●く つ し た 「……ターゲットは?」 青年の言葉に、女性は無言で一枚の写真をデスクの上に置いた。 通学の途中だろうか? 制服姿の少年少女4人が移っている。 「最近いろいろ忙しかったでしょう? ソックスニウムが不足していると思って」 「……何もかもお見通し、というワケか。流石だな、ソックスエンジェ」 青年は微笑みながら、肩を竦めて口にした。 「靴下というエデンの果実に魅入られ地上へと落ちた、背徳のルシファー(堕天使)」 「ふふ、ソックスフレームにそう言って頂けるなんて光栄ね」 女性が艶のある笑みを浮かべた。 「靴下というレリクス(神々の遺産)を求め彷徨う、孤高のフェダイーン(戦士)」 フフフフと、2人は互いに笑い合って。 ケド……と。 少しの間をおいて……女性が微かに眉をしかめた。 「アークに察知される危険があるのよ」 その言葉に、同じく少し……間をおいて、青年は答えた。 「寧ろ、望んでいるんじゃないのかい?」 「……フフ、わかる?」 女性の顔に、笑みが浮かぶ。 「キミとは靴下が取り持つ縁だ」 「……そう、望んでいるのね。きっと私は」 「気持ちは、少し分かるからね」 「ありがとう」 女性は礼を言って、どこか陶酔したような表情を浮かべた。 「嫌がる靴下から、アークのリベリスタを引き剥がす……イイ、イイわァ!!」 「キミが仲間で良かったと心から思うよ」 「ケド、油断はできないわ。何しろアークだもの」 女性はそう言って、表情を引き締めた。 「場合によっては、貴方のアーティファクト、ソックスレギオンの力が必要になるかも?」 「だろうな。だが、キミのソックスサンクチュアリまで出しては……面倒な事になる」 「ええ、分かってるわ」 そう言って彼女は懐から靴下を取り出した。 「できる範囲で、全力を尽くしましょう」 顔に当て立ち眩むようなしぐさをした彼女に、青年は静かに頷いて見せた。 ●マルガレーテは置いてきた 「このまま頑張らせると、頭がおかしくなって死にそうだったから」 靴下が、とかうわ言のように繰り返し、のたうち回っているらしい。 『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)はそう言ってから、スクリーンの画像を指し示した。 通学途中なのだろうか? 制服を着て鞄とバッグを持った中学生くらいの4人の男女が写っている。 「この4人が黄泉ヶ辻のフィクサード2人組に襲われる」 部活を終えての帰り道の途中で4にんはフィクサード達に襲われ、動きを封じられ…… 「無理やり……靴下を奪われてしまう」 イヴはそう言って、リベリスタ達の顔を見回して…… 「無理やり靴下を、奪われてしまう」 2回言った。 「……あ、片方だけ。一方は奪われない」 そういう事ではない、とは誰も言わなかった。 「……怪我とかはしないけれど、精神的につらいと思うし万一というのもあると思う」 だから、フィクサード達の襲撃から4人を守ってほしい。 イヴはそう説明した。 4人が帰宅する途中、人通りが少なくなる場所がいくつかある。 そのうちの一ヵ所で2人組は4人を襲うらしい。 「中学生たちを庇いながら戦う必要はない」 とにかく逃がしてもらえれば、後は現地近くに待機するアーク職員が保護し、必要に応じて簡単な記憶操作なども行ってくれるそうだ。 「フィクサード達は怪我をさせる気はないみたいだけど、皆が本気で戦えばもちろん本気で戦ってくる」 そうなると4人が巻き込まれるかも知れない。 「4人を避難させるまでは、できるだけ戦わないように、戦いを大きくしないように気を付けてほしい」 2人のフィクサード達は、とても強いという程ではないが、決して弱くもないようだ。 かなり搦め手で攻めてくる感じだと、フォーチュナの少女は説明した。 「2人とも懐に靴下を隠し持っているみたいで、それを使ってみんなを襲う」 靴下を振り回したり、顔に押し付けて苦しめたりといった責めの他、自分自身で匂いをかいだり食べてドーピングしたりといった戦法もとるようだ。 「それ以外にも何かアーティファクトっぽい靴下……靴下っぽいアーティファクト? そういう物を持っている」 靴下のE・ゴーレムを作るとかいう能力の品らしいが、詳細は分からないらしい。 とにかく……生命の危機という訳ではないが、いろいろなものを危険にさらす恐ろしい相手といえるだろう。 「……みんなも虜にならないように、気を付けて」 本気なのか、冗談なのか、判別し難い表情で口にして。 イヴは、説明を締め括った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月05日(日)22:45 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 6人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●ソックスハンター (…………本部で「七派退治のお仕事ですよ」って聞いてたのですが) 「……どうしてこうなりました?」 『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)は呟いた。 七派のフィクサードが相手なのは、間違いない。 一般人が襲われそうなので被害が出ないように守る。これも間違いない。 相手はどんなフィクサードなのか? イヴの説明を、思い返す。 敵は2人組のフィクサードで、靴下に強い拘りを持っていて…… 「靴下食べてパワーアップって……ええーっ」 「くつした。ですか」 まるでタイミングを計ったかのように。 『陽だまりの小さな花』アガーテ・イェルダール(BNE004397)は、何となく遠い目をしつつ口にした。 対して『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は、鋭い、切れ者という雰囲気を漂わせながら口を開く。 「靴下狩人……だと……!?」 「知ってるのか? ベル電!?」 「聞いた事がある。神秘の力を靴下狩りにのみ用いるフィクサードが居ると!」 冷たいものが背筋を伝わるような表情で、ベルカは口にした。 「そのシンプルな欲求がゆえに、最適化された戦い方は脅威となるだろう」 「……靴下のぅ……何に固執するかは個人の自由じゃし、わしなんかに口をはさむ権利は全くないから良いんじゃが」 何とも言えない表情で呟きながら、『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)は考え込んだ。 (他人に迷惑をかけるのはいただけないと思うのじゃ) 「何より一般人には手を出しちゃいけないと思うしの」 放っておけば被害が出てしまうというのであれば、何とかしなければならない。 「頑張って撃退しようとは思うのじゃが……どうせこの矢はあたらないのじゃ」 表情をいっそう暗くしながら、自身を卑下するように……少女は呟いた。 それらは今回の敵がそれだけの力を持っているから……という訳ではない。 これまでの彼女の人生が、そういった諦観を奥底に抱かせてしまっているのである。 実力で考えれば、彼女は今回相手となるフィクサード達に対して十分に抗せるだけのものを持っているのだ。 フィクサード達の方も、決して力がないという訳ではない。 未熟なリベリスタが相手であれば、靴下を奪うことなど朝飯前で済ませられる実力の持ち主である。 まして相手が一般人となれば……結末を想像するのは、容易いことだ。 幸いというべきか6人はフィクサードに先んじて、下校途中らしい中学生たちのグループを発見できた。 黄泉ヶ辻のコンビに襲われる事になる4人組で間違いない。 何は無くとも一般人への被害を未然に防ぐことだ。 (それさえ満たせればまあ後はどうにでもなるんじゃね?) そんな感じでベルカは中学生たちに近付いた。 アガーテも出来るだけさり気ないように気を付けて、中学生たちに話しかける。 一般人である中学生たちをびっくりさせないようにと考えて、彼女は髪で長い耳を隠していた。 ちなみに靴下の方は、お気に入りの可愛らしくレースをあしらったものをはいている。 (万が一取られても、これなら恥ずかしくありませんわ) あくまで万一であって、もちろん取られないに越したことはない。 「あの。この先で不審者が暴れているって警察の方に言われたのです」 (確かけいさつ、ってこう言う時に使える言葉だったはずですし) 「一緒に避難しませんか?」 そう言われ、学生たちは驚いたようすで顔を見合わせた。 そこへ、ベルカ達が声をかける。 「近辺に悪質な変質者が出るので早急に避難を」 そう告げた時だった。 「そこまでだ!!」 何かあからさまに正義の味方側っぽい掛け声と共に、2人のフィクサードが姿を現す。 用意した警官セットで変装した『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が、2人を指差し叫んだ。 「あの人達、この界隈で有名な『変態』です、逃げて!」 「変態ですって!?」 「どこだ? 何処にいる!?」 「……貴方がたの事です」 一見すればコントか何かのようだが、漂う雰囲気から何か危険なものを感じたのか、中学生たちは素直に逃げ出そうとする。 長生きできるタイプかも知れない。 アガーテは先導するように、シエルと与市は4人を庇うようにして駆け出した。 結界が張られていた為に、4人は怖がったり怯えたりもしたものの、何とかその外まで逃れることに成功する。 待機していたアークの職員たちに学生たちを任せると、アガーテとシエル、与市は急いで戻…… 「……も、戻る前に靴下を履いてからにしようかの」 そう言って与市は、コンビニで幾つか買っておいた靴下を取り出した。 ●靴下たちの狂宴 「おーい、ハンターども! お前達も普通の靴下では満足できんだろう!」 ベルカは靴下狩人と避難させる者たちの間に立つようにして、呼びかけた。 「我らリベリスタの熟成物を味わいたくは無いかー!?」 「何!? そんな逸品が!?」 「汚いな! 流石アーク、汚いっ!!」 言いつつ2人がリベリスタ達に視線をシフトする。 「くっ、時間を稼ぐには……、わたしが囮になるしかありません!」 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)も、同じく遮るように立ち塞がり、構えを取った。 (ヘビロテで履き倒したあげくに、雨の日に濡れたままお手入れを忘れてたブーツ!) 「たっぷり湿らせて、ここまで履いて来ましたから……、ムレムレですよ?」 地獄の封印を……いま解き放つ! 「ブーツ、キャストオフ!」 唸れ! JK生搾り円熟のソックスフレグランス!! 「……おうふ……雑巾の腐った臭いが……します」 立ち眩みのようなものを感じつつ呟けば、驚きの表情と共に青年フィクサード(以下ソックスフレーム等)が口にした。 「……まさかそれは……あまたの敵を滅ぼしてきたという、伝説の一年靴下っ!?」 流石にそれは、がんばって如何にか出来るレベルではない。 「ふふ、あっちは盛り上がってるみたいね。それじゃ、こっちも始めようかしら?」 嶺と対峙する女性(以下ソックスエンジェ等)が微笑んだ。 (我慢なさい、AFを起動するまでの辛抱ですよ) 嶺は自分にそう言い聞かす。 中学生たちの避難が完了するまでは、何としてもフィクサードを引き付けておかねばならない。 まだ防具は纏っていなかった。 ショートパンツにニーソックス、上は白ブラウスとジレというのが彼女の今の格好である。 「それじゃ覚悟なさい! リベリスタ!!」 言いながらソックスエンジェが構えを取る。 避難完了を確認するまではスキルは一切使用しない。 引き付けるために、嶺はそう決めていた。 「ええい! 靴下を脱がそうとしないで下さいまし! ヒールで蹴りますよ!」 「それはちょっと洒落にならないけど怯んだらソックスハンターの名が廃るわっ!!」 「もーう! 覚悟ですよ黄泉ヶ辻!!」 そう叫んだ時、ちょうど戻ってくる3人の姿を確認して嶺はアクセスファンタズムを起動させ防具を纏った。 「ソックスだと思った? 残念、ストッキングでした!」 言いながら、ちょっと得意げな気分で構えを取る。 「どうだ脱がせないでしょう! うふふふふ」 「そうね、でも逃がせられないなら……履かせてから脱がせばいいのよ」 そう言ってフィクサードの彼女は笑顔で懐から新品の靴下を取り出す。 勘弁してほしいと、嶺は思った。 ●靴下攻防戦 「お前らーその力を、世界の守護に使う気は無いのかー?」 一応、念のために。 ベルカは本格的な戦いになる前にと2人に声を掛けてみた。 「無いと言うなら再起不能にするまでだが。再犯防止のためにもな」 「フッ、答など……分かっているだろう?」 「世界より大事なものがある。それが、フィクサード・クオリティ!!」 「ならば先手必勝! 立ち塞がる者あれば、これを斬れ」 自身のギアをトップスピードに入れた舞姫が、ソックスフレームと対峙した。 そのまま彼女は黒刃から光のしぶきを舞い散らせるようにして斬撃を放ち、フィクサードを足止めする。 「ほう……さっきまでのが演技なのか、それとも今、自分を偽っているのか……見定めさせてもらおうか!」 フィクサードは不敵に笑いながら彼女と向かい合った。 舞姫が解放した香りは、今も周囲に漂っている。 (さて、戦闘ならば私は支援役である) ベルカは攻撃と防御のネットワークを素早く構築し終えると、凍り付くような視線をソックスエンジェへと向けた。 今回の場合は……「うわぁ……」的な冷たい視線、とでも言うべきだろうか? 「ふふ……イイ、イイわァ! その蔑むような視線!!」 嶺と対峙したままフィクサードは虚脱した様子で笑みを浮かべる。 嶺としては距離を取りたかったけれど、残念ながら人が足りなかった。 仕方なく、彼女は舞姫の後ろ辺りに位置を取って、創り出した気の糸でエンジェを狙う。 対するエンジェは、まず靴下を履かせるために彼女の動きを封じようと別の靴下を武器として振るう。 シエルはどちらかというと傷の治療より浄化の力を必要として、詠唱によって癒しの息吹を具現化させた。 「……ここからが本番ですわね」 (私以外の方はみな、戦歴を多く積み重ねていらっしゃいますし) アガーテは後方に位置を取ると、小さな光球を創り出しフィクサードたちに向ける。 無理はしない。 ダメージや消耗が大きくなった人に回復を行い、必要ない時は攻撃。 自分の役割をそう定める。 与市は集中によって動体視力を極限まで強化すると、自分と共に成長してきた弓へと矢を番えた。 位置はアガーテの更に後方、超精密射撃の能力の射程を最大限活かせる距離である。 狙うのは…… (やはり靴下がいいのかのぅ?) 「当たらんと思うのじゃがな」 呟きつつ、与市は引き絞った矢を放った。 矢は精確に、彼女の狙った場所へと突き刺さる。 最初を思えば意外なほどに、戦いはシリアス度を高めつつあった。 とはいえ、そうは問屋が卸さない。 ベルカの秘密兵器によって、戦いは次の局面を迎えることになった。 少しでも敵の注意を逸らせるために! 彼女は自身で熟成させておいた靴下の山を、戦闘中に適宜、放り投げようとしたのである。 だが、それを見逃すソックスフレームでは無かった! 彼が所持していた謎のアーティファクト・ソックスレギオンが発動する。 かくして戦場の靴下たちは、謎のエリューション力によってゴーレムとして動き出した。 ●ソックス・レジスタンスたち ソックスゴーレムAct1.は足元に絡みついて速度を下げるだけ、程度らしい。 とにかく、ゴーレムそのものの力は危険なレベルではなかった。 問題なのは数が多くて前衛が支えきれず、ソックス凶徒が後衛たちに近付けてしまった事である。 いくら舞姫が頑張っても、一人ですべては抑えきれない。 「スキャンしなきゃよかった………」 超脱力してorzな感じになりながら嶺が呟いた。 ソックスフレームの装備するアーティファクトがどういったものか解析しようとして脳をやられたようである。 別の意味で攻撃力があって危険だったらしい。 (……うん……) ぐったりはしつつも投げ出したりしないあたり、流石リベリスタといった処だろうか。 「という訳で、次は貴女の靴下を頂くわ!」 「差し上げませんわよ。コレは私のお気に入りなんですもの!」 やり遂げた感の漂う笑顔の靴下天使に向かって、アガーテは気丈に抵抗した。 「だからこそ、欲しいのよ!」 「絶対差し上げませんわ! やめてください! 手を離してくださいませ!」 「なら、選びなさい! この靴下で何もかも忘れるか、それとも……」 必死で防衛するアガーテに向かって、靴下天使が問い掛ける。 お気に入りを奪われたくない、けれど靴下を顔に当てられるのも…… (いっその事、真顔で「何が楽しいんですの?」とか返した方が、敵さんにショックを与えられるでしょうか……?) 究極の選択にアガーテが思案顔をする一方で。 「一度止まってもらう事はできるじゃろうか? 流石に変えたいしの」 一方を奪われた与市がそう提案した。 「どうせとるならもう片方もとってもらった方が……色々諦めがつくんじゃがの……」 「素晴らしい!」 彼女の言葉にソックスが感嘆したように声を挙げた。 「昔の偉人が言ったそうだ。『右の靴下を奪われたら、左の靴下も差し出しなさい』と。キミの事はこれから、ソックス・メシアと……」 「と言うか最初の足袋をかえしてもらえるとありがたいんじゃが……いつもと感じが違って、元々当たらないものがもっと当たらなくなるし、履物もうまくはけないしでかなり辛いのじゃ」 「何っ!? ……良かろう! この戦いが終わるまでこの靴下、貴様に預けておく! 勘違いするな!? 負けた時に靴下を言い訳にされたくない! それだけだっ!!」 そんなやり取りの後、与市とソックスフレームが再び向かい合った。 ●断罪の天使 「向こうも盛り上がってるわね? そんなに悩むなら味見してみる?」 「……って、靴下って食べ物ですの? いや……あの。ごめんなさい」 (頭が考えることを拒否してきました……) 自己嫌悪するアガーテだが、これは寧ろ常人として正しい反応である。 (で、でも。私もリベリスタの端くれです! こんな状況でも自分をしっかり持って!) 「……でも、ごめんなさい。やっぱり理解できませんわ。怖いです…・・・!!」 そんな2人の足元でもソックスゴーレムたちがワサワサと動き回り、リベリスタ達に纏わりつこうとする。 それらを何とかしようと、舞姫が周囲のゴーレムたちを的確な言葉で挑発した。 何言ったのかは分からないけど、彼女も靴下語とか分かりそうな雰囲気なので、とにかく靴下たちが怒り狂うような発言をしたに違いない。 何しろ靴下たちが、一斉に彼女を取り囲み始めた程である。 結果、他の5人はフリーになった。 そんな時だった。 「別に靴下がお好きなら其れは其れで良いと思うんです」 ―嗚呼されど― シエルは呟いた。 「彼らは靴下を愛するだけでなく、靴下を奪うことに愉悦を見出したのですね」 良いでしょう。 認めましょう、貴方がたの『在り方を』 讃えましょう、靴下という人類の芸術に価値を見出した其の感性を。 「と・こ・ろ・で」 シエルは天使のような笑顔で質問した。 「足袋は貴方がたの靴下の概念に含まれますか?」 あんさー☆ 「是でも否でもギルティ♪」 シエルは変わらず笑顔のまま、語り掛けた。 「貴方がたは一般人を極力傷つけなかったとはいえ……無理やり奪い、ともすれば其処に愉悦を見出したのでしょう?」 彼女の周囲に、明らかに異なる空気が漂い始める。 「なればこそ、裁きの使い(フライダーク)が降臨するのは必然なのですよ……」 シエルは攻防の技術は鍛えていない為、攻撃の精度そのものは高くない。 だが、仲間たちを癒すべく高めた魔力は圧倒的だ。 「狩人を名乗る程のお相手、油断なんて欠片もしません」 周囲の力を吸収し魔力を高めた彼女が、羽ばたきによって生み出した風の渦に、その魔力を注ぎ込む。 「全力全壊で逝きますよ?」 「良かろう! お前の断罪力が勝つか、我らの靴下力が勝つか、勝負だ! ソックス・ジャッジメントよ!!」 微笑むシエルに、ソックスズが言い放つ。 シエルの放つ風の渦と共に、嶺が無数の期の糸を操って、与市も番えた光の矢を無数に分裂させて、フィクサードとゴーレム達を薙ぎ払った。 その攻撃を何とかフレームが凌ぎ、その隙に庇われたエンジェがシエルの靴下を奪おうとする。 もう少しで手が届こうとしたその時、だった。 ゴーレム達に埋もれかけていた舞姫が、およそ表現できないような声を発しながら靴下らを弾き飛ばし、シエルの足袋を確保する。 「あああ……渇いた魂が、シエルニウムで満たされてゆきます……みなぎってきたああああぁぁっ!!!」 クンカクンカハスハスしたのち、舞姫は2人に向き直った。 「無知蒙昧な淫祠邪教の徒に、教えてやろう!」 シエルこそ真理! シエルこそアガペー! 「聖母シエルの愛に包まれ、聖天使シエルのみをただ敬うのだ!!」 ( ゜∀゜)o彡°シエル! シエル! ↑そんな舞姫に2人が気を取られたその一瞬が、いろんな意味での決定打となった。 (一部を除いた)リベリスタ達の攻撃が、フィクサード達に襲い掛かる。 「ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛―――ッ!!!!」 断末魔の悲鳴が、戦いの終わりを告げるように響き渡った。 ●靴下攻防戦、決着 替えの靴下を履く与市の傍らで、シエルは沈痛な面持ちで呟いた。 「人って悲しいです……何故わかりあえないのでしょう?」 「そもそもこんな一般人襲おうとするからこんな風にアークと戦う羽目になるんですよ貴方たち!」 自分とこの若様姫様の靴下とか狙えば良いんじゃないですか!! 嶺がそういった時に愕然とした表情を浮かべた2人は、今は舞姫にボコられている。 『シエル様バンザイ』としか喋れなくなるまで、洗脳……じゃなくて、矯正するのだそうだ。 (ゴッドスピード、靴下の戦士たちよ) 「彼らの道行に幸あらんことを。ゴッドスピード」 そんな2人に言葉を送りながら、ベルカは思った。 息があるならフン縛って、アークに連れ帰って再教育しよう。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|