●脱力生命体 沖合に浮かぶ小さな無人島。生活するにも、観光するにも不便なその場所に現れたソイツは、何と言えばいいのか、ひどく気の抜ける外見をしていた。 そう、例えるのなら、デフォルメされた巨大なオオサンショウウオのぬいぐるみ、とでも言えばいいか。大きさは3メートル程。細かく滑らかな毛の生えた体。短い手足に、円らな瞳。色は焦げ茶色で、動作が鈍い。ぬいぐるみのような外見とはいえ、生き物には違いないようだ。 アザ―バイド、という別の世界から来た生命体である。 直径100~200メートル程度の無人島のどこかに、彼の通って来たDホールが開いているはずである。 何処へ行こうと言うのか、のそりのそりとした鈍い動きで、彼は海岸線を歩いていた。青い空をぼーっと眺め、吹きつける海風を浴びながら、のんびりと……。 と、その時……。 「いたぞ! そこだ! 捕まえろ!」 「気をつけろよ! 近づきすぎると、力が抜けるぞ!」 林を抜け、海岸に飛び出して来たのは全部で6人程の男性だ。皆、一様にすっぽりと顔を覆う黒いマスクをしている。防弾チョッキにも似たプロテクターを装着している。その手に持っているのは銃だろうか? 先頭の男だけは、他の者と違ってマスクの上からゴーグルを付けていた。彼がリーダーなのだろう。 「薬の材料なんだ、必要以上に傷つけるなよ!!」 リーダーの指示で、男たちはぬいぐるみのような彼を囲むように、広がっていった。 ●謎の生き物 「アザ―バイド(ぐったりアニマル)……と、呼ぶ事にするわ。この世界に迷い込んだ彼と、彼を追ってきた6人のハンター達を送還して来て欲しいの」 無人島の映像がモニターに映る。それを見ながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は解説を始めた。 海岸線には広い砂浜、島の中央には小さな林。ぐったちアニマルたちが居るのとは反対側には、ごつごつとした岩場が広がっていた。 「アニマルには自身を中心に、半径10メートル内にいる人間に(虚弱)の状態異常を引き起こす能力を持ってるみたい。そして、直接触れた相手には(無力)の状態異常を……。厄介なのは、彼自身に敵意はなく、また非常に人懐こい性格、ということね」 危機感知能力に疎く、人懐こい。それが彼、ぐったりアニマルの特徴だ。それを知ってか、知らずか、ハンター達は彼を追いまわし、ここまで追い込んだらしい。 或いは、偶然Dホールに飛び込んだ彼を発見したのか……。 「何故ハンターが彼を追っているのか。それは、彼の体液には傷や病を治す力があるからよ。一応、希少種ではあるのかしら。捕まえて、売り飛ばすつもりでいるのかもね……」 のんびりしているぐったりアニマルが今まで捕まらなかったのは何故だろうか。 それは、彼のもう1つの特性にある。 「人に見られていないと、30分程で周囲の景色と同化する強力な擬態能力にあるの。一度姿を消すと、次に現れるかは分からないわ。何故なら彼は、のんびりしているから……」 数日、数カ月、長い場合は数年も透明なままかもしれない。 ハンター達が必死に追っているのも当然だ。今回発見したのだって、偶然に過ぎないのだから。 「ハンター達に関しては、全員銃を装備している。また、テレパシーでの通信が可能みたいね。非常に統率のとれた動きをするわ。それに加え、リーダーには罠を仕掛ける能力も。気を付けてね」 現場は無人島。砂浜や岩場、林など罠を仕掛けることのできそうな場所には事かかない。 「送還してほしい、とは言ったけれど、無理そうなら討伐でも構わない。任せるから。Dホールの破壊も忘れずにね」 そう言ってイヴは、モニターを消した。 行ってらっしゃい、と手を振るイヴを尻目にリベリスタ達は部屋を出ていくのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月11日(土)00:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぐったりしていってね 巨大なデフォルメされたオオサンショウウオのぬいぐるみが歩いている。のそりのそりと、砂浜に足後を残しながら、ゆったりと。脱力系、とでも言おうか。気の抜ける外見。アザ―バイド(ぐったりアニマル)。近くに寄ると力が抜けるという奇妙な能力を備えている。 「俺はぐーたんと呼称しよう。それはともかく、何処の世界にも密漁者みたいなやつはいるもんなんだな」 大量の煙を吐き出し『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は葉巻を口から離す。視線の先には、ぐーたんことぐったりアニマル。そして、それを囲むように展開する数名の男性の姿がある。 「ううん、近くに寄って触ってみたいのは山々だけど、脱力しちゃうのは困るし悩ましいね」 ハンターたちに見つからないよう移動しつつ『本屋』六・七(BNE003009)はそう呟いた。両手に付けた鉄爪をカチンと打ち鳴らす。 「ずるいです! 香夏子もぐったりダルダルする生活したいです!」 仲間の配置が完了したのを確認し、『第35話:毎日カレー曜日』宮部・香夏子(BNE003035)が巨大な鉄扇を広げ、飛び出した。砂を蹴散らし、手近に居たハンターへと踊りかかる。ハンターたちがこちらの存在に気付く。ハンターの気を引くように、香夏子は大きく左右に駆けた。 と、同時に。 「全く……私に隠れて会話をするなんて、妬ましいわね」 長い紺髪とフリル満載されたスカートを翻し『以心断新嫉妬心』蛇目 愛美(BNE003231)が姿を現す。その瞬間、ハンターたちの動作が目に見えて鈍くなったのが分かる。愛美はにやりと酷薄な笑みを浮かべた。 ハンターたちは言葉を必要としない。テレパシーによる意思伝達、連携が可能だ。しかし、愛美の使ったジャミングによってそれは封じられた。それに伴い生じた混乱だ。 「邪魔されているぞ! 全員、迎撃態勢に入れ! ターゲット変更だ!」 ハンターたちのリーダーが叫ぶ。流石、とでも言うべきか、ジャミングによる異変に気づき、すぐさま的確な指示を下す。 「ちょっと、いじめっ子は私たちが許さないよ?」 杖を掲げる『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)。瞬間、大量の火炎弾が砂浜に降り注ぐ。テレパシーでの意思疎通が封じられた今、ハンターたちの連携は声と動作が頼りだ。しかし、降り注ぐ火炎弾に阻まれ、声も動作も仲間に届かない。 そんな戦場の光景を、ぐったりアニマルはじっとぼんやり眺めているのだった。 ●脱力フィールド 「どこからこんな所に来ちゃったんですかー?」 ぼんやりと戦場を眺めるぐったりアニマル(ぐーたん)へ駆け寄る『スウィートデス』鳳 黎子(BNE003921)。笑みを浮かべ、ぐーたんに声をかける。ぐーたんは、ゆっくりと黎子の方へ顔を向けると、のんびりした動作で彼女にすり寄っていった。 「うェっ!?」 ぐーたんが触れた瞬間、彼女の体から一気に力が抜ける。突然襲ってきた強力な脱力感。 「ぐったりアニマルさんはわたしが庇うわ。さぁ、いらっしゃい」 砂浜を駆け抜け、ぐーたんの元へやって来たのは『blanche』朝雛・淑子(BNE004204)だ。戦斧を手に、ぐーたんを庇うように立つ。ぐーたんのせいで虚弱状態ではあるが、彼女の専門は守る、庇うなどである。 「なんと、愛くるしい……。ぐったり、必ず君を守る」 ぐーたんと淑子に目を向けて、『百叢薙を志す者』桃村 雪佳(BNE004233)は戦場へ切り込んで行った。手には愛刀・百叢薙剣。向かう先は、砂煙舞う戦場だ。 怒号を頼りに砂浜を駆ける。視線の先にはハンターの姿。刀を振りあげ、一気に加速。有無を言わさず、斬り掛かった。 しかし、次の瞬間。 「なにっ!?」 雪佳の足元から、突如噴き出す紫の煙。ハンターのセットした罠だ。一瞬で雪佳の体は麻痺し、その場に倒れ込む。 「かかったな。罠には気をつけろよ。それが戦略だ」 ライフル方手にそう告げたのは、ハンターたちのリーダーだ。銃口を雪佳の頭部へと向ける。先制攻撃、ジャミングと妨害を受け、こちらのことを完全に敵と認識したようだ。 「邪魔をするなよ。命あってのモノダネだぞ?」 リーダーが引き金を引いた、その時だ。 「くだらねぇ!」 ライフルを真横から叩く、巨大な杭。突進するようにその場へ現れたのは、ソウルであった。杭でライフルを抑え込み、リーダーを後ろへと押しやっていく。 「くだらねぇハンターどもに見せ付けてやるぜ! 俺の、男の価値って奴をなぁ!」 パイルバンカーを振り回し、リーダーを殴り飛ばすソウル。部が悪いと判断したのか、リーダーは一旦その場を離れていった。それを確認し、ソウルは雪佳の状態異常を回復させる。 「なんにせよまずはハンターを抑えて、アニマルちゃんを助けて……あとはきちんと、送還してあげないとねぇ」 中々厄介だ、なんてぼやいて七は林に飛び込んで行く。林へ逃げこんだハンターを追っているのだ。現在、砂浜沿いに逃走するハンターが2人。林へ逃げこんだハンターが4人。 「このやり場のない怒りを合法的にハンターさんにぶつけましょう!」 七に続き香夏子も林へ。眠たそうな目とは裏腹に、その足運びは実に素早く機敏だ。長い髪が風になびいて、黒い川のようにも見える。 2人が林に飛び込んだ、その瞬間。 「うっ!?」 七の眼前に、1発の大口径の弾丸が。数メートル向こうにはライフルを構えたハンターの姿。誘い込まれた、と気付いた時にはすでに遅い。弾丸は木にぶつかり、大爆発を起こす。爆風、轟音、衝撃に弾き飛ばされ2人は砂浜へと叩きつけられた。 撤退している途中とはいえ彼らはハンター。負けっぱなしでいるほど、甘くは無い。 「我らの邪魔をするとは、運がない」 トドメを刺すべく、ハンターは走る。ライフルを仕舞い、代わりにナイフを抜いた。直接とどめを刺すつもりか。いち早く反応した香夏子が鉄扇を掲げ、ハンターの迎撃態勢に入るが姿勢が悪い。1、2撃は受け止められてもそれ以上は防げないだろう。 ただ、問題があるとすれば……だ。 「さぁ、一番不運な方は誰ですかねぇ?」 テレパシーを封じられ、リーダーの指示を仰ぐことができなかったことだろう。或いは、仲間との連携か。もしその片方でも出来ていたのなら、彼が2人に追い打ちをかけるような真似はしなかった筈だ。 「っ!?」 気付いた時にはすでに遅い。林から飛び出したハンターの周囲に、魔力で出来たダイスが展開している。思わず足を止めたハンターに向け、ばいばい、と笑顔で手を振るのは黎子だった。爆裂クラップス。魔力で出来た不吉なダイスが、連鎖的に爆発を繰り返す。 「いやまぁ、我々が貴方方の狩りに口を挟むのも変ではあるんですけれど。この場所に居られると、困るだけなのです」 全てのダイスが爆発し、焦げくさい煙が立ち上る。 意識を失ったハンターが1人、黎子の足元に倒れ伏していた。 一方その頃、愛美は1人、低空飛行で林の中を飛びまわっていた。 「あの生物、あんなにも可愛らしいだなんて……妬ましいわね。えぇ、妬ましいったらないわ。とっても妬ましいから、写真に撮ってもいいかしら?」 どうかしら? なんて首を傾げる愛美。手には魔弓。黒い翼で木の間を縫い、飛びまわる。とはいえ、あまり林の奥へは立ち入らないよう、あくまで後衛の位置を保ってはいるようだ。 と、その時遥か後方で連続して爆発音が響く。視線をそちらに向けると、そこには砂の上に倒れる七と香夏子、それから黎子の姿があった。 はぐれていた仲間を発見し、そちらに進路を移そうとした、その直後。 ぱぁん、という破裂音。次いで1発の弾丸が愛美の翼を撃ち抜いた。バランスを崩し、愛美は地面に落下する。咄嗟に放った矢は、まっすぐ銃弾の来た方向へ。直後、短い悲鳴が上がる。矢は命中したようだ。 「どこなの?」 矢は命中したものの、致命傷ではないだろう。ハンターの姿はすでに見えない。新な矢を弓に番えようとしたその瞬間、目の前の草むらがガサガサと揺れる。 「準備の時間くらい待ちなさいよ」 至近距離では、矢の性能が活かせない。僅かに頬を引きつらせながら、愛美は弦を引き絞った。 草むらに矢を向け、すぐにでも放てる用意をする。 「ぷはっ……あ?」 草むらから現れたのは、ハンターではなくルナだった。銀の髪を風になびかせ、ルナは愛美の前に立つ。 「ここに居たのね」 そういってルナは笑う。幼い顔立ちながら、どことなく年上の余裕が漂う笑顔だ。感情探査を使って、はぐれた仲間を探していたのか。 「うん。私も攻撃に加わるね?」 そう言ってルナは、愛美の翼に手を翳す。淡い光が、愛美の傷を癒していった。それから視線を林の中へ。イーグルアイと感情探査による索敵能力は、正確にハンターの位置を把握しているようだ。 「8メートルくらい先の大きな木の下。こっちを狙っているね。ちょっとやばそうかな。大き目の弾丸を装填したよ」 杖を方手に、ルナは言う。 「十分。けど、姿が見えない」 「隠れたみたい。きっと、姿を現すと同時に撃ってくるよ。焦っているみたいだから」 感情探査。ルナはハンターの心境を言い当てる。 数秒の沈黙。木々を挟んで、矢と銃口を突きつけ合う双方。 一陣の風が吹き……。 そして、沈黙は破られた。 「しっ!!」 短く息を吐き、木影から転がるように飛び出すハンター。撃ち出されたのは、大口径の爆発する弾丸だ。空気を切り裂き、宙を舞う弾丸。それを迎えうつのはルナの放った光球だった。 弾丸と光球が空中で衝突。爆発。衝撃波と熱波が辺りに吹き荒れる。へし折れた木の枝が、ルナの肩に突き刺さる。顔をしかめ、砂の上に倒れるルナ。 直後、愛美が矢を放つ。魔力と意思で強化された呪いの一撃。禍々しいオーラをばら撒きながら、爆風の中を飛んでいく。 「可能なら、戦闘不能に留めたいな」 「命までとるつもりはないから、元の世界で仕切り直してちょうだい」 そう呟いて、愛美は倒れたルナを助け起こす。 そんな2人から林の中へ数メートル。煙が晴れ、爆風が収まった後には、脇腹から血を流す意識不明のハンターが白目を剥いて倒れていた。 「別に急ぐ必要はありませんので、足場や罠など注意しながら、孤立はしないように」 肩に大鎌を担ぎ、黎子は先頭を進む。先ほどの一件を踏まえ、林の外周に沿って進んでいる。 さっさとハンターを無力化して、ぐーたんと戯れよう。そう思った、その直後。 カチ、と奇妙な音が響く。 「ん?」 瞬間、黎子の足元から噴き出す紫の煙。毒や麻痺の状態異常を付与する罠だ。毒でも受けたのか、黎子の顔色が急速に悪くなっていく。一瞬、黎子の体がふらりとよろけた。 そして鳴り響く2発の銃声。林の中と、正面の木影から現れるハンターたち。弾丸はまっすぐ、黎子の脇腹と、腿を撃ち抜いていった。砂の上に血が飛び散る。 膝を付く黎子。ダメージを与えた事を確認し、正面のハンターは素早く踵を返した。どうやら罠を利用したヒット&アウェイの戦法を使うつもりらしい。 しかし……。 「はりー! はりーです!」 ピタリ、とハンターの動きが止まる。いつの間にか、身体に巻き付いていた気糸の存在に気が付いたのである。マスクに覆われて窺い知れないが、その顔色はきっと青くなっていることであろう。 動きを止めたハンターの背後に立つ香夏子。眠たそうな目でハンターを見据え、手を伸ばす。指先から伸びる無数の気糸。そして、その広げた手を握る動作をする。 「どうやら香夏子のぐったりタイムはまだ早いようですね」 香夏子が手を握ると同時に、気糸がハンターの体を締め付ける。服や防弾チョッキが破れ、皮膚が裂けた。ハンターの手から、ライフルが零れ落ちる。意識を手放すその直前、ハンターの視界一杯に映ったのは、巨大な鉄扇の影だった。 林の奥へ逃げこんだハンターを追うのは鉄爪を付けた七である。迎撃のために撃ってくる弾丸を回避し、或いは爪で受け流す。もう一歩で手が届く、という範囲にまで接近されたハンターは、素早くライフルを投げ捨て、ナイフに手を伸ばした。振り下ろされる爪をナイフで受け流し、そのまま七の肩を切りつける。 「ちっ」 殺すつもりの一撃だったが、浅い。舌打ちを零し、下段から蹴りを放つ。胴に突き刺さるハンターの足刀。七の口の端から、血が零れる。 返す刀でナイフはまっすぐ七の喉へと。七はそれを爪で受け止め、背後へ転がり距離を取る。 「いくら貴重だっていっても、人懐こくて大人しい生物を狩るのは感心しないな」 売り飛ばしちゃうの? と、七は問う。ハンターは答えない。マスクから覗くその瞳には油断の色はない。じり、と七との距離を詰める。 瞬間、彼女とハンターの周囲に無数のカードが浮き上がる。カードは周囲をめちゃくちゃに舞った。鋭く、疾く、辺りの木ごとハンターの体を切り裂いていく。舞い踊るカードに混じって、鮮血が辺りに飛び散っていた。 「どどめは刺さないようにするね」 呻き声を上げるハンターを見降ろし、七は笑ってそう囁いた。 ●あぁ、ぐーたん 「仲間との連絡が取れない。しかし、このまま撤退するわけにもいかない」 リーダーが呻く。幸い、砂浜や林の周りには彼の仕掛けた罠が多い。その上、ぐーたんのガードは見える範囲に3人しかいない。残り5名は、他のハンター達が引きつけてくれているのだろう。 「我々は、どうしますか?」 「作戦決行だ。何人死んでも、捕まっても、任務は遂行する」 「了解!」 岩場まで後退していた2人だが、覚悟を決めて駆け出した。向かうは砂浜、ぐーたんの元へ、だ。 「大丈夫よ。あなたは絶対にわたしが守るから」 頭を摺り寄せて来るぐーたんを撫でる淑子。相変わらずぼーっとした顔をしているぐーたんからは危機感など感じられない。ハンターが自身を狙っていることなど、気付いてもいないのではないだろうか、とも思う。 淑子とぐーたんから僅かに離れた位置には雪佳とソウルの姿がある。緊張の糸を貼り、ハンターの襲来に備えている。 そして、数十秒後。その時は訪れる。 「GO! GO!」 林の中から飛び出して来た2人の男性。ハンターとそのリーダーである。走りながら撃ち出されるのは、爆発する弾丸。ソウルや雪佳がそれを撃ち落とすが、全てを防ぎきることは出来ない。広範囲に吹き荒れる爆風や飛び散る破片からぐーたんを守る淑子は、着実にダメージを受けていった。元々ぐーたんの傍では防御力が下がるのだ。おまけに淑子は、ぐーたんに触れてしまっている。防御力の低下率は尋常ではない。 「それでも、わたしは庇い続けるわ」 吹き荒れる爆風。大斧で防ぐも、限界がある。淑子は意識を失い、その場にがくりと膝を付いた。そんな淑子にぐーたんがすり寄る。数秒後、ピクリと淑子の指が動く。斧を握り直し、淑子は立ち上がった。手を伸ばし、ぐーたんを撫でる。大丈夫、とでも言うように笑って見せた。その時、淑子の腕から、傷が消える。ぐーたんの持つ、傷を癒す能力によるものだ。 「ふふ、ありがとう」 淑子は大上段から大斧を振り下ろす。巻きあがった大量の砂が弾丸の爆風と相殺、打ち消した。 「後はこいつらだけのようだ」 「攻撃は若い奴らに任せるぜ」 AFを仕舞い込み、雪佳が駆け出す。それに続いて、ソウルも。ハンターたちの放つ弾丸を回避しながら、その距離を縮めていく。しかし、次の瞬間雪佳の足元で罠が発動。毒煙が噴き出す。 咄嗟に跳んで、回避を図るが間に合わない。崩れかけた体勢を立て直し、移動を再開。麻痺こそ回避したものの、毒を受けたようだ。口の端から血を零し、刀を振りあげる。 「俺が先に行く。なに、耐えるのは俺のいつも通りに仕事だ」 雪佳を追い抜き、ソウルが前へ。彼に麻痺は通用しない。鎧に覆われた巨体で砂浜を駆け抜ける。時に踏み、時にはリーダーが故意に発動させる罠。噴き出す煙、受けた毒すらお構いなしにソウルは駆け出す。振りあげたパイルバンカーが放電を始めた。 「まずい! にげっ」 リーダーが叫ぶ。普段はテレパシーでのやり取りをしているが故に発生したタイムラグ。致命的だ。逃げ遅れたハンターの胸にパイルバンカーが叩きつけられた。ハンターの体に電撃が走る。白目を剥いて倒れるハンターの頭上を、雪佳が飛び越す。 「これは……。いや、このままでは帰れない」 ライフルを捨て、ナイフを抜くリーダー。すでに雪佳は彼の眼前。罠も弾丸も使えない。大上段から振り下ろされる雪佳の刀と、真下から抉るように突き出されるリーダーのナイフ。ナイフが雪佳の首筋を切り裂く。飛び散る鮮血。 「ぐっ……」 呻き声を上げ、倒れたのはリーダーであった。目にも止まらぬ高速の斬撃が、リーダーの体を袈裟がけに切り裂いた。 「お前達の世界の事情は知らん。密猟にも何か事情があるのかも知れん。だが、ここは俺達の世界だ……この世界のルールに従い、お前達を止める」 倒れたリーダーを見降ろし、雪佳はそう呟いた。 「よしよし、少しは自分でも気を付けるのよ?」 ぐーたんを抱きしめ、淑子は言う。倒れたハンターを拘束し、一同はぐーたんとの触れあいを楽しんでいた。もふもふ抱きしめたり、写真を撮ったり、暫しの間、穏やかでのんびりとした時間を過ごす。 明日からはまた、戦火を潜る生活が始まるのだから。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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