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夏だ!海だ!すっぽんぽんだ! ~妖葉忍獣 ぽん太之介登場~

●常夏バカンス
 青い空、白い砂浜、透き通る海、サンサン太陽、弾けるバデー。
 きゃっきゃうふふと水着の妖精たちは戯れる。
 ここは屋内レジャープール『トコナッツ』そこは肌色の宝石が光輝く、美少女の宝石箱である。
 遠くでは、ビーチバレーに興じる少女たちの姿もある。
「いいね! その笑顔サイコーだYO伊予ちゃん!」
「だんだん(ありがとー)!」
 その一角では、夏を先取るグラビア撮影も行われていた。モデルは西園寺 伊予。元気がとりえの愛媛県出身柑橘系アイドル(ただいま十六歳)で、育ちかけの慎ましいボディーラインと裏腹に弾けるシャイニースマイルが純真無垢で健全なエロスを醸している。白と橙のフリルつきの水着が、ことさらコドモっぽいが愛くるしい。
 シャッターフラッシュが焚かれるたびに、伊予の表情とポージングは七変化する。
 パラソルの下で体育座り、小首をかしげて何かをねだるようにこっちを見つめる仕草は悩殺的だ。
 ピカッ。謎の明滅。
「……?」
 シャッターが押される。そのファインダーに収まっている伊予は、すっぽんぽん。
 撮影陣の誰もが、言葉を失った。
「……は?」
「にぇ? ごめんぞなー! ポーズまずっとったぞなー?」
 異変に気づかず、立ち上がろうとする伊予を「待った!」とカメラマンが押しとどめる。
「そ、そのまま動かないで! 落ち着いて、これから話すことをよーく理解するんだ」
「リョーカイなんよ」
 カメラマンは深呼吸し。
「……ユーは今、全裸だYO!」
 ちらっ。伊予の装備:葉っぱ一枚。
 ちらっ。カメラマンの装備:葉っぱ一枚。
「……ミーも全裸だYO!」
「……ぞなぁぁ!?」
 混乱、混乱、大混乱。
 プールの人々の大半が強制ヌーディスト状態になってしまった。
 葉っぱ一枚だけが生命線となった人々の醜態を、カメラでパシャリと収める影一匹。
「たぁーぬたぬたぬたぬ! こいつぁー傑作たぬ!」
 海パン一丁にほんのり日焼けした肌に、緑髪の少年が腹を抱えて笑っている。たぬきのごんぶとい尻尾を隠そうともしない。その背後には、山積みになった美少女たちの水着とDホールが。
 たぬき少年――ぽん太之介は水着をポイポイDホールに放り投げた。
「こいつを売ればガッポリ稼げるらしいたぬ! チョロいもんたぬ! たーぬたぬたぬたぬ!」
 常夏の海に悪の笑いが木霊する――。


●夏だ! 海だ! すっぽんぽんだ!
「エロ狸にすっぽんぽんにされる依頼にようこそ」
 作戦指令本部、第三会議室。
 フォーチュナー『悪狐』九品寺 佐幽 (nBNE000247)は緑の即席たぬきそばにお湯を注ぐ。
 貴方たちは例によって例のごとく、ホイホイ依頼に召集されてしまった。
「とかく、ひとつ騙されたと思って皆さんわたくしの依頼に応じてくださいな」
 立体映像が表示される。
 場所は、年中いつでも常夏で水あそびができる屋内レジャープール施設『トコナッツ』の砂浜だ。
「アザーバイド『ぽん太之介』は喋る化けタヌキです。一定空間を自己の支配領域に置くことで、自由自在に自他の装備を交換できる『ヌーゲル空間』を展開します。交換ですので、ぽん太之介の葉っぱと装備や衣服が置き換わるわけです。
 リベリスタさん全裸ですよ、全裸」
「急用を思い出しました」
 起立するリベリスタ。閉鎖される特殊防護隔壁。振り返れば、佐幽が憐れみの視線を向けてくる。
 おのれ悪狐。
「ぽん太之介は、要するにイタズラ大好きな悪ガキと解釈してください。皆さんにはまず、『トコナッツ』で一般客にまぎれてリゾート気分を満喫していただきます。そうして油断させ、ぽん太之介が現れたところを撃滅、もしくは捕獲か説得してDホールに還してください」
「てことは、Aパートは水着回?」
「はい、水着回と温泉回を強引にでも挟んでおくのが映像媒体の売れる秘訣です」
「もし筋肉マッチョの全裸が乱舞する地獄絵図になっても?」
「N♂Hな人に売ります」
 天国か、地獄か。それが問題だ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:カモメのジョナサン  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月21日(火)22:39
夏だ! 海だ! まだ五月だ!
どうも、STのカモメのジョナサンです。
今回はコメディ系ノーマル依頼です。イージーではないので油断なさらないように。
何気に装備オール解除で挑まざるをえない、ある意味では強敵ですよ。

●作戦目的
・アザーバイド『ぽん太之介』の撃滅or送還(説得or捕獲)
・一般人の被害を最小限にすること
・Dホールの破壊

 アザーバイド『ぽん太之介』をどうにかしてください。
 凶悪なアザーバイドではないので、対処の方針は諸氏にお任せします。
 何か対策を講じない場合、まともに戦うと無装備のまま強敵とバトるハメになるのでご注意を。
 また相談がうまくまとまらず、各自の行動がちぐはぐな行動になると雲行きが怪しくなるのでご注意を。

●場所
 屋内レジャープール『トコナッツ』
 ヤシの木やココナッツの木まで年中生えてる、常夏の南国をイメージした屋内プール。
 しょっぱくないけど海そっくり。売店やパラソルもばっちり完備。
 陸地、砂浜、浅瀬、水中の四つの地形や多数の障害物など利用できそうなものが多い。

●バカンス
 アザーバイド『ぽん太之介』が出現、行動を起こすまで悟られぬよう一般人にまぎれて二時間ほど潜伏してください。
 要約すると水着回です。
 ちょっとだけ常夏バカンス気分をどうぞ満喫してください。

●敵
・アザーバイド『ぽん太之介』
 化け狸のアザーバイド。正体は巨大な化け狸であり、普段は少年の姿になることでパワーをセーブし温存している。なにげに強い。忍法も使う。
 妖力や忍術を操る“忍獣”の上位世界『シノビースト』出身。上忍。
 「ボトムの人間の水着は、高く売れる」という情報を元に売りさばくつもりでいる。
 イタズラ気質で、悪さは大好き。残忍ではなく、無差別に人を襲ったりはしない。
 追い詰められて命の危険を強く感じると、本性を現して妖獣形態に移行する。
 かなり器用で、人間の道具や扱いやすそうな破界器は軽々と使いこなしてしまう。

 なお、やりたい放題やって水着を盗み尽くしたら勝手にDホールから撤収する。
 が、その場合は一般人の被害甚大ということで依頼は失敗扱いとなる。

  ・葉隠れの術:忍法。自付。妖葉を自在に操り、盾や刃、分身とする。
  ・刀借りの術:武術。奪った品々を自在に使いこなすことができる理解力と応用力。
  ・葉じらいの術:忍法。あの手この手で敵の羞恥心を煽り、隙を奪いつつ攻撃する。
  ・葉手裏剣:忍法。その威力と精度は、素肌を傷つけず衣服のみを容易く切り裂けるほど。
  ・変わり身の術:忍法。ヌーゲル空間を応用、他のモノを盾にし命中したと錯覚させ回避する。

 ・『ヌーゲル空間』
  ぽん太之介の特性。推定では、半径50m圏内のモノを自分の所持品と位置交換できる。防ぐ術は今のところ見つかっていない。
  ターン開始時、ぽん太之介が狙いをつけたリベリスタ1名の装備(武器、防具、アクセ、AF)はすべて葉っぱと交換、奪取される。
  武器などの破界器が相手の手に渡った場合、逆に悪用されることもありうるので武器の持ち込みはよく考えて行うこと。
  うまく利用すれば、意外な一手を狙えるかもしれない。

 ・『ぽん太之介/妖獣形態』
  本性。撃滅を狙う場合、こちらとの交戦は不可避となる。
  パワー、スピードいずれも人間形態より格段に高い上、ヌーゲル空間や忍術を行使する。
  逃走可能なうちは敵対者を葬ることより逃走を優先する。
  刀借りの術は、フォルム全体が巨大な妖獣となったせいで使えない。
  また5分しか継続できず、刻限を迎えると元の姿に戻って意識を失うため早期に自主解除する。
  人間形態時には見せない攻撃手段を見せることも。

  ・葉王焼光剣:妖葉を手裏剣として無数に操り、命中時に爆破、炎熱と爆光を浴びせる。
  ・葉王炎殺黒龍葉:妖葉を火種に、暴れ狂う地獄の炎龍を招いて一帯を焼き尽くす。一度限定。
  ・ちっちぇえな:格闘時、数秒だけ妖術で超巨大化、踏み潰しや特大打撃を見舞う。

●一般人
 一般人の事前退避は不可。
 様子を気取られてしまったり、出現予測に大きな誤差が生じてしまう。
 百数十名ほどは居る模様。ぽん太之介が半径50m以内に現れるとアレコレ奪われてしまう。
 よっぽどのことがない限り、直接の危害は受けないが神秘の秘匿をできれば考慮されたし。

 ・西園寺 伊予
  元気がとりえの愛媛県出身柑橘系アイドル。過去にE事件に関与、アークに救われる。
  過去依頼『Triangle,Try angel ~護衛、捜索、そして撃滅~』(ID:3611)に登場。
  一般人代表。事情を知っているので、頼めば避難誘導などに協力してくれるかも。
  哀しい過去を乗り越えて、今は元気にお仕事やってます。

 ・カメラマン
  一般人その2。伊予の撮影をしている人。シャッターチャンスは逃さない。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
スターサジタリー
エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)
覇界闘士
シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)
ナイトクリーク
宮部・香夏子(BNE003035)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
レイザータクト
神葬 陸駆(BNE004022)
クロスイージス
リリウム ヘリックス(BNE004137)
ミステラン
リッカ・ウインドフラウ(BNE004344)

●予告編
 事件は会議室で起きているのではない。
 プールで起きているのだ――。

 『白銀の防壁』リリウム ヘリックス(BNE004137)が水と戯れている。白いビキニにかろうじて隠された凶器的な白肌のまぶしさが水飛沫を伴って、綺羅々と輝く。白銀の豊壁がたゆんと弾む。
「キャアアーっ!」
 リリウムの金切り声に『トコナッツ』は騒然とする。
 水死体がみつかったのだ。

 混然とする現場に名探偵『ジーニアス』神葬 陸駆(BNE004022)が海パン眼鏡姿で参上する。
「こ、この駄肉は……!」
 人が、Ⅴの字のままプールに逆さに突き刺さっているのだ。
 被害者は『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)であった。
「華麗です」
「うん、カレーだね」
 海の家でカレー皿を片手に舌鼓を打つのは同じ少年探偵団の少女『第35話:毎日カレー曜日』宮部・香夏子(BNE003035)とその保護者の『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)だ。
「今回は猫神家じゃなくて犬神家なんだ」
 ふたりしてのんきにスプーンぺろぺろ、一歩も動く気配なし。
「ぺろ……この味は」
 香夏子、電流が迸る。もちろん黒背景で。
「青酸カリー……かはっ!」
 ばたっ。
 第二の犠牲者、宮部・香夏子ここに散る。
「警察だ! 全員そこを動くな!」
 女警部『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)は警察手帳を突きつけ、モ部下たちにテキパキ指示を下す。
「離せ! 私じゃない! 濡れ衣よ!」
 水着エプロン姿の海の家店員『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)は大きな手錠を首に繋がれ柱にくくりつけられたまま潔白を訴える。
 陸駆は眼鏡をギラつかせ、真犯人を推理する。
「この事件、必ず真実を暴いてみせる! ばっちゃんの名に賭けて!」

 劇場版! 名探偵りっくん!
 犬神家カレーは語る温泉一泊二日ラーメン(中略)殺犬事件! 今夏公開!

●という夢だったのさ
「ふぁ~ふぅ」
 ぷかぷかと大きな浮き輪に寝そべって『Clumsy thoughts』リッカ・ウインドフラウ(BNE004344)はのどやかにうたたねしていた。
 ヤシの葉をモチーフにした緑の水着が艶やかな白肌とのコントラストを織り成している。
 波にたゆたい、ぷかぷかり。
 後に待つ悲劇など露ほども知らず、リッカは夢の大海を泳ぐ。


●食べる夏
 海の家にて。
「ん……ぷぁっ」
 熱々のごんぶと肉棒(※フランクフルトです)にむしゃぶりつき、ベルカは悪戯げに微笑する。
 迸る肉汁が、口許を伝って脈打つ喉を滴り、乳まりの谷間へと消えてゆく。
 露出度九割九分二厘の無いも同然なベルカのいでたちは、ただでさえ人目を集める。
「ん」
 一本目の串をしゃぶり尽くしてもまだ染みついた味を求め、ねろりと舌を這わせ、唾液をこぼす。
 インモラリスト(※行儀が悪い)なベルカの仕草に、休憩しようと海の家をたずねてきたリリウムは思わず紅潮、ちらちら盗み見てしまう。
「すごく、おっきい……です」
 ベルカは二本目の肉棒を頬張りつつ、餓えたケダモノのように剛直を求める。
 なお、このシーンは本放送版だと肉棒にモザイク修正が掛かっているとか、いないとか。
「み、見てはいけない気がします、で、でも……」
 リリウムはいやらしい、否いやしい光景に悶々とうろたえる。その背景で、地味にプールのスタッフと避難誘導について相談しているエルフリーデ。そして。
「わ、私も……!」
 そうしてリリウムは棒アイスを購入してしまうのだが、このつづきはDVD特典で。

●やる気ない夏
「もぐもぐ」
「うまうま」
 ダリィーズ二名は砂浜で夏野菜のカレーを食べつつ、遠巻きにベルカ達を眺めている。
 なお春津見と香夏子の作画はSD省エネ仕様である。
「泳ぐのだるーい」
「ゴロゴロです」
 波打ち際のコズエさん&カナコさん。
 マグロ、もとい全然ちっとも動かないふたりはここだけの話、動画スタッフにとっては天使に等しい。どれだけ動画枚数を使わずに会話だけで紙芝居できるか。それが作画リソースをサービスシーンに集中させるポイントだ。
 なお、画面端ではエルフリーデが一生懸命に本番に備えて準備に奔走している。地味に。
「ずるーい」
「手抜きです」
 というわけでTake2。

「もぐもぐ」
「うまうま」
 青い海、白い砂浜。
 夏野菜のカレーはまばゆい日差しを浴びて、スパイスの粒子の一片に至るまで煌いてみえた。
 トマトと牛の薄切り肉をベースに散りばめられたミニトマトの赤、アスパラガスの緑と白米の白は粒ひとつひとつまで極め細やかに。煮込まず、炒めておいたあめ色のナスをあしらい、金華チャーシューを飾りつけてある。
 白亜の皿にカレーライス。薫り立つ湯気はフレッシュなスパイスの爽やかな香気を漂わせる。
 隣のグラスに注がれているのは常夏気分にぴったりの、マンゴー・ラッシーだ。ヨーグルト飲料とカレーは夫婦も同然だ。
 カチンッと解けた氷が鳴り、冷えたグラスの結露が水滴となってつーっと滴り落ちる。
「食べよう!」
「夏カレー!」
「うん、きっと今すごい作画よかったよね」
 スマイル満開の春津見に、香夏子もころころと鈴を鳴らしたように微笑を返す。なおエルフリーデは画面端で見切れている。
「でも私たちの出演、声と手だけです」
 日本の夏、カレーの夏。

●鍛える夏
 鋼鉄の女体を研鑽するシャルローネの雄姿には、彫刻めいた勇壮で力強い美しさがあった。
 腕立て伏せにはじまって準備体操、クロールに平泳ぎ、古式泳法、ビーチフラッグと訓練も積む。
 躍動する肉体美。
 漢女の汗が鋼めいた飛沫となって煌く。
「誰かー!」
 なんと、幼い女の子が溺れそうになっているではないか。
「むっ」
 シャルローネは見事に飛び込みを決め、猛然とクロールでプールを突き進む。そして鮮やかに幼女を救出してみせた。親御さんに感謝されるが「当然のことをしたまで」とシャルは断わり、その場を離れる。
 そう、今は仮にも任務中、ゆっくり一般人と慣れ親しんでもいられない。エルフリーデだって後頭部しか映っていないが地道にスタッフと打ち合わせを重ねているのだ。
 立ち去ってゆくシャルローネの広背筋と上腕三頭筋を羨望の眼差しで見つめ、幼女は憧れを抱く。
「ママ、あたしもあのお姉ちゃんみたいな素敵なマッソーになりたい!」
「そうねー。……え?」
 
●強襲!
 大誤算が生じていた。
 予定より早く、二十分は前倒してぽん太之介が強襲してきたのだ。
 エルフリーデと陸駆は寝耳に水、一般人の避難計画がご破算となったことで大慌てとなる。
『同志エルフリーデ! 大変なことになった!』
 AF通信を受け、砂浜へ急行する。
『早い! 一体どうしたのよ!』
『同志リッカが捕まってしまった!』
『はぁ!?』
 現場に到着すると、すでに状況は大混乱に陥っていた。
 すっぽんぽんの一般人たち(老若男女問わず)が物陰や水中に隠れてHELP!を求めている。
 ポン太之介が乗った水上のゴムボートの上には、水着のちいさな山ができている。軽く三十着か、被害率20%前後といえば聴こえはいいが来客の二割が全裸にされてるのは既に失敗ギリギリだ。
「なんたることだ! 天才たる僕の計算に狂いが生じるとは!」
 陸駆の頬を、冷や汗が伝い落ちる。

 時は遡る。
 リッカは潜伏中、浮き輪に寝そべってプールでぷかぷか浮力に身を委ね、うたたねしていた。
 水面下。影が暗い水の底を泳いでいる。それは徐々に、徐々に迫ってくる。人食いサメのように。
 強襲! 浮き輪が転覆する。
「て、敵襲!敵襲なのです! がぼがぼ」
 ざっぱーん! 水飛沫をあげて強襲する黒い影に、溺れかけのリッカは成す術なし。
 そのまま水中にずるずると引きずりこまれてゆく――。
 この時、ようやくリッカは己が最大の過ちに気づく。
『貴重品は無くさないよう更衣室のコインロッカーに入れて保管してください』
 ボトム常識のないリッカはそうしてロッカールームにAFを置き忘れてきたのである。
 幻視をはじめとして、AFなしに異能の行使はままならない。つまり、リッカはフュリエという異種族の特徴を惜しげもなく晒してしまっていたわけで。

「たぬたぬたぬ!」
 少年――ぽん太之介は高らかに笑い、リッカのぽんぽんを踏んづける。水で化けたぬきみたいに膨らんだお腹を踏んづけられると、リッカはぴゅーっと噴水になった。
 完全にばったんきゅーだ。
「しかし可哀想なやつたぬ、きっとこいつは身分が低いかビンボーで水着を着用することが許されず、はじめっから葉っぱを着ているたぬ。その不憫さに免じてトドメは刺さないたぬ」
 ぽん太之介は唐草模様の風呂敷に一般人の水着を包むと、水中に潜り、Dホールに放り込んだ。
「チョロいもんたぬ! 次の獲物を探すたぬ!」
 リッカを縄で亀甲縛りにしてゴムゴートにくくったぽん太之介は白煙をあげ、どろんと消えた。

●交渉!
「変質者が現れた! こっちだ、こっちに逃げるんだ!」
 シャルローネは威風を礎に、一般人の避難誘導を行う。本腰を入れて警戒していた分、やはり対応が早い。エルフリーデが根回しを地道にやっていたおかげか、職員も手伝ってくれている。
 と、その時だ。
 シャルローネの水着がすべて葉っぱにすりかわってしまった。
 堂々として筋骨隆々としつつも女らしい柔和さを備えたその肉体美が、白昼に晒し出される。葉っぱ数枚のみにされようとも、鋼の精神は揺るぎない。どのみち露出度の高い水着を着ていたのだ。
「ひゅー! キレてるぜ! 最高だ!」
「なんたるメスゴリラ! ちっとも嬉しくねえ!」
 立ち止まって騒ぐ愚かな男ども。
「……逃げろと言っている」
 威風の神秘を伴う眼光は、金剛力士に睨まれるが如し。男たちは鰯の魚群みたいに逃げ出した。
「狸風情がやってくれるわね」
 エルフリーデは鷹の目で敵所在を確かめ、AFで仲間に呼びかけ急行する。

 作戦方針は、説得だ。
 海の家のテラスにぽん太之介を追い詰め、一同は包囲網を築いた。
「私は白き絶対防壁、リリウム」
 白ビキニの天使は白翼を拡げて、宣言する。
「えっちな犯罪、許しません!」
 見事な名乗り口上だと感心はするがどこもおかしくはない。
「……たぬ、ヌゲールチェンジ!」
「きゃぁっ!」
 羞恥心に火がつき、リリウムはその場にうずまって小さくなって翼を丸め、引きこもった。リリウムの乙女心は完全に弱点と化していた。
 ぽん太之介は強奪したからあげ(レベル3)を頬張りつつ、かんらかんらと嘲り笑っている。
 されるがままになろうとも、交渉を試みるからにはうかつに攻撃はできない。
「……僕の計算上は、貴様の露出面積は数%しか減少してないのだ」
「ビキニと葉っぱをいっしょにしないでくださいっ!」
「そーだそーだ」
「つい最近までお母さんといっしょに湯船に浸かってそうな小学生には分からないことです」
「宮部 香夏子! よりによって貴様が僕をお子様扱いするな!」
 混迷する状況。
 ここで、ここまで真面目にコツコツ下積みを重ねていたエルフリーデが説得の矢面に立つ。
「ぽん太之介君、ここは交渉といかないか?」
 そもそも交渉には一本化が必要だ。
 船頭多くして船山に登る。一対八で各人がバラバラに説得を呼びかけても、かえって混乱を招いたりまとまる話もまとまらなくなるものだ。
 説得や交渉は存外、難しい。戦わずして勝つことが最良なれば、最良だからこそ困難なのである。
 例えば、そう、もしあなたが一匹の獅子だったとする。十匹の兎を前にして、一匹の兎の命を捧げるので見逃してほしいと頼まれたらどうする? ――これこそが交渉の難しさだ。
「つまらない時間稼ぎはお見通したぬ!」
 見透かされた!
 エルフリーデは意中を見抜かれて焦る。いや、今もシャルローネが一般人の避難誘導を行っているのだ。一目瞭然、これでは確かに時間稼ぎと受け取られても仕方ない。十匹の兎が今も逃げようとしているのに、なぜ獅子が一匹の兎の話にのんびり耳を貸してくれようか。
 そう、避難誘導と交渉は致命的なミスマッチだったのだ。
 実質的なタイムリミットを設けられてしまったぽん太之介が選べる選択肢はとても少ない。
 実力行使だ。

●戦闘!
 電光石火、影が舞う。
「いや~ん」
 春津見の青い水着(DLCでペンギン着ぐるみコスに変更可)がすっぱりと切り捨てられる。ここだけ作画三割り増し。
 いざ戦ってみると、理不尽なくらいぽん太之介は強かった。いや、一同が弱体化しているのだ。言わずもがな、常々愛用の破界器を失ってはリベリスタの強さは半減どころではない。
 もとより説得だけで片付くものと想定して、あえて武装を持ち込まなかった。つまり説得に失敗した時点で敗色濃厚なわけである。
「遅れてすみませーん!」
「大丈夫か!」
 どうにか自力で縄抜けしたリッカと避難誘導を終えたシャルローネが合流する。
 その頃には既に死屍累々、もとい、すっぽんぽん。努力も虚しく、敗走寸前のズタボロである。やはり破界器なしでは強力なアザーバイドとの交戦は困難だ。
「この殺意、とくと味わえ!」
 葉っぱ族にされた陸駆は絶対零度の眼光を解放するが、葉隠れの術による分身をかき消すのみ。
 葉じらいの術。
 葉刃のクナイが閃き、最後の砦たる股間の葉っぱを切り捨てた。すかさず修正(飼い猫のタマ)が表示される。
「う、うわぁぁぁぁああっ!」
「同志陸駆ぅーっ! 汚いぞ忍者! いたいけな少年のフランクフルトを一刀両断するとは!」
「ちょん切られて短くなったわけではないと思うのです」
「ぱおーん」
「……軟弱な」
「貴様ら後で三倍返しだっ!」
 女七人、少年ひとり。この面子ではむしろ一番に羞恥心を抱かざるをえない。
「こうなったのも私のせい……、だから!」
 リッカは目を瞑り、精神を集中させる。一般人はほとんど逃げ果せ、戦闘で優位に立っていることでぽん太之介には慢心と余裕がある。今ならば――。
 マスターテレパス。
 以心伝心の異能によってぽん太之介に心へと直接、接触する。
『もしもし』
『はい、もしもしぽん太之介です。て、何だ!? 心に話しかけてきている!? 面妖たぬ!』
『私はフュリエのリッカ、ぽん太之介さんと同じアザーバイドです』
 リッカはぽん太之介に二、三問いかけて交渉を開始する。一同もそれを見守った。
『……では、忍び里をために?』
『オイラの世界では今、忍び里同士の戦争が断続してるたぬ。オイラの任務は軍資金を調達たぬ』
『でも、そうして得たお金は所詮、あぶく銭ですよ。お金が足りなくなったらまたボトムで悪事を働くんですか? それだけで里が良くなりますか?』
『ぐっ』
『……私は、ラルカーナという世界からやってきました。今、この世界に興味津々なんです。ひとつ提案します。ぽん太之介さん、ボトムの文化を持ち帰ってみませんか?』
 リッカは想起する。
 この世界で体験してきた様々な、素敵な出来事を。マスターテレパスはリッカの見聞きしてきたボトムのイメージを直接、ぽん太之介に提供する。お化け屋敷にゲレンデ、湯煙旅情にお祭り。心から抱いたときめきを以心伝心する。
『フュリエの私がこんなに夢中になってるボトムの魅力を、独占販売してみませんか?』
 リッカはロッカーに置き忘れていたおかげで無事だったAFを起動する。
 ラルカーナパフェ。
 果実は甘酸っぱく、クリームは濃厚で冷たくて。そう、それは異文化交流の結晶だ。
『召し上がれ♪』

●報告
 後日アーク本部に帰還した一同は、佐幽にぽそっと告げられる。
「今回の依頼は失敗です」
 走る雷電。
「強敵だと前置きした通り、ぽん太之介は手強かった筈です。幾つか失敗に繋がる要因を重ねてしまった結果、一般人の被害がギリギリセーフラインを越えてしまいました。下の中ですね」
 くどくど、くどくど。
 他人の不幸が大好きである佐幽は、むしろよく失敗したと言いたげ。だから嫌われやすいのだ。
「が」
 一枚のDVDを机に置いて、佐幽は口許を隠しながらくすっと笑う。
「さすが水着回ですね。皆さんが盛大にすっぽんぽんを晒してくれたおかげで映像媒体の売れ行きが好調だそうです。上層部曰く“もうコレ成功でいいよ”とのこと。元凶も無事に帰還したことですし。
 よかったですね、皆さん」
「わーいわーい!」
 歓喜に湧く一同をよそに、佐幽は扇で面を隠す。
「ヴォルフさん」
「ん」
凛とした佇まいで沈黙を守っていたエルフリーデは怪訝な顔をした。
「お世話をさせました」
「お世話しました」
 喜び分かつ仲間たちの輪の外で、気高き白狼はフッと一笑した。

●おまけ
「という顛末だったのだ、伊予おねーちゃん」
「おめでとー。とにかくりっくんが無事でよかったんよ」
 夜更け。伊予の自宅マンションでくつろぐ陸駆と伊予は和気藹々とイチゴタルトでお茶会している。卓上には直筆サインで『親愛なる弟へ』と記されたCDケースがひとつ。
「ごめんねー、うち役立てなくて」
「天才は些事にこだわらない。これでいいのだ」
 えっへん陸駆は誇らしげ。
「ほやけどりっくん、お友達、なしてえっちな水着ばっかりぞな?」
 諦観と苦渋の入り混じった複雑な表情で。
「……天才にも答えられないことは、ある」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆さんおつかれさまでした。
今回は水着回でしたね、わっほい!
結果は……失敗! ……になりかけたところのギリギリ成功です!

ぽん太之介は上位世界『シノビースト』に帰り、水着と幾つかの文化資料を持ち帰っていったようです。
それなりに友好的な関係を築くことができたものの、今後はどうなることやら。

六月のじめじめした時期を乗り切れば、いよいよ本物の夏がやってきますね。
一足早い夏を訪れ、お楽しみいただけましたか?
では、また機会がありましたらお会いしましょう。