●巨大な敵 「はぁ、はぁ……いまのは……?」 安倍行哉は慌てて布団から飛び起きた。慌てて辺りを見回すとそこはいつもの見なれた自室だった。なんだ夢だったのかと行哉はほっと溜息を付く。 寝巻はぐっしょりと濡れていた。どうやら余程悪い夢でも見ていたらしい。ここのところ寝つきが悪かった。まだ前の戦いでの傷が治っていなくて疼いている。 「どうしましたお兄様。また何かうなされているようでしたが?」 その時、義理の妹である芽衣香が現れた。淡い蒼の着物を身につけた彼女はまだ中学二年生とは思えぬほど凛とした佇まいをみせる。 手にはお絞りをもって兄のことを心配そうに伺った。 「心配ない。それより風呂の準備をしてきてくれ。朝食はあとでいい」 「わかりました。でもお兄様、ご無理だけはなさいませんように。ただでさえ、この前の戦いの傷が治っていないんですもの」 芽衣香は、それだけを言い残して去っていた。行哉はついこの前、アザーバイドの魑魅魍魎たちと一条戻り橋で戦ったばかりだった。そこでは多くの仲間に助けられた。 さらにその前には他なる自分の手で多くの人を手にかけしてしまった。覚醒前のことでもあり、アーティファクトに操られていたこともあって仕方がなかった。それでも行哉は後悔していた。自分がもっと強ければこんなことは起きなかったかもしれないと。 残された義理の妹とこの寺を守っていかなくてはならない。そして多くの弱き人々を救いたいと願っていた。自分を救ってくれたリベリスタの仲間たちのように。 「お兄様、大変です! 巨大な骸骨がこちらに向かって――」 芽衣香が突然、大声で叫んで戻ってきた。行哉はいやな予感がした。もしかしたらと思って寺の外に出て見る。 そこには、巨大な二十メートもあろうかという骸骨の霊がいた。寺の屋根よりも高い敵に思わず息をのむ。頭には鬼兜を被っており、片手には大きな刀剣を携えていた。 「芽衣香! お前はすぐに応援を呼んでこい!」 行哉はすぐに九字を切って戦闘体勢に入った。式神を展開させて応戦する。だが、行哉はまだ咳き込んでいた。 応援が来るまで持ちこたえられるだろうか。いや、持ち堪えてみせる。 行哉は歯を食いしばって巨大な敵を睨みつけた。 ●昔の武士の怨念 「京都のある陰陽道の流れを汲む、古刹の寺に巨大なE・フォースの骸骨の武士が現れた。そいつは今にも寺を破壊しようとしている。そこの若い住職でリベリスタでもある安倍行哉がいまは一人で防戦して仲間の到着を待っている状況だ。彼はまだフェイトを得たばかりで技量は未熟。おまけに怪我がまだ完治していない。このままでは、彼の妹の芽衣香と一緒に骸骨に喰われてしまう。そうなる前になんとしても倒してきてくれ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。 現れた骸骨は歌川国芳の浮世絵になどに見られる、がしゃどくろの姿によく似ていた。他の名称は狂骨など、日本にはたくさんの妖怪たちが昔から描かれてきた。今回の敵は、もちろん本物の妖怪とは違うが、姿形が似ているために異様な雰囲気を与えている。 E・フォースのがしゃどくろは、どうやら祀られぬ昔の武士の怨念が固まったもののようだ。最近寺が新しく改築したばかりで、祀られていた戦死した武士たちの霊の墓はまだ再建されていなかった。それに怒った怨霊たちが集合してがしゃどくろのE・フォースを作り上げたらしい。他にも部下の足軽鉄砲隊がいて積極的にブロックしてくる。 「がしゃどくろは、かなり大きい。見た目の通り持久力も攻撃力もかなりの威力を誇る。寺のような木造建築であれば手にした巨大な刀剣で、わずか数太刀で破壊してしまうだろう。その分、攻撃の回避は不得意にしているようだ。片手には大きな盾を持って攻撃を防御してくるから気をつけろ。現場には先にリベリスタが向かっている。彼を手助けしながら敵を倒してきてくれ。くれぐれも頼んだぞ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月11日(土)22:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●未だ消えない魂の残滓 寺はすでにがしゃどくろと足軽の軍勢に包囲されていた。遠くからでもその巨体はいやでも目につく。ここからは安倍行哉と芽衣香兄妹の姿はわからなかった。どうか無事でいてほしいと願いながらリベリスタは急いで現場に向かう。 「あれが、がしゃどくろか。昔の妖怪に出会えるなんて、わたし運がいいね! でもね、昔話にするためには、出てこられちゃ困るんだよ。今は眠っててこそ、浮世絵の話なんだから。兄妹も守るし、寺も壊させないよ!」 『モラル・サレンダー』羽柴 壱也(BNE002639)は走りながら横眼で大きながしゃどくろを見て決意した。絶対に誰も死なせはしない。 「想像以上にでけえけど……かっけえ――ま 幾らカッコよくても、食われんのはあたしも御免かな」 『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)はちょっと目を輝かせた。ドクロ好きなので興奮する。けれど、すぐに現実に戻って気を引き締めた。 「お化けなんて! ぜんっぜん! 恐くねーからな! モチーフ的には厨二っぽくてカッコイイけどリアル骸骨は駄目だって!」 虚木 蓮司(BNE004489)は少しびびっていた。その言葉とは反対に顔が引き攣っている。だが、敵に怯えているわけにはいかないと歯を食いしばる。 「ふむ、魑魅魍魎の類でござるか。闇に生きる忍の相手としては悪くないでござるな。この刀の錆にしてやるでござるよ」 忍者姿の『おとこの娘くのいち』北条 真(BNE003646)はすでにやる気十分だった。相手にとって不足はない。全力で戦うことを誓う。 「伝承に残る悪鬼羅刹と、それを降魔調伏してきた者達。神秘の世界を知るまでは、ただのお伽話と切り捨てていただろうが……。連綿と続く、革醒者とエリューションの戦いだったのだろうな。ならば、俺達も現代の妖怪退治と行くとしよう」 『百叢薙を志す者』桃村 雪佳(BNE004233)もすでに戦闘にいつでも入れる状態だった。スピードを生かして集団の前の方を走る。 「未だ消えない魂の残滓よ。猛るその怨念……私達が鎮めて差し上げます」 『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)も雪佳の言葉に頷いた。 「安倍兄妹、妹さんは一般人だ、必ず守りきる」 リーツェ・F・ゲシュロート(BNE004461)は静かに闘志を固める。 ようやくリベリスタ達は寺の敷地内に侵入する。そこには足軽達に囲まれて奮闘している安倍行哉と彼の後ろで守られている芽衣香の姿があった。色白の美貌の青年は今は顔をしかめてつらそうにしていた。 「それじゃ、ももちといっちーはエスコートよろしくね」 『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)の言葉に、壱也と雪佳が目で頷いて見せた。二人はハイバランサーを使用してがしゃどくろたちの方へ突進していく。その後ろから援護するように翔護たちが続いた。 ●彼らを鎮める慰める準備 とつぜん襲い掛かってきた壱也と雪佳に、足軽たちは驚いて振り向いた。慌てて銃を構えて応戦しようとする。 その隙にファウナがバーストブレイクで遠距離から攻撃を放った。 「ぐあああああ」 不意をつかれた足軽達はまともに攻撃を食らってしまう。それでも攻撃に巻き込まれなかった足軽達が二人をこれ以上進ませないようにブロックしてきた。 まごついている暇はなかった。上から巨大ながしゃどくろが接近してくる。このままここで立ち往生していたら太刀の大きな一撃を食らってしまう。そうなるまでになにか対策を施さなければならない。 「行哉さん、ここを狙って!」 壱也がそのとき指で敵の一部分を合図した。行哉はすぐに壱也の意図を汲み取って、式神をつかって集中攻撃を狙った。 壱也も同時にブレードを大きく構えて敵を吹き飛ばす。両面からの同時攻撃に足軽は巻き込まれてその場に崩れ落ちて行く。 「わたしたちが来たからもう大丈夫だよ、任せて! 君たちもお寺も、守るよ。全部大事なものだからね」 「大丈夫か……見ての通り、方舟のリベリスタだ。助太刀するぞ」 壱也と雪佳が敵の包囲網を突破して、兄妹の元に駆け寄った。すぐに敵から身を守るようにブロックする。 「芽衣香をよろしくお願いします――」 行哉は苦しそうにそれだけを言った。腹部から流血している。顔面蒼白ですでに満足に立っていられない状態だった。 「危なくなったら絶対無茶はしないで。あなたがお兄ちゃん止めてあげてね。何が一番大事かは、わかるよね」 後ろにいた芽衣香に対して壱也はやさしく問いかけた。芽衣香は壱也の言葉にこくりと頷いた。彼女は怯えていて声も出せない。それでも、壱也にすがりつくように服の袖を引っ張ってきた。 「団体さん、今度はSHOGOと遊ぼうぜ」 壱也と雪佳が二人を保護したのを見届けてから、翔護が前に躍り出た。敵が中の行哉たちに気を取られているうちに、ハニーコムガトリングをぶっ放す。 プレインフェザーもピンポイントで敵に攻撃をしかけた。二人の一斉攻撃に敵は混乱を引き起こしてちりちりになる。 雪佳がハイスピードアタックで敵をなぎ倒す。剣で次々に敵を華麗に斬り伏せて突破口を開いた。 ついに兄妹を連れて仲間のいる後方へと戻ってくることに成功する。 「――貴方にもしもの事があれば、後に彼らを慰める方が居なくなってしまいます」 ファウナが傷ついた行哉にすぐ回復を施した。ようやく行哉も顔色をよくした。 「ありがとう。でも、まだ寺が――」 「この場は私達にお任せください。鎮めた後に彼らを慰める準備を、どうか」 焦る行哉を諭すようにファウナが言った。それでも自分の寺が破壊されるのを見ていられないのだろう。すぐに前線に立ち戻って行こうとする。 「ここは拙者達に任せるでござる、さあ早く妹君を安全なところへ」 真は行哉の服の袖を抑えて言った。一人で立ち向かっていくのは危険すぎる。気持ちはわかるが、ここからは自分たちに任せてほしいと訴えた。 「安倍さん、妹を守るアンタの姿スゲェ格好良かったぜ。今度は俺らが二人を守るために戦う番だ!」 「行哉さんはここから自分の身は自分で守って、妹さんはオレが守ります、さぁ後退しますよ」 蓮司とリーツェが問答無用に兄妹を連れて後ろに下がらせようとする。 その時、背後からがしゃどくろが巨大な太刀を振り下ろしてきた。兄妹と話している隙にいつの間にか巨大な敵が背後から迫っていた。 「ぐあああああああ」 庇った蓮司とリーツェが撒き沿いを食らって吹っ飛ばされる。塀の壁に激突して血を吐いた。あまりの凄まじい攻撃に他のリベリスタ達も戦慄する。 だが、真がなんとか攻撃を避けてがしゃどくろに間合いを詰めた。メルティーキスで死の刻印を巨大な身体に刻みつける。 「ぐぬぬぬぬぬぬぬっ!」 攻撃したあとの隙を突かれてがしゃどくろは唸った。 「あんたたち、あたしと一緒にきなさい!」 超頭脳演算を使用したプレインフェザーが攻撃で威嚇しながらすぐに兄妹の元に駆け寄った。リーツェたちの代わりに安全な後方へと下がらせる。 ●想いの詰まった帰る場所 戦局は巨大ながしゃどくろが動き始めたせいで乱戦模様になった。兄妹たちの退避に少し手間取ったため、味方にも被害が出始めた。ファウナ一人の回復もなかなか追いつかない状況に苦戦を強いられた。それでも着実に足軽を減らした。 ようやく兄妹たちを安全なところに避難させて、リーツェや蓮司も戦場に舞い戻ってくる。翔護ががしゃどくろの前に進み出て立ち向かう。 「じゃ本番いくぜ、キャッシュからの――パニッシュ☆」 翔護がスターライトシュートでまず攻撃を試みた。足軽ががしゃどくろへの攻撃をブロックする。だが、その隙をついてリーツェが攻撃を狙った。 「集中……当てるっ!!」 1$シュートを足軽に向かって放つ。立て続けにダメージを食らった足軽達はついに全滅した。残りはがしゃどくろ一体だけとなる。 巨大な身体を武器にゆっくりとリベリスタ達にがしゃどくろは近づいてくる。大きな太刀を振りかざしてまたもや強烈な一撃を食らわそうとした。 「敵は後ろにもいることを忘れるなよ。射撃なら俺だって負けないぜ!」 そのとき、いつの間にか背後に回っていた蓮司が、バウンティショットで盾の隙間から狙って撃った。 「あああああああああ」 攻撃を受けたがしゃどくろは雄叫びをあげる。それでも振り返りざまに巨大な太刀の一撃でふたたび蓮司たちを吹き飛ばした。 がしゃどくろは激しい攻撃を受け続けながらも強靭な体力を武器に抵抗した。だがリベリスタたちの激しい攻撃にがしゃどくろも傷ついて動きがにぶくなっていた。盾になる足軽達ももういない。 「弔ってもらえなかった死者の怨念……なんだっけ? なら安心しろよ、愛まで込めてきっちり倒して、天国に送ってやるぜ……あたしとしては、もうちょっと仲良くなってみたかったけどな?」 冗談をいいつつも、プレインフェザーの目は本気だった。ピンポイントで相手の弱そうな指を狙う。つづいて翔護も足の関節部分を狙って援護した。 不意にがしゃどくろは弱点を突かれて盾を落としてしまう。 「これ以上の犠牲を出させるわけにはいきません!」 ファウナもがしゃどくろに向かってエル・フリーズを放つ。足止めを食らったがしゃどくろはその場でもがいて苦しんだ。 「元は怨霊、最後にはちゃんと鎮めてやらないといけないでござる!」 真が横から迫って再び死の刻印をがしゃどくろに容赦なく刻む。避けきれなかったがしゃどくろはダメージを受けて寺の方へ後退した。 「その巨体で受けきれるか? ――食らえ!」 だが、そこには背後に回っていた雪佳が待ちかまえていた。猛スピードで迫って巨大な相手に飛びかかった。剣で背後から容赦なく突き刺す。 「この寺も、大事な人も想いも何も奪わせはしない。人が一番大事だけど――思いの詰まった帰る場所は、とっても大事なんだから!」 壱也も寺を壊させるつもりはなかった。これまで多くの人が支えてきたシンボルをこの場で失わせるわけにはいかない。 壱也はがしゃどくろに対して大きくブレードを振りかぶった。ジャンプしてがしゃどくろの顔面に飛びかかる。驚いた敵はすぐに太刀でブロックする。 「そんなもの、あたしには利かない!」 壱也は太刀をするりと紙一重で交して、顔面にギガクラッシュをぶち込んだ。 「ぐおおおおおおおおおおお――――」 がしゃどくろはついに大きな音を立てて崩れ去った。 ●またいつか逢える時まで 敵を全て倒したリベリスタたちはすぐに兄妹たちの元へ駆けよった。行哉と芽衣香は放心したようにその場に座り込んでいた。 「――無事で良かった」 リーツェは兄妹が怪我なく元気な姿でいるのを見て安心した。だが、そんなリーツェは度重なる攻撃を受けて満身創痍だった。 立っているのもやっとという感じで今にも倒れこみそうになっている。 「リーツェさんこそ、休んでください」 行哉に優しく声をかけられて、ついにリーツェもその場に倒れ込む。初めての依頼でしかも深手を負っていた。緊張がとけてようやく気が抜けた。 「あの骨野郎達も多分何かを守るために戦って死んでいったんだな。安倍さん、身体が治ったらさ……あいつらを弔ってやってくれよ。俺も傷が治ったら――線香くらいはあげるからさ――」 行哉もそう言われて深く頷いた。蓮司もリーツェの横に倒れ込む。彼も深手を負っていた。しばらく立ち上がることができないかもしれない。かっこつけたかったのにこれではだいなしだなと心の中で自虐する。 「二人とも経験は浅くても立派だったでござるよ。だから今は休んでください」 真もリーツェと蓮司を労わった。もっとも彼らは返事をすることもできずに寝息を立てているようだ。 「安倍くんも。やるじゃん、さすが男の子」 プレインフェザーは笑って行哉に向かって声をかけた。 「自分ひとりの力ではどうすることもできなかった。本当なら芽衣香も寺も自分ひとりで守らなくてはいけないのに――これではリベリスタ失格だ」 行哉は苦悩していた。またリベリスタのみんなに迷惑をかけてしまった。あれほど自戒を込めたのに。この先やっていけるのか不安になってしまう。 「そんなことはない。あなたはよくやったと思う。芽衣香さんと寺を命かけて守ろうとした。とても立派だった。それにあなたが手助けしてくれなかったら、俺達にもさらに犠牲が出ていたはずだ」 「雪佳さん――」 「よかったら行哉さん、アークに来てくれないか。もちろん、寺を守る使命があるのは分かっている。無理は承知だ。でも、あなたは優秀なリベリスタだ。行哉さんが来てくれたら俺達は心強い」 雪佳に言われてついに行哉は熱い想いを隠せなくなった。芽衣香には見せないようにそっと目元をぬぐう。感情が乱されていた。 「お兄様――私は構いませんわ。それは寂しくなるけれど、お兄様にこんなに親切にしてくださったんですもの。ご恩に報いなければなりません」 まだ中学二年生とは思えないしっかりした口調で言った。行哉も芽衣香の言うとおりだと思った。だが、今は芽衣香と寺を離れるわけにはいかない。 「ありがとう。雪佳さん。そのうち、アークには訪れるつもりでいました。それに逢いたい人もいます。だけど、今しばらくはここで頑張ってみます。落ち着いたら皆と一緒に仕事がしたい。それまで待っていてくれますか」 「待っているよ――行哉さん」 行哉と雪佳は互いに握手をして健闘を誓い合った。 「あ、ああー男同士の友情……も、もえるううううううっ!」 壱也はそんな二人の様子を見ていて熱く一人で萌え上がる。脳内ではすでに雪佳に行哉が迫られている設定がヘビーローテーションしていた。 「ねえ、壱也さんってもしかしてアレですの? よかったらお友達になりませんか」 芽衣香が興味深々と壱也に迫る。まさか芽衣香ちゃん――? 壱也はもしかしてと心の中で思ってしまった。 意外な展開に驚きを隠せない。 「ところでSHOGO、この間ホモ依頼で鷲祐とオーウェンで絡んできた時の楽しい話があるんだけど、いっちーよかったら聞きたくない?」 翔護が話を無理やり変な方向へと持って行こうとする。 それを聞いた壱也と芽衣香がぴくぴくと同時に反応した。「あとでちょっと聞かせて、えへへへ」と壱也が怪しく笑いながら耳打ちする。 「どうしましたか――SHOMOさん?」 そのとき、行哉が気になって声をかけた。だが、行哉は翔護の名前を間違って覚えていた。あろうことかその言ってはいけない名前で呼んでしまう。 「SHOMO……」 翔護はいい響きだとほもった。 「ほんとすっげえ、SHOMOねぇ――」 プレインフェザーがようやく口にしたのはその一言だった。とりあえず皆仲良くなりそうでよかったと、笑みを浮かべた。兄妹にとって一日でもはやく平和な日常が戻ってくればいい――そう祈りを込めて。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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