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輝く海とぬめる肌

●ぬめぬめ
 それはぬめぬめしていた。
 他に言い方が思い付かない程度にぬめぬめしていた。
 とりあえずぬめぬめしていた。

 逞しい足には程好く鍛えられた筋肉が付き、無駄な脂肪が削ぎ落とされた腹は綺麗に割れている。
 有名ブランドのメンズ向けアンダーウェアや水着の広告で見るかの如く、見事な肉体。
 だが何故か、灰色がかった緑色の皮膚をしている。
 そして更に何故だか、表面が薄緑のゲル状の物体で覆われていた。
 なめこを思い出して頂きたい。
 あの様に薄い粘液の膜が、見事な肉体を包んでいる。

 そして完璧に整った体の彼らの頭は――カエルだった。

●あちぃ
「お前ら、海好きか?」
 暢気にも思える問いを投げたのは、リベリスタをこの場に呼んだ『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)その人だ。
 だが、わざわざブリーフィングルームに呼ばれて休暇の予定を尋ねられるはずもない。
 海で何をすればいい、と一人が問えば、伸暁は理解が早いと端末を叩く。
 そして出て来たものに、数名が沈黙した。
 モデルのような端正な体に、カエルの頭が乗っている。
 いや、体自体もどこか灰色のような緑だし、何より変にてかっている。というかぬめっていた。
 何故か水着を着用しているので、肌とぬめりの異様さがよく分かる。

「敵はE・フォース。フェーズは1からやや2に進みかけている」
 フォースなんすか。
「ビーストではないな。こんな面妖な獣は生憎俺は見た事ないね。――で、コイツらは数日後の真昼間、海辺に出る。まあ、海には色々思いが溜まるもんだしな」
 分かるような分からないような理屈をつけないで下さい。

 声には出さずとも微妙に漂う思いを全スルーし、伸暁は説明を続けた。
「見れば分かると思うが、コイツらの体は凄まじくぬめってる。うっかり素肌で触れようもんなら、我を忘れる程に気持ちが悪い。後は足元が滑る」
 やはり分かるような分からないような説明である。
 いや、ぬるぬるするものならば足元が滑るのはまだ分かるにしてもだ。
「水着はもちろん、タンクトップや半袖もお勧めしないね。掌や手の甲、顔に少し被る程度ならまだ我慢できるだろうが、それ以上となるとお前らの精神力でも持つかどうか。安全なのは長袖だな。それも厚いの。薄いシャツ程度じゃ防げないぜ」
 うっかり今は何月だったか、とカレンダーを確認するリベリスタにも伸暁は動じない。
 時期がなんであれ、視えてしまったのだから仕方ないのだ。
 おまけに示された海岸は、三高平市よりも南であった。
「当日は真夏日らしいから、熱中症には気をつけろよ」
 笑う彼が本当にそれを心配しているかどうかは、分からない。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:黒歌鳥  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年07月07日(木)22:07
 カエルの唐揚げを食べてみたい。黒歌鳥です。

●目標
 インスマスっぽいエリューションの撃破。

●状況
 空気というか気温を読まずに昼間来ます。
 暑いですけど長袖着ましょう。水に濡れて透けちゃう程度だとBS付きます。
 海水浴場からは離れた岩の多い浜なので人はいません。

●敵
 ・E・フォース『カエルマン』×8
 色んな人の夏の思い出とか夏の思い出を作れなかった人の恨みとかが積み重なりました。
 体は細マッチョです。いい体です。
 でもなんか灰緑です。ぬめぬめしてます。
 顔はカエルっぽいです。イケメンへの嫉妬が固まったんだと思います。
 薄緑のぬめぬめしたのに素肌で触れると言い様のない嫌悪感に襲われて混乱に陥ります。
 このぬめぬめは遠くへも飛ばせます。後衛だからって油断ダメ、絶対。
 ぬめぬめ攻撃を受けた場合、足元が滑ります。海に飛び込んでも中々取れません。

 ・ぬめぬめ
 近接範囲(同族には非ダメージ)
 素肌を出していた場合、小ダメージと共に解除不可の混乱に陥ります。
 ・ぬめぬーめ
 近接単体に抱き付きます。素肌を出していた場合以下同様。ぬめぬめよりダメージが大きいです。
 ・ぬめぬめっ
 遠距離の相手に向けてぬめぬめを飛ばします。素肌を以下略。ちょっと痛いです。

 上記全て、厚めの長袖を着用していれば混乱は掛かりません。
 プレイングで服装指定をして下されば装備自体は水着とかでも問題ないです。
 防具の上から服を着た扱いにします。
 防水かどうかとは関係なく感触の問題ですが、ダイビングスーツとかでもまあ大丈夫です。
 フルアーマーとか完璧ですね。暑いですけど。何着ててもダメージは通ります。
 ただし足元は他に何か対策を取らないと滑ります。回避・命中マイナスです。
 ちなみにぬめぬーめは男女関係なく行います。
 
●備考
 ドキドキハプニングは起きません。
 心の底から嫌悪に叫んで鳥肌を立てたい貴方にお勧めです。
 完全防備を誇りたいアーマー派の貴方もどうぞ。
 フリーダムに叫んだり嫌がったりして下さって構いませんが、しっかり倒して下さい。
 相談期間は6日間です。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
マグメイガス
御剣・玲奈(BNE002444)
ソードミラージュ
★MVP
架凪 殊子(BNE002468)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
クロスイージス
鮫島 ジョーズ子(BNE002625)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
ホーリーメイガス
識恵・フォウ・フィオーレ(BNE002653)

●夏の我慢大会開催中
「アークのお仕事は、思った以上に過酷なの……!」
 雨合羽の中に小さな体を隠して、『夢見がちな』識恵・フォウ・フィオーレ(BNE002653) が空を仰ぐ。うん、ごめん、今回別の意味で過酷だね。下からの熱気で合羽に描かれたファンシーなクマの顔もゆがみ、泣いているように思える。
 しかし下が長袖とはいえ、識恵はまだ外見的に整っているといえよう。『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)などは雨合羽の上に手袋長靴とどめにフルフェイスヘルメットという完全防備。そんなにぬめぬめが嫌か。嫌ですよね。
「人気のない場所で良かった……」
「フッ……普段から長袖コートを着用している俺には何ら問題はない」
 若干ポーズも付けて呟くのは『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)だが、それはそれで熱中症に気をつけて。ゴーグルに耳付き帽、マスクに軍用手袋まで着用した姿は雪中行軍でもするのかと思える。真夏日だけれど。
「日輪が万遍無く世界を照らすこの季節に、何を悶々と溜め込んでいるのだ愚か者共」
 脱げば浜辺の男子に淡いときめきを抱かせそうな姿格好の『月刃』架凪 殊子(BNE002468)も、今日ばかりはダイビングスーツに覆面マフラーでその日輪にじりじりと焦がされている。何故かマントまで羽織っている。凄く怪しい正義の味方。時折覆面の端を捲ってスポーツドリンクを摂取している。うん、水分補給大切。まだしばらく続くからね我慢大会。

「ここなら囲まれないで済みそうだな」
 真面目に周囲を警戒する『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)の姿はモルぐるみ。あらファンシー。腕を組んでいるその姿すらどこか愛らしい。もこもこしている割にはあまり苦にした様子はないが、内部に入れた保冷剤のお陰か。ちなみに溶け始めてからが地獄である。
「うん、地図的にもやっぱりこの辺りが一番いいね」
 兜の狭い視界でプリントアウトした地図を見て、『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)が頷く。海辺に似合わないにも程があるフルアーマー。潮風で錆びないかって? アーティファクトだから大丈夫! 場所自体は前日にアタリをつけていたのだが、改めて確認しても問題はなさそうである。
 上記に比べればまだ『魔天の翼』御剣・玲奈(BNE002444)の格好は普通だったかも知れない。厚手の長袖長ズボンに日傘。常軌を逸した寒がりで日焼けが嫌なお嬢さんと思えば何とか、気温が三十度オーバーだとさすがに辛い言い訳か。

 ともかく万全の準備を整えたリベリスタは、じっと待っていても暑いだけなので迅速に行動を開始した。
 ダイビングスーツを着て優雅にトロピカルジュースなぞ飲んでいる『tyoubabaa』鮫島 ジョーズ子(BNE002625)以外は。
 無論、底の丸いグラスに途中でくるんと回転したストロー付きだ。
「若い子はほんとに頑張り屋だねぇ」
 珍しく褒めるような事言ったって働いてないのは変わらないですよババ、
「あん?」
 いえ、お年寄りは労わるべきですよね。

●ファースト・コンタクト
 大半が十代の男女の集まりだというのに華やかさは欠片もない。
 そして青春特有の爽やかさとか甘酸っぱさももちろんない。
 何故ならば、これから行われるのは生と死の境を彷徨いかねない耐久レース。
 水から上がってきた八体の異形。
 不気味に光る鍛えられた肉体を惜しげもなく日の光に晒し、地を踏み締め獲物を探すハンター。
 それをフツと智夫が戦場に選んだ地へと引き付けてからが、本当の地獄の始まりであった。

 格好良く言ったが要するにすげえ暑いんすよ炎天下の浜辺とか。

 真っ先に突っ込んだのは、速度に特化した殊子
 一陣の風、雷と化して熱風にマントを翻すその姿は変質者、じゃなくてエリューションを倒す格好良いヒーローだ。
「暑いんだ!」
 台詞はものっそい素直だったがそこはオフレコ。例え灼熱の太陽の下だろうと彼女の刃に停滞の二文字はない。刃の先がカエルマンの一体を捕らえた。が、なんか手応えがヤバい。ぐにぐにする。少し顔が引き攣ったがそれは覆面が隠してくれた。良かった。
「倒れるなよ!」
 丸っこい生き物、もといモルぐるみのフツが印を切る。ちっこいお手手をぶんぶん振り回しているようでキュート。だがそれにメロってる暇は今はない。何せ全員暑いのだから。彼の力はしっかり皆の守りとはなるが、悲しい事に冷却はしてくれない。
「本当にぬめぬめ粘着しててキモイね」
 首後ろの保冷剤がまだ溶けていないキリエは些か余裕な調子でカエルマンを眺め、それを討ち果たす為に効果的である場所を探し出すのに気を集中させる。正直言ってあまりじっくり眺めたくはない外見だが、見なければ当てられないのだから仕方ない。

「エリューションなど、全て滅ぼし去ってくれる!」
 ポケットの中の冷たさに癒しを得つつ、優希が振るった足は夏の風をも切り裂いてカエルマンへと飛来する。ざくざくっ、と切れて血飛沫でも上がれば多少は爽快感もあったかも知れないが、ぶよんぶよんと揺れただけだった。ダメージは通ってるはずだ。多分。
「一体なんだって言うんだい! 私が絶世の美女だからって八体も現れるなんて、そんなに気に食わないかい!」
 絶世の美女かはさておいて、美女なら気に食わないっつうより惹かれて現れた、だと思います。
 ともかく、くつろぎモードから一転、怒り心頭なジョーズ子は目前のカエルマンに向けて死を招く爆弾を植える。爆風が熱いもんだからジョーズ子自身にもダメージが来るわけだが、どっちにしろ長引かせたら暑いだけなのである意味正解である。
「早く倒しちゃおうね」
 玲奈の炎はカエルマンの複数を焼く。数匹の体に炎が巻きつき、さながら焼きガエル。見た目にすごく熱いのが難点。

 そこまでされたらカエルマンとて黙ってはいない。
 ゲコゲコ鳴きながら、あ、鳴き声は普通でした。その逞しい両腕を広げて各々の目標を定める。
 真っ先に狙われたのは真っ先に突っ込んだ殊子である。本人もある程度予想してはいた結果であり、己を掴もうとしてはずるんと滑るそれに内心冷や汗をかきつつ踊るように避けていく。
 しかし、伸びてくる八つの腕全てから逃れる訳にはいかなかった。
「ゲコー!」
「ぐっ!」
 筋肉の浮く腕にしっかと抱き締められ、ダイビングスーツの下の豊満な肉体が捩られた。
 引き剥がそうとした殊子の指先がカエルマンの表面の粘液に埋まる。感触としては所謂おもちゃのスライムが入った容器に指を突っ込んだようなものなのだが、嫌悪感がその比ではない。何も見えない箱の中に手を突っ込んで、生温い柔らかいものに触れてしまった時の、あの言い様のない嫌悪。咄嗟に鳥肌が立ち手を引っ込める。
「ゲロロ!」
「うえっ、気持ち悪……!」
「くうッ!」
 その隣では智夫と優希がカエルマンのヘッドスピンからの蹴りによって全身を打たれていた。岩場でヘッドスピンとか言うまでもなく危ないんで良い子も悪い子も真似してはいけません。
 蹴りを食らっただけなのに庇った腕や脚に伝うぬめぬめ。カエルマンの体を覆っている時はある程度の固形を保っている様子なのに、リベリスタに触れた途端にでろでろとした気持ち悪い粘液に変わった。手を振っても払いきれない微妙な粘りが憎たらしい。

「ゲッコー!」
 ヤモリじゃないです。カエルです。
 一体のカエルマンは掌に成人の頭部くらいはあろうかという粘液の袋を作り出し、識恵に向けてそれを投げつける。
「きゃー!?」
 識恵は咄嗟に可愛いクマポシェットから取り出した金だらいで防御し、ちょっと待てどんな大きさだそのポシェットとか突っ込まない。幻想纏いだから仕方ない。おまけに識恵は(自称)魔法少女なのでその程度お手の物に違いない。某ネコ型ロボットのポケットみたいなもんだ。リベリスタには不思議が一杯。
「ゲゲゲゲ!」
「なんだい、美女の私に抱きつこうってかい、いやらしいね! おお嫌だ!」
 ジョーズ子はカエルマンの突進を華麗につるりと避けながらも罵倒は欠かさない。美女だから抱きついてくるのかどうかという判断はとりあえず保留。言わない方が花って事もあるし。
「ゲゲー!」
「うおっと」
 びしゃりと腹部に張り付いたぬめぬめにフツが僅かに顔をしかめる。ドッジボールで至近距離から全力アタックを受けたような衝撃。顔面に食らえば鼻血は必須だろう。分厚いモルぐるみはぬめぬめした感触こそ伝えてこなかったが、ぺったりと張り付いた毛の部分は見ていて気持ちの良いものではない。
「負けてられないよ……!」
「うん、行くよっ!」
 兜のせいで些かくぐもった声で智夫が呟けば、金だらいをぶんぶん振っていた識恵がにこりと微笑む。連続して放たれた神々しい光の奔流は、カエルマン達のぬめぬめを些か減じさせた、様に思えた。

 太陽はじりじりと、容赦なくリベリスタを照らしている。

●ずるんずるん
 纏わり付くぬめぬめは、体を伝って足元へと垂れていった。
 例えるなら雨上がり、道路に出て来たカエルをうっかり踏んだその柔らかさ。ぐにゃり、ぐにゅり、そして滑る、あるいはナメクジでもいい。カタツムリでもいい。いやダメだ、カタツムリは殻を踏むくしゃりという感触が入るが、これにはそれがない。ただ柔らかく、ぬるりと足元を滑らせる。
 しかし、己の持つバランス感覚をフルに使い、翼によって地から離れ、或いは人類の知恵を活用するリベリスタには効果が薄かった。

 それより暑さがキツい。
 少し離れた場所に行けばクーラーボックスがある。
 中には皆が持ち寄った冷えたドリンクやタオル、保冷剤が入っている。
 だけれど、今はそっちに行っているヒマがない。
 カエルはちょっとタンマとか言っても聞いてくれないのだ。
 涼と言えば識恵とキリエの呼ぶ風が、爽やかにリベリスタの頬を撫でるのみ。

 もうこんな厚い服は脱ぎ去ってしまいたい、という思いがリベリスタの胸を占める。だが、服の、鎧の上を伝うぬめぬめを見ればそうもいかない。結果として茹だる様な暑さの中で戦闘続行する以外に方法はないのである。
 順調に数の減っているカエルマンによって、この時間が永劫でない事が証明されているのが救いであった。
「大丈夫、行けるよ」
 玲奈が中空に展開した魔方陣から放った矢が、一体を打ち抜き沈黙させる。
 とはいえ、決して万事順調な訳でもない。既に全員ぬめぬめしたぬめぬめに覆われたリベリスタの精神力は、暑さとのダブルパンチでだいぶ減退している。
「ゲロゲー!」
「離れろ……!」
 逞しい肉体に抱き締められる細身の色白少年。
 これだけ言えば、そっちの気のあるお兄さんやら大きなお姉さんの目を惹きそうな状態かもしれないが、何しろ片方が完全防備な上にもう片方の肌が灰色がかった緑(おまけに粘液の膜付き)となれば需要も――いや、世界の需要は幅広いからもしかしたらあるのかも知れないが、当人にはひたすら関係ない事だった。
 どこかに飛び去りそうになる意識を気力で引き戻し、優希は怒りに燃えた目でエリューションを睨みつける。意外と瞳がつぶらな気もしたが、熱の引き起こした幻覚だと数秒も経たぬ内に否定した。

「唸れ連撃! 一刀の元に葬り去ってやる!」
 優希を抱き締めるカエルマンに向け、暑さによって溜まった鬱憤を全てつぎ込むように、殊子が止まる事なき刃を繰り出す。ぐにぐにとした手応えにももう慣れ、慣れ……慣れはしないが。
 うん、怒りゲージMAXなのでもう一撃オマケ。手とか顔はまあ大丈夫って伸暁は言ってたから、全身包む必要性はなかったといえばなかったのだが、別に万全で備えてもそれはそれで。
 翻り再度打ち付けた刃によって、残り二体となっていたカエルマンの片方が沈む。
 となれば残るは一体のみ。
「これで終わらせるぜ!」
 もこもこしたフツが額に汗を流しながら符を掲げると、指先……指かな。前足の先っぽで符は黒き鳥へと姿を変え、カエルマンへと突き進む。
 それはぬめぬめにも怯む事なく、一直線にカエルマンを狙い――その嘴で頭部を貫いた。

●あっつい
 かくしてカエルマンは無事撃破され、夏のビーチは守られた。
 が、リベリスタ達は満身創痍だ。体というより心が。
 何しろ全身ぬめぬめ。これ以上ないってくらいぬめぬめ。カエルマンにも負けず劣らずのぬめぬめ具合。なんかそろそろぬめぬめがゲシュタルト崩壊してきたけど、リベリスタ全員してぬめぬめってる。
「海。入りたい。海」
 うわ言の様に呟いた殊子が覆面を脱ぎ捨てふらふらと歩き出したのを切欠に、誰ともなしに外側のぬめぬめが付着した服を脱ぎ去り、海へと入り出す。
「なんだいなんだい、この程度の暑さでへばるなんてなってないねぇ」
 すいすいと器用に海を泳ぐジョーズ子の小言も今はリベリスタの耳には届かない。
 時折ぼこぼこと空気が上がってくるのは、水中呼吸しつつ全身を海に浸したフツだろう。丸洗いは合理的。塩水だから駄目とか言わない。アーティファクトだから大丈夫なんだって。
 ようやく得た冷たさに蝙蝠のちっちゃい耳をぴるぴると震わせながら、殊子が遠い目をした。
「これで終わりとは思えない、来年には第二第三の――」
「……それは困るね……願わくば父なるアレの元で大人しくしてますように」
 大丈夫大丈夫。深いところのあれそれとは関係ないから。

「なんかもう、いっそのこと海底で物言わぬ貝になりたい……」
 浜辺で保冷剤を頭に乗せ、スポーツドリンクを口にしながらキリエが呟く。海底はどれだけ涼しいだろうなあ。むしろ寒いぐらいだろうか。冷たい中でじっとして静かに生きる。それもいいかも知れない。そう思う程には暑かった。本当に。
「全力でエリューションを潰すことができた……我が戦いに悔いなし」
 悔いはないと言いつつも、若干ぐんにゃりした優希はコートに着替え直し冷えたドリンクを一気に煽る。

「ぬめぬめの素だった人たちも、この夏はいいことあるといいね」
 玲奈と共に翼に飛び散ったぬるぬるを洗い落としながら、識恵は水平線へと視線をやった。
 再会の可能性を下げる為にも、是非そうであって欲しいと願うリベリスタの上。
 太陽はまだ、力強く輝いていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 カエルもカタツムリも踏んだ事ありますが、ぞわってしますね。
 MVPは防御面オンリーだけではなく、コーディネートにも拘って下さった貴女に。
 お疲れ様でした。