●この世界を愛で救うために 駅前の大通りの向こうから5人の女子高生が歩いてくる。その姿を見た人々は一斉に彼女達から距離を置いて逃げ出そうとした。突然、辺りに大きな混乱が起きる。 女子高生たちは一見してどこにでもいる普通の女の子だった。強いて言えば5人ともそこらのアイドルよりも可愛かった。最初はその容姿に見惚れる者もいたほどだ。 だが、決定的に彼女達は他の女子高生とは違う点があった。 「それじゃ、みんないくよっ! この世界を愛で救うために!」 赤い制服を纏ったリーダーのアカネが仲間に向かって叫ぶと、彼女達は武器を構えて辺り一面に銃撃を食らわした。 ズダダダダダダダアダダダアダ 「ぎゃああああああああ――」 機関銃をぶっ放す音が辺りの空気を切り裂く。それと同じくして歩行者の阿鼻叫喚が現場でこだました。 「そこのヲタクたち! 恋愛をしなさい! あんたたち見てるとムカツクの!」 紫の制服を着たユイが怒鳴った。ヲタクや腐女子と思しき身なりの人たちに向かって手りゅう弾を投げつける。 ズドン! ズドオオオオン! 爆発によって幾人もの人たちが辺りに吹き飛ばされた。 瞬く間に夕方の駅前通りは5人の少女たちによって、激戦の戦場と化してしまった。彼女達はまさしく武装した乙女戦士たちだった。 「ほらほらそこどいて! これで引き殺してあげるわ!」 そのとき、武装した装甲戦車が現れた。黄色の制服をきたマナカが蓋から顔を出して威嚇する。大砲がネットカフェに照準を定めて地面ごとふっ飛ばした。 ドドドオオオン! 「どうしてあなたたちは恋愛をしないの? 2次元に引き籠っていつもネットの画面に張り付いてばかりで。周りを見回せばこんなに素敵な人たちがいるのに。恋をしないせいでこの世界は人口がどんどん減っていく」 ピンクの制服をまとったアイリが祈りを込めて歌う。すると、死んだはずのヲタクや腐女子たちがさながらゾンビのように動き出した。歩行者と目がった瞬間、まるで一目ぼれをしたかのようにその者に向かって飛びかかっていく。 「私たちがこの世界で恋愛革命をおこしてあげるわ。みんな尋常に恋をしなさい!」 緑の制服を着たノゾミが双剣のブレードを持って高からかに宣言した。 ●甘くて毒を含んだ禁断の果実 「恋は爆弾に似ている。恋は一度発火すれば誰にも止められない。のめり込めばのめりこむほど対象に中毒を引き起こす。やがて身体は恋の起爆装置によって身も心も滅ばされてしまう。それでも人は――いやこの世界はだからこそ、LOVEを求めるのだ。アダムとエヴァの時代からフォーエヴアーラブ。それは甘くて毒を含んだ禁断の果実のように」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)がアンニュイな表情で額に手を当てながら物思いにふけっていた。そして集まったリベリスタたちをまえにようやく目を開けた。 「東京のヲタクが集まる聖地に、アザーバイドの武装した5人の女子高生が現れた。彼女達は通りかかりのヲタや腐女子たちをジェノサイド。死んだやつらもE・アンデッドになって襲ってくる。このままではさらに恋のサクリファイスが増える一方だ。はやく彼女達のラヴレヴォリューションを止めてきてくれ」 NOBUがようやく事件を手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。そもそも彼女達はどうしてこの世界で恋愛革命を起こそうという妄想を企んだのだろうか。 「パラレルワールドからやってきた彼女達の元の世界では、高校生になると恋愛をすることが義務付けられている。異性のペアが恋人届を役所に提出しないと、法律で罰せられるシステムになっているんだ。だから彼女達の世界では恋をすること、イコール戦争だ。互いに好きな男を得るために文字通り力づくで奪いあう」 女子高生たちは向こうの世界でひどい失恋をしてしまった。それでいてもたってもいられなくって偶然見つけたD・ホールを通って逃げてきたらしい。 彼女達の頭の中には恋愛をしないという考えは成り立たないという。だからこの世界にやってきて恋愛をしないという無気力な若者を見て激怒した。そこには自分達が恋愛に失敗したという恨みの感情も当然入っている。 「駅裏の空き地にD・ホールが存在している。可能なら彼女たちを説得して元の世界に送り返したいが――難しいかもしれない。その場合は彼女たちを倒すことになるだろう。彼女達は武装しているがそれ以外は、どこにでもいる普通の女子高生だ。まだ感情に制御がつかない不安定なところがある。もし不用意な言動を取れば、たちまち彼女達は激怒して更なるサクリファイスを増やすだけだろう。くれぐれも彼女達の心情は慎重に扱ってくれ。愛のリベリスタ戦士として、暴走した恋のジャンヌダルク達を止めてくるんだ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月22日(月)23:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ハーイ! 愛のリベリスタ戦士だよ! 東京のヲタクの聖地はひどい戦場と化していた。砲弾によって店は潰され、逃げ惑うヲタクや腐女子たちは女子高生戦士たちによって狙い撃ちにされた。 混乱と阿鼻叫喚に巻き込まれた人たちは一斉に助けを求める。そのとき、ド派手な別の集団が駅の向こうから現れた。一見してヲタクっぽい彼女らは危険を顧みず、女子高生が戦っている前線へと駆けつける。紛れもなく彼女らはリベリスタという名のヒーロだ。 「プリティ! キューティー! リベリルル!! 魔法のラブリーエンジェル・プリンセス☆MAI! あなたのハートをロックオンしちゃうゾ☆」 腕を胸の前で回転させながらド派手なポージングで、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫BNE000932)は、ドヤ顔のチェキ☆を決めた。あまりに突然の舞姫の登場に、闘っていた女子高生たちは唖然と口を開けた。 「同じくとらちゃん☆! 2次元嫁のためなら金に糸目をつけず、日本の経済をまわすオタク様や腐女子さん達に、何たる狼藉だJK!」 『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)は、あまりに面積の少ないえっちぃなマーメイドの水着をつけていた。大事な部分が申し分け程度に隠れている程度。仰け反って胸を協調する悩殺セクシーポーズを決めつける。 いったいこの二人はなにをやっているのか。一瞬、女子高生たちはそれが自分たちに向けられた宣戦布告だということに気が付かなかった。 「ごきげんよう! LOVEテロリスト海依音ちゃんに、じゅうはっさい! 絶対領域にミニスカニーソ――き~くやしいっ! 絶対領域だけにぜったい許しません」 さりげなくサバを読んだ『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)のギャグはあまりに寒かった。本当は28歳。アラサーで彼氏もいず負け組。だが、露出は少ないものの、ソックスにガーターベルトと年齢に似合わず頑張ってはいた。実はその下は履いていないという噂もあるが、真偽の程は定かではない。 「そらせん、だって負けてないんだからっ。同じく28歳、独身彼氏なし! 私だってね、好きで年齢=彼氏いない歴やってるわけじゃないのよ?」 『マグミラージュ』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)が、海依音に対抗して名乗りをあげる。もはや彼女に至っては何を競っているのかわからなかった。だが、その姿は年齢にあわず可愛らしく実に小学生に近かった。 「ハーイ! へーベルだよ!! 女子高生さんよろしくね。というか、殺しちゃったらどっちにしろ人口減っちゃうよ!」 元気一杯に『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)が、手を上げて返事をした。ついに本物の小学生の登場に女子高生も目を疑った。 「義弘……25歳だ。残念だったな。俺にはすでに愛すべき人がいる。説得か、普通に戦うよりは難しいが、諦めるわけにはいかない」 カッコつけて言った『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)のその姿は、だが彼女がいるようには到底見えなかった。チェックのネルシャツをダボダボジーンズにイン。バンダナ、リュックにスニーカー、伊達メガネスタイル。まさしくその姿はザ・ヲタク。この姿だけは祥子に絶対に見せられない、と内心汗を掻いていた。 「カメリアだよ。海依音さんと違って本当に履いてないよ! フュリエだし。もしよかったら恋愛とやら教えてほしいかな。恋愛ってこう、良くわからないし」 カメリア・アルブス(BNE004402)の狩猟スタイルもこちらの世界では十分すぎるほど目立っていた。おまけにガングロ。何のコスプレか見る者を困惑させる。恋愛がわからないというはじらいを見せるが、台詞通り履いていないため、その言葉にはまったく説得力がない。 「わたしは浅雛淑子と申します。よろしくね。やさしい恋物語しか知らないけれど、恋は戦争。そういうものなのかしら?」 『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)が穏やかな口調で名乗った。今回一番まともなのは淑子であると言っても過言ではなかった。だが、その可憐な容姿には似合わず大戦斧を持っている。笑顔が逆に怖かった。 「タダ者じゃないわね。新手のヘンタイかなにか……。いいわ、邪魔するやつなら何だって恋愛革命の餌食にしてあげる。どうせアンタたちモテないんでしょ」 赤のリーダであるアカネがようやく我に返った。見た目の奇抜さで気を引くことに成功した。どうやら思いっきり勘違いされているようだが―― ●恋ならしてるよ、ジュリエット☆ 女子高生が近づいてくる隙を伺って、とらは辺りに強結界を張り巡らせる。つづいてカメリアはエル・ファーストブーストで力を溜める。その間に海依音は皆に翼の加護を施して支援をした。それぞれが目的の敵に向かって散らばっていく。 「大丈夫、いますぐ逃げれば絶対にだいじょうぶよ」 淑子が魔眼を使用して笑顔で語りかける。とつぜん現れた戦場の天使に、傷ついた人々は素直に従った。ソラとへーベルも「こっちは危ないから早く逃げよう?」と淑子を手伝って避難誘導する。 皆がそれぞれの敵を抑えに向かったのを見てとらも陣地作成を開始する。 「恋ならしてるよ、ジュリエット☆ 彼らの慟哭のソウルが聞こえない? 死んでしまったあの人達は、もう来週から(アニメ放映で)嫁に会えないっ! 人の恋路を踏みにじる悪のJKは、オタクのエンジェルとらちゃんが、嫁に代わって成敗よ♪」 間に割り込んだ緑のノゾミに対して挑発の言葉を投げつける。 「アンタ――もう人間として終わってるわね」 ノゾミは憐みの言葉を投げかける。どうしてこんやつを相手にしなければならないのかと溜め息をついた。とらはその言葉を褒め言葉だと受け取ってお礼を返す。 「ちょっとこっちによってこないで! このヘンタイ!」 執拗に纏わり付くヲタクたちにカメリアは援護射撃をぶっ放していた。「カメリアちゃんもっともっと激しくして~」と嬉しそうに言いながら、ヲタクたちはあえなく倒れて行く。 「女の子が何だってそんな物を乗り回す。随分と物騒だな、マナカの姉さん」 義弘が戦車を扱うマナカにむかってメイスを叩きつける。攻撃をうけて自慢の砲身が破壊されてしまう。打撃を食らい続けた戦車はついに走行不能に陥ってしまった。怒ったマナカが蓋から出てくる。 「ちょっとあんた、何してくれるの? ヲタクのくせに! その格好で彼女のところに行きなさい。フラれるわよ!」 マナカの言葉が義弘の心に深く突き刺さる。わかってはいた。だが、どこかで信じてはいた。アイツならこんな姿の俺でも認めてくれると。代わりに義弘は精神的なダメージを受けてしまった。 「昼間から発情しちゃって、さすがピンクは淫乱ですね。ぷーくすくす」 舞姫はピンクのアイリの前に立ちふさがった。近づいてくるヲタクや腐女子たちを黒刃で次々に華麗な技で切り裂いていく。ようやく目標のアイリの元へとたどり着くことができた。 「失恋、辛いですよね。けど、だからって、恋をみんなに押しつけるのは間違ってます。この世界のわたしたちは、あなたたちより、ちょっとだけ奥手なの。あなたたち、すごく素敵ですよ。だから、元の世界に戻って、もう一度自分の恋をしましょう?」 舞姫はリーディングで相手の心を読んでから、ハイ・テレパスでアイリにとつぜん話かけた。ふふふ、と不敵に嗤う舞姫にアイリは戦意を喪失した。舞姫の強さを目の当たりにしたというのもある。 だが、それ以上に舞姫の先ほどの奇抜な言動に圧倒されていた。こんなのを相手にしたら身がもたないと心から恐れおののいた。それならまだ元の世界へ帰って男を探したほうがよっぽどいいと思った。 海依音は迫りくるヲタクを相手にしていた。 「海依音ちゃん~オレ凸治っていうんだお。オレ、海依音ちゃんのことが前からラブラブべロチューだったんだお!」 デブでメガネのチェックシャツの髪のうすい同じくアラサーキモヲタが、海依音の足をつかんで離さない。一目ぼれしてしまった彼の粘着力はあまりに凄まじい。 「アナタ、ニートでしょ? 二十万さえも稼げない男はごめん無理です! それに前から思ってたけど、凸~って名前が下品すぎです!」 鳩尾にエルボーを食らったヲタクは突っ伏した。下からのぞき上げたヲタクは「やっぱり履いてなか……」といいかけた。だが、海依音は「なに見てんのよ!」と四つん這いになった彼の股間に杖で鋭い突きを食らわせた。絶叫が辺りに響き渡る。彼の股間は凹んだ。海依音お得意の必殺技が、前回に続き今回も炸裂する。 ●八つ当たりダッサー☆ ようやく海依音たちの見事な活躍でE・アンデッドたちを駆逐できた。そこへ一般人の避難誘導をしていた淑子やヘーベル、ソラ達が戦線に復帰する。 状況はもはや女子高生たちに不利に傾いていた。すでにマナカとアイリが戦闘不能に陥ってしまっていた。 「なるほど~そういう事情があったんですね」 「でしょー。だからサトシのヤツマジムカツク。よりによって男と浮気してんのよ。マジ信じられない。それにシュウマイにマヨネーズかけるんだって! 男だったらシュウマイは醤油つけてたべなさいよ!」 「ほんと、恋愛って(?) すごくむずかしいです」 カメリアは神妙に頷く。延々と紫のユイの話し相手になっていた。いつまで経ってもおしゃべりが止まらない。おそらく彼女も失恋の不安から誰か話し相手がほしかったのだろう。それに見事カメリアが答えた。話は噛み合っていないが。すでにユイも戦闘不能とみていいだろう。 「やぁだ、八つ当たりダッサー☆ てか、こんな事してていいワケ? いい男みーんな他の女に取られちゃうよ? 相手の女に力負けしたんなら尚更、こんなトコで消耗してる場合じゃないっしょ」 とらはバッドムーン・フォークロアで緑のノゾミに戦闘を仕掛ける。好戦的だったノゾミは攻撃をうけて後退した。 だが、再び双剣を片手にトップスピードで攻撃を仕掛けてくる。そこにへーベルが現れて両手をひろげて待ち構えた。 「遠路はるばるいらっしゃいませ。どこから見ていたのかわからないけれど、癇に障るから滅ぼそうというのはあまり良い旅行の仕方とは思えないよ。それに、貴方達の世界の恋愛ってちょっと怖い。この世界にはマイヒーローが居るんだから、あなた達の思い通りにはならないもんね!」 べーと舌を出すへーベルについにノゾミも怒りだす。 「子供のくせに生意気よ! 恋愛のれの字も知らないくせに! いいわ、私たちが身体で恋愛というものをみっちり教え込んであげるわ」 怒り狂ったノゾミが双剣を振りまわしてくる。へーベルを庇ったとらが攻撃を受けてその場に突っ伏しそうになった。慌ててへーベルが回復を施す。 「見ていられませんわ。恋は力で奪い取るもの。そういうありようも否定はしないけれど……ねえ、たたかう方法って力だけかしら。魅力や言葉、手管だって力になるわ。押すばかりじゃ殿方だって興ざめじゃない? 女の子は優雅に、淑女たるべきよ」 淑子の言葉にようやくノゾミも手を止めた。押すだけではダメだ。それは彼女に思いあたることだった。自分の想いをはげしくぶつけるばかりで相手の気持ちをまったく考えていなかったのではないかと思う。穏やかな彼女の物言いにノゾミも戦闘意欲が失われてしまう。いつしか淑子の話に耳を傾けていた。 「ついに、アカネさん、あなただけになったわね。貴方は戦うの? それとも退くのかしら。はやくどちらか決めなさい」 ソラが厳しい口調でリーダーのアカネに迫る。アカネは仲間のどうしようもない様子を見て黙り込んでしまう。それでも最期の力を振り絞って機関銃をやけくそ気味にぶっ放してきた。 かろうじて先に交わした淑子が大戦斧を構えて一気に振り下ろす。つづいて海依音も聖なる光でアカネを攻撃する。 「ぎゃあああ」 続けざまに淑子と海依音の攻撃を受けてマシンガンが破壊された。傷ついたリーダーのアカネはその場に突っ伏した。 「アカネ!」 「リーダー!」 乙女戦士達がリーダーの元へ駆けよってくる。手厚い皆の看護にアカネはようやく目を覚ました。その眼には涙が浮かんでいる。幸いなことにアカネは軽傷で済んでいた。もうその顔には戦闘をする意欲はないようだった。 「もういいわ、みんな帰りましょう。私たちの負け。このままここにいれば、本当に負け犬になってしまう。はやく帰って男を狩りにいきましょう」 ●油を売っている暇なんてない 女子高生戦士達が帰ってすぐに、海依音と義弘とソラが協力してブレイクゲートをしてようやく作戦が終了した。さいわい避難誘導や陣地作成がうまくいったおかげでそれ以上の大きな被害を出さずに済んだ。 「がんばれ女の子っ!」 「素敵な恋愛をしてね」 カメリアとへーベルが元気よく手を振って見送った。 パラレルワールドからやってきた女子高生たちはさんざん暴れ回ったあげく、混乱だけを残してまるで風のように消えて行った。帰るまでソラはそんな女子高生に向かってずっと説教していた。 「ところで、貴方たちはこんなところで油を売ってる暇があるのかしら? そんなことしてる暇があったら元の世界に返って自分自身の恋愛に再挑戦しなさい。時間は有限なのよ、人の恋路の手助けするのなんて既に相手がいて余裕がある人間だけよ。こうしている間にも、チャンスがつぶれてる。貴方たちにとっても、私にとっても有益にならないのよ。その悔しさを他人にぶつけるのではなく、自分の為に使いなさい。このままだと絶対に後悔するわよ、間違いないわ。他人なんて構ってる暇ないのよ! 革命とか言ってる暇ないの! 貴方たちも……私も……!!」 ソラのあまりに長い説教に女子高生はしびれを切らした。あまりに迫真の台詞に慄いて女子高生たちは退散してしまったのである。それは教師という職業病でもあった。それに他ならぬ自分のことも含んでいるため、つい熱が入った。それを横で聞いていた同い歳アラサーの海依音も項垂れる。 「まあ、いいじゃん☆ 海依音ちゃんは、ほらヲタ相手に大活躍だったし。えーっと、ピンボール☆芸人だっけ? それとも○ン△マ☆テロリスト?」 「……男の敵ですね」 「LOVEテロリスト海依音ちゃんです! 変なあだ名つけないでー」 とらと舞姫の発言に海依音が必死になって弁解を試みる。 「なあ、俺の着替えしらないか――?」 義弘がコインロッカーに入れておいたはずの着替えがないことに気づく。おそらく鍵を閉め忘れてしまっていた。慌てていたので記憶にない。誰かが持ち去ったとなるとこのままの格好で帰らなければならなかった。義弘は今度こそ――深く溜め息をついた。日常を守るのはよほど難しいらしい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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