●夜月に照らされ漂うそれは 月夜。寄せては返す波。春とはいえ、夜の海は肌寒い。 薄い雲に隠れた月が、やけに赤い。不気味な月だ。けれどもうじき夜が明ける。東の空が白んでいる。 そして、そんな赤い月明りに照らされ、海を進む船影が1つ。時代錯誤の大きなマスト。機械の音なんてしない大型帆船だ。突き出したオールが、一定のリズムで動いている。 白いマストはボロボロで穴だらけ。良く見れば、船体も半ば壊れかけている。 そして極めつけは、船の周囲を飛びまわる青白い炎。人魂と言う奴か……。 まるで、絵本から抜け出して来たかのような見事な幽霊船。 これで骸骨の船員でも居れば完璧なのだが、しかしそんな者はいない。否、それどころか人影すら見えない。 乗組員のいない、巨大な帆船。 飛びまわる人魂。 そして……。 船の周りを泳ぎ回る、何かの影。 魚だろうか? 否、それは蛇に似た何かだ。ただし大きさが桁違いである。10メートルはあるだろうか。蛇のようなその影。 ボロボロぼ幽霊船と、巨大な蛇の影。 赤い月夜にたゆたうそれは、まるで何かのお伽噺のようでもあった……。 ●お伽噺に似たそれは 「E・ゴーレム(幽霊船)。フェーズは2。これは大昔に海底へ沈んだ船みたいね。この辺りに伝わる伝説では、巨大な海蛇に沈められた……と、伝わっている」 今更浮かんできても誰も覚えていないのに……と、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は言う。 「船の周りを泳いでいるのはE・ビースト(シーサーペント)。巨大な海蛇。目的は不明だけど、船を守るように泳ぎ回っているみたい。こちらはフェーズ1ね」 もう1時間もすれば、近くの港から漁船が出港するだろう。幽霊船やシーサーペントと遭遇する可能性も十分にありえる。討伐までの残り時間は、さほど多くないだろう。 「一応、小さなボートやヨット程度なら貸し出すことができるから、現場まではそれで行ってね。ただし、ボートやヨットではすぐにシーサーペントに沈められるかも……」 何かしらの対処方法がないのであれば、幽霊船を足場に戦うのが無難だろうか? 「とはいえ、幽霊船も敵だから。襲ってくると思うの……。船に居る人魂を全て消せば幽霊船は討伐できるみたいだから。船内にも人魂はいるから気をつけてね」 シーサーペントと幽霊船の討伐に時間をかけすぎるとタイムリミットが訪れる。漁船が襲われてしまえば、あっという間に大勢の人間が死んでしまうだろう。 一般人に被害者が出れば、任務は失敗である。 「お世辞にも良いとはいえないフィールドなので、十分に注意して。それじゃあ行ってらっしゃい」 そう言って、イヴはリベリスタ達を送り出すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月19日(日)22:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●荒ぶる海蛇、不気味な帆船 明け方。穏やかな海。もうじき、漁船が出港する時間帯。海にたゆたう、ぼろぼろの帆船が1隻。幽霊船だ。幽霊船の真下を潜るように、巨大な魚影も。否、魚影ではない。数メートルにも及ぶ巨体をくねらせるそれは、大きな海蛇だ。 月を背に、不気味なオーラを放つ幽霊船。そこへ近づいていくボートが2隻。乗っているのは8人の男女。外見、年齢に統一感の見られない彼らは、アーク所属のリベリスタだ。 「大昔は船が大蛸やら烏賊やら海流に沈められたという寓話は定番らしいですね」 幽霊船を見つめながら『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)がそう呟く。 「中々派手な相手だ」 ボートは少しずつ幽霊船との距離を詰めていく。『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)はボートを繰って、船の周りをゆっくりと旋回する。今のところ幽霊船の姿だけで、シーサーペントは見当たらない。 「青少年の冒険心をさぞや満たすだろうと思いきや、いい歳の大人と少女ばかりだった。……そういうこともあるよね。さ、仕事仕事」 弓を構えて天宮 総一郎(BNE004263)がそう呟いた。苦笑い。幽霊船と怪物海蛇。神話じみた話しだ。それが目の前で起こっている。 「翼の加護をかけますね。………。後は頃合を見て幽霊船に乗り移るのみ」 緑の長髪が風に靡く。『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)が翼の加護を発動させる。仲間たちの背に、小さな翼が付与される。 周囲を警戒してみてもシーサーペントの影は見当たらない。とはいえ、この場にいないわけはないのだ。充分に警戒しつつ、船に乗り移るべく翼を広げ8人はボートから飛び立った。 その直後……。 「-----------!!!!」 声にならない雄叫びをあげ、大津波と共に現れた巨大な海蛇。鋭い牙に、爬虫類じみた感情の窺えない瞳。空を飛ぶ8人を捉え、にたり、と笑ったように見えた。 「さあさあきたデスヨ、海の最中の海蛇と幽霊。全部まとめて刻んで切ってバラ撒くのデス!」 巨大な肉切り包丁を両手にひっさげ『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)は空中で素早く方向転換。こちらへ向かって襲い掛かるシーサーペントの鼻先に、肉切り包丁を叩きつけた。 雨のように水滴が降り注ぐ。綺麗な金髪を水と血で濡らしながら、行方はけらけらと笑うのだった。 ●幽霊船での激闘 「うみにはこんなおおきないきものが居るんだね……」 感心したような、それでいて少し怯えたような。そんな様子でシーサーペントを凝視する『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)。シーサーペントに向かっていった行方を補助するべく、彼女もまた海面へと引き返す。 「わわっ、こっちの世界に来て大分慣れてきた心算だったけど、本当に皆の世界は不思議がいっぱいだねっ?」 シーサーペントの吐き出した水鉄砲を回避し、『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)は幽霊船の甲板に着地。他の仲間たちも、次々に船へ乗り移る。 姿が見えないのは、シーサーペントに向かっていった行方とヘンリエッタ、それから早々に海面へ降り立ったアラストールの3人だけか。 暗視を用いて周囲の確認。甲板に目をやった所で、ルナの動きが止まった。 「うェ……!?」 いつの間に、そこに居たのか。 気付くと周囲には、無数の人魂が浮かんでいた。青い炎がゆらゆら揺れる。続々と甲板に姿を現す人魂たち。リベリスタの周囲を取り囲む。 「吹き飛びなっ!」 愛用のブレードアックスを振り回すランディ。風圧と衝撃、巨大な刃が人魂を襲う。近づいてきていた人魂を吹き飛ばした。開いた空間に仲間達が集まる。 「おとーさんに海の依頼に行くって言ったら水着くれたんですよー!」 緊張の糸が張り詰める。そんな中、キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)だけが場違いなほどに呑気な声をあげる。水に濡れてもいいように、服の下に水着を着て来ていたらしい。 マシンガンのような勢いで飛んでくる無数の人魂。数は10~15程だろうか。まっすぐに飛ぶのではなく、ターゲットを囲むように旋回して飛ぶのだ。同じ人魂を弾丸として使いまわすため、弾数が少なくともその威力、迫力たるや一斉掃射のそれである。 人魂から放たれる冷気が甲板を冷やす。総一郎は、来ていたジャケットをそっとキンバレイの肩にかけた。 「みんなオレより強いし、不調になられたら困る」 そう言いながら、弓に矢を番える総一郎。シーサーペントの姿は甲板から見えないため、その狙いは飛び交う人魂へ。正確無比な矢による一撃。人弾を1つ、打ち消した。とはいえ、まだまだ沢山飛びまわっているわけで。 「埒が開かないな」 ランディが唸る。先ほど、ランディに弾き飛ばされたことを警戒し、人魂はこちらの射程へ入ってこない。それでも、時折隙を見つけては、前衛のメンバーを攻撃し、じわじわと体力を削っていくのである。ヒット&アウェイにも似た戦法だ。 「私が居る限り皆元気なのですよ!」 削られた体力はキンバレイが回復させる。杖を手にした彼女の周囲を、淡い燐光が飛びまわる。燐光は、ダメージを受けた仲間を包みその傷を癒していった。 「先ずは船上の人魂から薙ぎ払い、散らしましょう」 ファウナの髪が舞いあがる。吹き荒れる魔力。直後降り注ぐ無数の火炎弾。人魂を消し飛ばし、甲板の水を蒸発させた。水蒸気が舞いあがり、視界を覆う。薄靄の中に浮かぶ青い炎へ、総一郎が矢を射った。 総一郎の矢と交差するように、霧の中から人魂が飛び出してくる。矢のようになった人魂は、風を切って宙を駆ける。向かう先には、ルナの姿。 「えっ、私っ!?」 高速で飛ぶ矢が、仲間達の間を突っ切った。狙われていることに気付いたルナが、背後へ飛んで矢を回避。しかし矢は空中で旋回すると、逃げたルナの追跡を初めた。 ルナを助けようとランディが駆け出す。総一郎が弓を構え、ファウナは光球を作り出す。すぐに回復へ回れるようキンバレイが杖を構える。 そんな仲間達の進路を塞ぐよう、その眼前に人魂が姿を現した。 「エリューション化していなければうみの男の領分だったんだろうけど、こうなった以上はさすがに手に負えないだろうね」 水上を駆けるヘンリエッタ。同じくアラストールも水上歩行を使用し、シーサーペントと交戦中だ。遠距離から放ったヘンリエッタの矢が、シーサーペントに命中。周囲の水やシーサーペントの体を凍りつかせる。 泳ぐだけで津波を巻き起こすシーサーペント。飛びまわる行方や、水上を駆ける2人を狙って水鉄砲を放つ。船上に戻りたいヘンリエッタだが、なかなかタイミングが合わない。 「巨大な分、鱗も巨大ですね」 氷と波を足場に、アラストールがシーサーペントの背に張り付いた。振りあげた剣が眩く光る。大上段から振り下ろされる剣による斬撃。連続して、同じ場所を何度も切りつける。 鱗が砕け、血が飛び散った。痛みに暴れるシーサーペント。巻き起こった津波がアラストールを飲み込んだ。ハイバランサーや水上歩行があるとはいえ、圧倒的な水量の前にはあらがえない。 シーサーペントが水中へと姿を消した。アラストールの姿も見えない。波に飲まれて、どこへ消えたのか。ボートの破片などを足場に、行方とヘンリエッタが辺りを探して回る。 「おや? あれデスか?」 行方は水面に浮かぶ人影を発見し、そちらへ寄っていく。 その瞬間、彼女の足元が大きく波打った。バランスを崩し行方は倒れる。翼を使い、空へと舞い上がった。行方の後を追うように、水面の水が撒きあがる。竜巻と化した水流が行方とアラストールを飲み込んだ。 「うぐっ……。出し惜しみしてる場合じゃないデスね」 空中に投げ出された行方。翼を動かし、方向転換。同じように投げ出されたアラストールはすっかり脱力してしまっている。このまま落下するのか、と思われたアラストールだが、飛んできたルナがその体を受け止めた。 「お、おお!? 何事なの?」 受け止めはしたものの、自体を把握できてはいないのだろう。目を白黒させ、アラストールを抱いたまま飛びまわるルナ。よくよく見ると、その後ろを青い矢が追いまわしていた。 「そういうことか」 ヘンリエッタが矢を放つ。青い矢と相殺し、打ち消した。ルナはほっと一息つくと、アラストールを連れて甲板へと引き返していった。傷ついたアラストールにエル・リブートを使用し傷を癒す。 逃げていく2人を追って、水中からシーサーペントが姿を現す。波が荒れ、海水が降り注ぐ。シーサーペントの撃ち出した水鉄砲が2人を襲うが、それはヘンリエッタの放った無数の矢が防ぐ。弾幕の如き矢の嵐。水鉄砲を打ち消し、そのままシーサーペントの片目を射抜いた。痛みにもがくシーサーペント。その度に、水面が大きく波打つ。 「アハ。一気に始末するのデス」 歪な笑みを浮かべ、シーサーペントへ急接近する行方。肉切り包丁を振りあげ、宙を舞う。闇雲に放たれる水鉄砲が命中し、その翼を打ち消した。空中に投げたされた行方だが、そのままシーサーペントの背へと降り立った。肉切り包丁が光って見える。行方の持つ全エネルギーが武器へと集まっているのだ。エネルギーだけではない。生命力そのものを、攻撃の為の力へと変換しているようである。 シーサーペントの首元。先ほど、アラストールが鱗を剥がした部分だ。ニヤリ、と嫌な笑みを浮かべ、手にした包丁を叩きつける。面接着で張り付き、容赦なく放たれる包丁での一撃。叩きつけるように振り下ろされた肉切り包丁は、シーサーペントに突き刺さり、首の肉を大きく切り飛ばす。 飛び散る血液。暴れるシーサーペント。降り注ぐ鮮血と、海水を浴びながら行方は包丁を引き抜いた。シーサーペントの体が沈む。翼を失った行方もまた、シーサーペントと共に、海中へと飲み込まれそうになる。 「あら? あらら?」 破壊されたボートの破片に捕まり、なんとかその場に留まる行方。波が荒く、自力でその場から移動は出来ないようだ。 「……。掬い上げに行くよ」 波が収まるのを待って、ヘンリエッタは水上を走る。今にも沈んでしまいそうな行方を助ける為、大急ぎでシーサーペントの元へと向かうのだった。 「まるで私達の世界にいた巨獣みたいだったね」 海へ沈むシーサーペントを尻目に、ルナとアラストールは甲板へと着地。霧は晴れ、人魂の数も大きく減っていた。逃げるように船内へと飛んでいく人魂。 それを追って、リベリスタ達もまた、船の中へと足を踏み入れるのだった。 「幽霊船……有名なお馬さんの名前ですよね? なんでこんな不吉な名前をつけたんでしょうか?」 理解できない、と首を傾げるキンバレイ。恐らく彼女が言っているのは、ゴールドシップという競走馬のことだろう。幽霊船、ゴーストシップ。なるほど確かに、一文字違い。 もっとも向こうは普通の馬である。一方、こちらは幽霊船。最後尾のキンバレイが船内に足を踏み入れた瞬間、彼女の背後でドアが閉まった。 「ひぅっ!?」 思わず飛び上がるキンバレイ。そんな彼女をあやすように、ルナはそっとその頭を撫でた。 「怖くないからね。お姉ちゃんに任せなさい!」 身長的にはさほど変わらないが、それでもルナの方が大分年上だ。加えて、彼女には暗視もある。暗い船内でも、行動に制限は掛からない。 ルナの案内で船内を進む。人魂の灯りを追って、辿り着いたのは操舵室。埃とカビだらけの操舵室だ。テーブルの上には、ノートが置かれているのが見える。 ファウナの手がノートに触れた。次の瞬間、操舵室のドアを吹き飛ばし、無数の人魂が部屋の中へと飛び込んできた。 「誘い込まれた?」 マシンガンの掃射にも似た人魂の猛攻。光球でそれを迎え討ちながら、ファウナは困惑の表情を浮かべる。目的は不明だがこの幽霊船、思っていたより頭がいいようだ。 先ほどと違って狭い室内での人魂の掃射。受け止めるだけで精一杯だ。 「こうも多いと……」 大斧を振り回し、人魂を薙ぎ払うランディ。仲間を庇うべく、最前線で戦い続けている彼は全身に傷を負っていた。後衛が多いため、防戦一方になってしまうと前線で戦う者が必然的に壁役を務めることになる。 「積み荷を探る余裕はなさそうか」 総一郎が矢を放つ。飛びまわる人魂を正確に捉え、それに突き刺さった。矢を番え、射つ。それを何度も繰り返す。正確無比な彼の矢は、確実に人魂を射抜く。主に仲間の庇い役を務めるランディと、主に人魂の殲滅を行う総一郎。受けたダメージは、キンバレイが回復させる。 人魂は残り10もないだろうか? その時、人魂が1つ、矢へと姿を変えランディへと撃ち出された。斧を避け、その矢はランディの胴へ刺さる。 「ぐお……」 ランディの体が揺らぐ。崩れた最前線。そこへ撃ち込まれる無数の人魂。 「うっ!?」 受け切れず、総一郎が床に倒れた。キンバレイを庇うファウナとルナ。光球が人魂を受け止める。舞いあがった埃が、操舵室の中を真っ白に煙らせた。 ●彷徨い続けて、海の底……。 「「幽霊船は海の伝説デスガ、さすがに少々時代遅れ。時代に取り残されたモノは朽ちて消えるのみなのデス。アハ」 笑いながら包丁を振り回す行方の姿は、傍目にはちょっと危ない人のように見える。切りつける先は、閉じられた扉。船内へと続く扉だ。しかし、包丁は扉に多少の傷を付けるだけで、破壊することは叶わない。 「船体にダメージを与えることはできない……だったか。この船は何をする船だったんだろうね」 暴れる行方を尻目に、甲板を観察するヘンリエッタ。海底に沈み、朽ちたのか。船上には何も、残ってはいなかった。扉が開かないことには仲間達の元へ辿り着くことはできない。幽霊船の討伐は、仲間達に任せるしかないだろう……。 行方とヘンリエッタが甲板で立ち往生している、丁度その頃。 操舵室では、人魂が高速で飛び交っていた。触れるを幸いに、リベリスタ達を弾き飛ばしながら、人魂は彼らの正面に集結。火力を増して、人の姿を形作る。 長いコートと、キャプテンハット。髑髏の顔に、カトラスソード。青い炎で出来た幽霊船超だ。虚ろな瞳が、リベリスタを捉える。出現と同時に振り回された剣が、ファウナとルナ、総一郎を切りつける。 カタカタと歯を鳴らし、幽霊船長は笑う。キンバレイが仲間達の治療をしようとするが、傷は癒えない。困惑の表情を浮かべるキンバレイ。そんな彼女を庇うように、アラストールが前へ出た。 アラストールの剣と、幽霊船長の剣がぶつかり合う。めちゃくちゃに振り回される船長の攻撃。見極め、受け流すアラストールだが手数が違いすぎる。 おまけに、彼女の背後にはキンバレイも。後退も全身も出来ないアラストールは、悔しそうに歯を食いしばった。 優勢と判断したのか、幽霊船長は剣の速度をさらに速める。風を切り、青い火の子を飛ばしながら、舞うような斬撃の嵐。 その瞬間。 幽霊船長の背後から、人影が飛び出す。 「それ以上は近寄らせない」 振り回される剣に体を切り裂かれながら、幽霊船長をはがいじめにしたのはランディだった。船長の剣が、ランディの肩に突き刺さる。 ランディに続き、総一郎が船長の足を掴む。床に血だまりを作りながら、ここまで這ってきたようだ。 傷を抑え、起き上がったルナとファウナがキンバレイを庇うように立つ。回復役の彼女を、万が一にも倒れさせるわけにはいかない。 「今のうちだ」 ランディは言う。その視線の先には、アラストールの姿がある。アラストールは、無言で1つ頷くと、剣を振りあげ駆け出した。 アラストールの剣が、眩く輝く。それを見て、幽霊船長は人魂の矢を撃ち出した。空気を切り裂き、矢が飛んでいく。矢がアラストールに突き刺さる、その直前、背後から飛んできた光弾によって、人魂の矢は打ち消された。 光弾を放ったのはキンバレイだ。 「鎮め……。そして、わだつみの元で眠れ」 輝く刃が振り下ろされる。人魂になって逃れようとする幽霊船長だが、間に合わない。閃光に焼かれ、人魂は消しとんだ。 船が大きく揺れたのは、その直後である。 もの凄い速さで沈んで行く船から逃げ出した8人は、波間に漂う木端に掴まりその場から逃げる。沈んで行く船を尻目に、ファウナは船室で拾ったノートを開く。 ノートは航海日誌だったようだ。正体不明の何かに襲われ、船が沈む、その直前までの内容が記されていた。 「宝も、過去も、海で眠らせておくべきかもしれないな」 そう呟いて、ランディがノートを取り上げた。沈んで行く船へとそれを放り投げる。ノートには、船の積み荷についても記されていた。どうやら船の積み荷は、大量の金塊だったらしい。 「なにはともあれ、無事依頼終了なのです!」 拳を振りあげ、キンバレイがそう宣言する。東の空に朝日が昇ってくるのが見える。制限時間内に事を終わらせることが出来て、ルナはほっと溜め息を零した。 波間に漂う仲間たちを回収するため、総一郎は陸へと飛んでいく。用意しているボートを、この場まで運んでくるためだ。 沈んで消えた幽霊船。金塊共々、二度と引き上げられることはないだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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