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うさぎゅ。

●異世界からうさぎ
 彼らはとても幸せな日々を過ごしていました。
 あっちでもきゅもきゅ。こっちでもきゅもきゅ。彼らは緑がいっぱいの野原が大好きです。
 けれど或る日。突然できた大きな穴に落ちてしまった彼らは、見知らぬ場所に放り出されてしまいました。
「みゅ……?」
 周囲に広がっていたのは、今までとは全然空気が違うところ。
 仲間はみんな一緒だったし、周囲もお花や草木で溢れていたけれど、撫でたり抱っこしてくれるヒトは周りに居ません。ぷるぷると震えだした彼らは長い耳をぺしょりと下げ、真ん丸な瞳をうるうるさせます。
 タンポポが風に揺れ、深緑の木々がさやさやと鳴っても彼らはしょんぼりしたまま。
 寂しい。とってもとっても、寂しいよう。
 そんな風にみゅーみゅーと鳴き出した彼らの体が、急に眩い光を放ちはじめました。
 そして、次の瞬間――。
 閃光に包まれた森は一瞬にして枯れた大地へと変わってしまっていたのです。

●うさぎは寂しいと死んでしまうから、ぎゅっとしてあげようの略。
「というわけで皆、うさぎを助けに行こうぜっ!」
 寂しくて死んでしまうアザーバイドが森に現れた。不可解な現実の出来事を告げ、『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)は語る。
 アザーバイド『ラビラビット』。
 便宜上そう名付けられた存在は見た目は愛らしいうさぎである。ただし、寂しくて死ぬのはそれら自身ではなく周囲の草木の方だ。種族特性として、ラビラビットは寂し過ぎると『とっても寂しいよ光線』を出して自然を枯らしてしまう性質を持つ。
「異世界の存在だから理由も原理もわかんねーんだよな。けど、放っておくと崩界的にも拙いんだぜ」
 それゆえに早急な対処が求められる。
 おそらく、彼等は異世界から知らない所に迷い込んでしまって不安なのだ。そのまますぐに付近にあるバグホールから無理矢理に送り返してしまっても良いのだが、震えているラビラビットは今にも光線を出してしまいそうだ。そのため、先ずは安心させてやる事が大切であり、より良心的だろう。
「対処法は簡単! 優しい気持ちでぎゅっとしてやるだけだ」
 とにかく寂しささえ紛らわせてやれば光線は出ない。少しなら遊ぶことも出来るので、どうせならこの世界の森で良い思い出を作ってから還すのも一興だろう。
「現場でどうするかはそれぞれの判断で良いらしいぜ」
 俺もうさぎもふもふしたい! と素直な思いを口にした耕太郎は明るく笑んで見せた。そして、フォーチュナに纏めてもらった資料を仲間に提示した少年は思いを馳せる。
「うさぎと何して遊ぶかなー。考えるだけで楽しみになってくるよなっ!」
 親が経営する動物病院を継ぎたいと考えるだけあって、耕太郎が動物に寄せる思いは強い。そうして、自らも準備を始めた少年の瞳はうさぎゅ任務へ馳せる密かな期待に満ちていた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:犬塚ひなこ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月06日(月)22:34
●成功条件
 アザーバイド『ラビラビット』を安心させ、元の世界に還すこと
 皆様とラビラビットが共に楽しい時間を過ごすこと

●概要と周辺情報
 うさぎをぎゅっとしに行こうぜ!という依頼です。
 戦闘は無し。敢えて戦うものがあるとすれば、うさぎを連れて帰りたくなる己の衝動でしょうか。
 ぎゅっとするだけでは何も無さ過ぎるので、森でピクニック的な事をしたり、春の花を眺めたりするのも良いかもしれません。イベシナの延長感覚でのんびりお過ごし下さい。
(ただし、成功条件を満たさなかったり、プレイングがちゃんとしていない場合などは失敗やペナルティが起こり得ます)

 時刻は昼間。小さな森の中。
 うさぎ達は森の真ん中でぷるぷる震えているので、先ずは優しく近寄ることからスタート。
 周囲にはタンポポやナズナなどの春の野花や、緑の眩しい木々。探せば緩やかな小川やちょっとした花畑なども見つかります。

●ラビラビット
 全部で30匹。見た目はこの世界の一般的なうさぎとほぼ同じ。
 誰が何匹相手をするか、どのようなグループで動くかなどは皆様にお任せします。
 結構数が多いので、1匹でも寂しくさせるとちょっと危ないです。寂しいよ光線の威力はどれだけ寂しいかの気持ちの大きさで決まります。

通常のうさぎとはちょっと違う特徴
・みゅーみゅーと鳴く。
・水に濡れても平気。
・雑食。何を食べてもお腹を壊さない。
・うさぎよりはやや知能高し。でも超寂しがり。
・寂しくなると光線を出して周囲の草木を枯らす(人間には無害)
・ぎゅっとしてあげたり、撫でるととても喜ぶ。

●NPC
 『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)が同行します。
 耕太郎も皆様と一緒にもふもふします。何かご用事があれば遠慮なくどうぞ。
参加NPC
犬塚 耕太郎 (nBNE000012)
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
ナイトクリーク
六・七(BNE003009)
クロスイージス
浅雛・淑子(BNE004204)
マグメイガス
巴 とよ(BNE004221)
ミステラン
ルナ・グランツ(BNE004339)
ミステラン
リッカ・ウインドフラウ(BNE004344)
ミステラン
シェラザード・ミストール(BNE004427)
クリミナルスタア
虚木 蓮司(BNE004489)


 春めいた緑があふれる小さな森の中。
 草木は生き生きと茂り、野草や花は木漏れ日を受けて緩やかな風に揺れている。
 吸い込んだ空気も清々しく、深緑の心地は快く感じられた。そんな春の森に訪れたリベリスタ達が早速、緑の中へと足を踏み入れれば、何処からかみゅーみゅーと鳴く声が響いてくる。
「おお、うさぎの声だー!」
 虚木 蓮司(BNE004489)は思わず喜びの声をあげて辺りを見渡した。が、よくよく考えれば今回の面子の中に男は自分と『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)だけ。恥ずかしい気はするが、うさぎの魅力には逆らえない。それが条理というもの。
「うさぎを寂しがらせるなんて言語道断だ。うさぎは寂しいとしんじゃうだろ! そんなのは駄目だ!」
 存分にラビラビット達を抱きしめてやると意気込んだ蓮司は仲間と共に声のする方へ急いだ。
 そうして、『還暦プラスワン』レイライン・エレアニック(BNE002137)は進んだ先にぷるぷると震えているラビラビット達の群を見つけた。うさぎそのものの姿をしたアザーバイドを見て、思い浮かぶのは過去のトラウマ。
「兎か……。いや、今回の兎は安全みたいじゃし、たっぷりもふらせてもらうかのう!」
 寂しがりのラビラビットと遊ぶ準備は万全。
 レイラインがそっと近付いていくと、うさぎ達も気配に気付いたらしく、つぶらな瞳を向けてくる。
 『本屋』六・七(BNE003009)はあまりの可愛さに思わず目を逸らしてしまったが、すぐに向き直ってラビラビットの視線を受け止めた。
「合法的にたくさんのうさぎをもふもふし放題……これはチャンス」
 触るのが普段から非合法というわけじゃないけど、と自分に密やかな突込みを入れつつ、七はうさぎ達の近くへと屈み込む。うさぎはきょとんとしているが、警戒を抱いているようには見えない。おそらくそれは、彼らを怖がらせないように、とリベリスタ達がきちんと武器を置いて訪れた優しさゆえだろう。
「皆でおいでおいでー」
 巴 とよ(BNE004221)が手招きをして呼ぶと、うさぎ達は「みゅ!」と鳴いた。
 とよには彼等の言葉は分からないが、それが拒絶ではないことは理解できる。気付けばうさぎ達の震えも収まっており、『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)は安堵を覚える。
「こんにちは、うさぎさんたち。よろしければ一緒にあそびましょう?」
「みゅー」
 手を伸ばして話しかけた淑子の言葉は、ちゃんとした意味となってラビラビットに届いたようだ。返ってくる鳴き声は肯定的であり、言葉がなくとも早く遊んで欲しいという気持ちが十二分に感じられた。
 ぴょこんと跳ねたうさぎが足元に来た事に気付き、シェラザード・ミストール(BNE004427)は微笑む。
「私達とは別の異世界の住人ですか。ボトムには多種多様な方々がいらっしゃいますね」
 興味深さを覚えたシェラザードがラビラビットをじっと見つめると、向こうからも眼差しが返ってきた。リッカ・ウインドフラウ(BNE004344)は早速しゃがみ込み、寄ってきたうさぎを抱き上げている。
「おいでおいでー」
 嬉しそうにふわふわの毛並みに触れるリッカが頬を摺り寄せれば、周りにいる他のラビラビット達が羨ましそうにみゅーみゅーと鳴いた。『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)は自分の傍に来たうさぎに優しい瞳を向け、おかしそうに笑った。
「わわっ、可愛い! みんな抱っこして欲しいんだねっ!」
 個人的にはこんな可愛い迷子さんが訪れるなら大歓迎。だけど、このままにしておけばこの世界の迷惑が掛かってしまう。リッカが敷布を広げる中、蓮司や七もうさぎ達を手招く。
 この辺りの自然のため。何より、ラビラビット達の心の平穏のためにも。
 今日は楽しい時間を過ごすのだと心に決め、ルナ達は森の穏やかな空気を胸に満たした。


 広げられた敷布の上に腰を下ろしたレイライン達。その周囲にはいっぱいの白い塊、もといラビラビット達がぎゅうぎゅうに詰まっていた。
「今日はお主達と遊びに来たのじゃ! 存分に楽しんでいくと良いぞ」
 レイラインは仲間と目配せを交わし合い、それぞれ三、四匹の担当を決める。ひとり辺りが構う個体を決めてしまえば後は全力で構うだけ。既に懐いた様子のうさぎを膝に乗せながら、レイラインは周りにいるうさぎの数を数えた。
「よしよし、怖くないから安心してね……。大丈夫だよ」
 七も一度に二匹を抱き、存分にあったかいもふもふを堪能してゆく。森の中ということもあり、まだほんの少しだけ冷たい風が吹く中、うさぎの体の温もりは七にとって良い心地となって伝わった。
 そんな中、とよは少し遠くにいた個体を抱きよせ、偏りがないように配慮する。
 頭を少し撫で、ぎゅっとしてからお腹やおでこをなでなでもふもふ。それは寂しくないように、との行動だが、とよが満足するまで撫でるのは止まらない。
「もふもふー」
「もふもふもふもふなのですー」
 そこにリッカも加わり、幸せそうな少女達の様子に淑子が微笑ましさを覚える。
 ラビラビットとすぐにでも遊んでやりたい気持ちもあるが、籠の中に興味を示しているラビラビットは空腹のようだ。ならば、遊ぶ前に先ずは腹ごしらえから。木々の合間から零れ落ちる陽射しの心地好さに目を細めた淑子は用意して来た籠をひらく。
「わたしはサンドウィッチを持って来たの。皆で食べましょう」
 定番のものからフライフィッシュやバジルチキンを挟んだもの、苺サンドまで色々。
 おお、と瞳を輝かせた耕太郎が全力で尻尾を振る中、蓮司も昼食の登場に心を躍らせる。レイラインと七はお菓子を、とよは紅茶を、そしてルナはうさぎ用の野菜スティックを用意していた。
 それぞれに持ち寄った品々が敷布の上に並ぶのは圧巻。
 さっそく淑子が作ったサンドウィッチを手に取ったルナは、思いきって一口を頬張る。
「わっ、淑子ちゃんの作ったチキンサンド、とっても美味しい!」
「そうかしら。ふふ、ありがとう」
 ルナの言葉に淑子が微笑み、仲間達も弁当に手を伸ばした。蓮司は片手でサンドウィッチを摘みながら、膝の上に乗ってきたうさぎにキャベツを分け与える。
 もぐもぐぱりぱり。懸命に葉を食べるその姿を眺め、蓮司は思わず感嘆の言葉を零した。
「一心不乱にキャベツを貪るうさぎの姿って、可愛いよな……」
「蓮司さんも可愛らしいですよ」
 そんなとき、シェラザードが彼の頭上に視線を向ける。そこにはうさみみが装着されており、何とも愛らしく飾られている。うさぎを抱くうさみみ男子(19)の姿は実に微笑ましく、七も笑いを堪えた。
 しかし、それもまた楽しい時間を彩るもの。
 シェラザードは鳴き声や視線で寂しい前兆を出しているラビラビットが居ないか注意して眺め、それまで抱いていなかったうさぎに手を伸ばす。順番に、一匹ずつしっかりと見ることで今の所は万遍なく構ってやることができていた。
 リッカもまた、近所の店で買って来た野菜を取り出してうさぎに与えていた。
「かわいい! すっごくかわいいです!」
 ぽすぽすとキャベツを齧るラビラビットの様子にリッカはご満悦。ちなみにそのキャベツはまるまる一玉が特売で98円である。とても安い。そして、リッカは別の個体を抱きあげて頬擦りをしてみる。ふわふわの毛は心地好くはあるが、彼女はふとした疑問を覚えた。
「この体のどこにそんな凄いビームを放つ器官が備わっているんでしょうか……?」
 アザーバイドって不思議、と首を傾げたフュリエもまた異世界の住民。そうだよね、と頷いたルナや、シェラザードもまた、世界の仕組みにちょっとした思いを馳せた。
 とよも人参スティックをうさぎに差し出し、物凄い勢いでカリカリと齧られるそれを眺める。
「可愛いー」
 犬や猫にはない違った可愛さにとよの口許がほんわりと緩んだ。とても微笑ましい光景の中、耕太郎は指を齧られていたりもしたが、それもお約束。
 そうして、ラビラビット用の野菜はあっという間になくなる。
 まだ物足りないらしいうさぎの様子に気付き、淑子はサンドウィッチをひと欠け千切って差し出した。
「ね、うさぎさんたち。あなたたちはこういうの、食べられる?」
 鼻先に近付けられたパンの匂いを嗅いだラビラビットは、すぐに嬉しげに齧りつく。すると、すぐに他の個体も傍に群がり、淑子はうさぎまみれになってしまった。
「きゃ……! 待って、うさぎさんたち」
「こらこら、お主達。こちらは洋菓子に和菓子、何でもござれじゃ。遠慮せず食すといいぞよ」
 大変そうな淑子を助けるべく、レイラインが菓子類をうさぎに示す。食欲旺盛な彼等はレイラインの元にも擦り寄り、とても幸せそうに菓子を頬張った。
「わたしも食べます。皆さんも、良ければ紅茶のおかわりをどうぞです」
 とよもラビラビットと一緒になってチョコケーキやラングドシャを味わう。勿論、その際に淹れて来た紅茶を勧めるのも忘れてはいない。
「お、ありがとな。皆で一緒に食べるのってなかなかに良いものだな」
 蓮司も紅茶のカップを傾け、賑やかながらも穏やかな時間を満喫する。彼の頭の上で揺れ続けるうさみみに視線を向け、リッカとシェラザードも緩やかなひとときを感じた。
 やがて、食事はすべての弁当と菓子がなくなったことで見事な終わりを迎える。
 お腹がいっぱいになって実に満足そうなラビラビットを撫でつつ、七は不意に思いを零した。
「こんなに可愛くて寂しがりやなんて反則だよね」
 思えば、あと少しでお別れしなくてはいけなくなるのだ。そのことは残念だったが、自分が寂しいと思い続けていたらうさぎ達にも気持ちが伝わってしまう。だからこそ、今はこの逢瀬を楽しもう。
 七は胸の奥でそっと誓うと、腕の中で心地良さそうにしているラビラビットを優しく見つめた。


 楽しい食事が終わったら、次は小川や花畑で戯れる時間。
 辺りに咲く春の野花や、風に揺れる木々。春色の景色が広がる森は遊ぶのには最適だった。
「みんなおいで! 耕太郎ちゃんもこっちこっち!」
 ルナは小川の浅瀬へと駆け出し、石の上を軽やかに飛んでいく。
「おうっ! いくぜ、ラビラビット達ー!」
 呼ばれた耕太郎が後に続き、うさぎ達も次々と水飛沫を弾きながら花畑を目指す。水に濡れても平気なラビラビットのはしゃぎっぷりにルナと耕太郎は笑みを交わしあった。レイラインは怖くて小川を跳べなかったうさぎを抱いてやり、足に触れる水を感じる。
 水遊びには少し早いが、こうしてほんの少しの冷たさに触れるのも良い。
 そうして辿り着いた花畑にはたくさんの花が咲いており、シェラザードは辺りを見渡す。
「ラ・ル・カーナとは趣が違いますが、ボトムにも自然豊かな場所があるのですね」
 故郷を思い返す彼女は担当のうさぎを連れてその場に座り込み、呼び寄せたフィアキィと共に花の香りを感じた。風がシェラザードの髪を揺らし、花弁も同じようにゆらゆら揺れる。巡る心地好さに目を細め、シェラザードはラビラビットの耳をくすぐってやった。
 とよもまた、うさぎを抱いて花畑のお散歩に向かう。
 片手に一匹ずつ、残りの一匹は頭の上に。ちょこんと大人しく頭上に納まったラビラビットを見上げる形で気にかけ、とよは満足気に歩みを進めた。
「流石に三匹は持てないですけれど、これなら大丈夫です」
 ちょっと頭が重くても我慢。現にうさぎも喜んでいるような雰囲気を醸し出しているので、後は落ちないように気を付けてやるだけで良い。とよがまるでうさぎ帽子を被っているようで、蓮司の口許も綻んでしまう。
 すると、気付けば蓮司の構っているうさぎが身体によじ登って来ていた。
「お前もここに乗りたいのか? 落ちないように気を付けろよ」
 うさみみの間にラビラビットを乗せた蓮司がそういった矢先、ずるりと耳ごとうさぎが落ちそうになる。危うく落下しそうになった仔を間一髪で受け止め、彼はほっと息を吐く。ラビラビットに意外とやんちゃな面もあるのだと知った淑子もまた、笑みを湛えた。
「……ふふ、ふわふわね」
 花の傍に腰を下ろし、淑子はさらさらとした毛並みを梳いてやる。気持ち良さそうに目を瞑るうさぎ達はどうやら眠たくなってきたらしく、傍に身を寄せてうとうとしはじめた。
 すっかり仲良くなれたことに嬉しさを抱き、淑子はあたたかな心地を感じる。そうしているのは七も同じ気持ちを覚えていた。
「ごはんは美味しかったし、風もあったかいし、お花も綺麗だし……」
 うさぎを膝に乗せてまったりしていると、こちらまで眠くなってきてしまう。七の声を聞いた耕太郎は、お昼寝モードな様子に気付いて声を小さくし、口元に人差し指を当てながら淑子に笑いかけた。
 そんな中、リッカは花で冠を編む。
 うさぎの頭に乗る程度のちいさな花冠は勿論ラビラビット専用のもの。だが、何でも食べてしまう彼等は草の端っこを加えるともぐもぐと食んでしまった。
「ああっ、食べちゃダメですよー」
 駄目だと言いつつもリッカは笑っている。可愛くて食べられる冠も素敵だとくすくす笑み、語りかけたリッカ自身も存分に花と緑の時間を楽しんでいた。ルナもうさぎの分に加え、仲間の分まで花冠を紡いでいく。
 コレでもお姉ちゃんですから、と胸を張ったルナの言葉はあたたかい。その甲斐もあって、とっても寂しいよ光線を出す気配は微塵も見られなかった。
 和やかな中でもリッカは個体がはぐれないように常に気を配る。そのため、群から抜け出してしまうラビラビットは一匹もいなかった。レイラインも他の場所に興味津々なうさぎについていき、花が一段と綺麗に咲いている場所へと腰を下ろす。
「綺麗じゃのう。お主達もそう思うかえ?」
 花を潰さぬように、と気を付けるレイラインの真似をしているのか、ラビラビット達もそろそろと動いていた。問いかけた言葉に同意するように花を嗅ぐうさぎの姿を見守り、彼女はふっと息を吐く。
 なでなでぎゅっと抱き締めること過去のトラウマも払拭されるようで、レイラインは安堵した。
 柔らかな陽射しに森の香り、やさしい仲間達。
 寂しさなんて少しも感じない、とても幸せな時間が巡っていく。


 楽しければ楽しいほど、時間はあっという間に過ぎ去っていった。
 間もなく夕暮れが訪れる頃合いまで時間は迫っており、リベリスタ達は徐々に近付く別れを思う。ラビラビット達もその雰囲気を感じ取っているのか、暮れゆく陽をじっと見つめていた。
「寂しいよな……で、でも連れて帰らないぞ! アザーバイドだからな!」
 俺の固い意志がそう告げている、と己と戦っている蓮司は拳を握った。本当はいつまでも一緒に居たい。けれど、それが叶わぬ事はちゃんと知っている。
「名残惜しいが、そろそろじゃのう」
「ええ、バグホールの方に行きましょうか」
 レイラインが呟いた言葉を切欠にして、シェラザードも頷いて立ち上がった。歩きはじめる彼女達の後ろをラビラビットもぴょこぴょことついていく。そして、一行は次元の穴の前に辿り着いた。
 七は抱いていたうさぎを地面に下ろし、穴を示す。
「うさぎたち……元気でね。もう落ちて来たら駄目だよ……?」
 別れの残念さは確かにあった。けれど、このままずっと此処にいるよりも元の世界に還った方が幸せだと云う事は七にも分かっている。
 みゅ、と鳴いて振り返るラビラビットの瞳に胸を打たれながらも、七は手を振った。そこにとよも加わり、最後にぎゅっとうさぎを抱き締める。
「ばいばいですよ」
 一緒にいた子の頭を撫で、別れの挨拶を終えたとよも穴へとラビラビットを連れてやった。
 ルナは耕太郎の隣に立ち、ふとその横顔を見る。彼の表情が寂しげに思え、ルナは不意に聞いてみた。
「耕太郎ちゃんも、寂しい?」
「そりゃあ寂しいけど……でも、これで良いんだよな!」
 明るく返した少年に、流石は未来の動物医だとルナは納得する。照れたような反応を返す耕太郎の背をぽんと叩き、ルナもまたラビラビットを見送った。
「……わたしのお友達は、みんな自分の世界へかえってしまうのね」
 淑子は帰って行くラビラビットを見つめ、ぽつりと零してしまう。最後まで抱いていたうさぎと視線を合わせ、友達だと思って良いかと淑子は問うた。すると、ラビラビットは真っ直ぐな眼差しを返す。
『――もちろんだよ』
 そんな声が聞こえた気がして、淑子は嬉しくて零れそうになる涙を堪えた。一匹ずつ、向こうの世界へと還っていくことに胸が締めつけられる気がしたが、蓮司は今日一日で撮った写真のことを思った。
 楽しいピクニックに穏やかな花畑での思い出。
 それらは色褪せること無く、確かな形となってこの手に残るのだ。
「みんなで一緒にいれば寂しくない。それは私たちも同じです。……さよなら、うさぎさん」
 リッカは最後の一匹が還った事を見届け、微笑みを浮かべた。
 お別れは寂しい。だが、この寂しさは孤独や悲愴から来るものではないことを皆が知っている。
 出会いと別れを繰り返して思い出は紡がれる。
 夕暮れの森の中、リベリスタ達は思う。皆と一緒なら寂しくなんてない。
 きっと、これからもたくさんの出来事が巡って行くのだと――。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
うさぎアザーバイドさんとの戯れのひととき、楽しんで頂けましたでしょうか。
犬塚は犬も猫も大好きですが、近頃はうさぎの愛らしさにも一目置いております。とっても可愛いですよね。

ご参加ありがとうございました。また機会があればよろしくお願い致します。