った。 だが、すぐに眼鏡を取りだして気を取りなす。そこにはすでにいつもの彼の冷静な表情が戻っている。オーウェンはその場を背にして二度と振り返らなかった。 ●ひめゆりが咲く頃に 「大尉、戦争は終わったのです。この国の平和は我々で守ります。しばらくの休暇を取得してください。ああ、そうそう甲子園は70年後の未来でも熱い試合が繰り広げられております。あなた方の後輩が仲間と切磋琢磨しながら競い合う姿は私も毎年の楽しみです」 達哉は戦闘後、まだ遺骨が残っているトーチカの場所に行って、持参したラジオカセットで玉音放送を流した。葛餅を供えて祈りを込める。 死んだ上林たちは元甲子園球児だった。いまでも夏になると彼らが元気な姿で甲子園で野球をしている姿がみられる。 平和な時代に生きたなら彼らもふたたび野球をしたかったに違いなかった。達哉は彼らの無念の想いをつよく抱きしめた。 「この世界では、これからも戦いは続きますが今は安らかにです」 凛子も献花をして黙とうをささげた。時代は変わってしまった。一見平和な世の中になったようだが、争いは絶えない。それは戦医として実戦で生きてきた経験からもよく知っている。同じ戦場で生きた看護兵の先輩たちに敬意を込めて。今だけは安らかな眠りを。 「もう元には戻らないけれど――今だけは」 その時だった。へーベルが目を閉じてまるで魔法をかけるようにそっと動作をした。すると目の前に一面に咲く花畑が現れた。 荒れていた焦土に姫百合が咲いていた。風に揺れるように赤い花が綺麗にどこまでも咲き誇っている。 「うわあ、きれいだねえ……」 ルナが思わずため息をついた。他のリベリスタたちも思わず見惚れてしまう。心がまるで澄み渡って行くような感覚を覚えた。もちろん、これはへーベルが作り出した超幻影だった。本物の姫百合が復活したわけではない。 それでも、一瞬だけ姫百合が咲いたのだ。奇跡が起きたかのように。ルナの傍に居たフュリエの二人も思わず見入っていた。 「あの三人……すっごく仲良かったよね。まるでボクたちみたい。そういえばボクたちはいつまでいっしょにいられるのかな。もし誰かが――」 エフェメラは思わず泣きそうになった。お互い親友同士でもいつかは別れるときがやってくる。どんなに仲良しでも必ず生きている以上死ぬときがやってくる。そう思うとエフェメラはどうしていいかわからなくなった。 「絶対だいじょうぶだよ。いつまでもいっしょにいられるから。お姉ちゃんがぜーんぶ責任持つよ。だから泣かないでエフェメラちゃん」 「ルナの言うとおりだよ。オレたちは絶対に誰も死なない、誰も死なせはしない。だから――またきっと三人で一緒に見にこよう」 ルナとヘンリエッタが慰めるように言い聞かせた。ようやくエフェメラも前を向くことが出来た。 そのとき、どこからともなく笛の音が聞こえてきた。仁身が持参したビューグルで幻想的な音色を響かせる。 まるでおとぎの世界にいるようだった。仁身の響かせる慰霊の鎮魂歌に誘われるようにいつのまにか蝶たちが幻想の花畑に舞い踊っている。 エフェメラは二人にようやく笑顔を見せた。 また一緒に三人で見にこればいい。それまでは絶対に死なない。 いつかかならずこの場所に幻影ではなくて本当の花が咲く。赤い姫百合がこの場所を満開で埋め尽くす頃に―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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