● 『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)は『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)に何か要望を言えば叶えてくれると思っているらしい。 「美味しいもの食べたいわ」 「え、あ、は、はぁ……」 ということで少女の願いが現実になった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月01日(土)23:41 |
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● 「よう、チビ! おにぎりって好きかぁ?」 「マリアよ。好きよ、食べられるものならなーんでもね」 俊介はマリアの頭を撫でながら、アルミホイルに包まれたオニギリをマリアへ渡した、刹那。 「兄さんだよね?」 「お?」 その声に振り向けば、まるで生き写しのような。 「あら、なぁに? 双子なのぉ?」 彼女の名前は深紅。俊介の双子の妹であり、NDで生き別れた片割れだと言う。だが、当の兄はその時の記憶を完全に手放している。 「ごめんなあ、俺、おまえの記憶一切ねーんだけど、でもこんなにてるなら妹なんだろうな!」 「え、ええ、そ……そうだね。僕と血が繋がっているのは変わりないんだぜ」 シリアスかと思われた空気は一変。軽い口調の俊介は笑い飛ばしながら妹の髪を撫でた。 「名前、なんつーんだっけ?」 「深紅だ。しんくと書いて、みくだ」 「良い名前だな! あー……ちぃが好きそうだ」 思い出すのは楽団戦で死んだ義理の妹の名前。何故俊介には妹系女子が多いのかは疑問だが、さておき。 「そういや、深紅ってフレアバースト打てる?」 「打てるが?」 「あれ燃やしていいぞ、楽しいことが起きる」 「あ、ああ……」 俊介の指の先には……公園の一角に建築用の資材が詰まれていた。 それを積み上げていたのは公園の主である、鷲佑。 再び公園で催しがされているのを見ながら、既に公園に居る鷲佑は持ち込みというよりかは此処で作って此処で披露する、という違った形。 さておき、彼はまず器用に石かまどを作り始めた。 「……まぁお湯を沸かせるくらいのもの、あったっていいだろう。コーヒー紅茶も飲めるしな」 そうだね。持ち込み製のパーティーだったがこれも有りだろう。 お次に食べ物は。 「ロールキャベツだ」 と言った瞬間に、鷲佑の隣にマリアが居た。 「おなかすいた」 「ああ、食べなさい。食べなさい。コラッ、野菜も食べなさい」 ロールキャベツを綺麗にキャベツだけ外して中身を食べるマリアだった。そこに。 「よっ! マリア、うちの妹が楽しそうにお菓子作っていたぜ」 「後で会いに行くわよ」 夏栖斗が声をかけた。物色した食べ物を両手に抱えた彼は、キャベツを毟るマリアの目の前で容赦なくもぐもぐ。 「随分集めたわね、マリアも食べたい。ちょーだい!!」 「駄目駄目! 自分で行って貰ってきたほうが、皆喜ぶと思うぜ!」 ところで。司馬邸を燃やそうとする輩が居るようですが。 「司馬さんち燃やすの? おっけー! 焔腕でガンガン燃やすよ!」 「コラアアアア!!! せめて家だけはああああ!!」 可哀想なので、今日の所は止めておいてあげよう。 と、思っただろう? もう既に資材の方が燃えているから。手遅れらしい。 「マリアが燃やされる前に、燃やしておいたわ」 「小娘ェ!!」 「まあまあ、もう、燃えるのはわかってたことなんだから。諦めるしかないよ!うん」 夏栖斗は今日も平和だな!と晴天の空を見上げながら、石かまどでスルメを焼くのだった。 お嬢から借りたテキ屋セット。快は上手に組み立てて、鉄板を操る。それを見ていた杏里。 「器用ですねぇ、快さん」 「大勢集まったし、沢山作れる方がいいだろ?」 「はいー、それはとってもいい考えかと思いますよ!」 鉄板で作れるものと言えば焼きそば。 「豚カス入れて、富士宮風!!」 お好み焼き。 「山芋たっぷり系のふわふわだよ!!」 焼肉に、フランクフルトもあるよ!! 「あらびきフランク! ケチャップと、粒マスタードも用意した! 冷えたビールと一緒にどうだい!」 お腹すいている時にそんな単語を聞いたら、涎が止まらないじゃないですか。料理に合わせて器具を使いこなす快の姿は見事と言える。 だがここで、マリアが一言。 「ステーキ食べたいわ」 「す、ステーキ!? いや、出来なくは無い!!」 流石だ新田快。痒い所に手が届く!! もはや鉄板の上は、食欲を刺激する宝物庫。 そして誰かが言うのだろう。 「たこ焼きは?」 「俺にだって……作れないものくらい、ある……」 資材が焼けて公園の角で足を折って震えている鷲佑の隣に、快が足を折って着席。どんよりとした空気を産んでいた。ど、どんまい。 嶺と義衛郎は一緒にオムライスを作る予定。器具は義衛郎が持ち込んで、そうすれば公園でも作れるから。 嶺はバターライスを、義衛郎はハンバーグを。 おっと、オムライスを作るのに、ハンバーグなのかと思っただろうが、後々のお楽しみ。 「義衛郎さん、こちらの準備は大丈夫ですよ」 「ああ、じゃあ盛り付けておいて下さい。こちらもすぐにできますので」 息の合った二人の作業は丁寧なもの。 バターライス、ハンバーグ、パプリカや卵を上手に盛り付けていけば。 「はい、テディベアっぽいオムライスです」 ということになるらしい。 「すごーい!! マリア、これ食べる! 食べるわ!!」 これにはマリアも大喜び。キャッキャ、と声を出しながら嶺と義衛郎の周りを飛び続けていた。 雷音が作ったのは色とりどりのマカロンツリーだ。 「どうかな?」 「きゃっ! 綺麗ね、綺麗よ雷音!」 「喜んでもらえると嬉しいのだ」 流石店を切り盛りする少女と言った所だろう。 色んな思いこめて丁寧に作り上げた五色の塔を、マリアは目で楽しんでいた。 「マリア、君にプレゼントだ。気に入ってもらえたら嬉しい」 目の前でアイシングにより一層美しく彩られていくそれを、マリアは目を輝かせて喜んだ。 ひとつ、マカロンをつまんではそのまま口へと運んだ。お菓子は幸せを運ぶのだと、甘い世界はすぐに口の中を満たしてくれる。 「雷音、これすっごく美味しいわ! ……そうね、よかったら一緒に食べましょう?」 「こういう場所でも甘いものは食いとうござるよな!分かるでござるよ!」 「あら? 虎鐵もこういうの好きなのぉ? 意外ねぇ」 ガスコンロのホットプレートを温めているのは虎鐵。良い感じに温まってきたそこにホットケーキの素を入れ綺麗に円を作った。 「器用ね」 「そうでござるか?」 赤い瞳がホットプレートの上の円をじっと見ている中、虎鐵の手際の良い腕は焼けたホットケーキにバターを乗せ、カットしたバナナを乗せ、最後に蜂蜜をかけて完成! 「雷音の為に磨いた腕を…今こそ解放させる時でござる!」 「できたでござる!ホットケーキでござるよ!マリア召し上がれでござる」 と言った次の瞬間にはホットケーキは無くなっていた。 「もごもご、んむ! んむぐふぐぐぐぶぶ!!」 「マリア、口の中のものを飲み込んでから言うでござるよ」 おそらく美味しいからもう一枚焼けと命令しているのだろう。虎鐵は苦笑いを決めながら次を焼く作業にかかった。 ● リュミエールは個性的な料理を作って来た。 というのも、卵の中がチキンライスではなく、ホワイトソースを使った一品。 マリアは見た目、いや、性格からして野菜は嫌いそうだと考察してのアレンジだ。確かに彼女は野菜嫌いだろうね……。 といえども、ジャガイモは入れる。うむ、ジャガイモは野菜の中でも嫌われていない部類に入るだろう。 「オムライスぅぅ!!! 食べていいのかしら?」 「クエ」←命令 卵を割れば、チーズが蕩ける。まさに子供を喜ばすにはもってこいなのだろう。 慧架は慧架らしいものを。紅茶のシフォンとミルクティー。茶葉は紅茶館の店主オリジナルブレンドだ。 まさにプレミアムと呼んでもいいだろう、それ。マリアの目を輝かせるには十分だ。 「素敵ね、素敵よ慧架。ほめてやってもいいわ」 「ふふ、ありがとうございます。そういえば、以前にもこうやってお菓子をあげましたね」 「そういえばそうね。またくれてもいいわよ」 威張って言うマリアに慧架はやさしく微笑んだ。 そうだ、自コーポの服を着せたらきっとかわいいだろうな……と思いながら。 多種多彩な料理を目にして、かつマリアの反応を見てメモを取る組長。椿。 やはりマリアはお子様向けの料理に目が行くらしく、思考は年齢相応と見える。 ふと、椿は大空を見上げて言う。 「マリアさんは和食好きやろか……うちは本来和食の方が得意やし」 「案ずるがよりヤってみるがよさじ」 「マリアさん、それ間違ってるでっておわー!!」 椿を見かけて、近づいたマリアは意味深な言葉を言いながら椿の服を引っ張った。 「基本なんでも食べるわよ。愛情込めて作ったものなら尚更食べないわけにはいかないわ」 「マリアさん……! 見ない間に成長したんやな!!」 「って、料理番組で言ってたわ」 もしかして美味しいもの食べたいって言ったのはその番組のせいなのかと椿は真相を知りながらも、こうして多くの人が料理を娘に振舞っているのを見ると、なんだか申し訳ない気持ちになるのだった。マリアはそんな椿の料理が好きだと思うよ。 「ベッルさーん! 一緒にお菓子食べましょう!」 「亘。会うたびにテンションが高くなっていくわね」 亘はマリアを捕まえて、日よけ対策のパラソルの下へと誘導。六月の紫外線もなめたもんじゃないからね。 そしてそこには。 o o (´(ᴥ)`) ↑こんな形のケーキを紅茶と添えて。 「テディ!!!」 「なんと言われようとクマさんのケーキです!」 どうみてケーキ!! 解ってるよ、ちゃんと伝わってるよ。ベースはココアスポンジに飾り付けした、手の込んだ一品。 きちんと愛情も入っていて、マリアを思う亘の気持ち、よく解った。 「テディ……崩すのがもったいないわ!! だめ、マリアにはできない」 「でも食べて下さい! 食べてくほしいってクマさんも言ってます!!」 ならばと一口。 「……お、お、おいし……まあ普通ね!!」 「美味しいんですね、解りました」 素直じゃないマリアは美味しいといいかけて意地を張ったとか。でもその顔は満面の笑みだから。つい写真撮っちゃうんだぜ、ハイチーズ! 「マリア君か、部長が可愛がっていたな」 「部長……部長? ああ、椿のことかしら?」 守夜はそうそうと、にこりと笑ってマリアにタッパを渡した。 開けてみれば、とてもいい香り――これは、ラーメン? 「その名もとんこつチャーハン!」 作り方は簡単。市販のカップラーメンのスープでご飯を炊いて、炒めてチャーハンにしたもの。 なにそれ普通に美味しそう。カロリーなんて気にしたら負け。 「好きかもだわ。やるわね、守夜。よろしくしてやるわ」 「そうか? 喜んでもらえてなによりだ!」 ● 「シンヤの配下時代、何食べてたのかな? マリアって」 「いろいろよ」 「うん、その色々を……」 「色々! シンヤ様! キャッキャ!!」 話が続かないので次に行こう。悠里は気を取り直してお刺身をマリアの前に出した。 「人肉?」 「ああ、全然違うね。これはお刺身といって……」 しばらく悠里はマリアに、お刺身とは?を語る。 という事で、マリアはわさびは苦手そうなので、わさびが溶かしてあるものと、溶かしてない二つの醤油を用意した悠里。気が利く。 子供はどうしてか、わさびのツーン!という感覚が苦手な子が多い。結果的にはマリアもだめだったようだが。 「でもおしゃしみ美味しいわ、いっぱいたべたいわ。サーモン好きよ」 「お刺身ね。気に入ったのなら今度はお寿司でも食べに行ってみる?」 勿論、杏里も連れて。 「お外連れてってくれるのー!!!? 行くわ!!!! 悠里だーいすき!!!」 食いつきが良すぎたマリア。彼女と寿司屋に行くのはリードの無い猛犬を手懐けるくらいに大変なものかもしれない。 ガキの我侭か、と火車はため息を吐いた。だがたまにはこんなのも良いだろうと、周囲の食べ物を物色しつつ。 しかしだ。いつも貰ってばかりというのもなんだかアレ。ならばと此方も、稀なギブ&テイクをひとつしようじゃないか。 火車が用意したのは、バニラアイスの素達と、それを入れる缶と、冷やす氷と云々かんぬん。 素を缶に入れ、氷と塩を入れたビニールに放って。いざ。 「うおぉぉおりゃあああ!!!!」 火車、それを一気に振り回し始めた。覇界闘士の鍛え上げられた腕が、回る回る回る回る。 肩関節とか、血とか諸々心配な程に回る腕。 「キャハハハハハ!! 火車、火車ー!! すごいすごーい!!」 「おぉおおおぉ……!!!!」 マリア、大喜び。 ――十二分後。 「ど、うだ……立派な、バニラ、アイ……スだっ!!」 「火車さんしっかりー!!?」 「暇なら……オマエ等もやって……み」 息切れ切れ。杏里が慌てふためく中で、マリアは火車の作ったものを食べていたとか。 「レイラインは何を作るのかしら?」 「もやし炒めなのじゃ! だがただのもやし炒めでは無いのじゃー」 マリアの問いかけにレイラインはもやしのひげと芽を取りながら、笑顔でそう言った。 彼女曰く、ひげと芽を除けば見た目も良くなり、なおかつ食感も良くなるという。成るほど。 「ちなみにこれを如意棒に見立てて『如意菜』(ルーイーツァイ)と言うらしいぞよ」 「るー?」 「マリアも一緒にぷちぷちしてみるかえ? 手間隙掛けて作った料理は格別じゃよ」 「じゃあ葬送曲で手伝うわ」 「できれば普通がいいのじゃー」 あそこで燃えている資材があるから、そこで仕上げをしようとレイラインはマリアの手を握って歩き出した。 ● 「マリアは杏里を下僕か何かだと思っているようね」 「下僕になった覚えは無いのですが……」 ――少女思考中。 「間違ってはいないかしら?」 「ええ!? 氷璃様ぁぁ、そこをなんとかぁぁ!!」 杏里の慌てる姿を見ながら、氷璃は笑う。容赦ないところがいいよ。さてはて、彼女が持ち込んだのはフランスの伝統的なお菓子『フラン』。 味は硬めのプリンと言った所だが、プリンより濃厚だとか。 「さあ、マリア。召し上がれ」 といった傍から、既にマリアのフランは無い無いしていた。 「早いわね。もう少し味わって食べても損は無いわよ」 「あら、そう? なら……もっと頂戴!!」 「これだけ食べたら当分、おやつは要らないわね、マリア?」 その氷璃の言葉に、顔を横にぶんぶんと振るいまくるマリアであった。 ロッテが持ってきたのは彼女のおばーちゃんのお弁当。中身は卵焼きからタコさんウィンナーにほうれん草のおひたしと、母の味を感じるものばかり。 杏里を捕まえて、その腕を引っ張って連衡。ブルーシートに座らせて。 「おべんと食べるのです! くえ!」 そう言いながら、ロッテは卵焼きを杏里の口に押し込んでいった。 「お、おおいしい……ですよ! ロッテさん。甘い卵焼き、杏里も好きです!」 「ほんとですか! 良かったのですぅ、良かったらタコさんもくえ!!」 しばらくひとつのお弁当をつつきあった二人であった。 そういえば、と始まった話題は先日のエレベーターの件。あれは色々大変だったねと二人は遠い先を虚ろな目で見ていた。 するとロッテは杏里を両手をぎゅっと握る。 「杏里様、わたしたち、会ったときからすでにお友達なのです!」 今日の日のように、沢山遊んで。もはや親友というものに辿り着いていた。 「ロッテさぁん……!」 うるうるとした瞳をした杏里。杏里こそ憧れのリベリスタにそこまで言ってもらえて、きっとこれ以上無い嬉しさを感じたに違いない。 「よぉ、マリア。相変わらずワガママ放題だな」 「あら? なんか変わったかしら? 幻聴が聞こえたわ」 「マリアの呼び方はもうジョーチャンは良いだろ。しらねー仲でもねぇ」 瀬恋はマリアの横に座り、マリアが持っていたおにぎりを一つ貰っては食べ始めた。 「瀬恋は作ってこなかったのかしら?」 「アタシのメシが食いたかったら金払え」 「やーだ! いつかタダ飯を食らい尽くしに行ってやるわ!」 善人では無いからこういう会で善良な市民をすることは無い瀬恋。ならばとマリアは此方も悪っぽくと意地を張る。 そんなことはどうでも良くて。おにぎりを食い終わった瀬恋はすくっと立ち上がり、マリアの頭を撫で回す。 「美味そうなもん食いに行くぞ、マリア」 「やぁぁぁ、んもう、瀬恋はいつだっていきなりなんだからー」 走っていく瀬恋の後を追うマリア。どことなく姉妹の様な関係になりつつある二人であった。 「マリア様、杏里様」 「きゃ!」 「あらあら」 まおは、もぞもぞと廃車の下から顔を覗かせた。 そのまま二人に手を伸ばして、そこにあったのはちょっと前までアイスであったシェイク(笑)。 「マリア様の火で若干アレンジが加わりましたが、冷たいものをどうぞ」 今、暑いもんね。気温じゃない方で暑いもんね。 「ありがとうございます、まおさん。良かったら一緒に食べませんか?」 「まおは、危ないことしている人をめっ、としてきます」 「それはそれは……頼もしい方がいらっしゃいましたね」 杏里はまおに笑顔を向けて、マリアはマリアで既にシェイクを飲み干していた。 一番すごいものって何だろう。インパクトか、それとも基礎的に味か。 考え抜いた彼、殺人鬼君――え、殺人鬼って料理するんですか。 「葬識さんは、何処の山から帰ってきた途中なんですか?」 「えー内緒☆ 企業秘密ってやつ!」 杏里が見下ろす彼の右手には、立派な七面鳥がぶら下がっていた。 「七面鳥をきゅっと首きりするのって楽しいよね」 「は、はぁ、楽しいものなのですね」 「断末魔の鳴き声はここちーんだよね。人に限らず。命の最後の輝きだと俺様ちゃんはおもってるんだよ。だから命は大事にしないとだめだよね」 饒舌な葬識だったが、杏里には解らない世界がそこにはあった。 かくして、七面鳥は生きたまま首を切り落とされ、羽を毟られ、解体され(以下略)。 その光景に杏里はマリアを盾にして怯えていたが、マリアは超大喜びしていた。 という訳で、焼きたてターキー。火はどこの物かなんてもう説明はいいよね。 「いっぱい食べて大きい子になるんだー」 「キャハハハハハハ!!」 「嗚呼、動物の世界はなんて無慈悲なんでしょうか……」 ● 色々な料理があるが、基本に戻ることは大切。 禅次郎はミルキークィーンという米に、もち米をブレンドしたものを、更に手間隙かけて炊き上げる。 それを天日塩で、潰さず柔らかく、ふわりと握って――。 を、繰り返して、数十個。もしかしたら三桁いくかもしれないくらいに握っているような気がする。 「禅次郎さんのおにぎり、杏里好きですよ」 「そう? ありがとう。これぞ日本人の原点だよね。で、あと何個作ればいいかな」 「さ、さあ……」 杏里は禅次郎の隣で作業を見続けた。 外で食べる料理の味は、いつもと違った味に感じるのは何故だろうか。だがそれも幸せなひと時であることに変わりない。 晃は先日の依頼でマリアにお世話になった縁がてら、オムライスを彼女にご馳走していた。 「この前はありがとうだ」 「んー、マリア楽しかった!」 定番のチキンライスに、半熟のオムレツを乗せて。半分で卵を割れば、綺麗に蕩ける黄色の光。 そしてオムライスにケチャップと言えばこれ。 「仕上げはケチャップだが、なんか文字でも書くか?」 「マリアねー、シンヤ様ってケチャップで書くー」 「ちょっと書ききれるかわかんないな……」 生佐目は持ち込んだ器具でホットケーキを焼いていた。 ホットプレートの上にできる綺麗な円。それをひっくりかえしつつ、狐色になったらできあがり。 これくらいなら殺人料理の生み手にも簡単な一品だ。 「食べませんか? ちょうどできたところなんです」 「いいんですか? 好きですよ、ホットケーキ。美味しいですよね」 にっこりと笑った杏里と一緒に、生佐目はまたホットプレートに丸を作った。 「それはマリアさんの分にしましょうか、生佐目さん」 「了解ですよ」 「カップラーメンセットなのですっ」 「お湯を入れて、数分でできるという、あれね!」 「そうなのです。あれですぅ!」 テテロはマリアの横で、カップやきそばにお湯を入れていた。 それを二人で、穴でもあくんじゃないかというくらいまで見つめながら、三分。 「おゆをすてて、すぐにたべられるのです、まりあちゃんはきっとたべたことないとおもったので、あげるのです」 「あら、ありがとう、褒めてやるわ」 カップメンって何故かすごいいい香りするよね。その香りにつられて、テテロのお腹もぐーっと鳴るのであった。 「一人より二人でたべるのが美味しいわ」 「じゃあ、ミミミルノはカップラーメンたべるのですぅ、たまごおとしてからたべるのです!」 「さて、一品物は他の者に任せておいて、わしは甘味でも」 魅ヶ利は甘味を物色していた。 「美味しいですよね、杏里も好きです」 「そうじゃな、甘味は何かあったじゃろうか?」 「ああ、さっき悠月さんが葛餅を配っていましたよ」 杏里の言葉を聴いて、魅ヶ利は速攻で公園の奥へと走っていった。 「調理場がございましたら温かい物をご用意できたのですが……残念でございますね」 リコルは苦笑いしながら、困った顔をする。調理場あるけど、色々すごい事になってるからね。 だがリコルは変わりにティラミスを用意してきた。日本人もその甘さはやみつきになるとか。 「リコルは料理上手なのね、マリア今度食べに行きたいわ」 ティラミスをほお張るマリアは上機嫌に言う。 ティラミスの柔らかな甘さと香り高いエスプレッソが気に入ったようだ。ほろ苦さのある甘さを少女が理解できているのはかさておいて。 「まだ沢山ありますからね、さあ、どうぞお召し上がり下さいませ」 「マリア、ぜーんぶたべたーい!!」 ルナはフュリエらしく、ラ・ル・カーナのフルーツを使ったケーキを持ってきた。 あそこは自然でいっぱいだしね、きっとフルーツとか人間には味わったことないくらい素敵な味がするものが多いように思える。 「ルナさん、凄いですね。わざわざ故郷に戻ってまでの手間隙が嬉しいです」 「お姉ちゃんだからね! これくらい皆のためなら!」 杏里が舞い上がっている手前、ルナはそういえばと奥の廃車の更に奥を見た。 「また焚き火……?」 「そこはつっこまないであげてください」 「そ、そうだね……コホン。杏里ちゃん! マリアちゃん! 言われた通り作ってきたよ」 「ケーキよ! ケーキたべたいわ!」 今日は楽しいパーティーになるといいね。 ルナはにっこり笑って、餌を求めて飛びついてきたマリアの頭を撫でた。 ● 「辛いわっ」 「あーあまりからいのはだめデシタカ」 ルシュディーは口を押さえるマリアに苦笑いしながら言う。どうやら子供の舌に、香辛料は刺激が強すぎたか。 「あ! まだまだ子供って言いたいのね! マリア、レディーだもん、これくらい食べれるもん!」 意地張る彼女は、また一口。 辛いと言いながらも完食を地道に目指す姿をルシュディーは見ていた。 「辛さを耐えると、美味しさが見えてくるかなぁって」 「耐えるもん、耐えてるもん」 アンナはヴァイスヴルスト……此方の言葉でソーセージを作ってきた。 「ヴぁい?」 「ヴァイスヴルスト。新鮮だから、早く食べないと劣化しておいしさが逃げてしまうよ?」 アンナは目の前のマリアにそう言うと、刹那、マリアはもぐもぐ食べ始めた。 「冷めちゃうっていう理由もあるけどね。折角なら全部美味しいうちに食べてほしいだろう?」 「うん、そうね、マリア全部食べるもー!」 アンナはマリア以外にも、ソーセージくわねえか?と薦め始める。並べるソーセージは。 「ヴルストとヴルストとヴルストと、それからヴルストだ」 「アンナさんそれ全部ヴルストです」 杏里はツッコミをいれながら、苦笑い。 「あははは、だいじょうぶ、味の保障するよ。味見したもの」 「はいー! アンナさん、今度は杏里のために料理作って下さいね! 美味しいです」 杏里はこういうのが好きらしく絶賛していた。 終がマリアのために持ってきたのはスティック型のケーキ。味は四種類と、色も様々。 「同じサイズに切り分けるの超大変だった!」 「頑張ったわね、ほめてやってもいいわよ」 と、普通に終わる終では無い。終だけに。 終は器用にそのケーキを積み上げていく――そう、これはよく遊んだジェンガというものか! それを! ケーキで! やってみました!(良い子は真似しないでね☆) マリアは頭を斜めにして、ハテナマークが浮かんでいたが、終の懇切丁寧な説明に納得。 「じゃあ負けちゃ駄目ね」 「そうそう!! 崩した人には残りを、全部食べてもらうよ!」 という終の言葉に、真っ先に崩しにかかったのはマリアだった。全部食べたいらしいよ。 少女は美味しいものを所望である。立ち上がったのは、彼、竜一。 「わかってる! お兄ちゃんに任せておけ」 だからいつから兄なんだとツッコミはさておき。マリアと杏里は甘いものが好きと確信している竜一はお菓子作りをするのだった。 いつも料理しなさそうな彼だが、作ったのは意外にも意外。フルーツタルト。それも旬の果物をふんだんに使った、これこそ至高の一品。 「えっ、竜一さん凄いじゃあないですか! これ本当に美味しそうです」 「キャハハ! マリア、全部食べたいっ」 「うむうむ、二人とも、お兄ちゃんの愛情たっぷりだよ!」 杏里とマリアも思わず唸った。さあ、食べようか……切って自分で食べ……ると思わせておいて、竜一がフォークにタルトを乗せて杏里の口元へ近づけた。 「えっ、えっ!?」←顔真っ赤 まさかの「あーん」である。だが、受けない杏里では無い。まるで恋人の様で某ノーマルレディに悪い気がしてきたが、食べればやっぱり美味しくて。 「どうだい、おいしいかい」 「はいっ! 凄く素敵な味です、持ち帰りたい……」 「キャハハハ! 美味しい、甘いわっ、竜一流石ね!」 杏里とマリアが感想を述べる中、竜一の両手は二人の頭を撫でていた。 ● 「マリア、――杏里さんも」 日が傾いてきた、そんな時刻。悠月は二人を呼び止めた。 「こんなもの用意してみました。よろしければどうぞ」 このような会を開いた二人に、一番最初に渡すのは悠月が作った葛餅。今の時期ぴったりだよね、好評価! 「杏里。なぁに、これー」 「葛餅、ですよ。マリアさん」 「もしかしてマリア、食べたこと無かったのですね……」 マリアの食生活は一体どうなっていたのかはさておいて、マリアはその葛餅が気に入ったのか、入れ食い状態で食べ始めた。 「ゆふふひおひいいはよ!!」 「はいはい、まだありますのでゆっくり食べてくださいね」 「まきのん、そろそろマリアにも我慢とか覚えさせた方が良くないか?」 と、ツァインが杏里の耳に。 「そうですね……でも杏里はしがないフォーチュナなので勝てるかと言ったら勝てませんで手こずってます」 という本音。 甘やかすのもいけない事だが、躾は必要なのは確か。やってくれるPCさん募集しちゃうよ! それはおいておき。 「マリア、おにぎり作ってみないかー?」 「にぎり、もらった!!」 「違う違う、マリアが作るんだよ。やってみたら楽しいかもよ? それにお前が作ったものなら皆喜ぶし」 「ほんと? なら作るわ、教えなさい」 まずはちょっとした料理の方法から。此処からいろんなものを覚えて吸収してもらえればとツァインは思う。 エプロンつけて、三角巾姿の三人。あら可愛い、似合うよねこういう姿、まきのん。 「塩水に手ぇ付けてな、ご飯握……」 ツァインの前に出されたマリアの手は泥んこだらけ。うん、まずそこからかと微笑ましい光景だった。 リリィはカボチャの冷製スープを作ってきた。なんて家庭的。 作り方は焚き火と、フィアキィを惜しみなく使って豪快なものだったが。 「杏里、味見をお願い」 「私でいいんですか?」 「うん。ボクは、マリアの好みを知らないから、教えてほしいの」 「そういうことでしたら!」 リベリスタの頼みごとをされ、張り切る杏里。きっとマリアは甘いものならなんでも好きだよと、助言。 一緒に話をしながら、話題は広がる。 「アンリはどんな料理が好き? ニホンは色んな料理があって、楽しい。アンリの好きな物も知りたいな」 「日本のでは無くなってしまいますが、私は中華が好きですよ。リリィさんは食べたことありますか?」 今度一緒に作ろうか。そんな約束をしながら二人の仲は近づいていくと良い。 みんなで作る料理は楽しいもの。 「初めまして、私は花喰。先日三高平に来たばかりなの。よろしくね」 マリアに挨拶した珠々璃。マリアもマリアでよろしくしてやるわ、と言いながら珠々璃の持っている野菜チップスを見ていた。 「これが気になるのかな?」 「えぇ」 それは珠々璃が美味しいものを食べたいとワガママを言うマリアのために作ってきたもの。 マリアは非常に活発で、一つの場所に収まる子ではない。だからこそ移動しながら食べれるものを選んだ彼女。 素材は田舎のおばあちゃんが育てたもので、毎年送られてくるとか。 一人で食べきれない量だからこそ、こんな催し物で消化できるのは、杏里とマリアに感謝であった。 野菜嫌いなマリアもこれは食べれるようで、パリパリ食べながらその眼前で珠々璃はダンボールをひとつ。 「家にまだまだあるのよ……」 どうやら野菜チップの大群。これは全員に配れそうだと杏里は心底驚いていた。 そんなこんなで一日は終わる。 マリア食べすぎじゃないかって? 女の子の腹は別腹が沢山あるから大丈夫。 今日はいっぱいたべて、また明日からの戦い、頑張りましょう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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