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【ゲーセン】巫魔女アマリムス=ミョム

●0と1の境界 -0 or 1-
 脳という器官には、微弱な電気の信号が駆け巡っている。
 これを模したコンピュータ。異国の言葉で"電脳"というそれは、0と1の最小単位の信号で動く、脳のフェイクである。
 尤も、常識の範疇では、最新鋭のコンピュータであっても、人の脳に遠く及ばないのだが――



●弾幕は悪意 -myom-
「おなかすいたわねえ……」
 巫魔女アマリムス=ミョムは、空腹を覚えて気だるそうにゲーム筐体の上へ、腰を下ろした。
 放棄されたゲームセンターの一角。外に視線をやると雨である。
「お腹すいた」
 アマリムスは、コンピュータ・ゲーム――プログラムのエリューション・フォースであった。
 かつて、逃走に成功し、未だ討たれずにいた存在である。
 0と1の境界から出現し、基本的な人格の上に"学ぶ事"を覚え、思索すら行う個体。
「羊羹たべよ……」
 アマリムスは逃走中に物を食べることと、空腹という状態を学習した。
 人里の商店街から買ってきた羊羹を食い、欠けた湯のみに茶を淹れて、基本的に一日中ぼ~っとする事が好きであった。
 時々、無性に仲間を増やしたくなる。
 時々、無性に人里で事件を起こしたくなる。
 敵対者の目は真剣に狩ろうとしてくる。増やした仲間は悉く狩られているのだが――
「けっこう楽しいのよねえ。またやろうかなぁ……」
 羊羹を食べながらに呟く。
 理性を持ったとて、ボトム・チャンネルにおける異常因子――エリューションである本能が起こす欲求に抗い難いか。
「お腹すいた」
 どうも空腹が収まらない。
 今日はどこか変だと小首を傾げて、次の一杯を湯のみに注ぐ。
 突如、手が止まる。
「――ああ、そっか、壊せばいいんだ。この世界を」
 更なる強い本能が告げる。
 空腹という形で学習した本能の訴えは、今までのごっこ遊びとは異なって、ボトムに敵対するという事。
 アマリムス=ミョムは、今日この日、一つの境界を踏み越え、飛翔した。



●EX巫魔女アマリムス=ミョム -Ver3.0-
「とらえた。アマリムス=ミョム。げーせん」

 ――ガタッ

 『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)の言葉に、ガタッと立ち上がったリベリスタの手には、エア・レバーが握られている。エアなのに滴る汗は本物である。
「"シューティングゲームの筐体"から出てきたE・フォースを倒してほしいの。人里にたどり着く前に」
 映像を見れば、敵は一見して、ただの少女である。
 無論、服装は何かのコスプレといえなくはない。
 しかし、顔立ちは幼さが多く残る、わがままそうな顔をした、ただの少女に見えるのである。
「以前に取り逃がした個体よ。『弾幕は悪意』と名台詞めいたものを残しているし、狡猾な性格をしてる」
 その狡猾さが齎した、逃亡という結果が残っているのならば。
 いざという時には、逃亡してしまう事も考慮が必要だろうか。
「戦闘に関しては、空中戦になるとおもう。あと"増殖性革醒現象"で、まわりから、どんどんエリューションを召喚するわ」
 "増殖性革醒現象"は、この個体の周囲にあるものに対して、革醒を促す。
 話によれば、逃亡後も音ゲーム、格闘ゲーム、ロボットゲームから、強力な個体を生じさせて事件を起こしていたという。
 イヴは補足する。
 幸いにして戦闘中ともなれば、粗製乱造となり、突然フェーズ2クラスが誕生する事はない。しかし――
「フェーズ3」
 イヴは短く告げた。
 ブリーフィングルームの空気に、緊張が帯びた瞬間であった。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:Celloskii  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月20日(月)22:52
 Celloskiiです。
 ゲーセン・ボス。巫魔女アマリムス=ミョムをお届けします。
 『ゲーセン行こうぜ!』 で初出のエリューション。
 続く『ゲーセン征こうぜ!!!!!』『ゲーセン逝こうぜ!!!!!』の黒幕です。
 時間が経過によってフェーズ3の境界を踏み越え、イヴに捕捉された形となっております。
 ネタっぽいですが、HardはHard。決着になるかどうかは皆様次第ではあります。

 以下詳細。

●目標
 E・フォースを撃破する


●状況
・モブリスタがいます。翼の加護を貰って、空中で迎え撃つ形になります。
・リプレイは接触直後から始まります。自付与はしていて良いです。
・時間は昼。天気は雨です。


●エネミーデータ
E・フォース『巫魔女アマリムス=ミョム』
 シューティングゲーム筐体のE・フォースです。
 高神攻、高DA、高回避を持ちます。当たり判定が小さいです。ただし速度はゆっくりです。
 金髪の少女。黒と赤を基調としたフリル巫女服を着てます。非常に強欲で狡猾。
 
 口癖は「年金よこせ」「ゆっくり死ぬがよい」「弾幕は悪意」
A:
 ・『凶兆ヒンデンブルグの日』    神遠単 ダメージ中 不吉 不運 凶運
 ・『蔦伝う紅茶館の錆格子』     神遠範 ダメージ中 呪縛
 ・『ゆっくり死ぬがよい』      神近単 ダメージ大
 ・『逆五亡星マスタープリズン』   神遠貫 ダメージ獄 溜2T

P:
 ・"増殖性革醒現象"(強)
  毎ターン、アマリムスの手番時に、後述『毛玉』を2体召喚します。
 ・超自由飛行
  高度による飛行ペナルティを受けない飛行です。


毛玉
 彡゜д゜彡こんな顔をした、アマリムスの配下です。E・フォース。
 速度と回避力を持ちます。HP低めです。
 生み出されたターンはそのターンの速度0のタイミングで行動します。
 アマリムス撃破と共に、全て一斉に自滅します。

 体当たり 物近単 ダメージ中 反動50
 爆発する 神近単 ダメージ中 反動250 ブレイク


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
ティセ・パルミエ(BNE000151)
ホーリーメイガス
★MVP
神谷 小夜(BNE001462)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
覇界闘士
滝沢 美虎(BNE003973)
ミステラン
秋月・仁身(BNE004092)

●立体機動3Dシューティング -Watch out-
 上空。
 薄墨色の世界が眼前に広がっていた。
 重い雲の海の下。初夏の雨糸が、幾条の銀箭となって降り注ぎたる。
 粒は重く、霧を欺くが如くに、着衣へと染みこみて。

「うっふふのふー。何? また来たの?
 お腹一杯になるのには、一杯穴をあけなくちゃいけないの。
 邪魔です。じゃーまーでーすっ!」

 まくし立てるように言葉を連ねるアマリムスではあったが、瞬息の間に銃弾がその頬を掠めた。
 途端にまくし立てる様な声は雨に消え、アマリムスは憎々しげな表情で歯ぎしりを鳴らす。
「前回は優先順位上、見逃さざるを得なかったからな」
 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)の掌に。黄金の銃を抜き去った抜き打ちの初手。
 福松は、この事件を追う一人であった。
 かつて、格闘ゲーム、音ゲーム、ロボットゲームから生じたエリューション達を撃破し、今その黒幕へと。
「……今回は、きっちりとピチュらせてやる」
 帽子からぽたりと、雨だれが滴る。
 近くで雷が鳴った。雨糸はざあざあと更に濃くなっていく。
「ぼ~っと過ごす日常はボーナスゲームだったんです。アマリムス……残念だけど、それも終わりですね」
 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)が、初夏の雨の中で、それでも良く通るソプラノを最初に発した。
 ティセにとって3度目の、アマリムスとの交戦である。
 遊びを忘れたゲームほど悲しいものはないと胸裏に哀れみめいたものを抱きながら、"宿敵"へと拳を構える。
 構えたるティセと同時に、『魔獣咆哮』滝沢 美虎(BNE003973)も、両拳を額の近くに置く。
「あちゃー、とうとうフェーズ3になっちゃったかー」
 エリューションは時間の経過と共にその個体を強化する。
 フェーズ3以上は、階位障壁と呼ばれる防御能力により、現代兵器が通用しなくなるのである。これまでアークのリベリスタが交戦してきた敵性の神秘達の中でも個体は少ない。まさに一種の境界であった。
「ボトムを壊して自分の居場所を作りたいみたいだけど、そうは問屋がおろさないぞっ」
 美虎は真っ向から。ティセはアマリムスの頭上へと動き、下へと掌打を繰り出す。
「ふふん、ぎったんぎったんにしてあげるわ! かかってきなさい!」
 美虎の、炎を纏った拳は箒の柄で打ち下ろされ。上から撃ち降ろされるティセの掌打はすり抜けたる。アマリムスはその場で、くるりと一回転して。
「『凶兆ヒンデンブルグの日』!」
 禍々しき黒きスパークがぱちりと生じ、ティセと美虎へ凶兆が奔る。次に、ぽこ。と気の抜ける様な音がした。
 両者の眼前に彡゜д゜彡が生じる。
「げ、いきなりやばい!」
「ボ、ボム連打! ボム連打! にゃーー!」
 毛玉が爆発し、途端に中空を維持したる加護が消滅する。
 重力に引っ張られて落下するティセを、下段にいた『Dreamer』神谷 小夜(BNE001462)の手が受け止める。
 美虎を『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)が受け止める。
「そうくると思いましたよ、アマリムス!」
「毛玉……かわいい顔して恐ろしい奴らだな……!」
 小夜もこの事件を長らく追っていた一人である。
 そして木蓮はその決意を尻目に、因縁のある奴も多いみたいだと、胸裏に掠め毛玉を見る。
「私の名前は神谷 小夜、悪をぶっ飛ばす本職巫女!」
「なら、尚更だな。しっかりきっちり決着つけよう、なあ巫魔女さんよ!」
 即座、ティセと美虎を上へ投げるように中空へと放る。小夜が詠唱を終えて齎される翼の加護。
 切られし火蓋。
 『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)が、遠巻きから見据え、目を細め。愛用の火縄銃の火蓋をまさに切る。
「ゲームの事は、全く以てさっぱり分からんが。つまり、あの者を穿てば良いのだろう?」
 アマリムスの軌道はゆるやかながら、まるで幻影の如く。だが龍治の目は捉えたる。
「この目に見えているなら何ら問題はない」
 何千も何万も修練を重ねた"当てる事"への研磨は、避ける事に長けたる敵の胸部に容易く吸い込まれた。

「痛いわね……けど、へえ? 毛玉の爆発で"落ちる"んだ?」
 アマリムスは、思索し学ぶ個体である。心臓の位置の銃傷を物ともせず、にやりと笑みを浮かべながら、箒に次の魔力を集中させる。
 ――が、咄嗟。下から上へと、雨雲ごと薙ぎ払わんとするが如く生じた銀の弾丸に、溜めた箒の魔力をあてがった。
「何奴!?」
「『妾に似たような格好のようだが、立場は真逆じゃの』」
 『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)は、世間話めいた調子で、ひらりと言葉を口にした。
「『End Gameといこう、世界に渾名す者は問答無用で破壊するのが妾の使命だ!』」
 シェリーの膨大な魔力から放たれる"銀の弾丸"は、掠るだけでも十分な威力を持つ。銃弾を必ず当てる事に長けた龍治とは別のアプローチで此度は此処にある。『掠るだけでも十分』なのだ。
 『親知』秋月・仁身(BNE004092)は、戦線復帰したる前衛を眺めながら呟いた。
「シューティングゲームに連コインはお約束ですよ」
 最も危険とされる一手として毛玉を見ていた。
「なら、目には目を、歯に歯を、弾幕には弾幕を――」
 シューティング史上最強の弾幕を想起しながら、掌より火の玉を無数に放つ。
「死 ぬ が よ い」
 それは洗濯機の水流が如きものであった。
 雨糸は霧を欺き、火の玉は雨糸を欺く。硝煙とも霧とも雨糸ともつかないモヤの向こう。

「まさに恐悦至極、なんてね」

 アマリムスの姿は悠然と佇んでいた。



●三択 -Fall Down-
「燃えろ必殺とらナッコー!!」
 美虎の燃える拳が、アマリムスの腹部へと突き刺さったかに見えた。
 瞬息の間に雷が生じて、眼前がホワイトアウトする。
「わ!?」
「にゃあ!?」
 ティセの掌打も、落雷の光で一瞬の隙が手元が狂う。
「ふふん、効いてきた効いてきた。次はあっちね! 『凶兆ヒンデンブルグの日』」
 悪辣な笑みを浮かべ、箒をかざすアマリムス。
 眼前の美虎とティセではなく、仁身と木蓮の付近に凶兆を告げるスパークが発生する。
「不味いぜ、龍治。毛玉に攻撃が当たらない!」
「……運を味方につけているのか」
 木蓮の声に龍治が呟く。
 齎された凶兆のスパーク自体の被害は大して重くは無かったのではあったが、美虎とティセ、仁身と木蓮の攻撃が途端に"運悪く"外れる事態が生じる。龍治とシェリーは最後部から戦況を見るに、四人も火力が封じられる事は、非常に不味い事態と言えた。
「『Phase3、それはつまり世界の敵、アークエネミーとして成熟を意味している――成る程』」
 それだけの事はあるとシェリーが思索した次に、アマリムスの周りに二つの彡゜д゜彡が生じ、凶兆を受けていた美虎とティセは、爆発の度に大きく体力を穿たれ落下する。
「また!? 痛!」
「大吉のお守り持ってきたのに! ちっくしょー!」
 福松がアクセス・ファンタズム経由で、翼の加護要員として来た名の無きリベリスタへと声を飛ばす。
「翼の加護を頼む!」
 声を飛ばし、次に福松は飴を噛み砕いて、雨の中で照準を合わせる。
「弾幕を耐え切るなどと言ったまどろっこしい攻略はしたくないんだがな」
 出現した彡゜д゜彡を狙って、福松が弾丸をばらまけば彡゜д゜彡はあっさりと消滅した。
 されどアマリムスの回避能力はかなり高い。
「集中がいるか?」
 前衛は、ティセ、美虎、福松の三人である。
 そして落下しても、下段で待機している後衛が受け止めるまでは福松の想定通りと言えた。
「だが、あの凶兆は……不味い」
 凶兆を強力に打ち砕ける者は小夜のみである。
「ブレイクイービルか、天使の歌か……」
 小夜は思索する。翼の加護が、名も無きリベリスタによって再付与されたのならば。
「……回復が追いつかないかもしれません」
 凶兆自体は大した火力は無い。しかし重ねられると、"運悪く"クリーンヒットする。更に攻勢においても大幅に火力が減退するのである。
 回復と凶兆――不吉不運凶運により齎される被害の天秤。これがゆっくりと後者に傾きつつある。
 傾きつつあるのに、翼の加護が先か、回復が先か、ブレイクイービルか。アマリムスは、この三択を突きつけてくるのである。
「――けれど、負けません!
 ゲームセンターで色々なエリューションを産み出すだけなら個人的にはギリギリ許容範囲ですけど、世界を破壊するとなれば」
 リベリスタとして許せない。
 天使の歌を選ぶ。雷とは異なる優しい癒しの光が全員に降り注ぐ。
「毛玉と凶兆。どっちも不味いぜ」
 ここで凶兆を抜けた木蓮は、木のストックのライフルを構えた。
「二重の弾幕だ、安地はほとんど無いぜ……食らい心地はどうだ!」
 彡゜д゜彡は福松の弾丸で消滅している。龍治の最高精度の射撃を間近で何度も見ているが故に、渾身の針穴通しでアマリムスを穿つ。
「痛ったー! 決めた。"次"はあんたとあんた!」
 福松と木蓮を交互に。アマリムスは指差した。
「シューティングゲームは弾幕だけじゃあ、ありませんよ?」
 木蓮に次いで、凶兆を抜けたる仁身は、アマリムスの顔に光球をぶつけた。
「ぶへっ! やっぱ全員むかつくわ。そこの粘着ガチ巫女も、粘着ノースリーブ猫耳も。ああ、ムエタイ馬鹿も、飴咥えた気障も、前にいたむかつくやつばっか! 今度はなに? 悪趣味なカッコした魔法使いに、ああそうだ、馬鹿といえば鹿頭も、狼耳も、メガネも、どいつも! こいつも! 邪魔です! じゃーまーでーす!!」

「安い挑発には乗らんが――今、木蓮に何か言ったか?」
 龍治は粛々と銃を構える。
「『おぬしは一度、鏡でもみてはどうだ』」
 シェリーが、掌に魔を凝縮させる。
「今、ムエタイを馬鹿にした?」
 美虎が、凶兆を振り切って拳と肘に力を込める。
「もう、何? 粘着ノースリーブ猫耳って~!」
 ティセが、凶兆を振り切って掌に土砕の力を込める。
「まあ……本当に巫女ですし、攻撃もしないんですけどね」
 小夜が、ちょっと怒りを篭めて天使の歌を唱える。
「実際に鹿頭だけど、とりあえずボスらしくヘイト稼いで華々しく倒されてくれ。俺様たちが手伝ってやるぜ!」
 木蓮は、視線を龍治へ、次にアマリムスへ戻し、毛玉の出現場所を計算して銃を構える。
「だな。ザコを召還するという事はボス仕様、もうプレイヤー機の特権であるコンティニューが出来ないという事だッ!」
 福松が核心を突きながら、龍治、木蓮に続いて銃口を並べる。

 アマリムスの周囲に巨大な魔方陣と同時。彡゜д゜彡が現れる。
「まあ何ていうか」
 仁身が呟きながら、雨に濡れたメガネを軽く拭いてかけ直す。
「――いよいよもって死ぬがよい」
「やかましいわね。そっちこそ全員ピチュり上げてやるわ」
 雨は更に激しさを増し、雷がまた鳴り響く。



●プレイヤーの境界 -DEAD or GRAZE-
 やはりに初見という者でさえ即座に実感する程に、一撃一撃が戦局を傾けたる程、気を抜けない階位であった。
 常に回復手へ強いたる三択。前衛を襲う彡゜д゜彡のブレイクによる落下。凶兆と呪縛。
 大きく火力を振るえない事態が生じ、戦局は持久戦へと至る。双方の発狂弾幕は、まるで鍔迫り合いの如くに。

「ゼエゼエ……いい加減諦めなさいよね! 年金よこせ!」
 アマリムスの魔方陣が光を増し、戦局は動く。
「来るか……失望させてくれるなよ?」
 龍治が気糸の罠を生じさせ、アマリムスを絡めとる。
 最も使わせてはならなかったマスタープリズンを、中断させた事に他ならなかった。

 彡゜д゜彡
       彡゜д゜彡

「チィ……! 麻痺でも出てくるか」
 福松は、彡゜д゜彡の出現に飴の棒を強く噛み締める。眼前で次々と爆発する。
 二連続の爆発と、凶兆が齎す大きな被害に運命をくべながらも、しかし浮遊感を失い。
「やれ、木蓮」
 短く龍治が言い放つ。木蓮が動き、落下した福松の手を掴む。
「悪いな、木蓮」
「削り切って倒すんだろ?」
「ああ、削り切って倒す! やられっぱなしは性にあわん」
 行ってこい、と木蓮が福松を大きく上へ放る。放ると同時に、木蓮は長銃を構えて、的確に彡゜д゜彡を消滅させる。
「大天使の吐息!」
 小夜の癒しが、福松に累積した凶兆を祓い、傷を大きく癒す。次に名も無きリベリスタの翼の加護によって浮遊感を取り戻す。
「うまく行った! さっすがたちゅはるのスーパートラップネスト!! なんか脳汁出てきた感じ!」
 美虎は、アマリムスが気糸で縛られる様を見て高揚した。
 呪縛と凶兆を掻い潜り、全員が、全力で攻勢が可能となった初めてのタイミングである。
 ここで削りきれなければ、また持久戦となりえる事は想像に難くない。
「『おぬしには、世界はどうみえているのじゃ』」
 何度目かの銀の弾丸を放ちたるシェリーの問いかけに。
「うっさいわね。お腹空いたって言ってんでしょ! ぐはー!」
 銀の弾丸は掠るだけに留まるものの、アマリムスの全身が更に揺らいだ。
「もういっぺん、恐悦至極って言ってみろ! ここで潰してやる! 貴様らの存在を消してやる!」
 ふらついたアマリムスの頬を、仁身の光球が殴りつける。アマリムスはぐはー! と再び音を上げる。
「一人って寂しいよね。頼れる相手がいなくて助けて貰えないよね」
 気糸に縛られたアマリムスに、ティセが語りかける。
「今まで仲間を手をかけてきた、かけようとしてきた報いです」
 かつて、滅却師範という個体がいた。山田さんという個体がいた。その上に。
「あのおっさん(滅却師範)を一緒に倒そうって言ったの、あんた達じゃないのさ!」
「ぜっっっったい逃がさないんだからっ!」
 その際、結構ひどい目にあったのが大体ティセであった。怒りの土砕掌の衝撃が、アマリムスの全身をスパークさせる。
「Evans Manにデミタス、ジニ子さんという個体もいましたね……」
 小夜がぽつりと呟いた。前線に復帰した福松が嘆息する。
「あの時はひどい目にあった。そんな事よりもだ。有……社長を裏切った事は覚えている……許せん!」
 かつてのロボットゲーム筐体から生じた個体"社長"の魂を銃に込めるが如くに放つ。
「あえて言わせて貰うならば、これがオレの【『銃符』B-SSS】だッッ!!」
 連続した銃声が、一つの銃声に聴こえるが如き速射は、アマリムスの高回避をものともせずに額を撃ちぬく。もう一度。更にもう一度。アマリムスの指先はノイズが肥大し、0と1が無数に並ぶ黒い像へと変わる。

「……ちっ! 今日の所はこのくらいで勘弁してやるわ!」

「だめー! けして逃さない!」
 美虎は、高揚の上に高揚を重ね更に力を溜める。正念場。
 この全員での全力攻撃可能なタイミングをのがしてはならない事を胸裏に、間合いを詰める。
「ここぞのレバー二回転+PPP! 隠し超必殺・とらっ! だああんくっ!!」
 アマリムスの頭を掴み、地面へと真っ逆さまに落つる所を、抵抗されて中空に放る様な形になる。しかし放った場所は味方のど真ん中。退路を断つ。
「だめ、完全にキレたわ」
 フェーズ3は、薄ら笑いを浮かべて、龍治の気糸を引き千切る。大きく息を吸い込む。
「逆五芒星! マスタァァァプリズンッッッ!! ――は、無しで」
 凶兆が二つ。小夜を襲った。
「危なかった……ホントに。回復はあんただったね、小夜だったっけ。痛い目見て冷静になったよ」
 気づく事。学ぶ事。知識と知恵。
 "要"に齎された凶兆は、新たな局面へとあっさり次へと移行させた。
「これは……凄くいけません」
 この凶兆により回復が、逆効果へと変じる。小夜が行使できうる選択は、ブレイクイービルか翼の加護の二択となる。
 自然回復できれば、その一手を回復に回せるだろう。しかし――
「あんた達は、毛玉と遊んでて頂戴。こうされたら困るでしょ?」
 前衛の眼前に、二体の彡゜д゜彡がくるくると踊りだす。
「成程な。回復封じか。だが、その前にお前を倒せば良い」
 龍治の手に力が篭る。
「『そう簡単に勝利を確信されても、困る』」
 最後尾の龍治とシェリーは、ほぼ被害を受けていない。
「ボスなら第二形態でも第三形態でも好きなのになれよ。さっき言ったぜ――」
 木蓮の弾幕が彡゜д゜彡を消滅させる。
「俺様たちが手伝ってやるってな」
 それは、アマリムスが毛玉を生じさせ、そして毛玉が動く前の僅かな間を捉えた攻撃であった。
 凶兆は小夜のみで、且つ前衛の落下は無い。
「死ぬがよい――そしてさようなら」
 全員が全力で攻撃できうるロスタイムに、仁美が光球を放つ。
 ここで仕留めきれなければ、小夜の回復が曖昧となった戦況。前線の崩壊は目に見えている。
「諦めないよ! 絶対に!」
 ティセは深いダメージを負っていた。が、諦めきれるものではない。
 運命は非情である。歪曲(ねじま)げる事を願っても、容易くは届かない。
 余力を全て絞り尽くすが如く、駆け抜ける戦い。
「みんなのボムになるって、決めたんだ!」
 ティセの掌が、その勝敗に手をかけたる。
 肘を引き、次にまっすぐ突き出したる掌は。
「ぐはー!」
 あと少しが届くかどうかの小さな欠片に手を伸ばす。
 掌に一度は掴みたる結末は。


                           ......DEAD or GRAZE

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 Celloskiiです。
 このような結果となっております。
 今回は、三段階のポイントがあったと考えています。

 一:アマリムスの行動前に動ける
 二:アマリムスの行動後に動ける
 三:アマリムスの行動後で、且つ速度0(毛玉の行動)より速く動ける

 三を意識できるかどうかで、若干ながら不吉不運凶運無しで撃てる手数などが変わったと思います。
 勝敗は、その若干部分の僅かな差だったと思います。
 惜しくもこのような結果となっておりますが、行動を遅らせて受け止める作戦は良かったと思います。
 ご参加有難うございました。お疲れ様でした。