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いちご狩り ~狩るか狩られるか~

●ひと狩りいこうぜ!
「いちごを狩ってきてくれ」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタたちに、『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は開口一番告げた。
「俺は、都会の砂漠で翼の折れたAngelたちが流した涙を産湯に使ったCityCatだからな……
NO-SAKUMOTSUのことはよく知らないが。収穫時期のいちごってのは、摘んでも摘んでも、何日かすれば真っ赤な果実をたわわに実らせるものらしいな」

 ある鄙びた田舎町に、E・ビーストが出現する。
 NOBUはそう言うと、地図が表示されたモニターを指す。出現の予測された場所は、民家が点在する場所から離れた高台の畑だという。
「畑の所有者は70代の老夫婦で、次から次へと実るいちごを近所に配ったり孫に送ったりジャムにしたりしていたようなんだが……畑が家から離れていたこともあり、次第に持て余したんだろうな。収穫時期のピークを過ぎて、大量のいちごが摘まれないまま放置されていた。で、そのいちごがエリューション化したと」
 画面が切り替わり、先端が足のように二股に分かれた巨大ないちごが映し出される。
 よく、土の中に石などがあって、まるで足が生えたように育った二股大根があるが……あれのいちご版である。
「フェーズは2、体長は約6メートル。数は2体だ。念動力(テレキネシス)のような能力で巨大な得物を振り回し、周囲のものを破壊しながら老夫婦の家を目指そうとする。それを、阻止してくれ」

 力強く頷き、席を立つリベリスタたち。NOBUは付け加えるように言った。
「このE・ビーストは倒せば消滅するから、事後処理については気にしなくていいぜ。どうしても食べたいなら、チャンスは戦闘中しかないだろうが……ははっ、そこまでして食べようとする奴なんていないよな!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:鳥栖 京子  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月16日(木)22:19
 いちごが安くておいしい季節ですね。鳥栖京子です。
 カオスになるか純戦になるかは、皆様のプレイング次第と言うことで!

●E・ビースト詳細
『いちごさん』×2体
 体長約6メートル、フェーズは2、とってもあまい
 斧を操るものが1体、鎌を操るものが1体。
 物理攻撃には傷みやすいです(いちごなので)吸血するとおいしいです(いちごなので)

『武器で薙ぎ払う(物・遠・貫/ノックB)』
『体当たり(物・近・範/反動100)』
『へたブーメラン(物・遠・貫/弱点)』
『魅惑の果実(神・遠・複/魅了)』

『いちごさんの斧』×1体
『いちごさんの鎌』×1体
 長さ約3メートル、フェーズは1、飛行
 赤いオーラを纏い、宙に浮遊するいちごさんの武器。
 自ら意志のようなものを持ち、いちごさんをサポートします。

『美肌効果(神・遠・単/中回復)』
『ストレス解消(物・近・単/ノックB)』
『免疫力強化(神・遠・単付/物防+25)』

●戦場
 何軒かの家が所有する畑が、いくつも広がる高台。
 小さな集落へと続く、舗装された道路が1本走っています。
 街灯はありませんが、月明かりで仄明るく、戦闘に支障はないでしょう。
 老夫婦は普段軽トラックで行き来しており、一番近い民家からも車で5分ほどの距離。
 畑ではいちごの他にも、ねぎ、トマト、なす等が露地栽培されています。

●その他
 練乳とかいちごスプーン(最近見ませんねー)とかは各自ご持参ください。
 それでは、よろしくお願いいたします!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
スターサジタリー
坂東・仁太(BNE002354)
プロアデプト
アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)
ホーリーメイガス
メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)
ダークナイト
紅先 由良(BNE003827)
マグメイガス
巴 とよ(BNE004221)


 ずん、と大地が揺らいだ。
 蒼白い月明かりに照らされて、巨大いちごの小山のような姿が、人里離れた高台に浮かび上がる。
 赤いオーラを纏い浮遊する武器を傍らに、二股に分かれた先端で器用に2足歩行する約6mのいちご……しかしこの異様な光景を目にしている者たちの表情に、怯えの色は全く無い。
 むしろ、
「(なんか、皆すっごく殺気立ってるみたいでちょっと怖い……これがいちごの魅力なのかな?)」
 ぎらぎらとした目でいちごを見上げ舌舐めずりする仲間たちに、『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)がこんな感想を覚えたほどである。

 人家へ向かおうとする巨大いちごE・ビーストを食い止めるべく、この小さな田舎町に集まったリベリスタ8人。
 周囲の畑に被害が少なくてすむように、との『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)の提案で、彼らは集落へと続く道路で迎撃態勢を取っていた。
「ふむ、見た目は中々愉快ですけど、暴れ回るとあっては早急に止めねばなりませんのう。……まさか、あれを食べるという方はいませんよな?」
 九十九が背後の仲間を振り返ると、
「いちごー♪ 今回はぱんつの柄なんかじゃないモンね。食べつくすぞー!」
 『へっぽこぷー』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)が練乳片手に、わくわくを抑えきれない様子で飛び跳ねている。
「おいしそうです、大きないちご……」
 普段はちょっぴり怖がりで泣き虫な巴 とよ(BNE004221)ですら、巨大いちごエリューションを見て、このコメントであった。いちごの甘い芳香が鼻孔をくすぐり、涎が出そうになるのをぐっと我慢する。
「いちごはあたしのソウルフード……巨大化してあたしに食べられにやってくるとは、しゅしょうなこころがけなのです」
 いちご色の瞳をきらめかせ、『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が呟く。
「なぜいちごを食べるか――そこにいちごがあるからなのです!!」
「……食べつくすというのなら、あえて止めはしませんけどな。後で味の感想でも聞かせてください」
 九十九は敵に向き直り、銃を構える。
 『戦場に咲く一輪の黒百合』紅先 由良(BNE003827)はスプーンと練乳とタッパーを構えた。
「文字通り、“食い”止めさせていただきますわ!」
 大地を振動させながら、8人の待つ道路へと迫り来るいちごさん2体。
「人生初のいちご狩りが、こんなにスリリングになろうとはのう」
 『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)が手にした剣の柄に魔力を込めると、猫の爪のように湾曲した刃が現れた。普段愛用の双扇子ではなくこの剣を使うことを選んだのは、何よりも食べやすさを考えてのこと。
「じゃが、危険を乗り越えるからこそ真の美味が味わえようというものじゃ……さあて、齧り付かせてもらおうかのう!」
 獲物を前にした狩人の気迫を纏い、『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)が力強く叫ぶ。
「――いっただっきまーーーっす!!!」


 淡い金色の髪を夜風に靡かせ、真っ先に飛び出したのはレイラインだった。
「まずは下ごしらえから……今宵の為に入念に研いできたこの剣で、綺麗にスライスしてあげるからのう!」
 疾風の如き速さで跳躍し近接すると、1体のいちごさんの“へた”を狙い、剣を横薙ぎに払う。
 いちごさんの頭部にかっこよく(自称)ファサ~と生えていた“へた”が、すっぱり狩り取られ――ぼとり、と地面に落ちた。
 “へた”を狙おうと考えたのはそあらも同様だ。
「食べられないへたに用はないのです、排除するです」
 魔方陣から放たれた魔力の矢に打ち抜かれ、もう1体のいちごさんの“へた”も頭部からすっぽ抜ける。突然現れたリベリスタたちに、出会い頭にいきなりつるっとぱげぱげにされてしまった2体のいちごさんは、ショックを受けたようによろめいた。
「……少し不憫ですな」
 いちごさんに同情の視線を送りつつ、九十九は空を飛ぶいちごさんの斧に銃口を向ける。異常なまでに強化された動体視力を持ってすれば、鬼火のように揺らぐオーラですらコマ送りに見える。
「浮遊していようと――私にとっては、まあ止まってるようなものです」
 強力な銃の一撃に、がきん、と金属音を響かせ仰け反る斧。続けて、アーリィの放つ気糸が襲いかかる。3mの禍々しい斧が、反撃とばかりにその柄で強かにアーリィを打ち据えた。吹き飛ばされる小柄な少女の体――しかしそれも、自分に攻撃を集中させ、注意を引きつけんとする彼女の計算通り。
 いちごさんの鎌も、抑えに付いていた九十九を同じく吹き飛ばそうとしたが、それをローブ姿の怪人はゆらりと回避する。
「みんな! 武器の方は九十九さんとわたしで抑えてるから、今のうちに!」
「あーさんすごいです……わたしも、頑張らなくちゃ」
 開いたグリモアールの頁が、魔方陣によって増大された魔力の波動に次々と捲れていく。とよは、いちごさんのものに勝るとも劣らぬ大鎌を召喚した。
「切り分けちゃうですよ」
 最後方からいちごさんに向かって振り下ろされる黒き刃。切り分けられた果実は、地面に落下する寸前にそあらが受け止めもぐもぐする。
「むしゃー! む、これはなかなかのいちご……フレッシュで美味しいのです!」
「あ、いいな……」

 いちごさんも黙って食べられたりぱげにされたりしている訳にはいかない。斧と鎌をそれぞれ操り、自分たちの目の前にいるリベリスタをまとめて薙ぎ払う。
「ぐっ……」
「きゃあっ!」
「(もぐもぐもぐもぐもぐ)」
 レイラインが斧の一撃を回避したものの、直線上にいた仁太、由良、そあらが一気に後方まで吹き飛ばされた。ちなみに、そあらは宙に投げ出され吹き飛びながらも、手にしたカットいちごを食べるお口は止めていない。
 足を踏ん張り、土煙を上げながらノックバックの勢いを殺すと、仁太はいちごさんを見据える。
「へっ、タダで飯が食える機会を逃してたまるかぁ! わしは、腹が満足するまで! 食べるのをやめへん!!」
 空腹の体から力を奮い起こして地を蹴り、いちごさん目掛けて全速力で駆け出した。
「わしはちょっと歯ごたえのあるいちごが好みじゃが、おまえはどんな感じやろな?――行くぜよ、ビーストバイトぉぉ!!」
 技名っぽく叫んでみたら、そんなスキルがあるっぽく見える気がする。
 心の目で見れば、きっと見えるよDreaming Skill
 あったらいいなBeast Bite
「……きつねのおじちゃんに今一瞬、NOBUさんが降りてきたみたい? まぁなんでもいいや、ボクもいちご食べるー!」
 獣の口でいちごさんにがぶーっと食らい付く仁太に続き、メイもいちごさんに駆け寄った。
「いっけー、ミルクまみれ!」
 練乳チューブを絞っていちごさんの足にかけると、かぷっと齧り付く。
「あまーーい♪ おいしーい!」
 由良もまた、赤く艶やかな果肉に鋭い牙を立て、吸血――否、吸いちご果汁をする。爽やかな香りと甘酸っぱい初夏の味覚に、少しずつ回復していく傷ついた体。
「とってもジューシー、これは本当に美味しいですの! あまりの美味しさにタッパーで持って帰ってジャムにしたくなりますわね!」
 人妻はしっかり者であった。
「わ、わらわも、わらわもいちご食べたいのじゃーー!?」
 仲間の中で最高の速度がいちご食べるには仇となり、今まで食いっぱぐれていたレイラインが叫ぶ。
「食べやすいサイズにカッティングしてくれるわ! そして持ってきた練乳かけて甘々に……にゃふふ……」
 いちごさんの周囲を高速で駆けると、長剣を振るい、澱みなき連続攻撃で切り刻む。華麗な剣技でカットされたいちごは――近くにいた前衛の仲間たちがしっかりとキャッチした。
「わーいいちごがふってきたー」
「タッパーに詰めるのにちょうどいいサイズですわー」
「にゃぎゃーー!? わらわのいちご!? ……ええいもうヤケじゃ、直喰いしてやるわ!!」
 根性のダブルアクションで、いちごさんの頭頂部に飛びつき、齧り付く。
「甘~いのじゃ~♪ 一昔前は砂糖や練乳なしでは酸っぱくて食べられないいちごも多かったものじゃが……いい時代になったのうはむはむはむ」
 一方、レイラインの攻撃によって麻痺し、動けなくなったいちごさんには――はらぺこリベリスタたちの目線がじっとりと絡みついていた。
  もう1体のいちごさんが鎌を操り、仲間に群がろうとするリベリスタをまとめて遠くへ吹き飛ばすが……むくり、むくりと立ち上がっては、再びいちごさんの元へ駆け戻る。
「いちごは一欠片も残さずあたしが食べつくすです。 いちごを前に、さおりん以外はあたしを止めることなどできないのです!!」
「麻痺してる今こそチャンスぜよ! ハイパービーストバイトぉぉ!!」
 そあらや仁太に襲われるいちごさんの姿を後方から見て、とよは思わずこくんと唾を飲み込む。
「いちごさんが1体倒れたら食べに行こうと思ってましたけど、ぼんやりしていたら、あっという間になくなっちゃいそうです……はう……」
 刻まれ囓られ、もはや赤と白のまだら模様となったいちごさんを、マグスメッシスがさらに切り刻む。切られた果肉は、見る間にリベリスタたちの強靱な胃袋へと消えていく。
「ボク、いっぱいいちご食べられてしあわせー♪」
「次は練乳ぶっかけてから吸血ですわよ!」

 ところで、時間無制限☆いちごもぐもぐパラダイスを地道に支えている仲間の存在を忘れてはならない。
 健気な少女と、見た目は一番怪しいにもかかわらず中身は常識人の怪人さんが、いちごさんの武器たちを少し離れた場所でしっかりと抑えている。
 アーリィがトラップネストで斧の動きを封じると、九十九の正確な射撃がそれを撃つ。
 フェーズ1の武器たちは、いちごさんに比べればさほど強くない。しかし、未だ無傷の鎌が赤いオーラで斧を包み込むと、斧についた傷がわずかに癒えていく。
「回復が厄介だね……九十九さんが攻撃対象を合わせてくれるなら、戦略変更! 次からはダメージ重視でピンポイントいきますー!」
「1体ずつ、確実に落としていきましょうぞ」
「そうしましょう! きっと今頃、みんなも頑張って……るはず……だよね……?」

「むしゃあー!」
「うまーー!!」
 仲間のいる方角から聞こえてくる声はこんなんである。
 ちら、とそちらを見やり、九十九が呟く。
「……いちごのほうが被害者のように見えてしまったのは、気のせいですかな?」
 少女の、陽差しに煌めく新緑を映したような色の瞳から、ハイライトが、消えた。
「…………何か色々なことに絶望しそうなので、深く考えずに頑張ります」


 ――戦いが始まってから、どれほどの時が経過しただろうか。
 月影が映すリベリスタたちの姿。
 その身体は、鮮やかな赤に染まっている。
「ウ゛……ウ゛……」
 鋭い犬歯が覗く口元から、ぼたぼたと滴る真紅の液体を腕で拭い――仁太が吠える。
「うんまーーーい!!! 甘みと酸味のハーモニーが絶妙ぜよ!!!」
 彼らの全身を染める赤い液体は、ビタミンたっぷり100%いちご果汁である念のため。

 いちごをむさぼり食ってばかりのように見えても、今回集まったリベリスタには、高い名声を誇るアークトップクラスの実力の持ち主が多い。また、回復を使える仲間が3人揃っていたこともあり、彼らは今のところ倒れる仲間を出すこともなく……やっぱりいちごをむさぼり食っていた。
 対するいちごさんは、見るも哀れな姿に成り果てている。
 虫食いにあったかのように囓られた痕だらけの果肉。1体の腹部には人ひとり通れそうな穴がぽっかり貫通していたし、もう1体に至ってはもう下半身しか残っていない。
 アーリィと九十九が斧を倒し、残る敵は3体。しかも斧を操っていたいちごは武器をなくし、薙ぎ払い攻撃も、へたブーメランも使えないのだ。
 敵の攻撃が届かない位置から、涙ながらにマグスメッシスを振るい続けてきたとよも、やっといちごに齧り付けた。
「はむっ、もぐもぐ……んーー♪」
 今までずっと我慢してきた分、格別に美味しく感じる気がする。いちごさんは少しひんやりとして、ほおばると、口いっぱいに甘い果汁が広がる。
「美味しい……♪ もっと食べたいです、もぐもぐもぐ」

 しかし、いちごさんの“いのちがけ”ならぬ“いちごがけ”の猛反撃も、終わった訳ではなかった。
 これまで使われてこなかった、自分自身もダメージを受ける諸刃の技。
 その巨大な体で周囲にいるリベリスタをまとめて圧し潰さんと、いちごさんがぐらり、と傾ぐ。
「きゃっ……!?」
 ずどん、と一際大きく大地が揺らぎ、倒れたいちごさんの巨体にとよ、そあら、メイ、由良、レイラインの5人が下敷きになった。
「び、びっくりしたのです……いちごさんが穴だらけでなかったら、皆もっと大怪我していたかもしれません……(もぐもぐ)」
「こんな巨大いちごを食べられるチャンスは滅多に無いのです。どんな状況でも、あたしのお口はとまらないのです(もぐもぐもぐもぐもぐ)」
 とよとそあらが潰されながらもいちごさんもぐもぐするのに励んでいた一方で、いちごさんの体当たりに、思わぬ被害が発生していた。
「やーん、お顔がミルクでべたべた~」
 メイは攻撃を受けた拍子に練乳チューブを思いっきり握りしめてしまい、あどけない顔やフリルいっぱいの服の、あちこちがミルクまみれになってしまったのである。
「とれないよおー」
 ぎゅっと目をつむったままチューブ片手にしたぱたするので、暴走した練乳がびるびるびるっと飛び散る。
 近くにいた仲間の、金色の獣耳や、露わになった胸元までもが、白くどろりとしたミルクにまみれた。
「全国のよいこのみんなにサービスシーンぜよ……」
 仁太でした。
「誰得ですのよ!!?」

 いちごさんの反撃は止まらない。二股に分かれた足をくいくいっと動かしかっこいいポーズ(自称)を決めると、辺りにキラキラ輝くピンク色のオーラが満ちる。
 いちごさんの体長は未だ高く、その遠距離攻撃はリベリスタ全員を捉えた。甘い誘惑が、じわじわと精神を侵食していく。
「も……もう一口だけ……食べたかったです……わ……がくっ」
 いちごさんに近接して吸血を続けてきた由良が、とうとう戦闘不能になり倒れた。
「魅了? 24時間365日いちごとさおりんに魅了されているあたしに、今更効くわけないじゃないですか!」
 いちごさんの誘惑を振りきり、仲間の傷を癒やすそあらの背後で――ゆらり、と黒い影が揺れる。
「こ、これは……!? いちごが増えて食べ放題じゃないかえ! いっただっきまーすなのじゃ!!」
 がぶー。
「ぎゃーーー!!?」
 がっつりいちごさんに魅了されたレイラインが、そあらのしっぽに齧り付く。
「なにするですか!? あたしを食べていいのはさおりんだけなのです!!」
 てしてしてし! がぶがぶもぐー。
 にゃんこばーさすわんこのそうぜつなたたかいが繰り広げられる中――他のリベリスタたちはと言えば、やっぱりしっかりいちごをむさぼり食っている。


「……」
「……」
 九十九とアーリィがいちごさんの武器すべてを倒した頃、いちごさん本体は、跡形もなく消え去っていた。もちろん消えた先は、リベリスタたちの胃袋の中である。
「食べられることは、あるいは食品として本望だったかもしれませんな。皆さんの良い食べっぷり……いやはや、面白いものを見せていただきました」
 戦闘不能に陥った由良も大事には至らなかったようで、仲間たちはほっと胸をなで下ろす。残念ながらタッパーの中のいちごは、消滅してしまったが。

「ふふふ……いちごなんてもう見たくない……」
 ちょっとしたトラウマを抱え、アーリィはよろよろであった。回復で仲間全員を癒やしつつ戦ったため戦闘不能にはならなかったが、回避力の高い九十九に比べてダメージを受けてしまうことが多かったので、疲労も大きい。
「いちごがあるから、人は争ってしまうんだよね……いちごなんて、この世から消滅してしまえばい……」
「あーさーん!」
 うつろな目で振り向くと、アーリィの口の中に、甘酸っぱい味が広がる。
「あーさん、大丈夫です? ずっと前に出てて、回復もしてくれて、お疲れ様でした」
 いちごパックを手に金色の瞳を細めて微笑むのは、年の近い友人であった。
「甘い……」
「あ、これ……いちごを食べ損ねたとき用に買ってきた普通のいちごですけど、あーさん、さっきのいちご食べられなかったですよね。はい、もいっこ、あーん」
「う、ううっ…………とよさーん!!」
「? いちご、泣くほど美味しかったですか?」

 リベリスタの活躍で、E・ビーストは消滅し、少女も絶望から救われた。
 九十九がふと思い出したように振り返る。
「ああ、そうです……食べ終わったら、ちゃんと“あれ”を言いましょうな?」
 仲間たちは目を見交わし、すぐに諒解した。畑の広がる静まりかえった高台に、8人の声が響く。
「「「「ごちそうさまでしたっ!!!」」」」
 星が瞬く初夏の夜空に、さむずあっぷしたいちごさん2体の姿が浮かんだ……ような気がした。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
カオスになりました!(挨拶)

皆様、いちご狩りお疲れ様でした。
お楽しみいただけましたでしょうか、予想以上の皆様の食い意地に、わたしはノリノリで書かせていただきまして、楽しかったです。

ご参加、誠にありがとうございました。
また機会がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。