●獣と兵器 戦いが起こっていた。 戦場は草原のような、雑草の茂る平地である。 かつて畑であった場所だ。 もっとも、耕す者がいなくなって久しい事はその荒れ具合で判別できた。 その人の営みが失われた場所で……2つの小集団が争っていた。 一方は獣の群。 もう一方は金属で出来た兵士や兵器のような存在である。 獣の方は、大きなイノシシといった処だろうか? もっとも体躯は猪にしては大きく、毛皮の上からでもハッキリ分かるほどに筋肉が発達し凸凹になっていた。 牙も大きく鋭くなり、金属の杭か何かのようである。 それを相手に向けて、突撃するのだ。 それに対するのは、どこか工業用の機械を思わせる金属の塊達だった。 SF的に表現するなら、ロボットのようと言えるかもしれない。 1機は小型で、戦場の上をずっと旋回し続けており、残りの4機が獣たちを攻撃していた。 2機は人間のように手足を持った外見で、腕の部分が銃や砲になっていた。 2機は戦車のキャタピラの部分に、代わりに足を付けたような外見をしている。 その4機に向かって、獣たちが牙を向け突撃し、跳ね飛ばす。 金属の塊たちは吹き飛ばされたりしながらも、獣たちに銃撃を浴びせ、砲弾を発射して応戦した。 地面が抉られ、外れた銃撃や砲弾が近くの山林に飛び込み、木々を薙ぎ払い、爆発する。 どちらの集団も、周囲の事など気にも留めなかった。 両者にあるのは……ただ、相手を倒すという意志だけなのだ。 ●戦いへの介入 「E・ビーストとE・ゴーレムが争っているみたいなんです」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう説明してから、スクリーンに画像を表示させた。 周囲を木々や山に囲まれた草地が、地図と共に表示される。 「場所の方は、山中にある放棄された農地になります」 農業が行われていた頃はともかく、現在は人が訪れる事はない。 地面に起伏はなく、放置されて時が過ぎた為に土も固くなり雑草が根を伸ばしている。 その雑草の丈もそれほどは高くない。 「戦闘の邪魔になるような事はないと思います」 その場所で、2つのエリューションの集団が戦うことになるらしい。 「急いで向かえば、ちょうど戦い始めたくらいに現地に到着できると思います」 そう言いながフォーチュナの少女が端末を操作すると、スクリーンの一部に動物の画像が追加された。 「一方はE・ビーストの集団です。付近に生息していたイノシシがエリューション化したみたいです」 数は全部で4体。 フェーズは全て2だが、そのうちの1体は放っておくと3に進行しそうなのだそうだ。 体長は2~3mといったところだろうか? 全身が気味悪いくらいに逞しく起伏にあふれ、牙も大きくなり金属の杭か何かのように鋭く尖っている。 「とにかく動くものに突撃するという感じです。攻撃手段はその突撃と、近付いた状態での牙での攻撃の2つになります」 突撃は直線上の全ての相手を吹き飛ばすような物理攻撃で、威力もかなりあるようだ。 近付いた状態での牙による単体攻撃は、突撃ほど威力はないものの、逆に避けるのは難しい。 「見た目通りパワーも耐久力もありますが、加えて動きの方もかなり素早いみたいです」 知性の方は高くはない。 ただ、群れで敵を襲うような性質を持っているようだ。 「対峙するのは5体のE・ゴーレムの集団です。こちらは全て種類が異なりますがフェーズは2のようです」 マルガレーテはそう言って画面を切り替え、5つの小ウインドウを表示させた。 「1体は飛行型で20m程の高度から地上の戦いを観察しているみたいです」 残りの4体が地上で、E・ビーストたちと戦っているようだ。 「2体は人型で、腕の部分が銃になったような外見をしたE・ゴーレムです」 その2体も少々外見は異なるようだ。 一方はかなり機敏な動きをするものの、武装はライフルの銃身のような腕1つのみ。 もっとも、精度も攻撃力もかなりのものらしい。 「もう一方は頑丈そうな金属の装甲で機体の各部を覆っていますが、その分だけ動きは鈍いみたいです」 武装は範囲を掃射できるマシンガンと、エリューションとしての力をライフルのように発射する神秘射撃の2種類。 「残りの2機は4足歩行……戦車とかのキャタピラの部分から脚が生えている、みたいな感じです」 人型ではなく、砲台に足が生えているという感じだろうか? こちらも装甲が軽めの機体と重装甲の機体と分かれているらしい。 「2足歩行型と比べると、動きはやや鈍そうです」 ただ、装甲の軽い方は人型の装甲の厚い方よりは動きは機敏らしい。 「跳ねるみたいに移動したり走ったりもできるみたいです」 武装は遠距離まで届くライフル。 「あと、動きの鈍さを補うためなのか近距離戦用のブレイドを装備しているみたいです」 武器を振り回す部分が車体か砲塔に付いているのだろうか? こちらは近くにいる相手のみだが、精度威力共にライフルより高いようだ。 「もう1体の重装甲の方は、どっしりとした感じでゆっくりと動きます」 ただ、攻撃そのものは精度は高く、動きにも決して隙はないようだ。 外見通り、防御力耐久力共に4機の中では最も高い。 加えて状態異常に対する高い耐性を持つようだ。 「武装はエリューションとしての力を砲弾のようにして発射し、爆発させるという神秘攻撃です」 加えて同じように近距離戦用の小型の刃を装備しているようだ。 「こちらは威力はやや劣りますが、自分に近接している全ての対象に攻撃が可能みたいです」 4機のE・ゴーレムは知性的なものは持っていないが、戦況等を分析して自分達に有利なように戦闘を行うらしい。 「あと、2足歩行型の方が動きは機敏ですが、安定性には劣るみたいで……攻撃が完全に命中すると転倒するみたいです」 倒れると、立ち上がるのに10秒程度の時間をロスするようだ。 重装甲の方がやや倒れにくいようだが、回避能力そのものは軽装甲の方が高いらしい。 「あと……全てのゴーレムにアンテナのような物がついています。何なのかは分かりませんが……」 マルガレーテはそう言って説明を終えると、リベリスタ達を見回した。 「戦うタイミング等は、すべて皆さんが現地を見て判断して下さって構いません」 目的はただ1つ。 全てのエリューションが倒れれば、それで良いのだ。 「ただ、出来れば周辺の山林等への被害は抑えて頂ければと思います」 よろしくお願いしますと言って、マルガレーテは頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月29日(月)23:41 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●エリューション事件 「被害が大きくなる前に、なんとかしないといけませんね」 「マルガレーテちゃんのお願いだもん。仕方ないよね?」 『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)の言葉に、『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)は頷いて見せた。 「ソレに、私だってフュリエの一員だよ」 山野の皆が傷ついていく姿を、黙って見てなどいられない。 「機械対獣の構図ですか……」 「ボアはともかくゴーレム達は自然発生したにしては不自然な動きだね」 『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)の呟きに、『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)は疑問を口にした。 綺沙羅の言葉に、カルナも頷く。 「映画等では良くありそうなシチュエーションですが、それがここで行われているというのは解せませんね……」 (何かの兆しでなければ良いのですが……) そんな想いが、カルナの表情を曇らせた。 一方の綺沙羅は、自分が以前確認していた資料の事を思い返す。 (以前あった工場跡地に発生した一連のゴーレム事件に関係あるのかな?) 六道の研究者が確か、E・ゴーレムの研究をしていたはずだ。 もしかしたら、それらに関係があるかも知れない。 「どちらも得ようと中途半端に手をだして、痛い目を見ることにならなければ良いがの」 『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が今回の任務について考えながら、呟きを零した。 E・ビーストと、E・ゴーレムが戦っているという状況への介入。 一方が撃破される時、その直前に戦いに加わるというのが、もっとも効率の良さそうな方法である。 今回は、そこまで待たない。 戦いの最中、E・ビースト側を挟撃するように戦闘を開始するというのがリベリスタ達の作戦だった。 それが、どのような結末をもたらすのか? 考えた処で、無論結論など出はしない。 懸念はただ内に収め、シェリーは慎重にエリューション達の様子を窺った。 ●挟撃作戦 敵に察知されない為に。 『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)は雑草の中に身を潜めるようにして移動していた。 すぐには戦闘に介入しない。 まずはボアの後背から、こっそり近づいていくのだ。 イスタルテも敵に気付かれないようにと慎重に、エリューション達の位置を確認した。 ルナの方は隠れたまま、植物たちとの意思の疎通を試みる。 植物たちは両者の戦いを、特にゴーレムたちの事を怖がっている様子だった。 地から生える草であれば、獣に踏みつけられる事などはあまり気にしないのかも知れない。 それ以上の事、何らかの情報を知るのは難しかった。 それでも、ルナにとっては大事なことだった。 植物たちが怖がって、苦しんでいる。 何とかしないと、いけない。 そんな想いが、いっそう強まった……そんな気がするのだ。 カルナは戦場へと慎重に近づきながら、イスタルテと共に飛行するE・ゴーレムの動きに注意していた。 リベリスタ達に気付いたのか気付かないのかは分からないが、ゴーレムは変わらず戦場の上空を旋回している。 ある程度の距離が離れていても、ゴーレムの体に付いている大型のカメラのような物が下を向いているのは見て取れた。 とにかく、出来る限り見えないように。 姿勢を低くし、ゆっくりと……草に隠れるようにして。 イスタルテはカメラになるべく見られないようなルートを考えて移動する。 敵の殲滅を最優先。 (次点で被害を最小限に抑える) 綺沙羅は頭の中で目的を反芻した。 カルナも飛行型E・ゴーレムに警戒しながら、作戦と戦闘開始の流れを再確認する。 エリューション化した猪、E・ボアの群れの後方へ移動し、身を隠したまま戦闘準備を整える。 初動は付与や強化に手を回す。 フツも慎重に移動しつつ、仲間たちの互いの位置取りに気を配った。 あまり纏まって動けば発見されやすくなるが、距離が離れすぎればスキルの効果が及ばなくなる可能性がある。 それらについては離れた場合、アクセスファンタズムを最小限利用するというくらいしか手段は無かった。 距離は徐々に詰まってゆく。 物音を立てないようにと注意し、遮蔽物を利用しながら移動し……綺沙羅はこれ以上の接近は危険と判断した。 目標とした距離には届かないが、無理に接近すれば気付かれる可能性がある。 フツとルナも同意した。 何とか近づけたとしても、準備中に気付かれれば、突然対処を迫られる事になるだろう。 最優先は、距離よりも気付かれない事の筈だ。 リベリスタ達は隠れたままの状態で、戦闘準備を開始した。 ●戦闘に向けて カルナが周囲の魔力を取り込み始め、ルナはカルナとイスタルテの2人に物理攻撃から 身を守る強力な障壁を張り巡らせた。 イスタルテは仲間達に翼の加護を施し、フツが守護結界を張り巡らす。 シェリーは魔力を高めるため、自身の周囲に複数の魔方陣を展開した。 綺沙羅は先ずエネミースキャンの能力を使用し、E・ボア達を分析する。 充分に距離があった為に飛行型ゴーレムも同時に視界内に収められたので、そちらの方もスキャンしてみた。 ただ、どちらも分析は難しかった。 E・ボアの方は能力等は改めて確認できたものの、フェーズ上昇を控えた個体の特定は出来なかった。 一方で飛行型ゴーレムの方は、指揮能力や類する能力は所持していない事が判明する。 ただ、自身のカメラで確認した映像や画像を他のゴーレムや、別の場所に送信する能力を持っているらしかった。 それらの情報を、綺沙羅は端的に味方に報告する。 情報を確認したシェリーは、戦闘のために意識を集中させつつエリューション達を観察した。 ルナも能力を使用して観察してみたものの、フェーズの進行に関しての判別はできなかった。 ただ、飛行型のゴーレムの視覚情報が他のゴーレムと共有されているらしいというのは何となく認識できた。 イスタルテは飛行型のE・ゴーレムに対して特に注意深く観察してみたが、できるだけ戦場全体を万遍なく観察する、という以上の行動はしていないようである。 カルナは念の為に攻撃も行えるようにと敵の動きに意識を集中させ、フツと綺沙羅もそれぞれ印を結び、戦闘態勢を整えた。 フツの周囲に道力を纏った剣が浮かび上がり、刀儀陣を形成する。 符術によって創り出された小鬼が、綺沙羅の戦いを援護すべく傍らに控える。 そして……リベリスタ達の準備は完了した。 6人の視線の先では、EゴーレムとE・ビースト達が、変わらず戦いを繰り広げている。 その戦いに介入すべく、リベリスタ達は行動を開始した。 ●強襲、戦闘開始 後衛にE・ボア達が近付かせない為に。 イスタルテは前衛に位置を取ると、聖なる光を掌に生み出した。 回復の必要が無いうちに。 生み出した光を、エリューション達へと向ける。 だが、エリューション達の動きは機敏だった。 E・ボア達は素早く光をかわし、ゴーレム達もほとんどが攻撃を回避する。 4足歩行型で重装のゴーレムがダメージを受けたものの、その個体も直撃は避けたようだった。 攻撃に反応したのか、飛行型のゴーレムがリベリスタ達を撮影するべくカメラらしき部分を駆動させる。 E・ボアの方も、1頭がイスタルテへと向きを変えた。 すさまじい勢いで、異形化した獣がイスタルテへと突撃する。 ルナが張り巡らせた力場がその衝撃を大きく減じたものの、それでも攻撃は強力だった。 直撃を受けたイスタルテが大きく後方へと吹き飛ばされる。 それを確認しつつ、カルナも聖光を生み出し意志を籠めた。 E・ビースト達のみを対象に、光を解放する。 その光を、やはり殆どのボア達が回避した。 1頭には命中したものの、偶々という感じで直撃はしない。 それでもかなりのダメージを与えたのは、単純にカルナ自身の魔力ゆえだった。 強力な癒しの力は攻撃に転ずれば、それだけの破壊をもたらすのである。 一方フツはE・ボア達へと距離を詰めると、機敏な動きを封じ鈍化させる強力な結界を張り巡らせた。 1頭は運よくという感じで直撃を回避したものの、3頭がまるで重石でも括り付けられたかのように動きを鈍らせる。 フツの後に動いたのは、2足歩行の軽装型ゴーレムだった。 ライフルの照準がイスタルテに向けられ音を発する。 発射された銃弾は威力の多くをバリアで失ったものの、その精確さで彼女を傷付けた。 ボアを無視してこちらを狙ってくるようなら、飛行型だけでもボアより優先して撃ち落とさねばならない。 戦いが長引けば周辺の山林等への被害は仕方ない。 シェリーは自分に言い聞かせた。 (自然……マナを愛する妾じゃ……) その点だけが、腹立たしい。 だが、それで心を乱すような事になれば……被害はさらに大きなものとなる。 それだけは、何としても避けねばならない。 E・ボアから狙われ難いように位置を取りつつ、彼女は詠唱によって魔術師の弾丸を創り出した。 強力な魔力の弾丸が、直線状に位置する獣たちを貫いてゆく。 前衛の影に隠れるように動きながら、ルナは集まっているボア達に狙いを定めた。 「喧嘩するなら周囲の皆の事も考えてよっ!」 彼女の傍らに在ったフィアキィが舞い踊るように姿を氷精へと転じ、周囲の冷気を一点へと収束させる。 ボア達は冷気に覆いつくされる前にと動き、かろうじてという感じで直撃を回避する。 そこへ、綺沙羅の放った氷雨が襲い掛かった。 ●エリューション撃破 ゴーレム達は攻撃対象から外す。 ボアたちの突撃を警戒し、直線上には並ばない。 それらに注意して位置を取りながら、綺沙羅はエリューション達の動きを観察した。 3機のゴーレム達は、リベリスタ達の事は認識しているものの、E・ボアの方へと攻撃を続けている。 フツの極縛陣によって動きを鈍らせていた1頭がゴーレムの攻撃を避けようとして派手に転び直撃によって負傷したものの、直後術から逃れ動きを取り戻した。 別の2頭はというと、もがくように暴れるものの展開された結界に捕らわれたままである。 それでも2頭ほどが自分たちの側に意識を向けてきたのを確認し、綺沙羅は符術で式神の影人を創りあげた。 突撃しようとする特徴を利用しての誘導を試みるためである。 急ぎ前衛に復帰したイスタルテは、相手の突撃を誘発しないように注意しつつ前線の一角を担っていた。 最優先は後衛に敵を通さぬ事。次点は、仲間が倒されぬ事。 2つを自身に課し、彼女はボア達を後衛に向かわせぬようにと位置を取る。 回復は現状、少なくとも不足していない そう考え、イスタルテは攻撃の為、敵の動きに意識を集中させた。 対してカルナは以降、完全に回復に専念する。 皆の負傷に十分気を配りながら、彼女は詠唱によって高位存在の力を具現化させ、癒しの息吹で周囲を満たした。 少なくとも現状、集中攻撃を行われることもなく、味方の負傷は大きくは蓄積していない。 とはいえ油断は禁物だ。 (誰一人倒されるわけに参りません) 周囲に気を配り、自身に付与した力の持続も考慮しながら、カルナは仲間達へと癒しの力を揮い続ける。 フツはイスタルテに攻撃しようとするE・ボアを優先的して攻撃を仕掛けていた。 式符で創り出した鴉でボアを牽制し、近付いてきたところを狙って魔槍深緋で突きを繰り出す。 直撃を受けたE・ボアは吹き飛ばされ、まとわりつく氷によって動きを封じられた。 そこへ、シェリーやルナだけでなく、ゴーレムの攻撃や砲撃までもが集中する。 ゴーレム達は変わらず、ボア達を主な標的として戦い続けた。 E・ボア達がイスタルテやフツに接近した時に、巻き込むように砲弾を放ったり銃撃を行ったりする事はあるものの、それ以上の事はしてこない。 攻撃は決して弱くはなかったが、ダメージが蓄積する前にカルナによって癒された為、大事には至らなかった。 結果的に本当に挟撃のような形となって、E・ビースト達の撃破は早期に完了する。 もっとも、それで終わりと判断するものは、リベリスタ達は勿論ゴーレムの側にもいない。 銃口が、格闘用のブレイドが向けられる前に……リベリスタ達は攻撃を開始した。 ●ゴーレム殲滅作戦 飛行型E・ゴーレムの動きは変わらなかった。 上空を旋回しながら、カメラ状の部分を下に向けている。 現在それが捉えているのは、6人のリベリスタ達の姿だった。 ゴーレム達の判断力、知性的な部分は、どの程度なのか? 敵の戦い方を観察しながら、フツは一応の結論を出した。 今までの戦いぶりから判断するに、ゴーレム達はかなり冷静な判断能力を有していると言える。 その原因が飛行型にあるか如何かは不明だが、倒してマイナスになる……という事は無さそうだった。 ならば最優先は、飛行型とすべきだろう。 結論を出しつつフツは結界を再び展開する。 戦法は、E・ボア達の時と基本同じだ。 初手で相手の行動速度を減退させ、以降は式符による遠距離攻撃と、魔槍による近接攻撃。 仲間、特に前衛たちへの援護を優先するのも同じである。 ゴーレム達はボア達に比べれば機敏さでは劣っていた。 だが、総合的な戦闘のでは劣ってはいない。 寧ろ優れていると言えるかもしれない。 二脚の軽装型が脇に回り込むように動き、腕のライフルを後衛へと向ける。 気には止めつつ、シェリーは先ず飛行型のゴーレムに狙いを定めた。 四色の魔光がゴーレムを捉え、綺沙羅の放った式符の鴉が襲いかかる。 ルナが雨のように火炎弾を一帯へと降り注がせた。 ゴーレムは器用に動き回り直撃を避けたものの耐久力に劣っていたのか、煙を吹きながら墜落し、動かなくなる。 それを確認するとシェリーは次の標的に狙いを移した。 2足歩行の軽装、重装、そして4足というのが撃破の優先順位である。 「といっても、容易くさせてはくれぬだろうな」 出来るだけ多くのゴーレムを巻き込めるようにと考えながら、シェリーは魔方陣を展開する。 飛行型撃墜後、綺沙羅は呪力を籠めた凍てつく雨によってゴーレム達を攻撃し続けた。 単体を狙うときは、飛行型の時と同じように鴉の符を打つ。 後衛に向かおうとする敵は妨害しようと考えていたものの、ゴーレム達は確認するように攻撃した後は前衛に攻撃を集中させてきた。 四脚の2機が格闘戦用のブレイドを振り回し、二脚2機が援護するようにライフルやマシンガンで銃撃を加える。 狙われたのは前衛を務めながら回復も担当していたイスタルテだった。 刃と銃弾が彼女を襲い、その動きを止め、打ち倒そうとする。 運命の加護でかろうじて耐え凌ぐイスタルテを救うべく、カルナは大いなる存在に呼びかけた。 詠唱が形を変え、イスタルテの身を包み込む。 ほんの一呼吸とかからなかった。 癒しの力が彼女の総てを満たし、最初から怪我など無かったとでもいうかのように、すべての傷が……消え失せる。 それでも、途切れる事なくゴーレム達の攻撃は続いた。 イスタルテだけではなくその周囲にも銃弾の嵐が吹き荒れ、放たれた砲弾が他の者を巻き込むように炸裂する。 それに抗すべく、イスタルテとカルナ、ルナの3人が力を合わせた。 癒しの福音が響き、生命の息吹がリベリスタ達を満たす。 ルナの呼びかけに応えるかのように、癒しの力を帯びたフィアキィがリベリスタ達の周囲を舞った。 フツの放った式鴉が、二脚のゴーレムを転倒させる。 そのゴーレムを巻き込むようにして、シェリーは魔炎を召喚した。 「成長には数十年、しかし壊すのは一瞬」 (今の妾は実に機嫌がわるい) 「ありったけの力を込めてやろう」 爆発した炎に吹き飛ばされるようにしてゴーレムが破壊され、破片が飛び散る。 リベリスタ達の優勢は、それで決定的となった。 ゴーレム達の猛攻を耐え凌ぎながら、6人は確実に攻撃を積み重ねてきたのである。 1機を失ったゴーレム達にはリベリスタ達を打ち倒すだけの力は残っていなかった。 最後の標的となった重装の四脚ゴーレムが倒されるまで、それから2分と掛からなかった。 ●後に残るもの 綺沙羅とルナは戦いが終わると、すぐにゴーレム達の残骸を回収し始めた。 多くが消滅してしまったのかほとんど残ってはいないものの、幾つか、破片のような物は残っていたのである。 「気のせいかもしれないけど、彼らの行動……少し不自然に感じたから」 ルナは能力を使用して回収した残骸を調べながら、そんな呟きを零した。 綺沙羅の方はというと、使えそうなパーツがないかというワクワク感もある。 できたら何か、お土産に欲しい……そう思いはしたものの、流石にそういったものは残っていなかった。 ただ、念入りに調べてみた結果、飛行型は撮影したデータを随時何処かに送信していたらしい事は判明した。 それが何処なのか、もちろん手掛かりはない。 けれど……推測はできた。 戦いの前に感じていた懸念が、形を取ってゆく。 ……いずれハッキリと形になる。 そう自分に言い聞かせ、綺沙羅はルナと共に回収作業を再開した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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