● コン、コン、コン 薄暗い部屋の中に小さな音が響き渡る。ベッドの中の男が机を叩いた音だ。 すると、程無くして部屋の扉が開かれる。 「正志さん、ごめんなさい。遅くなってしまって。でも、安心して。その分、腕によりをかけて作ったわ」 入って来たものの声は女のように思える。おしとやかな印象を与え、男のことを真剣に愛しているのが伝わってくる。そして、温かな野菜スープから漂う香りは、自然と食欲をわき上がらせてくれる。 「うぅ……あぁ……」 「今すぐに食べさせてあげるわね。ふー、ふー」 女はスープをスプーンですくうと息を吹きかけて冷まそうとする。 誰しもが献身的な妻の姿を想像するであろう。 しかし、その姿は棘に全身を包まれた、異形そのものであった。 「うぅ……」 「おトイレの方だったのね。気付かなくてごめんなさい」 男の声に皿を一旦置くと、いそいそと後始末を始める異形。 この歪な花園の中で、今日も愛は紡がれていた。 ● 意外に冷え込む5月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、ノーフェイスの討伐だ」 守生が端末を操作すると、全身を棘のようなものに包んだ人型の生き物が画面に姿を見せた。フォルムから察するに女性のように思える。 「現れたのはフェイズ2、戦士級のノーフェイス。元は早矢(さや)って名前のOLをやっていた普通の女性だ。ただ、今は既にエリューション化はかなり進んでいて、廃棄された洋館に立てこもっている……男性1名を監禁した状態でな」 守生は表情を変えずに端末を操作すると、地図を表示させる。どうやら近所に人が住んでいる様子はないようだ。人目を気にする必要は無い。多少眷属が生まれてはいるが、まだ十分に対処可能なレベルである。 「説明はこんな所……って言いたいんだが、一応補足だ。ここから先は聞かなかったことにしてくれても構わない」 何か悩んだ風に説明を続ける守生。 彼が言い淀むときは大別して2種類。強大過ぎる敵が予知された時と、特殊な事情がある相手と戦う時だ。 「監禁されている男性の名前は、日下部正志。職業は、まぁ結婚詐欺師ってことになるな」 息を呑むリベリスタ達。 話をまとめるとこうだ。 日下部は早矢を標的に定めて、金を騙し取ろうとし、それは後一歩で達成される所だった。しかし、そのタイミングで結婚詐欺を行っていた過去が彼女にばれてしまったのだという。普通ならば、そこで警察の手が入るか、逆に彼女が返り討ちに会うかしていたはずだ。 しかし、このタイミングで早矢はエリューション化を果たしてしまった。 「その後に彼女が取った行動が、今の状況だ。日下部を攫って、身動きが出来ない状態にして、せっせと面倒を見ているらしい。正直、俺には何を考えているか理解出来ねぇ」 元々悪い目付きをさらに悪くして守生は説明する。 「ただまぁ、1つ言えるのはエリューションを放置出来ないってことだ。とにかく、彼女を止めてくれ」 そこまで言って、守生は画面を落した。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月21日(火)22:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● つい先ほどまで、その歪んだ愛の園では静かに時間が紡がれていた。 しかし、今や破壊の爪痕が刻まれて、平和だった面影は何一つ残されていない。 常に楽園へは蛇がやって来るもの。 蛇はいつでもやって来る、楽園の在り方を否定するために。 ● 紅い月が洋館を照らす。 それは世界の崩壊を告げる輝き。 もっとも、神秘の世界に生きる者は知っている。アレは似て非なるもの。 しかし、紛れも無くここにいた「花嫁」にとっては世界の崩壊を告げる合図そのものであり、そのために放たれたのだ。 「ゴメンな……」 偽りの紅い月を背に『刹那の刻』浅葱・琥珀(BNE004276)は戦場を見渡す。館の中には薔薇が飾られている。彼女らの生活を彩るために飾られたのであろうか。しかし、今や主の革醒の影響を受けて、怪しげな妖物と化していた。 それを眺める琥珀の表情は逆光にて見えないが、声はわずかに昏い。自分に出来ることはそれしか出来ないと分かっているから。 そんな彼の憂いを吹き飛ばすかのように、館の中へと楽しげな笑い声が木霊する。 「はいお邪魔しますデス。粛々と幕を引くデスヨ、閉じた世界の花嫁さんと人の屑。全部刻んで撒き散らし混ざって混ざって同じ肉。アハハハハ!」 『飛常識』歪崎・行方(BNE001422)の笑い声だ。 常識を逸脱した都市伝説は、笑い、哂い、嗤う。 社会から切り離されたこの世界を。 「エリューションを滅ぼす」という常識的判断に従って。 「洋館にて素敵な彼氏と彼女は仲睦まじくおままごと。さあさあ幸せな家庭を引き裂く凶刃が切ってバラしてバラ撒いて。アハ」 言葉に善意は無く、淡々と楽しげに刃を振り回す。 「あー、うざってぇ……」 行方の後ろから頭を掻きむしりながら現れた『ザミエルの弾丸』坂本・瀬恋(BNE002749)の言葉は、行方に対して向けられたものではない。この空間全てに対して向けられたものだ。 気分に任せて破壊し尽くす気にもなれないが、陰鬱な気分にさせられる位には不愉快な場所だ。 そんな瀬恋に棘の鞭が放たれる。 瀬恋はギリギリの間合いで体を捻って躱すと、そのまま棘の鞭を放った薔薇――E・ビーストと人は呼ぶ――との距離を詰める。 「同情する気にもなれねぇな、両方共」 言葉を発した刹那、瀬恋の殺気が膨れ上がる。 彼女が拳を振るえば、いともたやすく棘は引きちぎられてしまった。 『何なの!? あなた達、何故こんなひどいことをするの?』 その時だった。 部屋の奥から異形が姿を現わす。口から流れ出る言葉はあくまでも一般人の感性そのものだ。しかし、その力は既に常識から逸脱している。並みの女性であれば、押し入って来た賊を棘の鞭で撃退しようなどとは思うまい。 そんなノーフェイスに対して、『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)はちょんとスカートの裾をつまみ軽く持ち上げると、丁寧にカーテシーの挨拶を行う。 「夜分遅くに失礼致します。残念ながら貴女様の新婚生活はこれにて終了でございます」 『そんなこと、させないわ!』 ノーフェイスが鞭を放つと、リコルは素早く広げた鉄扇で受け流す。すると、彼女の全身に張り巡らされた守りの力が、ノーフェイスを撃ち、悲鳴を上げる。 「色々と想いはあるのでしょうね、ノーフェイスにも」 エリューション達との距離を測りながら、『紺碧の夢』クラウディア・フォン・クラウゼヴィッツ(BNE004519)は相手の心中を推し量ろうとしてしまう。 長らく神秘の世界と距離を取っていた彼女ではあるが、エリューションとはそれなりに対峙をしたこともある。だから、知っている。エリューションと言えど、元は「こちら側の存在」。革醒する前には、それぞれの生を生きている。「有象無象のエリューション」等と言うものは存在しないのだ。 だが、 「ですが、私はリベリスタですから。どのような理由であれ、ノーフェイスは討つしかありませんし、それが神秘世界の住人でなければ干渉するわけにはいきません」 強い意志を込めた瞳で集中すると引き金を絞る。 すると、放たれた光の弾丸がエリューション達を貫く。 空いた穴の向こう側で恐怖の悲鳴を上げるノーフェイスを眺めながら、『親知』秋月・仁身(BNE004092)はため息をつく。色々思う所のある相手ではある。しかし、そんなことにこだわっている場合ではない。 「これで出鼻を挫く、出花かもしれませんが」 そっと手をかざすと、周りに光球が浮かぶ。 これは元々、ボトム・チャンネルに存在する術ではない。異世界ラ・ル・カーナより伝わった新たな力。 今、この世界でフュリエ以外に、自分より上手く使いこなせる者はいないという自負もある。 「これが僕の新しい力、異界の植物を根源とした力ですよ」 仁身の呼び出した光の弾丸がノーフェイスにぶつかり爆ぜる。 リベリスタ達の猛攻に対して、異形の花嫁は怒りの叫びを上げると、エリューションを嗾ける。エリューション達は棘の鞭でリベリスタ達を屈服させようとする。 しかし、リベリスタ達もまた手に握った刃で、異界の力に目覚めた花々を切り捨てる。 そんな中、『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)の心の中に、絶え間なく囁きかける声があった。フォーチュナの話を聞いてからずっと、その声は彼の心に引っかかっている。刃を振り下ろしながらも、それが自分の刃を鈍らせていることに気が付いていた。 「拙者達がすべきことは、エリューションを倒すこと。早矢殿に罪はない」 ジョニーは思う。 全ては崩界が原因なのだと。 望まぬ革醒が歪んだ世界をもたらした。それさえなければ、このような形にはならなかったはずだ。 しかし、人は言う。「在ることが罪だ」と。 その世界にジョニーは咆哮を上げて、一層速度を上げて手甲の刃を再び振り下ろす。 「早矢殿に罪はない! だが、拙者達は倒さねばならぬ。リベリスタとして……!」 ● 館の中に破壊音が響き渡り、光が飛び交う。 世界にヒビが入る。 偽りの楽園が軋みを上げる。 「例え騙されていたと知っても早矢様は正志様の事を深く愛しておられるのでございますね。不憫な方ではございますが……」 「まぁ、私も結婚詐欺などに遭おうものなら、きっと腹は立つでしょうね」 鉄扇でEビーストを激しく打ち倒しながら、リコルは整った眉を顰める。銃を構えるクラウディアも、普段は柔和な表情に陰りを浮かべていた。 この残酷な世界は時に気まぐれだ。 思わぬ所で、思いもしない者に、思いがけない力を与える。 クラウディアも知っていた。憎しみを心に抱く人が強大な力を得たなら、その力を以って憎い相手に復讐を遂げようとするだろう。彼女自身、実際に行うかどうかはさておいても、同じ立場であれば似たようなことが浮かぶことは否定しない。 しかし、クラウディアがそれを選ぶことはしない。彼女は世界を守ることを選んだ、リベリスタなのだから。 『赦さない……あなた達、赦さない!』 その時だった。 リベリスタ達の真っ只中に、怨念を湛えた瞳のノーフェイスが茨の奔流を叩き込む。 そう広くはない場所だ。事前に警戒していたリベリスタのいくらかは難を逃れたが、中には巻き込まれてしまったものもいる。 「もう超常を防ぐ力はありませんので、勘弁したい所ですね」 ずれた眼鏡を直しながら体勢を立て直す仁身。 その時、彼の視界の隅に奥の部屋の景色が映る。戦闘の最中に壁が破壊されたのだろう。 奥の部屋の中には寝台があり、男と思しき影が救いを求めるかのようにリベリスタ達に目を向けてくる。何が起きているかは理解出来なくとも、ノーフェイスと戦う力を持つ者がいることは理解出来たのだろう。 (結婚詐欺したと思ったら人間詐欺でした、みたいな感じですか悪い事はするもんじゃあないですね。ご愁傷様です……と、言うわけには行きませんよね) 男の哀れな姿に仁身は、チッと舌を打つ。 「悪党だろうと「一般人」なら助けてあげますよ、最低限命だけはですけど」 仁身が不機嫌そうに詠唱を行うと、火炎弾が放たれる。植物系のエリューション達にとって、これはたまらない。 (自業自得、と言ってしまえばそれまでだけど……) 『樹海の異邦人』シンシア・ノルン(BNE004349)は、男のいる方向へ軽く微笑みを向ける。その笑顔は何処となく凄みを感じさせ、男の影が震えたのが分かる。 「ノーフェイスを放ってはおけない。神秘と普通の人間、相容れるはずはないんだから」 「でもま、詐欺も良くないよな。ちょっと懲罰が過ぎるけど」 琥珀の手から現れた気糸が宙を踊り、暴れるノーフェイスを拘束する。 本来ならこのまま集中して縛り付けるべきではあるが、琥珀はあえて部屋の奥にいる哀れな男に目をやった。 「日下部には同情できねーな。人を騙して笑いものにしてるからこうなるんだ。あんたもあんただ、こんな状態になってしまった奴の事が好きなのか、思い出の中の奴が好きなのか?」 気糸で拘束されたノーフェイスは、脱出しようともがいている。その手応えからは感じることは、ひたすらに強力な感情。何かに向けて真っ直ぐ向けられるそれを評するのなら、愛なのだろうか? 「早矢殿、お主は、その日下部という男が何をしようとしたか知っているのでゴザろう? なのに何故、その男に尽くそうとする?」 ジョニーは知っていた。 ノーフェイスの持つ強い愛情を、人は狂気と呼ぶことを。 尽くすという言葉を使うには、彼女の行動はあまりにも歪み過ぎている。 ただ、聞かせてやりたかった。彼女を狂わせた男に対して、自分の行いが何を招いたのかを。 『わたし達は愛し合っているのよ! 何かおかしいの!? それをおかしいと言うのなら、おかしいのはあなた達の方よ!!』 「……ったく胸糞悪ぃ」 ジョニーの問いにノーフェイスがあらん限りの声で叫ぶ。 歪みに歪んだ愛を正当化して、彼女は叫ぶ。 それを聞いて、瀬恋は床に唾を吐くと、無造作に拳を振り下ろして最後のE・ビーストを破壊する。 『なんですって!?』 「聞えなかったなら、何度でも言ってやるよ。胸糞悪ぃっつったんだ!」 『ひっ』 瀬恋の眼力に悲鳴を上げるノーフェイス。無理も無いだろう。 瀬恋は7歳で家族を失い、それから10年、魑魅魍魎跋扈する神秘の暗黒街を生き抜いてきたのだ。そもそも一般人に過ぎなかったノーフェイスとは、覚悟も気合も違う。 「騙されていた可哀想な私、でもこうすれば貴方は私なしじゃ生きられないでしょう、ってか? ハッ! 三文小説の読み過ぎじゃねえのか?」 瀬恋に言わせれば、騙された方が悪いということになる。ノーフェイスは騙された事実を受け入れようとせず、得た力で真実を塗り潰した。弱かったことを罪とするかは人それぞれである。だが、弱さが生もうと強さが生もうと、罪は罪だ。 瀬恋は真実からは逃げなかった。だからこそ、身を裂くような想いも味わったが、見つけることが出来たものもある。そして、ここで言える言葉もある。 「まぁその詐欺師も素人に気付かれる程度には間抜けだ。そう考えりゃお前らはそこそこお似合いかもな」 もっとも、 「運命ってやつはお前らが一緒になることを許さなかったみてーだけどな」 ギリッと拳を握り締める瀬恋。 その姿に恐怖したノーフェイスは狂乱から、身を縛る気糸を引きちぎり、いよいよもって本格的に暴れ始める。今までのような、まだしも理性を残した姿ではない。既に心の底まで怪物に堕してしまったのだろう。 「俺はそこまで強くはなれない。こんな形でも恋愛なんだって、俺は認めるよ」 琥珀は魔道書を開き、哀しい笑顔に覚悟を浮かべる。 「歪まざるを得なかった愛情や怨念は、ここで残らず発散してくれ。そして来世ではきちんとした幸せを掴んでほしい」 再び琥珀の手の中に気糸が生み出される。 「だけどもう、終わらせなきゃいけない。ゴメン」 先ほどばら撒かれた棘が、事実上ノーフェイスが行えた最後の抵抗だった。 狂乱した獣と化したノーフェイスの攻撃は、既にリベリスタ達には封じられてしまった。 力でも想いでも、届かないものは確実に存在する。世界と運命は、この小さな世界を拒絶した。 ジョニーの幻の刃がノーフェイスの全身を切り刻み、瀬恋の放つ断罪の魔弾がノーフェイスの腕を吹き飛ばす。 花は燃え落ち、異形の花嫁はみるみる動きを遅くしていった。 「夢の時間は終わり、徹底的に叩き潰すデス。慈悲は無し。アハハハ」 狂ったノーフェイス以上に狂った笑い声と共に、行方は肉切り包丁でノーフェイスの肉体を寸刻みにする。如何に神秘で強化された肉体と言えども、彼女の持つ肉包丁の前では、ブタ小屋のブタと変わりはしない。 『イヤァァァァァァァァ!!!』 悲鳴を上げて悶え苦しむノーフェイス。ごろごろと転がって、必死にその場から逃げ出そうとする。その姿は部屋の奥にいる男と変わらない。全身から流れる血は、まるで何かの化粧のようにも見える。 しかし、そこへゆっくりとリコルは追いついた、リベリスタとしての使命を果たすために。 「貴女様の愛を憎しみを否定は致しません。それでも……!!」 『止めて、ヤメテ、何でなの? 何でわたしが殺されなきゃいけないの? わたしは、わたしはただ……!』 そして、ノーフェイスが作り上げた歪んだ世界は、一挙動の内に破壊された。 ● 「悪夢もまた夢デスガ、ここからはもっともっと残酷な現実のお時間。アハハ」 行方は笑うように唄い、唄うように笑う。 しかし、その目は果てしなく冷たい。 ノーフェイスを倒したクラウディアは、救護班に連絡して、拉致されていた男を保護させた。しかし、神秘の被害者なら救うべきだというリベリスタとしての顔、ノーフェイスに同情する人間としての顔、リベリスタ達の顔に浮かぶ表情は様々だ。 瀬恋のように、「殺す価値も無い」と考えたものだっている。 「結婚は、生涯を分かち合うモノなんだろ。ならここで早矢の望み叶えば、詐欺では無くなるのかな、やりきれねーが」 「どちらにしても早矢様と正志様は一生を添ったようなもの。末永くお幸せに、としか」 納得が行かないような琥珀の言葉に、リコルは表情を変えずに相槌を打つ。彼女にしたって、ノーフェイスに同情の念こそあれ、被害者を救いたいと思った訳ではない。 一方、アークの処理班が作業している内に、仁身は日下部が捕えられていた部屋に来ていた。ノーフェイスが何をしたかったのかを理解したかったからだ。 「まあ、エリューションの考えてる事なんか分かりようもありませんが、誰も何も分からないままっていうのも寂しいですから」 そう言って、近くにある小物を手に取って、宿った記憶を読み取ろうとする。 しかしその直後、仁身は自分の行動を後悔した。 感じられたのは、吐き気を催す程に強い妄念。 愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、憎しみ、愛、愛、愛、愛、愛、憎しみ、愛、愛、愛、愛、愛、アイ、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、哀、愛、愛、愛、憎しみ、愛、愛、アイ、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛、哀、愛、愛、愛、愛、愛、愛……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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