●忙しかったり、気にしないでいると…… 「おつかれさま~」 「あ、お疲れさまです」 知り合いのフォーチュナの少女が礼をしてテーブルに着く。 「マルコちゃんもお昼ですか? ……って……」 「いえ、その……つい時間が無いなって思うと……」 パンに栄養補助食品という組み合わせに、それを見た少女、ヤミィはため息をついた。 いつだったか……何処かのコーポである先輩が、トマトの輪切りをチャチャっと一品料理にしたのを見て、凄いなって思ったと、彼女が言っていたのを思い出す。 「料理を勉強することにした……とか言ってませんでしたっけ?」 「や、少しは私も作ってみたんですよ? お弁当も、サンドイッチとか作ったりとかしたんです」 「あ、サンドイッチとかは挑戦しやすいですよね?」 「でも、ちょっと時間が掛かるし、いつも似たような感じだと飽きてきて……」 困ったように苦笑いしながら少女は説明した。 「まあ、私も偉そうな事いえないですけど」 「え~ヤミィさんの凄いじゃないですか?」 お弁当を見て感嘆した様子の少女に向かって、こんどはヤミィが苦笑いする。 「や、自作はこの昨夜の残りの野菜炒めの部分だけで、あとは冷凍食品でごまかしてるだけなので」 「そうなんですか?」 「自作でこんな風に作れたらすごいんでしょうけど、大変そうですよね……」 「手間をかけたら私は毎日なんて絶対無理そうです……お弁当は残り物を如何に上手く使うかだって話も聞きますが」 「考える人は晩御飯がすでに翌日のお弁当を想定した献立になってるって聞きますしね~」 「私がそうすると、変わり映えのしないメニューで飽きちゃいそうですし」 「レパートリーが増えれば、全然違うと思いますよ?」 「私もインターネットとかで見てみたりもしたんですけど……いざ、ってなると……道具とかもあまり持ってないですし」 「ああ、興味は持っても作るとなると……っていうのはありますよね?」 あいづちを打って、少し考え込んでから……ヤミィは彼女に提案してみた。 「いっその事、みんなに聞いてみちゃうっていうのは如何です?」 ●そして、食堂へ 「みなさん、お弁当とかって結構作られます?」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)のそんな問いに、幾人かが首をかしげる。 「実は今度、食堂を使ってお弁当作りの講座みたいなのがあるんです」 企画者は私なんですけど。 そう言って苦笑いのような表情を浮かべながら、フォーチュナの少女は説明した。 講座などとは言っても別に堅苦しいものではなく、みんなで色々お弁当を作ってみようという感じのイベントのようだ。 できたお弁当は食べるのはもちろん、誰かにあげてもよい。 誰かにあげるのを目的にすれば自然、普段よりやる気もでるというものだ。 みんなと食べ比べながら感想を言い合うというのも楽しいかもしれない。 「食堂で働いている方が何人か手伝ってくれたり教えてくれたりするので、自信がないという人でも問題ないと思います」 というか、私も全然ダメなのでとフォーチュナの少女は苦笑いした。 「折角なのでおかず作りも兼ねていろいろ勉強させてもらったり、みなさんがどんなお弁当を作るのか見せてもらえたらなって思ってるんです」 食堂の調理場にはさまざまな調理道具がそろっているし、料理に慣れている人もいる。 いろいろ挑戦するのも楽しいだろうし、作ったお弁当を食べてもらうために、誰かを誘うというのも良いかもしれない。 「よかったら、みなさんも一緒に如何ですか?」 マルガレーテはそう言って、みなを見回し、はにかんだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月21日(火)22:36 |
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■メイン参加者 31人■ | |||||
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●みんなのお弁当作りについて お弁当の作り方を教わりに参りました! 「今日チャレンジしたいのは出汁巻き卵と煮物、海苔巻きでございます!」 メモの用意をしたリコルは、さっそく食堂の人たちに出汁の取り方や煮物のコツ、どうすれば海苔巻きを美しく巻けるか等を尋ねてみた。 以前から彼女は日本のお弁当文化に興味を持ち、色々なお弁当のレシピブックを購入することで日本食の奥深さの片鱗を味わっていたのである。 「ですが、やはり日本で現物を見た時が一番衝撃でございましたね!」 (本に掲載されているような完璧な盛り付けのお弁当がどこにでもあるのでございますから!) 日本食は健康に良いし、この機にレパートリーを増やしお嬢様を喜ばせたい。 彼女は熱心に話を聞き、メモを取っていく。 残飯処理兼味見係り兼調理アシスタント担当. これが今回のシェリーの肩書だった。ちなみに自称。 大きく『魔王』と書かれたエプロンを付けている事には、特に意味はない。 彼女は匂いや見た目に釣られるようにして、ふらふらと食堂内を回っていた。 料理は普通にできるが、今回は手伝い専門でと決めている。 知識はあるので手伝ったり教えたりしたついでに、味見をさせてもらったり弁当箱に入りきれず余ったものを貰ったりして、感想の方は少し甘めに。 「妾の胃は過酷なサバイバル生活を経て、進化を遂げている」 残り物があったり散らかったりしているのは許せない。 余り物はすべてたいらげる。 「うーむ、弁当か」 (私も日本に来てからの方が長いからな) ベルカにとってそれは、慣れ親しんだ食事方法だ。 (だがしかし、自分で作るとなると……なかなか) 「ついつい好きな物ばかり詰め込んでしまいがちだったりするからな」 心の赴くままに作っていたら、いつの間にやら真っ茶色の弁当になっていた事もある。 「そう、ご飯が進むおかずばかりが入っていたな……」 そもそもあまり複雑な物は作れない。 (今日は女子力の高そうな人の所に行って見学するとしようか) 「同志マルガレーテ、ゆくぞ!」 「え? あ、はい!」 返事をした少女と共に、彼女は女子力測定を開始した。 ●ふたりの手作り 「お弁当作りか……」 涼は何となしに呟いた。 料理を作るなどというのは、家庭科の授業ぶりである。 何故ここにいるかと言えば、アリステアに誘われたからだ。 「この前お弁当作った時は、祭鬼さん達が殆ど食べちゃったから……という事で」 (一人で参加してもよかったんだけど) 一緒に作ろうと思い、アリステアは彼に声を掛けたのである。 (理由をつけて一緒にいたいだけなのかもしれないけれど……それは内緒) 「卵焼きさんと、タコさんウィンナーと、あと野菜もほしいよね?」 「ん、そうね。ま、キミが作るのならなんでもいいけどね」 前もご馳走してもらったし、涼は彼女の味付を信用している。 (問題は俺の作ったところだよなあ。まあ、食べれない……ものでは、ない、はず……?) 「足を引っ張るかもしれないけどお手柔らかに頼むよ」 不安になりつつも何か心地良いものを、涼は確かに感じていた。 (……ま、偶にはこういうのも楽しいかな、て思うけどね) 相談して、手分けをして、ふたりはお弁当を作っていく。 「こうやってお話しながら何かするのって楽しいね」 嬉しそうな少女に頷きを返しながら。 「しかし、なんだな。横目で見てたけども随分と手際が良いなあ」 おにぎりの段と、おかずを詰めた段の2段のお弁当が完成して。 「流石女の子、てところなのかな。良い事だと思う」 続いた言葉に驚いて、頬を染めた少女に微笑んで。 「さて、今日は確かにいい天気だし、外に食べに行こうか」 「う、うん。今の季節なら気持ちいいよね」 涼の言葉に、アリステアは頷いて。 飲み物も用意して、ふたりは外へと足を向けた。 ●シュスカ・クッキング 「はいっ、どうもーこの度は特別ゲストを呼んでおります。シュスタイナ・ショーゼットさんです、はい、拍手ー!」 そう言って竜一が拍手をする。 「お弁当を作った事があるのかな?」 「お弁当作るコツ、とかあるのかしら……って。え? や、始めて作るけど!」 見かけた知り合いが手際よく彩りよくお弁当箱を埋めていくのを見学していたシュスタイナは、そこで現実に引き戻された。 「なるほど。初めての経験、と。大丈夫! 誰だって最初は初めてさ。それでは、シュスカ~~~クッキングーーー!」 (……頭撫でられるの、恥ずかしいから嫌なんだけど……今日くらいはいいでしょ。って……!?) 「シュスカクッキングって、その恥ずかしいネーミングはどうなの!?」 「というわけでですね、お弁当のコツ」 彼女の言葉をスルーして竜一はさっそく解説し始める。 「まず第一に火をよく通し、それを冷ましてから詰める事」 ノリはあるものの、内容はけっこうキチンとしていた。 「第二に水気をよく切る事。ノリなどあると水分を吸ってくれます」 (結城さん、結構器用なのね) 「第三に色どり。コントラストを大事に配置しましょう」 「えっと、コントラスト大事、っと……」 「それじゃシュスカたん、作ってみようか。パズルの一種と思えば大丈夫」 言われた通り、シュスタイナは小さな箱に具を詰めてゆく。 「うん、うまいぞっ!」 実際教わってみると、悔しいけどわかりやすい。 (ちゃんとお礼を言わないとね) ありがとうございました、って。 まだ本人には言わず、練習するように。 少女は口の中で呟いた。 ●お弁当作りのかたち 「料理は得意なのだ」 (そあらも得意なので、きっと美味しいお弁当になるだろう) 「もちろん、レシピ通りにピッタリ測って調理するぞ」 雷音は、そあらやマルガレーテ、ヤミィらと一緒に、お弁当を作っていた。 「レシピ通りにつくるのはもちろん、味見もするのが美味しくできるコツなのだ」 たまごやきに唐揚げ、プチトマトにレタス。 「定番だからこそ美味しいとおもうのだ」 そあらも、おかずを色々組み合わせて可愛い形にしたり、動物さんを作ったり。 卵焼きは芯に明太子をいれる。 焼きあがったら斜めにカットして、片方をひっくり返してくっつけるとハートの形に。 ウィンナーで鬣と顔を作ってライオンさん。 「スライスチーズで羽を作ってくっつけたら、らいよんちゃんなのです」 「か、かわいすぎて、たべれないではないか」 「リクエストがあったら色々作っちゃうですよ」 雷音の言葉に、そあらは嬉しそうに胸をはる。 「そあらの料理には愛情は沢山はいっていそうだな」 愛情も、もちろんたっぷりと。 (愛情は最大のスパイスという) 「そあらがお嫁さんになったら毎日美味しいものがたべれそうだ」 「さおりんのお嫁さんって……やだ、はずかしいのです」 「……ところでヤミィ、なんだか実験をしている気になってきたが……なぜだろうか」 「え? そんな事は……」 「料理も科学も似ている所あるかもですねぇ」 「いや、計量用にビーカーとか用意したからじゃないですか?」 そんな話をしつつ、手を止めずに4人は料理を続け… 「らいよんちゃんの唐揚おいしそうなのです」 そあらの言葉にお礼を言って、雷音は弁当箱に具を詰め終える。 こうして無事、4つのお弁当が完成した。 ●\おべんとうつくりたいさんじょうっ!!/ 「おべんとーといえばきゃらべんっ!! おかしばこみたいなおべんとうっ! 「つくるよ~つくるよ~」 ミーノがキリッとした表情でポーズを決める。 「弁当作リッテモナー、レパートリーってそんなにアルモンカ?」 首をかしげつつ、リュミエールも準備を整えた。 1:キャラ弁を作る。 2:型番を作る。 3:ミーノのキャラ弁である。 髪の毛には鮭の切り身をほぐし、耳は砂糖少々塩ぱっぱのスクランブルエッグ。 緑の目はアスパラガスを流用して。 「みんなでおべんと作りたい!」 旭も皆のイメージ色を使って、丸いミニおにぎりを作るために。 「目と口は共通で海苔を使うとして」 皆の様子を見つつ、フランシスカは考え込んだ。 「えーと、わたしはどんなのにしよう……」 (とりあえず普通のお弁当でいいかぁ) 「普通の……って言ってもわたしこういうの苦手だしなぁ……」 旭の様子を、ちらっと見ると。 「フランさんは梅紫蘇巻きまき、きりっと」 ミーノちゃんは桜でんぶ纏わせ、にこにこ。 「リュミエールさんは紫芋粉で水色にした薄焼き卵巻いて、ぽんやり」 わたしは白米に梅干、ぽわっと! 「わかる? ミニひのまる!」 他にもひよこの玉子焼きやら、たこさんウインナーやら色々と。 (えっと……) 「とりあえず卵焼いて……くるんくるんって巻くの難しい……と、できた」 (後は何入れようかな……定番と言えばウィンナーかな) 悩みつつ、作って詰めてみて。 「あ、野菜入れよう。トマトトマト」 (うん、こんなものかな) 「あとは空いた所にご飯をつめつめと……」 フランシスカの傍らでは、旭が隙間の勝負! っと、定番品を可愛くつめつめ。 「スピードと火力維持が大事ダゼー」 一方でリュミエールは、自分のは完成したものの…… 「むむむぅ……むつかしいぃ~」 「オイオイ、ソコノコゲテルゼー」 「!!??」 ミーノの失敗阻止に動くものの…… 数分後。 「かたちしっぱいしたっ……」 (むむぅ……ぜんぜんおかしっぽくないの~) 「みーのちゃんふぁい…! みーのちゃんできるこ><」 旭も応援するものの…… 数分後。 「つくるよ~」 ほとんど動かない、へにゃ~としたミーノがそこにいた。 「……た、たべるよ~たべるよ~」 (……たべるっ!) 「ミーノみてたべるほうっ!」 諦め……割り切ったミーノが、しゃきーん! と。 スプーンとフォークを持って待機する! つまり(作ろうとした)全員のお弁当が完成したわけで。 詰めきれなかったのをおすそわけしながら、旭は皆のお弁当を見学した。 「ふらんさんは……わ、おいしそ!」 「ん、こんなものかなー。え? 何? わたしの作ったやつ? 別に普通のだよ? そんなにセンスとかないしさ」 「おかーさんの作ってくれるおべんとみたい。いーお嫁さんになりそだよねぇ」 「ありがと。旭のも可愛いよねー」 フランシスカの言葉にお礼を言って、次はリュミエールのお弁当へ。 オカズは、カルトーシュカ(じゃが芋のサワークリームのせ)に出汁巻き卵。 レタスを器にしたポテトサラダに、いろんな形のウィンナー。 ハンバーグの上には、鶉の卵で作られた花丸目玉焼きが乗っていた。 おやつには、フィンランドブルーベリーパイ。 元気を取り戻しそわそわしていたミーノが、3人のお弁当を見て歓声をあげる。 「ぉょ~あさひちゃんのも、ふらんしすかのも、りゅみえーるのもおいしそうなの~♪」 嬉しそうにしっぽをふると、ミーノはいっそう元気に宣言した。 「いったっだきまーす! なの~♪」 ●それぞれのお弁当 (さーて挑戦してみようか) 「自炊や弁当作りがある程度できてりゃ強みだしなっ」 白いご飯はやっぱ欲しいなと盛りつけつつ、琥珀は弁当の内容を考えた。 (卵焼きとから揚げとウィンナーが定番になるのかな?) 卵焼きは砂糖で味付けし、から揚げはフライパンで少量の油でもって揚げる。 ウィンナーはなんとなくタコ足にし、茹でブロッコリーで彩りもつけて。 「……なんというか俺の弁当って……普通すぎるよな……」 卵焼きもうまく焼け、巻けてるし、揚げ物に焼き物、野菜とバランスよく見た目も中々。 「それなりの出来だがなんだか味気ないなぁ」 何かもう一つ、ワンランク上の弁当にできないものだろうか? ……皆の弁当を参考にしてみよう。 アドバイスも貰えれば、なお良し! そう考えた琥珀は、近くにいたマルガレーテの弁当へと視線を向ける。 「お弁当ーお弁当さてさて何がーでっきるかなー」 鼻唄を歌いながら慧架が作るのは和食系のお弁当である。 和食が好きというよりは、洋物で作れるものの大半がお菓子というのが理由だったり…… 「最新式の家電機器は苦手なのです」 料理しながら慧架は呟いた。 色々機能があると便利と聞くけれど、自分は寧ろ覚えきれない。 (電子レンジも今使ってるのをやっと覚えたのに……) 「あたふたしちゃうのです。誰か助けてください」 そう言いつつ、包丁さばきや調理自体は丁寧に、上品に、彼女は次々と料理を仕上げていった。 米充填開始っ! 「弁当なんて米だけ詰めていって、皆におかずをたかればいいんや!」 (というのも何だから、鮭何枚か焼いて、違うおかずとトレードしてもらうよう交渉くらいはしよう、うん) 考えつつ、とらは友達に書いてもらったメモを確認した。 ・海苔弁はおかかに混ぜる醤油が多すぎると、べたべたするので少ないくらいが丁度いいです。 ・海苔は予め一口大にカットして敷くと、食べる時に海苔がいっぺんにはがれて気まずい思いをせずに済む。「……ふむふむ」 他にも色々書いてあるけど、難しいのでスルーする。 焼鮭が出来たら、トレード開始。 「マルガレーテちゃんは、何作ったの? 焼き鮭とトレードしない?」 「いいですけど……先輩、鮭だらけですね?」 お弁当箱のフタの裏におかずを乗っけてもらいながら、とらは皆の間を周回する。 大きな四角い弁当箱に、みっちりご飯を詰め込んで。 真ん中に梅干し、ごま塩。 俗にいう、ドカ弁というヤツだ。 「俺、高校はラグビー部でさ」 快はそう話し始めた。 「毎日朝練があったから、弁当は白米と、お袋が前日作っといてくれたおかずを適当に詰めて持っていく、って生活だったんだよね」 だいたい早弁しちゃって、昼は学食とかに行ってたんだけど。 振り返りながら、ちょっと苦笑する。 最近は忙しいので、朝食は外食か買い食いが殆どだ。 「せっかくだから、みんなのおかずをちょっとずつ分けてもらって自分の弁当にしようかな、なんて」 「成程、それで」 「マルガレーテさんのお弁当からも、何かおかず貰っていい?」 「ええ、色々教えてもらって作りましたし」 そう言って少女はおかずだけになっている方の弁当箱を差し出してみせる。 「どれも美味しそうだし、ご飯に合うやつがいいな!」 礼を言って、快はさっそく箸を手に取った。 ●とおく、ちかく 「何だ此処は……今日は一体何に連れ回され」 「私最近外食ばかりしてる気がしますので、皆さんと料理の勉強のし直しを兼ねて」 「お……? おう? え? 料理……? 出来んのか……?」 「少々待っててくださいな。見ててもいいですけど」 そう言って弁当を作り始めた黎子を、火車はしげしげと見学した。 (意外! コレは料理! コイツ意外にも料理ができたのか!) お味噌汁は魔法瓶にという事で、黎子は味噌汁の具を火にかけながら鶏肉を揉む。 作るのは唐揚げ弁当だ。 (う……味噌汁まで相応に……からあげとか買って来た事しかねぇぞオレ) 何か圧倒されつつ、ふと……火車は考え込んだ。 (……この前余計な事言ったせいかねぇ? コイツはコイツで色々思う所でもあんのか……) 一方で。 (……私はなぜ宮部乃宮さんを誘ったのでしょう?) 手を止めずに黎子は自問した。 (宮部乃宮さん朱子がお弁当を作ろうとしてたって話、前にしましたけど……そのせいでしょうか) 自分のお弁当箱と一緒に用意した大きめのものを見て。 「……だったらセンチメンタリズムですねえ」 「……だったらセンチメンタリズムだなぁ」 互いに届かぬ独白が、重なる。 「できましたよ宮部乃宮さん」 「お……出来たのか……ふむ。じゃあまぁ……貰うわ」 自分はつまみ食いで一杯になったのでと言って、黎子は火車に弁当を差し出す。 「むぅ……普通に美味い」 (しっかしなんだなどういう構図だコレは) 複雑だがと火車は考え込んだ。 (今となっちゃコイツの事は嫌いじゃねぇし、そも嫁の姉な訳だしそれなりに打ち解けちまったしでうーん!?) まぁ、とりあえず。 弁当を平らげ、火車は素直な感想を口にした。 「ごっそさん 美味かったぞ」 ●手慣れたシンプルと、手の込んだチャレンジ 完成したらお互いに交換、という趣旨で。 エルヴィンとレイチェルは兄妹2人で参加していた。 普段は兄に作ってもらっているので自信がないレイチェルと、毎日作ってはいるけど手抜きばかりで参考になるかは分からないというエルヴィン。 「まあ細かい事は気にせずさくさく作っていきましょう」 レイチェルの言葉と共に2人は普段使っているランチジャーを用意し、さっそくお弁当作りを開始する。 レイチェルの作るメインは、ハムと冷凍のミックスベジタブルを使ったチキンライス。 おかずには、ふわトロにしたプレーンオムレツ。 (卵少ないと上手く焼くの大変なんだけど……) 一方のエルヴィンは、ご飯は白米そのまま。 (朝炊けたものなら、昼にはまだ十分ふっくら温かい) 今回は関係ないが、結構重要なポイントだ。 おかずのメインは、焼き鮭。 「普段だったら、夕食の時点で多めに作っとく感じだな」 こういった処に慣れているものの手際が出るかもしれない。 あとは適当に卵料理、朝食兼用でメインに合わせた品に、同じく朝兼用のサラダも入れて。 (で、もう一品欲しいかなってトコに冷凍食品) 紙やプラのカップを使い汁対策も楽に終え、完成。 「ほら、手抜きしまくりだろ?」 そう言うものの、見た目は確りとした彩り良いお弁当である。 そして、レイチェルの方も…… 「……よし、良い感じ」 チキンライスとオムレツを組み合わせる感じで、オムライス(本人曰く、もどき)が完成する。 あとはサラダを適当に。 「それじゃあ、いただきます」 「それじゃあ、いただきまーす」 完成したお弁当を交換すると、ふたりはそれぞれ箸とスプーンを手に取った。 ●フュリエとみんな 「へぇ、皆でお弁当作りするんだ。そういうのも何だか楽しそうで良いよねっ!」 「ボトムの伝統的なおべんとうを作ってみたいな」 ルナの言葉にヘンリエッタがそう続ける。 アークの人と親睦を深めたいと考える彼女はリベリスタや一般職員に混ざり、ルナもこの機会にとお願いした。 (私もお弁当、作れないことはないんだけど、結局気付けば同じ物ばかりなんだよね) 「目指すは彩り豊かな美味しいお弁当……だよっ!」 とにかく知らない事、気になった事をルナはメモしていく。 「お弁当かー、お弁当って普通に作るより難しいよねっ。だって、冷めても美味しいものじゃないとだめだからねっ」 皆の様子を見ながらエフェメラは呟いた。 (それにもう一つ、時間が経っても痛まないようにしなきゃだめだからねっ) 「お塩とか増やせば保存は利くけど、その分身体に悪くなっちゃうしねー」 「ある程度は調べてきたんだ」 言いながらヘンリエッタが考え込む。 だし入りのたまご焼き、たこさんういんなー、みーとぼーる。 「他には何があるだろう?」 「まあでも、やっぱり食べてくれる人が美味しいって行ってくれるものが良いよねっ♪」 エフェメラはそのままアークの職員らとラ・ル・カーナの食べ物のボトム風アレンジ等について話し始めた。 お弁当向きの品や、逆にこの世界の料理などの話も始まって。 「なるほどねー」 皆に交じるようにしてミンスはうんうんと頷きながら話を聞く。 「私も作るのはサンドイッチがほとんどだったけれど」 (折角だからこの世界のお料理も勉強させて貰いましょう) いろいろと話が弾んでいって。 そこへ奇遇を装うようにこそこそと、見知った三人の顔を見つけたミストラルが加わった。 (他のところじゃ隅っこで一人ご飯状態になりかねないやばい!) 「ぼっち料理ぼっち飯だめぜったい」 こっそり呟きつつドヤ顔で料理を始めたものの、家具家電や食材に四苦八苦。 涙目になりつつ、火力が急にあがったり、大きな音が鳴るたびに、彼女はびくっと驚いて。 一方ヘンリエッタは話を聞きながら少しずつ具を弁当箱へと詰めてゆく。 「……へぇ、おいしいね」 許可をもらって少しだけつまみ食い、というか味見しながら。 詰め込んでいく作業はパズルゲームのようで、なかなかに難しい。 それでも、修羅場になっているミストラルと比べると……比べる方が間違いかもしれない。 そちらにはエフェメラが助け舟を出して、ひと段落。 「みんなでお料理するのって楽しいよねー♪」 (みんなも喜んでくれるといいなっ♪) 喜んでいる者もいると思うが、救われた者は確実に一名。 「皆はどんなのつくってるのかしら」 良い香りと魔法のように仕上がっていく料理達をみて、ミンスは手を止めたまま……ひたすら感心し続けた。 ヘンリエッタの方はというと、手は止めずに皆へと話しかける。 一般職員には所属を聞いたり、リベリスタには依頼の思い出を聞いてみたり……話題は尽きない。 勿論、個人のことについてもいろいろ聞いてみたい。 「あれ? 結局つくらなかったわね」 ミストラルのも含め皆のお弁当が完成した時、ミンスが不思議そうに口にした。 持ち帰らない者たちのお弁当で、さっそく試食会が開始される。 折角だしと、ルナはマルガレーテにも声を掛けた。 みなと話しながら、出来上がったお弁当を味わいながら。 料理が難しかったとか、誰がお料理上手かったりだとか。 (そんな簡単なところから色々と繋げれたら良いんだけどね、うん) 楽しそうな皆の顔を眺めながら、ルナは小さく呟いた。 ●お弁当勉強会 「いいかい、マルガレーテちゃん?」 悠里はマルガレーテに丁寧に説明した。 「労力が必要とされるものを毎日作るのはしんどい。特に朝はね……」 初心者だと失敗もしやすいし、まずは手軽で美味しいものを作るのがいい。 「そうやっているうちに料理が楽しいって思ったらレパートリーを増やせばいいよ」 青年の話に少女は成程と頷いて見せた。 「ご飯はそれなりにいいお米を使えば覚めても美味しいよ」 一緒に、湯気が水気になるのを防ぐ為にある程度冷めてから入れた方が良いと説明し、悠里はおかずについて話し始める。 適当なサイズに切った鶏のもも肉に胡椒を振ってグリルで焼く。 あとは千切ったレタスとスライスして塩を振ったトマトを入れる。 「見栄えはあんまり良くないけど、美味しいしお手軽なお弁当だよ」 「や、でも良い感じの見た目です」 「もうちょっと見栄え良くするなら鶏を唐揚げにするとかね」 そう言いながら悠里は、真似して作り始めた少女にアドバイスする。 「マルガレーテさん、苦戦してるみたね、私に任せて!」 「……あの?」 「日野原先生だと思ったっ? 残念、ツァインちゃんでした~☆」 「はい、分かりますけど……」 「ウワッ、そんなドン引きするなよ! 許せよ、出来心やったんやー!」 「……私より祥子先輩に謝った方が良いですよ?」 そんなやり取りはあったものの、気を取り直して。 ツァインのお弁当作りは始まった。 「こういうのって必要に迫られないと中々やろうと思わないよな~」 (俺もイベントでお菓子作ったくらいだし) お弁当は白飯にしょうが焼き、たまご焼きにホウレン草の御浸しにプチトマト。 「お手軽のド定番だね、凝ったのなんてできねぇよ!」 甘めのたまご焼きは、気合入れて。 「お弁当で美味いたまご焼き食べると、もう半日頑張ろう! って気になんねぇ?」 「そうですね、甘いのは力になると思います」 「折角だから皆で分けあって食おうぜー、その方が作った甲斐があるってもんだし!」 そんな話をしながら、またひとつお弁当が完成した。 ●お弁当を、作ったら 「マルガレーテさん、良ければお手伝いするわよ?」 「あ、先輩。どうも」 フォーチュナの少女が頭を下げる。 糾華は今回、アドバイスのみに徹するつもりだった。 (お弁当をあげたい一番の子は今日は家にいるものね) 「私も普段は学食と購買で済ませたりするけれど、時々お弁当作るのよ?」 自分だけの時は気軽に作るけれど、誰かの為に作る時は相応に気合を入れる。 そういったモチベーションの置所も大切だけれど、一番大事なのは、背伸びせずに自分が出来ると思える範囲で作る事だ。 「普段料理しないのにお弁当作る時だけ腕前がぐんと上がることなんて無いの」 だから、自分で出来る範囲で頑張りましょう。 そういえば、マルガレーテは真面目な顔ではいと頷いた。 「と言う訳で、マルガレーテさんはお弁当を作り頑張りたいという動機って何かしら?」 「……はい? え……先輩、どうしたんです? 何か突然楽しそうに……」 「え? 楽しそうって? 他意はないのよ? 他意は」 笑顔の糾華に対してマルガレーテは、緊張した様子で冷や汗を流す。 「マルガレーテちゃんっ! 一緒につくろー! わたしもあんまりうまい方ではないんだけど、一緒にがんばろっ!」 「……あ、はい。宜しくお願いします」 壱也の言葉にフォーチュナの少女は頭を下げた。 「やっぱり弁当の主役と言えば~、なんだろ、からあげ? 卵焼き?」 話し合いの末、まず初心に返ってきれいな卵焼き、つくろーという結論になる。 「火弱めで、ゆっくり焼いたら綺麗な黄色の卵焼きになるって聞いた!!」 (ちょっと、中火にしちゃいたくなるけど……がまんがまん) 「…… どどどどどうかな? ちょっとこげちゃったけど、結構綺麗?」 「はい、慣れてなくてこれなら寧ろ凄いのではと」 「マルガレーテちゃんのはどうかな? うわ、おいしそう! 味見していい?」 「私はいろいろ教えてもらいましたし……はい、どうぞ」 「あーんっ……優しい味がしておいしいよっ。はい、マルガレーテちゃんもあーんっ」 ひと口頬張った壱也は、笑顔で卵焼きを少女に差し出す。 「どうわたしの卵焼き?」 「先輩のも、優しい味がします」 「今度はこれでみんなでピクニックとかいきたいね!」 きっと楽しいだろうな~と笑顔の壱也に、マルガレーテも頷いて。 また、みんなと一緒に……笑顔になれますように。 食堂に、お弁当箱に……ぎっしりと。 いくつものちいさな幸せが詰め込まれ、はじけあった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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